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「失わなければいけない記憶」中編を読む
「失わなければいけない記憶」後編を読む

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あの事件から1年もの月日が流れていった。

そう、ボクと美月・・いや、志穂が屋上から飛び降りてから・・。

そして志穂はお姉さんの呪縛から逃れることができた。
 
文化祭のあとボク達はせめて、美月さんを鎮魂させてあげようと美月さんのお墓まで行った。

だが、あの事件のあとの志穂は姉・美月さんのことをすべて忘れていた・・・・・。

Double Cast SS

「失わなくてはいけない記憶」・前編

作者・咲良



「おはよっ!今日は映研の活動あるの?」

いつものように朝早く起きた志穂が朝ごはんを作ってくれている。

そう。ボクたちは一緒に住んでいる。

「ん・・?あぁ。今日は久しぶりに部長が召集命令を出してね。」

それを聞くと志穂は寂しそうにこういった。

「そう・・。じゃ、私は夕飯の買い物でも行っとくね・・。」

・・・そんな風に言われたら置いていけるわけないじゃないか・・・。

そして結局映研の部室の前まで志穂を連れてきてしまった。

何か入りづらいものを感じたボクはそこでじっと動かなくなってしまった。

「・・・おーい??どうしたのー・・??」

志穂の言葉にハッとして、ボクは勇気を振り絞って部室に入った。

「えっ・・?」

ボクたちは二人そろって息を呑んだ。

そう、そこにはあの事件のとき、そして志穂がお世話になっていた森崎先生がいた。

そして、部長がいた。

「せ、先生・・・?」

「お久しぶりね・・・志穂ちゃん・・・」

志穂は先生を前にして驚きに包まれている様だ。

「あぁ・・やっときたのね。やっぱり・・志穂ちゃんも来てくれたわね。」

部長がこの不思議な雰囲気を掻き消すかのようにして

ボクたちに声をかけてくれた。

そしてボク達は部長に言われるがままに椅子に座らされた。

ボクと志穂は状況が把握できないでいた。

「えっと・・・あの、部長、今日は映研の集会じゃなかったんですか・・?」

そうボクが言うと部長は少し悪そうな顔をしてこういった。

「ゴメンなさい。映研の集会っていうのはウソ。

少しキミと志穂ちゃんに話があったの。」

・・ボクと志穂に話・・?映画のことか?いや、それなら森崎先生がいるはずがな
い。

その部長の言葉に続くように森崎先生が喋りだした。

「・・志穂ちゃん。あなた、今お姉さんの記憶・・・ないのよね?」

「・・・・・はい。」

「それと・・あなた。私は少し志穂ちゃんと話をするから

少し外で部長さんから話を聞いてくれる?」

ボクは反射的にうなずいていた。

そして志穂も・・・・。

バタン・・・・

ボクと部長は部室を出て部室の隣の中庭のベンチに座った。

「あの、で、部長・・・話って??」

「・・・・・・・。」

部長はなぜか返事をしてくれなかった。

「あ、あの・・・」

僕がそう言い始めたと同時に部長が喋りだした。

「あなた・・志穂ちゃんの過去のことは聞いたのよね・・?先生に。」

「はい・・。あの事件の少し前に聞きました。」

「それじゃ・・あなた・・。」

ボクと部長は互いの顔をじっと見つめる。

「志穂ちゃんの事・・・。本気で愛している・・?」

思いもよらない部長の質問にボクは少しの間動揺を隠せなかった。

そしていつのまにかボクは返事をしていた。

「はい。」

と。

「そう・・じゃああなたに話しても大丈夫ね・・・。あのね・・・」

部長が喋りかけようとしたそのとき

部室からすごい音が聞こえた。

ガッッシャーーン!!

・・!これはガラスが割れた音だ。

ボクはその瞬間とっさに部室のほうへ走っていた。

「落ち着いて!志穂ちゃん!!」

「いやぁっ!そんなのウソよ!ウソよ!ウソよーーーっ!」

志穂と森崎先生の声が聞こえてくる。

「志穂ちゃん!これは信じたくないかもしれないけど事実なの!

あなたはこのことを理解してまたカウンセリングしなければいつか大変な事が起きるわ!!!」

「いや・・・そんなの・・信じない!信じないっ!!」

ボクはようやく部室の前までたどり着き、ドアをあけようとしたその瞬間

森崎先生と志穂の信じられないような会話が交わされているのを聞いた。

「あの事件は終わったわけではないわ!!美月ちゃんはまだ生きているもの!!

あなたの心の中に・・・そして、あなたに復讐するまでは・・・・!!」

「信じない!私はお姉ちゃんなんて知らないもの!!

それにお姉ちゃんはもういないんでしょ!?私、お姉ちゃんがいたことさえ覚えてない!!

・・・死んだっていう事も・・・!!
 
私・・・・今の幸せを失いたくない!!!」

え―――・・・?

美月さんが・・・・生きている・・・?

志穂が復讐される?

ボクが訳が分からないままいろいろなことをを考え込んでいた瞬間、

ドアが勢いよく開いて涙で頬をぬらした志穂が飛び出していった。

「志・・・・」

ボクが志穂を追いかけようと思った時、森崎先生が部室から出てきた。

「今は・・・そっとしておいてあげて・・・・

志穂ちゃん・・・きっとあそこに行っているから・・・・。」

「・・・・あそこ・・?」

「・・・・・・美月ちゃんの・・・・お墓よ・・・。」

ボクはさっぱり意味が分からなかった。

そしてそこに部長が来た。

「あんた・・・聞いたの?」

「??何をですか・・・??」

部長と先生は目を合わせボクのほうを真剣な目で見た。

「これから・・・何を聞いても・・志穂ちゃんを恨んだり憎んだりしないでね・
・。」

森崎先生がそういってボクに話をしようと病院まで連れて行こうとした。

「あのっ・・部長はどうするんですか??」

部長は驚いたような顔をしてこういった。

「私のことは気にしないで・・・行ってきなさい。」


ボクはこのとき新しく始まる大きなドラマがまだ、見えていなかった・・・・。



「失わなくてはいけない記憶」・中編に続く・・・。
 
 








あとがき-咲良-
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