ハァ・・・・ハァ・・
ボクはやっとの思いで美月さんの墓苑まで来た。
・・・・こんな時間なのに人が居る・・・
・・・あれは、志穂じゃないか!
やっぱり森崎先生の言うとおりここにいたんだ・・・・
「志・・・・」
よく見ると志穂は美月さんのお墓に肩を寄せている。
それに・・・眠ってるみたいだ。そしてボクは小声でこう言った。
「志穂・・・君のことはボクが守るから・・・今は・・休んでいいから・・・」
ボクがそう言うとほんの少しだけ、志穂がうなずいた気がした。
そしてボクはこの子を守り続けることを決めた・・・・
DoubleCastSS
「失わなくてはいけない記憶」・後編
ボク達はとりあえず家に帰ることにした。
・・と、言っても志穂はまだぐっすり眠ってるからボクがおんぶしてるんだけど・・・
そして、あと家まで5分というところで消防車のサイレンらしきものが聞こえた。
ウーウー・・・
・・そういえば最近ここら辺って火事が多いな・・・
しかも放火っていうウワサもあるし・・・・・・・あれ?
今の消防車が向かった所って・・・ボクのマンションの近くじゃないか・・?
そこに丁度お隣の村山さんが血相を変えてボクのほうに走ってきた。
「お、お隣さん!うちのマンションが・・・う、うちのマンションが!!!」
・・・・ふと上を見上げると丁度ボクのマンションが見えた。
・・・・赤い色になった、ボクたちのマンションが・・・・
「・・・・志穂。ボクたち・・・運が良かったんだよ。絶対に家に居たら逃げ遅れてたからね・・」
似合いもしない強がりを寝ている志穂に語り掛けると、
寝ているはず志穂の眼から涙が一粒、こぼれ落ちてきた。
そしてボクの眼からも・・・・
「あら、どうしたの?こんな時間に。」
ボクは火事の事を叔父さんに連絡し、いざこざをまとめてもらうことにした。
・・それに、泊まるところもないので部長の家に泊まらせてもらえるようお願いをしに来たのだった。
「ふぅん・・・そういうことね・・・」
「あ、あの!アタシからも・・・お願いします!!」
志穂もボクと一緒に頭を下げてお願いした。
「・・・・・・まぁ、いいわ。とりあえず泊めてあげる。」
・・・予想外だった。部長が志穂だけならまだしもボクまで
泊めてくれるなんて・・・
「でもごめんなさい、志穂ちゃん。あなたは泊められないわ・・」
!!?な、なんで??!
そう部長がいうと少し志穂は驚いたが、すぐ笑顔を造ってこう言った。
「え・・・・?は、はい・・ご、ごめんなさい・・・む、無理なこといっちゃって・・・あは・・」
志穂が涙を眼に溜めているのはすぐわかった。でもなんで・・・
「あの・・頼んどいて何なんですけどなんで・・なんで志穂だけダメなんですか・・?」
「・・・・ごめんなさい。でも志穂ちゃんは私の家なんかより行くべきところがあるでしょう?」
「・・・・!!それって・・・・アタシに病院に行けって言うことですか!!?」
「・・・・・・・・」
部長は黙って眼をつむった。
「部長!!!!酷いですよ!確かにボク達は頼んでるほうですから
断られても仕方ないですけど・・・でも、何で志穂だけ・・?」
パン
ボクがそう言うとボクの目の前に鋭い部長の平手が飛びかった。
「・・見損なったわ・・・あなた、志穂ちゃんのこと考えてない・・・
志穂ちゃんの事を考えているなら・・・ここなんかにこないはずよ・・・?
・・・・・・・帰って。」
「え・・・?」
「・・・・帰って!いいから早く帰ってよ!」
そう言うと部長はドアをきつく閉めた。
「・・・・部長さん・・・・・・」
「・・え?・・・何・・・?」
「部長さん・・・・・・・・・泣いてた・・・・・。」
!・・・・・・ボクが何をしたって言うんだ・・・・?
志穂のことなら考えてる・・・僕なりに考えてきたのに・・?
・・・・・だけど・・ボクは部長の言うとおり・・・
「志穂。」
「え・・?なぁに?」
「君はそこのホテルに泊まるんだ。」
ボクはそう言って目の前にあったホテル「BLOOD」を指差した。
「・・・!!・・あなたもアタシの前からいなくなるの・・?・・イヤ!
もう一人になりたくない!あなたと離れたくない!」
そういいながら抱きついてきた志穂をボクは引き離し、こう言った。
「それなら志穂は病院に行くんだ。森崎先生の所に・・・
志穂・・キミも聞いたんだろう?キミと美月さんとの本当の・・・」
「やめて!!」
ボクが話している途中に突然志保がボクを突き飛ばした。
「アタシ・・・・もう一人はイヤなの・・・それに、アタシはもう志穂のことなんて・・・」
「!・・・志穂のこと・・・?」
「・・・・・E!」
そうボクが言うと志穂は急に後ろを向いてしまった。
・・いや、志穂じゃない・・・今はきっと・・・
「美月さん・・・・美月さん・・・ですよね?」
ボクがそう言っても彼女は後ろを向いたままだ。
「・・それならそのまま聞いてください・・・
あの、美月さんは志穂さんと血がつながっていない事・・・知ってるんですよね?」
「・・・・・・・・」
まだ美月さんはまだ後ろを向いたままだ・・・。
「まだ・・志穂のことを恨んでるんですか・・?それに・・なんで・・・?」
ぼくがそう言うと美月さんは顔を上に向けてこう言った。
「・・・・・・アタシは・・・志穂に全てを奪われた・・・人を信じる心さえも・・・
でも・・・・・アタシは・・」
「・・・・・・。」
そうすると美月振り返って僕の目を見た。
「でも・・・。アタシは時がたつにつれ、憎しみも薄れていった・・・
志穂を憎んでも何も変わらないもの・・・それに・・・
それに・・あなたは志穂を愛しているわ・・・
同じ体でも・・志穂の中のアタシじゃなくて・・・本当の『赤坂志穂』に・・・」
「・・・・?それって・・・?!」
「・・・黙って・・・それ以上は言わないで・・・分かるから・・・あなたの考えてる事・・・
フフ・・・アタシって・・バカな女よね・・せっかく志穂が私のことを忘れたのに・・・
・・アタシの強い嫉妬でまた志穂の体を・・・っっ・・」
・・・美月さんが泣いている・・・
「・・・・もうアタシ、志穂のことは恨んでないわ・・・あなたのことも・・
だけど・・・一年前、アタシと・・いえ、志穂とあなたが一緒に暮らしてた時・・
アタシ・・・・本当は・・あなたのことが・・・」
・・・・・美月さんはボクのことェ・・・?
「・・・・美月さん、ボクは・・・」
ぼくがそう言い掛けた時美月さんは、また後ろを向いてしまった。
そうすると彼女は少し手で涙を拭った。
「・・・さっ、帰ろう!私達なにしてたんだっけ?」
振り向きざまに彼女がそういった。
・・・今の彼女はどっちの『赤坂志穂』なんだろう・・・・
美月さんの「志穂」の演技なんだろうか?
それとも・・本当の「志穂」なんだろうか・・?
「・・・・・・・・」
「どうしたの??なんか元気ないぞ?さっ、早く帰ろうよ!」
そう言うと彼女は駆け出して行った。
「・・・・!!志穂っ!!危ない!!!!!」
「え・・・っ?」
ドンッ
その瞬間ボクの頭の中は真っ白になった。
「キャアァーーーッ!」
「た、大変だ!!女の子が車に轢かれたぞ!?」
「きゅ、救急車ー!だ、だれか救急車を呼んでくれー!!」
僕の足からどんどん力が抜けていく。
そして彼女は南西総合病院に運び込まれて行った・・・
「忘れなくてはいけない記憶」・エピローグにつづく・・・・