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人格形成への後天的要因の影響大
先生の「本来のスペックからは説明できない」発言から導かれる事項であり、これは彼女たちが、開発者たちの想定を超える「成長」をとげているということである。
彼女たちは社会に出る前に研修所なるところへ行ってなにがしかの事を学ぶようである★1。ココネはその際に自分の名前を決定しているし、まったくの無知では研修を受けることもできない。よってロールアウトしたとき既にある程度の知識をもっているはずである。例えば言語は一般生活に困らない程度には習得しているだろうし、社会規範なんかも知っていないと言語の使用に支障をきたすだろう。
そしてこの「デフォルト」に研修による成果を加えたものが彼女たちの基本となる知識と知恵である。
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★1 | おそらくM3のみ。M1,M2は機体数からいってマンツーマン以上の教育体制だったと思われる。そしてこの教育にオーナーは関係していたのではないかと、そしてアルファさんの重大な後天的要因になったのではないかと考えている(もちろん憶測ね)。 |
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では、どのような研修が行われたのだろうか。
ここで問題になるのが開発者たちがどのような目的に立って研修を行ったかということだが、彼女たちの成長を予測できなかった彼らはやはり人間を中心としたカリキュラムを組んだに違いない★2。
となると、研修の主眼は「人間とのつきあい方」におかれたはずである。また、その際の生活も他の研修生たちとの寮生活のようなものになっただろう。ということは彼女たちがこの研修で身につける知恵は「自分+他人」の環境で有効に活用されるものがほとんどになってしまう。
そう、だから先生は驚いていたのだ。「ひとりを楽しむことができる」アルファさんを。
★2老化の件以来、開発者たちには懐疑的になっている私...。
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「ひとりを楽しむことができる」ことをあなどってはいけない。
「みんなで楽しむこと」は、たいていの者ができるだろう。彼女たちの研修と同様に、成長過程で他人とのあり方をじゅうぶんに学習してきたはずだし、人間は社会性のある動物だから一人でいることを嫌うからだ。
では「ひとりで楽しむこと」はというと、実は結構簡単だったりする。2種類あるが、ひとつは、よく小さな子が飛行機のおもちゃを持って「ぎゅーん」「だだだだだ」「どかーん」とか言ってやってるあれである。つまり自分の中や周囲に架空の相手を見出すもので、ドライブや読書もこれにあたる。もうひとつはクリエイティブな活動である。これにはアルファさんの彫刻や家の掃除なんてものがあてはまる。
では先生は何に驚いているのか。
アルファさんはこう言っている、「にぎやかな時も ひとりの時も みんな好き」と★3。
これは実はすごいことである。なぜなら、ホントにこう言えるためには「自分を確立★4」していなければならないからだ。そうでなければ、どちらかしか楽しむことはできない。
このことに先生は驚いているのである。それは予想を越えるココロの成長だから。そしてこう言うのだ「アルファさんはもう自分の道を歩いている」と。
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★3 | 第1話「鋼の香る夜」 |
★4 | 言葉で書くと簡単だけど、「自分の確立」ってのはめっぽうタイヘンで文章にできないくらいだが(笑)、キーワードは「一番いい自分」である。 |
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ところで、先生の発言はアルファさんに対してのものだが、他のA7たちに関してはどうだろうか。まだ自分がロボットであることを気にしていたころのココネは、休みの日には何をしていたんだろうとか悩んでしまうほどだったけど、彼女だって成長するのだ。それはあなたも知っていますよね。
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