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イメージの入出力と伝搬が可能
彼女たちは舌にあるインタフェースを通してイメージ(感じ、フィーリング)を入出力することが可能である。人間の場合は確かに脳と舌の神経とはけっこう太くつながっているようなので、ひょっとかすると脳内のイメージ情報を舌から取り出すことができるかもしれない。また、このインタフェースは彼女たちが生まれる以前からあったものなので、開発者達がこれを彼女たちの直接コネクトの外部インタフェースとして採用したのもうなずける。さらに入力も可能にしようと思ったとしても不思議ではない。
で、実際の機構だがあの球っころに舌を押しあてたところで大した接触面積は得られない。入出力する情報はけっこうな量になるはずだし、あらかじめ入出力端子を密集して配しておける彼女たちと違って、人間もサポートしなければならない。ということは実際の入出力はあの球と直接やりとりするわけではなく、球と舌全体の間を行き来する何らかの媒体を通して行うと思われる★1。その媒体の候補としてナノマシンとバクテリオビットがあるが、バクテリオビットは人間に有害かもしれないしずいぶん大きいので、ここはナノマシンを採用したほうがいいだろう。これなら直接脳まで行けるし、深いところでシンクロ★2することもできるだろう。
★1実際、アルファさんは最初くわえただけで舌を押しあてるようには言われていない。
★2第38話「海の河」
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では次にイメージの蓄積と伝搬について。ようするにオーナーのプレゼントのカメラと、ココネのお仕事である。
イメージは蓄積することができる。これは前述のカメラや先生が鶚でカッ飛んだときの記録装置から明らかだが、これらの性能・機能には条件を付けなければならない。もしこれらが万能ならばココネのハズいシーンが見れなくなるココネがハズい思いを押して例のお仕事してる理由が見つからないからだ(笑)。ではどんな条件だろうか。カメラに限って言えば記録精度や質、記録内容は抜群にいいことがわかっている★3。これほどのカメラでも伝搬には使用できないとなると理由はひとつしか見つからない。すなわち「記録されたデータは個体専用であり、本人でしか高精度で利用できない」である。で、他人が使用した場合は単なる写真やワープロで打った文字に感じるのではないかと思う。専用にせずに、客観的なデータを客観的なまま記録しようとすると莫大なデータ量になるのだろう。そうそう、あのカメラの場合は最初または最後に球をくわえた者の記憶構造をまねて記録するようにできているのだとしておこう。
こういう条件を付けると、「ジカ」はよほど精度がいいような気がするが、私はこう考えている。ロボット同士の場合では、記録装置を用いた場合には損なわれてしまう「感じ」も伝えられるのではないか、と。手順はこうだ。
- 依頼主は営業所でココネ用の記録装置に、伝えたい内容を記録する。
- 記録装置は入力されたデータをココネ用のデータとして記録する。このとき不可逆変換が行われる。
- 記録装置を受け取ったココネは(無意識下で)内容を自分なりの記憶に置き換える。
- 宛先の相手とインタフェースを合わせる。
- お互いのインタフェースを通してデータと構造の情報がやりとりされ、相手は自分なりの記憶に置き換える。
1.,2.は直接依頼主と会うことができれば不要な処置だが、ココネがいつも居るとは限らないし世田谷支店以外でも受け付けられるように記録装置を用いることにした。前述のように記録装置は客観→主観の変換しかできないが、あらかじめココネ用の設定がしてあるためロスはない。 3.がミソで、データはココネ自身が、自分が感じたように記憶するのである。決してカメラの記録ピースのようなものが彼女の頭の中にあるのではない。 4.5.で言いたいのは、ジカに接する場合は主観→主観の変換が可能なことである。直接接触しているのだからお互いのナノマシンの交換も可能だろうしね。
この考えに従うならば、伝達すべきデータが一旦担当者の感じ方に変換されるため、丸子が言うようなうまい人・へたな人の差ができる事の説明ができる。なお、担当者(ココネ)が自分の記憶でありながら内容を知ることができないのは、前にも書いたように暗示である。この場合はココネが自分の意志で行っているから無意識レベルへのアクセスも許可されるのだろう。
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