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ダブルキャスト

           GOODEND1 「ダブルキャスト」〜エピローグ〜

 

作者・葉月

僕は、泣いた。

そして、僕は強く志穂の体を抱きしめた。

 

すると、目覚めていないと思っていた志穂が、僕を同じように抱きしめてきた。

 

“本当の志穂”が、今、まさに目覚めたのだ。

そして、志穂も泣いていた。

 

「・・・・ごめんね・・・」「・・・・志穂・・・・・・僕は・・僕は・・美月さんを・・、ひきとめ・・られなかった・・ごめん・・」「・・・ううん・・いいの・・いいんだよ・・お姉ちゃんが、私達を・・認めてくれたんだよ・・。

私達の背中を押してくれたんだよ・・それに・・私だって・・私だって・・お姉ちゃんを・・ひきとめ・・られなかったんだよ・・・っ」「・・・・志穂・・」

 

僕達はお互いを見つめあった。

きっと、僕の顔はとてもひどいものだったと思う。

でも、志穂はいやがるふうもなく、僕の目を見つめていた。

 

僕は言った。

 

「・・・・志穂・・おかえり。」「・・・・・うん・・ただいま。」

 

そして、僕達は唇を重ねた。

僕は、美月さんとの約束・・・“志穂を愛し、大切にすること”をあらためて心の中で誓った。

 

僕は、嬉しかった。

僕は、悲しかった。

もう色々な感情が混ざり合って、僕達は朝までベランダで泣きつづけていた。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・志穂・・起きて・・」「・・・・うん。」

 

僕は先に立ち上がり、志穂の手をひいた。

あれは、絶対に夢じゃない。

 

「・・・朝・・来ちゃったんだね・・。」「・・・・・うん・・永遠の夜は、ないからね・・」

 

志穂が言った意味とは違う言葉を、僕はわざと言った。

 

「・・・顔、変じゃない?」

 

志穂が、気付いたように言ってきた。

・・言ってしまうと、目が真っ赤に腫れており、少しひどかった。

 

「・・うん、ちょっとひどいかな。」「・・・ふふふ。君も、結構ひどい顔だよ。」

 

志穂が笑った。

 

夜が、明けたのだ。

長い長い、永遠に続くと思っていた夜が。

永遠に続いて欲しかった夜が。

 

永遠の夜はない。

必ず朝は来る。

けれども、ちゃんと朝が終われば夜が来る。

そこで、僕らはいつでも会えるのだ。

“美しい月”に―――――――・・・。

 

 

「・・・・志穂、僕、たくさん泣いたらお腹減っちゃったんだけど・・」「はいはい。もう、そういうところは全然変わってないんだから。確か、昨日つくったカレーがあるんだよね?顔洗っておいでよ。

その間に、あっためてあげるから。」「うん、じゃあ顔洗ってきます。」

 

洗面所に行き、鏡を見ると、「やっぱり」という感じだった。

志穂の何倍も、ひどい顔だった。

これで、よく志穂は笑わなかったなぁ、と思う。

 

冷たい水で顔を洗うと、だんだん本当に目が覚めてくる。

 

きっと、これからも僕と志穂は変わらないと思う。

“昨日までの志穂”も、“今日からの志穂”も、きっと変わらない。

僕が愛することにも、大切に思う事にも、代わりはない。

 

「んーっ、やっぱり一晩おくと更に味がおいしい。」「そうだね・・私もお腹減っちゃったよ。じゃ、私もいただきまーす。」

 

カレーをまたたくまに食べ終わると、僕は志穂に言った。

 

「・・志穂、よかったらさ、あの・・森崎先生に、この事・・話に行かないか?」「え?」「へ?」「・・なんで・それ・・」「へ?へ?」「私も、今それ言おうと思ってたの・・!」「え!本当?」「うん・・びっくりしちゃった。」

 

僕達は、笑いあった。

そして、腫れた目のままで、南西総合病院へと向かった。

 

 

 

・・・・・・驚いた事。

森崎先生は、既にすべてを、一番先に知っていたこと。

なぜかというと、昨日、美月さんが1人で帰ったのは、この事を話しに、この南西総合病院に寄るためだったということ。

 

そのことを知ると、志穂はぷぅっとふくらんでみせた。

 

「・・お姉ちゃんってば・・・・」「ふふふふ。志穂ちゃんは、あいかわらず可愛いわね。私もね、最初ずっと志穂ちゃんだと思ってたの。だって、本当に美月ちゃんってば演技が上手いんだもの・・。」

「“女は生まれながらにして、演じる自分が中に存在しているのよ”・・・だっけ?」「あ!言われた!!」

 

 

 

 

帰ってから、僕達は昨日、美月さんが買った、“願い事が叶う箱”を開けてみた。

すると、中に既に、四つ折の小さい紙が入っている。

 

僕達は、びっくりしてその紙を開いた。

 

“志穂ちゃんと、志穂ちゃんのいちばん大切な人が、いつまでも幸せでいられますように・・・・ 美月”。

紙には、そう書いてあった。

 

「・・・この箱ね。お姉ちゃんと私が、前一度買ったの。でも・・私が最後に入れた願い事は、叶わなかったな・・」「・・あぁ、佐久間さんとのあれね。“今一番大切な人と、ずっと一緒に、ずっと愛し合っていけますように”ってヤツ?」「は?」

 

志穂が、目を見開いた。

 

「なにそれ・・確かに私はそう書いたけど・・なんで佐久間さんのことなの?」「だってそうだろ?そのとき、志穂は佐久間さんとつきあってたみたいだし・・」「えぇ!?どうしてそうなってるの!?

私、佐久間さんとは一回もつきあったことないよ!?」「え?」「あれはね、よく説明書みたいな紙読んだら、あれは“未来の願い事”を書くやつだったから・・書き直したんだよ。それは、お姉ちゃんも最後にはわかったみたいで・・言ってなかった?」「・・・言われてない・・。」

 

僕は、昨日のそのところを話す美月さんの顔が、苦笑いだったことを思い出した。

・・・・・・・。

 

「・・あっはっはっはっはっ!」「ちょっと!なに笑ってるのよ!」「あーあ・・美月さんってば・・」「・・・・・・・」

 

そういって志穂の方を向くと、志穂がスネていた。

 

「・・・・ぶー。」「こら、志穂なにスネてんの。」「・・もうっ、知らないっ!」「あはは、ごめんごめん。じゃあ、僕達も書こうよ。」

 

「“未来の願い事”を」

 

 

 

 

“赤坂志穂”が、“赤坂美月”を演じた。

そして、“赤坂美月”が、“赤坂志穂”を演じた。

 

それが、きっとこの“ダブルキャスト”の物語だと思う。

“ダブルキャスト”=“二役”。

 

これからも、僕達は優しい、大切な未来を創っていく。

                                                                                                          END

あとがき-葉月-

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