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ボクは部長と別れたあと、先生の車で病院に行って話を聞くことになった。
 
「・・・・・・・。」
 
「・・・・・・?」
 
森崎先生はさっきから一言も喋っていない。
 
なにか・・思いつめたような・・誰かを哀れんだような顔をして・・・
 
キッ。
 
車が少し揺れて病院の前で止まった。
 
「さぁ、着いたわ。・・行きましょう。」
 
Double Cast SS
「失なくてはいけない記憶」・中
 
そして、病院の中に入るとボクは森崎先生のあとを黙ってついていった。
 
「ここよ。入って。」
 
その部屋の表札には[集中カウンセリング室1]
 
と、書かれている。
 
ボクは置いてあったいすに静かに座った。
 
・・・・・。この部屋にボクは見覚えがあるような気がしたが
 
とりあえず今は森崎先生の話を聞くことにした。
 
「あの、さっき・・・聞いてしまったんですけど
 
美月さんが生きてるって・・・それに、
 
志穂が復讐されるって・・・どういうことですか?」
 
「・・・・それはこれを見たら分かるわ。
 
詳しいことはコレを見終わってから、教えるわ。
 
だから今は・・・お願い。私の言うことを聞いて・・・。」
 
森崎先生はいつもにも増して真剣な顔をしてボクにいった。
 
そして、ボクは黙ってうなずいた。
 
「そう・・ありがとう。貴方の気持ちも分かるわ・・・
 
自分の好きな人の事だものね・・・」
 
ボクはなぜか照れてしまった。
 
森崎先生の言葉はなぜか心に響いてくる・・・
 
やっぱりカウンセラーだからかな・・??
 
「・・・さぁ、本題はここからよ。これを見て。」
 
森崎先生はそこにあった一台のビデオデッキに向かって
 
リモコンで再生ボタンを押した。
 
・・・・!!これは・・・
 
「・・あなたなら分かるわよね?
 
そう・・これは美月ちゃん、
 
・・・いえ志穂ちゃんのカウンセリングビデオよ・・・」
 
そうだ・・これはあの時見た志穂のカウンセリングの・・・
 
よく見たらこの部屋もこのビデオで
 
志穂がカウンセリングを受けてる部屋じゃないか・・。
 
「あなたはあの時、ここら辺まで見たのね・・・?
 
・・・ここからの映像は私と担当の先生しか見たことないわ。
 
でも、あなたは・・・見てくれない?」
 
そう言うと森崎先生はリモコンを持って早送りを押した。
 
「・・ここよ。ちょうど、美月ちゃんが喋り終わって・・・30分後よ。」
 
「・・・赤坂さん?赤坂志穂さん?どうかしましたか?」
 
そうすると狂気と憎しみに溢れた強い声がすぐ聞こえた。
 
「違う!私は志穂じゃない!赤坂美月よ!
 
・・ったくみんなバカみたいに志穂、志穂って・・・・
 
志穂の記憶は私が消したって言うのに・・・
 
フフッ、バカな子・・・・・・なーんも知らないで・・・・
 
私のこと本当のお姉ちゃんだと思ってさ・・・」
 
!!?本当のお姉ちゃんだと思って・・!?
 
「私は志穂を妹だと思ったことなんて一回もなかったのに・・・
 
あの子、記憶をなくしてそのことも忘れちゃって!!」
 
森崎先生は目をつむってじっと美月さんの話を聞いている。
 
「フフフ・・・・・アハハハ!アハハハハッ!!」
 
美月さんの笑い声はなぜか寂しく聞こえた。
 
「・・ここにいる人たちは・・・勘違いしてるようだけど、
 
私は志穂のことが好きだから身体的虐待をしたんじゃないわよ?
 
ウフフッ・・・私って女優になれたかもしれないわね・・
 
だってここら辺のみーんな騙せたんだもん!アハハッ!」
 
ボクは自分の首筋にひんやりとした汗が流れるのがわかった。
 
「フフ・・でも・・せっかくさっき演技したのに・・・話しちゃった。
 
でも!!みんな男なんて一緒よ・・現にそこにいるカウンセラーも
 
志穂が付き合ってた佐久間とか言う男もね・・・」
 
・・・みーんな志穂の事ばっかり・・・私の存在意義ってあるの・・?
 
死んでも志穂の心の中にいて・・・フフッ。
 
でももう大丈夫・・・志穂・・私が消えるときはあなたも一緒よ・・?
 
ねっ?志穂・・。」
 
そう言うと美月さんは固定してあったビデオを取り外し、
 
床にたたきつけた・・・
 
あとには、ただ美月さんの狂気に満ちた笑い声だけが聞こえてきた。
 
そして、そこで志穂のカウンセリングビデオは終わっていた。
 
「・・・私の勘違いだったの・・・」
 
「え?」
 
「私はそのとき志穂ちゃんの担当じゃなかったわ・・・
 
カウンセリングしてる患者のことは外部に話してはいけない・・・
 
たとえ同じ病院の医者同士でもね・・・」
 
「・・・それは、どういうことなんですか・・?」
 
そうボクが言うとふいっと先生は顔を横に向かせてこう言った。
 
「あなたもこのビデオを見たのだから分かったわよね?
 
志穂ちゃんと美月ちゃんの本当の関係・・・
 
そう、あの2人は血がつながっていないわ。
 
もっとも、志穂ちゃんは美月ちゃんの死、
 
そして美月ちゃんによる肉体的虐待によって
 
記憶を無くして・・そのことも同時に
 
忘れてしまったようだけどね・・・」
 
・・・美月さんと志穂が血がつながっていない・・?
 
っていうことは、美月さんは志穂の事を愛していなかったのか?
 
憎しみだけで志穂の事を・・・・?
 
「あなたに言わなきゃいけないことはまだあるわ。
 
だからそれを今から聞いてちょうだい・・・。」
 
森崎先生がそう言うと同時に6時を知らせるサイレンが鳴り響いた。
 
「・・・!これは・・!?」
 
森崎先生は自分の腕にある腕時計を慌てて見た。
 
「・・・!!あなた!今すぐ美月ちゃんのお墓に行って!早く!」
 
森崎先生の異様なほど真剣な顔にボクは驚き、
 
何も答えずに美月さんのお墓へと向かった・・・――――。
 
Double Cast SS
「失わなくてはいけない記憶」・後編につづく・・・
 








あとがき-咲良-
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