差止損害賠償請求事件、差止仮処分請求事件

東京高等裁判所第4民事部平成17年(ネオ)第183号事件、平成17年(ネ受)第192号事件

上告人兼上告受理申立人(債権者)  株式会社日本経済研究所

           山口節生不動産鑑定士事務所こと山口節生 

被上告人兼被上告受理申立人(債務者)  社団法人埼玉県不動産鑑定士協会

上告申立及び上告受理申立の理由(1)

                           平成17年5月6日

最高裁判所 御 中

            上告人兼上告受理申立人(債権者)

                    株式会社 日本経済研究所

                    代表取締役 山口 節生

上告人兼上告受理申立人(債権者)

山口節生不動産鑑定士事務所

 

1 総論

1 差止請求が認められるべきこと

(1)被上告人(債務者)の上告人(債権者)日本経済研究所に対する入会拒否、高額な入会金徴収、資料閲覧・業務補助者証明書交付の被上告人(債務者)会員との差別の差止めが認められるべきこと

上告人(債権者)が、埼玉県内には被上告人(債務者)に代わる不動産鑑定業者の組織は他になく、埼玉県下における鑑定評価業務受託につき、被上告人(債務者)が、公的機関、民間等の依頼の鑑定業務評価員の委嘱について、被上告人(債務者)会員その他被上告人(債務者)の関係者等(以下「被上告人(債務者)会員等」という。)を推薦もしくは斡旋するなどし、被上告人(債務者)会員等が市場を独占する状況になっている。

   上記状況下においては、不動産鑑定業者が埼玉県で業者登録をしても、被上告人(債務者)に入会しない場合には、埼玉県内で公的機関、民間等からの依頼の上記委嘱もしくは斡旋は殆ど受けられず、不動産鑑定業者として事業を行うことは事実上困難である。

 しかし、被上告人(債務者)は、上告人(債権者)山口不動産鑑定所こと山口節生(以下「上告人(債権者)山口」という。)が平成11年9月7日になした入会申込を拒否したうえ、上告人(債権者)有限会社日本経済研究所(以下「上告人(債権者)日本経済研究所」という。)が平成13年1月19日になした被上告人(債務者)への入会申込に対して約3年もの間何ら通知もしないで事実上拒否している。

また、被上告人(債務者)は、入会金を5万円から80万円へ16倍もの値上げを実施し、被上告人(債務者)への新規参入者の入会をあからさまに妨害している。

そして、不動産鑑定業務上必要不可欠な事例資料の閲覧、業務補助者証明書交付について、被上告人(債務者)の会員と非会員との間で、著しく差別している。

被上告人(債務者)に加入しなければ埼玉県下で不動産鑑定業務を行うことが困難な状況における上記被上告人(債務者)の行為は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)8条1項5号及び19条の不公正な取引方法(一般指定1項正当な理由なき間接の取引拒絶(共同のボイコット)、一般指定1項正当な理由なき直接の取引拒絶(共同のボイコット)、一般指定3項差別的対価)に該当し、これらの行為を取りやめなければ、上告人(債権者)は、埼玉県下の市場から排除され、著しい損害を生じ及び将来も生ずるおそれ等があるので、独占禁止法24条に基づき、被上告人(債務者)の上記行為の差し止めが認められるべきは明らかである。

(2)被上告人(債務者)の固定資産鑑定評価員の推薦、公共事業用地等についての不動産鑑定報酬の固定及び鑑定評価員の推薦、路線価価格鑑定評価員の推薦等の差止めが認められるべきこと

  被上告人(債務者)が、市町村等公的機関等に対し、被上告人(債務者)会員等を、固定資産鑑定評価員、路線価価格鑑定評価員、公共事業用地等についての鑑定評価員等を推薦、斡旋する上記行為は、被上告人(債務者)の構成事業者と競争関係にある、上告人(債権者)と市町村等との取引を排除しており、独占禁止法8条1項5号及び19条の不公正な取引方法(一般指定1項正当な理由なき取引拒絶(共同のボイコット))に該当するので、同法24条により、被上告人(債務者)の同行為の差し止めが認められるべきは明らかである。

2 損害賠償請求が認められるべきこと

   また、被上告人(債務者)の、上告人(債権者)に対する上記入会拒否、固定資産鑑定評価員等の推薦もしくは斡旋等は、上記のとおり独占禁止法に違反するものであるので、上告人(債権者)が被上告人(債務者)の上記不法行為により被った、請求の趣旨で主張する逸失利益等の損害賠償請求が認められるべきである。

 3 以下、詳述する。

第2 被上告人(債務者)に加入しなければ埼玉県下において上告人(債権者)が不動産鑑定事業を行うことが困難な状況であること

 1 被上告人(債務者)の団体の性格等 

 (1)被上告人(債務者)が独占禁止法2条2項「事業者団体」及び同法2条1項の「事業者」に当たること

  @ 被上告人(債務者)は、埼玉県内における唯一の不動産鑑定業者の事業者団体で(甲第3号証)、不動産の鑑定評価に関する法律第52条に基づき、埼玉県知事に届出がなされ、平成7年3月30日に設立された団体であり(甲第92号証)、独占禁止法2条2項の「事業者団体」に当たる。

A また、被上告人(債務者)は、定款に、事業として、市町村その他の公共団体及び諸団体等に対する協力及び受託事業を掲げており(甲第12号証)、また、第12回通常総会議案書における平成13年度事業計画にも、「(5)受託事業 ア.市町村に対し受託事業を実施する。イ.県に対し事業の受託に努める。」としており(甲第13号証)、同法2条1項の「事業者」に当たる。

    この点、被上告人(債務者)は、事業者でないと主張するようであるが、最判平元8.12.14で、国や公共団体も経済活動を行う限り、「事業者」にあたるとされていることからも、上記受託事業を行う被上告人(債務者)が「事業者」に当たることは明らかである。

 (2)埼玉県登録業者がほぼ100%被上告人(債務者)に入会していること

    そして、埼玉県に登録して営業を行おうとする不動産鑑定業者は、ほぼ100%被上告人(債務者)に入会している。(甲第7ないし9号証、44号証の1の1ないし3、78、90、91号証)

 (3)被上告人(債務者)が日本不動産鑑定協会、関東甲信会と組織的、人的に密接な関係にあること

@被上告人(債務者)の前身が日本不動産鑑定協会の地方部会であったこと

  被上告人(債務者)は、その前身は、「社団法人日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会」(以下「日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会」という。)であり、社団法人日本不動産鑑定協会(以下「日本不動産鑑定協会」という。)の地方部会であったところ、平成7年3月30日に組織変更したものである。(甲第15、17号証)

A被上告人(債務者)会長退任後は日本不動産鑑定協会理事就任が通例であること

 そして、被上告人(債務者)は、現在も、日本不動産鑑定協会及び社団法人日本不動産鑑協会関東甲信会(以下「関東甲信会」という。)と、組織的、人的に、非常に密接な関係にあり、日本不動産鑑定協会に理事候補者やカウンセラー委員等を推薦し(甲第96号証5頁、甲第95号証9頁)、被上告人(債務者)の会長退任後は、日本不動産鑑定協会の理事になるのが通例となっている。

赤熊正保証人は、平成10年4月から平成12年の3月まで被上告人(債務者)の会長をしていた頃、社団法人日本不動産鑑定協会の地価調査委員会の委員をしており、関東甲信会にも被上告人(債務者)会長として幹事会に出席していた。

被上告人(債務者)会長退任後は、被上告人(債務者)の顧問を現在までしているほか、通例とおり、日本不動産鑑定協会の理事を平成13年6月25日から平成15年6月24日まで2年間行い、企画委員会の委員もしている。(同証人尋問調書3−2ないし3−3、甲第93号証)

平成12年4月から平成14年3月まで被上告人(債務者)会長を務めた高橋正光も、平成15年6月25日に日本不動産鑑定協会理事に就任している。(甲第93、94号証)

  B被上告人(債務者)と関東甲信会も組織的、人的に密接な関係であること

また、関東甲信会は、上記のとおり、被上告人(債務者)の前身組織と同一組織の上部団体であったところ、現在も地域会として被上告人(債務者)の上部団体と位置づけられ、被上告人(債務者)は、関東甲信会の業務推進委員(甲第95号証9頁)、選挙管理委員会(甲第96号証5頁)も推薦するなど、関係が密接である。

 (3)被上告人(債務者)が埼玉県と密接な関係にあること

  @被上告人(債務者)が埼玉県土地利用審査会の委員を推薦していること

   国土利用計画法(昭和49年法律第92号)第39条1項で都道府県に土地資料審査会設置が義務づけられ、同条4項で、同審査会を組織する委員は、土地利用、地価その他の土地に関する事項について優れた経験と知識を有し、公共の福祉に関し公正な判断をすることができる者のうちから、都道府県知事が、都道府県の議会の同意を得て、任命すると定められている。

   同法39条10項に基づき、埼玉県土地利用審査会条例が、埼玉県土地利用審査会の組織及び運営に関し必要な事項を定めている。

    被上告人(債務者)は、このように、埼玉県知事が埼玉県の議会の同意を得て任命する公的機関で、埼玉県の土地利用に関する重要な事項の調査審議等行う、埼玉県土地利用審査会の委員の推薦、選任を行っているもので(甲第95号証5、7頁)、埼玉県とも密接した関係にある。

A被上告人(債務者)の事務局長が埼玉県職員の天下り先であること

    平成14年3月31日に交代した前代の被上告人(債務者)の事務局長佐野長二は、前職は埼玉県庁職員として任用されていた者であり、被上告人(債務者)事務局長は、埼玉県庁職員退職後の天下り先の一つでもある。(甲第59号証)

 2 被上告人(債務者)会員等が埼玉県下鑑定評価業務を独占し、被上告人(債務者)非会員が国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所から全く受託していないこと 

埼玉県内における不動産鑑定評価業務は、東京都等と較べると、民間の会社及び個人からの鑑定依頼は約3割と少なく、国土交通省が発注する地価公示の鑑定評価、埼玉県が発注する用地買収等の鑑定評価並びに地価調査等の鑑定評価、国税庁が発注する路線価価格の鑑定評価、裁判所が発注する最低競売価格の評価及び訴訟・非訴訟上の鑑定評価、市町村が発注する固定資産税の課税標準を定めるための地価調査及び用地買収等の鑑定評価などの公的機関からの鑑定評価の依頼がその業務の約7割もの大部分を占める。

被上告人(債務者)は、上記のとおり、日本不動産鑑定協会及び埼玉県等公的機関と密接な関係にあるところ、公的機関からの鑑定評価員委嘱にあたり、被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)関係者のみを推薦、斡旋しているもので、被上告人(債務者)の会員及び被上告人(債務者)関係者でない者(以下「被上告人(債務者)非会員」という。)は、公的機関から、利益率のよくない地価公示、地価調査以外の受注を全く受けられない状況となっている。

不動産の鑑定評価に関する法律第28条により、埼玉県に業者登録を行っている不動産鑑定士は、毎年1回、埼玉県知事あてに、国土法審査関係、固定資産税・相続税評価(標準宅地・標準地)関係、公共団体からの用地取得のための鑑定評価等につき「事業実績等報告書」を提出することを義務づけられており、その各業者の事業実績をまとめたものが「依頼先別の件数及び報酬」である。

埼玉県下の不動産鑑定業務を被上告人(債務者)会員等がほぼ独占していることは、上記「依頼先別の件数及び報酬」(甲第7ないし9、78号証、)及び「裁判所における競売及び非訟事件のための評価」(甲第31ないし33、79号証)の客観資料で、平成11年から平成14年にわたり、被上告人(債務者)会員等の収入が埼玉県登録業者の全収入のほぼ100パーセントを占めていることから明らかである。

それも、埼玉県登録業者で被上告人(債務者)会員か被上告人(債務者)関係者でない者は、実際に、国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所から全く鑑定業務を受託しておらず、また、民間からの受託も被上告人(債務者)会員等に比して著しく少ない。

なお、地価公示、地価調査は、固定資産鑑定評価、路線価価格評価等と比べ、手間が多くかかる割に利益が少ないため、被上告人(債務者)非会員にも割り当てられているので、「事業実績」として報告を求められず、「依頼先別の件数及び報酬」に含まれていない。

(1)平成11年分

  @被上告人(債務者)会員が埼玉県下における鑑定業務をほぼ独占していること

    「依頼先別の件数及び報酬」(甲第7号証)及び「裁判所における競売及び非訟事件のための評価」(甲第31号証)における、平成11年の埼玉県登録業者のうち被上告人(債務者)非会員9業者(甲第7号証、甲第44号証の1の1)の合計収入は614万1千円で、埼玉県登録業者の合計収入金額28億3809万5千円(山口節生不動産鑑定士事務所が東京都登録時に関して受注した分は除く。)の約0.2パーセントしかなく、被上告人(債務者)会員(埼玉県登録業者の約92パーセント)の収入が約99.8パーセントを占めている。

  そして、平成11年の被上告人(債務者)非会員の平均収入は約60万4千円であったのに対し、被上告人(債務者)会員の平均収入は約2421万円であり、収入の差は著しい。

  A被上告人(債務者)非会員が国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所から全く受注していないこと 

 同年の被上告人(債務者)非会員の上記収入の内訳は、不動産鑑定士坂入策司事務所合計0円、青木不動産鑑定事務所合計0円、三共株式会社(民間法人321万5千円、個人113万4千円)合計434万9千円、高岡不動産鑑定事務所合計0円、石井不動産鑑定事務所合計0円、堀江不動産鑑定事務所(民間法人52万5千円、個人56万7千円)合計109万2千円、染矢不動産鑑定所合計0円、小山不動産鑑定士事務所(個人70万円)合計70万円、山口節生不動産鑑定士事務所(甲第7号証記載のものは東京都登録時に関する受注のみ)合計0円である。

(なお、準備書面(10)では小山不動産鑑定事務所が脱字しているが、同書面の金額等は同事務所分も含めて計算したものである。)

    上記内訳のとおり、埼玉県登録業者の被上告人(債務者)非会員は、国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所からの鑑定評価業務を1件も受注できなかった。

また、民間法人、個人についても、被上告人(債務者)非会員は、被上告人(債務者)会員と比べ、受注件数、金額が、圧倒的に少ない。(甲第7、31号証)

(2)平成12年分

  @被上告人(債務者)会員が埼玉県下における鑑定業務をほぼ独占していること

   「依頼先別の件数及び報酬」(甲第8号証)及び「裁判所における競売及び非訟事件のための評価」(甲第32号証)における、平成12年の埼玉県登録業者のうち被上告人(債務者)非会員8業者(甲第8、44号証の1の2)の合計収入は322万1千円で、埼玉県登録業者の合計収入金額20億4861万3千円の約0.15パーセントしかなく、被上告人(債務者)会員(埼玉県登録業者の約93パーセント)の収入が約99.8パーセントを占めている。

そして、平成12年の被上告人(債務者)非会員の平均収入は約40万3千円であったのに対し、被上告人(債務者)会員の平均収入は約1778万6千円であり、収入の差は著しい。

 A被上告人(債務者)非会員が国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所から全く受託していないこと 

 同年の被上告人(債務者)非会員の上記収入の内訳は、不動産鑑定士坂入策司事務所合計0円、青木不動産鑑定事務所合計0円、三共株式会社(民間法人226万7千円)合計226万7千円、高岡不動産鑑定事務所合計0円、石井不動産鑑定事務所合計0円、堀江不動産鑑定事務所(民間法人15万4千円)合計15万4千円、東京合同鑑定事務所(民間法人80万円)合計80万円 、株式会社エル・シー・アール国土利用研究所合計0円であった。     上記内訳のとおり、埼玉県登録業者の被上告人(債務者)非会員は、国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所からの鑑定評価業務を1件も受注できなかった。

また、民間法人、個人についても、被上告人(債務者)非会員は、被上告人(債務者)会員と比べ、受注件数、金額が、圧倒的に少ない。(甲第8、32号証)

 (3)平成13年分

  @被上告人(債務者)会員等が埼玉県下における鑑定業務をほぼ独占していること

   「依頼先別の件数及び報酬」(甲第9号証)及び「裁判所における競売及び非訟事件のための評価」(甲第33号証)における、平成13年の埼玉県登録業者のうち被上告人(債務者)非会員11業者(甲第9、44号証の1の3)の合計収入は1816万1千円であり、埼玉県登録業者の合計収入金額19億1107万9千円(上告人(債権者)日本経済研究所が東京都登録時に関して受注した分は除く。)の約0.7パーセントしかなく、被上告人(債務者)会員等(埼玉県登録業者のうち約91.5パーセント)の収入が約99.3パーセントを占めている。

そして、平成13年の被上告人(債務者)非会員の平均収入は約122万8千円であったのに対し、被上告人(債務者)会員等の平均収入は約1608万1085円と、収入の差は著しい。

    なお、西原不動産鑑定事務所は、後述のとおり、被上告人(債務者)と関係ある者であるので、被上告人(債務者)非会員から除いた。

 A被上告人(債務者)非会員が国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所から全く受託していないこと 

    同年の被上告人(債務者)非会員の上記収入の内訳は、不動産鑑定士坂入策司事務所合計0円、青木不動産鑑定事務所合計0円、三共株式会社(民間法人879万6千円)合計879万6千円、高岡不動産鑑定事務所(民間法人48万円、個人30万円)合計78円、石井不動産鑑定事務所合計0円、堀江不動産鑑定事務所(個人6万6千円)合計6万6千円、東京合同鑑定事務所(民間法人101万9千円)合計101万9千円 、上告人(債権者)日本経済研究所(甲第9号証記載のものは東京都登録時に関する受注のみ)合計0円、西武不動産販売株式会社(個人285万円)合計285万円、福田不動産鑑定事務所合計0円、吉本不動産鑑定事務所0円であった。 

上記内訳のとおり、埼玉県登録業者の被上告人(債務者)非会員は、国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所からの鑑定評価業務を1件も受注できなかった。

    また、民間法人、個人についても、被上告人(債務者)非会員は、被上告人(債務者)会員と比べ、受注件数、金額が、圧倒的に少ない。(甲第9、33号証)    

 (4)平成14年分

  @被上告人(債務者)会員等と被上告人(債務者)非会員等の収入の差が著しいこと

「依頼先別の件数及び報酬」(甲第78号証)及び「裁判所における競売及び非訟事件のための評価」(甲第79号証)における、平成14年の埼玉県登録業者のうち被上告人(債務者)非会員12業者(甲第78、90号証)の合計収入は945万1千円であり、埼玉県登録業者の合計収入金額27億9358万9千円の約0.03パーセントしかなく、被上告人(債務者)会員等(埼玉県登録業者のうち約91パーセント)の収入が約100パーセントを占めている。

そして、平成14年の被上告人(債務者)非会員の平均収入は約78万8千円であったのに対し、被上告人(債務者)会員等の平均収入は約2263万5千円と、収入の差は著しい。

なお、西原不動産鑑定事務所及びアークアプレイザルは、後述のとおり、被上告人(債務者)と関係ある者であるので、被上告人(債務者)非会員から除いた。

  A被上告人(債務者)非会員が国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所から全く受注していないこと 

同年の被上告人(債務者)非会員の上記収入の内訳は、不動産鑑定士坂入策司事務所合計0円、青木不動産鑑定事務所合計0円、三共株式会社(民間法人286万2千円、個人50万円)合計336万2千円、高岡不動産鑑定事務所合計0円、石井不動産鑑定事務所合計0円、堀江不動産鑑定事務所合計0円、東京合同鑑定事務所(民間法人54万5千円)合計54万5千円、西武不動産販売株式会社(個人290万円)合計290万円、福田不動産鑑定事務所合計0円、吉本不動産鑑定研究所(民間法人102万5千円、個人92万円)合計194万5千円、北辰不動産アプレイザル 合計161万9千円、上告人(債権者)日本経済研究所合計0円であった。

 上記内訳のとおり、埼玉県登録業者で被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)関係者でない事業者は、国、地方公共団体、公社・公団・公庫等、裁判所からの鑑定評価業務を1件も受注できなかった。

また、民間法人、個人についても、被上告人(債務者)非会員は、被上告人(債務者)会員と比べ、受注件数、金額が、圧倒的に少ない。(甲第78、79号証)

第3 被上告人(債務者)の上告人(債権者)に対する入会拒否が停止されるべきであること

   被上告人(債務者)は、平成11年9月に上告人(債権者)山口が被上告人(債務者)になした入会申込につき、平成12年3月13日付通知で、「(1)当協会(被上告人(債務者))は、強制加入の団体ではないこと。(2)貴殿(上告人(債権者)山口)のこれまでの言動は、当協会(被上告人(債務者))の健全な運営を乱す虞があることなどの理由により不承認となりましたので、その旨通知いたします。」(乙第34号証)と上告人(債権者)山口に対して、被上告人(債務者)への入会を拒否した。

   その後、上告人(債権者)日本経済研究所が平成13年1月19日に被上告人(債務者)に入会申込をしたが、被上告人(債務者)から入会承認不承認の結果や、審議経過も報告が一切ないまま、約3年もの間放置され、被上告人(債務者)は入会を事実上拒否している。

   上記2回に亘る被上告人(債務者)の上告人(債権者)に対する入会拒否が、独占禁止法に違反することは、以下のとおり明らかである。

 1 参入制限行為等禁止違反(独占禁止法8条1項5号、19条一般指定5項)

   独占禁止法8条第1項5号は、「事業者団体が、事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること」を禁止しているところ、「不公正な取引方法」とは、同法第2条9項1号から6号までの各号の一に該当する行為であって、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するものである。(同法2条9号)

これに基づき、公正取引委員会は、すべての業種に適用されるものとして、昭和57年公正取引委員会告示第15号で「不公正な取引方法」(以下「一般指定」という。)を指定している。

一般指定5項では、事業者団体や共同行為において、不当に差別的に取り扱い、事業者の事業活動を困難にすることを対象とし、「事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、その事業者の事業活動を困難にさせること」を「不公正な取引方法」に指定している。

 (1)不当な加入制限

  @ 公正取引委員会の「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(事業者団体ガイドライン、平成7年10月)

    同ガイドラインでは、「参入制限行為等」につき、「団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況において、不当に、団体への事業者の加入を制限し、又は団体から事業者を除名すること。」(5−1−3不当な加入制限又は除名等)の参入制限等に関する行為により、事業者団体が新たに事業者が参入することを著しく困難とさせることは、市場における競争を実質的に制限するまでに至らない場合であっても、独占禁止法8条1項5号に違反するとしている。

   本件では、前述のとおり、上告人(債権者)が、埼玉県下において被上告人(債務者)に加入しなければ不動産鑑定業務を行うことが困難な状況にあることは明らかであり、そのような状況において、被上告人(債務者)は、上告人(債権者)に対し、被上告人(債務者)への入会を不当に拒否し、上告人(債権者)の埼玉県下における市場参入を著しく困難とさせているものであるから、独占禁止法8条1項5号、19条の不公正な取引方法(一般指定5項前段)に該当する。

 A茨城県不動産鑑定士協会の入会制限が独占禁止法に違反するとされた判例(最高裁確定)

    平成15年2月28日に上告棄却(平成14年(オ)第1438号)、上告不受理決定(平成14年(受)第1464号)で確定した東高判平成14年6月27日判決(平成13年(ネ)第5274号損害賠償請求事件、甲第20号証8ないし9頁)では、「控訴人(社団法人茨城県不動産鑑定士協会)は、会員制の社交クラブのごとき私的な団体ではなく、不動産の鑑定評価に関する法律52条が設立されることを想定している法人である上、茨城県内において不動産鑑定業を営む事業者の唯一の事業者団体であり、公的機関からの信用も厚いことから、茨城県内における不動産鑑定業務の主要な発注者である公的機関からの依頼のほとんどが控訴人の会員に集中しているなどの事情から、茨城県内において控訴人に加入することなく不動産鑑定業を営むことが実際上困難であるという状況にある以上、独占禁止法の事業者団体に該当し、その新規入会を制限する行為が同法(独占禁止法)に違反する。」と判示されている。

  本件被上告人(債務者)も、本判決控訴人である社団法人茨城県不動産鑑定士協会と同様の性格をもつ、埼玉県内における不動産鑑定業の唯一の事業者団体であり、上記のとおり、埼玉県内において被上告人(債務者)に加入することなく不動産業務を営むことが実際上困難であるという状況にあるから、本判決に照らしても、被上告人(債務者)が上告人(債権者)の新規入会を拒否する行為が独占禁止法に違反することは明らかである。

(2)被上告人(債務者)の沿革上上告人(債権者)に対する入会制限が認められないこと

  @被上告人(債務者)の前身組織では日本不動産鑑定協会会員であれば会員となれたこと

    また、被上告人(債務者)は、上記のとおり、平成7年3月15日開催の日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会臨時総会の第1号議案で、「社団法人日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会から被上告人(債務者)への組織変更について」が異議なく承認された(甲第18号証)ところ、被上告人(債務者)の前身組織である日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会会則では、第6条で、「県部会員とは(日本不動産鑑定)協会の会員のうち埼玉県内に不動産鑑定事務所を有する不動産鑑定業者及び当該事務所に所属する不動産鑑定士等をいう。」と定められており(甲第17号証)、日本不動産鑑定協会の会員で埼玉県内に不動産鑑定事務所を有する不動産鑑定業者であれば、当然に、日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会会員となり、入会の承認等は全く必要がなかった。

赤熊証人も、日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会は日本不動産鑑定協会のワンセクションであったので、「その当時、部会員であれば、今の士協会(被上告人(債務者))に入会できたでしょうね。」と明言している。(赤熊証人尋問調書2−14頁)

A前身組織と同一の性格である被上告人(債務者)が、以前から日本不動産鑑定協会会員であった上告人(債権者)に対して入会拒否するのは不当であること

  また、被上告人(債務者)は、日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会が「組織変更」したものであるところ、組織変更とは、「会社等の法人が、人格の同一性を維持しながら組織等を変更して、異なる種類の(すなわち、異なる法律上の根拠を有する)法人となること。」であり、前身組織の人格の同一性を維持し、日本不動産鑑定協会のワンセクションとしての位置づけとなる筈である。

実際にも、各県部会は社団法人化をしたが、各都道府県でいずれも「日本不動産鑑定協会の団体会員」となっている(甲第15号証)。

そのように前身組織と同一の性格である筈の被上告人(債務者)が、新たに入会の承認等の要件を設け、組織変更前から日本不動産鑑定協会会員である上告人(債権者)に対し、同要件をもって入会拒否すること自体、上記沿革上そもそも不当である。

万一、同入会要件により、入会不承認とするときには、このような団体設立経緯に加え、被上告人(債務者)が不動産の鑑定評価に関する法律52条が設立することを想定している法人である上、埼玉県内において不動産鑑定業を営む事業者の唯一の事業者団体であり、上記のとおり埼玉県内における不動産鑑定業務の主要な発注者である公的機関からの依頼のほとんどが被上告人(債務者)会員に集中しているという状況下において、被上告人(債務者)に加入することなく不動産鑑定業を営むことが実際上困難であるという、入会拒否による業者に与える影響の重大性等からして、よほど明確かつ合理的で厳格な基準によるべきである。

2 上告人(債権者)の被上告人(債務者)への入会申込当時、入会要件である「理事会の承認」の判断基準が定められていなかったこと

  被上告人(債務者)は、定款第7条で、「入会申込書を会長に提出し、理事会の承認を得なければならない。」との、前身組織では全く存在しなかった入会要件を設けた。(甲第12号証)

  しかし、その入会要件である「理事会の承認」の判断基準等は、後述のとおり、上告人(債権者)山口の入会申込日平成11年9月7日、上告人(債権者)日本経済研究所の入会申込日平成13年1月19日当時には全く定められていなかったもので、被上告人(債務者)の上告人(債権者)に対する入会の不承認は、以下のとおり、合理的理由なく、恣意的なものであり、独占禁止法8条1項5号、19条に違反することは明らかである。

  なお、被上告人(債務者)らがその基準として主張する「会員及び会費規程」は、後述のとおり、平成13年7月17日頃作成されたものであり、上告人(債権者)の入会申込当時存在していなかったことは明白である。

 

3 上告人(債権者)山口の平成11年9月7日申込に対する被上告人(債務者)の入会拒否が不当であること

(1)被上告人(債務者)の入会拒否理由の不当性

 @ 被上告人(債務者)は、平成11年9月に上告人(債権者)山口が被上告人(債務者)になした入会申込につき、平成12年3月13日付通知で、「(1)当協会(被上告人(債務者))は、強制加入の団体ではないこと。(2)貴殿(上告人(債権者)山口)のこれまでの言動は、当協会(被上告人(債務者))の健全な運営を乱す虞があることなどの理由により不承認となりましたので、その旨通知いたします。」(乙第34号証)と上告人(債権者)山口に対して、被上告人(債務者)への入会を拒否した。

被上告人(債務者)は、同入会拒絶の理由の1つとして、「(1)被上告人(債務者)が強制加入団体ではないこと」を挙げるが、上記被上告人(債務者)の団体の性格、埼玉県内における被上告人(債務者)会員の独占的受託状況等からして、自由な裁量で、被上告人(債務者)への加入を制限することが独占禁止法上許されないことは、ガイドライン、上記判例(甲第23号証8、9頁)に照らして明らかである。

A そして、もう一つの理由として、「(2)上告人(債権者)山口のこれまでの言動は、被上告人(債務者)の健全な運営を乱す虞があるとする」が、この文言においては、上告人(債権者)山口のこれまでの誰に対するどのような言動が、被上告人(債務者)の健全な運営をどのように乱す虞があるのか全く具体的にされていない。

 被上告人(債務者)の入会拒否により上告人(債権者)が被る重大な損害に照らし、このように極めて抽象的な理由による入会拒否は、合理的理由があるとは到底いえず、恣意的で不当なものである。

 

(2)被上告人(債務者)が準備書面等で主張する入会拒否理由も不当であること

   被上告人(債務者)は、本件訴訟になって、上告人(債権者)山口を拒否した理由につき、以下の理由を主張するところ、その理由も、不合理で恣意的なものであることは明らかである。

@上告人(債権者)山口の日本不動産鑑定協会や東京都不動産鑑定士協会、被上告人(債務者)に対する訴訟提起等が、被上告人(債務者)の入会拒否の理由とならないこと

被上告人(債務者)は、平成11年9月に、上告人(債権者)山口が被上告人(債務者)へ入会申込をする前に、上告人(債権者)山口が、東京不動産鑑定協会や日本不動産鑑定協会を相手に、訴訟を提起して敗訴したことや、会長選挙での言動等を、理由として挙げるようである。(被上告人(債務者)準備書面(3))

  当時被上告人(債務者)の会長であった赤熊も、上告人(債権者)山口に対して理事会で入会を拒否した一番の理由は、「他の地域での(上告人(債権者))山口さんの言動が主ですね。」と証言している(証人尋問調書4−10頁)。

  しかし、これらの他の地域での言動を理由として、被上告人(債務者)が上告人(債権者)山口の被上告人(債務者)への入会を拒否することは、全く合理的でなく、不当である。

(イ)そもそも、上記訴訟の相手である「他の地域」、すなわち、東京都不動産鑑定協会及び日本不動産鑑定協会自体が、上告人(債権者)山口の訴訟提起につき、自分の会員として会内で処分対象とするなど何ら問題としていない。

 上告人(債権者)山口の選挙での言動等についても同様である。

  すなわち、上告人(債権者)山口は、平成11年9月に被上告人(債務者)に入会申込をする直前まで、東京都不動産鑑定士協会に入会しており、その間、同協会に対し訴訟提起や会長選挙出馬等していたものであるが、それらの言動につき、懲戒処分等(甲第54号証の2)一切受けていない。

 そして、被上告人(債務者)が平成12年3月13日に入会拒否した後の、同年4月18日にも、東京都不動産鑑定士協会は、上告人(債権者)山口の入会申込に対し、何ら問題とすることなく、再び入会することを直ちに承認している。

(ロ)また、日本不動産鑑定協会も、上告人(債権者)山口に対し、上記訴訟提起や会長選挙での言動につき、会員として全く処分等していない。

(ハ)このように、東京不動産鑑定士協会及び日本不動産鑑定協会が自ら問題としていない上告人(債権者)山口のそれらの言動につき、被上告人(債務者)が、自らは関係のないにもかかわず、それらの上告人(債権者)山口の言動を理由として、被上告人(債務者)への入会拒否の理由とすることが、著しく不合理であることは明白である。

A乙第20号証ないし22号証の文書が被上告人(債務者)の入会拒否の理由とならないこと

  また、被上告人(債務者)は、茨城県不動産鑑定士協会から、平成10年6月2日付(乙第20号証)、同年6月9日付(乙第21号証の1)、同年6月20日付(乙第22号証)各文書につき、一般人をして茨城県不動産鑑定士協会内部の決定に基づいて作成されたものと誤信せしめる外観を有しているところ、上告人(債権者)山口がそれらの文書を、無題で配布したことによって、茨城県不動産鑑定士協会に対する一般社会の信用が損なわれたとして、上告人(債権者)山口に対する被上告人(債務者)への入会拒否理由とするようである。

 (イ)乙第20ないし22号証が作成された経緯(茨城県下における鑑定業務受注状況等)

   これらの文書は、茨城県不動産鑑定士協会が当事者であった判決文(甲第19、20号証)からも明らかなとおり、茨城県内の税務署や市町村がほとんど茨城県不動産鑑定士協会会員に委託している状況下において、茨城県下で不動産鑑定業者が、同会に入会しないで不動産鑑定業務を行うことは実際に困難であった。

  このような状況下において、上告人(債権者)は、価格自由競争により市町村から固定資産税評価員に選任されることを目指し、後に上記判決で勝訴した酒匂悦郎とともに、平成10年4、5月ころ、茨城県の市町村に茨城県不動産鑑定士協会が同会員に勧めていた1評価地点あたり6万6880円よりも安い評価料である4万5千円、5万円などで見積した名刺を市町村に交付したり、見積書を内容証明郵便で送付した(甲58、83号証)。

    しかし、同年6月頃になると、茨城県各市町村は、従来どおりに茨城県鑑定士協会へ一括発注する方法によって次年度の固定資産税鑑定評価員を次々選任していったので、その選任から排除されそうになっていた茨城、千葉、東京の上告人(債権者)山口を含む若手グループが、収入の途を閉ざされる危機感と焦りから、上告人(債権者)グループの真意でないが、已むを得ず、茨城県不動産鑑定士協会に妥協する内容の上記書面を作成せざるを得なかったものである。(甲第58号証、上告人(債権者)山口本人尋問調書22、28頁)。

(ロ)乙第20号証の書面を茨城県不動産鑑定士協会が問題としていないこと

被上告人(債務者)は、同文書が、一般人をして茨城県不動産鑑定士協会内部の決定に基づいて作成されたものと誤信せしめる外観を有しており、同協会に対する一般社会の信用が損なわれたとして、上告人(債権者)山口への入会拒否理由の1つとするようである。

 しかし、同書面には、名義人欄に「茨城県不動産鑑定士協会所属酒匂悦郎、千葉県不動産鑑定士協会所属村上兼三、東京都不動産鑑定士協会所属不動産鑑定士13名、茨城県不動産国土庁地価公示担当者以上15名の代表山口節生」と各個人名等が記載されており、一般人をして茨城県不動産鑑定士協会内部の決定に基づいて作成されたものと誤信せしめる外観を有していないことは明らかである。

  それ故、茨城県不動産鑑定士協会は同書面を問題とせず、上告人(債権者)山口に対する懲戒請求においても、同書面を懲戒事由として全く挙げていない。(甲第87号証)

  にもかかわらず、部会者である被上告人(債務者)が、同書面を理由として、上告人(債権者)山口の入会拒否理由とすることは、全く不合理である。

 (ハ)乙第21の1の書面を上告人(債権者)山口は配布しておらず、茨城県不動産鑑定士協会も問題としてないこと

  被上告人(債務者)は、上告人(債権者)山口が茨城県不動産鑑定士協会会長の名前を勝手に使って乙第21号証の1の書面を配布したとして、理事会で審理し、被上告人(債務者)への入会拒否の理由としたようである(被上告人(債務者)準備書面(3)、赤熊証人尋問調書5−1頁)。

  しかし、同書面は、一見して明らかなとおり、同会会長名の名は1本線で抹消されているのであり(乙第21号証の1)、そのような書面を受領した者が、名前を抹消されている同会会長自らが作成、配布したものとは考えることは通常ありえず、被上告人(債務者)が主張するような、同書面が、一般人をして茨城県不動産鑑定士協会内部の決定に基づいて作成されたものと誤信せしめる外観を有しているとは到底言えまい。

    そして、茨城県鑑定士協会当時の会長井坂雄作成の書面(乙第21号証の2)からも明らかなとおり、上告人(債権者)山口は、井坂雄に対し、乙第21号証の1の書面を同会長名で、市町村に配布していよいか事前に尋ねたところ、同会長の同意が得られなかったので、上告人(債権者)山口は、同書面の配布を取りやめたのである。

  もし市町村に「社団法人茨城県不動産鑑定士協会会長井坂雄」の名を1本線で抹消した乙第22号証の1の書面が配布されたのであれば、グループの中の松村清一が配布したものである。(甲第58号証、上告人(債権者)山口本人尋問調書第8回30ないし31頁)

 上記のように、同書面は、井坂雄会長名を冒用したものでも、上告人(債権者)山口が配布したものでもないため、茨城県不動産鑑定士協会が会長井坂雄の当時なした上告人(債権者)山口に対する懲戒請求においても、懲戒事由として、同文書で井坂雄の名義を冒用されたり、同文書が市長村に配布されたことにより混乱を招き同協会の信用を著しく失墜させたようなどということは勿論、同文書については、一切挙げていない。(甲第87号証)

  このように、同書面は、当の茨城県不動産鑑定士協会が問題としていないにもかかわらず、同書面と全く無関係の被上告人(債務者)が、それを上告人(債権者)山口の入会拒否理由とすること自体全く不合理であるが、被上告人(債務者)は、同書面につき、上告人(債権者)山口が茨城県不動産鑑定士協会の井坂雄会長の名前を勝手に使ったという前提で、理事会で審議して上告人(債権者)山口の入会拒否理由の1つしたところ(赤熊証人尋問5−1頁)、理事会は上記のとおり著しく事実誤認して審理したものである。

(ニ)乙第22号証の書面を上告人(債権者)山口は配布しておらず、懲戒事由として有責とされていないこと

   同書面の名義人は、「東京都不動産鑑定士協会所属茨城県地価公示評価委員、千葉県不動産鑑定士協会所属茨城県地価評価員 以上15名鑑定士交渉代表山口節生」と記載され、茨城県不動産鑑定士協会名は一切出てこないのであるから、被上告人(債務者)が主張するような、一般人をして茨城県不動産鑑定士協会内部の決定に基づいて作成されたものと誤信せしめる外観を有していないことは明らかである。

    また、同文書は、上記茨城県下における固定資産鑑定評価受注状況下において、グループが騒然たる議論の中で、上告人(債権者)山口は、自ら作成したものはではなかったが、グループ代表となっていたので、グループの内の多数の求めにより押印したものであり、文書の配布は自ら行っていない(甲第58号証)。

  茨城県不動産鑑定士協会は、日本不動産鑑定協会に、同書面につき、平成12年固定資産税標準地評価替え時、同文書を市町村に流し、混乱を招き同協会の信用を著しく失墜させ業務活動に支障をきたしたことなどを懲戒事由として、上告人(債権者)山口を懲戒請求した(甲第87号証)。

  しかし、日本不動産鑑定協会では、上記懲戒事由とする事実について、真実と認めなかったか、問題がないと判断して、上告人(債権者)山口を有責としなかったものである。(乙第8号証)

  このように、日本不動産鑑定協会にて懲戒事由として有責とされなかった同書面に関し、被上告人(債務者)が上告人(債権者)山口の入会拒否理由とするのは全く不合理である。

B平成11年6月4日付書面で上告人(債権者)山口がそれまで裁判、公正取引委員会への申告等が根拠がないものと認めていないこと

被上告人(債務者)は、乙第23号証の書面をもって、上告人(債権者)山口が平成11年6月4日、日本不動産鑑定協会、東京都不動産鑑定士協会、茨城県不動産鑑定士協会等に対し、それまで上告人(債権者)山口が行ってきた裁判、公正取引委員会への申告等が根拠のないものであったことを認め、各事業団体に迷惑を掛けたことを謝罪する旨の文書を送ったと主張するようである。

 しかし、同文書は、その内容からも明らかなとおり、それまで上告人(債権者)山口が行ってきた裁判、公正取引委員会への申告等が根拠のないものであったことを認めたものでなく、被上告人(債務者)は勝手に歪曲して上記主張をしている。

 そして、上告人(債権者)山口が同文書を作成した経緯は、当時日本不動産鑑定協会の常務理事、公的土地評価委員長であり、地価公示の鑑定業務の割当てを担当していた清水文雄から、詫び状を書かなければ、地価公示の業務から外すと威迫されためであり、上告人(債権者)山口は、収入の途が閉ざされないよう、やむを得ず、清水文雄から言われたままの文章を作成して、提出したものである。

 不動産鑑定士で、上告人(債権者)山口とともに、鑑定業務受託における自由競争社会を目指していた酒匂悦郎も、清水文雄から同様の要求をされたが、それに従わなかったため、その年から、地価公示委員を外された。(上告人(債権者)山口第8回口頭弁論本人尋問調書23頁、甲第58号証、甲第19号証判決文4頁)

従って、同文書は、そもそも上告人(債権者)山口の真意でないうえ、被上告人(債務者)の主張するような、それまで行ってきた裁判、公正取引委員会への申告等が根拠のないものであったことを認めたものではない。

C入会申込後半年間被上告人(債務者)から上告人(債権者)山口に対し審理状況等連絡がなかったこと

(イ)被上告人(債務者)から上告人(債権者)山口に対し話合いを申し入れる電話がなかったこと

   被上告人(債務者)は、上告人(債権者)山口の被上告人(債務者)への入会申込が平成15年9月7日になされたが、理事会の審議で継続審議となったので、同年10月15日、電話で、上告人(債権者)山口に対して話し合いをしたい旨を連絡したと主張するようである。(被上告人(債務者)準備書面(3)4頁)

  しかし、上告人(債権者)山口は、同年10月15日、また、その他の日にも、被上告人(債務者)から話し合いを申し入れる連絡は一切なかった。(上告人(債権者)山口本人尋問調書2−6、甲58号証)

赤熊証言も、同年10月15日には、被上告人(債務者)から上告人(債権者)山口に対し、電話をかけていないと明言している(赤熊証人尋問調書4−12頁)。

(ロ)乙第25号証の1の書面が上告人(債権者)山口に通知されていないこと

  また、被上告人(債務者)は、上告人(債権者)山口に対し、乙第25号証の1の平成11年10月19日付書面で、上告人(債権者)山口と話し合いをしたいので都合の良い日を知らせるよう通知し、乙第25号証の2の配達証明書をもって、同書面が、平成11年10月19日に上告人(債権者)山口に配達されたと主張するようである。

  しかし、乙第25号証の2の配達証明書にかかる郵便物は、全く別の郵便物であったものであり、同書面ではない。

  そのことは、同書面の記載内容が明らかに不合理であることからも裏づけられる。

(a)すなわち、赤熊証人が上記のとおり同年10月15日に上告人(債権者)山口に電話していないと明言しているのも関わらず、被上告人(債務者)会長秋庁赤熊正保名義の同書面では、10月15日(金)の理事会当日の17時30分頃電話で上告人(債権者)山口と話しをした旨記載されているのであり、同書面の内容が全くの虚偽であることが明らかである。

(b)また、同書面の日付等は、埼鑑協57号平成11年10月19日とされているところ、常識的にも、また、赤熊証言からも明らかなとおり(証人尋問調書4−11頁)、本書が実際に作成されたならば、埼鑑協の番号は日付順に付されるものであるから、同書は平成11年10月19日に作成された筈である。

   しかし、書留・配達記録郵便物受領証(乙)及び被上告人(債務者)の事務員らしき手書メモによると、同配達証明にかかる郵便物は平成11年10月18日午前8時から12時の間に被上告人(債務者)から投函されたものであり、配達証明書によると、翌10月19日の18時から24時の間に上告人(債権者)山口に配達されたようである。(乙第25号証の2)

   上記のとおり、被上告人(債務者)が作成日ではなく、わざわざ配達される日を、通知書に記載するとは社会通念上考えられず、万一、配達日を記載する必要性があったならば、同郵便は通常郵便であり10月20日に到達する可能性も十分にあり得たのであるから、速達郵便としていた筈である。

   このような同書面の、虚偽内容の記載、不合理な日付からも、乙第25号証の1の書面が、乙第25号証の2の配達証明にかかる郵便物でないことは明らかである。

(c)被上告人(債務者)は、本件訴訟が提起されたが、平成11年9月7日に入会申込後平成12年3月13日の入会拒否通知を発送するまで、上告人(債権者)山口に対して、何ら、事情聴取や話し合い等を申し入れたり、審議経過を連絡をしていなかったことを不都合と思い、偶々、全く別の書面を送付した際の乙第25号証の2の配達証明書が存在していたことを奇貨として、同書面を同配達証明書の際発送したものとして捏造したものである。

   それ故、上記書面の内容を誤ったり、不合理な日付を記載してしまったと容易に推測できる。

(d)そして、このような上告人(債権者)に対し何ら事情聴取等もしない被上告人(債務者)の態度は、後述のとおり、平成13年1月19日に上告人(債権者)日本経済研究所が入会申込をなした際におけるのとも同様である。  

 

  D上告人(債権者)の被上告人(債務者)に対する訴訟が入会拒否の理由となり得ないこと

    被上告人(債務者)は、上告人(債権者)山口が、被上告人(債務者)に対して訴訟提起したことも、入会拒否の理由としてあげるようである。

 (イ)しかし、そもそも、裁判を受ける権利は、憲法32条で保障された国民の権利であり、上記のとおり、上告人(債権者)山口は、東京都不動産鑑定士協会や日本不動産鑑定協会にも訴訟提起等しているが、同協会らからは、それを理由として、入会拒否や懲戒処分等全くなされていない。

 (ロ)被上告人(債務者)は、平成12年12月5日、日本不動産鑑定協会に対し、上告人(債権者)山口の懲戒請求をし、その懲戒事由の中で、上告人(債権者)山口の被上告人(債務者)に対する訴訟を次のように挙げている。

   「平成11年10月18日浦和地方裁判所に士協会を被上告人(債務者)として無効確認訴訟及び損害賠償請求訴訟を起こしたが、裁判所の指定する法廷(12.1.17)に出席をしなかった。その間、「入会を認めれば訴訟は取り下げる」と恫喝してきた。また、茨城県の例や関東甲信会会長或いは公正取引委員会の名を借りて恫喝した。11.10.18、11.10.29、11.11.18、11.12.2、11.12.6」(甲第86号証)

しかし、被上告人(債務者)の請求する上記懲戒事由は、日本不動産鑑定協会において、有責とは全く認められなかった。(乙第8号証)

(ハ)従って、上告人(債権者)山口の被上告人(債務者)に対する訴訟は、何ら不当なものではなく正当な裁判権利の行使であり、被上告人(債務者)の上記主張するように、上告人(債権者)山口が恫喝を用いて、裁判を駆け引きの道具として利用したものでないことは明らかである。

 E 以上のとおり、被上告人(債務者)会員が埼玉県下における鑑定業務受託を独占している状況下で、被上告人(債務者)は、上記のとおり合理性のない恣意的な理由により、平成11年9月7日に上告人(債権者)山口がなした入会申込を同年3月13日に不当に拒否したものであり、独占禁止法第8条1項5号、19条の不公正な取引方法(一般指定5項)に違反することは明らかである。

4 上告人(債権者)日本経済研究所の平成13年1月19日申込に対する被上告人(債務者)の入会拒否が不当であること

(1)被上告人(債務者)の入会拒否が不当であること

 @入会申込から約3年間入会の承認又は不承認の通知さえせずに放置していること

   上告人(債権者)日本経済研究所は、平成13年1月19日に被上告人(債務者)に入会申込をしたが、被上告人(債務者)から、約3年もの間、入会の承認又は不承認、審議状況等何ら通知がきておらず、いわば、放置された状態で、入会を事実上拒否されている。(上告人(債権者)山口本人尋問第8回口頭弁論調書15頁)

  上記のとおり、被上告人(債務者)に入会しなければ埼玉県下の鑑定業務受託が困難な状況下で、被上告人(債務者)は、上告人(債権者)日本経済研究所に与える不利益の大きさを全く考えずに、理由はおろか、入会の承認又は不承認さえ通知しないのであり、そのような事実上の入会拒否が不当であることは、明白である。

A理事会での審議もほとんどなされていないこと

   被上告人(債務者)の平成13年1月24日の平成12年度理事会議事録には、同理事会で、議事「(7)山口節生鑑定士の入会申込みに係る対応について」、島村専務理事が緊急提案し、口頭により説明をし、@係争中であること。A平成12年3月13日理事会で入会を拒否していることを理由に、総員賛成可決で、上告人(債権者)日本経済研究所の入会申込書は受理しないこととした旨記載されている。(甲49号証の3)

   @の「係争中であること」が入会拒否の理由とならないことは前述のとおりであり、また、上告人(債権者)山口と上告人(債権者)日本経済研究所は別個の法人格をもつのであるから、A「平成12年3月13日理事会で入会を拒否していること」も被上告人(債務者)の合理的な入会拒否理由として認められないことは明らかである。

   しかし、被上告人(債務者)は、被上告人(債務者)への入会拒否という重大事項につき、何ら調査をせず、殆ど審議しないで1回の理事会のうちの短時間で決定したものである。

   それも、入会申込の5日後にそのような結果が出ているにもかかわらず、上告人(債権者)日本経済研究所に対し約3年もの間、何ら通知さえしていない。

   このような被上告人(債務者)の態度からしても、被上告人(債務者)が、上告人(債権者)日本経済研究所の入会申込に対し、如何にいいかげんに、恣意的に入会拒否をしたかがよく判る。

 B被上告人(債務者)準備書面(3)で主張する入会拒否理由に合理性がないこと

   被上告人(債務者)は、被上告人(債務者)準備書面(3)では、@上告人(債権者)日本経済研究所は実質的に上告人(債権者)山口と同じであり、上告人(債権者)日本経済研究所での申込は方便に過ぎないと思われること、A会規では業者(法人)が会員となった場合、その業者が法人であれば、同時に代表者である不動産鑑定士も会員になるとされていること(乙第33号証)、Bこれまでの上告人(債権者)山口等の言動等を考慮して、被上告人(債務者)は上告人(債権者)日本経済研究所に対する入会も拒否したと主張するようである。

   しかし、これらの理由も、合理的なものではなく、被上告人(債務者)が上告人(債権者)日本経済研究所を入会拒否するに値する正当な理由とならないことは、以下のとおり明らかである。

(イ)上告人(債権者)日本経済研究所での申込が方便でないこと

   上告人(債権者)日本経済研究所は、平成2年に会社設立され、同社の看板は、その本店所在地の事務所入口扉に掲げられている。(甲第56号証)

   そして、平成11年9月7日に被上告人(債務者)に入会申込をする前の東京都不動産鑑定士協会に入会していた際、また、被上告人(債務者)に平成12年3月13日に入会拒否された後に再度東京都不動産鑑定士協会に再入会した際も、社会的に信用性も高い会社形態である上告人(債権者)日本経済研究所であった。

   平成11年9月7日に上告人(債権者)山口節生不動産鑑定士事務所こと上告人(債権者)山口節生で被上告人(債務者)へ入会申込をしたのは、同入会前に、当時被上告人(債務者)会長であった赤熊正保に挨拶等しに行った際、赤熊から、被上告人(債務者)会員に鑑定業務を平均的に割当てるにあたり、裁判所の競売評価員に入りたいならば個人にした方がよいと勧められたためである。(上告人(債権者)山口本人尋問第8回口頭弁論調書10頁)

   その後、上告人(債権者)日本経済研究所が、平成13年1月19日に、被上告人(債務者)に再度入会申込をした理由は、平成12年11月30日から施行された埼玉県地価調査員指名規程により、埼玉県地価調査評価員の選任されるためには、第2条2項二で、申請日において、勤務地に基づき、国土長長官又は知事が登録した事務所が埼玉県内にあること、が資格要件とされた(甲第1号証)からである。(山口本人尋問調書第8回12頁、8、9、33頁、甲第54号証)。

   従って、被上告人(債務者)が主張するような、上告人(債権者)日本経済研究所での申込が方便などではないことは明らかであり、上告人(債権者)山口と上告人(債権者)日本経済研究所が別個の法人格であることは民法の原則からして当然である。

(ロ)会員及び会費規程が上告人(債権者)日本経済研究所の入会申込時に存在していなかったこと

  (a)県土整備部開発指導課総務・地価担当の受付・収受が平成13年7月17日であること

     甲第55号証の1及び甲第85号証の公文書開示決定通知書によると、「会員及び会費規程」は、平成13年7月16日には、知事の所管に属する公益法人の設立及び監督に関する規則の規定に基づく届出、報告書類及びその他提供資料としても受理されておらず、存在しなかった。

    同規程は、平成13年7月17日に受付収受されたものである。

    被上告人(債務者)が主張するように平成7年から同規程が存在していたのであれば、上記規則に基づき、その頃埼玉県に届け出ていた筈であり、平成13年7月17日に、突如、届け出たこと自体不自然極まりない。

  (b)甲第55号証の3と乙第33号証の「会費及び会費規程」の内容が全く同じであり、制定日等が捏造であること

     平成13年7月17日に受付収受された「会費及び会費規程」は、題目の左下に、「平成7年4月28日制定」と記載されているが(甲第55号証の3)、乙第33号証で提出されている「会員及び会費規程」には、題目の左下に、「平成7年4月28日制定」「平成11年11月19日一部改正」「平成13年1月24日一部改正」と記載されている。

しかし、甲第55号証の3の「会費及び会費規程」と乙第33号証の「会費及び会費規程」の規程内容は、一文字も違わない。

   また、平成13年1月24日に開催された理事会の議事録でも、「会費及び会費規程」の一部改正について審議等された事実、また同日から施行するなどの記載は一切ない。(甲第49号証の3)

     このように、「会員及び会費規程」は、上告人(債権者)会社の入会拒否を正当化するため、被上告人(債務者)が、平成13年7月17日頃に急遽作成し、それも、制定日等を捏造したものである。

 従って、上告人(債権者)日本経済研究所が入会申込をした平成13年1月19日に存在しておらず、被上告人(債務者)は主張するように、業者(法人)が会員となった場合、その業者が法人であれば、同時に代表者である不動産鑑定士も会員になるものではなかったのであるから、平成13年1月19日に被上告人(債務者)が上告人(債権者)山口に対し入会拒否したことや、上告人(債権者)山口の言動等を理由として、上告人(債権者)会社の入会拒否をする規程等の根拠は全く存しない。

 (ハ)被上告人(債務者)に対する上告人(債権者)の訴訟提起等が入会拒否理由とならないこと

    被上告人(債務者)が上告人(債権者)日本経済研究所の入会申込を不承認とした理事会までの上告人(債権者)山口の言動として、被上告人(債務者)は、上告人(債権者)の被上告人(債務者)に対する訴訟提起を挙げるようである。

  (a)しかし、前述のとおり、裁判を受ける権利は憲法32条で保障されており、東京都不動産鑑定士協会や日本不動産鑑定協会も上告人(債権者)から訴訟提起等されているが、それを理由に、上告人(債権者)に対し入会拒否したり、懲戒処分等していないのであり、「訴訟中であること」を理由とした入会拒否は認められない。

  (b)被上告人(債務者)は、平成12年12月5日付で日本不動産鑑定協会に対し、上告人(債権者)山口の懲戒請求をしたが、「平成12年3月13日浦和地方裁判所に再度、士協会を被上告人(債務者)として無効確認訴訟及び損害賠償請求訴訟を起こしたが、県知事選挙に関連付けて、いたずらに審議を長引かせている。」ことを懲戒事由の1つとしたうえ、平成14年2月21日、日本不動産鑑定協会懲戒委員会委員長代行に対し、懲戒案件に係る補強資料等の追加提出について(送付)として、次の資料を提出した。(甲第103号証)

  ・平成13年12月7日最高裁判所判決文(写し)(甲第24号証の3)

    平成13年(オ)第1388号損害賠償請求事件

    原審 東京高等裁判所平成13年(ネ)第915号無効確認及び損害賠償請求事件

  ・平成13年10月23日さいたま地裁判決文(写し)(甲第25号証の1)

    平成13年(ワ)第460号損害賠償請求事件

  ・上記2の上告に伴う東京高等裁判所の事件番号等について

   平成13年12月17日付「訴訟進行に関する照会書(回答書)」(写し)

  しかし、被上告人(債務者)が、このように熱心に日本不動産鑑定協会に対して働きかけたにも関わらず、平成14年5月21付の懲戒処分では上記訴訟は、一切有責とされていない。(乙第8号証)

従って、被上告人(債務者)が、上告人が被上告人(債務者)に対して上記の訴訟提起等をしたことを理由として、入会拒否の正当な理由とならないことは明らかである。

(ニ)茨城県不動産鑑定士協会に対する訴訟が不当でないこと

 日本不動産鑑定協会は、上告人山口に対する戒告処分の理由として、「茨城県不動産鑑定士協会代表者理事井坂雄氏に対し、監禁暴行を受けたとして水戸地方裁判所に訴訟を提起したものの、被請求者自身の主張自体矛盾があることなど不当な訴訟であることが認められること」、としている。

 その詳細は、上告人山口が、平成12年6月22日に茨城県不動産鑑定士協会代表者理事井坂を相手取って、暴行及び監禁を請求原因とする損害賠償請求事件(以下「甲事件」という。)を提訴し、ほぼ同一の内容をもって平成13年11月26日にも上告人日本経済研究所の代表者として、茨城県不動産鑑定士協会代表者井坂雄を相手取って、契約妨害を請求原因とする損害賠償請求事件(以下「乙事件」という。)を提訴して併合審理された。上告人山口は、甲事件においては「頭、顔をたたくなどの暴行を受けた」と主張しているのに対し、乙事件においては「机などをたたく、けるの暴行が行われた」との主張に変えており、それぞれの主張は矛盾しているので、係る訴訟の根幹をなす上告人山口自身の主張に矛盾があることなどに鑑みると、上告人山口の訴訟提起は不当なものであることが明らかである、とされている(乙第8号証)。

  しかし、上記戒告処分は、以下のとおり、上記判決の解釈を明らかに誤った上での判断であり、全く不当なものである。

(a)すなわち、そもそも甲事件と乙事件は上記のとおり併合審理されたため、暴行の態様等につき矛盾することは考えられず、判決書(甲第26号証の1)における上告人山口の主張したとされる請求原因でも、甲事件と乙事件において上記のような矛盾する主張がなされた旨の記載はない。

 また、そもそも、上告人(債権者)山口は、併合前の甲事件で、身体に対する暴行及び監禁、机などを叩くなどの主張の両方を行っていたものであり、上告人(債権者)山口の主張は甲事件と乙事件とで全く矛盾していない(上告人(債権者)山口本人尋問第8回口頭弁論調書7頁、第9回口頭弁論調書2−9、10頁)。

(b)また、判決(甲第26号証の1)上明らかなとおり、甲事件及び乙事件とも、被上告人(債務者)は「社団法人茨城県不動産鑑定士協会」であるが、上記戒告処分では、「茨城県士協会代表者理事井坂氏を相手取って」とされていることからしても、同懲戒委員会は、裁判手続、内容をよく理解していないことは明らかであり、上記のとおり、上告人(債権者)山口の主張の内容を誤読し、誤って、懲戒事由としてしまったものである。

   なお、上記訴訟は、実際に暴行や監禁の事実があったが、本人訴訟であったため、立証活動がうまくできなかった結果、判決で認められなかったものである。

(ホ)ホームページ掲載が個人的誹謗中傷を目的としたものでないこと

   また、被上告人(債務者)は、上告人(債権者)山口が、ホームページ上で、岩崎彰等を誹謗中傷する内容を繰り返し掲載したと主張するようである。  

    確かに、上告人(債権者)山口は、岩崎彰に関してホームページ上で掲載はしたが、それは岩崎彰を個人的に誹謗中傷することを目的としたものではない。

  上告人(債権者)山口は、当時、山口節生政治事務所のホームページとして、「何故に国会議員を目指すのか。贈り物をもらわない政治、人間を公正平等に扱う政治、24時間開業の行政・司法への転換」と題して、自分の政治信条や政策等をホームページ上で印刷するとA4で52ページほど掲載していたところ、当時日本不動産鑑定協会関東甲信会の副会長岩崎彰や被上告人(債務者)会長赤熊正保に関し、2頁も充たない分量で、「公的立場にあった赤熊氏と岩崎氏が、守らなければならない法規を守っていないということを、公的な立場で公共の利益を図るために」掲載したものである。

 (a)すなわち、当時関東甲信会の会長であった清水文雄が、被上告人(債務者)理事の岩崎彰宛に、上告人(債権者)山口を被上告人(債務者)に入会させるようファクシミリで正式に申し入れたのに対し、岩崎彰が「絶対に入れない」と言って清水と大喧嘩したのであるが、清水文雄によると、岩崎彰が、上告人(債権者)山口の被上告人(債務者)への入会に断固反対しているのは、「県知事選挙に出馬表明しているから。」、また、「信条が異なるからである。」との理由であると述べたとのことであった。

  そこで、上告人(債権者)山口は、公的立場にある岩崎彰が、上記理由から同入会拒否を強く唱えていることは、独占禁止法違反であり、また、公職選挙法225条3号違反すると考え、公的な観点から、ホームページへの掲載や告訴を行ったものである。(甲第54号証)

  (b)また、上告人(債権者)山口は、赤熊正保に対する告訴に関しても事実に基づくものであり、当時被上告人(債務者)会長であった赤熊は、上告人(債権者)山口が平成11年の埼玉県知事選挙に立候補しようとしていたところ、「ここ(埼玉)にくれば生活をできなくしてやる。」「埼玉県知事選挙に出るな。」「土屋義彦の応援をしてくれ、そして埼玉県知事選挙に出ないようにさせてくれと土屋義彦とその命令下にある選対にいわれた。」と威圧した。(甲第54号証、乙第29号証)

  なお、赤熊は、山口事案について(お願い)と題する文書で、分科会幹事及び各評価員の面前で、「『あなたのホームページの内容は根拠があるのか?』と質したところ、彼(上告人(債権者)山口)は、『あれは、事実でないことを書いた。』と答えた。即座に私は、『事実でないことか。』と確認したところ、彼(上告人(債権者)山口)は、『そうだ。』と明言した。ただし、反省のことばは一言も無かった。」と記載している(乙第30号証の2)

 しかし、上告人(債権者)山口は、本人尋問で、「彼(赤熊)が、僕(上告人(債権者)山口)があれを書いた(調書で「変えた」とされているのは誤り。)ことは事実であると言っているのに、事実じゃないと言ったと言っているのは、それは全くのうそでありまして」と明確に否定している(本人尋問調書第9回口頭弁論3−2頁)。

  岩崎仁三郎は、平成12年12月の同日の地価公示の分科会に出席し、そのときの様子を陳述書(乙第36号証)に記載しているが、赤熊がいうように上記出来事が大勢の面前でなされたのあれば、被上告人(債務者)側で同証拠を提出している同人は、当然、その出来事を同陳述書で記載している筈であるが、一切触れられていない。

 また、赤熊正保から上告人(債権者)山口に対し、虚偽告訴罪や、民事の損害賠償請求等何らしていない。(上告人(債権者)山口本人尋問第9回口頭弁論調書3−2頁)

 そして、平成12年12月5日付の被上告人(債務者)から日本不動産鑑定協会に対し、上告人(債権者)山口の懲戒請求を求め、懲戒事由として、「赤熊正保及び岩崎彰に対して、何ら謂われもないのに刑事告訴をしたが、本告訴については、平成12年11月30日証拠不十分による不起訴処分となった。」とことを挙げているが、懲戒処分で有責とされなかった(乙第8号証)。

 これらのことからも、上告人(債権者)山口が、赤熊正保や岩崎彰に対して告訴した内容は、事実に基づくものであることは明らかである。

 (へ)上告人(債権者)山口は、平成14年5月21日付で日本不動産鑑定協会から戒告処分を受けているが、その処分の理由である、茨城県不動産鑑定士協会が不当訴訟でないこと、及び、上告人(債権者)山口の赤熊正保及び岩崎彰に関するホームページ上の掲載は個人的に誹謗中傷を繰り返したものでないことは、上記のとおり明らかである。

 懲戒処分の種類は、(1)戒告、(2)1年以内の会員権の停止、(3)除名であるところ、上告人(債権者)山口に対する処分は、上記理由を合わせても、一番軽い戒告であったが、上告人(債権者)山口は、同処分に全く納得していない。(上告人(債権者)山口本人尋問第9回口頭弁論調書)

 日本不動産鑑定協会の定款(甲第88号証の1)や懲戒規程(同の2)には、同処分に対する不服申立制度が設けられていない(上告人(債権者)山口本人尋問第9回口頭弁論調書)ので、同処分を覆すのは困難であるが、上記のとおり、同処分が理由のない不当なものであることは明らかである。

 従って、同処分で上告人(債権者)山口が有責とされた事由を理由として、被上告人(債務者)が上告人(債権者)山口に対して入会拒否するのは全く合理性がない。

   

C 以上のとおり、被上告人(債務者)会員が埼玉県下における鑑定業務受託を独占している状況下で、被上告人(債務者)は、上記のとおり合理性のない恣意的な理由により、平成13年1月19日に上告人(債権者)山口がなした入会申込に対し、約3年もの間、承認又は不承認の通知もせず、不当に、事実上入会拒否しているもので、独占禁止法第8条1項5号、19条の不公正な取引方法(一般指定5項)に該当することは明らかである。

第4 被上告人(債務者)の高額な入会金徴収が停止されるべきこと

 1 入会金の5万円から80万円の16倍もの異常な値上

(1)被上告人(債務者)は、上告人(債権者)山口が被上告人(債務者)入会申込をした平成11年9月7日の直後の同月24日の臨時総会で、入会金を、5万円から80万円に値上げした。(甲第49号証の2)

   それも、その値上げの理由は、被上告人(債務者)の財政が特にひっ迫していたための財源確保等ではないので、会費等の値上げは同時に行っておらず、「士協会(被上告人(債務者))の財産を構成員で割れば80万円ぐらいになるわけです。当然、何も士協会(被上告人(債務者))に貢献していない者と言ったら失礼かもしれないけども、そういう者が入ってくるときには、それなりの評価をしていただいて入会していいただくということですね。」(赤熊証人尋問調書4−9頁)という、全く必要性も合理性もないものである。

   被上告人(債務者)の主張するような入会金の定め方は、入会金の名目で、入会金のみならず、入会前の会費数年分まで一括で支払わせようとするようなものであり、新たに入会しようとする者は、入会前には、被上告人(債務者)入会の利益を一切享受していないのであるから、そのような入会金の計算方法が、全く不当であることは明らかである。

(2)被上告人(債務者)が、入会金を5万円から16倍の80万円にまで値上げした異常な高騰ぶりは、東京都不動産鑑定士協会では、一般の不動産鑑定業者の入会金が8万円、不動産鑑定士は4万円とされていることからしても(甲第54号証の2)、明白である。

(3)このような異常に高額な入会金の値上げは、被上告人(債務者)への新規入会を制限し、既存の被上告人(債務者)会員の権益を守るためであることは明らかであり、実際に、他県の不動産鑑定士協会に比して突出して高額な被上告人(債務者)の入会金の負担に耐えられず、日本不動産鑑定協会へ文句を言って、被上告人(債務者)への入会を諦める者もいた(上告人(債権者)山口本人尋問第8回調書15頁)。

2 事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針(参入制限行為等)

 (1)前述のとおり、公正取引委員会の「事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」の「参入制限行為等」では、事業者団体が新たに事業者が参入することを著しく困難とさせる行為、具体的には、「団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況において、不当に、団体への事業者の加入を制限し、又は団体から事業者を除名すること。」(5−1−3)は、市場における競争を実質的に制限するまでに至らない場合であっても、独占禁止法8条1項5号に違反するとしている。

そして、同指針では、事業者団体が、「社会通念上合理性のない高額に過ぎる入会金や負担金を徴収すること。」は、5−1−3における「不当に、団体への事業者の加入を制限」することに当たるおそれが強いことから、事業者団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況においては、違反となるおそれが強いとしている。

(2)上記埼玉県下において被上告人(債務者)会員が鑑定業務受託を独占している状況下で、被上告人(債務者)が5万円から16倍の80万円もの入会金値上げをしたことは、全く不合理で、新規会員の被上告人(債務者)への入会を阻害する目的又は効果をもつことは明らかであり、独占禁止法第8条1項5号、19条の不公正な取引方法(一般指定5項)に違反する。

また、上記埼玉県の鑑定業務受託状況においては、被上告人(債務者)の高額の入会金は、埼玉県内における不動産鑑定業者に係る事業分野における事業者の数を制限することになるから、独占禁止法8条1項3号にも違反する行為である。

(3)社団法人豊橋市医師会事件昭和55年(勧)第7号では、当該医師会に加入せずに独自に開業する場合には、学校医の推薦、優生保護法に基づく指定医師の指定にかかる業務、関係行政機関からの通達等の伝達等業務上必要な便宜の供給が受けられず、また、診療面で他の開業医の協力を求め難いこと等から、当該医師会に加入しないで開業医となることが一般に困難な状況の下で、地区内での病院又は診療所の開設を制限するとともに、その開設の制限を強化するため、開業医として入会する者から徴収する入会金の額を従来の倍額以上に引き上げることを決定したことが、法第8条1項第3号及び第4号違反とされた。

(4)同審決に照らしても、被上告人(債務者)の5万円から80万円の16倍もの値上げが、同法に違反することは明らかである。

第4 事例資料の閲覧等、業務補助者証明書につき被上告人(債務者)会員と被上告人(債務者)非会員との間の著しい差別が停止されるべきこと

 1 事例資料の閲覧等の被上告人(債務者)会員との差別

 (1)事例資料閲覧等が不動産鑑定評価業務に必要不可欠であること

    不動産鑑定士は、鑑定評価業務を行うにあたって、鑑定対象土地の近隣の事例資料を閲覧する必要があるところ、この事例資料は、国や都道府県が保有しているが、個々の不動産鑑定士が直接国や都道府県に閲覧を申請しても、個人情報が含まれているといった理由で閲覧を拒否されており、国や都道府県は、事例資料を一括して、各都道府県鑑定士協会に預け、個々の不動産鑑定士は、不動産鑑定士協会(埼玉県においては被上告人(債務者))において、これを閲覧できるにすぎない。(甲第58号証35頁)

    赤熊証人も、事例資料閲覧の重要性については、「(不動産鑑定士にとって、事例資料を閲覧するということは)非常に重要な評価のポイントになりますね。」「不動産の評価をするに当たっては、取引事例比較法という方式がありまして、それには、不動産の取り引きの事例を調べ、また、データを検証しながら、事例と対照、予算を比較しながら評価していくわけです、そのために重要です。」と明確に証言している(赤熊証人尋問調書4−5頁)

 (2)会員外の者の資料閲覧等手数料が被上告人(債務者)は他協会と比べ高額であること

    被上告人(債務者)の資料の閲覧規程による資料閲覧等の手数料は、被上告人(債務者)の会員であれば、利用料「なし」、事例の複写料(1枚につき)「100円」、その他の資料の複写手数料(1枚につき)「100円」であるところ、被上告人(債務者)会員以外の日本不動産鑑定協会会員等は、利用料「7000円」、事例の複写手数料(1枚につき)「500円」、その他の資料の複写手数料(1枚につき)「300円」と料金が著しく異なる。(甲第27号証の2)

これに比して、東京都不動産鑑定士協会の資料閲覧等の手数料は、閲覧料が同協会の会員であれば「無料」であるが、同協会会員以外の日本不動産鑑定士協会会員、他士協会の会員等であっても「2000円」であり、複写料は、同協会会員とその他の区別なく、一律、同じ手数料となっている。(甲第28号証)

従って、被上告人(債務者)の資料閲覧等の手数料は、被上告人(債務者)会員と被上告人(債務者)非会員とで、他の協会とも比べても、著しい差別がなされている。

 (3)上告人(債権者)は、被上告人(債務者)に入会できないことにより、鑑定評価業務に必要不可欠な事例資料の閲覧等の手数料が、被上告人(債務者)会員と比べて、かなり多額となり、鑑定評価業務において著しい困難が生じていることは明らかである。(甲第59号証) 

2 業務補助者証明書の交付についての被上告人(債務者)会員との差別

 (1)被上告人(債務者)における資料閲覧等で上告人(債権者)が業務補助者を使用できないこと

不動産鑑定業者は、事例資料等の閲覧等をするにつき、不動産鑑定士だけではなく、業務補助者を使用する必要があるが、上告人(債権者)は、被上告人(債務者)会員でないため、被上告人(債務者)から業務補助者証明書の発行を受けられず、業務補助者を使用することができない。

    これに対し、被上告人(債務者)は、会員でない鑑定業者の業務補助者に対しては業務補助者証明書を発行していないが、日本不動産鑑定協会の地域会が発行した業務補助者証明書があれば閲覧を認めていると主張するようである。(被上告人(債務者)準備書面(5)6頁)

    しかし、関東甲信会の事務員は、上告人(債権者)山口との会話で、関東甲信会の業務補助者証明書は関東甲信会においてのみ有効であり、同会の業務補助者証明書では被上告人(債務者)の資料閲覧等できない旨明確に回答している。(甲第65号証)

    従って、被上告人(債務者)会員でない上告人(債権者)は、被上告人(債務者)から業務補助者証明書の発行を受けられないため、被上告人(債務者)において、不動産鑑定評価業務上必要不可欠な事例資料の閲覧、複写等に業務補助者を使用することができない。

 (2)赤熊証言に信用性がないこと

    この点、赤熊証人は、被上告人(債務者)は被上告人(債務者)会員にも業務補助証を発行していない旨証言したが(証人尋問調書4−5頁)、それは被上告人(債務者)の上記主張とも矛盾する。

    また、赤熊証人は、東京都不動産鑑定士協会も独自に業務補助者証明書を発行していないと断言しているが(証人尋問調書2−7頁)、東京都不動産鑑定士協会の資料の収集、管理及び閲覧規程運用細則から同会で独自に業務補助者閲覧証を発行していることは明らかである(甲第28号証)。

    従って、赤熊証人は、業務補助者証明書の発行等に関して正確に把握していないことは明白であり、同証言は信用に値いしない。

3 上記被上告人(債務者)会員と被上告人(債務者)非会員との資料閲覧、業務補助者の交付に関する著しい差別は、独占禁止法8条1項5号及び19条の不公正な取引方法(一般指定1項正当な理由なき間接の取引拒絶(共同のボイコット)、一般指定1項正当な理由なき取引拒絶(共同のボイコット)、一般指定3項差別的対価)に該当し、同法24条により、停止が認められるべきである。

第5 被上告人(債務者)が市町村に対し固定資産鑑定評価員を推薦、斡旋することの停止が認められるべきこと

被上告人(債務者)は、埼玉県内の市町村から受注する固定資産税の標準宅地の鑑定評価業務について、被上告人(債務者)の会員を鑑定評価員に選任するよう各市町村に、不当に働きかけをし、また、同選任にあたって、被上告人(債務者)の会員のみ有利になうような選考基準の設定を市町村に働きかけ、上告人(債権者)と市町村との取引を排除している。   市場における有力な事業者が、取引先事業者に対し自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者と取引しないよう拘束する条件を付けて取引する行為又は取引先事業者に自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者との取引を拒絶させる行為を行い、これによって競争者の取引の機会が減少し、他に変わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなる場合には、当該行為は独占禁止法8条1項5号、19条の不公正な取引方法に該当し、当然に違法となる(一般指定2項、11項排他条件付取引又は13項拘束条件付取引)。

   被上告人(債務者)は、後述のとおり、地価公示及び地価調査等以外の利益率のよい公的機関等の依頼の鑑定業務評価員に委嘱について、被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)関係者のみを推薦もしくは斡旋しているのであるから被上告人(債務者)の構成事業者と競争関係にある上告人(債権者)山口及び上告人(債権者)日本経済研究所を市場から排除している。

 このような被上告人(債務者)の行為は、独占禁止法8条1項及び19条の不公正な取引方法(一般指定1項正当な理由なき取引拒絶(共同のボイコット))に該当するので、同法24条により、被上告人(債務者)に対して同行為の差し止めが認められるべきは明らかである。

   以下、詳述する。

 1 被上告人(債務者)会員等以外は固定資産鑑定評価員に全く選任されていないこと

第2、2項のとおり、平成11年から平成14年の埼玉県業者における「依頼先別の件数及び報酬」(甲第9ないし11、78号証)から明らかなとおり、埼玉県登録業者で被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)関係者でない被上告人(債務者)非会員は、固定資産評価委員に全く選任されていない。

なお、被上告人(債務者)は、荒川村では被上告人(債務者)会員でない後藤計が選任されていると主張するが、同人は、被上告人(債務者)と密接な関係にある日本不動産鑑定協会の業務委員長であったことから、被上告人(債務者)が推薦もしくは斡旋して選任されたと十分に推測できる。(甲第104号証)

   このように固定資産鑑定評価員に被上告人(債務者)会員等しか選任されていないのは、以下の体制により、被上告人(債務者)が、市町村に対し、固定資産鑑定評価員を推薦もしくは斡旋しているからである。

 2 被上告人(債務者)と大多数の市町村が固定資産税鑑定業務に間する委託契約を締結していること

   被上告人(債務者)は、その前身である関東甲信会埼玉県部会のときから、平成6年度の評価替えための鑑定評価業務で不動産鑑定士へ鑑定評価の委託がなされるようになった以降、固定資産税の課税標準を定めるための地価調査に関し、平成7年度(平成9年度の評価替えのため)、平成10年度(平成12年度の評価替えのため)及び平成13年度(平成15年度の評価替えのため)に、埼玉県内の各市町村との間で鑑定評価の業務委託契約をして、各市町村からの鑑定評価の委託のとりまとめを行った。

このような体制下において、被上告人(債務者)は、各市町村に対し、被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)関係者を固定資産鑑定評価員に推薦もしくは斡旋しているものである。

 (1)平成9年度評価替えについて

 @ 「固定資産税評価における平成9年度評価替え以降の鑑定評価の実施体制について」(平成6年10月12日自治評第43号、各道府県総務部長、東京都総務・主税局長あて自治省税務局資産評価室長通達)の「平成9年度評価替え以降の鑑定評価の実施についての取扱要領」では、埼玉県が被上告人(債務者)に対して、固定資産鑑定評価員となることを希望する被上告人(債務者)会員の鑑定士名簿のとりまとめを依頼するとされたが、被上告人(債務者)会員以外の鑑定士等にあっては、希望により埼玉県又は市町村から希望者名簿の交付を受け、希望する市町村に期日までに提出するとされていた。

そして、埼玉県が、被上告人(債務者)及び市町村から提出された希望者名簿から、各市町村の担当の固定資産鑑定評価員を推薦するとされ、市町村は、被上告人(債務者)に対して、「市町村の指定する固定資産鑑定評価員に鑑定評価を行わせ、その結果を報告させる業務及びこれに付随する業務」を委託する体制が採られていた。(甲第34号証の2)

 A このように、平成9年度評価替えにおいては、同内かんにより、埼玉県内の各市町村が、被上告人(債務者)又は被上告人(債務者)の前身である関東甲信会埼玉県部会と、鑑定評価に関する委託契約を締結することとされていた(甲第34号証の2)ところ、埼玉県の担当者が多数の鑑定業者の中から適切な者を選別することは、現実には不可能であることは明らかであり、希望者名簿の取り纏めの段階で、埼玉県と密接な関係にある被上告人(債務者)が、鑑定評価員の事実上の推薦を行っていたことは容易に推測できる。

荒川村の「鑑定評価対戦の経緯について」と題する書面にも、「一部の都道府県鑑定士協会で鑑定士の割り振りを行っていた(独占禁止法に抵触)という話も事実のようである。」と記載されている。(甲第34号証の3)

 (2)平成12年度評価替えについて

その後、契約自由の原則に復帰するため、平成9年12月3日自治評第43号 各道府県総務部長、東京都総務・主務局長あて自治省税務局資産室長通知にて、上記「固定資産税評価における平成9年度評価替え以降の鑑定評価の実施体制について」が廃止された。(甲第34号証の3、甲第34号証の4)

@ しかし、埼玉県では、県市町村課も出席のうえ「埼玉県市町村税務協議会資産税部会」で協議したところ、「申し合わせ事項」として、平成12年度評価替えにおける鑑定評価体制につき、基本的に平成9年度の評価体制に準じ、被上告人(債務者)と随意契約を締結することで合意を得た。(甲第36号証の2)

平成10年2月20日に、埼玉県市町村税務協議会資産税(土地)部会と被上告人(債務者)との間で「打ち合わせ」が行われた後、同年3月17日に、被上告人(債務者)から、埼玉県市町村税務協議会資産税(土地)部会宛てになされた「『平成12年度固定資産税標準宅地評価に係る希望者名簿の受付』について」と題する通知で、被上告人(債務者)が、平成12年度固定資産税標準宅地評価の希望者名簿をとりまとめ、埼玉県内の全92市町村(当時)及び埼玉県に回付するとされた。

 そして、同通知の第3項で、「固定評価員の希望者が直接市町村に申込みに来た場合、士協会(被上告人(債務者))がとりまとめ窓口となっている旨、お話しください。士協会(被上告人(債務者))の連絡先は以下のとおりです。」とし、その下に、被上告人(債務者)の名称、所在地、電話番号、FAX番号が記載されている。(甲第36号証の3)

A その後、平成10年3月19日、埼玉県市町村税務協議会資産税専門部会長から、埼玉県市町村税務協議会会員(固定資産税担当課扱い)宛てに「平成12年度鑑定評価実施体制について(通知)」が通知されたが、内かんが廃止されたにもかかわらず、埼玉県各市町村は、第1項「契約方法及び契約の相手方」としては、基本的に平成9年度評価体制に準じ、被上告人(債務者)と鑑定評価に関する委託契約を結ぶことで「合意を得た」とされた。

加えて、第5項「埼玉県不動産鑑定士協会(被上告人(債務者))に未加入の鑑定評価員等の希望の申込先」では、「埼玉県不動産鑑定士協会に加入していない鑑定評価員並びに直接市町村に申し出た鑑定評価員の希望者の申し込みについても協会(被上告人(債務者))が受け付けるものとされた」。(甲第36号証の2)

B 上記内容は、契約自由の原則に復帰するめに廃止された上記内かんよりも、契約自由の原則と逆行する内容となっており、被上告人(債務者)が、被上告人(債務者)会員のみならず、被上告人(債務者)非会員についても、固定資産評価員希望者の取り纏めを一手に行うこととされたもので、被上告人(債務者)非会員は、直接市町村へ営業活動を行うことが不可能とされた。

(3)平成15年度評価替えについて

@ 被上告人(債務者)の希望者名簿の取り纏め

 (イ)平成15年度の固定資産税評価替えにおいても、被上告人(債務者)から、「平成15年度固定資産税評価に係る希望者名簿について」を送付し、その通知で「(社)埼玉県不動産鑑定士協会(被上告人(債務者))では、平成15年度固定資産税評価に当たりましても、平成12年度の実施体制と同様に遂行して参ります。」と記載している。

    しかし、同通知は、平成13年2月7日に被上告人(債務者)会員及び埼玉県部会会員宛に送付されているが、同月23日が希望者名簿提出締切りとされ、その後の同月26日にアンケート会員及び固定資産鑑定評価員(平成12年度評価替)宛に同年3月6日締切りとして、2回に分けて送付されている。(乙第1号証)

そして、そのわずか6日後である同月12日に、被上告人(債務者)は、各市町村の資産税課・税務課宛てに、乙第3号証の「固定資産税鑑定評価員希望者名簿」を取り纏め、「平成15年度固定資産税標準宅地評価の評価員希望者名簿について(送付)」と題する書面で、「平成15年度固定資産鑑定評価員希望者名簿1部」(社団法人埼玉県不動産鑑定士協会会員)(社団法人東京都不動産鑑定士協会会員)を送付したとするところ(乙第2号証1頁目)、その名簿は乙第2号証4頁目の「平成15年度固定資産税標準宅地鑑定評価員名簿」のようであるが、同名簿には、埼玉県不動産鑑定士協会、東京都不動産鑑定士協会会員が混同であいうえお順に記載されている。

同名簿に記載されている者は全員、平成15年度固定資産税標準宅地鑑定評価員に選任されている。(乙第2号証4ページ目、乙第45号証)

(ロ)他方、上記市町村への送付状には、埼玉県不動産鑑定士協会会員及び東京都不動産鑑定士協会以外の会員名簿については一切触れられておらず(乙第2号証1頁目)、乙第2号証3頁目の「士協会会員外県内業者名簿」が各市町村の資産税課・税務課宛てに実際に送付されたかどうかも疑わしい。

そして、上告人(債権者)日本経済研究所も掲載されている「士協会会員外県内業者名簿」の業者は、一人も、上記「平成15年度固定資産税評価員名簿」に掲載されておらず、平成15年度固定資産税評価員に選任されていない(乙第2号証3頁目、乙第45号証)。

(ハ)上記の事情から、被上告人(債務者)が、わずか6日後に乙第3号証の希望者名簿を取り纏めたとして、「平成15年度固定資産税標準宅地評価員希望者名簿」(乙第2号証4頁目)を各市町村に送付しているのは、その鑑定評価員の割当てが上記希望者名簿提出案内前に被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)の関係者に実際はほぼ決まっているためであると十分推測できる。

このことは、赤熊が、平成の初めころから切れ目なく、安定的に固定資産税の標準宅評価員に選任されており、平成15年度も平成12年度と同じ、上尾市及び隣の伊那市で引き続き選任されていることからも裏づけられる。(赤熊証人尋問調書3−8頁)

従って、被上告人(債務者)が、上記希望者名簿提出以前に、各市町村に対し、平成15年度固定資産鑑定評価員を割当て推薦もしくは斡旋していたことが十分推測される。

 

A 埼玉県からの通知等により新規参入が困難とされていること

    埼玉県と被上告人(債務者)は、上記のとおり沿革上も、人的交流も密接な関係にあるところ、平成13年5月22日、埼玉県総合政策部市町村課長から、各市町村税務主幹部(課)長(固定資産税担当課扱い)宛て、「平成15年度固定資産(土地))の評価替えに係る鑑定評価体制について(通知)」(市第446号)が通知され、「不動産鑑定評価業務の委託について」に留意点が記載され、新規参入者が固定資産税評価員に選任されることが著しく困難な基準が示された。(甲第37号証の2の2)。

同通知を受けて、白岡町等などでは、固定資産税鑑定員選考基準として、新規参入者の参入がほぼ不可能な基準が設けられた(甲第38号証の2)

このように被上告人(債務者)会員に著しく有利な埼玉県の通知における基準、白岡町等の基準が設けられたのは、埼玉県、市町村と密接な関係にある被上告人(債務者)の強力な働きかけによるものであることは、第7第2項(2)の土地評価業務委託制度創設準備会議で、被上告人(債務者)の前身組織が埼玉県に対し「土地評価委託について県知事登録業者に限定して欲しい。」などと要求していることからも明らかである。

 

 2 個々の業者が市町村へ自由な営業活動ができないこと

 (1)固定資産税評価員選任システム上不可能であること

    上記のとおり、埼玉県内では、遅くとも、平成12年度の固定資産税評価替えの際から、被上告人(債務者)が、被上告人(債務者)非会員分の希望者名簿も、全て一括して取りまとめることとなり、そのシステムは現在も続いている。

    このようなシステムにおいては、個々の業者が直接市町村に鑑定評価員の希望を申し出ても、被上告人(債務者)がとりまとめ窓口となっているので、被上告人(債務者)へ希望者名簿を提出するように告げられるのみで、個々の業者が自ら市町村に営業活動をすることは形式的にも不可能なことが明らかである。

(2)被上告人(債務者)元会長、現顧問の赤熊正保の個々の業者の営業活動は独占禁止法上問題との認識であること

 被上告人(債務者)元会長で、現顧問の赤熊正保は、「業者が、鑑定評価の金額を提示して営業活動を行うということは、独禁法上、問題がある可能性があるので、私どもでは、していないはずですね。」「(個々の業者が)見積書じゃなくて、こういう金額ならやれるとか、この金額じゃできないとか、そういうことは業者としては発注先に言えませんので、それはやっていないはずです。」「(受注行為において、価格を提示して受注の勧誘行為を行うということは、独禁法上問題が)あると思ってますけどね。公取も、そういう見解じゃないですか。」と明確に証言している。(赤熊証人尋問調書3−3ないし5頁)

すなわち、被上告人(債務者)は、個々の業者が、市長村に対して自由な営業活動を行うことに対して、独禁法上問題があると全く誤って認識しており、そのような活動を許していないし、していなかった筈であるとのことである。

従って、埼玉県下で、個々の業者が市町村に対し自由な営業活動を行い得ず、固定資産鑑定評価員希望者は被上告人(債務者)を窓口として希望する体制が確立していることは、上記赤熊証言からも明白である。

3 被上告人(債務者)が市町村に対し鑑定評価業務受託を積極的に働き掛けていること

社団法人日本不動産鑑定協会甲信会の「かいほう」14.1bQ7では、被上告人(債務者)の当時の会長である高橋正光が、「平成15年固評鑑定評価受託状況」として、「埼玉県は県下90市町村よりなるが、01年12月現在、士協会(被上告人(債務者))契約72、個人契約14、未定4という契約状況である。報酬は66,000円(事務費こみ)を標準としており、公取問題がさわがれている中、まずまずの成果を得たものと思われる。」と掲載している。

このような、被上告人(債務者)会長の記載は、被上告人(債務者)が市町村に対し鑑定評価業務受託を積極的に働き掛けていることを十分に推測させるものであり、そのような働きかけは、個々の不動産鑑定業者が個別に市町村と鑑定業務を受注することを制限する効果を有するところ、埼玉県下においては上記のとおり個人の営業活動も不可能な状況であり、独占禁止法上問題であることは明らかである。(乙第9号証3頁Q2A2)

 4 市町村の鑑定評価員委嘱前に被上告人(債務者)から市町村に対して鑑定評価員の推薦もしくは斡旋がなされていること

被上告人(債務者)は、市町村と業務委託契約締結をする過程として、市町村と委嘱された鑑定評価員との間で決定した鑑定評価料をもとに、被上告人(債務者)と市長村が業務委託料を見積金額として算出し、業務委託料を決定すると主張するようである。(被上告人(債務者)準備書面(2)他)。

 しかし、実際には、次に述べるとおり、市町村が鑑定評価員を委嘱する前に、被上告人(債務者)と市町村との間で業務委託契約が締結されており、市町村の委嘱前に、鑑定評価員が被上告人(債務者)の推薦もしくは斡旋により内定しており、鑑定評価料が決められていることが明らかである。

(1)被上告人(債務者)が主張する業務委託契約締結過程(被上告人(債務者)準備書面(2))

@ まず、市町村が評価員を選ぶ前の段階で、評価員希望書名簿の提出を希望する市町村に対し、被上告人(債務者)は希望者全員の名簿を提供する。なお、この間、各不動産鑑定士は、別個に、自由な営業活動も行っている。(同主張が事実でないことは第5第2項のとおりである。)

A 次に、被上告人(債務者)が提出した名簿や各不動産鑑定士の営業活動を参考に、市町村は独自の判断で、複数の評価員希望者に対し、見積書の提出を求め、これに応じて評価員希望者が鑑定評価料(1地点あたりの金額)を記載した見積書を自治体に提出する。(甲11)

B 市町村は、評価員希望者から提出された見積書を基に鑑定評価料を決定し、当該金額で鑑定評価業務を受託するつもりがある評価員希望者の中から評価員を選任し、委嘱状(乙11)を発することにより鑑定評価業務を委託する。

 C 市町村と評価員との間で鑑定評価料(1地点あたりの金額)に関する合意が成立し、評価員の選任が行われた後、市町村は、被上告人(債務者)に対し、選任された評価員を通知し(乙12)、評価員との間で決定された鑑定評価料(1地点あたりの金額)と地点数とを被上告人(債務者)に伝えるとともに、見積書の提出を求める。

     これに対し、被上告人(債務者)は、鑑定評価料(1地点あたりの金額)に地点数を乗じた金額に、被上告人(債務者)が行う業務に対する報酬・経費を加えた合計額を見積金額として算出する。(甲11の「平成13年10月12日付け見積書」)

D Cの金額を基に市町村と被上告人(債務者)との間で業務委託契約を締結する(甲1)

(2)固定資産税における鑑定評価体制(概念図)(甲36号証の4)が上記  過程と異なること

     上記の、平成10年3月19日付埼玉県市町村税務協議会資産税専門部会長から、埼玉県市町村税務協議会会員(固定資産税担当課扱い)宛ての「平成12年度鑑定評価実施体制について(通知)」の添付資料2(甲第36号証の4)によると、「固定資産税における鑑定評価体制(概念図)」の順序として、F市町村と被上告人(債務者)の鑑定評価業務に関する委託契約締結、G担当鑑定評価員の決定及び委嘱、H鑑定評価人を県と協会(被上告人(債務者))へ通知とされている。

これによると、そもそも、埼玉県市町村税務協議会と埼玉県市町村税務協議会会員との間で、市町村と被上告人(債務者)の鑑定評価業務に関する委託契約が、市町村が鑑定評価員に委嘱する前に締結される段取りになっており、被上告人(債務者)が主張するような、担当鑑定評価員への委嘱後に、その評価員と市町村で決定された金額をもとに、被上告人(債務者)が見積を出して、市町村と業務委託契約を締結するものではないことは明らかである。

  (3)春日部市等における業務委託契約が上記過程と異なること

   春日部市の被上告人(債務者)との平成15年度の固定資産税宅地評価業務委託契約締結の実際の過程は以下のとおりであり、被上告人(債務者)の主張する上記経過とは明らかに異なる。

   平成13年9月7日   鑑定評価員希望者が春日部市に見積書提出

                1点65,000円(甲11)

     9月10日   鑑定評価員希望者が同市に見積書提出

      1点65,270円(甲11)

     9月11日   鑑定評価員希望者が同市に見積書提出

      1点65,200円(甲11)

  10月9日   同市が被上告人(債務者)に対して見積書提出依頼(乙13)

      10月12日   被上告人(債務者)が同市に見積書提出(甲11)

    10月18日   被上告人(債務者)と春日部市が業務委託契約書締結(甲11)

    10月22日   同市が鑑定評価員を委嘱(乙11)

これによると、同年10月18日に被上告人(債務者)と春日部市との間で業務委託契約書が締結された(甲11)後に、同月22日に春日部市から鑑定評価員を委嘱されており(乙第11号証)、春日部市が鑑定評価員を委嘱する前に、被上告人(債務者)と春日部市との間で業務委託契約が締結されている。

また、業務委託契約書(甲第11号証)のうちの「固定資産税評価(土地)における鑑定評価実施要領」でも、第6、3項で、「市が委嘱した鑑定評価員及び鑑定評価地点数について、業務受託者へ通知する。」と定められており、鑑定評価員嘱託が被上告人(債務者)との業務委託契約よりも後に予定されていることは明らかである。

上記条項は、川口市等においても、定められている。(甲第5号証契約条項19条)

従って、埼玉県内市町村において、委嘱した鑑定評価員との間で決定した鑑定評価料をもとに、被上告人(債務者)が同市に対して見積書を提出し、鑑定評価業務に関する委託契約を締結するという過程がとられていないことは明白である。

  (4)被上告人(債務者)は、被上告人(債務者)の会員であると否とを問わず、不動産鑑定士全員から希望をとって、名簿をそのまま各市町村に送るだけであり、被上告人(債務者)は書類の取り纏めといった事務的な手続を行っているに過ぎないなどと主張するが、上記のように、市町村の鑑定評価員委嘱前に、被上告人(債務者)が市町村と鑑定評価業務を締結することが可能なのは、予め、被上告人(債務者)によって推薦もしくは斡旋された鑑定評価員がそのまま市町村から委嘱を受けることになっているからである。

  5 白岡町が被上告人(債務者)に鑑定評価業務を委託した理由

   白岡町は、平成15年度固定資産評価替えに係る鑑定業務の委託契約の相手先として、被上告人(債務者)に業務委託するとした。

   そして、同町が被上告人(債務者)を契約相手に選定した理由の1つとして、「個人で業務を営む鑑定士と契約した場合は、健康状況などにより万一、業務の執行が出来ない評価替えの準備に支障を来すことも考えられます。契約の相手方としては複数の鑑定士が所属する法人が望まし」いことが挙げている。(甲第37号証の1)

   しかし、同市が被上告人(債務者)と鑑定評価業務に関する委託契約をしたとしても、被上告人(債務者)自身が鑑定評価業務を行うわけではなく、個人の不動産鑑定士等を固定資産鑑定評価員に選任する筈であり、実際に、同市は、平成15年度固定資産税標準宅地鑑定評価員として、渋谷不動産鑑定士事務所の渋谷正雄、大竹不動産鑑定事務所の大竹七郎、轄ェ岸綜合鑑定事務所の根岸一雄、石川不動産建築総合鑑定事務所の石川松雄を委嘱している。

 にもかかわらず、被上告人(債務者)との鑑定評価に関する業務委託契約締結の理由として上記理由を挙げるのは、被上告人(債務者)が被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)関係者の中から鑑定評価員を推薦もしくは斡旋するというシステムとなっているので、それに基づき市が委嘱した鑑定評価員が病気等で業務執行不可能等になっても、被上告人(債務者)が被上告人(債務者)会員等の中から新たに鑑定評価員を推薦もしくは斡旋するので同市としては安心であるということに他ならない。

    

6 赤熊正保証言

  赤熊証人は、上記のように被上告人(債務者)事務局が希望者名簿のとりまとめ窓口となっている理由として、「なんでといいますと、複数の鑑定士がいろんな市町村に希望を出したりしてますし、希望が出てこない市町村があるといけないというんで、やっぱり名簿を出してくださいと。」と証言している。(同人証人尋問調書5−4)

この証言は、複数の鑑定士がいろんな市町村に希望を出したときは被上告人(債務者)が調整して推薦もしくは斡旋し、希望者が出てこない市町村には被上告人(債務者)が不動産鑑定士等を割り当てて推薦もしくは斡旋していることを意味するに他ならない。

 また、赤熊は、「(市町村のほうで、希望者名簿のとりまとめ等事務的なことをやる能力というのが)ないというか、全然ないというわけじゃないでしょうけど、やはり、市町村とすれば、どこか信頼できるところに一本に連絡先を作りたいというのあったんじゃないですかね。」と証言しているところ(同人証人尋問調書5−4ないし5−5)、希望者名簿のとりまとめ等事務能力さえない市町村が、鑑定希望者名簿をそのまま送られたとして、その中から、適切な鑑定人を選任できる能力があるとは到底考えられず、この発言からも、被上告人(債務者)が、市長村に対し、鑑定評価員を推薦していたことが十分推認される。

7 各市町村の担当の証言等

  上告人(債権者)は、平成15年度の固定資産税評価員の受託のため、埼玉県下の市長村を大部分を営業で訪問したが、「平成13年5月頃までは、競争させるし、業者登録しているのはあなたのほかに5名しかいないからということで、皆野町も都幾川村も見積書を出させると言っていたのに、」「6月1日以降は一切話も受け付けてもらえ」なかった。「13年6月以降は行っても、もう決まったような言い方をして、毎度毎度同じだと、12年度そのままだという言い方でした。」(上告人(債権者)山口本人尋問1−6ないし8)。ということで、結局、1市長村からも見積書も出させてももらえなかったのである。

  それは、平成13年6月頃に、被上告人(債務者)から推薦もしくは斡旋した固定資産評価員を、各市町村がそのまま選任したためであり、それは、次の蓮田市、杉戸役場、白岡町役場の担当者の発言からも明らかである。

 @蓮田市の江澤正夫税務課長の証言

 平成14年6月28日、蓮田市の江澤正夫税務課長は、上告人(債権者)山口との会話の中で、被上告人(債務者)が推薦した固定資産鑑定評価員を同市がそのまま選任することを明確に認めている。(甲第62号証の1、2)

・山口「鑑定協会(被上告人(債務者))は大体、あのー推薦でこの前のあのー3名、いや4名だったか。」

 江澤「言ってくるからね。」

・江澤「平成9年、あれー前回の平成12年というか11年1月1日の評価の時も推薦だったんでしょ。」

・山口「鑑定士協会(被上告人(債務者))名簿は僕は入っていないけど、入っている人の名簿がくるのね。」

 江澤「名簿はこないんじゃないですか。」

 山口「名簿はこない、じゃー、直接この人とこの人にと、」

 江澤「うん、うん、そういうことですね。」

 山口「お願いしてくださいってきますか。」

 江澤「直接でしょう。」

・山口「それは一応は人選は推薦どおりでしょう。」

 江澤「そうですね。」

・江澤「推薦はすることになるでしょう。誰が考えたって当然ね。」

A杉戸町役場税務課武井税務主幹の証言

平成14年6月28日、杉戸町役場税務課の武井税務課主幹は、上告人(債権者)山口との会話の中で、被上告人(債務者)が推薦した固定資産鑑定評価員を同市がそのまま選任することを明確に認めている。(甲第63号証の1、2)

・武井「従来協会(被上告人(債務者))との契約で、協会(被上告人(債務者))との単価契約でね、ですからあのー、実際の鑑定士もそちらの方から選んでいくということ」

 山口「鑑定協会(被上告人(債務者))に入っていないと、じゃー入れないんじゃないですか。」

武井「まー、現状その今までのやり方でいくと。」

山口「業務委託だからそうだよね、」

武井「まー、そうですね。そういうことになりますね。」

・山口「鑑定士協会(被上告人(債務者))の名簿があるわけだから。」

 武井「はい。」

 山口「そこから選ばないとだめでしょ。」

 武井「そうですね。」

  ・武井「具体的に直接あのー、人選に関してですね、あのーむこうから。」

・武井「もうある程度契約の段階ですからね。」

山口「契約はもう士協会(被上告人(債務者))でやっている可能性が高いということですね、それはもう武井さんはもう、その段階だから契約が進んでいる可能性が高い、業務委託契約という形であるということはだいたい一応決めてる。」

・武井「そうですね。」

  B白岡町役場の折原喜代子課長補佐の会話

平成14年6月28日、杉戸町役場税務課の武井税務課主幹は、上告人(債権者)山口との会話の中で、被上告人(債務者)が推薦した固定資産鑑定評価員を同市がそのまま選任することを明確に認めている。(甲第64号証の1、2)

・山口「あれ(固定資産鑑定評価)は鑑定協会(被上告人(債務者))との契約でしたかね。」

   折原「はい、鑑定士協会(被上告人(債務者))ですね、そうです。」

山口「人選でほとんどの人が推薦があっているといってるけど、やっぱ推薦があってるんでしょうかね。」

折原「あったと思うんですよ。まえから、大体決まっているんですよね。割り当てがね。えー。」

・山口「推薦があって大体その通りやったという感じですかね。」

折原「そうですね。」

・山口「こっち(白岡市)で人選しろといっても、誰か分からないんですよね。」  

 折原「そうですね。」

折原「士協会(被上告人(債務者))と委託契約するしかない、そうですよね。」

 8 岐阜県不動産鑑定士協会に対して警告等された状況と同様であること

 (1)公正取引委員会は、平成13年3月1日、社団法人岐阜県不動産鑑定士協会が、岐阜県内の市町村が発注する平成12年度の固定資産評価替えに係る標準宅地の鑑定評価業務について、一括して「鑑定評価に関する業務委託契約」を締結することとし、会員が市町村と個別に契約することを認めず、市町村に働きかけるなどして、会員が市町村と個別に契約できないようにさせていた疑いがある行為が認められたので、協会に対し、独占禁止法8条1項4号(事業者団体による構成事業者の機能又は活動の不当な制限の禁止)に違反するおそれがあるものとして、今後、同様の行為を行わないよう警告を行った、とされている。

岐阜県内の市町村のほとんどは、協会と「鑑定評価に関する業務委託契約」を締結しており、協会は、同契約に基づき、固定資産評価替え業務に関し、(1)会員である不動産鑑定士等に鑑定評価を行わせる、(2)不動産鑑定士等の行った鑑定結果を市町村に報告する、(3)鑑定評価の対価として不動産鑑定士等に報酬を支払う等の業務を行っているとされた。(甲第14号証)

(2)上記のとおり、被上告人(債務者)においても、被上告人(債務者)非会員の固定資産鑑定評価員の希望者名簿までも取り纏める体制を確立し、埼玉県内にあるほとんどの市町村と鑑定評価に関する業務委託契約を締結しており、同契約に基づき、固定資産評価替え業務に関し、(1)被上告人(債務者)会員又は被上告人(債務者)関係者の不動産鑑定士等に鑑定評価を行わせ、被上告人(債務者)非会員には行わせない、(2)不動産鑑定士等の行った鑑定結果を市町村に報告する、(3)鑑定評価の対価として不動産鑑定市等に報酬を支払う業務を行っている。(甲第5、10、11号証)

  従って、被上告人(債務者)は、公正取引委員会から警告等を受けた岐阜県鑑定市協会と同様の状況で、市町村との間で固定資産税鑑定評価業務に関する契約締結を行っているものである。

     

第6 被上告人(債務者)の国税庁等に対する路線価価格評価員の推薦、斡旋の停止が認められるべきこと

被上告人(債務者)は、国税庁が発注する路線価価格の鑑定評価業務について、日本不動産鑑定協会と共同して、埼玉県内の事務所長に被上告人(債務者)の会員のみを鑑定評価員として推薦したり、不当に働きかけて、上告人(債権者)と国税庁、国税局との取引を排除しており、独占禁止法8条1項及び19条の不公正な取引方法(一般指定1項正当な理由なき取引拒絶(共同のボイコット))に該当するので、同法24条により、被上告人(債務者)に対して同行為の差し止めが認められるべきは明らかである。

   以下、詳述する。

1 路線価価格鑑定評価員に被上告人(債務者)非会員が1人も選任されていないこと

(1)関東信越国税局の委嘱による埼玉県下の路線価価格の鑑定評価員会議構成員は、平成13年分は126名で、平成14年分には127名、平成15年分は126名である。(甲第70号証の1ないし2の3)

    路線価価格鑑定評価については、国税局から日本不動産鑑定協会が鑑定評価員希望者名簿の取纏めを受託しており(乙第7号証)、埼玉県については関東信越国税局及び各税務署において選任することとなっている。

    しかし、国税局が、希望者名簿から個々の地域における不動産鑑定士を選任する知識等を持ち合わせているとは到底考えられず、日本不動産鑑定協会と密接な関係にある被上告人(債務者)が、埼玉県下における相続税鑑定評価員選任に関して推薦を行っていたことは、路線価価格の鑑定評価員会議構成員表(甲第70号証の2の1ないし3)のほとんどが被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)関係者であることから明らかである。

上記埼玉県下の路線価価格鑑定評価員会議構成員には、被上告人(債務者)会員又は被上告人(債務者)関係者以外の、埼玉登録業者で被上告人(債務者)非会員は、平成13年分から平成15年分で、1人も選任されておらず、もちろん、上告人(債権者)山口も一度も選任されたことがない。

 (2)なお、鑑定評価員会議主幹の石井敬二は東京都不動産鑑定士協会会員であり、その個人的人脈で東京都不動産鑑定士協会会員から柳川能久を初め10名が委嘱されたものである。(ただし、嘉藤雅俊は平成13年のみ。)(甲第71号証)

また、平成15年分では、被上告人(債務者)は、被上告人(債務者)会員でも、東京都等他の不動産鑑定士協会の会員でもない西原不動産鑑定事務所やアークプレイザルも委嘱されていると主張するところ、西原崇は、元被上告人(債務者)会員の勤務鑑定士であった者で(甲第44号証の1の2、3、上告人(債権者)山口本人尋問第9回口頭弁論調書2−1頁)、現在は被上告人(債務者)会員であり(甲第91号証)、また、アークアプレイザルは、日本不動産鑑定協会の業務委員長を務める後藤計が代表である株式会社二十一鑑定の業務補助者であった者であり(甲第94号証)、被上告人(債務者)と関係ある者であるので、被上告人(債務者)の推薦もしくは斡旋があったと十分推測される。

第7 被上告人(債務者)の公共機関等への公共事業の鑑定評価員の推薦、斡旋を停止が認められるべきこと

被上告人(債務者)は、公共事業用地等についての不動産鑑定業務について、日本不動産鑑定協会と共同して受注価格(鑑定報酬価格)を固定し、国、埼玉県、同県内市町村、公社、公団、共同債権買取機構など民間大手企業との間で用地対策連絡協議会を通じて価格の協定をしており、また、用地対策連絡協議会を通じて提供を受けるこれらの者からの鑑定評価業務発注情報に対して、被上告人(債務者)の会員のみを鑑定評価員として推薦したり、不当に働きかけて、上告人(債権者)と国、埼玉県、市町村、公社、公団、民間大手企業等との取引を排除しており、独占禁止法8条1項及び19条の不公正な取引(一般指定1項正当な理由なき取引拒絶(共同のボイコット))に該当するので、同法24条により、被上告人(債務者)に対して同行為の差し止めが認められるべきは明らかである。

   以下、詳述する。

1 埼玉県用地課と被上告人(債務者)との間の公共事業に係る不動産鑑定に関する合意

 (1)公共事業に係る不動産鑑定評価基準(昭和61年4月1日改正)の取扱い協議による鑑定価格協定合意

 埼玉県用地課の会議事録によると、昭和61年4月9日午前10時から午前11時まで、被上告人(債務者)の前身組織の「社団法人日本不動産鑑定協会 関東甲信会埼玉県部会」から桜井勉部会長、大林一司、岩崎仁三郎が、埼玉県用地課からは高岡実が出席し、「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準(昭和61年4月1日改訂)の取扱い」について疑義があったので、統一的な取扱いを図るため、協議を行った。

 そして、両者間において、原則として、基本鑑定報酬額表(別表)の類型A「宅地又は建物の所有権」によるものとする(但し、提外民地を鑑定依頼する場合、提外民地の事例のみを採用し評価させる場合は類型Bによることができる。)と協議し、合意された。(甲第39号証の2)

 この点、被上告人(債務者)は、これは埼玉県内部で決定されたものであり、埼玉県部会はその決定を一方的に通告されたに過ぎないなどと主張するようである。

 しかし、上記の公文書である会議事録には、明確に被上告人(債務者)と「協議」した旨記載されており、被上告人(債務者)前身組織の部会長桜井勉外上記出席者の名刺まで添付されているものであり、公共用地の鑑定報酬額について、埼玉県と被上告人(債務者)前身組織で協議したことは明らかである。

このように埼玉県と被上告人(債務者)の前身組織との間で基本鑑定報酬額の合意がなされたため、埼玉県の公共事業にかかる不動産鑑定評価の依頼は、同合意を実施するために、当然に、被上告人(債務者)の推薦もしくは斡旋した業者を選任していることが十分推定される。

(2)土地評価業務委託制度創設準備会議における被上告人(債務者)への業者決定権留保の合意

 @ また、埼玉県用地課の会議報告書によると、昭和63年2月10日午後3時から午後4時30分からの「土地評価委託について」会議が開催され、埼玉県用地課用地課からは三井俊秀指導係長、白根泰主事が、被上告人(債務者)の前身組織である関東甲信会埼玉県部会、用対連対策委員会からは、川名俊之、坂東健男、浦野清司、岩崎仁三郎、岩崎彰、堀口剛、佐久間文彦、切敷幸志が出席した。

A その会議の概要は、「土地評価業務の委託制度を創設する準備を進めてきたところであるが、このたび、具体的な資料を初めて配布し、受託者側の意見を徴し、また、県側の要望を伝えたものである。(別紙資料のとおり)」

  そして、会議において、被上告人(債務者)は、1.(土地評価委託について)県知事登録業者に限定して欲しい。2.委託単価についても協議してほしい。なお、用対連対策委員会は窓口であり、決定権は県部会(現被上告人(債務者))に留保してほしい旨要望している。

これに対し、埼玉県側から、1.については「協会(被上告人(債務者))から正式な形で要請してみてはどうか。」との回答であったが、2.については、「その予定である。」とのことであった。

B つまり、鑑定評価業務委託については、用対連対策委員会は単なる窓口にすぎず、業務の業者への割り当て等の決定権については、被上告人(債務者)に留保されることとなったと解される。(甲第39号証の4)

また、被上告人(債務者)またその前身組織は、上記1項の要望のように、埼玉県に対し、被上告人(債務者)に有利な土地評価委託制度の構築を働きかけていることは明らかである。

2 中央用対策連絡協議会における申し合わせによる公共事業に係る不動産鑑定報酬基準の固定化

(1)公共報酬基準の固定化

 @ 昭和59年4月17日国土庁告示第2号「不動産の鑑定評価業務に関し請求することのできる報酬の基準」(甲第40号証の3)は拘束力はない。

   中央用対策連絡協議会では、平成8年3月28日、国土庁、大蔵省、建設省及び自治省の4省が所管する財団法人日本不動産研究所の報酬基準(甲第40号証の2)が平成7年10月に引き上げられたことに伴い、平成6年に改正した「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準」を、財団法人日本不動産研究所の報酬基準の8割相当額をもって、公共報酬基準を決定するとし理事会において申し合わせを行い、会員及び地区用対連あて通知した。(甲第40号証の1)

その公共報酬基準は、民間大手を含め、官庁等発注者側の公共事業用地等についての不動産鑑定報酬基準固定価格となっている。

A その中央用対策連絡協議会の下部団体の関東地区用地対策連絡協議会は、会長が国土交通省関東地方整備局長であり、埼玉県土木部用地課長が会員である。(甲第41号証の2)

さらに下部団体の埼玉地区用地対策連絡協議会は、埼玉県内の地方公共団体及び県内で事業を行う国の出先機関並びに公共公益的事業を県内で行うその他の事業者で、この会の趣旨に賛同する団体によって構成されているところ、同会会長は埼玉県県土整備部長であり、県土木事務所の行政区域ごとに支部があり、支部長は土木事務所長である。(甲第41号証の1)

B 上記のとおり、中央用対策連絡協議会が公共事業に係る不動産鑑定報酬基準を申し合わせて固定価格となった結果、平成10年4月の埼玉県出納局出納総務課所管の「埼玉県財務規則」103条で、「随意契約を行う場合においては、予定価格を定め、契約の相手方から見積書を徴さなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、見積書の徴取を要しない。」と定められ、その6号で、「その他出納局長が見積書を徴することが適当でないと認めた契約を締結するとき。」とされているところ、「埼玉県財務規則の運用について」(昭61.3.31出総第1428号出納局長通知)では、その6号に(11)不動産の鑑定依頼が挙げられている。(甲第43号証の1)

 その理由としては、埼玉県による改正の理由起案書で、「『不動産鑑定士に対する鑑定報酬』については、中央用地対策連絡協議会(県も下部組織に加入している。)が決めた協定価格により報酬額が決まるので、見積書を徴する意味がないことがあげられる。」と明確に記載されている。(甲第43号証の2)

 このように、公共事業の用地取得のための鑑定業務については、中央用地対策連合協議会が日本不動産鑑定協会と見積もり価格についての契約を締結し、そこで定められた価格表に基づいて、日本不動産鑑定協会との間で業務委託契約を締結するので、被上告人(債務者)と個々の不動産鑑定業者は、上記で定められた価格に基づいて鑑定業務を委託する。

 (2)用地対策連絡協議会を通じての鑑定評価発注情報の取得

    平成14年5月20日に開催された、平成14年度埼玉地区用地対策連絡協議会総会会議資料には、被上告人(債務者)支部の連絡調査委事務活動として、「関東地区用地対策連絡協議会の用地取得計画調整要領に基づき、県内で用地買収を予定している各起業者から年度当初に提出された取得計画書に会員の計画を加えた11支部の取得計画書を作成し、支部内で事業を行う全起業者及び当該支部に隣接する他支部の会員に配布した。」と記載されている。(甲第42号証)

    被上告人(債務者)は、埼玉地区用地対策連絡協議会に被上告人(債務者)会員を講師として頻繁に派遣するなど(甲第95号証8、9頁)、深い交流関係にあり、同協議会から上記のとおり鑑定評価業務発注情報を得ていると推測される。

    他方、被上告人(債務者)の会員でない上告人(債権者)には、上記資料は一切配布されていない。

(3)被上告人(債務者)は、上記のとおり、用地対策連絡協議会を通じて、国、埼玉県、市町村、公社、公団、民間大手との間で公共事業用地等についての鑑定報酬価格を協定しているところ、それらの公共機関等からの公共事業にかかる不動産鑑定評価の依頼は、同合意を実施するために、当然に、上記発注情報をもとに、価格の固定に同意している被上告人(債務者)会員が優先的に選任され、価格で競争しようとする業者が排除される結果となっている。

  

3  国土交通省関係の鑑定評価員の選任に関する被上告人(債務者)の推薦、斡旋

(1)国土交通省関東地方整備局の鑑定評価員が国土交通省OB等以外は被上告人(債務者)会員のみ選任されていること

 @ 国土交通省関係の公共事業に関わる鑑定評価業務も、上記のとおり、用地対策連絡協議会を通じて協定された鑑定報酬で行われるところ、国土交通省関東地方整備局が、埼玉県内の物件について、平成12年度ないし14年度に鑑定評価依頼した業者32業者のうち、建設省、大蔵事務官OB等の関係のある業者の4業者のほかは、いずれも全て被上告人(債務者)会員である(甲第68号証、甲第69号証の1の1ないし27の2)

 具体的には、埼玉県土木事務所において年度当初に被上告人(債務者)が推薦し指名した業者との間で「土地評価等委託契約書」(通称単価契約)が作成されており、例えば、平成12年度埼玉県浦和土木事務所は122件の土地評価等の委託をしたが、単価契約の指名業者以外のものとの契約は全くなく、全て単価契約の指名業者のみが委託された(甲第4号証)。

  A 国土交通省は、被上告人(債務者)主催の無料相談会後援をしたり(甲第101号証)、大宮土木事務所が被上告人(債務者)に講師派遣を依頼し、被上告人(債務者)が被上告人(債務者)会員を推薦するなどしており(甲第95号証9頁)、被上告人(債務者)と深い交流関係にある。

このような関係において、上記鑑定評価員の選任にあたっても、多数の不動産鑑定士から選別しえない国土交通省、埼玉県土木事務所等は、被上告人(債務者)の推薦もしくは斡旋された鑑定評価員を選任していると十分推測できる。

    この「公共事業に関わる鑑定評価」の売上額は不動産鑑定評価業界の総売上額の40パーセント以上の金額を占めているが、被上告人(債務者)に加入していないため、上告人(債権者)山口は一度も同鑑定評価員に選任されたことがない。

 (2)国土交通省関東地方整備局利根川上流河川事務所用地課用地第一係長岡本弘行の証言

  平成15年6月19日、国土交通省関東地方整備局利根川上流河川事務所用地課用地第一係長岡本弘行は、上告人(債権者)山口との会話の中で、被上告人(債務者)が推薦した固定資産鑑定評価員を同事務所がそのまま選任することを明確に認めている。(甲第75号証の1、2)

・岡本「地元関係に精通した方とか、それとか、あとはもしどうしてもそういうところでなければ、協会(被上告人(債務者))のほうから推薦してもらうとか、そういう形で対応を今まで、あー、してあり、いると、はい。」

・岡本「そう、あのーうちの事務所でいえば埼玉がもちろん中心、うん。」

 (3)日本道路公団東京建設局の鑑定評価員の選任に関する被上告人(債務者)の推薦

日本道路公団東京建設局の平成12年度、平成13年度、平成14年度の埼玉県内における用地取得に伴う不動産鑑定評価依頼書及び不動産鑑定評価依頼に係る承諾書の開示によると、東京不動産鑑定士協会の会員であるか、経営者が会計検査院の出身であるための人脈による森総合鑑定梶A住宅土地整備公団の退職者を雇用しているための人脈である樺央不動産鑑定所、日本道路公団の子会社への出向者がいるために同公団と関係が深い椛セ陽不動産鑑定所以外は、全て被上告人(債務者)会員であった。(甲第72号証の1ないし4、甲第73号証の1ないし3、甲第74号証、甲第81号証)

従って、日本道路公団東京建設局の鑑定評価員選任結果からしても、被上告人(債務者)が、(1)同様、被上告人(債務者)会員を推薦していたことが明らかである。

第8 国土交通省の土地鑑定委員会における地価公示鑑定評価員の委嘱

被上告人(債務者)は、地価公示鑑定評価員の鑑定評価業務については、単に希望者からの申請書類を取り纏めているだけであると主張する。

しかし、被上告人(債務者)が地価公示鑑定評価員を割当てて推薦していることは、以下のとおり明らかである。

 1 地価公示鑑定評価推薦要領等 

地価公示鑑定評価員は、地価公示鑑定評価員推薦要領3条で、日本不動産鑑定協会が、国土交通省土地鑑定委員会に毎年「推薦」することになっており、埼玉県で地価公示鑑定評価員を希望する者は、被上告人(債務者)会員、被上告人(債務者)非会員問わず、被上告人(債務者)に委嘱申請書を提出し、被上告人(債務者)会長が取りまとめ日本不動産鑑定協会長に申請しなければならないと定められているところ(甲第97条の1、乙5、6)、ここでも、被上告人(債務者)を通じなければ希望できない仕組みが採られている。

それに基づき、上告人(債権者)山口が被上告人(債務者)へ提出した委嘱申請書が「地価公示評価委員推薦申請書」(乙第43、44号証)である。

 

 2 赤熊証人が被上告人(債務者)幹部クラス会員による割当てを認めていること

   上記のとおり、被上告人(債務者)は、地価公示鑑定評価員の鑑定評価業務については、希望者からの申請書類を取り纏めているだけであると主張し、地価公示鑑定評価推薦要領、地価公示鑑定評価員推薦要領運用細則(甲第97号証の1、2)においても、被上告人(債務者)は希望者からの委嘱申請書を取り纏め、日本不動産鑑定協会へ提出するものと規定されている。

しかし、赤熊証人は、地価公示鑑定評価業務の「割当ては、分科会の幹事が継続地点の評価の勤続年数だとか、いろんなこと、また国土交通省の規定があるので、それに併せて評価依頼先を決めていきます。」と、被上告人(債務者)幹部クラス会員が就任している分科会の幹事が、「割当て」を決め、推薦していることを明確に認めている(証人尋問調書4−1頁)。

 3 このように、被上告人(債務者)が一括して鑑定評価員希望者名簿を取り纏め、市町村、国税庁等が鑑定評価員を決定するという形式をとりながら、被上告人(債務者)会員及び被上告人(債務者)関係者、官庁OB等しか鑑定評価員に選任されていないという実態は、固定資産鑑定評価員等でも共通しており、固定資産鑑定評価員等についても、地価公示鑑定評価員と同様に、被上告人(債務者)幹部クラス会員等が割当てを行い、市町村等に推薦もしくは斡旋していることが十分推測できる。(但し、地価公示鑑定評価、地価調査鑑定表は仕事の手間に対して報酬が低廉であるので被上告人(債務者)会員でない者も選任されている。)

      

第7 裁判所からの鑑定評価業務を被上告人(債務者)非会員は全く受託していないこと

前述のとおり、平成11年から平成14年の「裁判所における競売及び非訟事件のための評価」は合計11581件、17億2720万7千円のうち、埼玉県登録業者の被上告人(債務者)非会員が受注したのは1件もない。(甲第31号証のないし33号証、79号証)

 このような実績からも明らかなとおり、被上告人(債務者)の会員であるのと、そうでなく入会拒否されている被会員とでは、実質的に信用力に格段の差が生じているものと推定され、結果として取引拒絶をされているに等しい。

被上告人(債務者)は、競売不動産評価人候補者選考試験要領(乙第42号証の2)が被上告人(債務者)非会員にも通知されていると主張するが、同要領は平成15年1月9日付であるところ、上告人(債権者)は、これ以前に、このような通知を受け取ったことはない。

第8 民間からの鑑定評価業務の受託においても被上告人(債務者)会員と比して受託が著しく少ないこと

 1 被上告人(債務者)会員と比べ被上告人(債務者)非会員の民間からの受託が著しく少ないこと

   前述のとおり、民間からの鑑定評価業務の受託についても、平成11年から平成14年の「依頼先別の件数及び報酬」(甲第7号証ないし9、78号証)によると、被上告人(債務者)会員であるのと、そうでなく被上告人(債務者)非会員とでは、実質的に信用力に格段の差が生じており、結果として取引拒絶をされているに等しい。(甲第80号証)

   また、上告人(債権者)は、被上告人(債務者)に入会できないことにより、後述の無料相談会における受注の機会を奪われている。

2 JR東日本、森ビル、埼玉県庁職員の証言

 (1)JR東日本東京工事事務所契約用地部用地取得グループの磯崎英繁の証言

 平成15年6月15日、JR東日本東京工事事務所契約用地部用地取得グループの磯崎英繁土は、上告人(債権者)山口との会話の中で、被上告人(債務者)が推薦した鑑定評価員を同事務所がそのまま選任することを明確に認めている。(甲第76号証の2)

・山口「鑑定士協会(被上告人(債務者))入っとかないとね。」

 磯崎「最低そういうことでしょうね。」

・山口「埼玉県全体を、だから埼玉県の鑑定士協会(被上告人(債務者))にはいってからがいいと、こういうことですよね。」

 磯崎「そうですよね、あのー結局身元保証じゃないですけどね。誰とでもというわけいかないのでね。」

(2)株式会社森ビルの発注担当者の対応

上告人(債権者)山口が、平成14年10月ころ、株式会社森ビルに対して、鑑定評価業務受託の営業活動を行ったが、発注担当者からは、「うちは、民間なんだけども、「公共用地の用対連基準でやっていますから、被上告人(債務者)士協会とかの割当てによってすべてやっています」「営業に来られても無駄ですよ」「我々は競争入札はしていません。」と言われた。(上告人(債権者)山口の本人尋問第9回口頭弁論調書2−6)

 (3)埼玉県庁開発指導課不動産鑑定担当主任程塚力の証言

  平成15年12月1日、埼玉県庁開発指導課不動産鑑定担当主任程塚力は、上告人(債権者)山口との会話の中で、不動産鑑定業者の問い合わせをされた場合、埼玉県が、被上告人(債務者)の無料相談会を紹介したり、また、無料相談会に絡めなくても被上告人(債務者)を紹介することがあることを明確に認めた。(甲第100号証の1、2)

  ・山口「どこか業者いますかといた時に、士協会(被上告人(債務者))を紹介するということはありうるか。士協会(被上告人(債務者))がありますとかは。」

  ・程塚「あのー鑑定市協会(被上告人(債務者))、例えば無料相談会やっているじゃないですか。そういう形での紹介はしてますけどね。」

  ・山口「無料相談会にからめなくてもあるでしょ。どっか鑑定」

  ・程塚「それはありますよね。」

・山口「鑑定したいんだけど、どっかありますかねと言われた時。」

・程塚「それはありますよね。」

  ・山口「鑑定士協会(被上告人(債務者))がありますよねというよね。」

  ・程塚「そうですね。」

 3 無料相談会から排除されていることによる民間からの受注機会の大幅減少

   上記の無料相談会とは、被上告人(債務者)が定款に掲げている事業の1つであり(甲第12号証)、被上告人(債務者)主催の月例無料相談会が毎月行われているほか、被上告人(債務者)及び日本不動産鑑定協会が主催、国道交通省・埼玉県後援による不動産鑑定士による不動産の無料相談会が年2回開催されている。(甲第101、95、96号証)

平成14年4月6日に開催された春の無料相談会では来場者数63名、相談者数25名、同年10月6日に開催された秋の無料相談会では来場者数72名、相談者数29名であった。

 そして、東京都不動産鑑定士協会の「『定例無料相談会』設置規程」によると、相談員が来訪者により、鑑定業者の斡旋の依頼を受けたときは、依頼者の住所、対象物件の所在地、及び依頼者の意向等を勘案して斡旋を行う(甲第102号証)とされているところ、被上告人(債務者)の無料相談会においても、鑑定業者の依頼があったときは、当該相談員が適当な被上告人(債務者)会員に斡旋するか、直に受けることになっているものと十分推測される。

   しかし、上告人(債権者)は、被上告人(債務者)の会員でないので、上記無料相談会の会員になることができず、上記のとおり県から民間に一般的に紹介される、無料相談会を通じての民間法人、個人からの受注は全く受けられず、受注の機会を大幅に減少させられている。

 

 4 被上告人(債務者)会員であることの信用力が高いこと

   赤熊正保証人は、名刺や看板に「埼玉県不動産鑑定士協会会員」などの記載をしている名刺や看板を見たことはないと証言している(同証人尋問調書2−1頁)が、同証言が全くの虚偽であることは明らかである。

なぜなら、甲39号証の2に被上告人(債務者)の前身組織であった日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会に入会し、同会の代表として、埼玉県用地課の職員と協議した桜井勉、大林一司、岩崎仁三郎の名刺の写しが会議禄に添付されているが、それらの名刺には、それぞれ、「社団法人日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会」「国土長土地鑑定評価員、埼玉県土地鑑定評価員」「社団法人日本不動産鑑定協会会員」などと記載されているのであり、被上告人(債務者)組織になってからも、同様に記載されていることが十分推測できる。

  このように、被上告人(債務者)会員が、被上告人(債務者)の会員であることを名刺等で表示していることや、上記各発注者の発言等からも、被上告人(債務者)会員であることが、埼玉県内における鑑定評価受注に関し、公的機関、民間ともに信用性が高く、受注に有利であることが明らかである。

第9 情報の受領等が困難であること

 1 事例資料の閲覧、複写等手数料につき被上告人(債務者)会員と被上告人(債務者)非会員が著しく差別され、被上告人(債務者)非会員の情報収集が著しく困難であること

   第5で詳述したとおりである。

                

2 鑑定評価業務受注情報等入手困難であること

   上記のとおり、被上告人(債務者)は、埼玉県、国土交通省、用地対策連絡協議会等との交流が深いところ、被上告人(債務者)会員は、用地対策連絡協議会等を通じての鑑定評価発注情報の取得等(甲第42号証)を初めとする各機関の鑑定評価発注情報を得ている。

   しかし、被上告人(債務者)非会員の上告人(債権者)は、それらの情報を入手することが著しく困難である。

 3 被上告人(債務者)会員向け研修会等による情報受領ができないこと

   被上告人(債務者)は、被上告人(債務者)会員向けに、建築費に関する研修、固定資産税評価に関する研修会、汚染可能性地点の検索と浄化費用など減価簡易システム、DFC法の適用事例とエクセルによる検討、都市計画法に基づく開発許可等の基準に関する埼玉県条例の改正について等の研修を、また、市町村担当者向けに固定資産税評価に関する情報提供会を開催している。(甲第95号証2頁、甲第96号証2頁)

   また、被上告人(債務者)は、平成14年1月号の関東甲信会の「かいほう」(甲第98号証)で、「群馬県不動産鑑定士協会と共催による『建築現場研修会』をさいたま市で開催し、被上告人(債務者)より75名、群馬県不動産鑑定士協会より25名計100名の多くの出席を頂き、再調達原価の簡易な積算方法や建築部位の名称把握など有効な研修が出来た。ひき続き『固定資産をめぐる四囲の状況』と題して共催を試みたところ、これも総勢70名の盛況下に終了した。地の利を活かした周辺県との共催を今後も実施したいと考えている。」と掲載しているもので、研修等による情報収集が不動産鑑定業にとっていかに重要かがよく判る。

   上告人(債権者)は、このような被上告人(債務者)会員向けの研修会や、各委員会からの情報収集等被上告人(債務者)会員すなわち大多数の埼玉県登録業者が得ている鑑定評価業務に必要な情報を得られず、被上告人(債務者)会員に比して、必要、有益な情報の受領等が困難であることは明らかである。

第9 損害について

   上記のとおり、被上告人(債務者)は、被上告人(債務者)会員が埼玉県下における鑑定業務受託を独占している状況下で、平成11年9月7日に上告人(債権者)山口がなした被上告人(債務者)への入会申込、平成13年1月19日に上告人(債権者)日本経済研究所がなした被上告人(債務者)への入会申込を、不当に拒否し、独占禁止法第8条1項5号、同法19条の不公正な取引方法(一般指定5項)に当たることは明らかである。

また、被上告人(債務者)が、市町村等公的機関等に対し、被上告人(債務者)会員等を、固定資産鑑定評価員、路線価価格鑑定評価員、公共事業用地等についての鑑定評価員等を推薦、斡旋する上記行為は、被上告人(債務者)の構成事業者と競争関係にある、上告人(債権者)と市町村等との取引を排除しており、独占禁止法8条1項5号及び19条の不公正な取引方法(一般指定1項正当な理由なき取引拒絶(共同のボイコット))に該たることも上記のとおりである。

従って、上告人(債権者)は、被上告人(債務者)の上記不法行為により、被上告人(債務者)山口と上告人(債権者)日本経済研究所が被った、被上告人(債務者)会員の平均収入から、相当経費分10パーセントを控除した金額の逸失利益等の損害が認められるべきである。

第10 継続している損害と、継続中の公正競争阻害

   損害は現在も継続中であり、犯罪にたとえれば、継続犯であるといいうる。継続中である場合に、例え一度証拠不十分で起訴にならなかったとしても、その後証拠が見つかって継続犯として認定されれば、罰の決定をしたり、損害賠償義務を法的に認定する場合、犯罪の期間中継続的に罪及び損害が続いているのであるから、継続犯の始期にさかのぼって罪及び損害が認定されるべきである。

   これはあたかも犯罪が始期から継続している場合には、現行犯逮捕が証拠不十分で釈放され、その後に証拠が残り現行犯逮捕された場合であっても、始期から終期にいたるまで罪及び損害が認定されるのと同じである。

   本件においては平成10年4月の茨城県からの被上告人(債務者)の友好の北関東連絡協議会茨城県不動産鑑定士協会の東京都の事業者の排除事件から始まり、平成11年7年から9月にかけての被上告人(債務者)の排除の動きから今にいたる一連の行為は正当な理由なく独占禁止法違反の行為であり、証拠の収集の過程を通じてようやくそれが証明できた時点での正当な理由なく違法の認定が出来たとしても、罪及び損害は始期から終期まで認定されるべきである。

   終期については今後10年程度は続くと予測することが出来る。

   日本の独占禁止法による差止請求においては、「著しい損害」を要件としたが、日本が法を継受した母国のドイツや独占禁止法の母国アメリカではその要件が無く、差止は比較的容易である。

   日本の場合には、「著しい損害」を要件としたためにある時点では「著しい損害」にいう著しさに達していない場合でも、その後継続犯における継続の時間がたった場合には著しい損害が認定できるという場合があり得る。従って、証拠不十分という言葉を著しさに適用した判決が、当該継続犯がまだ長期に続いている場合には著しい損害とその後認定されるという事態も想定され、本件の場合には相当な長期にわたって著しい損害が続いたので、差止が可能になったと考えられる。

   上告人(債権者)に対する損害についても、公正競争阻害による社会に対する損害についてもこのことは言えると考えられる。

   取引拒絶はそもそも各事業者に対する不法行為であると同時に、社会公共に対する競争阻害による損害も問題としている。この場合には被上告人(債務者)が独占禁止法違反をするとか安売りをしないとの念書をとった上で、入会させるというような行為によれば公正競争阻害の程度は低くなる。本件では非価格行為である取引拒絶は、ゼニス事件のように純粋に非価格行為ではなくて、上告人(債権者)の安売りの行為を理由としたものであって、特に公正競争阻害の程度は高いと言える。価格維持効果が高くその意味では公正競争阻害性の程度からも共同のボイコットの違法性は高いので即刻差止を求め仮処分の申請をも行うものである。

第11 差止の性格と共同ボイコット

   独占禁止法上の差止の概念は、法制定の最初の段階から紆余曲折があったが、その中のもっとも悪い見解を、保守的であり、かつ、日本の官庁的な体質として本判決は採用した。

   それが受忍限度論である。犯罪や違反に対して受忍限度があるとは思われない。すべての犯罪に受忍限度があるとすれば窃盗における金額の少なさであろう。それによれば1,000円以下は許されるとかの金額が設定されなくてはならない。しかし死刑判決がほんのわずかな強盗においても認められている例からすると、これは適当ではない。

   次に悪質さの受忍限度がありうるのかという問題がある。確かに悪質さにも社会が受任しなくてはならない限度があるとすれば、規範など必要ないということであり、日本には独占禁止法等コンプライアンス学習でごまかそうというような態度は多くある。実際はこの世の中は独占禁止法違反をしていかないと生きていけないという思想が、入会拒否さえも違法としえない日本の独占禁止法の運用の仕方をしている社会においては蔓延している。これが悪質さの受忍限度論である。

   しかし本来の差止という概念はそもそも所有権の妨害排除請求権と同様に、営業の自由に対する妨害を排除して、営業の自由を確保するという概念である。

   この概念は日本人のように自由という概念が明治維新後に西洋から入ってきた民族には分かりにくい概念である。現代哲学では自由な主体である人間が、自由な行為を行うためには妨害する行為を排除しなければならないという概念である。この場合には著しい損害という要件は必要としないが、日本では制度の制定時に著しい損害という文言で、要件とした。

   この場合、受忍限度論と関係してこの著しい損害論を考えるのは妥当とは言えないことは上記受忍限度論批判のところで述べたとおりである。

   ところで著しい損害という文言は民事保全法にも現れる概念である。

   しかし差止は給付訴訟の概念には含まれるが、上記の通りに独占禁止法違反の現行犯さえ逮捕できないように逮捕は逮捕するという給付的概念ではあるが、それは先程の妨害排除の請求権と似た概念であって、損害が大きいから逮捕すべきであって、損害が著しくないから逮捕すべきではないということにはならず、常にあるいはほとんど常に逮捕すべき性質のものである。

   民事保全法が考えているものとは違っている。他の諸国では差止についてはサマリー差止が認められているのであるがそれは妨害排除による営業の自由の保証を意味している。民事保全法にいう著しい損害と、本件の独占禁止法違反の差止における著しい損害の要件とを同じ言葉ではあるが、同一の要件と考えることは到底出来ない。

   独占禁止法における著しい損害を法的に妥当な解釈として解釈するとすれば、独占禁止法の一方の母国アメリカにおけるように、独占禁止法違反要件の内の継続して違反が続いていること、妨害排除しなければ営業の自由が確保できない状態にあることの二つの要件に該当している必要があると考えられる。

   ドイツの入会拒否を違法とする国家による立法の例では、「もし参加を拒むことによって客観的に正当な理由なく平等的ではない取扱となり、ある事業者に競争上不当な不利益を与える場合には、入会を拒むことは許されない。」としており、この哲学は何であろうか。客観的に正当な理由なく平等的ではない取扱となり、ある事業者に競争上不当な不利益を与える場合には、という二つの要件を設けている。第一の要件は競争においては平等な取扱を要請している。第二の要件は競争上不当な不利益を与えるという要件であり、公正競争阻害を要件としている。

   一方アメリカにおいては

   Group Boycotts

グループによるボイコット

The role of per se analysis in evaluating group boycotts has long been a topic of confusion.

グループによるボイコットの判断において当然に違法であるとの判決は長い間混乱していた。

Northwest Wholesale Stationers provides the Supreme Court's most complete recent discussion of the issue:

最高裁判所はノースウエスト卸売事務用品会社判決で、この問題にほとんど完全な判断を行った。

Cases to which this Court has applied the per se approach have generally involved joint efforts by a firm or firms to disadvantage competitors by "either directly denying or persuading or coercing suppliers or customers to deny relationships the competitors need in the competitive struggle."

当裁判所は当然に違法であるとの原理を適用してきた事件は、一般的に言えば「競争する上で競争者が必要な関係を直接的に拒絶したり、拒絶するように供給者や、顧客に間接的に説得したり、強制したりすること」によって競争者に不利益を与えるような単独の事業者あるいは共同の事業者による共同の行為をいうのである。

In these cases, the boycott often cut off access to a supply, facility, or market necessary to enable the boycotted firm to compete, and frequently the boycotting firms possessed a dominant position in the relevant market.

これらの事件においては、通常の場合にはボイコットされた事業者が競争する場合に必要な供給や、施設や、市場にアクセスすることが出来なくなり、また通常の場合には当該市場においてボイコットを行った企業が独占的な地位を保有していることが非常に多い。

In addition, the practices were generally not justified by plausible arguments that they were intended to enhance overall efficiency and make markets more competitive.

それに加えて、市場全体の効率性を増大させ、市場における競争を活発化させようと意図されたことを理解出来る主張によって正当化されることは一般的にはほとんどないような行為である。

Under such circumstances the likelihood of anticompetitive effects is clear and the possibility of countervailing procompetitive effects is remote.(58)

そのような環境下においては反競争的な効果を持つ蓋然性が高く、それとは逆に競争促進的な効果はほとんど期待できないといえる。

The Court then held that, absent market power or "unique access to a business element necessary for effective competition," expulsion from a buying cooperative is appropriately analyzed under the rule of reason.(59)

従って、裁判所は市場支配力がない場合や、「競争を効果的にするために必要なある事業上の要素への特別なアクセス」がない場合や、購入組合からの排除などは合理性の基準によって分析するのが妥当であるとの判断を示した。

Subsequently, in SCTLA, 493 U.S. at 432-36, the Court clarified that group boycotts used to implement price-fixing conspiracies may be condemned without a market-power inquiry.

それに続いて、SCTLA 事件においては、価格固定の共謀を遂行するために用いられるグループによるボイコットは市場支配力の証明がなくても当然に違法であるとの判断を明瞭に示した。

Recent applications of the per se rule to group boycotts have tended to involve either boycotts of suppliers or customers directed toward discouraging dealings with the boycotters' competitor or boycotts utilized to implement per se unlawful price fixing or market divisions.(60)

グループによるボイコットに対する当然に違法の原則の適用は、ボイコットを行う側の競争者との取引を供給者あるいは顧客に対して拒絶させるように命令したりするボイコットか、あるいは、当然に違法な価格固定や、市場の分割などを遂行するために使用されるボイコットに対して、最近では適用されるようになっている。

アメリカにおいては上記のようにFTCは考えている(FTCの論文よりの引用であり、筆者訳。)。

以上により日独米の共同ボイコットに関する比較を行う。

(1) 競争する上で競争者が必要な関係の拒絶を要件としている。この場合の必要な関係とはドイツの場合と同じく競争を成立させる条件、つまりは平等な競争上の条件を保証している。これは個別企業に対するものであり、個別企業の営業の自由を保証したものといえる。                     

(2) 「競争者に不利益を与える」ことを要件としている。不利益を要件としている。不利益は直接に損害にならなくても要件としていることは妨害排除による営業の自由を確保しようとしているのか、損害を要件としているのかは不明であるが、競争者への不利益とは個別企業の保護を目的としているといえる。

(3) 「これらの事件においては、通常の場合にはボイコットされた事業者が競争する場合に必要な供給や、施設や、市場にアクセスすることが出来なくなり、また通常の場合には当該市場においてボイコットを行った企業が独占的な地位を保有していることが非常に多い。」「そのような環境下においては」という要件を設けた。

    これは共同ボイコットにおける環境条件について限定を設けたものである。

    「反競争的な効果を持つ蓋然性が高く、それとは逆に競争促進的な効果はほとんど期待できない」という理由からである。

    これは公正競争阻害性について述べていると同時に、排除された個別企業はアクセスすることが出来ない故に、また独占的な地位を保有している故に排除された個別企業は損害を受けていると考えられる。

    例えば、カルテルを行っている事業者達に対して、そのカルテルに入れてもらえなかった事業者が市場が自由競争と、一般競争入札によって成り立っており、安売りで大きくなり、ついにはカルテルを破って、大企業になったという例が考えられる。

    しかしもし本件事件のように上告人(債権者)日本経済研究所は、郵政省の一般競争入札や、文部省の一般競争入札や、日高市や、宇治市の一般競争入札においては安く入札できていたのであるから、もし入札できていたら大きな企業に成長していたと推測出来る。しかし随意契約からほとんどの契約が成り立っており、被上告人(債務者)との協定価格から成立しているような市場においては、一切受注できなかったのであるから、信用される立場にある被上告人(債務者)の共同ボイコットがいかに「競争する場合に必要な供給や、施設や、市場にアクセスすることが出来なくなり、また通常の場合には当該市場においてボイコットを行った企業が独占的な地位を保有している」かを認定することが出来る。

(4) 日本の共同ボイコットの定義においては、流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針において次のような要件が定められている。

 取引を拒絶される事業者等が市場に参入することが著しく困難となり,又は市場から排除されることとなることによって,市場における競争が実質的に制限される場合(注4)には,当該行為は独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する。

(注4)事業者団体による共同ボイコットにより,市場における競争が実質的に制限されると認められる場合の例については,上記(注2)を参照。

共同ボイコットによって,例えば,次のような状況となる場合には,市場における競争が実質的に制限されると認められる。

価格・品質面で優れた商品を製造し,又は販売する事業者が市場に参入することが著しく困難となる場合又は市場から排除されることとなる場合

革新的な販売方法をとる事業者などが市場に参入することが著しく困難となる場合又は市場から排除されることとなる場合

総合的事業能力が大きい事業者が市場に参入することが著しく困難となる場合又は市場から排除されることとなる場合

事業者が競争の活発に行われていない市場に参入することが著しく困難となる場合

新規参入しようとするどの事業者に対しても行われる共同ボイコットであって,新規参入しようとする事業者が市場に参入することが著しく困難となる場合

   本件の場合には、例示のうちの「事業者が競争の活発に行われていない市場に参入することが著しく困難となる場合」に該当すると考えられる。

   競争の活発に行われていない市場に該当するのは、随意契約からほとんどの契約が成り立っており、被上告人(債務者)との協定価格から成立しているような市場においては、一切受注できなかったのであるから、信用される立場にある被上告人(債務者)の共同ボイコットがいかに「競争する場合に必要な供給や、施設や、市場にアクセスすることが出来なくなり、また通常の場合には当該市場においてボイコットを行った企業が独占的な地位を保有している」かを認定するアメリカにおける当然違法の考え方と同じように、当該市場において被上告人(債務者)が取引事例の管理保有とか、相続税路線価の会議における地位とかからしていかに独占的な地位を保有している故に競争の活発に行われていない市場であるのかということが認定できることにより、入会のモラトリアムがいかに独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する行為であるのかを認定できる。

(4) 但し、安売りの業者である上告人(債権者)が東京から埼玉県に来ることによりこれまでの配分が上告人(債権者)に奪われるのかを恐れたのであるから、自由競争におけるカルテル破りとは全く違って、被上告人(債務者)が自らの利権を守るために行った共同ボイコットであることが分かる。これはアメリカにおいては「当然に違法な価格固定や、市場の分割などを遂行するために使用されるボイコット」として上記のFTCの文章にも例示されており、日本でも「共同して,安売りをする販売業者を排除するために,安売り業者に対する商品の供給を拒絶し,又は制限すること」という例示があり、商品の供給ではなく、信用の供給ではあるが、日本でも違法な、正当な理由のない、競争が実質的に制限される行為であると例示している。当然違法を競争が実質的に制限される行為であると解釈すれば、アメリカも日本も同様な考え方によって法律の運用を行っていることになる。

    従って本件事件は日本の法令においても競争が実質的に制限される行為であり、共同ボイコットに該当し、差止されるべき現在も今後も続くであろう違法な行為であるといいうる。被上告人(債務者)の行為は公正競争阻害性が強いばかりではなく、著しい損害を上告人(債権者)に与え続けているからである。入会したとしてもそれから10年間はのれんの毀損の続くであろうような個別企業に損害を与え続けるであろうような行為である。

    独占禁止法第24条が侵害のおそれを要件としているのは、他の場合とは差止の要件を違った意味に解釈していると考えることが出来る。

    以上により即刻差止の仮処分の申立を行うものである。

第12 憲法上の問題

   事業上の営業の自由を認めている日本国憲法においては、事業活動が出来ないことは生活権を奪うことになり、独占禁止法違反による営業の自由は認められない。

   不動産鑑定評価の事業は、法によって画定された市場であり、地価の調査とは違っている。不動産鑑定評価に関する法律と、最低売却価格制度等による。不動産鑑定評価基準に則った地価の調査の特に権威付けられたものをいう。

   従って一度営業を埼玉県に移した場合には容易に変更が出来ず、変更すれば受注が困難になるというような種類のものである。従って埼玉県から東京都にもう一度営業を移すということは方針としては出来ない。

   従って、埼玉県から排除しようという被上告人(債務者)の行為は上告人(債権者)の事業活動そのものを不可能ならしめるものであるのであり、憲法上の移転の自由や、営業の自由やらの自由権をおかすものである。

   これらは神聖であって侵すべからざるものである。

   従って憲法上の理由は上告状において別途主張する。

第13―1 受忍限度論

これまでの差止制度の創設の会議においては一部分でちょっとだけ受忍限度という言葉を使用したが、それに飛びついたと思われる第一審判決は上記の通りに意味がない。

著しい損害とは生活権及び営業の自由という憲法上の権利そのものの侵害なのであって、それ以外のものではなく天賦のものから生まれたものである。

以 上

第13−2 受忍限度論

平成10年5月25日に発表された民事的救済制度に関する研究会について考察する。「」の後が引用に対する見解。

「独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度に関する研究会(第3回)議事概要 

1 日 時 平成10年5月20日(水)10:00〜12:00

2 場 所 公正取引委員会11階 大会議室

3 議 題

(1)私人の差止訴訟と公正取引委員会の排除措置との関係について

(2)私人の差止請求権の法的性質について

 4 議事概要

(1)各議題について事務総局から配布資料に沿って説明を行った後,自由討議が行われたところ,概要は以下のとおり。」について検討する。

 「〇 不正競争防止法では,民法上では不法行為が成立するとはいえない不法行為類型に対して差止請求権を認めている。これは民法の枠組で認めているのではなく,不正競争防止法固有の観点から差止めを認めていると考えられるところ,独占禁止法についても差止請求を認めようとする場合には,そのことを念頭に置く必要があるのではないか。」

 独占禁止法違反については特に生存権に関わるということで憲法問題である。自由経済の下で自由に営業する権利は生存権と、職業選択の自由から導かれるものである。不正競争防止法は独占禁止法とそのような意味で一対のものである。

 「〇 公正取引委員会が行う排除措置については,排除措置の内容は差止めに限定されるものではない点,競争秩序回復のための手段であり,主観的利益の回復ではない点において,主観的な利益侵害が生じたときの救済手段である私人による差止めとは異なる。」

公正競争阻害性は私人の損害とは別の観点であり、自由経済の憲法体制の下での経済の憲法である独占禁止法は、公共的利益である公正競争を守り、社会に対する公正競争阻害の効果を阻止するためのものであるが、トート法によってかねてから私人に対する営業の自由の妨害に対してはコモンローによる救済が認められていたので、その延長としても独占禁止法による私人への損害賠償請求の権利と、差止が認められたのである。同じく公正競争阻害であっても独占禁止法に違反しますという念書の下で市場に参入させることと、独占禁止法に違反しない業者を入会させない行為は共に公正競争阻害をしているが、私人に対する損害賠償請求が認められる金額には正反対のものがある。公正競争阻害性と、損害賠償請求の金額とは正反対の場合がある。

 「〇 公正取引委員会の排除措置と重なる部分もあるだろうが,私人のイニシアチブを強調して差止めを認めてもいいのではないか。」

私人のイニシアチブによるとしても捜査権限がなくほとんど不可能に近い状態と思われる。

 「〇 行政による対応ができるのに,私人による差止めを認めるためには,個々人が損害を受けているということを論拠とする必要がある。しかし,私人によるイニシアチブをあまり強調すると,この主観的利益と関係なく認め得るということになり,問題ではないか。」

「〇 参考資料の4を見ると,エドウィン・リー・ジャパン事件,東京都と畜場事件,東芝エレベーター事件など,いくつかの事例では差止めが認められていれば使われていたであろうというものもある。」

但し違反の継続性と、命令的差止、予防的差止について判断できたかどうかは不明である。

 「問い合わせ先 公正取引委員会事務総局経済取引局総務課電話 03−3581−5476(直通)」

 「〇 差止権者の範囲をどうするかという問題がある。独占禁止法は政府や地方公共団体が関係してくるので,それらにも差止請求権が与えられてもいいのではないか。」

合衆国政府がイニシアチブをとっているアメリカの例は参考になる。

 「〇 米国のPrivate Attorney Generalといった考え方のように,私人による訴訟であっても司法長官の訴追と同じような客観的な適合性を維持する性質を持つとすると,我が国では座りが悪いのではないか。」公正競争阻害性についてどれ程に判断するかの問題である。

 「〇 差止めが認められる要件としては,単なる事実上の被害だけでは足りないと考えられるところ,独占禁止法の保護法益が何かということを念頭に置いておかないと議論が難しいと思う。」

公正競争阻害性と、私人の損害とは連動している。 

「〇 不正競争防止法では,品質誤認表示を使用する行為のように,不法行為では損害賠償を請求することはできないが「営業上の利益」が侵害されるおそれがあるという理由から,差止請求が認められている。この点に関し,判例では公正な競争秩序の下で競争する利益という非常に抽象的な利益が侵害されていることについて,それが営業上の利益の侵害に当たると述べているものがある。」

「営業上の利益」が侵害されるおそれの概念については、「公正な競争秩序の下で競争する利益」が侵害されるおそれとみてよい。法哲学的にはそのようにいいうる。これは憲法から派生したものであり、憲法問題でもある。

 「〇独占禁止法の保護法益の議論に関しては,米国でのAnti Trust Injuryの法理で議論されている内容が参考になるのではないか。」

反トラスト法違反によって被害を被るという概念は、実際に被害に遭ってみないとどれぐらい大きいものであるかは分からない。

「〇独占禁止法には多様な違反行為があるため,差止めは適切な救済手段たり得るか否かという点が問題。カルテルは差止めによって利益が保護され得るような違法行為ではないが,出荷停止や東芝エレベーター事件のように参入を排除されたというような事例では,金銭賠償よりも差止めの方が救済手段としては適切だと思う。米国では合併規制についても私人に差止めを認めているが,我が国では競争上の被害を被った人一般に差止めを認めるということまでは考えられないのではないか。」

 競争上の被害を被った人のうち、カルテルによって被害を被るということはクラスアクションの中で第一次の購買者にも認めてよいと思われるが、それは公正競争阻害からの回復という意味がある。

「〇 独占禁止法第19条違反の一部の行為類型や事業者団体の加入拒否などは,差止めが救済手段として適当と考えられる典型的な事案ではないか。」

これが本件事件である。

 「○ 主観的利益保護という観点から差止めを認めると,消費者団体とか公益代表主体といったところには差止めを認めにくくなるかもしれない。」カルテルによる損害は、民法第709条によって損害賠償請求の手続をとる制度になっている。

 「○ 損害賠償訴訟では,一般消費者一人当たりの被害額が小さいために,訴訟を起こすインセンティブがあまりないので,消費者に訴権を認めても実際に使われないといったことが起こり得る。損害賠償訴訟においてすらこのような問題があるのであるから,差止めについても同じような問題が生じるのではないか。」これが問題になっている。

 「○ 米国では,二重賠償のおそれがあるため,最終消費者には損害賠償の原告適格が認められていないが,差止めの場合は二重賠償の危険がないので,原告適格が認められている。」差止は二重の賠償にはならないが、最終消費者であってもプライベートに行うには非常に困難な作業である。

 「○ 独占禁止法違反の認定に関する公正取引委員会中心主義という建前を崩して,裁判所で独自に行うルートをどこまで認めるかということは重要な問題である。排除措置との関係では,いきなり訴訟というのではなく,まず公正取引委員会に申し出をさせて,一定期間内に公正取引委員会が何らかの措置を採らなければ出訴できるようにするということも考えられる。」

公正取引委員会に強制捜査の権限が認められていない以上、どちらでも同じであるが、公正取引委員会にその権限が認められるならばそのようにするのもよいと思われる。 

「○ 公正取引委員会の排除措置命令があり,現実的な効果として,この命令により被害を受けた私人は救済されるのだから,排除措置という行政措置で十分ではないか。また,今の制度でも,誰でも情報を公正取引委員会に申告して,公正取引委員会が独占禁止法違反だと認定すれば排除措置が採られるわけであるから,それで不十分だということであるのならば,情報収集のところを充実させる等により対応すればよいのではないか。」公正取引委員会に認定する能力・権限が備わっていない。 

「○ 独占禁止法は第一義的に公益を保護しており,副次的に私益も保護していると考えるが,現在の制度は,公正取引委員会がスクリーニングを行うことを前提にしていると理解している。そうであるならば,私益侵害を理由に直接裁判所に提訴されると,競争政策上好ましくない判断がされるおそれがある。」好ましくないということは裁判所を信用していないということか。 

「○ 競争者の場合,競争促進よりも自己の利益のために戦略的に独占禁止法を利用する可能性が高いので,ある程度絞りをかけないと逆に競争を歪めるために独占禁止法が利用されるおそれがある。」独占禁止法が競争をゆがめているという本はたくさん出ているけど。談合を推奨する本もあった。

 「○ 現行法は,公正取引委員会がまず動いて,訴訟は東京高裁で行うということを基本にしているわけだが,損害賠償についてそれが崩れてしまっているのであるから,もう訴訟は全部地裁でもいいと割り切る考え方もある。」地裁はほとんど何も出来ない状態である。

 「○ まず,パブリックエンフォースメントを充実させていって,それにより救済の実を上げていくという論理があると思うが,公正取引委員会のリソースがそこまで広がるかといった問題がある。また,リソースの限界から,公正取引委員会は独占禁止法違反事件の中でも重要な事件だけを扱い,それ以外は取り上げないという場合が出てくるということがあり得るので,そのような小さな事件は私訴で対応したいという意見もある。」私訴は公正競争阻害性の問題をも取り扱っているという認識であるが、しかし公正取引委員会のリソースはそれ程大きくないという印象である。

 「○ リソースの問題があるのであれば,国民的なコンセンサスを得てリソースを広げるといったことをまず考えるべきではないか。」

 国民の認識が談合は利益があるという認識から変わるべきであろう。

「○ 公正取引委員会の排除措置と私人の差止めは同じものだけれど併存していると考えるのか,それとも守備範囲がそれぞれあって分担すると考えるのかという問題。基本的には分担関係になって補完し合うのだと思うが,わずかに競合する部分もあると思う。」

本件事件においてはその「わずかに競合する部分」に該当して、カルテルの一部分としてとらえられるものである。純粋に価格以外の行為と見る向きは少ないであろう。

 「○ 競合する部分というのはあると思うが,排除措置は単なる行為の差止めよりはもっと広い内容を持っており,それはやはり私訴では無理であろう。」

公正競争阻害を排除して社会に利益をもたらすという効果を持つのが、公正取引委員会であり、公正競争阻害を排除することによって私人に利益をもたらすのが私訴である。今後は念書をとって入れるようになるであろう。これではただ公正競争阻害が増すのみである。それが悔しいことである。

 「○ 私人による差止訴訟の既判力の主観的範囲というのは訴訟当事者間のみで,他の者には当然判決の効力は及ばないのだから,そこが公正取引委員会の排除措置と根本的に異なる。公正取引委員会の排除措置というのは一般的にこれはダメと言ってしまうので,対世効と同様な効果を持つ。だから競合する,重なり合うといっても,性格が違うと思う。」念書をとって入れるのは公正競争阻害があるから違反であると言ってもらいたいのだが、それは損害がないから公正取引委員会に期待するのは無理か。すると永久に日本は談合は儲かるという世界になってしまう。

高校生でも悪いことはしってやっている。

 「○ 原告適格者の範囲の問題について,これは比較的広く認めておいても訴訟を起こすインセンティブがなければ起こさないのだから,濫訴ということは実際上はあまり考えられないのではないか。不正競争防止法でも訴訟を提起する者の類型というのは固定してきており,あまり心配する必要はないのではないか。」至当。 

「○ 第一審は地裁で行うとしても,控訴は東京高裁に集中させるということは考えられないか。公正取引委員会の判断は最終的には東京高裁で見直しがされるわけだから,そこのところを集中させておけばダブルスタンダードの問題はクリアできると思う。」

今回は民法の担当者が行った点に問題があると言えないか。

「○ 独占禁止法の差止請求に係る事件というのはすべて東京高裁で第二審を担当するといった趣旨であるとすると,東京高裁に集中するほどの専門性の有無,また遠隔地の当事者の不利益といった点を考慮しなければならない。」

各高裁の独占禁止法担当部を作るべきであろう。

 「(2)次回は,「差止めの対象となる行為類型」,「訴権者の範囲」を議題とすること,また,次回会合の開催日程は6月24日(水)午前10時〜12時に行うこととされた。 以上

 (文責:公正取引委員会事務総局 速報のために事後修正の可能性あり。なお,配布資料の入手を希望される方は,前記問い合わせ先にご連絡くださるか,インターネットの公正取引委員会のホームページを御覧下さい(http://www.jftc.admix.go.jp)。)」

事務のために省略。 

「独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度に関する研究会(第3回)

                     平成10年5月20日                               午前10時〜正午

                    公正取引委員会事務総局

議事次第

1 開会

 2 私人の差止訴訟と公正取引委員会の排除措置との関係

 3 私人の差止請求権の法的性質

 4 閉会

<配布資料>

  3−資料1 私人の差止訴訟と公正取引委員会の排除措置との関係

  3−資料2 私人の差止請求権の法的性質

  参考資料6 住民訴訟・株主代表訴訟をめぐる学説等

  参考資料7 差止をめぐる判例・学説等

  参考資料8 特別法により差止請求権が認められているもの

○ 私人の差止訴訟と公正取引委員会の排除措置との関係

<独占禁止法の体系>

 「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」は,自由経済における企業の事業活動の基本的ルールを定めたものであり,全ての事業者に適用される法律である。 また,企業間の競争を維持・促進し,自由経済のメリットを活かす基盤を整備する競争政策を遂行するために制定された法律であり,その体系上,独占禁止法違反行為については,専門行政機関である公正取引委員会の排除措置を中心として規律されており,その他の刑事制裁,民事上の規律においても公正取引委員会の決定がかかわる仕組みになっている。」

公正取引委員会においてはこれまで行政書士会の壇上におけるすったもんだの事件もすべて無効確認できないとして放置してきた。今回の入会をモラトリアムするという行為に対しても、私的な好き嫌いはどうしようもないという立場をとってきた。

「1 独占禁止法の目的

  独占禁止法は,「公正かつ自由な競争を促進して,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を図る」ことを目的としている。 

* 独占禁止法1条  この法律は,私的独占,不当な取引制限及び不公正な取引方法を禁止し,事業支配力の過度の集中を防止して,結合,協定等の方法による生産,販売,価格,技術等の不当な制限その他一切の事業活動の不当な拘束を排除することにより,公正且つ自由な競争を促進し,事業者の創意を発揮させ,事業活動を盛んにし,雇傭及び国民実所得の水準を高め,以て,一般消費者の利益を確保するとともに,国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とする。」

まさに被上告人はこの文章に該当している。

 「2 独占禁止法の内容

  独占禁止法は,上記法目的を達成するために次の実体規定を置いている。

 ・ 私的独占の禁止(法3条前段) ・ 不当な取引制限の禁止(法3条後段) ・ 不公正な取引方法の禁止(法19条) ・ 特定の国際的協定又は契約の禁止(法6条) ・ 独占的状態に対する措置(法8条の4) ・ 企業結合の制限(法9条〜18条) ・ 事業者団体の一定の行為の禁止(法8条)」

今回の本件事件においては事業者団体の一定の行為の禁止(法8条)共同ボイコットの行為に該当する。

 「3 独占禁止法の執行

 独占禁止法は,法目的を実現するために,独立行政委員会である公正取引委員会を設置し,独占禁止法違反行為を規律する手段として次の3つを規定している。」

 独立行政委員会である公正取引委員会の機能強化が望まれる。

「@ 行政上の規律 ・ 公正取引委員会による違反行為の排除措置命令 ・ 公正取引委員会の課徴金納付命令 ・ 公正取引委員会の申し立てによる裁判所の緊急停止命令A 刑事制裁一定の違反行為,確定審決違反等に対する罰則B 民事上の規律 事業者の違反行為に対する無過失損害賠償責任(審決前置) 

● @〜Bの手段は,それぞれ目的,機能を異にしているので,同一の違反行為に対して重複して用いられることがあるが,中心となるのは@の公正取引委員会による行政上の規律である。公正取引委員会は独占禁止法違反事実があると思料するときは,職権をもって調査を行い,審決により適当な措置(排除措置等)を命ずることができる(法7条,8条の2,17条の2,20条,48条,53条の3,54条)。」

 排除措置については入会のモラトリアムの場合には公正競争阻害性もあるが、私人への損害額が大きいのであるから、差止が必要である。

「● @の公正取引委員会の審決を争う審決取消訴訟については,公正取引委員会の事実認定について実質的な証拠がある場合に裁判所の判断を拘束する実質的証拠の法則など,通常の行政事件訴訟とは異なる手続が定められている(法80条〜83条)。」実質的証拠と見るかどうかの判断が必要である。

 「● A及びBによる規律においても,公正取引委員会の決定が関与する仕組みとなっており,Aの刑事制裁では公正取引委員会の専属告発制度が定められ(法73条,96条),Bの民事上の規律である無過失損害賠償請求は公正取引委員会の審決が確定しなければ主張できないとされており(法25条,26条),裁判所は損害額について公正取引委員会の意見を求めなければならない(法84条)。」

 民法709条によって損害賠償請求がおこなわれるようになっている。

「● 上記独占禁止法違反事件に関する訴訟の裁判権は東京高等裁判所が有している(法85条)。

  (以上参考資料1参照)」

 <検討事項>

 「1 法理論上の問題

(1) 独占禁止法体系の中に民事的救済制度を導入する際の法理論上の問題点

   私人による差止訴訟は,民事法体系に従って行われることになるが,公正かつ自由な競争秩序の維持という公益を目的としている独占禁止法に,私人の法的利益の保護を目的とする民事救済制度を導入することは法理論上の問題はないか。」

もともと不法行為法によっても、トート法によっても損害賠償請求が認められていたので問題はない。

「 ○ 公法と私法の関係

 公法・私法の関係については,我が国の法体系が大陸法の影響を受けていたことから,両者が従来明確に区別されていたが,近年の立法について公法・私法の中間領域ないし混合領域が広くなっており,両者を明確に区別しない考え方が支配的となっている。 また,近時,独占禁止法と民法の関係に係わる問題について,民法学者の側で競争秩序を私法上の公序に組み込んだり,経済法学者の側からも私法秩序と競争秩序は元来市場秩序を支えるものとして相互に不可分の関係にあるという見解が有力に主張されており,岐阜信用組合事件最高裁判決においても,民法90条を介して独占禁止法違反行為の私法上の効力が論じられている。 このように,独占禁止法が公益を目的としているとしても,独占禁止法自体の性格が私人の利益を包含していると考えられるのであれば,行政法規としての特殊性にこだわることはなく,民事的救済制度を導入しても,法理論上はそれほど問題はないのではないか。」

公正競争阻害の問題は公法の問題である。しかし不法行為法によっても同時に損害が語られうる唯一の例が共同ボイコットであろう。

  「(参考資料2参照)」

  「○ 私人のイニシアチブによる法目的の実現

 私人による訴訟の提起が単に被害の救済を求めるという消極面においてだけでなく,法目的の実現のために積極的な役割を果たすものとして評価されるべきであるという考え方も有力に主張されており,競争秩序の維持という独占禁止法の法目的の実現のために,私人による差止めを政策的に導入してはどうかという考え方もあるが,このような方向は必要か。 また,私人による法目的の実現という面を強く打ち出す場合には,地方自治法における住民訴訟のような客観訴訟や,あるいはそれに類似した商法における株主代表訴訟のような形態をとることも考えられる。しかし,住民訴訟や株主代表訴訟は,地方自治体や会社組織における特殊な事情や訴権者についての適切な要件の下に認められており,独占禁止法についても同じことを認め得るか。参考資料2,6参照)」私訴については私人の損害で事足りる。

 「 ○ 独占禁止法上の無過失賠償責任(法25条,26条)

 既に独占禁止法25条による無過失損害賠償訴訟制度が定められており,現行独占禁止法が公益とともに私益保護の側面も併せ持っていると言えるのではないか。 なお,25条訴訟の意義について,平成2年の独占禁止法に関する損害賠償制度研究会報告書は「独占禁止法違反行為によって生じた私人の損害が適正かつ迅速に填補されることを通じて当該競争侵害行為が及ぼした経済社会に対する損害が除去されることとなり,これにより競争秩序の回復と違反行為の抑止が同時に図られることにあるものと考えられる。」としており,25条訴訟を私人の損害の救済で手段であると同時に公益保護の性質も併せ持つものと位置づけていると考えられる。(参考資料3参照)」

公益保護の面があっても損害が私人には発生していない場合、例えば念書をとって入会させるような行為は、公正競争阻害性のみが問題となる。 

「(2) 私人による差止訴訟の法的枠組みについて

 独占禁止法の保護法益に私人の利益が含まれているとした場合,その保護を実現するための独占禁止法違反行為に対する私人の差止訴訟の法的枠組みについては次の2つが考えられるが,どちらとするのか。」

「● 民法の解釈の枠組みの中で,公序良俗や権利侵害といったツールを使って,独占禁止法違反行為についての差止めを認める。」

独占禁止法違反行為を民法の不法行為法によって差止を認めることにもともと無理があった。例えば所有権においても妨害排除の請求権が認められているが、このような強い権利として自由な競争社会において営業する権利を認める必要がある。それは生存権や、職業選択の自由に類するものである。

「 ● 独占禁止法違反行為の違法性の強さや,社会経済上の必要性など,独占禁止法独自の観点から差止めを認める。

  (参考資料2参照)」

 共同ボイコットを社会経済上の必要性があるので差止を認めるという公正競争阻害の考え方だけでは継続的に違反を行っているという性質を解決できない。憲法上の問題が発生する。

「2 公正取引委員会の排除措置との関係

  独占禁止法違反行為に対する民事上の規律としては,独占禁止法25条訴訟による無過失賠償請求と民法709条による損害賠償請求があるが,これらはいずれも過去の損害に対する金銭賠償責任である(契約関係にある者の場合には,民法90条に基づく地位確認請求,不当利得返還請求などが請求できる)。

  しかし,私人による差止訴訟は,公正取引委員会の審決の存在を前提とせず,独占禁止法違反行為を排除するという点で公正取引委員会による排除措置とほとんど同様の効果を生ずることから,独占禁止法違反行為に対して公正取引委員会と私人とが二重に措置を採ることができるという事態を招来する。この点についてヒアリング等を行った結果,概ね次のA説,B説2つの考え方に分かれている。

 A説 公正取引委員会が排除措置を採る違反行為を私人が差止めるのは問題ではないか。

   [論拠となる様々な意見]

  ○ 違反行為の排除は,事業者の経済活動を拘束することであり,社会経済に与える影響が大きい。したがって,その執行は独立行政機関である公正取引委員会が一元的に行うべきであり,私益追求を目的とする私人による執行にはなじまないのではないか。」

被害が発生するということを理解していない。

   「○ 私人による差止めは,競争秩序維持の観点から公正取引委員会が問題視しない場合であっても提起される可能性があり,独占禁止法違反行為に対する抑止が過剰になり,事業者の自由な経済活動を阻害するおそれがある。」自由な経済活動を行うための独占禁止法であることが理解されていない。

 「 ○ 仮に私人による差止めを認める場合であっても,行為類型の構成要件に違いを設けるなどして私人が差止訴訟を提起できる行為類型と行政が排除措置を採る行為類型とは異なる次元のものであることを明確にすべきではないか。」先程の例の通りに念書を入れて入会させる行為は、損害賠償請求にはなじまないので、排除措置だけしか適用できない。 

「B説 公正取引委員会の排除措置と私人の差止訴訟が併存しても問題ないのではないか。

   [論拠となる様々な意見]

  ○ 公正取引委員会の排除措置は,競争秩序の維持の観点から違法行為の除去を行うものであって,必ずしも私人が具体的に受けている違反状態を排除するものではない場合もあり得る。このような場合には,公正取引委員会の排除措置と私人の差止訴訟の内容は異なると考えられるのではないか。」上記の例が当てはまる。入会拒否は差止が必要な事例である。 

  「○ 民事事件においては,当事者主義の下,原告の証拠収集等の面で不十分な面もあることや,判決の既判力が当事者にしか及ばないことなどから,私人の差止めが認められたとしても公正取引委員会の排除措置の対象としておく必要があるのではないか。特に,当事者間の公平の見地から請求を認容しないことを認める場合には,この要請が一層強くなる。」強制執行の実を上げるためにはこれは必要である。

 「○ 自己責任原則の徹底の観点からは,行政が独占禁止法違反行為の排除の全てを担うのではなく,私人も自助努力により競争秩序維持形成を行うことが必要なのではないか。」プライベート・アトーニー・ゼネラルはほとんど捜査権限がない割に合わない職務である。

  「 ○ 規制緩和が推進され,独占禁止法の重要性が相対的に高まる中,公正取引委員会による執行のみでは人的リソースの面で今後不十分になるおそれもあることから,私人にも一定の役割を担わせる社会経済上の必要性が出てきているのではないか。」

人的リソースにされてはただ働きということであろう。

 「 ○ 公正取引委員会の探知能力には限界があり,最も情報を有している当事者による提訴を認めることが効率的ではないか。」最も情報を有している当事者による探知はプライベート・アトーニー・ゼネラルが適切かもしれない。

 「3 裁判所による独占禁止法違反の判断

  私人による差止訴訟は,独占禁止法違反行為について公正取引委員会による第一次判断を離れ裁判所で判断がなされることになるが,独占禁止法違反行為の認定は我が国の競争政策の運営に影響を及ぼすことから,公正取引委員会による判断を全く経ずに裁判所が独占禁止法違反を判断することが適当かという問題がある。この点についてヒアリング等を行ったところ,概ね次のC説,D説の2つの意見に分かれている。

 C説 民事訴訟は私人の権利・義務を確定する私益救済の場であり,競争政策の判断にはなじまないのではないか。

  [論拠となる様々な意見]

  ○ 独占禁止法違反行為は「一定の取引分野における競争の実質的制限」,「公正な競争を阻害するおそれ」といった対市場効果要件の下で成立し,一定の行為を無条件に禁止するわけでない。したがって,独占禁止法違反については市場の競争に及ぼす影響度等の経済実態を踏まえて政策的に判断する必要があることから,私益救済の場である民事裁判所の判断にはなじまないのではないか。」この意見は公正競争阻害性の問題だけを論じており、不法行為法によっても損害賠償請求がなされてきた実態を知っていない。

  「 ○ 公正取引委員会の審決が取消訴訟で争われる場合であっても,実質的証拠法則など裁判所の判断には一定の拘束があり,その限りで公正取引委員会の第一次判断権が尊重されているが,私人による差止訴訟はこうした枠組みに合致しないのではないか。なお,独占禁止法違反を理由とした民事事件における実際の判決の中でも,公正取引委員会のガイドラインに依拠しているものが多く,実務的には公正取引委員会の判断に依拠せざるを得ない状況にあるのではないか。」共同ボイコットに関するガイドラインの趣旨はドイツでも、アメリカでも、日本でも同様である。

 「 ○ 公正取引委員会と裁判所の判断に齟齬が生じるおそれがあり,独占禁止法違反についての基本的解釈・運用が不安定になると,事業者の経済活動を必要以上に抑圧してしまうことになるのではないか。独占禁止法違反事件(審決取消訴訟,25条訴訟,刑事訴訟)については,専門的かつ統一的な判断を必要とする独占禁止法違反行為に関して提起されることに鑑み,東京高裁の専属管轄とされているところ,全国の地裁で独占禁止法違反の判断がされることになると,この危険は一層強くなるのではないか。」自由に経済活動をするための法律を理解していない。談合が良いという本はあまねく談合の効用本として出回っている。

 「 ○ 裁判の進行を当事者に委ねる現行民事訴訟制度の下では,独占禁止法違反行為の迅速な排除を図ることが難しいのではないか。」

私人に捜査権限がないという意味か。

 「D説 公正取引委員会の行政処分と関係なく裁判所が独占禁止法違反の判断を行うことは問題ない。むしろ裁判所が積極的に競争政策の一翼を担うべきではないか。

   [論拠となる様々な意見]

  ○ 法の執行を行政が独占するのではなく,私人による裁判所の利用は,単に被害の救済を求めるという消極的な面においてだけでなく,法の目標を実現するという積極的な役割を果たすものとして評価されるべきではないか。」この考え方が損害賠償請求を認めるのは独占禁止法違反の抑制であるという考え方である。

「 ○ 現行の独占禁止法その他の法体系の下でも,次のような点で裁判所による独占禁止法の解釈,競争秩序の形成を容認しているのではないか。

    ・ 公正取引委員会の判断が適切かどうかは審決取消訴訟で結局は裁判所(東京高裁,最高裁)で判断され,実質的証拠法則についても,裁判所は実質的な証拠があるかどうかというところで事実認定を行っていると考えられる。

     また,25条訴訟においても公正取引委員会の審決については違法行為の存在が事実上推定されるにとどまる。」

念書をとって入会させるような行為については公正競争阻害性の問題だから公正取引委員会にまかせるしか方法はない。

「    ・ 損害賠償請求,地位確認訴訟等の例ではあるが,民法709条,90条を通じて独占禁止法違反を判断している判例もある。    (参考資料4,5参照)」2、3件しか存在しないというのは法が認知されていないということであろう。

 「4 その他

  私人による差止訴訟を導入するとした場合,裁判所との関係など既存の制度(25条訴訟,刑事制裁制度)の中で変更を必要とするものが出てくるか。」

差止と刑事訴追の関係はどうなるのか。

 「・ 私人の差止請求権の法的性質

 1 現行法で認められている差止請求権

 現行の民事法体系では,私人の差止請求は,(1)民事上の権利を根拠とする場合,(2)民法不法行為上の解釈により認められる場合,(3)特に立法化されている場合,にのみ提起することができる。」

 特に立法化されている場合ということは、これまでは確認訴訟でしか対応して来なかった。これはすべて負けてきた。

「1. 民事上の権利に基づく差止請求権

  @ 民法上認められた権利

  所有権等の支配的権利に基づく当然の権利として,妨害排除や妨害予防の請求権が認められている。また,対抗力を有する賃借権等,排他的な債権に基づく差止請求権が判例により認められている。」不正競争防止法や、独占禁止法における妨害排除の権利は、自由経済社会になってはじめて認められたものであるというのが現代の法哲学である。

  「 A 解釈上認められた権利

 金銭賠償によっては将来にわたっての侵害を消滅させることができず,被害者の救済が十分に図れないことから,「氏名権」,「肖像権」,名誉・プライバシー等の「人格権」などを根拠に,侵害行為の差止めを認める判例,学説がある。」これは憲法上認められた権利であり、営業する権利はこれとほぼ同じような自由を妨害するものを排除しない限りは自由に行動できないという法哲学に基づくものである。

  「  なお,煤煙,臭気,排・汚水による生活侵害に対する公害差止訴訟などで主張される「環境権」のような新しい権利については,公害問題が顕在化する頃には,加害者側にも恒久的な生活利益が事実上作り上げられてしまっていることが多いことや,差止請求が金銭賠償の例外であるため,差止請求は金銭賠償の場合よりも次の点において厳格な要件が要求されると主張する見解もある。

 (社会的な利益衡量をも前提とした上で,) ・侵害の重大性ないし違法性の大小 ・被害者側の受忍限度

   (以上,参考資料7参照)」

本件事件の第一審はこの部分を使用したものであるが、これは公害問題について言っているのであって、私も最初独占禁止法について言っていると思える程度に誤植してあったのであり、それに従った誤判決である。この文をおそらくp氏に渡していたので誤読したものと考えられる。

注1:【英】Maximum Permissible Level

「日照妨害等の他人の生活に悪影響を及ぼす行為、大気汚染や騒音等の公害において、影響を受ける者が社会生活上受忍すべき程度のことをいう。人が社会生活をする限りは、この種の影響は多少なりとも与えあっているものであるとして、お互いに合理的な範囲内においては受忍すべきであって、損害賠償や差し止め請求は認められないとされる。しばしば、公害裁判においてこの受忍限度の範囲内であるかどうかが争点になることがある。」

しかし喫煙の問題に対しても、所有権による喫煙室の指定の合法性もあるが、公害である喫煙の受忍限度論については次のような指摘があり得る。ましてや本件は公正競争阻害の問題である。公正競争阻害性とは別のところで解決されるべきことが、ここでは公正競争阻害性と利益考量されている。不思議な判決である。裁判の費用と、公正競争阻害性との比較である。

「いわゆる受忍限度論は、人の身体、健康等に影響を及ぼすものであっても、その態様、程度いかんによっては、社会生活を円滑に営むために相互に許容すべきものとして社会的に容認されるものもありうるとの認識に基づき、侵害の態様、程度、加害行為の性質・効用又はこれに対する差止による影響等を考慮して、受忍限度を超える場合に違法性を帯びるという考え方である。これは、結局のところ、侵害行為を禁止すれば、それによって一定の利益を侵害し、社会公共の利益が損なわれるという場合に、それら対立利益を調整するために、一定の限度の被害の発生は社会生活上やむをえないものとする利益衡量の考え方に基づくものである。

   ところで、本件で原告らに生じる被害は、現実の健康被害、将来の疾病罹患リスクの向上、著しい不快感という生命身体の安全にかかわるものであるのに対して、禁煙することによって損なわれる利益は、喫煙という個人の嗜好である。このような喫煙の利益は、そもそも受忍限度論で保護される利益ではないというべきである。

   なぜならば、前者の生命身体の安全は、人の生存に直結するものであって、法益のなかでももっとも高位に位置し、最大限の尊重が必要とされるものであるのに対して、後者の喫煙の利益はそれを奪ったとしても人の生存には一切関係しない文字どおり単なる個人的嗜好にすぎないからである。このようなまったく性質と位置づけの異なる利益の対立場面に受忍限度論を適用するならば、単なる個人的好みのために他人の生命身体への被害を強いるという結果を招来することになる。

  従来受忍限度が問題とされた事例の対立利益の典型は、公害事件における社会経済上の利益であった。これらの利益の実現はたしかに社会生活を豊かにするものであって、社会公共の利益に合致するものであり、これらの利益の実現のために、個人的被害を一定程度犠牲とすることは、社会生活の向上と発展を図るためにはやむをえないということができる。ところが、喫煙というような単なる個人的嗜好は、それを禁止したからといって、社会公共の利益を害することはまったくないばかりか、むしろ喫煙を禁止するほうが、喫煙者の生命の維持、火災の防止、清掃費用の軽減など、社会公共の利益を増進することにつながるのである。

   したがって、本件においては受忍限度論はまったく妥当しないというべきである。」

   これを独占禁止法違反という公正競争阻害を問題としている訴訟に持ち込むことは全く場違いである。場違いとは違法であるということである。ドイツ法にも、アメリカ法にもそのような考え方はない。

 「(2) 民法不法行為上の解釈により認められる場合

我が国民法においては,債務不履行や不法行為について金銭賠償を原則とする損害賠償制度のみを規定しており(民法709条,722条,417条),差止請求については実定法上の規定がないことから,原則として認められないとするのが通説・判例となっている(例外的に,他人の名誉を毀損した場合には,損害賠償に代えて,または損害賠償とともに,「名誉を回復するに適当な処分」を裁判所は命ずることができる(民法723条))。」損害賠償に代えてが重要な点である。

「しかし,不法行為に対する差止請求については,解釈上これを認める説も有力となっており,侵害行為又は侵害された状態の違法性の当然の効果として,(金銭賠償では不十分である場合に)妨害排除などの特定的救済を求める請求権と構成する考え方が主張されている。これは,侵害行為又は侵害された状態の違法性に着目して,違法な行為又は状態によって損害を受ける者に侵害除去の請求権を認める立場であるため,広い範囲で不法行為による差止請求権が認めうるものと考えられている。」

この考え方は特に自由経済において営業する自由を妨害を排除することによってのみ成立させうるという法哲学によって深く洞察すれば独占禁止法上の差止、不正競争防止法における差止の哲学的な基本概念となりうる。

   「ただし,権利(利益)に対する侵害が違法となるかは,原則として被侵害権利(利益)の性質と侵害行為の態様とを総合して,法の理念と社会通念に従って判定すべきであるとする説も有力に主張されており,公害訴訟の例ではあるが,違法な権利(利益)侵害として差止めが認められる場合について,最高裁判決は次のような基準を提示している。

  単なる法令違反では足りず,権利(利益)侵害になるかどうかは, ・侵害行為の態様 ・侵害の程度 ・被侵害利益の性質と内容 ・当該工場等の所在地の地域環境 ・侵害行為の開始とその後の継続の経過及び状況 ・その間にとられた被害の防止に関する措置の有無及びその内容・効果 等の諸般の事情を総合的に考察して,被害が一般社会生活上受忍すべき限度を超えているものかどうかによって決すべきである。

   (以上,参考資料7参照)」

 これは以下の公害訴訟における受忍限度論である。この場合には営業の自由のような憲法上の自由を守るために妨害を排除しなければならないという法哲学上の問題とは一切関係がない。

 「(3) 特に立法化されている場合

特別法により差止請求が認められているのは,@特許法などの知的財産保護法による差止請求権,A不正競争防止法による差止請求権,及びB商法による株主等による取締役の行為に対する差止請求権などがある。」いずれも所有権の妨害排除の請求権に似たものである。不正競争防止法については独占禁止法と同様の自由経済において営業する自由を確保するためという問題である。

 「@ 特許法などの知的財産保護法による差止請求権

    知的財産権は,技術や人の感情の表現などの「情報」を保護の対象とするものであるが,特許権,実用新案権,意匠権,商標権,著作権,種苗法に基づく品種登録者の権利(育成者権を設定する法案が第142回通常国会に提出されている。),半導体回路配置利用権などの権利者に対して,自己の権利を侵害する又は侵害するおそれがある者に対する差止請求権(侵害停止・予防及び除却請求権)が与えられている(特許法100条,実用新案法27条,意匠法37条,商標法36条,著作権法112条,種苗法12条の5,半導体集積回路の回路配置に関する法律22条)。

    以下,特許法を例に概観する。

    a)特許法の目的

     特許法は,発明の保護及び利用を図ることにより,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的としており(法1条),特許権者に業として特許発明の実施をする権利を専有させている(法68条)b)特許法の民事的救済手段

     大正10年法では,特許権侵害があった場合の民事上の救済に関しては特段の規定はなく,もっぱら一般法としての民法の規定の適用によって救済措置が講じられていたが,昭和34年の改正時に,特許権の特殊性にかんがみて,民法の特別規定として権利侵害に関する差止請求権,民法709条の補完規定である損害の額の推定(故意・過失による特許権又は専用実施権の侵害は,当然に不法行為を構成するものと解されていたため,特許法中には民法709条に相当する特別の規定は置かれなかった),信用回復請求権などの規定が設けられた。」

特許訴訟において民事訴訟法第248条が頻繁に使用されている。

 「c)差止請求権の性質

     知的財産権法は「物」についての所有権の考え方を借用した所有権的な法制となっており(「工業所有権審議会損害賠償等小委員会報告書」平成9年11月25日),大正10年法には差止請求権に関する明文の規定はなかったが,特許権者が特許発明の実施権限を専有する旨定めていた大正10年法35条1項の解釈上,特許権者が物権的請求権としての差止請求権を行使しうることは当然のこととされていた。

しかし,昭和34年の改正時に専用実施権の制度が創設されたことや,明文の規定なくして侵害行為組成物等の廃棄請求までも認めることについて若干の疑義がないわけではないことなどを考慮して,同改正において差止請求権を確認的に新設したものと説明されている(以上,「工業所有権法逐条解説」特許庁編,「注解特許法」紋谷暢男編)。」

 物権的請求権と同様の妨害排除の請求権と理解してよいと考えられる。 

 「 A 不正競争防止法による差止請求権

    不正競争防止法は,不正競争の防止により,事業者の営業上の利益の保護を図るとともに,これを通じて公正な競争の確保を図るために,不正競争によって営業上の利益を侵害された者又はそのおそれのある者の差止請求を規定している(法3条)。

     a)不正競争防止法の目的

      不正競争防止法の目的規定(法1条)は,平成5年の全面改正時に追加されたものだが,同法の目的については,不正競争によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれのある者に対し不正競争の停止・予防請求権等を付与することにより不正競争の防止を図るとともに,その営業上の利益が侵害された者の損害賠償に係る措置等を整備することにより,事業者間の公正な競争を確保しよう等するものであると説明されている(「逐条解説不正競争防止法」通商産業省知的財産政策室監修)。」営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれとか停止・予防請求権の規定が存在している。

 「* 不正競争防止法1条  この法律は,事業者間の旺盛な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため,不正な競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ,もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

     b)不正競争防止法の沿革

      不正競争防止法は,昭和9年に「工業所有権の保護に関するパリ条約ヘーグ改正条約」を批准するにあたり,同改正条約が,不正競争の禁圧を加盟国に義務づけていたことから,条約上の最低限の義務を充足するために制定された。

      当時の立法経緯を見ると,それ以前から法制定の動きがあったが,当時の我が国産業が発展途上にあったこと,当時の民法解釈上,権利侵害とはいえない行為に法的責任を認めるべきではないと考えられていたこと等の理由から法律制定は見送られていたが,大学湯事件(大正14年11月28日大審院判決)を契機に不法行為の解釈が「権利侵害」から「違法性」へと変化したことから,ヘーグ改正条約における不正競争の規定を国内法に調和させることが可能となったことを受けて制定されたものである(「不正競争防止法概説」小野昌延,「逐条解説不正競争防止法」通商産業省知的財産政策室監修)。

     c)不正競争防止法の民事的救済手段

      法2条1項各号に掲げる「不正競争」について,これら行為により営業上の利益を侵害された(又はそのおそれのある)者からの差止請求と,故意・過失による「不正競争」により営業上の利益を侵害された者からの損害賠償請求等の民事的救済を定め,さらにこれらの行為のうち特に不正性の高い行為について一定の要件を加重した上で刑事罰を科している。

      なお,不正競争防止法には外国国旗等(法9条)や国際機関の標章(法10条)の商業上の使用などの行為類型も規定されているが,これら行為については民事上の救済手段は与えられておらず,もっぱら刑事罰の適用のみを受ける。」独占禁止法による被害は事業活動そのものを否定する程度のものであるから、財産権や営業の利益は憲法上の権利の否定にまで及ぶものである。

 「d」差止請求権の性質

      差止請求権については,「競争事業者間で行われる不法行為については,事後的な損害賠償請求のみでは救済として不十分であることから,損害賠償請求権に加えて特に差止請求権を付与したもの」と説明されている(以上,「逐条解説不正競争防止法」通商産業省知的財産政策室)。」事後的な損害賠償請求のみでは不十分である場合は特に継続犯である場合に顕著である。

      「なお,昭和9年の制定法においては,営業秘密に係る不正行為を除いては,将来の違法行為の禁止を求める予防請求権及び違法状態又は違法行為組成物の廃棄・除却を求める廃棄・除却請求権についての明文規定を欠いていたが,不正競争の防止という目的を達成するために,現在の侵害行為の停止を求めるだけでは不十分であり,むしろ将来の侵害を予防し,さらに,侵害の組成物の廃棄・除却等侵害の予防に必要な請求を認めることにより,その積極的根絶を図る必要があり,判例上も差止請求権として予防請求権及び廃棄・除却請求権が認められてきたことから,平成5年の改正時に明文化されている(法3条第2項)。」将来の違法行為の禁止を求める予防請求権については独占禁止法に引き継がれたと考えられ、そこに受忍限度論のような公害訴訟は持ち込まれていない。

     (参考)

     ○不正競争防止法の法目的達成手段

  対象行為類型 訴権者 加重要件

差止請求権(3条) 不正競争(不正競争防止法第2条第1項)・商品等表示混同惹起行為(1号)・著名表示冒用行為(2号)・商品等形態模倣行為(3号)・営業秘密不正使用等行為(4号〜9号)・品質等誤認惹起行為(10号)・信用毀損行為(11号)・代理人等の商標冒用行為(12号) 営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれのある者 (なし)

損害賠償請求権(4条) 不正競争(2条1項各号)(同上) 営業上の利益を侵害された者 故意・過失

信用回復の措置(7条) 不正競争(2条1項各号)(同上) 営業上の利益を侵害された者 故意・過失

罰則(13条) ○不正競争(2条1項)の一部・商品等表示混同惹起行為(1号)・品質等誤認惹起行為(10号) ○外国国旗等の商業上の使用(第9条)○国際機関の商標の商業上の使用(第10条)    不正目的虚偽表示 (なし)(なし)」営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれのある者の概念は独占禁止法に引き継がれたと思われる。この概念が重要であり、判例となりうる。

 「B 商法による株主等による取締役の行為に対する差止請求権

商法では,株主による差止請求権(法272条),株主による新株発行差止請求権(法280条の10),監査役による差止請求権(法275条の2第1項)が規定されている。」

株主は所有権を持つものであり、妨害排除の請求権を持つのは当然である。

  「a」株主による差止請求権(法272条,法280条の10)

   取締役が会社の目的の範囲外の行為や法令または定款に違反する行為をしようとうする場合に,会社に回復すべからざる損害を生ずるおそれがある場合に,個々の株主(6ヶ月前から引き続き株式を有することが必要)が自ら会社のために取締役に対しその行為をやめるべきことを請求する権利であり,株主の代表訴訟(法267条〜268条の3)と同様に,昭和25年の商法改正により株主の地位の強化の一環として規定されたものである。取締役が法令または定款に違反する行為をしようとする場合に,本来,これを差し止める権利を有しているのは会社自身であるが,会社が差止請求権の行使を怠っている場合に,株主が会社の有する権利を会社のために行使するのであり,実質上,会社の代表機関的地位に立ち,本質的に株主の代表訴訟提起権と同じ構想である。両者の相違は,株主代表訴訟提起権が事後における積極的給付を目的とする制度であるのに対し,株主の違法行為差止請求権は,違法行為がなされる前における事前の消極的な防止措置である点にあると説明されている。(「注釈会社法」竹内昭夫編)。」会社に回復すべからざるという概念は、独占禁止法の著しいという概念に近いと考えられる。本件事件においては生活権や将来継続するであろう損害を考えれば、回復すべからざるという概念が最も適当であろう。

   「そして,株主の違法行為差止請求権の性質については,株主の代表訴訟提起権と同様に,株主が会社の正規の体制による運営を監督・是正するために認められている権利である共益権とする説が有力である(「会社法(新版)」鈴木竹雄・竹内昭夫)。」

正規の体制によるという概念は、ここでも独占禁止法においては「自由経済において」という概念と一致する。

   「なお,株主の違法行為差止請求権は,違法行為の一つである違法な新株発行についても認められており,法令もしくは定款に違反しまたは著しく不公正な方法による新株発行については,さらに,それによって不利益を受けるおそれのある個々の株主が,新株発行の差止請求権を会社に対して行使することが認められているが(法280条の10),その法的性質についても同様とされている。」回復すべからざる損害は、正規の体制による運営であれば発生しないが、回復すべからざる損害は差止によって止まるものではなく、その後も続く恐れはある。

 「   b)監査役による差止請求権(275条の2)

   監査役が取締役の職務の執行を監査し,取締役の業務執行の適正を期するためには,単に事後監査をするだけでは不十分であって,事前に業務執行の適正を図る必要があることから,昭和49年の改正において,監査役が会計監査を含む広義の業務監査の権限を持ったのに伴って,取締役の違法行為によって会社に著しい損害が生じるおそれがある場合に監査役が当該行為を差し止める権利が規定された。

   監査役の違法行為差止請求権と株主の違法行為差止請求権とは,要件の点で若干の相違があるほか,監査役の差止めの仮処分の申請については,保証を立てる必要がないとの特則が定められている(275条の2第2項)。」著しい損害は所有権者である株主の場合の回復すべからざる損害とは少し弱い意味で使われている。一般の人でも所有権を持たない人でも差し止められるような損害であるということになる。

  「 また,監査役の違法行為差止請求権は,会社すなわち株主全員のために業務監査の手段として与えられたものであるから,本条の要件を満たした場合には,取締役の違法行為を差し止める義務があると解されている(「改正商法の逐条解説」並木俊守,「監査役制度の改正について」竹内昭夫 商事法務643号)。

   (参考)

     ○商法上の請求権及び訴訟

  対象行為 訴権者 加重要件

株主の差止請求権(272条) 取締役の・ 会社の目的の範囲内にあらざる行為 ・法令または定款に違反する行為 6ヶ月前より引き続き株式を有する株主 会社に回復すべからざる損害を生じるおそれがある場合

株主の新株発行差止請求権(280条の10) 会社の・法令もしくは定款に違反する株式の発行・著しく不公正な方法による株式の発行 不利益を受ける株主 株主が不利益を受けるおそれのある場合

監査役の差止請求権(275条の2) 取締役の・ 会社の目的の範囲内にあらざる行為 ・法令または定款に違反する行為 監査役 会社に著しい損害を生ずるおそれがある場合 

株主の代表訴訟(267条) 取締役の責任(266条第1項)・ 違法な利益の配当に関する議案の総会への提出(1号) ・ 違法な財産上の利益の供与(2号) ・ 他の取締役に対する金銭の貸付(3号) ・ 競業避止義務に違反する取引(4号) ・ 法令又は定款に違反する行為(5号) 6ヶ月前より引き続き株式を有する株主 ・ 株主が会社に対して書面による訴えの提起の請求をしてから30日内に訴えを提起しないこと ・ 会社に回復すべからざる損害を生ずるおそれのある場合

     (以上,参考資料6,8参照)」

所有権者の場合には回復すべからざる損害を生ずるおそれを使い、会社に著しい損害を生ずるおそれは会社の職務執行者に対して使用している。

 「2 独占禁止法違反行為に関する差止請求権の法的性質

   独占禁止法違反行為について私人の差止請求権を認めるとした場合に,当該請求権の法的性質について,既存の差止請求権の法的性質との対比から,次の3つの考え方があり得る。

 E説 独占禁止法違反行為によって侵害される利益を民事上の権利と構成し,これに基づく差止請求権とする。

 [考え方]

 独占禁止法違反行為により侵害される具体的な利益としては,財産,自由な営業的活動,顧客獲得可能性などが考えられる。また,目的規定に即して広く捉えると,事業者や一般消費者が公正かつ自由な競争に基づき形成された取引条件により取引を行うことなどが考えられるが,このような多岐にわたる利益を総体として含む民事上の権利を構成する。

  [検討事項]

○ このような広範な利益を民事上の権利として構成することは可能か。

○ 民事上の権利と構成しても差し支えない類型に限定するのか。

  ○ 民事上の権利と構成すると,権利侵害の事実以外には理論的には何の制約もなく差止め請求が認められることになろうが,金銭賠償が認められる場合よりも厳格な要件を設定する必要はないか(社会的な利益衡量,侵害の重大性ないし違法性の大小,被害者側の受忍限度)。」被害者に受忍限度があるとする説は独占禁止法違反が、談合は良いものだという原理を信じているものであって、そのような本は多く存在する。著しい損害の要件は「金銭賠償が認められる場合よりも厳格な要件を設定する」としたものであろうが、独占禁止法違反の犯罪性を認識していないものである。犯罪に受忍限度があったらたまったものではない。

 「F説 民法の不法行為の効果として,民法上違法と判断される独占禁止法違反行為による利益侵害に対して,特定的救済手段である差止請求権を認める。」

もともと独占禁止法は不法行為法からはじまったものであって、近隣の騒音を受忍しようということで始まったものではない。損害があれば当然に違法行為として認めるという考え方によって出発したものである。以下のアメリカの当然に違法の原理においても、正当な契約に付随した場合にだけ、あるいは、競争促進的な場合にだけ当然に違法の原則の例外を認めたのである。

 「[考え方]

 独占禁止法違反行為のうち,民法上違法な利益侵害と認められるものについて差止めを認める。民法上の違法性は,侵害行為の態様と被侵害利益の性質とを比較衡量して社会的通念に従って判断する。

  [検討事項]

・ 独占禁止法違反が直ちに違法と評価されるわけではなく,公序良俗等に反することが必要であるが,このような枠組みでは差止めは認められにくくはないか。

・ 主観要件として,侵害者の故意・過失は必要か。」

故意過失がある場合に、直ちに違法である行為であっても、どのようにでも言い逃れをするのが犯罪を行ったものである。

 「○ 利益侵害の違法性を重視すると,要件として損害の発生を必ずしも前提とする必要はないのではないか(損害の発生のおそれでよいのではないか。)」

プリベンティブな差止による救済は、継続すると認められる独占禁止法違反でなければならず、アメリカでもAMA事件だけであるというのであるから、おそれを証明するのは継続犯でなければ至難のわざである。

 「○ 独占禁止法によって保護されている私人の利益が,民法の不法行為等において差止めが認められるとされている身体・生命等と同程度に法律上保護された利益といえるか。また,同程度と認められたものに限定すべきか。」

事業の遂行を困難にする場合には言える。

 「○ 独占禁止法違反行為を差し止めることにより失われる利益は,被侵害利益を必ず下回る必要があるか。」

 独占禁止法違反行為を差し止めることにより失われる利益とは犯罪を差止、犯罪者を逮捕する場合と同じくない。但し、談合による利益があるとすれば民間では談合は素晴らしいという本があるが、その場合には失われる利益があると考える人や学者がいるであろう。

 「G説 独占禁止法独自の観点から,独占禁止法違反の効果として被害を受けた私人に差止請求権を認める。

 [考え方]

  独占禁止法違反の直接の効果として,民事上の特別な制度である差止めを創設的に認める。

ただし,現行独占禁止法は公正取引委員会による排除措置を中心に規律されており,独占禁止法違反であっても私人による差止めが適当でないと考えられる場合もあることから,一定の行為類型,あるいは(それに付加して)一定の要件の下に差止請求権を認める。」

確かに強制的に念書をとって、談合しますと書かせてから、入会させることは私人による差止めが適当でない例であろう、というよりも差止は行われない。

 「 [検討事項]

 ○ 民事上の特別の制度である独占禁止法独自の差止請求権を認める必要性はあるか。

・ 私人による差止めの対象とする独占禁止法違反の行為類型を特定する必要があるか。

・ 行為類型の違法性の明白性の程度

・ 規制の保護法益(公益のみを保護しているか,あるいは私益も含んでいるか)

・ 規制目的の差異(行為規制か構造規制か)

○ 差止請求を認める場合の要件をどのように設定するか。

・ 独占禁止法違反による被害の発生がなくとも,被害の発生のおそれのある場合には差止めを認めてもよいか。

・ 独占禁止法違反行為により被害を受ける者であれば,軽微な(あるいは迂遠な)被害であっても差止めを認めてもよいか。その際,独占禁止法で保護している私人の利益を明らかにし,その保護の対象となった利益を侵害された者だけに差止請求を認めるべきか。

・ 金銭賠償でも十分であると認められる場合には差止めを認めないのか。

特別法により差止請求権が認められているもの

 @特許法などの知的財産保護法による差止請求権

<特許法>

◆100条(差止請求権)

@ 特許権者又は専用実施権者は,自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。

A 特許権者又は専用実施権者は,前項の規定による請求をするに際し,侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあっては,侵害の行為により生じた物を含む。)の廃棄,侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

 ◆106条(信用回復の措置)

故意・又は過失により特許権又は専用実施権を侵害したことにより特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を害した者に対しては,裁判所は,特許権者又は専用実施権者の請求により,損害の賠償に代え,又は損害の賠償とともに,特許権者又は専用実施権者の業務上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

 <実用新案法>

◆27条(差止請求権)

実用新案権者又は専用実施権者は,自己の実用新案権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれのある者(以下「侵害者等」という。)に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。

 ◆30条(特許法の準用)

特許法第105条(書類の提出)及び第106条(信用回復の措置)の規定は,実用新案権又は専用実施権の侵害に準用する。

 <意匠法>

◆37条(差止請求権)

@ 意匠権者又は専用実施権者は,自己の意匠権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。

A 意匠権者又は前項の規定による請求をするに際し,侵害の行為を組成した物の廃棄,侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

B 第14条1項の規定により秘密にすることを請求した意匠に係る意匠権者又は専用実施権者は,その意匠に関し第20条第3項各号に掲げる事項を記載した書面であって特許庁長官の証明を受けたものを提示して警告したあとでなければ,第1項の規定による請求をすることができない。

 ◆41条(特許法の準用)

特許法第105条(書類の提出)及び第106条(信用回復の措置)の規定は,意匠権又は専用実施権の侵害に準用する。

 <商標法>

◆36条(差止請求権)

商標権者又は専用使用権者は,自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれのある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。

 <著作権法>

◆112条(差止請求権)

@ 著作者,著作権者,出版権者又は著作隣接権者は,その著作者人格権,著作権,出版権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれのある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。

A 著作者,著作権者,出版権者又は著作隣接権者は,前項の規定による請求をするに対し,侵害の行為を組成した物,侵害の行為によって作成された物又はもっぱら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。

 ◆115条(名誉回復等の措置)

著作者は,故意又は過失によりその著作権人格権を侵害した者に対し,損害の賠償に代えて,又は損害の賠償とともに,著作者であることを確保し,又は訂正その他著作者の名誉若しくは声望を回復するために適当な措置を請求することができる。

 ◆116条(著作者の死後における人格的利益の保護のための措置)

@ 著作者の死後においては,その遺族(死亡した著作者の配偶者,子,父母,孫,祖父母又は兄弟姉妹をいう。以下この条において同じ。)は,当該著作者について第60条(著作者が存しなくなった後における人格的利益の保護)の規定に違反する者又はするおそれがある者に対し第112条の請求を,故意又は過失により著作者人格権を侵害する行為又は第60条の規定に違反する行為をした者に対し前条の請求をすることができる

A及びB(略)

 <種苗法>

◆12条の5(品種登録の保護)

@及びA2(略)

B 品種登録者は,登録品種の植物体の全部又は一部につき第1項の定に違反して同項各号に掲げる行為をしている者に対し,その行為をやめるべきことを請求することができる。ただし,損害賠償を請求することを妨げない。

 <半導体集積回路の回路配置に関する法律>

◆22条(差止請求権)

@ 回路配置利用権者又は専用利用権者は,自己の回路配置利用権又は専用利用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。

A 回路配置利用権者は,前項の規定による請求をするに際し,侵害の行為を組成した半導体集積回路又は侵害の行為に供した物の廃棄その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

 A不正競争防止法による差止請求権

◆3条(差止請求権)

@ 不正競争によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者は,その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。

A 不正競争によって営業上の利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者は,前項の規定による請求をするに際し,侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。)の廃棄,侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。

 ◆7条(信用回復の措置)

故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の信用を害した者に対しては,裁判所は,その営業上の信用を害された者の請求により,損害の賠償に代え,又は損害の賠償とともに,その者の営業上の信用を回復するのに必要な措置を命ずることができる。

 B商法による株主等による取締役の行為に対する差止請求権

◆272条(株主の差止請求権)

取締役が会社の目的の範囲内に在らざる行為その他法令又は定款に違反する行為を為し之に因り会社に回復すべからざる損害を生ずる虞ある場合に於ては,6月前より引き続き株式を有する株主は会社の為取締役に対しその行為を止むべきことを請求することを得。

 ◆275条の2(監査役の差止請求権)

取締役が会社の目的の範囲内に在らざる行為その他法令又は定款に違反する行為を為し之に因り会社に著しき損害を生ずる虞ある場合に於ては監査役は取締役に対し其の行為を止むべきことを請求することを得。

 ◆280条の10(株主の新株発行の差止請求権)

会社が法令若は定款に違反し又は著しく不公正なる方法に依りて株式を発行しこれに因り株主が不利益を得くる虞ある場合に於ては其の株主は会社に対し其の発行を止むべきことを請求することを得。

 ◆430条(清算に関する準用規定)

@ (略)

A … 第272条,…第275条2… の規定は清算人に之を準用す。

以上の中では独占禁止法における自由経済において営業する権利は特に重要な憲法上も重要な権利であると考えられる。

従って、現在事業活動を継続することが出来ないのであるから、民事保全法23条2項の「債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険」が認められるものと推定されるので差止仮処分申請及び上告を行うものである。上告の決定を待つ間にも4月には被上告人による単価契約による埼玉県との契約が被上告人の推薦を認めて行われており、また各市町村においてもすべての市町村に入札参加資格登録は行っているにもかかわらず、「埼玉県の推薦は許されているという行政指導の下で」(乙号証拠の中に各市町村の推薦は許されないが、埼玉県の推薦はよいという箇所があり、裁判所をではそこに付箋と印を付けてあった。被上告人は埼玉県と会合を持ったというテープがあるがこの行政指導を利用していると考えられる。)、被控訴人による推薦が行われており、また結局は被控訴人は埼玉県の唯一の不動産鑑定評価に関する事業者団体として信用を供与しているのが受けられず、事業活動を行っていくことが不可能であるので、ここに差止及びその仮処分の請求を行うものである。

なお、先に最高裁判所において審理されている上告事件ではいまだ終結時には集計が終わっていなかった平成15、16年度の事業実績報告書及び弁論再開申請書その他が第三分類にしか綴じ込まれておらず、まだ市場の状態が不明であったがこの平成17年4月に完成し情報公開を受けることができたので、もしその証拠がディスクロージャーあるいは裁判官のみに秘密理に見せるという制度が存在しない故に、もう一度審理するためには再度の裁判を起こし、著しい損害があり続けていることを証明する必要があるのならば、その証拠はこの差止請求仮処分においてのみ提出し、その後本案訴訟を最高裁判所に上告されている裁判とは別に提訴するということになる。

      

第14 おそれ

アメリカのクレイトン法第十六条は次の通りに規定する。

Section 16 of the Clayton Act gives private parties the right to seek injunctive relief for violation of the antitrust laws:

クレイトン法第十六条は、私的当事者の反トラスト法違反に対する差止請求権を次のように認めている。

Any person, firm, corporation, or association shall be entitled to sue for and have injunctive relief .. against threatened loss or damage by a violation of the antitrust laws ... when and under the some conditions and principles as injunctive relief against threatened conduct that will cause loss or damage is granted by courts of equity, under the rules governing such proceedings ...

どのような個人も、会社も、企業も、あるいは、組織も差止のための手続を規定する規則によって損失ないしは損害を生ぜしめるおそれのあると平衡裁判所によって認める行為に対して差止による救済の条件ないしは救済規則に合致している場合には、反トラスト法の違反によって受ける損失ないしは損害のおそれに対して差止による救済を求めて提訴する権利を有する。

In accordance with well established Supreme Court decisions, all that is required to state a case for such relief is "a real threat of future violation or a contemporary violation of a nature likely to continue to recur."

最高裁判所は判決により、差止による救済が認められるように請求できるのは「将来も違反が行われる本当のおそれreal threatがあること、または、継続してcontemporary violation繰り返してrecur現在も違反行為が行われる可能性があるようなlikely to性質natureが必要であるrequired。」と明確に判例として確立している。

United States v. Oregon State Medical Soc., 343 U.S. 326, 333 (1952);

合衆国 対 オレゴン州医師会事件、 343 U.S. 326, 333 (1952);

Zenith Radio Corp. v. Hazeltine Research, Inc., 395 U.S. 100, 130 (1969).

ゼニスラジオ会社 対 ハーゼルタイン調査会社事件、 395 U.S. 100, 130 (1969)。

Voluntary cessation of allegedly illegal conduct is looked upon with extreme skepticism by courts but may be a factor in determining the appropriateness of injunctive relief "if the defendant can demonstrate that there is no reasonable expectation that the wrong will be repeated. The burden is a heavy one."

申し立てられている違法な行為が自発的に中断されることがほとんど絶対的に困難と疑われ、「違法行為を繰り返さないとは期待できないことに合理的理由があると被告が行為で表明していることがもしもあり得れば」差止による救済を決定することの正当性の一要素となり、「その責任は重大である。」と裁判所はみている。

United States v. Realty Multi-List, Inc., 629 F.2d 1351, 1388 (5th Cir. 1980),

合衆国対不動産マルティ・リスト会社事件, 629 F.2d 1351, 1388 (5th Cir. 1980),において

quoting United States v. W.T. Grant Co., 345 U.S. 629, 633 (1953).

合衆国対W.T. グラント会社事件, 345 U.S. 629, 633 (1953)を引用して。」

これはアメリカでの裁判所の考え方であるが、日本でも独占禁止法第二十四条には「おそれ」「予防」の文言があり、まだ判決の集積は行われていないが、クレイトン法のおそれの文言を国会が採用したのであるから、早晩このような考え方がとられ判決が下されるべきことになると考えられる。

本件についてみるに被上告人には7年間違反行為を継続的に繰り返しているにもかかわらず、一向に公正競争阻害による社会に対する罪も、個別企業に対する損失や、損害の認識が生ずることもなく、違法行為を繰り返さないと期待できないとする判断には合理的理由があると考えられる。

独占禁止法第24条の「侵害されるおそれがある」「生ずるおそれがある」「侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体」「その侵害の停止又は予防を請求することができる。」のそれぞれ構成要件に該当していると考えられる。

第15 予防

これまでの日本の判例において、おそれがほとんど定義されて来なかったように予防も同様であったとある法律家は言っていた。そこでアメリカの判例を検討する。

While this is the only case I have found which states that such an injunction is mandatory, there is no question that a court may consider lingering efforts as a factor. この事件(AMA事件)はその差止が命令的であるとされた私の知る限り唯一の事件であるが、裁判所が継続してきているこれまでの多くの成果を一要素として考慮しているかもしれないことは疑いがないと考えた。As the Supreme Court stated in International Salt Co. v. United States, 332 U.S. 392, 400-01 (1947):

      最高裁判所が国際塩会社対合衆国事件、332 U.S. 392, 400-01 (1947)において述べているように:

The District Court is not obliged to assume, contrary to common experience, that a violator of the antitrust laws will relinquish the fruits of his violation more completely than the court requires him to do.反トラスト法の違反者がその違反によって得られた利益を放棄するよう裁判所が違反者に要求している程度以上に、一般の経験に反して、放棄するであろうと、地方裁判所は予測する義務はない。 And advantages already in hand may be held by methods more subtle and informed, and more difficult to prove, than those which, in the first place, win a market ...だから最初の段階での市場における様々な優位性よりも、すでに手中に収めた優位性は、よりつかまえにくい、より情報に通じた手段によって、したがって証明するのがより難しい手段によって保持されているのである。In an equity suit, the end to be served is not punishment of post transgression, nor is it merely to end specific illegal practices. 平衡法訴訟においては、その目的とするところは過去の違反や犯罪ではなくて、特定の違法な行為をやめさせるということだけではない。A public interest served by such civil suits is that they effectively pry open to competition a market that has been closed by defendants' illegal restraints.そのような公共的訴訟によって得られる公共的利益は、被告が違法な競争制限行為によって閉鎖してきた市場の競争性をそのような訴訟が開放しようと苦労して競争性を引き出しているということである。

The point, clearly, is to deny those in violation of the Act future benefits from their forbidden conduct. 独占禁止法違反の場合、禁止された行為を行うことによって生ずる将来の利益をも否定することが明らかに重要である。United States Gypsum Co., 340 U.S. at 89. 合衆国ジプサム会社事件, 340 U.S. at 89. See also Oregon State Medical Soc., 343 U.S. at 333.参照、オレゴン州医師会事件, 343 U.S. at 333. Continuing effects of post illegal conduct, therefore, is an important factor to consider.過去の違法行為を原因としてそれから継続して将来起こる効果は重要な要素である。

Because this suit is brought by private citizens, the AMA contends that (1) the plaintiffs must show a threat of personal injury and (2) that they are entitled only to preventive relief disabling that threat.この裁判は私訴であり、(1)個人の損害のおそれを証明しなければならないし、(2)このおそれが可能ではないようにする予防的preventive救済の権利が原告にあるかどうかについてだけはアメリカ医師会は争っている。 It bases its position on the Supreme Court's recognition that a private litigant's objectives in pursuing an antitrust action are not necessarily congruent with the public interest.反トラスト法の活動を遂行する私訴の当事者の目的は必ずしも公共の利益とは一致していないと、最高裁判所は認識しているという立場にこのことは基礎を置いている。United States v. Borden Co., 347 U.S. 514, 518-19 (1954).合衆国対ボーデン会社事件, 347 U.S. 514, 518-19 (1954)。 This difference in interests, it adds, renders inapplicable many of the cases cited by the plaintiffs in support of broad injunctive relief. 一般的に広く差止による救済を支持する立場によれば、原告によって引用された諸事件の多くはこの利益の違いによって適用できなくなるのではないかと付け加えている。That contention is only partially correct.この主張は一部分だけは正しい。

It is true that an antitrust plaintiff must prove some kind of personal injury or threat of injury stemming from the defendant's anticompetitive activity in order to maintain its lawsuit; both the Clayton Act and Article Ill of the Constitution require this much-.事実、反トラスト法における原告は、訴訟を維持するためには被告の反競争的な行為によって生じたある種の個人的損害あるいは損害のおそれを証明しなくてはならない、クレイトン法も憲法第3条も共にこれを要求している。 See Borden, 347 U.S. at 518-19 (Clayton Act);参照、ボーデン事件、347 U.S. at 518-19 (クレイトン法); Julian 0. von Kalinski, I Antitrust Low and Trade Regulation Section 4.06(6) (1986); ジュリアン・O・フォン・カリンスキ・I『反トラスト法と取引規制セクション』Valley Forge Christian College v. Americans United for Separation of Church and State, 454 U.S. 464, 472 (1982)バレー・フォルゲ・キリスト教単科大学事件、454 U.S. 464, 472 (1982) ("at an irreducible minimum, Art. III requires the party who invokes the court's authority to show that he personally has suffered from actual or threatened injury as a result of the putatively illegal conduct of the defendant").(「被告の推定される違法行為の結果として現実の損害か、損害のおそれを個人的に受けていることを裁判所の裁判官に証明して、動かすことが憲法第3条によって必要最小限として原告側に要求されている。」).

このようにアメリカにおいては予防的救済や、将来の損失に関する判断が行われている。Chiropractic Antitrust Suit Wilk, et al., v. AMA, et al.Memorandum Opinion and Order:Liability of the AMA and Dr. Sammons  6. Entitlement to An Injunction Chirobase Home Pageより。

法「第二十四条第八条第一項第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」とした日本の国会が決定したこの条文にはおそれと、予防という言葉が入っている。これは以上のことを法定したということであり、以上のことを念頭において法律を解釈していない事件の判断は間違っていることになる。

第16 将来の損失の現在価値の請求

本件事件においては前年同様主義が各市町村及び県や国において採られていることが証明されており、7年前に入会していたのであれば、各市町村及び県や国から受注出来たであろう利益と、現在差止によって入会した場合今後受注できるであろう利益との差額があり、それらは10年は少なくとも回復するのに要すると考えられるので、両者の積分の差額が将来の損失に関する損害賠償請求が入会後も可能であると考えるので、その分をも損害賠償請求に付け加えることが出来ると考えられる。

これらは上告人の専門分野であり、その年度年度の利益の差額の現在への割り戻した金額の合計となる。

第17 本件事件の利益の予測を困難ならしめたのは被上告人の責任であるから、損害の予測困難性の責任を被上告人が負い、即刻差止及び損害賠償請求が認められるべきであること

違法な独占禁止法違反の行為の責任を被上告人が負うべきであるとすれば、被上告人の行為から生じた逸失利益の計算困難性の責任は上告人が負うべきであるとするのは挙証責任の分担において公平の原則に反する。公平の原則は日本の法律にはないから、またこれまでの日本の判例にはないから、アメリカの判例から引用して日本の参考にすべきであるとの主張を行う。

The underlying rational for the more lenient standard of proof is the effect on the market by the anticompetitive actions of the defendant and the very speculative nature of proof required to show future profits in a hypothetical free market.

被告の競争制限的な行為が市場に与えた効果の証拠による証明の基準を非常に緩やかにしている理由の背景には、仮定的な自由競争の市場における将来の収入を証明する証拠については、非常に予測的なものになるという本質があるからである。

The Fifth Circuit in Malcolm v. Marathon Oil, 642 F.2d 845 (5th Cir. 1981) held that:

マルコム 対 マラソン石油事件642 F.2d 845 (5th Cir. 1981)において、第5回巡回裁判所は次のように判断した。

This relaxed standard (of proof) is based on a recognition of the difficulty in reconstructing events that might have happened but for the defendant's unlawful conduct.

(証拠の)証明水準を和らげる理由は、被告の違法な行為がなかった場合に起こったであろう事象を再構成することが難しいという認識によっている。

It is appropriate that if there is uncertainty, the defendant should bear the burden of that uncertainty because his unlawful actions created it.

もし独占禁止法違反の損害が確実に推定出来ないとすれば、被告がその不確実性の挙証責任を負担すべきである、何故ならばその不確実性を発生させたのは被告の違法な行為であるからであるという考え方は妥当性がある。

Malcolm, 642 F.2d at 864.

マルコム事件、 642 F.2d at 864.

Factors subject to the more lenient standard of proof include the condition of the global economy, the assumptions underlying future profit margins, and the prospect of future sales and future customers.

より緩和された証拠の基準は、世界の経済の状況、将来の利益の幅や、将来の売上と将来の顧客の予測の基礎となる仮定がその要素となっている。

Thus, speculative evidence and inferences of damages which would normally not create a jury question are sufficient to be presented to the trier of fact in antitrust cases.

このような理由から、陪審員は損害額については予測的な証拠により推論することについて疑問を持つ必要は普通はないということは、反トラスト法の事件においては、事実審における陪審員の心得である。

To mitigate the damage award, a defendant may still raise these [**37] issues and put forth evidence discounting the damage assumptions of a plaintiff.

損害額の判断を和らげるためには、被告はこれらの問題に反論して、原告の提出した損害額の仮定に対してそれよりも少ないのであるという証拠を提出するべき責任が課せられることになる。

Before availing themselves of the more lenient standard of proof for antitrust damages, however, a plaintiff must prove that the plaintiff's damages were caused by an antitrust harm.

反トラスト法による損害の証明において緩やかな証拠の基準を採用する前には、その前提として反トラスト法の違反が原因で原告の損害が起こったということを原告は証明しなければならない、

The proof required for causation is a preponderance of the evidence.

原因として要求される証拠は、証拠の優越性を証明する程度である。

The Court in Brunswick Corporation v. Pueblo Bowl-O-Mat Inc., 429 U.S. 477, 50 L. Ed. 2d 701, 97 S. Ct. 690 (1977) discussed plaintiff's burden in proving causation of antitrust injuries:

1977年にブランズウィック会社対プエブロボウロマット会社事件 429 U.S. 477, 50 L. Ed. 2d 701, 97 S. Ct. 690  (1977)において、裁判所は反トラスト法による損害の因果関係についての原告の挙証責任について次のように論じている

They must prove more than injury casually linked to an illegal presence in the market.

原告は市場において、違法な行為が存在することと、その損害が因果関係があることを最低でも証明することが必要である。

Plaintiffs must prove antitrust injury, which is to say injury of the type the antitrust laws were intended to prevent and that flows from that which makes defendants' acts unlawful.

原告は反トラスト法が予防しようとしている種類の損害、その損害が被告の違法な行為が原因で起こってきた損害であること、つまり反トラスト法違反による損害であることを証明しなくてはならない。

The injury should reflect the anticompetitive effect either of the violation or of anticompetitive acts made possible by the violation.

その損害は違反行為の競争制限的な効果あるいは違反によって可能となった競争制限的な行為の競争制限的な効果のどちらかを反映していなければならない。

Brunswick, 429 U.S. at 489.

ブランズウィック事件、 429 U.S. at 489.」

「Thus, If a plaintiff who would bear the burden of proof by a preponderance of evidence at trial moves for summary judgment, he must present evidence that would require a reasonable trier of fact to find any underlying material fact more likely than not. 従って、もし法廷において証拠の優越によって挙証責任を負っている原告が、略式判決を求めるならば、事件の主要な事実についてなかったというよりも、あったと考えられる程度に合理的な事実を法廷に提出することが必要である。

IN THE SUPREME COURT OF CALIFORNIA THERESA AGUILAR et al.v.ATLANTIC RICHFIELD COMPANY et al.」   

以上の証拠の優越の問題を日本に取り入れる場合には民事訴訟法第248条の中に取り入れられたと考えることが出来る。従って独占禁止法違反が独占禁止法第24条において認められてからのみ、即ち差止なくして損害なしという考え方ではなく、差止めるために損害を考量する場合にすでに民事訴訟法第248条は考察の対象として判断の材料にすべきなのであって、差止なければ民事訴訟法第248条は使えないという第一審の受忍限度論は間違っているのであり、独占禁止法違反によって損害を認定する場合には民事訴訟法第248条を使用して認定し、差止めるということは何等の不都合はないと考えられる。

この点でこれまでの独占禁止法による損害賠償請求が民法の不法行為論によって解釈された酒匂悦郎事件での取扱の基準を変更する必要があると考えられる。

民事訴訟法第248条が使えるということで損害額を認定し、著しい損害があるからという理由で差止を認めるならば、証拠の優越に関する以上の論理は使えるであろうか。

知的所有権訴訟では民事訴訟法第248条が頻繁に使われている。それも損害の認定において使われている。差止そのものの認定が少ないので、両者の関係についての判決は探しえていない。しかし本件事件においても、先に損害額を認定し、6カ月程度以降のモラトリアムは違法性があると認定し、それ以降の損害額が大き過ぎるので著しい損害に当たるとの認定の仕方があったはずである。この点で差止なければ損害なしという論理は非常におかしな論理であったということが出来る。

「データベースにおける創作性と法的保護 松村信夫(Nobuo Matsumura)弁護士 関西学院大学及び近畿大学兼任講師

〔判示事項〕

著作物としての保護を受けないデータベースであっても、そのデータの相当数を複製し、競合するデータベースを開発する行為は不法行為に該当する。

〔判決年月日〕@ 東京地裁平成13年5月25日中間判決(東京地裁平8(ワ)第10047号、第25582号、損害賠償請求事件、不正競争行為差止請求事件)

A 東京地裁平成14年3月28日判決(事件番号・事件名は@に同じ)〔出典〕@ 判例時報 1774号132頁A 判例時報 1793号133頁

〔要旨〕

本判決は、原告の自動車整備兼用システムを構成する自動車の車両データ項目(型式指定番号、類別区分番号、型式等の事実)を収録したデータベースにつき、その情報の選択及び体系的構成のいずれについてもデータベースの著作物(著作権法12条ノ2)としての創作性が認められないとして、著作権法による保護を否定しつつ、原告が相当の資本・労力を投下して開発したデータベースのデータを複製し、原告データベースと競合する地域で販売した被告に対して不法行為責任を認めた中間判決及び終局判決である。

  データベースの著作物の創作性に関しては、編集著作物や同種ファクトデータベースの著作物性に関する従前の判例の考え方を踏襲し、いわゆる「額に汗」自体は著作物としてのデータベースの創作性判断に影響を与えないものであることを明らかにしつつ、競業秩序に違反する方法によって「他人の成果」を冒用する行為に対し不法行為責任を認めてきた最近の判例の論理を開発行為に多大の資本・労力を要するデータベースのデータ(相当の質及び量のデータ)の模倣盗用行為に及ぼした判決として注目される。判決の背景や要件に鑑みれば、その射程はそう大きくないものと考えるが、基本的に、判決の判旨に賛成する。

[事 実]  原告は,コンピュータのソフトウェアの開発、販売等を業とする株式会社であり、自動車整備業用システム(以下、「原告システム」という。)を開発、販売している。原告システムは、日本国内に実在する四輪自動車(以下「実在の自動車」という。)に関する一定の情報を収録したデータベース(以下「本件データベース」という。)を構成要素としている。

  なお、本件データベースに収録されている車両データ項目は、自動車検査証に記載すべき記述形式に準拠している型式指定番号、類別区分番号、メーカー、型式、種別、用途、車体形状、寸法、軸重、定員、最大積載量、車両重量、車両総重量、エンジン形式、総排気量、燃料、及び自動車検査証に記載する必要がない「車種」である。

  被告は、コンピュータソフトの製作、販売等を業とする株式会社であり、原告と同様のシステム(以下、「被告システム」という。)を製造販売しており、これも原告と同様の車両データベース(以下、「被告データベース」という。)をその構成要素とする。

  原告は、本件データベースは、対象となる自動車の選択、データ項目の選択及び体系的構成の観点から創作性を有するから、データベースの著作物に該当し、被告が本件データベースを複製し、これを組込んだ被告データベースを販売した行為(以下「被告行為」という。)は、本件データベースの著作権を侵害するか又は不法行為を構成するとして、被告システムの製造等の差止め及び損害賠償を請求した。

[判 旨] H13.5.25 東京地裁 中間判決

1. 本件データベースの著作物性

 対象となる自動車の選択について、原告が実在の自動車を選択した点は、国内の自動車整備業者向けに製造販売される自動車のデータベースにおいて、通常されるべき選択であって、情報の選択に創作性があるとは認められない。

 データ項目の選択について、原告が選択した自動車検査証に記載する必要のある項目と自動車の車種という情報項目は、自動車整備業者用のシステムに用いられる自動車車検証の作成を支援するデータベースにおいて、通常選択されるべき項目であって、創作性を有するとは認められない。

  また、本件データベースは、型式指定−類別区分番号の古い自動車から順に、自動車のデータ項目を並べたもので、それ以上に何らの分類もされていないから、体系的な構成に創作性があるとは認められない。

2. 被告行為が不法行為に当たるかどうか

  不法行為の成立要件としての権利侵害は、法的保護に値する利益の侵害をもって足りるというべきである。そして、人が費用や労力をかけて情報を収集、整理することで、データベースを作成し、そのデータベースを製造販売することで営業活動を行っている場合において、そのデータベースのデータを複製して作成したデータベースを、その者の販売地域と競合する地域において販売する行為は、公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、不法行為を構成する場合があるというべきである。

  本件では、原告は、本件データベースの開発に5億円以上、維持管理に年間4000万円もの費用を支出していること、原被告は、自動車整備業用システムの販売につき競業関係にあり、実際に、原告システムを導入していたが、その後、被告システムに変更した顧客もいたこと、及び、被告行為が認められる。

 以上の事実によると、被告行為は、不法行為を構成するというべきである。

[判 旨] H14. 3.28 東京地裁  終局判決

1 原告の損害

 (1) 原告のマーケットシェアによる逸失利益の算定

   顧客は、自動車整備業用システムの購入につき、データベースのみならず、いろいろな事情を総合して決することなどから、原告のマーケットシェアに基づいて、原告が原告システムを販売することができなかった数を算定することはできない。

(2)原告システムと被告システムとの実際の競合件数による逸失利益の算定

   被告行為の期間、平成7年1月から平成8年10月までの、原被告の現実の競合件数は民事訴訟法248条により23件と認める。原告が原告システムを販売したことによる1台当たりの利益額は、粗利益の212万3767円、システム保守契約の締結により、原告が得られる利益は26万6、148円と認められ、逸失利益額は各々、4884万6641円、128万5494円となる。

  (3) 値引きによる損害

   原告の値引きが直ちに被告システムの販売によるものと認めることはできないし、被告行為によって原告が原告システムの値引きを余儀なくされた具体的な事情が存するとまで認めることはできないので、値引きによる損害は、認めることができない。」

この判決はすでに民事訴訟法第248条を使用しており、本件事件の判決において民事訴訟法第248条を差止なければ損害なしとして使用しなかったことには判例違反がある。独占禁止法違反の認定においてこそ民事訴訟法第248条は採用されるべきであり、これは証拠の優越の原則を採用することに似ている。

独占禁止法に差止訴訟が導入される時に、民事訴訟法にではなくて独占禁止法の中に証拠の優越の法規を入れようとした経緯がある(宗万 秀和弁護士、虎ノ門の話及びその当時の法案をみせてもらった)。

しかし最終的には民事訴訟法第248条として結実して知的所有権においても使用されることになったのに、肝心の独占禁止法において採用された判決が存在しないのは非常に残念なことである。

独占禁止法違反行為は本件事件の証拠を見てみれば分かるとおりに民間人が犯罪に近い行為を隠すためにはあらゆる変造等の行為を行う。従ってこれは証拠隠滅に等しい行為であるといえるにもかかわらず、それを止めようがないし、いくらプライベート・アトーニー・ゼネラルと言われても捜査権限がなく、何も権限が与えられていない私人が犯罪に近い行為の捜査を行うのであるから、50ギガのテープを集めても、犯罪の証拠に対して自白の強制をさせることも出来ずにただ手をこまねくだけである。

このような場合に知的所有権にも妨害排除の請求権にも近い差止の権利が認められているので、独占禁止法の権利は生きる権利と同じであるからという理由からであると考えられるが知的所有権と同じように独占禁止法違反にも差止の権利が認められたとしても、その違反については被告が起こした違反から生ずる予測できない状態を証拠として提出したり、犯罪にも等しい行為を私人が追求することにより集められる証拠は捜査権限がない故に完全なものではありえないので、証拠の優越にも等しい民事訴訟法第248条を使用すべきであり、その最適な場合に使用しなかったことについては明らかに法令の適用に誤りがあるのは、共同ボイコットの事案において正当な理由なく違法の法規を使用しなかったことと同様に、法令の適用に誤りがあるのは自明である。

第18 損害額の実額及び将来の予測による損害金、ヤードスティック分析と、前後理論

本件事件が世界的にも特殊な事件であり、世界的にも独占禁止法の歴史上も有名になりうる事件であるのは、市場が法的に画定されていたことではない。市場が事業実績報告書というものによって法的に提出を義務付けられていたという点にある。各需要者毎に市場の数値や、市場における価格・数量が千円単位で各事業者(供給者)から細かく一年ごとに提出され、埼玉県で一々集計を行っていたという点にある。

それらは法的に義務付けられていた故に、業務屋と思われるボスが配分をどこかで行い、これは社会的に意義があるのだという主張の論陣をはるかわりに、堂々と被上告人においてそれも機関で決定して配分を行っていたという事件である。それ故に配分は業務委員会において、審査を行い行っていたのである。その市場支配力は完全で100%であったにもかかわらず、いやそれ故にそれをカモフラージュした市場の結果を出されれば今度は逆に市場における配分(分配)はほぼ市場において需要と供給が行ったのであるという主張がなされうるようにも被上告人においてもう一度やり直すことが可能であったという点にある。

これは証拠の能力の問題であった。日本においては談合は配分を平等にやる唯一の方法であるからいいのだという論陣がはられていて、そのような本は堂々と出版されている。その見本がここにあったのである。弁護士会が法律相談によって審査を通じて配分していないといったら嘘だろうということになる。どのような法律事務所もすべて「法律相談を通して下さい。」と言って断るからである。

ところが本件事件においては市場支配力を否定する判決を一審では出してしまった。そんなのは事実からしてありえないことである。

確かに世界的に見ても恥ずかしい事件ではある。こんな事件世界に出したら日本ではこんな市場構造になっているのかということがばれてしまうのである。しかし実際に起こったのであるから、そしてその意識が真実であるのだから、世界に公表することが妥当であろう。

今回の会長選挙ではギルド制度を強化しよう、価格を固定できるぞという清水文雄がその主張で会長選挙に出馬した。それが独占禁止法に違反することも知らずに。本当はギルド制度を維持し、配り続けようというのが本件事件の真相であり、それをやめさせようという不動産鑑定評価基準を守った鑑定評価書は安くても書けますよというのが上告人の主張である。

不動産鑑定評価の市場は、業界で(地価の)調査と呼ばれる市場とは違うことが画定されている。調査書は不動産鑑定評価基準にのっとっていない不動産鑑定評価書ではないものをいう。従って事業実績報告書は不動産鑑定評価書のみに限定して報告されている。

このうち上告人が7年間もの間埼玉県の事業者として埼玉県専業の事業者になったにもかかわらず、埼玉県の物件で鑑定評価書が書かせてもらったのは、自由競争(一般競争入札)によって落札した郵政省の16件の鑑定評価書のみであり、それも品質のよい(=不動産鑑定評価基準にまさしく則った)鑑定評価書を1件4万円ほどで作成したのと、日高市の固定資産税の標準宅地の標準宅地の不動産鑑定評価をコンピューターによる効率化によって一件39,000円で書かせてもらったのみである。これは指名競争入札によるものであって、指名をたまたま受けたので一位株式会社日本経済研究所39,000円、二位株式会社西園哲治不動産事務所39,500円、三位株式会社国土鑑定58,900円程の順位で一抜け方式で受注できたものである。

その他は他の都道府県の一般競争入札による入札における一位落札であった。

普通一年目からお祝いと称して、埼玉県の業者となり、被上告人の会員であれば、一件は非常に儲かる効率的な不動産鑑定評価である公共用地の買収案件が「一人指名の」電話が埼玉県からかかってくるという習慣がこの業界にはある。ところがそれさえもなかった。祝儀といわれるものである。

さて埼玉県の不動産鑑定評価を行うためには不動産鑑定評価基準により取引事例を使用する必要がある。これはただ乗りを防ぐために地価公示、地価調査の担当者が均等に分担して作成している。その作業量を90%とすれば、その他の利潤を得るのに効率的な不動産鑑定評価は10%の作業しか必要としない。日高市の74件は一週間の仕事で300万円であったのに、地価公示、地価調査の作業は一年かかる。従って埼玉県に事業所を置いておいても90%の基礎的な費用は払っているのに、90%の利潤を得るための利益が入ってこないのである。従って上告人の会社は倒産の状態に追い込まれている。しかし「過去の蓄えで事業費の90%を出しているのであり、この事件が終わったらどうしようかと思っておりますが、しかしこの事件を早く終わらせようと思っているだけであります。」これが真相である。

この業界は倒産がなかった業界であった。それは配分・市場割当が有効に働いていたからであった。

もう市場割当をするだけの新しい物件がないというのが被上告人に言える唯一の答弁でありうる。しかしそれは言えない。また新しい物件も多いのであり、新しい物件であっても、被上告人しか受注できないような価格固定を行っているから受注できない市場閉鎖の責任が重大であると思われる。それによれば市場を閉鎖したことにより予測を困難にしたのは被上告人の責任であるから、今だ撤退も出来ずにどうにもならなくしているのは被上告人の責任であり、挙証責任を被上告人に移して、事業実績報告書をもって埼玉県の物件が全く受注できないというだけで、それも自由競争を阻害しているから受注できないというだけでよいという法的な判断が必要である。

確かに7年もいれば普通は中間程度の受注が出来ていたと考えられる。特に東京都でも事業を積極的に展開してきていたので。しかし100%の証明はここでも不可能であることが分かった。先の市場割当を80%しか証明できないのと同じように、どうしても疑問が残る点がある。一件くらいは市場割当ではない、市場割当と市場における需給による決定とは同じ結果だよと言われればそれが否定できない性質のものだからである。市場割当が市場による決定と同じになっている場合がありうるのである。

この場合には自白が必要であり、100%の自白の裏付けが必要である。もう刑法の世界になってしまい、捜査権の問題になってしまう。捜査権のないプライベート・アトーニー・ゼネラルに出来ることは限られている。しかし5ギガに及ぶテープは新しい技術が可能にした。すべて毎日テープをオンにしていても自由に昔の会話を取り出せるようになったのである。いわゆる犯罪防止用のビデオテープと同じ状態といえる。電池も安くなった。自白は数多く得られた、そしてそれを裏付ける結果も裁判官の前に出している。

ただ動機の部分のみは出さなかった。安売りを防止する目的であるという部分のみは動機に関わるということで故意に弁護士が出さなかった。

動機がどうであれ、外見上正当な理由なく違法であるのであるから、動機の部分のみはよいというのであった。

しかし安売りの部分のみは違うと思われる。安売り防止は公正競争阻害の程度に影響を与える動機である。酒匂悦郎事件も安売りの防止の目的であった。本件も安売りの防止の目的である。

事業実績報告書には一件当たりの価格が入っており、鑑定評価額7億円の鑑定評価書は公共用地の不動産鑑定評価における報酬基準の通りに被上告人の会員は受注していることが分かる。これに対して価格競争をしようとした上告人はそれが一人指名による随意契約によるので、その情報さえも入手できず、単価契約により契約したものでしか公共用地の不動産鑑定評価に参加できないことを知り、更にはそれが被上告人と埼玉県の会議により決定されているという用地部長のテープ情報を得たので、裁判官の前に提出したのであるが、もし裁判所での証言となればそれが違法な事であると知れば、否定される可能性があるのである。

では何をもって100%の犯罪的事実の証明になるのかという問題が発生する。本件事件の様な犯罪的事実の証明においても100%の証明を要求するのならば不可能であり、証人として呼んで、言葉尻をとらえて、100%であるとするしか方法はなくなる。

二審の誘導尋問ではないかという反論は被上告人の言葉としてとらえれば、反論にはなっていないが、犯罪的事実のテープはそのようなものだといいうる。

しかし本件事件においてはたまたま酒匂悦郎事件におけると同様に入会拒否(入会のモラトリアム)は現在も継続犯として行われ続けているという事実がある。酒匂悦郎事件ではあまりに長いと罰される恐れがあるとして入会させた。これがあだとなって損害賠償請求が認められることになった。本件事件ではその経験を踏まえて、入会拒否を継続して続けざるをえなくなった。だから途中で、独占禁止法のことはいわずに入会しなさいということを言い出したのであろう。

さて東京都で事業を行っていた人が埼玉に来てすぐに不動産鑑定評価書が書けるのかという大問題と、埼玉県の市場に入れなかったら、他の県ににげ帰ればいいではないかという大問題が発生する。

これがヤードスティックになっているのかどうかという問題である。宇治市の固定資産税の標準宅地の鑑定評価書は341件が二週間程で完成した。京都府の調整会議で何の支障もなかった。京都府の不動産鑑定士協会の調整会議は廃止されても何の問題もなかった。宇治市の公務員がほとんどやっているのみであった。その通りに書くという仕事であり、何の問題もなかった。ところが埼玉県では事務費と称して2,500円を一件当たり取るという酒匂悦郎に言わせれば市場割当料としてとっており、京都府ではない調整会議を埼玉県では不動産鑑定士協会が行っている。しかし参加しないでも何等問題はなかった。

確かにたまたま郵政省と、文部科学省と、一部の市町村が自由競争に踏み切った。このために受注できたことはヤードスティックになっており、逆に損害賠償請求の金額を減らすことにはなっていないと主張する。というのは市場が違うからである。上告人が主張しているのは埼玉県の市場に入れなかったと言っているのであって、佐賀大学の全部の鑑定評価や、北陸の郵便局の不動産鑑定評価の市場に入れなかったと言っている訳ではない。入る権利がある埼玉県の物件で埼玉県の取引事例を必要とする埼玉県の物件の鑑定評価書の市場に入れなかったと言っているのである。名前が日本経済研究所だからいいではないかと言われれば、埼玉県不動産経済研究所に変えればどうなるのかという問題が存在する。

しかしこのような不確実性は被上告人の責任であり、上告人の主張すべきものはヤードスティックになっているという事実のみである。前後理論における東京都での事業実績報告書のみである。

またギルド制度によって先に入った者を優先するという制度を作っているのであるから、将来の損害も請求するものである。従ってこのような観点から損害及び損害のおそれを認定して、差止仮処分を請求するものである。

第19 被上告人の裁判アレルギーと公正競争阻害による公正取引委員会のアレルギー、公正取引委員会には行かないようにというおふれ、更には行った業者に対する戒告など

    被上告人は価格固定によるギルド制度を作っているので、公正競争阻害性があると思っている。従って公正取引委員会と検察庁と裁判所を異常に恐れている。これを理由とした上告人の理由の主張は到底独占禁止法に合致しているとは言えず、社会通念上も憲法上も憲法違反のおそれがあり認められない。それだけではなく犯罪性が認定できる。

    証拠の隠滅や、文書偽造やらの独占禁止法違反を隠すためのあらゆる努力を行った跡が随所に証拠として残っており、犯罪を隠すための裁判を理由とし、公正取引委員会に行ったことを理由とする本件入会のモラトリアムは犯罪を隠すための理由であるとしかいいようがない。

    それを認めた受忍限度論は限度はあると反論することが馬鹿げたことであるといえるくらいである。

被上告人には日本人特有の裁判アレルギーと、公正取引委員会アレルギーがあり、もしちゃんと公正競争阻害の行為を行っていないならば、それにかかる費用はコンプライアンス体制を構築する費用よりも少なく済むのであり、公正競争阻害性があるというよりも、競争促進性があるというべきである。更にはコンプライアンス体制が確実なものになっていれば、裁判など行わずに、仮処分での決定ですぐに済んでいたはずであり、仮にも茨城県不動産鑑定士協会事件、酒匂悦郎事件のように最高裁判所でも負けるというようなことはなかったはずである。本件事件においては差止が要件で損害賠償請求の認定が可能であるが、不法行為法によらざるを得なかった酒匂悦郎事件とは違い独占禁止法違反の事件である点を除いては茨城県不動産鑑定士協会事件とよく似ている。

上告人の裁判は負けたが、次のような価値があると裁判官が言っていた。

「一般の民事事件においても、既存の判例がない争点を含む訴訟を提起せざるをえないこともある。このような場合に弁護士費用を負担することを恐れる当事者が訴訟提起を控えることになると、結果として法の発展を阻害することになりかねない。

また、現代の民事裁判の中には、たとえば政策形成訴訟と呼ばれるような勝訴の見込みは必ずしも高くないものの訴訟を通じて世論を喚起し、新たな法の形成を目指す類型の訴訟も少なからず存在する。

また理念的には、たとえば、行政訴訟などは、行政の違法を是正し適正な行政作用を実現するという公益的側面があり、これに要する弁護士費用を被告行政側に負担させることには意義がある。同様のことは独禁法違反訴訟、消費者訴訟、公害訴訟などについても言える。

片面的敗訴者負担制度

片面的敗訴者負担制度は、原告勝訴の場合のみ原告の弁護士費用を敗訴被告に負担させる制度であり、アメリカにおいては特別法により広い範囲で認められている。これは、ある種の分野における訴訟の提起を促進し、弁護士費用の敗訴者負担制度が訴訟を抑制することがないようにするとの政策目的に基づくものである。

わが国においても、たとえば、以下のような類型の訴訟では上記制度の導入が図られるべきである。

1. 独禁法違反行為による損害賠償請求訴訟、著作権・特許権侵害による損害賠償請求訴訟

○ 懲罰的損害賠償制度

    懲罰的賠償制度は、その導入を前向きに検討するに値する。

被害者の権利行使のための時間や労力を考えると、現在のわが国における慰謝料の実状や実損害に限定する損害賠償制度では、裁判の利用は経済的に割の合わないものになっているといわざるをえない。このことは、弁護士費用が原則として各自の負担とされる場合には一層顕著となる。そのために権利の行使を諦めさせ、社会に不公正をもたらす結果となっている。かかる不公正、不公平を是正するために、一定の範囲で懲罰的賠償を導入することを検討すべきである。」

このことは特に独占禁止法裁判にいえるのであって、すでに司法制度の改革の議論においては議論に上っているのである。

「日本には、刑事司法と民事司法の峻別等を重視する考え方から懲罰的賠償に否定的な見解もある。しかし、上記の趣旨からして、実質的に公平な損害の分担を確保するためには、懲罰的賠償も必要である。また、労働基準法の付加金の制度(労働基準法114条)は二倍賠償の一種とも考えられ、懲罰的賠償が日本の法秩序と両立しえない制度とは言えない。

その方法として、知的財産権法や独禁法に特別の規定を設けることのほか民法の損害賠償に関する規定を改正することも検討されるべきである。その際には、制度目的に応じた合理的な範囲の賠償額の検討も必要である。」

第20 日本における弁護士の選任の困難性

この事件において告訴や、裁判が判例などの検索が、ふじゅうぶんな状態で提起されなくてはならなかった理由は、検索すべき判例を弁護士会が独占しており、一般人にはそれへのアクセスが非常に難しく、また弁護士業務は独占されているので、上告人代表のように中央大学法律学科を卒業し、法学研究科大学院博士後期課程を修了していてもほとんど本人訴訟であっても訴訟の遂行が不可能であることが理由である。更には弁護士業務はそのような状態の中にあって非常に高価なものになっており、それ故に勝訴してもほとんど金銭的価値がない(酒匂悦郎の実感)のである。

日本の弁護士会は完全な、100%のギルド制度を採用しており、次のような裁判利用窓口を通じてしか依頼が出来ないようになっている。(テープがあるし、何度もこの話は確認している。)

これは独占禁止法の面からは問題がある側面がある。これと同じ制度を採用しようとしたのが、被上告人の無料相談会の開催であった。また不動産鑑定士会になればそのあこがれになれると考えたのである。これが模範となって価格固定が公然と行われた。従って無料相談会により受注して会員で分け合うというのは本当の真実であることが理解できる。  弁護士会でも「自己の事務所で次回以降相談を行ったり、法律相談センターの審査を受けて自分で事件を受任することもある。また訴訟担当の弁護士を別に紹介したり、」して受注することになっており、審査を受けないで受任することはありえない。丹宗昭信元北海道大学教授が最初に受任したが、紹介事業を通さなかったことから弁護士会からそうすかんをくったことをはじめ、今回の上告に当たっても一橋大学で同じ法律研究会に入っていた鈴木五十三弁護士もやはり弁護士会の審査なしには受任できそうにはない。

この様な訳で自らの少ない判例の検索ソフトで検索しながら、自分で訴訟をしなければならない経済的、組織的制約がある場合には、それを責めることは出来ない。金がかかるのでや、弁護士会に相談しても弁護士が得られないので、仕方なく少ない判例によって本人訴訟にしたりすることは仕方のない日本での状況である。いくらコンピューターで検索しても重要な判例以外は出てこないのである。

酒匂悦郎氏は何度でも相談しろというが、10回以上やっても今回は赤坂氏にしろいう返事のみであった。

「3. 裁判利用相談窓口

  ○ 弁護士会の相談窓口の現状について

法律問題を抱えた市民が弁護士会の法律相談窓口にたどり着く経路は、別紙資料5に記載されたとおり、区役所・市役所の紹介が全体の13%、弁護士会の電話相談(13%)、知人の紹介(12%)、電話帳(12%)、弁護士会のホームページ(6%)、裁判所(5%)等である。

こうして、弁護士会の法律相談窓口にたどり着いた市民は、そこで問題別に各種相談へと振り分けられる。東京地区では、クレッジット・サラ金の相談窓口として、四谷と神田に専門の相談センターが新たに開設されている。それ以外の相談は、霞が関の弁護士会館の一階の受付窓口で受け付けられ、それが、一般相談、離婚・相続・遺言相談、労働相談、消費者相談、子どもの人権相談、医療過誤相談、交通事故相談、外国人相談などに振り分けられ、それぞれの相談担当弁護士からアドバイスを得られる仕組みとなっている。

相談担当弁護士は、その場で相談を行うほか、時間が足りないなどの場合には継続相談として、自己の事務所で次回以降相談を行ったり、法律相談センターの審査を受けて自分で事件を受任することもある。また訴訟担当の弁護士を別に紹介したり、会社などの顧問弁護士を紹介する制度などがある。

こうして、市民は各個の問題に応じた対応を受けることができる。訴訟費用などの負担が難しい者については、法律扶助協会の利用を紹介する。今後、権利保護保険ができれば、それに対応した弁護士紹介などの業務も行うことになる。」

この様な場合に勝訴の見込みについてないと思われるものについては本人訴訟をせざるをえないことはあり得たのである。この点では多くの人が弁護士の法律相談と紹介制度とに不満を持っていると思われる。

第21 価格維持行為であったという酒匂悦郎証拠による監禁暴行事件の独占禁止法上の違法性

安売りの行為に出た二業者の代表者である酒匂悦郎と山口節生に対して、酒匂悦郎は同一士協会内部のものとして理解できるが、他の東京会の山口節生にまで「価格を守らせるリンチまがいの行為」に井坂雄はでて、更には河田昭夫は埼玉県で日高市で一位の価格で入札した山口節生に対しても、更には二位の価格で入札した西園哲治に対しても価格維持行為を続けているのであり、今後とも公正競争阻害のおそれは十分にあり、現在も単価契約により埼玉県との間で契約を結んでいて、被控訴人会員によって独占している。これは価格維持行為とともに今後も継続していくというほぼ確実な証拠がある。

トイザらス事件は安売り業者を排除したという点で違法性の程度が、本件事件同様に、非常に高い事件である。ボイコットであっても当然に違法であるケースがあることを示している。FTCは、次の通り4つの構成要件についてテストしている。本件事件においてはこの4つの構成要件に完全に合致しているといえる。

First, the purpose of the group boycott agreement was anticompetitive, in that it was designed to disadvantage competitors of Toys "R" Us.第一の構成要件は共同ボイコットの合意の目的がトイザらスの競争者たちに不利益をもたらす故意があったのであるから、競争制限的であったことであった。 Second, the firms involved (both Toys "R" Us and the manufacturers) were dominant in their markets. 第二の構成要件は、(トイザらスと製造業者群ともに)関与した企業群は市場において支配的な地位にあったことであった。Third, the boycott cut off access to products and relationships needed for the boycotted firms to compete effectively.第三の構成要件はこの共同ボイコットによって、ボイコットされた企業群は競争を効果的に遂行するために必要である製品や取引へのアクセスが出来なくなったことであった。 Lastly, the practice was not justified by plausible arguments that it enhanced overall efficiency.第四の構成要件は、本件行為が総合的にみて効率性を増大させたという正当化の論理が外見からもっともらしくなかったことであった。

安売り業者を排除した典型的な事例であり、ノースウエスト卸売事務用品会社事件のアメリカにおいて確立された最高裁判所の判決後の動向にも適合している。

第22 被上告人の故意及び更正の可能性

被上告人会員はおそらく相談の上で「埼玉から出て行け。ぶっ殺すぞ。」と上告人に電話してきた。これは真実なので告訴した。このように被上告人には故意に追い出そうという意図がある。これは内容証明郵便によって確認されている。これについては入会金の16倍もの値上げについても同様である。

埼玉県の各事務所の用地課の発注においては会員以外は発注しないことは知っていなかったとしても、過失にも当たる。知っていないことはほぼありえないので故意があると考えられる。

従って損害額の認定に当たっては、この予測しがたい状況を故意に作り上げた被控訴人に責任があることは明白であり、著しい損害が緩やかな証拠の原則によって認定できる場合には差止の仮処分の請求を認めるのが妥当であると考えられる。

これは被上告人が継続している違反及び損害ないしは将来の損害を認めないばかりか、独占禁止法違反について公正競争阻害性を認めないばかりか、更には不動産鑑定士法にして価格固定を法的にしようという運動さえ続けている現状から、損害が継続するおそれも、公正競争阻害のおそれも存在し、命令的差止(強制命令、作為的差止命令、作為を命じるインジャンクション、違法状態の排除のために積極的なことが必要なので裁判所が命じる)や予防的差止のいずれをも必要としているからである。

以 上

注2 参照: U.S. Supreme Court ZENITH CORP. v. HAZELTINE, 395 U.S. 100 (1969) 395 U.S. 100  ZENITH RADIO CORP. v. HAZELTINE RESEARCH, INC., ET AL. CERTIORARI TO THE UNITED STATES COURT OF APPEALS FOR THE SEVENTH CIRCUIT. No. 49. Argued January 22, 1969.Decided May 19, 1969. から以下の文章を引用し訳す。

Moreover, the purpose of giving private parties treble-damage and injunctive remedies was not merely to provide [395 U.S. 100, 131] private relief, but was to serve as well the high purpose of enforcing the antitrust laws. E. g., United States v. Borden Co., 347 U.S. 514, 518

更に言えば私訴において三倍額請求を認め、差止給付訴訟を認める目的は単に私的な救済を与えるためであるばかりではなくてそれと同時に反トラスト法の強化という公的な目的にも資するからである。政府、対、ボーデン社事件、347 U.S. 514, 518。

    The evidence was sufficient to sustain a finding that the Canadian patent pool refused to license imported goods, thus excluding foreign manufacturers like Zenith from the Canadian market for radio and television products.

証拠によれば、次の事実が認められる。カナダの特許プールが輸入製品への特許許可を拒絶し、カナダのラジオとテレビの製品市場からゼニスのような外国の製造業者を取引拒絶によって排除しようとしていることが認められる。 P. 118.

Judgment in this [395 U.S. 100, 107] amount was awarded Zenith, along with injunctive relief against further participation in any arrangement to prevent Zenith from exporting electronic equipment into any foreign market.

この額が認められたこの判決[395 U.S. 100, 107]は、それと同時に差止の救済も認めた。どのような外国市場へもゼニス社が電子機器を輸出するのを妨害するような合意に更に参加することがないようにという差止であった。                        

注3、デジコン電子(株)による損害賠償等請求事件判決は次の文言を使っている。

「自由な競争市場において製品を販売することができる利益を有しているのである。」としている。これによれば受忍限度の問題は出てこない。自由に営業する権利は天賦の営業権である。

独禁法2条9項、独禁法19条(一般指定1項2号)、独禁法8条1項1号、独禁法8条1項5号、民法709条 平成5年(ワ)第7544号

判決  言渡平成9年4月9日交付平成9年4月9日裁判所書記官

「私法上の不法行為該当性

独禁法は、原則的には、競争条件の維持をその立法目的とするものであり、違反行為による被害者の直接的な救済を目的とするものではないから、右に違反した行為が直ちに私法上の不法行為に該当するとはいえない。

しかし、事業者は、自由な競争市場において製品を販売することができる利益を有しているのであるから、右独禁法違反行為が、特定の事業者の右利益を侵害するものである場合は、特段の事情のない限り、右行為は私法上も違法であるというべきであり、右独禁法違反行為により損害を受けた事業者は、違反行為を行った事業者又は事業者団体に対し、民法上の不法行為に基づく損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。

そして、本件においては、本件妨害行為により、原告の自由な競争市場で製品を販売する利益が侵害されていることは明らかであり、私法上の違法性を阻却するべき特段の事情は何ら認められないから、民法上の不法行為が成立するというべきである。」(酒匂悦郎事件で引用されている。)

注4 See In re Lower Lake Erie Iron Ore, 998 F.2d at 1176 ("the relaxed measure of proof is afforded to the amount, not the causation of loss -- the nexus between the defendant's illegal activity and the injuries suffered must be reasonably proven.") (citations omitted);

参照In re Lower Lake Erie Iron Ore, 998 F.2d at 1176

(「証拠によりゆるやかに計算すると言う基準は損害の直接的な因果関係はなくてもよい程度に余裕をもたせている・・・つまり、被告の違法な行為と、受けた損害との間の因果関係は合理的に証明されなければならない。」)(引用は省略。)

see also Bigelow v. RKO Radio Pictures, 327 U.S. 251, 264-65, 90 L. Ed. 652, 66 S. Ct. 574 (1946)

(holding that when the plaintiff cannot prove his damages by precise computation, the jury "may make a just and reasonable estimate of the damage based on relevant data, and render its verdict accordingly")."

注6:デジコン電子(株)による損害賠償等請求事件判決では次のように「本件妨害行為が継続していると認めるに足りる的確な証拠は全くない」として差止請求の是非について判断している。

「4 差止請求の是非

前記認定のとおり、本件撤回文書配付以降、被告らによって新たな妨害行為が行われたと認めることはできず、殊に、現在もなお本件妨害行為が継続していると認めるに足りる的確な証拠は全くないというべきである。

原告は、本件撤回文書配付後も、3懇話会の席上等で、ASGK制度の推進、アウトサイダーの製品は取り扱わないなどという趣旨の発言がされていることを根拠として、本件妨害行為がなお継続されている旨主張をするが、前記のとおり、現時点において、被告組合はASGKシールを貼付していない商品も販売できるという認識であり、また、3懇話会が使用している「アウトサイダー」という表現も、エアーソフトガンに組み込むと威力が増加する部品のことを指していると考えられる(証人永吉勝美・速記録50頁参照)ことに照らせば、結局のところ、本件撤回文書配付以降は、原告製品に対する前記認定に係るような違法な妨害行為はされておらず、右が継続していると認めるに足りる的確な証拠はないというべきである。」

注7:3倍額の損害額を認定しても、現実の損失額よりもずっと少な過ぎるという意見がアメリカ反トラスト法協会のホームページに載っている。

Why Antitrust Damage Levels Should Be Raised?  By Robert H. Lande

7/18/04 Robert H. Lande, Why Antitrust Damage Levels Should Be Raised

Reprinted with permission from 16 Loyola Consumer Law Review 329 (2004).

Copyright (c) 2003 American Antitrust Institute

2919 Ellicott Street, N.W. Suite 1000

Washington D.C. 20008-1022

Phone: 202-276-6002, Fax: 202-966-8711

「反トラスト法違反による損害賠償請求の金額は上げるべきか?」ロバート・ランゲ著

によれば、損害は三倍額でも妥当であると考えている。

「I am not aware of even a single case where a cartel’s total payouts have ever exceeded three times the damages involved?if these damages are figured properly. This is true because, if one examines antitrust’s so-called“treble” damages remedy carefully, from the perspective of optimal deterrence, one will find that it is really at most only single damages. The “threefold damages” that the antitrust world takes for granted is a myth.

もし損害額が正しく計算されるならば、カルテルにより得られた超過利潤の三倍をカルテルによる全体の支払いが超える事件を見たことがない。反トラスト法のいわゆる「三重の」損害賠償の制度を充分に注意して研究すれば、現実的にはもっとも適切な抑止力という観点からすればせいぜいほとんど損害額と等しくなっていることに気がつくであろう。「三倍額の損害賠償」という反トラスト法の常識は神話にしか過ぎない。

If these were added to the totals from the private damages actions, the actual overall level of payouts would rise dramatically,  but would still rarely reach the true threefold level.  The criminal penalties imposed almost always utilize the statutory maximum of “twice the gross gain or twice the gross loss,”  which the DOJ almost

 もし私訴における損害賠償の請求による損害賠償の金額を全体の金額に加えれば、現実の支出の水準は劇的に上昇するであろうが、しかしまだ三倍額のレベルに到達するには程遠い。ほとんどすべての場合において刑法による罰金は制定法による最高限度の「総利潤の2倍あるいは総損失の2倍」という規定を利用している。

. The states (and private plaintiffs) could help to fill the void, and would provide a counterbalance that would help avoid sharp swings in antitrust policy. Second, the federal enforcers’ judgment might

 国も(私訴における原告も)役に立たないと言う喪失感をなくすのに手助けになるであろうし、反トラスト法の政策の反対勢力に対する非常に重い重しとして機能することになろう。第二に連邦の独占禁止法の強化の判断は・・・

See also Joseph F. Brodley, Antitrust Standing In Private Merger Cases:Reconciling Private Incentives And Public Enforcement Goals, 94 MICH. L. REV.1, n.91 (1995)

参照Joseph F. Brodley, Antitrust Standing In Private Merger Cases:Reconciling Private Incentives And Public Enforcement Goals, 94 MICH. L. REV.1, n.91 (1995)

(“In fact, treble damages turn out to be closer to single damages when current losses, litigation costs, and future recovery are discounted to present value.”).

(「事実としては現在の損失と、弁護士費用と、将来の回復費用のすべてを現在の価値に還元割引を行った時の総体としての損害額を計算すれば、三倍額とほぼ同じになる。」)

See also Carlson & Erickson Builders v. Lampert Yards, 190 Wis. 2d 650, 667 (1995). For discussions of the deterrence and compensation nature of treble damages, see, e.g., Lande, supra note 8 (positing that “‘treble damages’ actually awarded are probably at most as large as the damages caused by the violation”).

三倍額の抑止力効果と、慰謝料的な性質についての議論については、Lande, supra note 8を同様に参照(現実に「三倍額」の補償はおそらく現実に違反によって引き起こされた損害額とほとんど同じ金額になっていると肯定している)

Moreover, we know that some of their clients keep trying to fix prices, risking significant jail terms, fines, and private damages actions. Are these otherwise rational business people crazy? Or is collusion often profitable?

更に言えば、重大な刑期や、罰金や、私訴による損害賠償の請求を受けるという危険をおかしながらも、価格固定し続ける訴訟依頼人も少なくないということが知られている。これらの反対の意味での合理的なビジネス人は精神的におかしいのだろうか。あるいはそんなにいつでも癒着の共謀は非常に儲かるものだろうか。

Atypically, this was a case where the private plaintiffs took the lead and the government followed. There would have been no deterrence, no compensation, and no beneficial future effects on the market, if not for the actions of the plaintiffs and their lawyers.

このようなことが当てはまるのは、典型的には私訴の原告がリードを取り、政府がその後を追う場合である。もし原告とその弁護士の行為がなければ、市場に対して抑止力も、損害補償も、将来利益を市場に与える効果も生じなかったであろう。」

これが私訴は社会的な効果もあるということである。

注8:アメリカの Lost Profits Damages: A Natural Extension of Business Valuation Skills (September 25, 2001 )の理論においてはthe time when the damages “end.”は10年以内で認められている。

「a primer on lost profits damages calculations.

逸失利益の損害の計算における手引き

when the damages “end.” It may be unrealistic to carry the losses out into perpetuity, unless a business or portion of a business is unrecoverable.

損害額の「終了する」時。事業の全体か、事業の一部が回復不可能である場合を除いては損害を永遠に引きずると考えるのは、現実的ではないであろう。」としている。

おそれと、予防の観念が日本にも入ってきたということは、本件事件の損害の連鎖がいつ止まったか、いつ完全に回復したかを判断しなければならない。

注9:ドイツでは、著しい損害は必要とせずに、差止が規定されている。おそれと予防の規定がない。損害賠償請求出来る金額は現実に受けた損害である。

「ドイツGWB1998年の第20条第6項 入会拒絶の禁止

20条6項(6) Wirtschafts- und Berufsvereinigungen sowie Gutezeichengemeinschaften durfen die Aufnahme eines Unternehmens nicht ablehnen, wenn die Ablehnungeine sachlich nicht gerechtfertigte ungleiche Behandlung darstellen und zu einer unbilligen Benachteiligung des Unternehmens im Wettbewerb fuhren wurde.

(6)Trade and industry associations or professional organisations as well as quality-mark associations shall not refuse to admit an undertaking if such refusal constitutes an objectively unjustified unequal treatment and would place the undertaking at an unfair competitive disadvantage.

事業者団体ないしは職業団体、あるいは、品質保証団体が、もし参加を拒むことによって客観的に正当な理由なく平等的ではない取扱となり、ある事業者に競争上不当な不利益を与える場合には、入会を拒むことは許されない。

Section 32 Prohibition

The cartel authority may prohibit conduct by undertakings and associations of undertakings which is in contravention of this Act.

第32条 禁止

カルテル庁は、事業者や、事業者団体の行為のうち、この法律に違反している行為を禁止することが出来る。

Section 33 Liability for Damages; Claims for Injunctions

33条 損害賠償請求;差止訴訟

Whoever violates a provision of this Act or a decision taken by the cartel authority shall, if such provision or decision serves to protect another, be obliged vis-a-vis the other to refrain from such conduct; if the violating party acted wilfully or negligently, it shall also be liable for the damages arising from the violation.

この法律の規定を犯したもの、カルテル庁によってこの法律によって決定を受けたものは誰でも、もしその規定または決定が他のものを保護するためのものである場合には、そのものに対してその行為をやめるように義務を課すことができる;もし違反を犯している当事者が故意にまたは過失によって行為を行っている場合には、その違反によって発生した損害について賠償する責任を負う。

The claim for injunction may also be asserted by associations for the promotion of trade interests provided the association has legal capacity.

またもしも団体が法的な能力を持っている場合には、差止請求訴訟は商業上の利益を促進するためにその団体によって主張されることが出来る。」

注10 「Recent applications of the per se rule to group boycotts have tended to involve either boycotts of suppliers or customers directed toward discouraging dealings with the boycotters' competitor or boycotts utilized to implement per se unlawful price fixing or market divisions.(60)

グループによるボイコットに対する当然に違法の原則の適用は、ボイコットを行う側の競争者との取引を供給者あるいは顧客に対して拒絶させるように命令したりするボイコットか、あるいは、当然に違法な価格固定や、市場の分割などを遂行するために使用されるボイコットに対して、最近では適用されるようになっている。」

 これは安売り業者をある一定地域に入れないか、入札の資格を与えないことによってカルテルが崩壊することを防止しようとすることである。本件事件の場合には埼玉県の不動産鑑定評価の市場において上告人の事業者を入れないか、埼玉県の場合には単価契約を先に行っておいて、それよりも安売り業者は指名できないようにしておいて、安売り業者が入札できないようにすることによって高い価格に固定した価格カルテルが崩れないようにしたということができる。これによって価格カルテルが成立するのであるが、この場合には入札が一般競争入札によるものであれば価格カルテル破りがこの事業者によって行われるが、指名をさせないことによって価格カルテル破り(価格固定の破壊)が出来なくなるのである。価格破壊は自由競争によって価格が値下がりすることでもあり、同時にもともと価格カルテルで高い価格に固定されていたものが値下がりすることも言うのである。安売り業者を排除する行為としてとらえられる本件共同ボイコットは価格固定の行為(強制)でもあり、当然違法の価格カルテルの部分をも含むことになる。

注11:次のような事件もある。Multiple Listing Serviceはほぼ取引事例と同じ意味を持っており、これを高くしか他の県の不動産鑑定士に見せないことは、ひるがえれば埼玉県の不動産鑑定評価の市場の価格固定を可能にしていることが出来るということの結果につながっているのであり、二審がのべているように単に価格競争に入れなかったというだけではなく、価格固定につながっているということの証明でもある。公正競争阻害は常にカルテルとつながっている。

Realtors Association of South Central Wisconsin et al.

Class action status is being sought in a lawsuit filed against the Realtors Association of South Central Wisconsin and its separate Multiple Listing Service Corporation on behalf of realtors. According to the plaintiffs, the Association forced them to buy memberships as a condition of belonging to the MLS. The suit alleges that this was a violation of the 1991 Thompson federal appeals court decision which held that a Realtor association that had monopoly power over its MLS could not force real estate agents to purchase memberships in the trade association as a condition of gaining access to the MLS.

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注12: 独占禁止法上「マルティ・リストに対する入会許可のために現実に一般的にかかる費用を超過した入会金を決めることはしないことに合意する。」とした合意判決が2003年にアメリカにおいてはなされた判決がある。

「The Multi-List agrees that is, whether acting unilaterally or in concert or agreement with any other person, shall not:マルティ・リスト(不動産売買物件情報サービス)は、片務的にあるいは他のものと共同してあるいは合意によって行為をするとを問わず、

(A) Establish any initial membership fee in excess of the actual costs of new member admission to the Multi-List;

マルティ・リストに対する入会許可のために現実に一般的にかかる費用を超過した入会金を決めることはしないことに合意する。

IV. Initial Membership Fee

5. The Multi-List agrees that no later than September 30, 2002, it shall remove all bylaw provisions relating to an initial membership fee in excess of Two Hundred Fifty Dollars ($250.00), except as set forth herein:(包括的な合意において、2,002年9月30日までに、これからの入会金においては、250ドル(約3万円)を超える入会金に関係するすべての会費規定を廃止すべきである

(A) Within then (10) days of the date of this Agreement, the Multi-List may make a written proposal to the Office of Attorney General of a new initial membership fee;

この合意の日から10日以内に、新しい入会金の金額を公正取引委員会に文書で提出しなければならない。

(B) The Multi-List shall document the actual costs of new member admission and provide such documentation in its proposal above; 包括的な合意において新しい会員を審査するための現実にかかる費用について記録し、上記の新規会員の申し出に対して情報公開をしなければならない 

(C) Upon receipt of the approval of the Office of Attorney General, the Multi-List may adopt the new initial membership fee. The Office of Attorney General will not unreasonably withhold its approval, provided, however, that the Office of Attorney General may request further documentation from the Multi-List before approving or denying the new initial membership fee.新しい入会金は、公正取引委員会による許可がなければ包括的合意がなされたとは言えない。合理的ではない金額については公正取引委員会は許可をしないが、もし公正取引委員会は新規の入会金について許可、不許可を与える前に包括的合意によって更なる文書の提出を求めることがあり得る。

(D) For a period of ten (10) years from the date of this Agreement, if the Multi-List desires to increase its initial membership fee, it shall follow the procedure in this section.この合意の日から10年の期間の間に、入会金を増額する必要を包括的合意により希望するならば、この章の手続きに従わなくてはならない。

(E) Nothing in this Paragraph shall prohibit the Multi-List from adopting bylaws requiring reasonable training requirements for new members, nor shall this Paragraph prohibit the Multi-List from adopting bylaws requiring new members from paying actual and reasonable costs for such training.

(F) Establish any moratorium on new memberships to the Multi-List service;

(不動産売買物件サービスへの新規の入会にどのような猶予期間をも設けないこと)

ANTITRUST COMPLIANCE AGREEMENT

This Antitrust Compliance Agreement ("Agreement") is made as of the 30th day of October, 2002, by and between the Commonwealth of Pennsylvania, acting by the Attorney General D. Michael Fisher, through the Antitrust Section, Strawberry Square, Harrisburg, Pennsylvania 17120 ("Office of Attorney General") and Indiana Real Estate Corporation d/b/a Multi-List of Indiana Area (the "Multi-List"), a Pennsylvania corporation with its principal place of business at 200 South 7th Street, Indiana, Pennsylvania 15701,」

注13:最近の差止に関する判決とその批判は次の通り。

「平成16年 (ネ)第2179号独占禁止法違反行為に対する差止請求控訴事件

控  訴 人 エアポートプレスサービス株式会社

被 控 訴人  関西国際空港新聞販売株式会社 外5名

控 訴 理 由 書

平成16年8月6日

大阪高等裁判所第2民事部4係 御中

      控訴人訴訟代理人 弁護士  池   上       徹

         同      弁護士  岡   野   英   雄

        同      弁護士  布   施        裕

        同      弁護士  宮   永   堯   史

        同      弁護士  宮   野   皓   次

 原判決には、事実認定及び法令の解釈適用につき誤りがあるので、破棄を免れないと思料する。

1 原判決は、

(1)   京阪神地区において、販売ルートで流通する全国紙のほとんどすべてが、被控訴人卸売会社5社(新販、大読社、関西販売、近販、日経大阪販売開発、以下「卸売5社」という)を経由して流通していること

(2)   被控訴人関空販社(以下「関空販社」という)は、空港島における販売窓口一本化のために(卸売5社によって)設立され、当初卸売5社から一手に空港島向けの全国紙を仕入れ、これを空港島内の売店、航空会社等に販売していたこと

(3)  卸売5社は、平成6年2月7日から同年3月10日にかけて、それぞれ空港島における新聞の販売については、関空販社を通して行なうことを理由として、控訴人からの本件各取引申込みを拒絶したこと

を認定した。

  この事実を前提とすれば、原判決は明言することを避けてはいるものの、卸売5社が、共同取引拒絶を行ったことは明らかである。

  その理由は、卸売5社の取引拒絶の理由が関空販社の存在を理由とするものであること、そしてその関空販社を設立したのが、卸売5社であることから、卸売5社の共同性に疑問の余地がないからである。

2  ところで、原判決は、被控訴人日経大阪卸売が本件各取引拒絶後に、設立されたものであり、本件各取引拒絶を行っていないことは明らかであるとする。

  しかし、被控訴人日経大阪即売は、被控訴人日経大阪販売開発を引継いで、日経新聞を一手に販売する為に設立された会社であり、実質的な経営には何らの変更もなされていないのであるから、被控訴人日経大阪即売がなした控訴人との取引拒絶の方針を引継いでいるものであり、本件差止請求の相手方たる地位を引継いだものとして、差止請求を受ける被告適格があるというべきであって、単に会社の設立時期のみで、同社に対する差止請求を棄却したのは重大なる事実誤認である。

3   原判決は、独禁法第24条の要件である「著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるとき」(以下「著しい損害」という)が定められた理由を、

「独禁法によって、保護される個々の事業者又は消費者の法益は、人格権、物権、知的財産権のように絶対権としての保護を受ける法益ではない。また、不正競争防止法所定の行為のように、行為類型が具体的でなく、より包括的な行為要件の定め方がされており、公正競争阻害性という幅のある要件も存在する。すなわち、幅広い行為が独禁法19条に違反する行為として取り上げられる可能性があることから、独禁法24条は、そのうち差止めを認める必要がある行為を限定して取り出すため」

としている。

4   しかし、これに対しては学説上、次のような批判がある。

  すなわち、立法関係者の説明を総合すると、この「著しい損害」要件を課した理由として考えられるのは以下の2点に要約されよう。

  第1点は民法の原則に従って条文化したことである。すなわち、通説的な見解によれば、不法行為の被害者に対する救済は事後的な金銭賠償を原則としており、例外的に差止請求を容認する場合にはより高度な違法性が必要であると解されており(違法性段階論)、そのことを明示するものとして「著しい損害」という用語を用いたとするのである。更に、直接的な参考規定としては「取締役の法令・定款違反行為に対する監査役の差止請求権」に関する「商法」代275条ノ2があり、そこでは「会社ニ著シキ損害ヲ生ズル虞アル場合」に差止請求を認めているとする。

  第2点は、不公正な取引方法による被害は不特定多数の者に及ぶために、小額の被害に対して差止請求訴訟を認めると社会的に弊害が生じるようなことが考えられるために、いわば濫訴を制限するために「著しい損害」要件を課したものとするのである。

 このような立法趣旨説明に対しては、以下のように批判することが可能である。すなわち、結論的に言うなら、差止め請求権が容認される民法の不法行為、知的財産権侵害及び不正競争防止法においても特段の損害要件が課されていないことを考慮する限り、これらよりも損害の程度が低いと考えられる独占禁止法違反行為による差止請求権についてのみ「著しい損害」要件が課されていることは、我が国の法体系上の整合性を欠き、不適切であるとするものである。

  この批判を分説するなら、

  第1に、ここで通説的な考え方とされる違法性段階論が、差止請求における違法性の程度が損害賠償の場合よりも高度であることを意味していると解釈することに対して疑問を呈した上で、この学説が意味するのは、せいぜい両者の違法性の程度が異なるものとして解釈すべきことを指摘しているに過ぎないとする立場に立つのである。その結果として、第24条に「著しい損害」要件を規定したことの意義が不明であるとする。

  第2に、商法第275条ノ2は会社内部の統制行為を問題としているために、特に違法性の程度が高い場合においてのみ差止請求が認められるものと解されているのであり、独占禁止法違反行為による被害に対する場合とは、情況を異にしていることである。

 第3に、極めて小額な被害を被った者が差止請求訴訟の原告適格を有することを阻止するために、このような過重な要件を課したとする説明に対しては、そのような少額の被害しか生じない独占禁止法違反行為は、「利益の侵害」要件を満たさないことを考慮する限り、このような説明も正当な根拠となりえないとするのである。

  以上のような、批判論をベースとして「著しい損害」要件の実質的な機能性に言及するなら、この規定が特別の要件を意味するものと解釈することは差止請求訴訟の原告適格を制限的に解することになり、本制度の実効性を阻害することになるのは明らかである。そこで、この要件を一般条項として理解し、独占禁止法が差止請求制度を創設することにより保護しようとしている利益が侵害された場合のみ、差止請求権を認めることを意味するものと解するのが穏当である、というのである。(谷原修身「独占禁止法と民事的救済制度」)

5  一方、立法関係者によれば、この「著しい損害」の要件は、「差止めを認めると非常に困った事態になる。加害者にあまり大きなコストを負担させることになるとか、社会的なコストが大きいという場合に差止めを我慢してもらう」ためのものであり、また「独占禁止法違反行為で事実上損害を受ける人が無数になり、その中で非常に損害が希薄な人が訴訟を起こしてきたときに・・・」原告適格を絞るという機能を果たすものとされている(古城誠)。しかし、せっかく差止請求制度を入れたのに、この要件があることによって訴訟が抑制されてしまうことが非常に懸念されている(根岸哲)。そして「著しい損害」という要件を理由として差止を認めないということは、よほどの場合でないとできないのではないか(古城誠)との期待的発言もあるところである(公正取引597、座談会「民事救済制度の整備について」における発言)。

6   よって、独禁法24条の「著しい損害」の判断については、原判決のように単純な基準ではなく、相手方の違法性の程度・態様、相手方が差止めによって蒙る損害の程度、差止請求者が蒙っている損害及びその程度を比較考慮して判断すべきである。

  すなわち、本件において、卸売5社が、独禁法違反の行為(共同取引拒絶)を行なっていたことに対して、公正取引委員会は、平成8年12月25日付の書面(甲第5号証)によって、控訴人に対し、調査の結果、独禁法上の措置は採らなかったが、独禁法違反につながる虞がある行為がみられたので、独禁法違反の未然防止を図る観点から関係人に注意した旨を通知してきた。

  しかしながら、被控訴人らは、平成8年6月25日開催の株主総会において、関空販社の定款を「全国紙の販売」から「全国紙の仕訳、包装、配送、代金回収業務」に変更した(甲第4号証)にもかかわらず、以後も全国紙の販売を継続していることは、控訴人が原審において提出した証拠によって明らかであり、これは公正取引委員会を欺く悪質な行為といわざるを得ない。

  次に、控訴人が求める本件差止請求が認められたとしても、卸売5社には何らの不都合も生じないはずである。つまり、卸売5社は関空販社に売るべき全国紙の一部を控訴人に売るだけであり、何らの損害(控訴人は卸売5社に全国紙の取引を求めているだけであり、関空販社より低い価格で売却せよとまでは求めていない)も生じない。

  最後に、本件共同取引拒絶によって、控訴人は空港島内における全国紙の販売につき、常に納入打ち切りの不安をかかえたままであり、販路の拡大がはかれないことはもちろんのこと、販路の維持さえ危うい状況にある。

  この点、原判決や被控訴人らは、控訴人が訴外「なんばミヤタ」から現に全国紙を仕入れているのではないかという。しかし、「なんばミヤタ」は控訴人に全国紙を売却していることを理由に、卸売5社から仕入れストップの圧力を受けており(甲第23号証、資料bP4.15)、いつ卸売5社が「なんばミヤタ」に全国紙の卸売を中止するか予断を許さない(ただし、その場合には独占禁止法違反が顕著となって、公正取引委員会から勧告を受ける可能性もある為、卸売5社は躊躇している状況である)。

 即ち、控訴人は空港島内における全国紙の販売については、いわゆる「ジリ貧」の状況に追い込まれており、いつ撤退してもおかしくない事態に陥っているのである。

  又、原判決は、控訴人が蒙っている損害について、控訴人が「5パーセントとはいえマージンを得ている」ことを理由に「著しい損害」に当たらないというが、控訴人が蒙っているのは、卸売5社から仕入れることができれば得られるはすの10%のマージンが、「なんばミヤタ」からしか仕入れることができないために、5%のマージンしか得ることができないために、実に得べかりし利益の半分を失っているのであるから、たとえその「額」が少なくとも控訴人にとっては「著しい損害」である事を看過するものであり、零細企業である控訴人にとって死活問題であることの認識を欠く不当な判決であると判断せざるを得ない。

7   以上述べた理由により、控訴人には独禁法24条の「著しい損害」があるというべきであり、この点の判断を誤った原判決は破棄されるべきである。」

としている。

 本件事件の上告理由と上告受理理由は、正当な理由なく違法な行為であり、一審は事業の遂行が出来ないことを認めているのであるから、差止るべきであり、つまり憲法上の生存権を脅かしているからという理由と、営業の自由は職業選択の自由の一種であり、この自由は妨害を排除することによってしか成立しないという理由から正当な理由なく違法であるという法律的判断を求めて上告理由としているものである。

確かに違法性には段階がある。「常にあるいはほとんど常に」競争制限的な行為というのは共同ボイコットには当てはまっており、かつ、ノースウエスト卸売事務用品会社事件のアメリカにおいて確立された最高裁判所の判決にも適合している。これはアメリカの話だけではない。

しかし本件は価格維持行為ともみられてもいる。一審の最終準備書面で主張したとおりに、

このような状況下において、上告人(債権者)は、価格自由競争により市町村から固定資産税評価員に選任されることを目指し、後に上記判決で勝訴した酒匂悦郎とともに、平成10年4、5月ころ、茨城県の市町村に茨城県不動産鑑定士協会が同会員に勧めていた1評価地点あたり6万6880円よりも安い評価料である4万5千円、5万円などで見積した名刺を市町村に交付したり、見積書を内容証明郵便で送付した(甲58、83号証)。

のであり、このために監禁暴行も受けたのであり、これが本件事件の直接的動機であり、その他の理由は被上告人のとってつけた理由である。これは酒匂悦郎証言で証明できる。

外見的にも価格競争をしないという念書を書かされているし、この念書の通りに価格競争をしないということをすれば入会させるというテープがある。

この場合のもし価格競争をしないという念書の下で入会していたのと、本件事件においては入会を拒否したのであるから、そのどちらが公正競争阻害の程度が強いのかという違法性段階論は存在するかもしれない。しかしよく考えると、念書をとる行為自体が公正競争阻害は強く、しかし損害は少ない。逆に念書を拒否してこのような事件が起こっている場合の方が公正競争阻害性はより少しだが少ない。しかし損害は巨大である。しかしノースウエスト卸売事務用品会社事件によればそのどちらであっても、共同ボイコットとして認められるべきであることになる。

注14:本件事件は価格カルテルをまもるための共同ボイコットである。この事件の真相は次の通りであるからである。

本件共同ボイコット事件の事実経過

一般的な誰でもを対象とした入会の制限である8−1−3と、8−1−5とは違っている。

 共同ボイコットの場合には、

悪性が強いものと、私が書かせられた念書の様に

 独占禁止法のことは言いません、というものの双方がある。

 従いますという念書の下での入会は、何らの競争制限の反対である競争促進の効果を持たない。

 ところが安売り業者の排除は、一種であると考えられる共同ボイコットに該当し、競争制限の効果が非常に高い。

 酒匂悦郎事件で監禁暴行を受けたのは私と、酒匂悦郎のみであった。これは二人が安売りの見積書を特殊的に郵送したからである。

固定資産税の標準宅地の鑑定評価を受注することになって、各地方の不動産鑑定士協会は独立して報酬額の法定化(価格固定)を行うために全国会から独立して行ったのであって、士協会になることによって報酬額の法定化(価格固定)が出来る様になると考えたのであった。

だから今証明しようとしていることは全く逆のことである。

不動産鑑定士協会になれば不動産鑑定士法になって価格固定が出来ると考えたのである。逆にこれをそうではないと被告は言っているのであって、逆である。

固定資産税の標準宅地の鑑定評価が受注出来る様になるまでは、不動産鑑定士協会になろうというような動きはなかった。

従って被告は全く矛盾する主張を行っていることになる。

 平成4年の固定資産税の標準宅地の鑑定評価においては、半額以下で下請けを行った。従ってこの年に出島村の固定資産税の標準宅地の鑑定評価書が私の事務所に残ってはいるが、しかし本当は鈴木?(日に半を加える字だがワープロにはない)の名前での鑑定評価書が当時の出島村に残っているはずである。

 これは固定資産税の標準宅地の鑑定評価書は半額以下での受注でも利益が出る仕事であることを示している。この頃すでにオアシスのワープロで鑑定評価書は作られていた。

 ところが最初は量が多すぎて鑑定評価書は完成しないと、田舎の茨城県の不動産鑑定業者は思ったので、東京の業者にやらせてもよいと思った。

 その後平成7年の固定資産税の標準宅地の鑑定評価書(平成9年度用)は被告と同列の茨城県の不動産鑑定士協会が推薦を行って、県が各市町村に推薦するという体制が作られる。これは全国的に行われた配分(市場割当)の確定的な証拠である。

 この頃にコンピューターやワープロが普及し始める。

 ところが業界の要求により自由競争になった(自治省は契約自由の原則を導入した。ということは鑑定評価をおこなわせるという契約書のひながたもなくしたが、今も続いている。)が、しかし業界は価格は維持したかった。また自らの推薦も維持したかった。

 だがあまりにも儲かる商売であるということが、コンピューターでやりはじめると分かったので、このことが原因・動機となり平成12年の評価替えの時期において(平成10年4月)東京勢を追い出そうとするきっかけとなる。超過利潤がなくなるからである。

 この事件が平成10年4月に起こった山口節生・酒匂悦郎事件である。

 原告は半額以下で出来ると知っていたので、安売りをかける。酒匂悦郎も安売りの見積書を直接各市町村に提出した。

杉並ですでに固定資産税の標準宅地の鑑定評価を行った経験があった酒匂悦郎の事件では本当は、この時期に北関東の業者は一致して東京からの進入をとめようとしたのであるが、それが原因で入会を拒否される。 これに対して共同ボイコットであるとして応援したのは、山口節生のみであった。

 平成10年4月、ほとんどの業者が市場割当を待つという営業方針を採ったが、山口節生と酒匂悦郎の事件では二人共に価格競争を行おうとした。

 これに対して北関東連絡協議会ではこの二人を価格競争をしない様にさせようという懲罰を加えることにした。

 これが酒匂悦郎事件であり、山口節生事件である。いずれも共同ボイコットの事件である。

 まず平成10年9月30日、すでに茨城県不動産鑑定士協会の会員であった酒匂悦郎は同会会長の井坂雄の自宅兼事務所において呼び出されて、価格競争をしない様に強制を受ける。この際に同罪だとして山口節生も強制的に監禁説得される。これを山口節生は独占禁止法違反であるととらえた。

 他の者は価格競争をしないという念書をとった上で、入会を認めてもらった者もあった。

 埼玉県は、神奈川県、千葉県が東京からの浸食に悩まされていたのであって、もうこれ以上増えると事業がやっていけないと杞憂して、第12分科会を中心に次回からの入会拒否の方法を模索していた。すでに平成9年度の時に推薦していたことに味をしめていたので、今後も推薦は可能であると思っていた。

 これが平成12年度の税務協議会との会議の結果の様な証拠である。

 平成11年7月には、山口節生が次はどこで固定資産税の標準宅地の鑑定評価を行おうかと考えて、大学院の博士後期課程が済んだのでこれから学問と、事業を埼玉で行おうと決定した丁度同じ時期に、埼玉県の不動産鑑定士協会はどのようにして入会を拒否する共同ボイコットを行おうかと考えていた。平成11年9月には山口節生は埼玉県でやろうと決定するのであるが、ほぼ同じ頃平成11年7月に埼玉県不動産鑑定士協会は会費の値上げをして共同ボイコット(入会拒否)を行おうと決定した。

 いかにして人口1,000万人の東京からの進入をくい止めるのか、それまで価格固定を行ってきたものがくずれないように安売り業者をくい止めるのかが埼玉県の不動産鑑定士協会の課題であった。

 これが共同ボイコット事件に発展した。

注15 「▼公取委に『独占禁止法違反行為に対する差止請求制度の改正』を要望(14年6月6日更新)

 全石連は、平成14年5月29日、先般本会の「独占禁止法問題研究会」がとりまとめた「民事的救済制度の実効性の確保策」に関する中間報告書を、公正取引委員会に提出し、独占禁止法の差止請求制度を改善するため、独占禁止法の改正を要望しました。

 当中間報告書は、立証が困難な独占禁止法違反行為について、被害者の立証負担を軽減するため、独占禁止法にも、特許法に規定されている民事訴訟法の文書提出命令の特則規定を設けるべきであると提言しており、この提言を受けて、独占禁止法にも特許法に準じた形で、民事訴訟法の文書提出命令の特則規定を設けるよう、法改正を要望したものです。」

 このような動きは原告側にも被告側にも有利に働くものではなく、どちらの証拠の収集にも利用できる。

注17:トイザラス事件では、FTCはノースウエスト卸売事務用品会社対パシフィック事務用品・印刷会社事件の4つの構成要素によるテストを通じて、当然に違法の法理の下でも、理由の原則の下でもこのボイコットは違法であると判断した。

10/30/98

「Current Exclusive Dealing and Boycott Cases

 現在の排除的取扱とボイコット事件

All three of these cases involve either an exclusive dealing arrangement or a boycott. In an exclusive dealing arrangement, the predator firm says "if you want to deal with me, you can only deal with me." In a boycott, the predator firm says, "you cannot deal with those specific firms if you want to deal with me." Thus, they are very similar.

PepsiCo., Inc. v. The Coca Cola Co., No. 98-3282 (E.D.N.Y. filed May 7, 1998).

PepsiCo filed suit against Coca Cola on May seventh of this year in the Eastern District Court of New York alleging that Coca Cola has been monopolizing the market for fountain-dispensed soft drinks that are sold through foodservice distributers. Overall, Coca Cola controls approximately forty-four percent of the soft drink market while PepsiCo controls approximately thirty-one percent. However, Coca Cola controls 90% of this fountain-dispensed soft drink market. PepsiCo alleges that Coca Cola has abused its market power by refusing to deal with foodservice distributors that carry Pepsi. Since movie theatres and restaurants do not find it economical to change distributors or find another method to obtain Pepsi, it will use Coke because it is the soft drink brand that its distributor uses. Pepsi challenged this exclusive dealing arrangement, and the District Court refused Coke's motion to dismiss. The parties are now in discovery.

United States v. Visa U.S.A., Inc., No. 98-7076 (S.D.N.Y. filed October 7, 1998).

On October 7, 1998, the United States Department of Justice brought suit in the Southern District Court of New York against Visa and MasterCard for violations of Section 1 of the Sherman Act. Together, Visa and MasterCard control 75 percent of the credit card market. They have allegedly adopted exclusionary rules that allow member banks - more than 90% of the banks in the United States - to issue both Master Card and Visa, but prohibiting the member banks from doing business with American Express or Discover. Furthermore, Visa and MasterCard have formed an agreement not to compete with one another, at least in certain ways. The Department of Justice asserts that this anitcompetitve atmosphere -"duality" - does not allow Visa and Master Card to develop new choices for their consumers, and also that it restricts consumers' choices. The trial is scheduled to begin on October 29, 1999 in front of Judge Milton Pollack.

For further information: www.usdoj.gov

In the Matter of Toys "R" Us, Inc., No. 9278 (FTC decided October 13, 1998).

The Federal Trade Commission filed a complaint against Toys "R" Us, Inc. in May of 1996. The complaint alleged that the company was using its dominant position in the toy market (it buys thirty percent of large toy manufacturers' products and sells 19 percent of all toys) to coerce 40 percent of the toy manufacturers into agreements with it not to also sell toys to discount warehouse club stores (BJ's, Sam's Club, Price Club, etc.). These agreements restricted the manufacturers to selling to the club stores only certain toys that Toys "R" Us had already approved - not the toys that Tory "R" Us wanted to sell. The agreements succeeded in significantly restraining the competition between Toys "R" Us and the club stores. Toys "R" Us chose to form these agreements with the manufacturers because the club stores sold their toys at nine percent above cost while Toys "R" Us was much less competitive at thirty percent above cost. Thus, the low priced discount stores could not obtain the toys they needed to compete effectively with the higher priced Toys "R" Us. この故に、価格が安いディスカウントストアーは、トイザラスの方が価格が高かったにもかかわらず、競争を効果的にするために必要であったおもちゃを手に入れることが出来なかった。The FTC used the four factor test adopted in Northwest Wholesale Stationers, Inc. v. Pacific Stationary & Printing Co., 472 U.S. 284, 294 (1985), to determine that the boycott was illegal, under both the per se and rule of reason approach. FTCはノースウエスト卸売事務用品会社対パシフィック事務用品・印刷会社事件の4つの構成要素によるテストを通じて、当然に違法の法理の下でも、理由の原則の下でもこのボイコットは違法であると判断した。It found both an illegal vertical boycott, and also an illegal horizontal "hub and spoke" conspiracy. 垂直的ボイコットで違法であり、また「ハブアンドスポーク」(中心となる大型空港に周辺空港からの便を集中させる航空路線システム)の水平的共謀であり違法であるとした。An appeal is expected to be decided within a year.一年以内に控訴審の決定があると期待されている。

For further information: www.ftc.gov

Copyright (c) 2003 American Antitrust Institute 2919 Ellicott Street, N.W. Suite 1000 Washington D.C. 20008-1022 Phone: 202-276-6002, Fax: 202-966-8711

FTCの報道発表は、次の通り4つの要素について説明している。本件事件においてはこの4つの構成要件に完全に合致しているといえる。特にこのトイザラス事件は安売り業者を排除したという点で違法性の程度が、本件事件同様に、非常に高い事件である。First, the purpose of the group boycott agreement was anticompetitive, in that it was designed to disadvantage competitors of Toys "R" Us. Second, the firms involved (both Toys "R" Us and the manufacturers) were dominant in their markets. Third, the boycott cut off access to products and relationships needed for the boycotted firms to compete effectively. Lastly, the practice was not justified by plausible arguments that it enhanced overall efficiency.

For Release: October 14, 1998

FTC Upholds Charges that Toys "R" Us Induced Toy Makers to Stop Selling Desirable Toys to Warehouse Clubs

Nation’s Largest Toy Retailer Ordered To Stop Illegal Practices Which Have Injured Competition and Consumers

Toys "R" Us, the nation’s largest toy retailer, was ordered today by the Federal Trade Commission to stop engaging in illegal practices that keep toy prices higher and reduce choice for consumers. Toys "R" Us, the FTC said, was concerned that warehouse clubs -- with substantially lower prices -- presented a threat to its low-price image and its profits. The Commission determined that to eliminate this threat, Toys "R" Us used its dominant position as a toy distributor to extract agreements from and among toy manufacturers to stop selling to warehouse clubs the same toys that they sold to other toy distributors.

The Commission’s opinion, authored by FTC Chairman Robert Pitofsky, explains that Toys "R" Us wanted "to prevent consumers from comparing the price and quality of products in the clubs to the price and quality of the same toys displayed and sold at Toys "R" Us, and thereby to reduce the effectiveness of the clubs as competitors."

消費者がクラブの中の製品の価格と品質をトイザラスが陳列し販売している同じおもちゃの価格と品質を比較しないようにトイザラスは望み、それでクラブの競争事業者としての効率性を減少させたと、ロバート・ピトフスキーを委員長とするFTCの書いた、FTCの委員会の意見を説明している。

"Toys "R" Us rose to its current position as the largest toy retailer in the United States by offering a larger selection of toys than any other retailer at the lowest prices," said Chairman Pitofsky. "Indeed, a remarkable irony of this case is that if the law were as Toys "R" Us contends -- if a large [retailer] could cut off or encumber a new or innovative [company’s] source of supply by exercising market power against suppliers -- then Toys "R" Us, itself an innovative marketer resented by larger and less dynamic [companies] a generation ago, could have been denied an opportunity to compete on the merits and win in the marketplace."

Toys "R" Us, based in Paramus, New Jersey, has about 650 stores located throughout the United States and roughly another 300 stores in foreign countries. Toys "R" Us offers an assortment of about 11, 000 individual toy items throughout the year. The company also buys about 30 percent or more of the large toy companies’ total output and is usually their most important customer. Toy manufacturers who participated in the boycott account for 40 percent of all toy sales in the United States and therefore have market power, the Commission determined. According to the Commission, no other toy retailer carries as many toys or purchases such a large percentage of the toy manufacturers’ output.

The Commission noted that retail margins enjoyed by different types of retailers vary widely. Toys "R" Us’ average margins are close to 30 percent above cost. Warehouse clubs sell toys at prices as low as 9 percent above wholesale cost.

In the past, when Toys "R" Us faced new, lower-priced competition from Wal-Mart, Target and other regional and national discount chains, Toys "R" responded by lowering its own toy prices and improving the presentation of toys in Toys "R" Us stores. The Commission found, however, that Toys "R" Us behaved quite differently when confronted with the dramatically lower prices of the warehouse clubs. By the end of the 1980s these clubs had emerged as increasingly important toy retailers in much the same way that Wal-Mart and the other discounters had done before. The warehouse clubs -- by reducing costs, selling branded products at low prices and increasing product turnover -- soon became the fastest growing retail outlet of toys. Contemporary estimates predicted that they would grow to occupy a significant percentage of the toy market, bringing down retail prices in all channels of distribution as they grew.

Fearing that warehouse clubs presented a greater threat than Wal-Mart and Target had to Toys "R" Us’ prices and profits, Toys "R" Us planned to restrict or cut off the clubs’ supply of key toy products. The Commission found that Toys "R" Us did this by inducing its suppliers to sell to the clubs only toys that were unique and highly differentiated -- most often so-called "combo" packages of two or more toys -- from the toys sold to Toys "R" Us. According to the Commission, beginning in 1992, Toys "R" Us entered into vertical agreements with 10 manufacturers to restrict their sales to clubs. (The 10 toy manufacturers who entered into vertical agreements are: Mattel, Hasbro, Fisher Price, Tyco, Little Tikes, Today’s Kids, Tiger Electronics, VTech, Binney & Smith and Sega.) Toys "R" Us also used the acquiescence of one manufacturer to obtain that of others, orchestrating a horizontal agreement among at least seven manufacturers to adhere to Toys "R" Us’ restrictions. (These seven manufacturers are: Mattel,

Hasbro, Fisher Price, Tyco, Little Tikes, Today’s Kids, and Tiger Electronics.) "Through its announced policy and [these] related agreements, Toys "R" Us sought to eliminate the competitive threat the clubs posed by denying them merchandise, forcing the clubs’ customers to buy products they did not want, and frustrating consumers’ ability to make direct price comparisons of club prices and Toys "R" Us prices," the opinion states.

The Commission further found that Toys "R" Us enforced the agreements by fielding complaints from toy manufacturers about their competitors’ sales to warehouse clubs. When manufacturers complained that a competitor was selling to warehouse clubs, Toys "R" Us again threatened to stop buying that competitor’s products and got its renewed acquiescence to the sales restrictions.

The FTC announced its complaint against Toys "R" Us in May 1996. The charges were upheld by Administrative Law Judge James P. Timony in a September 1997 decision. Toys "R" Us appealed, and the Commission heard oral argument on February 19, 1998.

The Commission agreed with Judge Timony that Toys "R" Us "halted a pattern of rapid growth of toy sales at the clubs" and noted that the "boycott hobbled individual clubs’ toy business." Citing warehouse club Costco’s experience, the Commission found that "while its overall growth on sales of all products during the period 1991 to 1993 was 25 percent, Costco’s toy sales increased during the same period by 51 percent. But, after the boycott took hold in 1993, Costco’s toy sales decreased by 1.6 percent despite total sales growth of 19.5 percent." The Commission also pointed out that reversal of the clubs’ success as toy retailers can also be seen by examining individual toy manufacturer’s sales to the clubs. For example, Mattel’s sales to warehouse clubs declined from over $23 million in 1991 to $7.5 million in 1993.

The opinion underscores that the most significant effect of the agreements was to eliminate competition that would have driven Toys "R" Us to lower its prices had Toys "R" Us not taken action to stifle the competitive threat posed by the clubs.

The Commission found that Toys "R" Us’ only asserted justification for its conduct -- that the agreements were necessary to prevent free riding on its advertising and "showroom" status -- was entirely without merit. The toy manufacturers and not Toys "R" Us (or any other retailer) promote toys to consumers, primarily by designing and purchasing television advertising, and Toys "R" Us is compensated for any services it does provide the toy industry, the Commission found.

The Commission used a four prong test that the Supreme Court has set out to provide guidance as to when boycotts are per se illegal under the antitrust laws. The Supreme Court found that these boycotts generally display four common factors. The opinion states that "[w]e conclude from the evidence in this case that each of the factors ... is present." First, the purpose of the group boycott agreement was anticompetitive, in that it was designed to disadvantage competitors of Toys "R" Us. Second, the firms involved (both Toys "R" Us and the manufacturers) were dominant in their markets. Third, the boycott cut off access to products and relationships needed for the boycotted firms to compete effectively. Lastly, the practice was not justified by plausible arguments that it enhanced overall efficiency. "Toys "R" Us and its reluctant collaborators set out to eliminate from the marketplace a form of price competition and a style of service that increasing numbers of consumers preferred," the Commission said.

The Commission also examined Toys "R" Us’ conduct under the full rule of reason and found that its behavior would also be illegal under this more elaborate mode of analysis. The additional factors that the Commission examined were whether Toys "R" Us’ behavior had a significant anticompetitive effect and whether any such effect is outweighed by legitimate business justifications. The Commission found that Toys "R" Us’ orchestrated boycott "had harmful effects for the clubs, for competition, and for consumers" and that there was "no business justification for a boycott that had a pronounced anticompetitive effect."

The Commission’s order prohibits Toys "R" Us from continuing, entering into, or attempting to enter into, vertical agreements with its suppliers to limit the supply of, or refuse to sell, toys to a toy discounter. The order also prohibits Toys "R" Us from facilitating, or attempting to facilitate, an agreement between or among its suppliers relating to the sale of toys to any retailer. Additionally, Toys "R" Us is enjoined from requesting information from suppliers about their sales to any toy discounter, and from urging or coercing suppliers to restrict sales to any toy discounter. According to the Commission, "[t]hese four elements of relief are narrowly tailored to stop, and prevent the repetition of Toys "R" Us’ illegal conduct."

The Commission vote to issue the opinion and order was 4-0, with Commissioner Orson Swindle concurring in part and dissenting in part.

Commissioner Swindle concurred in the Commission majority's determination that Toys "R" Us ("TRU") entered into a series of anticompetitive vertical agreements with various toy manufacturers. However, he found that the evidence in the record was insufficient to support

the majority's conclusion that TRU orchestrated a horizontal boycott among the manufacturers. According to Commissioner Swindle, "it is precisely the plausibility of the vertical theory and the strength of the evidence underpinning that theory that undercut the majority’s finding of a horizontal conspiracy among toy manufacturers." Swindle further stated that “[t]here is a paucity of evidence -- direct or circumstantial -- that the manufacturers developed among themselves a scheme to boycott the clubs.” Indeed, “TRU's hammerlock on the manufacturers made [any such] horizontal agreement among the manufacturers simply unnecessary." He observed that "TRU’s very indispensability gave each toy manufacturer every incentive -- every unilateral incentive -- to knuckle under to TRU’s demands regarding the clubs." In Swindle's view, "No inference of horizontal agreement is necessary to make sense of the manufacturers’ actions."

Swindle contended that rather than there being "hub and spoke" arrangement directed by TRU or some other type of horizontal conspiracy among manufacturers, the "glue that held TRU’s scheme together was each manufacturer’s individual decision not to cross its most important customer’s interests." The Commissioner concluded: “I am simply unable to find a horizontal boycott on the basis of this evidence. The gaps and ambiguities in the record require that I dissent from the conclusion that TRU orchestrated an anticompetitive horizontal agreement."

The order will be effective 60 days after it is served on the respondent. Under the Commission’s rules, ex parte communications regarding this matter are barred until the Commission has disposed of any petition for reconsideration, or until the time for filing such petitions (14 days after service) has elapsed.

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Copies of the opinion and order and other documents associated with this case, are available from the FTC’s web site at http://www.ftc.gov and also from the FTC’s Consumer Response Center, Room 130, 6th Street and Pennsylvania Avenue, N.W., Washington, D.C. 20580; 202-FTC-HELP (202-382-4357); TDD for the hearing impaired 1-866-653-4261. To find out the latest news as it is announced, call the FTC NewsPhone recording at 202-326- 2710.

MEDIA CONTACT:Victoria Streitfeld,Office of Public Affairs202-326-2718 (Docket No. 9278)(toysftc)

最終注 :この事件の最大の争点である、アメリカの判例の集積である「当然に違法な行為」の定義は次の通りである。

II. DETERMINING WHAT IS PER SE UNLAWFUL

当然に違法の定義

Per se unlawful activity is characterized by its clear probability of anticompetitive effect and the improbability of adequate compensating competitive virtues.

当然に違法な行為には、反競争的な効果が明確に予測でき、それを償う競争促進の適正な効果の可能性がないという特徴がある。

Characterization of conduct as per se unlawful generally requires (i) identifying a restraint's likely anticompetitive effect; (ii) determining whether it also has likely procompetitive potential; and, if so, (iii) ascertaining that the connection between the suspect conduct and any benefit is sufficiently close or necessary to justify rule-of-reason analysis.(17)

この当然に違法な行為の特徴は一般には(1)ある規制が反競争的な影響を与えているということが確実に証明していること、(2)その行為がまた競争重視の可能性を持っていないかどうかを決めること、もし競争重視の可能性を持つ場合には(3)疑惑となっている行為と利益との間の関係が、合理性の基準による分析にじゅうぶんに合致するか、その基準によって分析する必要があるかどうかを確認することの三点が要求される。

As the following discussion reflects, attempts to articulate standards that are both accurate in content and useful in implementation have not been entirely successful, at least for purposes of resolving relatively close cases.

以下の議論において述べるように、実際に適用する場合に内容的にも正確であり、かつ役に立つような基準を明確にする試みは、少なくとも比較的に似通った事件を解決する目的をもってみると、完全に成功してきたとはいえない。

We turn first to an examination of the courts' efforts to identify potentially per se unlawful conduct by its capacity for anticompetitive effect.最初に裁判所が行ってきた反競争的な効果を内包している故に当然に違法である可能性の高い行為を特定する努力を調べていくことにする。

A. Identifying Strong Likelihood of Anticompetitive Effects

反競争的な効果の強い蓋然性の認定

1. Judicial Articulations

法律的な明確化

Over the course of the past forty years, the courts repeatedly have attempted to articulate what makes certain business conduct worthy of summary condemnation under the antitrust laws.

過去40年間の間を通じて、裁判所は反トラスト法のもとである種の事業上の行為のうちのどのような行為が即決での有罪に当たるのかを明確にするための試みを繰り返して行ってきた。

We look first at the various formulations they have used and then at the fact patterns that have triggered per se treatment.

最初に裁判所が使用した様々な公式化を検討して、次に当然に違法として取り扱われた事実の形態を検討する。

The Supreme Court has variously described per se unlawful conduct as that which has a "pernicious effect on competition and lack of any redeeming virtue,"(18) has "no single purpose except stifling of competition,"(19) or is "manifestly anticompetitive,"(20) or "plainly anticompetitive."(21)

最高裁判所は当然に違法である行為を様々に表現している、たとえば「競争に対して破壊的な影響を」与えて、「そのみかえりに何らの利益をももたらさない」とか、あるいは、「ただ競争を圧殺する以外の何らの目的も」もっていないとか、あるいは「非常に反競争的である」とか、あるいは「単に反競争的」とか表現してきた。

More recently, the Court has indicated that per se condemnation is warranted when conduct "always or almost always tend[s] to restrict competition and decrease output" rather than to "increase economic efficiency and render markets more . . . competitive,"(22) has "predictable and pernicious anticompetitive effect" and "limited potential for procompetitive benefit,"(23) or when it is "likely to have predominantly anticompetitive effects."(24)

最近においては裁判所は「経済的効率性を上げさせ、市場をより・・・・競争的に」するのではなく「常にあるいはほとんど常に競争を制限して生産量を減少させる」ような行為とか、あるいは「反競争的な効果が予測でき、競争破壊的である」とか、ならびに「競争を促進する利益を与える可能性がほとんど限定されている」ないしは「非常に莫大な反競争的な効果を持っていると推測できる」時とかの行為に対して当然に違法であるとの判断が保証されると述べている。

These standards characterize the conduct but generally do not provide the information necessary to decide whether a particular restraint is per se illegal.

これらの基準は行為の特徴を述べてはいるが、一般的にある規制が当然に違法であるかどうかについて決定するのに必要な情報を与えてくれてはいない。

Although application of one standard over another might lead to different results,(25) the Court has not acknowledged this and has not told us when to apply which articulation.

一つの基準を他の場合に当てはめると違った結果をもたらすかもしれないのであるにもかかわらず、裁判所はこのことに気がついていないのであり、どのような時にどのような定式化を適用すべきであるかについては教えてくれてはいない。

In sum, the various articulations seem to lack individual significance.(26)

要するに、様々な定式化は一つ一つでは意味がないように思われる。

The BMI articulation is at least a partially successful effort to add a test of substance to the melange.

BMI事件において混乱した概念を明確化するのに少なくとも一部分においては実質的に成功した。

In BMI, the Court began by reiterating the characterizations "plainly anticompetitive" and lacking "any redeeming virtue," but ultimately stated that the proper inquiry focuses on "whether the practice facially appears to be one that would always or almost always tend to restrict competition and decrease output . . . or instead one designed to 'increase economic efficiency and render markets more, rather than less, competitive.'"(27)

BMI事件においては裁判所は「単純に反競争的で」そして 「何らのそれを償う価値が」存在しないという特徴について繰り返して表明することからはじめたが、しかし最後には「その行為が外見的に常に、あるいは、ほとんど常に競争を制限して、供給量を減らしているような行為であるか・・・あるいはそのかわりに「経済的効率性を上げさせ、市場を競争を減殺させないで、より競争的にさせるような」行為であると見ることができるかどうか」という点に焦点を当てて正しく審理するべきであると述べる。

This communicates some important points.

このことはある重要な要素を述べている。

For one thing, it tells us that per se condemnation can result from facial examination of the conduct, allowing the court to make its determination quickly, based on anticompetitive effects plausibly argued but not elaborately proved.(28)

一つには、当然に違法との判断は行為の外見を判断することで結論を導き出すことが出来るので、競争を制限する効果があることが丁寧に証拠によって示されなくても、論証されれば、裁判所は緊急に決定を下すことを可能にする。

The "always or almost always" portion of the formulation indicates the very high probability of anticompetitive effects required for finding a practice per se unlawful.

当然違法の定義における「常に、あるいは、ほとんど常に」という部分は、ある行為が当然に違法であると判断するために要求されるものは、反競争的な効果がある可能性が非常に高いということである。

However, the addition of "almost always" conveys the Court's willingness to allow a margin for error in making per se determinations.

しかしながら「ほとんど常に」と付け加えていることは、裁判所は当然に違法であるとの判決を行うときには間違いをある程度許容することもなしとはしていないといえる。

This is consistent with the rationale which justifies per se treatment when exceptions to the generalization supporting summary condemnation "are not sufficiently common or important to justify the time and expense necessary to identify them."(29)

仮処分による当然違法の判断を支持しているこの定式化に対する例外が「例外を認定するのに必要な時間と費用を正当化するだけじゅうぶんな一般性も、重要性ももっていない」のであるのであるから、当然に違法であるとの決定を正当化する理由ともこの考え方は合致している。

BMI also provides guidance on what harmful effects to look for through its "tend to restrict competition and decrease output" language.

またBMI事件は「競争を制限し、生産量を減少させる傾向がある」という文脈を通じて害がある効果は何であるのかを探し出す手引きを提供する。

This requires that the suspect conduct restrict competition and identifies one specific anticompetitive effect, output reduction, that triggers per se treatment.(30)

当然に違法な行為であると疑われている行為が競争を制限して、ある種の反競争的効果、生産量の減少を特別に認定出来るならば、その場合には当然に違法の判断をしなくてはならないきっかけとなることをこの文脈は要求していることになる。

Taken as a whole, the BMI articulation suggests that the Court wants to be able to make per se determinations quickly, based on a facial examination of the arguments; that it wants to include in per se categories only conduct with a high probability of anticompetitive effects unaccompanied by adequate offsetting benefits; that it accepts some possibility of error through over-inclusiveness; and that the effects that will trigger per se condemnation are restriction of competition and reduction of output.

全体を概観すれば、BMI事件による定式化は争点を外見的に審理することによって、素早く当然に違法であるとの決定を可能にしたいと裁判所は望んでいることを示している、つまり競争を制限する効果を強く推認させ、競争を促進する利益を適切にもたらさないような行為だけを当然に違法な行為の範疇に含めたいと望んでいるのである。それは当然に違法の範疇に含めすぎることによって少しは間違いをおかす可能性を受け入れているのであり、当然に違法であるとの判断を導き出すものは競争制限の効果であり、生産量の減少という効果である。

2. When Effects Cannot Be Predicted

効果が予測できない場合

The flip side of some of the per se characterizations -- an inability to say that conduct is "plainly anticompetitive" or "facially" appears to "always or almost always tend to restrict competition and decrease output" -- has led courts to be unwilling to apply per se proscriptions to conduct taking novel forms or arising in relatively unfamiliar settings.

当然に違法である行為の特徴が、対照的であったので、つまりはある行為が「競争を制限するのみであるということ」あるいは「常にあるいはほとんど常に競争を制限して、生産量を減少させる傾向にある」ように「外観からして」みることが出来るということが不可能にちかい面もあったので、裁判所は新しい形態をとった行為やそれまでとは違ったあまりなじみのない状況で起こった行為に対する当然に違法原則による禁止の適用をためらわせることになった。

The Supreme Court in Topco stated that "[i]t is only after considerable experience with certain business relationships that courts classify them as per se violations . . . ."(31)

トプコ事件において最高裁判所は「・・・裁判所が当然に違法な違反であるとして分類しているのはある種の事業上の関係について相当熟慮したあとでの判断だけである」と述べている。

Similarly, in determining to apply rule of reason analysis to an agreement among dentists to withhold x-rays from dental insurers,

同様に、歯科医の保険者に対してX線のフィルムを渡さないという歯科医達の合意の分析にあたっては合理性の基準を適用することを決定する際には、

the Court explained, "[W]e have been slow . . . to extend per se analysis to restraints imposed in the context of business relationships where the economic impact of certain practices is not immediately obvious."(32)

裁判所は「ある行為の経済的な影響が直接的に明白ではない時には、事業上の関係という文脈の中に照らして当該競争制限が当然に違法の原則の拡張解釈になるかどうか・・・じゅうぶんに審理してきた」と説明している。

A variation on this theme is a reluctance to apply per se rules in settings involving the professions.(33)

このテーマの変形は、多くの専門職業家を巻き込んだ中での環境における当然に違法の原理の適用においては控えめである。

"Judicial unfamiliarity" has proven an unsatisfying criterion, however, invoked inconsistently and generally with little or no substantiation.

しかしながら「法的判断が避けられていること」は満足できない領域であることを示しており、法律の発動に一貫性がなく、ほとんど裏付けがないか全くないことと一般的には同じことである。

It is unclear what enough experience might be,(34) and whether courts need to be familiar with the challenged activity in the precise form alleged, or whether familiarity with similar conduct is enough.

どのような事実経過が必要であるのかが不明瞭であり、申し立てるべき行為の申し立てるべき詳細な要素に裁判所が知っている必要があるのかについて不明瞭であり、また同様の行為にじゅうぶんに知っている必要があるのかについて不明瞭である。

For example, in McNeil v. National Football League,(35) unfamiliarity with Plan B (a series of rules governing teams' first-refusal and compensation rights following expiration of player contracts) "as it currently exists" was cited as a reason for analyzing its restrictions under the rule of reason, even though a predecessor of Plan B had been the subject of previous antitrust litigation.

たとえば、 マックネイル対ナショナルフットボールリーグMcNeil v. National Football League,(35)事件においては、(チームの最初の拒絶と、選手契約が終了した後の補償の義務についての一連の規則)であるプランBとはなじまないとして、「現在も継続中であるという理由から」という理由が合理化の原則の下でその規制を分析するための理由として述べられた。プランBの前のプランは競争制限に違反するとして以前は取り上げられてきたにもかかわらずである。

In contrast, Maricopa held that a maximum fee agreement among doctors in the context of a comprehensive medical plan was per se illegal even though the Court had never dealt with the antitrust consequences of a similar arrangement in the medical or insurance industries.(36)

これとは対照的に。マリコパ事件では総合的な医療計画の文脈における医者の間の最高報酬の合意が、医療と保険業では同様の協定が競争制限として取り扱われて来なかったにもかかわらず、当然に違法であるとされた。

When the Court next confronted a horizontal agreement regarding medical insurance, it declined to apply a per se rule, in part because "we have been slow to condemn rules adopted by professional associations as unreasonable per se . . . ."(37)

医療保険に関連する水平的な合意に裁判所が再度判断する時に、当然に違法の原則を裁判所は適用する可能性が高い。その理由は「専門職業の事業者団体によって決定された規制を合理的ではない当然に違法なものとして・・・これまではあまり罪があるとしてこなかった」からであるという理由による。

Thus, like the other standards considered in connection with identification of likely anticompetitive effects, the "judicial unfamiliarity" standard lacks clear content.

以上の様に、競争制限的効果がある可能性があることの証明に関連して考慮される他の基準と同じように「法的判断になじみがない」という基準は明確な内容を欠いている。

3. Fact Patterns

事実のパターン

In the context of competitor collaborations, the courts have imposed per se liability involving three general types of conduct: price-fixing, market division, and group boycotts.

競争業者の共同という文脈の中では、価格固定、市場分割およびグループボイコットの3つの一般的な類型を、当然に違法の行為責任類型のなかに含ませている。

This section briefly examines the fact patterns that in recent years have triggered per se analysis in each of these settings.

この章ではこれらの設定のそれぞれにおいて当然に違法の分析が最近どのような用いられているのかについて事実のパターンを簡単に検証する。

It finds that each category of activity potentially subject to per se condemnation encompasses quite diverse conduct, making delineation of boundaries difficult.

当然違法の性質を持っていると糾弾された各行為の範疇が非常に様々な行為を包含しているので、境界を確定することが困難であることが分かる。

It also observes that the courts have varied the nature of per se treatment in line with the severity of a category of conduct's perceived anticompetitive potential, requiring a greater showing of likely anticompetitive effect in settings where competitive harms have been thought less certain.

また、ある種競争制限の害悪が少ないと考えられてきた事件においては、競争制限の効果の蓋然性の証明をより多く要求するなどの方法によって、裁判所は競争制限が内包されているとされた行為の範疇の競争制限の程度に応じて、当然に違法の取扱の性質も裁判所は変えてきたということが見て取れる。

Horizontal Price Fixing

水平的価格固定

Per se condemnation of horizontal price fixing has been broadly applied.

水平的価格固定に対する当然に違法であるとの判決は広範に適用されている。

Per se treatment extends not only to agreements that directly establish price levels,(38) or their flip side, output levels,(39) but also to conduct, such as various forms of bid-rigging, that manipulates the market in order to raise (or, in the case of monopsony, to lower), stabilize, or "tamper with" price levels.(40)

当然に違法であるとの取扱をしたのは価格水準や、その反対の局面である生産量の水準を直接的に決定したりする合意ばかりではなくて、価格水準を上げるため、あるいは独占の場合には、下げるため、あるいは安定化させるため、「不当に圧力をかけるため」市場を操作する様々な形態の入札談合やらの行為にもまた適用が拡大されている。

The entire price need not be affected; an agreement jointly establishing any "part of the price" is also condemned.(41)

すべての価格が影響される必要はなく、「価格の一部分」であっても共同で決定する合意があれば、有罪であるとされる。

Maximum price fixing is included under the per se proscription.(42)

最高価格の固定は、当然に違法による禁止規定に含まれる。

Recent cases illustrate each of these principles.

最近の事件はこれらの各原則を一つ一つ説明している。

The Commission this year applied the per se rule to an agreement adopted by an association of professional conference interpreters directly fixing price by establishing minimum daily rates.(43)

公正取引委員会において職業団体の事業者団体の会議で日々の最低利率を決定する直接的価格固定の決定に当然違法の原則が適用された事例が今年出された。

Agreements setting portions of the price -- such as per diem rates, travel compensation, and charges for off-days and cancellations -- also received per se condemnation.(44)

日歩や、旅行損害賠償や、不調な時やキャンセル時の支払いの様な価格の一部分を固定する合意も、また当然に違法の判断をされている。

The per se rule has also been applied to arrangements affecting price through limitations on significant forms of competition, such as by restricting the ability to purchase services by the hour rather than by the day or to vary the rates paid to different members of an interpreting team.(45)

日給によらずに時間でサービスを購入することが可能であるのに、あるいは、通訳のチームの各々のメンバーが違ったレートで支払われるべきであるのに、それを制限することによって、競争の重要な形態に制限を加えて価格に影響を与える合意にもまた当然に違法の原則は適用されてきた。

The per se rule has been applied to maximum price fixing.(46)

当然に違法の原則は最高価格の固定に適用されてきた。

Finally, the per se rule against price fixing has been invoked in some less traditional contexts, including an effort to raise rivals' costs(47) and a joint effort to exclude a discounter from participation in a trade show.(48)

最後に価格固定に対する当然に違法の原則は、競争業者の費用を上昇させたり、商業上の展示会に安売り業者が参加するのを共同で排除するような行為をも含む、これまでの伝統的な流れにはない状況に対して、適用されてきた。

a. Market Division

市場の分割

The per se proscription of market divisions has had a broad reach similar to that against price fixing.

価格固定に対する糾弾と同様に、市場の分割に対する当然違法の糾弾は広く行われてきた。

Focusing on potential anticompetitive effects, Judge Posner recently explained:

ポズナー判事は、最近競争制限の効果を持つことに焦点を当てて、次の様に説明している。

The analogy between price-fixing and division of markets is compelling. It would be a strange interpretation of antitrust law that forbade competitors to agree on what price to charge, thus, eliminating price competition among them, but allowed them to divide markets, thus eliminating all competition among them.(49)

価格の固定と市場の分割の類似性は、強制にある。反トラスト法は価格をいくらにするのかの合意を競争者に禁止して、それによって競争者間の価格競争を消滅させることを禁じており、しかし市場を分割して、それによって競争者間のすべての競争を消滅させることは許可しているとする解釈は反トラスト法の間違った解釈である。

The per se rule has been applied to agreements to divide geographic territories, customers, and types of business.(50)

当然に違法の原則は地理的なテリトリー、顧客の分割、様々な種類の事業上の合意やらに適用されてきた。

It reaches arrangements splitting markets in which the parties compete and agreements "merely reserv[ing] one market for one and another for the other," that is, requiring parties to keep out of particular portions of otherwise available business.(51)

事業者が競争する市場を分割しての割り振り、「他の競争事業者のため相互に市場の単純制限」の合意 などにいたるのであり、それはいわばそういうことがなければ利用可能な事業の特殊な割合を各事業者に事業をさせないようにすることになる。

Recent cases show application of the per se rule against geographic market divisions,(52) customer allocations,(53) and assignments of business by product type.(54)

最近の事件においては地理的な市場分割や、顧客の割当、また製品の種類に応じた事業の割当に対して当然に違法の原則の適用を見い出すことができる。

More interesting are the cases that have extended per se illegality to arrangements that sheltered the agreeing parties' from one another's competition without expressly dividing markets.

目につく事件では市場を分割するとの宣言はしていないが、各当事者が合意して、相互に競争することに壁を設けるという合意を当然に違法であると拡張解釈したものがある。

For example, the Commission in AIIC found a per se unlawful market division when a trade association prohibited permanently employed staff interpreters from performing freelance business for which freelance interpreters were available.(55)

例えば、フリーの翻訳家が利用出来るフリーの仕事をすることを永久雇用の職員の翻訳家が禁止するという事業者団体の決定を競争制限の(AIICの)委員会は当然違法とみなした.

The Seventh Circuit found an agreement among former law partners to divide the geographic markets in which each could advertise per se unlawful.(56)

第7巡回裁判所は、各人が自分の広告出来る地理的な市場を分割する弁護士のかってのパートナー間の合意を当然に違法であると判断した。

In addition, complaints resolved by consent agreements have viewed certain joint bidding or teaming arrangements as in fact nothing more than market divisions.(57)

それに加えて、ある種の共同の合意による入札や、チームによる合意を市場の分割と事実上は同じであるとみなして、合意判決によって告訴が解決されてきた。

Group Boycotts

グループによるボイコット

The role of per se analysis in evaluating group boycotts has long been a topic of confusion.

グループによるボイコットの判断において当然に違法であるとの判決は長い間混乱していた。

Northwest Wholesale Stationers provides the Supreme Court's most complete recent discussion of the issue:

最高裁判所はノースウエスト卸売事務用品会社判決で、この問題にほとんど完全な判断を行った。

Cases to which this Court has applied the per se approach have generally involved joint efforts by a firm or firms to disadvantage competitors by "either directly denying or persuading or coercing suppliers or customers to deny relationships the competitors need in the competitive struggle."

当裁判所は当然に違法であるとの原理を適用してきた事件は、一般的に言えば競争する上で競争者が必要な関係を直接的に拒絶したり、拒絶するように供給者や、顧客に間接的に説得したり、強制したりすること」によって競争者に不利益を与えるような単独の事業者あるいは共同の事業者による共同の行為をいうのである。

In these cases, the boycott often cut off access to a supply, facility, or market necessary to enable the boycotted firm to compete, and frequently the boycotting firms possessed a dominant position in the relevant market.

これらの事件においては、通常の場合にはボイコットされた事業者が競争する場合に必要な供給や、施設や、市場にアクセスすることが出来なくなり、また通常の場合には当該市場においてボイコットを行った企業が独占的な地位を保有していることが非常に多い。

In addition, the practices were generally not justified by plausible arguments that they were intended to enhance overall efficiency and make markets more competitive.

それに加えて、市場全体の効率性を増大させ、市場における競争を活発化させようと意図されたことを理解出来る主張によって正当化されることは一般的にはほとんどないような行為である。

Under such circumstances the likelihood of anticompetitive effects is clear and the possibility of countervailing procompetitive effects is remote.(58)

そのような環境下においては反競争的な効果を持つ蓋然性が高く、それとは逆に競争促進的な効果はほとんど期待できないといえる。

The Court then held that, absent market power or "unique access to a business element necessary for effective competition," expulsion from a buying cooperative is appropriately analyzed under the rule of reason.(59)

従って、裁判所は市場支配力がない場合や、「競争を効果的にするために必要なある事業上の要素への特別なアクセス」がない場合や、購入組合からの排除などは合理性の基準によって分析するのが妥当であるとの判断を示した。

Subsequently, in SCTLA, 493 U.S. at 432-36, the Court clarified that group boycotts used to implement price-fixing conspiracies may be condemned without a market-power inquiry.

それに続いて、SCTLA 事件においては、価格固定の共謀を遂行するために用いられるグループによるボイコットは市場支配力の証明がなくても当然に違法であるとの判断を明瞭に示した。

Recent applications of the per se rule to group boycotts have tended to involve either boycotts of suppliers or customers directed toward discouraging dealings with the boycotters' competitor or boycotts utilized to implement per se unlawful price fixing or market divisions.(60)

グループによるボイコットに対する当然に違法の原則の適用は、ボイコットを行う側の競争者との取引を供給者あるいは顧客に対して拒絶させるように命令したりするボイコットか、あるいは、当然に違法な価格固定や、市場の分割などを遂行するために使用されるボイコットに対して、最近では適用されるようになっている。

d. Summary

要約

Two points emerge from this survey.

二つの要点がこの論文から浮かび上がる。

First, the courts have varied the nature of per se treatment in line with the severity of a category of conduct's perceived anticompetitive potential.

第一点は裁判所はある行為が反競争的であると認識される蓋然性の高さに応じて、厳格に当然に違法の原理の取扱を変化させている。

For price fixing and market divisions, where the threat to competition is most clear, the per se rule is strong, and plaintiffs typically have not been required to demonstrate market power or specific anticompetitive effects.

価格固定と市場割当に対しては、市場に与える脅威が最も高いので、当然に違法の原理の取扱が最も強力である。従って原告は市場支配力や反競争的な効果を証明する必要が全く要求されていない典型である。

For at least some group boycotts, where the anticompetitive effect may appear more attenuated, the courts have tended to require market power or unique access to essential business elements.(61)

少なくともある種のグループによるボイコットに対しては、反競争的な効果がより弱められている外観がある場合があるので、裁判所は市場支配力や必須施設への事業上のアクセスが特殊的に必要だとの証明を要求する傾向があった。

For group boycotts that implement price fixing or market divisions, however, the market power requirement is dropped.

しかしながら価格固定や、市場分割を行うグループによるボイコットに対しては市場支配力の証明は必要ないとした。

Second, each category of conduct potentially subject to per se condemnation encompasses quite diverse conduct and is far from self-defining.

第二点は、当然に違法であるとされる可能性のあるそれぞれの行為の範疇はそれとは違う行為を内包しており、それ自体のみを定義することはほとんど不可能である。

Price fixing is a prime example.

その代表的な事例は価格固定である。

The recent cases include several instances of per se condemnation where a price is not actually established, but where the competitive mechanisms for setting price have been tampered with, such as by requiring uniform pay for different members of an interpreting team, requiring a union to charge competitors a fee, or seeking to bar a competitor from a trade show.

最近の事件では価格が現実には設定されることはなく、たとえばある一つと解釈できる団体の違った種類のメンバーから同一の支払いを要求するとか、ある協同組合に競争業者に特定の利用料を要求したり、あるいはある競争業者をある事業の現場から排除したりするとかのように価格設定の競争的なメカニズムに改悪が加えられている。

Given the diversity of conduct that may be subject to per se treatment, it is understandable that efforts to delineate the boundaries of per se prohibitions using articulations based solely on their likely competitive harms have not been particularly successful.

たとえ当然に違法であると取り扱われることになる可能性が高い行為が様々に変化しようとも、競争に与える害の蓋然性の程度が明瞭であるかどうかにだけ基礎を置いて、当然に違法である禁止行為の境界を線引きする努力をしても特別に成功したのではなかったことは理解できる。

Categories of conduct lack precision, and descriptive phrases tend to be too conclusory to give much guidance.

行為の範疇が精密さを欠き、描写をする文章が証拠不十分による推論に頼る傾向があることから多くのガイダンスを与えることが出来ないでいる。

Not surprisingly, then, courts have increasingly focused on the presence or absence of competitive benefit as a means for chiseling away conduct that does not belong within per se categories.

それ故に裁判所においては当然に違法の範疇には属していない行為を特定する方法として競争上の利益があるかないかに注目することが増えてきたことは驚くにあたらない。

In recent years, cases have often turned on this factor, which is discussed in the next section.

現在においては、この訴因に関心が向けられることが多くなったので、次の章で検討することにする。

A. Identifying Absence of Competitive Benefit

競争的な利益がないことの特定

1. General Articulations

一般的明確化

Conduct that would otherwise trigger per se condemnation will still elude per se treatment if it is likely to generate competitive benefits.

当然に違法の判決を受けるような行為であっても、もし競争上の利益を生み出す傾向がありうるならば、それにもかかわらず当然に違法の判断を免れることもたまにありうる。

The courts' formulations for describing this second element of the per se rule typically adopt one of two approaches.

裁判所は当然に違法の原則のこのような二つ目の要素を描写するための定式化は、二つの接近法のうちの一つの接近法を採用する形式をとる。

They either focus directly on the conduct's likely competitive effects, or they seek to determine whether the suspect conduct is suitably connected, i.e., "ancillary," to legitimate activity.

裁判所は当該行為が競争的な効果を持っている可能性に直接に焦点を当てるか、提訴されている行為が合法的な行為と適切に相関関係、つまり「補完性」があるのかどうかを決定するための努力をする。

Although the "effects-based" and "ancillary restraints" analyses have somewhat different focuses, depending on how they are applied, they need not be substantively inconsistent.

「効果に基礎を置いた」分析と、「補完的制限」の分析は、適用の方法に依存して、焦点の置きかたが違っている部分があるにもかかわらず、この二つは本質的には相互に矛盾している必要性はない。

Indeed, a single opinion may contain elements of both forms of analysis.(62)

確かに、一つの意見が両方の分析形式のある種の要素を含んでいることはありうる。

a. "Effects-Based" Analysis

「効果に基礎を置いた」分析

The "effects-based" analysis is reflected in the second half of some of the Supreme Court's standards for per se illegality.

「効果に基礎を置いた」分析は、当然に違法の原則の最高裁判所の基準の半分の部分を反映している。

Thus, Northern Pacific Ry., 356 U.S. at 5, looks for conduct with a "lack of any redeeming virtue,"

しこうして、ノーザンパシフィック鉄道事件, 356 U.S. at 5では「何もその見返りの利益」を伴わない行為として見ている。

Khan, 1997 U.S. LEXIS 6705, at *11, speaks in terms of "limited potential for procompetitive benefit,"

カーン事件では, 1997 U.S. LEXIS 6705, at *11,「競争促進的な利益が潜在的に制限されている」という言葉を使用している。

and BMI, 441 U.S. at 19-20, asks whether a practice facially appears to always or almost always restrict competition and decrease output instead of being "designed to 'increase economic efficiency and render markets more, rather than less, competitive.'"

そしてまたBMI事件では, 441 U.S. at 19-20,「「経済的な効率性を増大させ、市場を反競争的にするのではなく、より競争的にする」ことを計画しているのではなくて、常にあるいはほとんど常に競争を制限して生産量を減少させるようにある行為が外形的に見えているかどうかについて審理している。

The effects-based approach leaves room for defendants to articulate procompetitive justifications for their conduct.

効果に基礎を置いた接近方法は、被告にとっては自らの行為の競争促進的な正当性をはっきりさせる余地を残している。

Faced with potential justifications, the Supreme Court has assigned cases to the rule of reason when benefits were so clear that the restraint was deemed necessary in order to provide the product at all,(63) as well as in instances where the restraint's "economic impact" was "not immediately obvious."(64)

その利益が非常に明白であって、競争の制限が製品を提供するのに少なくとも必要であるとみなされる場合には、また同時に競争の制限の「経済的な効果」が「即座に明白ではない」事件においては、正当化の可能性があるので、最高裁判所は理由の原理に付してきた。

Unfortunately, for much of this range of possibilities the Court has not provided specific guidance,and, as the discussion of cases such as BMI and Maricopa infra in Section II.B.2 suggests, the means for determining which competitive justifications are sufficient remain in doubt.

このような多くの種類の可能性に対しては、裁判所は特別なガイドを示して来なかったのであり、また、下記のII.B.2章におけるBMIとマリコパ事件のような事件の議論においてもどのような競争上の正当化がじゅうぶんであるのかを決定するための手法はまだ疑問が残っているのは残念である。

b. Ancillary Restraints Analysis

補助的規制の分析

"Ancillary restraints" analysis derives from Judge Taft's opinion in United States v. Addyston Pipe & Steel Co.,(65) involving an agreement among pipe manufacturers to fix prices, rig bids, and divide territories.

「補完的制限」の分析は政府対アディストンパイプ・鉄会社事件においてパイプ製造会社間の価格固定、入札談及び地域分割に関してタフト判事が提出した意見に由来している。

Accepting, arguendo, defendants' claim that Section 1 liability extends only to agreements void as restraints of trade under common law,

シャーマン法の第一条の違反であるし、かつコモンローのもとでも取引の制限に当たるので合意のみは事実ではあると認め、無効であることにのみに解釈すべきであると被告は主張した。

Judge Taft extracted from the common law the principle that no conventional restraint of trade can be enforced unless the covenant embodying it is merely ancillary to the main purpose of a lawful contract, and necessary to protect the covenantee in the enjoyment of the legitimate fruits of the contract, or to protect him from the dangers of an unjust use of those fruits by the other party.

適法な契約の主要な目的を純粋に補助することを具体化している契約でなければ、また契約による合法的な果実を享受する時の契約者を保護する必要があるか、あるいは、他の当事者によってそれらの果実が不正な使用がなされる危険性から当事者を守るためでなければ、タフト判事はコモンローによる原則を引用して、取引の制限は強制されることは出来ないという原理を持ち出した。

Id. at 282.

上掲書282頁。

In contrast, "[W]here the sole object . . . is merely to restrain competition, and enhance or maintain prices, it would seem that there was nothing to justify or excuse the restraint . . . ."

これとは対照的に「目的が・・・単に競争を制限する目的だけであって、価格を上げどまりさせ、価格維持の目的だけである時には、競争制限を正当化し、許可されることは全くないだろうと思われる・・・。」

Id. at 282-83.

上掲書282頁。

Some courts and commentators would apply Judge Taft's analysis in determining whether agreements warrant per se condemnation.

裁判所によっては、また独占禁止法の解説によっては、合意が当然に違法の判断に該当するのかについて結論を出すのにタフト判事の分析を適用するものがいくつか存在する。

For example, Judge Bork's opinion in Rothery Storage & Van Co. v. Atlas Van Lines, 792 F.2d 210 (D.C. Cir. 1986), cert. denied, 479 U.S. 1033 (1987),

例えば、Rothery Storage & Van Co. v. Atlas Van Lines事件における, 792 F.2d 210 (D.C. Cir. 1986),ボーク判事の意見、判決は請求棄却, 479 U.S. 1033 (1987),

concluded that Addyston Pipe "framed a rule of per se illegality for 'naked' price-fixing and market-dividing agreements, i.e., agreements between competitors who cooperated in no other integrated economic activity,"but "recognized that such a rule would not do where fusions or integrations of economic activity occurred . . . ."

アディストンパイプ事件は「「あからさまの」価格固定と市場分割の合意に対して当然に違法の原則を構成している、それは、共同しての競争者間の合意は経済的に統一の取れた行為ではないということである」また「そのような規則によれば、経済的な行為が統合あるいは統一性をもたないであろうという認識である・・・」

と結論を出している

Id. at 224.

Rothery continues:

ロスリーは次の様に続けている:

To be ancillary, and hence exempt from the per se rule, an agreement eliminating competition must be subordinate and collateral to a separate, legitimate transaction.

付随的であり、それ故に合理性の原則から外れるためには、競争を減殺させる合意は分離された、合法的な取引の下部にあり、付随したものでなくてはならない。

The ancillary restraint is subordinate and collateral in the sense that it serves to make the main transaction more effective in accomplishing its purpose.

付随的な競争制限は主な取引を効率的にするという目的を達成するために、より効率的にすることに奉仕するものであるという意味で下位にあり、かつ付随的である。

Of course, the restraint imposed must be related to the efficiency sought to be achieved. If it is so broad that part of the restraint suppresses competition without creating efficiency, the restraint is, to that extent, not ancillary.(66)

もちろん、競争制限の行為は達成されようとしている効率性に関連したものでなければならない。もし競争制限の範囲が非常に広いあまりに、競争制限の一部分によって効率性が達成されないという場合には、その程度において、その競争制限は補助的ではない。

Ancillary restraints analysis, however, is at least as plagued by ambiguities as the more direct, effects-based standards.

しかしながら、補助的な競争制限の分析は、より直接的な効果に基礎を置いた基準と同様に、少なくともあいまいさに悩まされる分析である。

Two questions immediately stand out: (1) to what must the conduct be ancillary? and (2) what is a sufficient connection to yield "ancillary" status?

二つの疑問が即座に生まれてくる。(1)ある行為が何に対して保管しているのか、また(2)「補完している」地位を与えるのにじゅうぶんな関係とは何かの二つである。

Courts and commentators have suggested a variety of answers to the first question.

裁判所も、学説も最初の疑問には多くの答えを提案している。

Some have looked to whether a restraint is ancillary to integration(67) or to an efficiency-enhancing integration.(68)

ある競争制限が統一を補完しているのか、あるいは効率性を高めるための統一を補完しているかどうかであると見ている判決や学説がある。

Similarly, some have asked whether a suspect restraint is ancillary to some lawful contract or joint activity.(69)

同様に、何らかの適法な契約や、共同の行為を補完しているかどうかを求めている判決や学説がある。

These formulations insert an intermediate construct between the restraint and its efficiencies and focus their inquiry on the construct.

これらの定式化は競争制限と、競争制限の効率性との間の中間的構成概念に当たり、その構成概念に研究の焦点を当てている。

Other formulations cast the ancillarity inquiry in very general terms, such as whether a suspect restraint is ancillary to some legitimate commercial objective or lawful purpose, i.e., to something other than price formation or restraining competition.(70)

他の定式化は、疑われている競争制限の行為が何らかの合法的な商業目的や、合法的な目的のとって補助的ではないかどうか、つまり、価格形成や競争制限以外のものではないのかについて、非常に一般的な熟語によって補助性の研究に没頭する。

Indeed, the "lawful purpose" formulation was used by Judge Taft in Addyston Pipe, 85 F. at 282-83. 「合法的目的」の定式化は、確かに、アディストンパイプ事件, 85 F. at 282-83.においてタフト判事によって使用された。

Significantly, when the inquiry is framed this broadly, that is, when the issue is whether a restraint is ancillary to some legitimate commercial objective -- such as achieving a procompetitive efficiency -- rather than merely restraining competition, the inquiry begins to overlap with effects-based formulations which look directly at procompetitive benefits.

この探求がこのことを広大に構成するならば、つまり単なる競争制限より、競争促進による効率性の向上のような、何らかの商業上の合法的目的に競争制限が補助することになっているかどうかが問題となれば、競争促進の利益を直接的に見つけるという効果を基礎にした定式化とこの探求はオーバーラップしていることなることは注目に値する。

Precise specification of what a restraint must be ancillary to thus becomes critical for actually assigning meaning to the doctrine.

どのような競争制限が補助的であるべきかを詳細に特定していけば、この原理に現実的な意義を認めることに疑問をていしなくてはならなくなる。

The second key question -- asking what is a sufficient connection to render a restraint ancillary -- usually is answered either (i) by a requirement that the restraint be related to the underlying object to which it must be ancillary or (ii) by a requirement that the restraint in some sense be necessary for attaining the underlying object.

競争制限を補助的にするのにじゅうぶんなつながりとは何なのかという第二の鍵となる質問に対する答えとしては、普通(@)競争制限が下にあって補助していなくてはならない目的に関係がある必要があるとされるか(A)その競争制限がある意味では上位にある目的を達成するためには必要であることが要求される。

The two approaches are not equivalent: a restraint can be related to attaining an object even when it is not necessary, such as when a less anticompetitive alternative would achieve the same goal.

この二つのアプローチは同じものではない:それより競争制限的ではない代替手段が存在してそれによって同一の目的が達成されることが出来るような時のように、競争制限が必要ではないにもかかわらず、競争制限がある目的を達成するためには、関係があることもある。

Consequently, formulations based on necessity pose the more stringent test.

その結果、必要性に基礎を置いた定式化はもっと厳格なテストを受けなくてはならない。

We return to this issue infra in Section II.B.4.

この問題は後記II.B.4.章で再度取り上げる。

 For present purposes we merely observe that without clear specification of the degree of association required, the term "ancillary" lacks meaning, and its use invites confusion.

要求されている連関の程度の明確な特定を行わない限りにおいては、補助的の言葉は意味がなく、その言葉を使用することは混乱をもたらすことを、現在の目的のために、単純にみているだけである。

Of course, effects-based standards require resolution of much the same issue in determining when a practice is sufficiently associated with the asserted benefits.

もちろんある行為が強く主張された利益と十分に連関があると決定出来るような同様の問題の解決が効果に基礎を置いた基準によっても要求される。

However, effects-based standards at least ensure that inquiry is focused on the connection between a restraint and its asserted benefits.

しかしながら、効果に基礎を置いた基準は、競争制限とそれが生み出す利益との間の関係に少なくとも焦点を向けて探求されていることは確かである。

The potential for confusion is magnified under ancillary restraints analysis, for a restraint may be related to an integration or a lawful contract but wholly unrelated to its competitive benefits.

補助的競争制限の分析によれば、混乱を来す可能性が高いのであり、その理由は競争制限は統合や、合法的な契約と関連しているかもしれないが、競争上の利益とは全く関係がないからである。

See Section II.B.5, infra.

後記II.B.5章を参照。

b. General Principles: Quickly Eliminating Plainly Inadequate Justifications

一般原理:明白に不適切な正当化を即座に棄却する原理

The initial step under either form of analysis is intended to permit speedy per se condemnation in settings where justifications are absent or plainly inadequate.

そのどちらの種類の分析によっても、最初の段階で正当化の理由がないか、あるいは明らかに不適切であるような事件である場合には、時間を節約した当然に違法の判断による有罪判断が許されると結論することが出来る。

There is clear consensus that when conduct of a type normally thought sufficiently anticompetitive to warrant per se condemnation stands alone, with no arguable justification, the conduct should be condemned summarily.(71)

当然に違法の有罪判断だけが成り立つような競争制限の性格がじゅうぶんに存在する様な一般的な種類の行為である時には、正当化の議論を省き、その行為は略式に有罪判断が下されることについては合意が成立していることは明らかである。

The issue is more difficult when some justification is offered.

この問題は何らかの正当化が提出された時には、更に難しくなる。

Modern trends suggest that it is appropriate to look at justifications,(72) but there is danger that opening one's eyes may open a door.

正当化に目を向けることは適切であるが、目を向けることと、それを許すこととは違うのであり、危険であると指摘している。

As Judge Posner has observed, "The per se rule would collapse if every claim of economies from restricting competition, however implausible, could be used to move a horizontal agreement not to compete from the per se to the Rule of Reason category."(73)

ポズナー判事が指摘するとおりに「競争を制限しようという水平的な合意を当然に違法の原理から、理由の原理に変換するためにもっともらしい理由付けが使用されることが可能になるならば、たとえどんなにもっともらしい理由であっても、競争の制限から経済を守ろうとするすべての訴訟に使用出来ることになり、当然違法の原理は崩壊してしまうことになる。」

Courts and commentators have suggested mechanisms for summarily weeding out plainly inadequate justifications.

裁判所と学説は、略式判決が不適切な正当化を除去する制度であるとして単純明解に提言している。

Professor Areeda's analysis contemplates elimination of some justifications on argument alone.

アリーダ教授の分析によれば、議論において何らかの正当化の議論をなくすことについてだけが熟慮されている。

It provides for a "quick look" to determine whether defendants' claims are "legitimate in principle and capable of being proved satisfactorily," while still summarily rejecting justifications of types previously found wanting and claimed defenses "close enough to those previously excluded."(74)

その理論によれば、ところが略式に以前欠けていると判断された種類の正当化を棄却し、主張された防御が「そのような以前に棄却された主張とほぼ全く同じである」としても、更に被告の主張が「原理において合法であり、満足に証明されることが出来るのか」どうかを「即決の審理」によって決定すべきであるとしている。

Others would permit a cursory look at factual content -- just enough to determine that a practice, while perhaps not naked, is clothed with only a "gauzy cloak."(75)

他のものは、訴訟手続はおそらくは裸ではないが「薄いマント」だけを着ているだけぐらいであり、じゅうぶんではなく、事実の内容にはざーっと目を通すことになるだろう。

Similarly, the enforcement agencies repeatedly have stated that they will apply per se treatment to joint ventures that actually are nothing more than shams,(76)and the Seventh Circuit has been willing to preliminarily find per se illegality after a "quick look" at the facts, "without undertaking the kind of searching inquiry that would make the case a Rule of Reason case in fact if not in name . . . ."(77)

同様に現実にはごまかし以上ではない共同事業に対して、当然に違法の判断を適用することになるであろうと捜査当局は繰り返し言ってきた、したがって第7巡回裁判所は、「名目的にではなく、・・・事実上理由の原則で事件を取り扱うようにするであろう審理を行うことになるような審理にいたることなく」事実を「即決で見て」から当然に違法の略式判断をすることに異議はなかった、

The case law provides little guidance for "quick-look per se" identification of shams, but the issue may be approached from the other side by considering how courts have described benefits sufficient to confer rule-of-reason status.

にせものの「即決で見た当然に違法」の認定に対するガイダンスを判例法はほとんど示して来なかったのであり、理由の原理の立場を参照するにじゅうぶんな利益についてどの程度裁判所は言及して来たかを考慮すれば、この問題は他の側からアプローチすることも可能であろう。

2. Application of "Effects-Based" Analysis

「効果に基礎を置いた」分析の適用

Unfortunately, the Supreme Court has offered little guidance for applying effects-based standards to cases of moderate efficiencies.

最高裁判所は効率性を加減する事件において効果に基礎を置いた基準を適用するに当たってのガイドをほとんど示してこなかったことは残念である。

Rather, it has focused on the end of the spectrum opposite from sham justifications, addressing settings where the challenged restraints offer very great efficiencies.

 むしろ提訴されている競争制限の行為が非常に大きな効率性を提供しているような状況を処理することによって、ごまかしの正当化とは正反対の領域の目的に焦点を当ててきた。

In rejecting per se analysis under these circumstances,the Court has explained that the challenged restraints may permit competitors to offer through collaboration a different product than what they can provide independently.

このような状況の下で当然に違法の分析を排除する場合には、提訴された競争制限によって、個人個人で供給することが出来るもの以上の違った製品を合作にすることによって供給することを、競争者達に許されるかについて裁判所は説明している。

Thus, in BMI, the Court discussed the advantages of blanket licenses for musical compositions in the following terms:

裁判所はBMI事件ではこの分析によって、音楽の作曲における包括許可の利点を次の様な言葉で、論じている:

This substantial lowering of costs, which is of course potentially beneficial to both sellers and buyers, differentiates the blanket license from individual use licenses.

本質的に費用を下げているのであるから、もちろん販売業者にも、購買者にも利益を与える可能性はあるが、包括許可は個人の許可による使用とは異なるものである。

The blanket license is composed of the individual compositions plus the aggregating service.

包括許可は個人個人の作曲家たちに加えて総合計されたサービスの両方から成り立っている。

Here, the whole is truly greater than the sum of its parts; it is, to some extent, a different product.

ここでは、全体の製品はその部分部分の合計よりも本当に大きくなっているのであり、それは、ある限度において違った製品である。

The blanket license has certain unique characteristics: It allows the licensee immediate use of covered compositions, without the delay of prior individual negotiations, and great flexibility in the choice of musical material.

包括許可はある種の特殊な性格を持っている、つまり包括許可は保護された作曲された曲を即座に使用する免許を前もって個人個人と交渉していくことなしに、遅れることなしに、与えたことになるので音楽著作物の選択において非常に柔軟性が確保される

Many consumers clearly prefer the characteristics and cost advantages of this marketable package . . . .

多くの消費者はこの市場製品の特徴と、費用の優位性・・・を明らかに好んでいる。

Thus, to the extent the blanket license is a different product, ASCAP is not really a joint sales agency offering the individual goods of many sellers, but is a separate seller offering its blanket license,of which the individual compositions are raw material.

従って、包括許可が違った製品であるというその程度において、現実にはASCAPは多くの販売業者が販売している個人個人の製品への申込と共同の購入業者ではないのであって、そういうよりもASCAPは包括許可を提供している分離された別個の販売業者であり、その個人個人の作曲家たちは原材料でしかないのである。

ASCAP, in short, made a market in which individual composers are inherently unable to compete fully effectively.

簡潔に言えば、ASCAPは個々の作曲家達が所在する一つの市場において、完全に効率的に競争することを本質的に不可能にしている。

BMI, 441 U.S. at 21-23 (footnotes omitted).

BM I 事件 441 U.S. at 21-23 (注は省略)

It is not clear, however, whether the "different product" concept entails anything more than a very great efficiency.

しかしながら、「違った製品」の概念が非常に大きな効率性以上のものを必然的にもたらすかどうかは明確ではない。

The Supreme Court relied on two factors.

最高裁判所は二つの要素によっている。

First, it emphasized the "substantial lowering of costs" and observed that individual composers are unable to compete with the blanket license "fully effectively."

第一に、「本質的に費用を軽減していること」また個人個人の作曲家たちが包括許可によって「完全には競争的に」競争が出来なくなっていることを認めている。

These considerations emphasize the efficiency of the arrangement.

これらの考察は協定の効率性を強調している。

Second, the Court stressed that a blanket license aggregates individual compositions, resulting in a "whole . . . truly greater than the sum of its parts."

第二には、裁判所は包括許可が個人個人の作曲家たちの総計であり、その結果「全体は・・・真実としてその部分部分の合計よりも大きくなっている」ことを強調している。

Yet when the Court attempted to be more specific -- by observing that this greater "whole" permitted immediate use and great flexibility -- it also explained that the blanket license eliminated any need for "prior individual negotiations," which together, albeit much less efficiently, could have assembled the same package of rights.

しかし裁判所が、この非常に大きな「全体」が即座の使用と、大きな伸縮性を認定することによって、もっと明確にしようとすると、「その前の交渉」の必要性を包括的許可がなくしていることをも説明している。しかしそれらは一緒にしてみれば、効率性はそれ程大きくはないが、権利の同じ一包みに集められることが可能である。

In effect, the Court may merely have been using an intuitively appealing illustration of the fact that the blanket license's cost savings were very great.(78)

効果としては、包括的許可の費用節約効果は非常に大きいという事実を、裁判所が直感的に訴えることが出来る説明として使用してきたことだけは言える。

If so, "different product" analysis provides a handy characterization for some cases offering very great benefits rather than a fully independent test.

もしそうであれば、「違った製品」という分析は完全に独立したテストというよりもむしろ大きな利益を提供している事件でありうるという簡便な特徴付けを提供している。

Nor is it particularly easy to apply, as reflected by the Court's opinion in Maricopa.

マリコパ事件における裁判所の見解に反映されている様に、この原則は特に適用が簡単という訳ではない。

That case involved agreements by competing physicians setting the maximum fees that they could claim for services provided under specified insurance plans.

その事件は、競争している医者たちが特別な保険計画の下で提供されるサービスにおいて請求出来る最高報酬価額を設定することに合意を形成した事件である。

Defendants argued that this was a new product in that it made possible complete insurance coverage -- requiring no co-payment -- for the services of a broad panel of physicians.

被告は広い範囲の医者のサービスに対して―自己負担をなしにした−完全に保険での補償を可能にした新しい製品であると論じた。

Id., 457 U.S. at 351.

前掲書、457 U.S. at 351.

The Court, however, found the situation fundamentally different from that in BMI  because the physicians, both before and after their price-fixing agreement, sold only their own medical services.

しかしながら価格固定の合意の前においても、後においても、彼ら自身の医者のサービスだけを提供したのであるから、裁判所は、BMI事件とこの事件は基本的には状況が違うと見ている。

Id. at 356.

前掲書356頁。

Yet, Justice Powell's dissent observes:

しかしポーウェル判事はこの見方には賛成しない。

the foundations provide a "different product" to precisely the same extent as did Broadcast Music's clearinghouses.

ブロードキャスト音楽社の信用交換所としての限度においてのみこの財団は「違った製品」を供給している。

The clearinghouses provided only what copyright holders offered as individual sellers -- the rights to use individual compositions.

信用交換所としての機能は個人個人の販売者として著作権の所有者が個人個人の作曲家が使用する権利のうち提供した部分についてだけ供給しているのである・・

Id. at 365 n.12.

上掲書。at 365 n.12.

Moreover, the arrangement in Maricopa, like that in BMI, offered consumers a complete range of services at a pre-arranged maximum fee.

更には、マリコパ事件においては、BMI事件におけると同様に、協定によって前もって協定された最高価格の価格によってサービスの完全な範囲が提供された。

Reading BMI and Maricopa together, it is difficult to extract coherent standards for applying the "different product" construct.

BMI事件とマリコパの両事件の判決を読んでみても、「違った製品」という概念構成を適用するための一貫した基準を抽出することは難しい。

A different path into this thicket derives from the Supreme Court's analysis in NCAA of a set of restrictions fixing the number and, effectively, the price, of college football telecasts.

この藪の中へ入る別の道は、大学フットボールのテレビ放送権の数量と、価格を効率的に一連の競争制限についてのNCAA事件における最高裁判所の分析から導き出すことが出来る。

The Court rejected application of the per se rule on grounds that the case "involves an industry in which horizontal restraints on competition are essential if the product is to be available at all."

裁判所が当然に違法の原理の適用を排除した理由はこの事件が「その製品を何らかの利用可能な状態にするためには水平的な競争制限が本質的であるような業界を」含んでいるからである。

Id., 468 U.S. at 101.

上掲書。468頁 U.S. at 101.

Although that rationale clearly rests on the presence of a distinct, jointly-offered product, the formulation adds little to the mix.

この論理的根拠は明らかに顕著で、共同で申込があった製品の存在にかかっているのであって、混在している場合にはこの定式化はほとんど役に立たない。

To the extent that a practice is necessary for the product to be available at all,(79) it would qualify for rule of reason treatment under virtually any test of competitive benefits.(80)

製品を少なくとも利用可能にするためにはある行為が必要であるその程度まで、競争による利益の実質的な何らかのテスト下での理由の原理の取扱に服すると判断される。

Again, guidance comes at the end of spectrum where competitive benefits are very clear.

もう一度強調すれば、競争上の利益が非常に明白な場合である範疇の最端においてのガイダンスが得られる。

3. Application of Ancillary Restraints Analysis: To What Must the Conduct Be Ancillary?

補助的な制限の分析の適用:ある行為が補助的であるのは何に対してか。

In contrast, ancillary restraints analysis provides guidance even when competitive benefits are less overwhelming.

以上と対照的に、補助的な制限の分析によれば競争上の利益がそれ程絶大ではない時でさえもガイダンスを与えることが出来る。

As already noted, it has been formulated in diverse ways, but most reduce to asking whether the challenged conduct is suitably connected either to (i) an integration (often, an "efficiency-enhancing integration") or (ii) to a lawful purpose, viz., to achieving an efficiency.

すでに指摘したように、それは全く逆の方法で定式化されてきたが、(@)統合性(しばしば、「効率性を向上させる統合性」である)あるいは(A)合法的な目的、言い換えると、効率性を達成することのどちらかに適切に関係があるかどうかの分析に変形されることが多い。

"Integration" is a term often used, but rarely defined.(81)

「統合」という熟語がしばしば使われるが、ほとんど定義されることは少ない。

Typically it has been applied in three general senses.

この言葉は典型的には三つの一般的な意味で使われてきた。

Sometimes usage has focused on a combination of productive assets.

製品の価値の結合に焦点を当ててこの言葉は使用されることがある。

For example, one analyst speaks in terms of the "integration of resources" that follows when collaborating firms "contribute assets such as capital, technology, or production facilities to a common endeavor."(82)

例えば、協力した企業群が「資本や、技術や、製品の必須施設を共同の努力で助長する」時に「資源群の統合」があるという熟語を使って論じている学説もある。

Other times the emphasis has centered on a coordination of functions and operations without necessarily combining assets.(83)

必ずしも資産が結合されることなく、諸機能や、諸活動が一つに連携されていることを強調し、それを中心に論じている場合がある。

Such arrangements sometimes are referred to as "contract integration."(84)

そのような協定は「契約の統合」として言及されていることがある。

On still other occasions, particularly in the context of physician networks, the inquiry has centered on shared financial risk.

 もう一つの場合においては、特に医者のネットワークの文脈の中においては、金銭的な危険を分散するということに中心に分析されている。

For instance, the Court's opinion in Maricopa viewed physicians in an HMO as "functionally integrated" in light of their sharing of economic risk as to the amount of medical treatment that the subscribers might need.(85)

Why has integration played such a critical role?

何故に統合がそんなに決定的に重要な役割を演じているのか。

After all, it is not an end in itself.

結局、統合はそれ自体が一つの目的ではない。

Rather, it appears primarily useful as an indicator or proxy for efficiencies.(86)

そうではなくて、効率性のための指標あるいは代替物として役に立つように最初はみえるだけである。

From the opposite perspective, it might also be viewed as an indicator that the arrangement is more than a sham something has happened beyond merely jointly setting prices, so that a more intensive look may be required to sort things out.(87)

また、反対側の視点から見れば、協定はにせもの以上の指標であるとして見られるかもしれない、つまり共同で価格を設定すること以上の何かが起こったのである、従って、ものごとを解決するためにはもっと集中的に観察する必要があるかもしれない。

If integration is indeed a proxy for efficiencies, its utility would seem to depend on (i) its accuracy as a proxy and (ii) any advantages it may afford with respect to ease of application.

確かにもし統合が効率性の代替物であれば、その有用性は(@)代替物としてのその正確さ(A)適用を容易にする可能性があり、その利点があるかどうかにかかっている。

Taking the latter point first, integration often will be readily apparent, such as when assets are combined or financial risk is shared.

後者の点を先に取り上げれば、資産が結合されたり、金銭的危険性が共有されたりしている時の場合には、統合が一見してすぐに明らかであろう。

A clear, quickly applied test of this nature may be well-suited to the per se/rule-of-reason determination, where the inquiry is not whether efficiencies will occur, but rather whether they are sufficiently likely to warrant a closer look.

この性質が明白に、即座の審査を行うことは、当然に違法か、理由の原則かの決定に容易に適用出来るかもしれない。その場合には効率性が発生しているかどうかの審査ではなく、むしろもっと詳細な審査が正当化される性質をじゅうぶんに持っているかどうかの審査である。

Application becomes more uncertain and difficult when "integration" is taken to include coordination of functions and operations, particularly under the broadest formulations such as the productive cooperation relied upon by Judge Easterbrook in Polk Bros.

ポークブロスPolk Bros事件におけるイースターブルック判事に信頼されたような製造協力のように特にもっとも広い意味を持った定式化によれば、「統合」が機能と活動の協力を含んでいるととらえられる場合に当たり、この定式化を適用するのはもっとより不確実で難しいものになる。

The often-used formulation "efficiency-enhancing integrations" appears to forfeit much of the advantage in terms of ease of application over an efficiencies-based standard.

「効率性を高める統合」というしばしば使用される定式化は、効率性基準の適用の簡便さという観点から見れば、多くの利点を喪失しているように見える。

As to accuracy, one key concern is likely to be that some efficiencies may be realized without integration, so that an integration-based standard might allow per se of beneficial conduct.(88)

正確さについては、一つの懸念は、統合なくしては実現出来ない効率性がありうるので、統合に基礎を置いた基準は利益のある行為に当然に違法の有罪判断が許されるかもしれないという要点が考えられる。

Efficiencies derived from combining complementary assets, shifting production among separately owned facilities, sharing risk, and facilitating the raising of capital would all seem to entail combinations of assets or financial integration.

補助的な資産を結合することから生ずる効率性、分離して所有された施設の間で生産を移動することから生ずる効率性、危険性を共有すること、資本の値上がりを促進することから生ずる効率性はすべて資産の結合と会計的統合を伴っている。

Achieving other forms of efficiencies

他の形式の効率性を達成するために、

such as by aligning incentives 一線に並ばせる動機によって(e.g., by preventing free-riding),

(言い換えると、ただ乗りを妨害するために)

reducing transactions costs取引の費用を減らすために (such as through joint selling, as in BMI and Maricopa),(BMI事件やマリコパ事件のように、共同しての販売を通じてというような

eliminating undesirable duplication (by dropping rather than combining certain operations),

望ましくない重複を避けるため(ある種の工程を結合するのではなく、省略することにより)

or, in some instances, achieving scale economies

あるいは、何らかの例では規模の経済を達成するために

-- may entail only coordination of functions and operations.

は機能や活動の共同だけを伴うであろう。

It is not clear, however, how frequently these latter efficiencies in fact arise in isolation, without an accompanying combination of assets or financial integration.

資産の結合や、金銭的統合を伴うことなしには、後者の効率性はどんなに頻繁に単独で現れることがあったとしても、それ単独で発生することは事実上ありえないことは明白である。

On the other hand, an integration-based standard may contribute to accuracy by filtering out certain efficiencies that antitrust law typically has not recognized.

他方、統合に基礎を置いた基準は反トラスト法が典型的には認識して来なかったある種の効率性を抽出することによって正確さに貢献するであろう。

For example, price fixing saves the cost of independently determining price levels, and market allocations permit competitors to focus specialized efforts on their share of the divided market.

例えば価格固定は個々に価格レベルを決定する費用を節約でき、市場割当によれば競争業者は分割された市場のシェアー割当を特定するよう関心を集中する。

Although antitrust law has not accepted these cost savings as procompetitive, both, strictly speaking, could pass an efficiencies-based test.

反トラスト法は、これらを行うことによって費用が節約されることを競争促進的であるとは受け入れていないが、厳密に言っても、

これらは両方共に効率性に基礎を置いたテストにパスすることが出来るであろう。

However, when price fixing and market allocations are naked, they would not pass an integration-based review.

だけれども、価格固定と市場割当は裸のままであれば、統合を基礎に置いた再審査にはパスしないであろう。

In sum, it appears that the utility of integration-based standards -- from the perspectives of both accuracy and ease of applicability -- is significantly affected by the breadth of their definition.

要約して言えば、統合に基礎を置いた基準の有用性は―正確さと、適用の容易さという観点からは―それらの定義の広さによって影響を受けるということは重要である。

Some efficiencies may be captured only by a standard broad enough to cover coordination of functions and operations through "contract integrations," and this tends to complicate the standard's application.

「契約の統合」を通じて機能や活動の連携をカバーする程に広い基準を設定することによる場合にだけ、効率性はとらえることが出来る可能性がある。

In contrast, all but the broadest formulations of the "integration" touchstone appear well-designed to exclude the types of cost-savings that antitrust law generally has not recognized.

それとは全く反対に、「統合」の手本となる事態の最も広い意味の定式化によってだけ、反トラスト法が一般には認識してこなかった種類の費用の節約を排除するように適切に設計されたように見える。

4. Closeness of the Restraint to the Competitive Benefits

競争による利益のための規制であること

Under either an "effects-based" or an "ancillary restraints" analysis, there must be a sufficiently close connection between the challenged conduct and the asserted competitive benefits.

「効果に基礎を置いた」分析あるいは「補助的規制」の分析のどちらによっても、提訴されている行為と、主張されている競争上の利益との間には密接な関係が十分に存在しなければならない。

Courts and analysts sometimes ask, on the one hand, whether the suspect conduct "relates to" or "contributes to" a benefit, or, on the other hand, whether the conduct is "reasonably necessary" or "necessary" for achieving the benefit.

裁判所も学説も、一方では疑われている行為が利益と「関連があり」あるいは利益に「貢献している」かどうかを審理している場合が多い。また他方ではある行為が利益を上げるために「必要な理由があるか」あるいは「必要であるか」どうかを審理している。

These articulations require varying degrees of rigor.

これらの定式化は正確さは様々な程度が要求される。

A "relationship" test might be satisfied even by a tangential connection.

「関係」のテストは、関係がほとんどない場合でさえも満たされる場合がある。

For example, an unabashed advocate might see a relationship between a research joint venture among automobile manufacturers to develop improved hubcaps and an agreement allocating markets for their automobiles, thereby better aligning the incentives of the joint venturers.

例えば、ホイールキャップを改善し、産業を発展させるために、自動車製造業者の間で共同事業を探求することと、自動車の市場において市場割当の合意を行うことの間に、関係を手放しの賛成者はみつけるのであり、共同の事業を行う動機が調和されていることはよいことであるとするであろう。

Clearly, however, that relationship is extremely tenuous.

しかしながら、その関係は非常に薄いことは明白である。

Requiring that the challenged conduct "contribute to" producing an efficiency would seem to suggest need for a more functionally meaningful connection.

提訴されている行為が効率性を達成することに「貢献して」いることを要求することはもっとより機能的な意味のある関係を必要性を提案しているように思われる。

Maricopa, for instance, involved a restraint that related and contributed to a competitive benefit, in that the maximum fee schedule agreed to by physicians permitted a binding assurance of complete insurance coverage for a specified premium.

マリコパ事件は競争上の利益に関係し、貢献している競争制限を含んでいたが、その事件では特別な保険料によって完全な保険でカバーする合同での保険が医者によって許されているような最高価格の料金が合意されていた。

Historically, however, "contribute to" sometimes has been treated as equivalent to "relate to."(89)

だが歴史的には、「貢献している」ことは「関係がある」として取り扱われてきたことが多かった。

"Necessity" clearly requires something more.

「必要性」とは明らかにそれ以上を要求している。

It introduces the concept of less anticompetitive alternatives: the suspect conduct is not necessary when the same goal can be accomplished by other means.

「必要性」とはもっとより反競争的ではない代替物という概念を含んでおり、疑惑を持たれている行為が他の手段によっても同じ目的が達成されることが出来る場合には、その行為は必要ではない。

A requirement framed in terms of "reasonable necessity" might temper the "necessity" inquiry.

「理由が是認されるほどに必要がある」という言葉を構成する場合には、その要請は「必要性」の審理ということに和らげることが出来る。

The Supreme Court has tended to speak in terms of necessity, without expressly explaining its rationale for that choice.

最高裁判所はその競争制限を選ぶための理由を説明して表現することをしないで、必要性という熟語を使う傾向があった。

Thus, the Court concluded in Maricopa that the maximum price fixing by physicians was unnecessary for achieving the asserted benefits:

裁判所はマリコパ事件において、医者による最高報酬の固定は主張されている利益の達成のためには必要ではないと結論付けている。

Even if a fee schedule is therefore desirable, it is not necessary that the doctors do the price fixing. . . . [I]nsurers are capable not only of fixing maximum reimbursable prices but also of obtaining binding agreements with providers guaranteeing the insured full reimbursement of a participating provider's fee. . . . [N]othing in the record even arguably supports the conclusion that this type of insurance program could not function if the fee schedules were set in a different way.(90)

たとえもし報酬の計画がそのような理由で望ましいものであったとしても、それは必ずしも医者が価格固定を行う必要があるとはいえない・・・。保険者は最大の回収可能な価格に固定することが可能であるばかりではなく、供給に参加している企業の費用を回収をじゅうぶんに行うことが保険されることが保証されるという供給者との拘束力のある契約に合意をえることもまた可能である。・・・・本件記録を見る限りでは料金の計画がもし間違った方向に向かうならば、このような種類の保険の計画は機能しなくなるという結論を支持できないという議論になる。

BMI also looked to "necessity," with the Court determining that a blanket license was "an obvious necessity"if thousands of individual negotiations were to be avoided and that "a bulk license of some type is a necessary consequence of the integration necessary to achieve these efficiencies, and a necessary consequence of an aggregate license is that its price must be established."(91)

また、もし何千という個人個人との交渉が省略することが出来、「ある種の膨大な許可にはこれらの効率性を確保するためには統一が必要であることが、必要性から来る帰結であるのであるからその結果許可を統一することが必要性からくる帰結であるということはその価格が決定されなくてはならない」ということになるのであるならばとしてBMI事件では裁判所は包括許可は「明白な必要性」があるとして「必要性」に言及している

NCAA also employed "necessity" language in rejecting per se treatment

for "an industry in which horizontal restraints on competition are essential if the product is to be available at all," but did not actually use a "necessity" test.(92)

またNCAA事件では当然に違法の取扱を否定するために「もしもその製品が少しでも利用可能であるのならば、水平的な競争制限が品質的である一つの産業」のために「必要性」という言語を採用したが、しかし現実には「必要性」の検証を使用していない。

Lower court treatment has been mixed.

下級裁判所の取扱は混合したものであった。

Addyston Pipe, the seminal opinion on the topic, employed a necessity standard.

アディストンパイプ事件は、この問題についての影響力のある意見では、必要性の基準を採用した。

It observed that at common law, restraints of trade were void unless "merely ancillary to the main purpose of a lawful contract, and necessary to protect the covenantee in the enjoyment of the legitimate fruits of the contract, or to protect him from the dangers of an unjust use of those fruits by the other party."(93)

コモンローにおいては、「合法的な契約の主たる目的に補助となる場合にだけ、また契約の合法的な果実を享受する時に被契約者を守る必要がある場合、また他の当事者によってそれらの果実を不正に使用されることから被契約者を守る必要がある場合にだけ、」取引の制限は無効であった。

Judge Taft explained, "Before such agreements are upheld . . . the court must find that the restraints attempted thereby are reasonably necessary" to legitimate ends and concluded that "if the restraint exceeds the necessity presented by the main purpose of the contract, it is void . . . ."(94)

タフト判事は「そのような合意が支持される前に・・・そこで企画された競争制限が(合法的な目的に)必要なのは合理的であるか、裁判所は判断しなければならない。」と説明して、「契約の主要な目的に表現された必要性を越えた制限であるならば、それは無効である・・・。」と結論付けた。

In contrast, the D.C. Circuit's Rothery opinion reformulated Addyston Pipe as requiring that "the restraint imposed must be related to the efficiency sought to be achieved" and as supporting rule-of-reason treatment when a restraint "is part of an integration of the economic activities of the parties and appears capable of enhancing the group's efficiency."(95)

これとは対照的にアディストンパイプ事件においてロスリー地方裁判所巡回判事が再定式化した意見では、「設定された競争制限は達成されるべき効率性と関連していなければならない」また競争制限が「当事者の経済活動の統一体の部分であり、団体の効率性を高めることが出来るようにみえる」場合にはその競争制限を理由の原理によって判断することを支持した。

This largely converts Addyston Pipe's "necessity" standard into a test that looks to whether the suspect conduct is "related to" or "contributes to" the claimed benefits.(96)

アディストンパイプ事件におけるそれまでを変更したこの「必要性」の基準は疑われている行為が主張されている利益と「関係がある」か、「貢献している」かどうかを見るテストに変更された。

Other appellate decisions apply a mixture of necessity and relationship/contribution standards.(97)

他の控訴審の決定は、必要性と、関係性・貢献度とを混合した基準を適用した。

The polar formulations -- "necessity" versus mere "relationship" -- pose well-defined, but difficult, policy choices.

「必要性」対単なる「関係」の正反対の定式化は、よい定義であるが、難しい政策の選択を提示した。 

The more stringent "necessity" standard subjects more cases to summary condemnation under the per se standard, and fewer cases to the more searching inquiry of the rule of reason.

もっと厳しい「必要性」の基準によれば、もっと多くの事件が当然に違法の基準の下における略式の違法の判断へと導かれる、ほとんどどのような事件も理由の原理の審理で調べられることはなくなる。

For example, Topco's per se condemnation of a restraint preventing the sale of Topco-brand products outside designated territories has often been questioned for failing to give recognition to potential benefits in developing private labels needed for interbrand competition with larger chains.(98)

トプコ事件においては、例えば、トプコブランドの製品の販売を指定された地域以外では妨害する競争制限に対しての当然に違法の判断は、しばしばより大きなチェーンとのブランド間の競争に必要とされている私的なラベルの展開に潜在的な利益を認識していないとしてしばしば疑問視されてきた。

Some commentators have suggested, however, that even given these efficiencies, per se treatment would still have been justified under a necessity standard on grounds that the benefits could have been achieved in less anticompetitive ways, such as through primary responsibility arrangements.(99)

しかし、例えこのような効率性が与えられているとしても、なお当然に違法の判断は必要な基準が満たされれば、正当化されるべきであった。なぜなら、原始的な責任の協定などを通じて、もっと競争制限的ではない方法で利益は達成できたはずであるからである。

We return to these issues infra in Section IV.B.2.

以下IV.B.2.章においてこれらの問題を再検討する。

5. Connection of the Restraint to the Joint Venture or to the Competitive Benefits

  競争制限の共同の事業との関連、あるいは、競争制限の競争による利益との関連

The elements explored individually above frame a core issue in joint venture analysis: is it sufficient to avoid per se prohibitions that a restraint be part of a legitimate, efficiency-enhancing joint venture, or must the restraint be suitably connected to the joint venture's competitive benefits?

共同の事業の分析において、ある競争制限が合法的で、効率性を上昇させる共同の事業であるので、当然に違法の違反の適用から外すのにじゅうぶんであるのか、あるいは、その競争制限が共同の事業の競争上の利益に関係があることが適切であるべきかなどが、上記の構造を中心問題として個別的に検討された。

The Supreme Court has suggested two different answers.

最高裁判所は二つの相違する答えを用意した。

On one hand, NCAA rejected per se treatment not because the telecast restraints generated competitive benefits, but rather because they were connected to an essential joint venture.

一方ではNCAA事件ではテレビ放送の競争制限が競争上の利益をもたらしたからという理由からではなくて、むしろ本質的に共同での事業と関連しているからという理由から当然に違法の判断を否定したのである。

Explaining its ruling, the Court stated, "[W]hat is critical is that this case involves an industry in which horizontal restraints on competition are essential if the product is to be available at all."

その判決を説明して、裁判所は「決定的に重要な意味を持つのは、製品を利用できるようにするためには、水平的競争制限が本質的であるような産業をこの事件は取り扱っているということである。」と述べる。

468 U.S. at 101.

468頁U.S. at 101.

According to the Court, the NCAA imposed essential restraints by setting rules of athletic competition and standards for preserving the amateur character of college football.(100)

裁判所によれば、NCAAは体育の競争のルールを決め、大学のフットボールのアマチュア的な性格を保護する基準をつくることにより、実質的に競争制限を行った。

However, a determination that some restraints on competition are essential for the product to be available at all is not the same as a determination that these restraints on competition were essential.

しかし競争の何らかの制限が製品の利用にとっては必須であるという判断と、競争の制限が必須であるとの判断とは同じではない。

Rules fixing the output and price of college football telecasts were neither necessary for nor related to achieving the cited benefits.(101)

 生産量と大学のフットボールのテレビ放送の価格を固定するという規則の制定はこれまで述べた利益を達成することのために必要でもないし、関連もしていない。

In essence the NCAA opinion rejected per se status when a restraint was related to the joint venture and the joint venture was essential for a competitive benefit, notwithstanding that the restraint was unrelated to the benefit.

本質的にはNCAAの意見は当然に違法の立場ではないが、競争制限が共同の事業に関係し、共同の事業がその競争制限が利益と関連性がないにもかかわらず、競争による利益が本質的であるとした。

The analysis would not have satisfied an effects-based test or an ancillary restraints test framed in terms of relationship to or necessity for achieving an efficiency.

この分析は効果に基礎を置いた審理を満足させているのでもないし、効率性を達成することに関係しているという条件か、あるいは、効率性を達成するために必要であるという条件から構成されている補助的規制の審理を満足させている訳ではない。

Only an ancillary restraints test requiring that restraints be related to an efficiency-enhancing integration might have been satisfied.(102)

競争制限が効率性を高めるという統合性と関連があるかを審理するという競争制限の補助性の審理によってのみ満足がいくものになるであろう。

On the other hand, the Court in Northwest Wholesale Stationers ruled that the likely efficiencies of the wholesale purchasing cooperative were not dispositive and cast its analysis instead in terms of the likely effects of the specific restraint at issue:

それとは逆に卸売の購買協同組合の効率性の可能性は、任意的な方針決定ではなくて、逆に問題となっている特別な競争制限の予測される効果の分析に待たねばならないとしている:

[Plaintiff] Pacific, of course, does not object to the existence of the cooperative arrangement, but rather raises an antitrust challenge to Northwest's decision to bar Pacific from continued membership. It is therefore the action of expulsion that must be evaluated to determine whether per se treatment is appropriate.(103)

もちろん、原告パシフィックは、協同組合の協定の存在に反対しているのではなくて、パシフィックが会員権を維持することを否定するノースウエストの決定に反トラスト法による提訴しただけである。したがって、この排除の行為が適切であるのか、当然に違法な行為であるのどうか判断することだけが価値判断されなくてはならない。

Similarly, BMI was careful to connect the price restraint to its efficiencies: "a bulk license of some type is a necessary consequence of the integration necessary to achieve these efficiencies, and a necessary consequence of an aggregate license is that its price must be established."(104)

同様にして、BMI事件では価格の制限と、その効率性を注意深く結びつけている:「これらの効率性及びを達成するためにはこの種の巨大な許可は必要であり、統合は必要性から来る必然の帰結である、したがって統合された許可という必要な結果は、その結果その価格が設定されなくてはならないということになる」

Some commentators endorse this latter approach and have criticized NCAA.

評釈者にはこの後者の接近法を支持し、NCAA判決を批判するものもある。

They argue that the lack of connection between the output/price restraints and the specified justifications should have resulted in application of the per se rule.(105)

生産量と価格の制限と、そして競争制限の個別個別の正当化とがつながっていないので当然に違法の原理を適用する結果にいたるべきであったと論じている。

The criticism has some merit: according rule of reason treatment to every restraint associated with a legitimate joint venture could cut a broad swath through the per se rule's coverage and open the door wide for abuses.

批判はある種のメリットがある:合法的な共同の事業と関係があるすべての競争制限を理由原則による判断によることを許容することは、当然に違法の原理のカバーするところをメチャメチャに壊す可能性があり、そのことによって不正使用に広くドアを開け放す可能性がある。

Assuming that the per se rule rests on valid "generalizations" about the social utility of certain types of conduct,(106) departing from those generalizations without inquiring whether a restraint yields any benefit may detract from the rule's effectiveness.

当然違法の原則とはある種のタイプの行為の社会的な効用についての「一般化」が価値があるかどうかにかかっていると推測するならば、ある制限が何らかの利益を生み出すかどうかについて調査することなしに、そのような一般化を行うことから離れれば、その原則の効果を損なわれる。

In any case, the alternatives may not be as disparate as they appear.

とにもかくにも、それぞれの選択肢は一見したほどには本質的に異なっていないかもしれない。

Although the Supreme Court in NCAA rejected per se treatment, it did not then subject the matter to full rule-of-reason review.

NCAA事件においては、最高裁判所は当然違法の取扱をしなかったけれども、それだからといって完全な合理性の基準に委ねた訳ではない。

別注:差止の性格について、学者間に違いがあるので、アメリカの場合を更に引用する。

129ページの命令的差止の前は次のような文章である。

United States v. W.T. Grant Co., 345 U.S. 629, 633 (1953). Where a violation has been founded on systematic wrongdoing, rather than on isolated occurrence or event, the Seventh Circuit has observed that a court should be more inclined to issue an injunction.違反が単に一回だけの発生であったり、事件であったりすのではなく、組織的な違反行為を行っている時、第7回巡回裁判所は裁判所は差止を行う傾向があるべきであると見てきた。 Commodity Futures, 591 F2d at 1220.コモディティー・フューチャーズ事件, 591 F2d at 1220. Relief is appropriate against a defendant which retains a financial interest in continuing antitrust violations and/or a position in the market which could enable it to carry out such anticompetitive activity. 競争制限的な違反を継続している時の金銭的な面での利益及び(あるいは)そのような競争制限的な行為を遂行することを可能にするような市場における地位を被告をそのままにしておくのをやめさせるのが正当である時に救済が行われる。Commodity Futures indicates that the defendant's acceptance of blame for its conduct is a factor tending to diminish the necessity of injunctive relief. コモディティー・フューチャーズ事件によれば、違反の行為に対して被告が責任を認めたことによって差止の救済の必要性が減少したその傾向の一つの要因になっていることがわかる。Conversely, lack of contrition would also have some relevance. これとは全く逆に改悛していないことというのもまた関連性を持っているだろう。The plaintiffs urge that a court, once it has found a violation of the antitrust laws, has "the duty to compel action by the conspirators that will, so for as practicable, cure the ill effects of the illegal conduct, and assure the public freedom from its continuance." 原告の主張によれば、反トラスト法の違反がひとたび発見された場合には、裁判所は「実際に実行可能な範囲で、共謀者たちによる行為に対して強制を行い、違反行為による悪影響を取り除く義務があり、違反の継続から公衆の自由を守る義務がある」と主張している。United States v. United States Gypsum Co., 340 U.S. 76, 88 (1950). While this is the only case I have found which states that such an injunction is mandatory, there is no question that a court may consider lingering efforts as a factor. As the Supreme Court stated in International Salt Co. v. United States, 332 U.S. 392, 400-01 (1947):

給付判決 [きゅうふはんけつ] /judgment ordering a performance/の概念

差止める [さしとめる] /enjoin/prohibit/forbid/ban/

差止命令 [さしとめめいれい] /injunction/cease and desist order (Anti-Monopoly Law)/

ドイツ法では、prohibit禁止と、injunction差止は別の概念であり、

32条は、カルテル庁は行為を禁止することができる(The cartel authority may prohibit conduct)

33条は、私人が他人に行為をしないように義務付けること(shall be obliged vis-a-vis the other to refrain from such conduct)が差止であると

知的所有権においては

Right to request exclusion and remedy for infringement

違反に対して排除や、救済を要求する権利

wherever and to the extent deemed practical in light of the nature of such rights

そのような権利の性格に照らして現実性があると考えられる場合と、その程度に

の文言が見られる。

to very carefully read the current AMA Judicial Council Opinions to realize that there has been a change in the treatment of chiropractors and the court cannot assume that members of the AMA pore over these opinions*, and finally, the systematic, long-term wrongdoing and the long-term intent to destroy a licensed profession suggests that an injunction is appropriate in this case. When all of these factors are considered in the context of this "private attorney general" antitrust suit, a proper exercise of the court's discretion permits, and in my judgment requires, an injunction. (Opinion pp. 11). Evidence in the case demonstrated that the AMA knew of scientific studies implying that chiropractic care was twice as effective cis medical care in relieving many painful conditions of the neck and back as well as related musculoskeletal problems. The court concluded: There also was some evidence before the Committee that chiropractic was effective - more effective than the medical profession in treating certain kinds of problems such as workmen's back injuries.

訴えの利益については

原告が被告に対して一定の行為の差止を請求する訴訟において、その行為の差止が原告に利益をもたらすものであれば、訴えの利益が原則として肯定される。

次のような事例がある。

第6章78 侵害者に対する民事上の救済とは(1)差止請求権とは

 「書籍の本文において、著作権者には、いまだ侵害行為が開始されていない場合にも、事前にすでに着手された準備行為を停止し、準備行為で用意された機器などを廃棄するよう請求する「侵害予防請求権」が与えられている、という説明を行いました。

 ところで、さらに一歩進んで、いまだ著作物が完成していない段階で、将来完成する著作物に対して発生するであろう著作権侵害行為に対し、これを差止める権利というものが認められるのでしょうか。「侵害予防請求権」というものは、あくまでもすでに存在している著作物に対して、侵害行為はまだ存在していないものの、その準備行為が開始された場合に、事前にその準備段階でその準備行為を差止るというものであり、いまだ存在していない著作物に対する保護というものを考えて規定されているものではありません。

 しかし、裁判所は、こうした「将来の著作物に対する侵害行為差止請求権」という権利を認めています。これをちょっと紹介しておきましょう。」

 これによれば、地価公示、地価調査の割当を行い、将来固定資産税の標準宅地の鑑定評価を受注しようと準備する行為は、独占禁止法違反による侵害準備行為に当たるか。

 「すでに第2章27でウォール・ストリート事件という事件を説明しましたが、ここでは、ダウ・ジョーンズ社(DJ)は、同社が将来発行するThe Wall Street Journal(WSJ)についてもノウハウ・ジャパン社(KJ)が編集著作権を侵害する可能性が高いとして、DJが将来発行するWSJ(いまだ著作物として存在していないもの)に対して編集著作権を侵害しないように命令するよう裁判所に求めました。

 その理由は、次の通りです。

 将来発行されるであろうWSJについてもKJにより同様の侵害行為がなされる蓋然性は極めて高く、この侵害行為に対する差止めが認められないとDJは既に発行された分についてのみ日々差止請求訴訟を提起せざるを得ないという不合理な事態に陥るから、将来成立する高度の蓋然性を有する著作権に基づいて、これに対する将来の侵害行為の差止めが認められる必要がある。

 これに対して、DJは、以下のように反論しました。

 これは人間精神の所産である著作物を現に生み出したことにより、これに対する報償として与えられる著作権を、未だ生み出されていない段階で認めるものであり、著作権法の基本を覆すものである。著作物の存在しない、その内容さえわからない段階で著作物としての保護が与えられる等、著作権法上考えられないことである。小説のような著作物の内容が作者の頭の中にあるだけでは保護の対象とならないことはいうまでもないが、まして本件の場合には、将来の新聞の紙面がどのようなものになるかは誰にも将来発行しようとする者にも、分からないのであり、いわば作者の頭の中にすら著作物の内容が存在しないのであるから、将来発行されるWSJについての編集著作権に基づく差止請求は全く理由がないというべきである。 

 以上の当事者の主張に対して、裁判所は、以下のように判断しました。

 

 (1)  著作権法112条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害の予防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場合は、たとえ侵害行為自体は未だなされていない段階においても、予測される侵害に対する予防を請求することができることはいうまでもない。また民事訴訟法226条は、必要性がある場合には将来の給付を求める訴えをすることができると規定しているから、日刊新聞のように、短い間隔で定期的に継続反復して発行される著作物について、これまで著作権侵害行為がその発行毎になされてきた等の事情から、将来も発行予定の著作物に対する同種侵害行為が予想され、しかも発行による著作権の発生を待っていては実質的に権利救済が図れない場合には、将来の給付請求として、著作物が発行されることを条件として、予測される侵害行為に対する予防を請求することができると解するのが相当である。

 

 (2)  編集著作物であるWSJは今後も確実に継続して発行され、したがって、DJにおいて、今後発行するWSJについて、これまでと同様の編集著作権を確実に取得するということができる。

 また、KJは、将来WSJが発行される毎に、これに依拠してこれまでと同様の文書を作成・頒布して編集著作権侵害行為を行うであろうことも確実であると認められる。

 更に、WSJは日々発行される日刊新聞であり、これに対応するKJの文書はその発行後直ちに作成され頒布されるというのであるから、DJにおいて、WSJを発行する都度、対応するKJの文書の作成・頒布の予防ないし停止を請求することは、事実上極めて困難であるといわざるをえない。したがって、WSJを現に発行するまで編集著作権に基づく予防請求をなしえないとするのはDJの編集著作権の保護に欠けるというべきである。

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第6章78 侵害者に対する民事上の救済とは(1)差止請求権とは(全文)

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著作権仮処分異議事件

東京地裁平成三年(モ)第六三一〇号

平成5年8月30日判決

判  決

アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク・リバティーストリート二〇〇 ワールド・ファイナンシャル・センター

債権者 ダウ・ジョーンズ・アンド・カンパニー・インク

右代表者 ピーター・アール・カン

右訴訟代理人弁護士 内田晴康

右訴訟復代理人弁護士 末吉亙

同 桑原聡子

東京都渋谷区神南一丁目一四番二号

債務者 株式会社ノウハウ ジャパン

右代表者代表取締役 海江田三郎

右訴訟代理人弁護士 内田実

同 椙山敬士

主  文

一  債権者と債務者間の東京地方裁判所平成二年ヨ第二五五〇号著作権仮処分事件について、当裁判所が平成三年九月二四日にした仮処分決定を、別紙(1)のとおり、変更する

二  訴訟費用は債務者の負担とする。

事  実

第一 債務者の申立ての趣旨

一  債権者と債務者間の東京地方裁判所平成二年(ヨ)第二五五〇号著作権仮処分事件について、当裁判所が平成三年九月二四日にした仮処分決定を取り消す。

二  債権者の本件仮処分申立てを却下する。

三  訴訟費用は債権者の負担とする。

第二 事案の概要

一  本件は、米国において英語の日刊新聞「THE WALL STREET JOURNAL」(債権者新聞)を発行する債権者が、日本において「全記事抄訳サービス」と称して、右新聞の記事を抄訳した文書(債務者文書)を作成・頒布する債務者に対し、債務者文書の作成・頒布は債権者の右新聞について有する編集著作権を侵害するものであるとして、その作成・頒布の差止めの仮処分を申し立てたところ、これを認容する仮処分決定(本件仮処分命令)がなされたため、その取消し等を求めた仮処分異議事件である。

二 債権者の主張

  1  債権者がこれまで発行してきた債権者新聞、及び将来発行する債権者新聞は、いずれも編集著作物である。

(一)  債権者の発行する債権者新聞は、特定の日付けの紙面全体が、素材の選択及び配列に創作性のある編集著作物である。

 債権者新聞は、世界中で生起するさまざまな出来事(素材)の中から、経済ニュースを中心に、報道する価値の認め得るものが選択され、更に内容及び重要度の分析に基づき、速報性の高い経済ニュース、速報性の低い経済ニュース、特集記事、国際ニュース、政治ニュース、レジャー関連記事、社説、投資情報、相場表などのカテゴリーに分類され、その分類に従って、紙面に割り付けがなされるから、特定の日付けの新聞紙面全体として編集著作物に該当することが明らかである。

(二)  将来発行される債権者新聞も、編集著作物となるものである。

 債権者は、一八八九年以来、組織を整備拡充し、世界的規模でニュースソースを収集しこれを的確に伝達できるための体制を構築しつつ、継続して債権者新聞を発行してきたのであり、将来もこれを継続するものである。したがって、債権者新聞が、将来においても反復継続して発行される蓋然性は極めて高い。そして、債権者が、これまで確立してきた記事の収集、選択及び配列の手法に依拠し、債権者新聞を発行する限り、素材の選択及び配列に創作性のない紙面ができることなどありえないから、将来発行される債権者新聞も全体について編集著作物性を当然有するものである。

(三)  右のとおり、債権者がこれまで発行してきた債権者新聞、また将来発行するであろう債権者新聞は、いずれも編集著作物に該当するものである。

2  これまで発行してきた、また将来発行するであろう債権者新聞の編集著作権は、債権者の発意に基づき、その従業員が職務上作成し、債権者の名義のもとに公表するものであるから、債権者に帰属するものである。

3  債務者は、債権者が編集著作権を有する債権者新聞を勝手に翻案し、その編集著作権を侵害している。

(一)  債務者は、特定の日付けの債権者新聞のほとんど全ての文章記事について、その一部又は全部を翻訳し、また要約し、これを債権者新聞の紙面における記事の割付順序とほとんど一致するように配列し、当該日付けの記事が一覧することができる債務者文書を作成している。

(二)  かかる債務者の行為は、債権者新聞の文章記事を利用して文書を作成している点において債権者新聞における素材の選択の創作性を利用するものであり、また債権者新聞の記事の分類に従って記事の分類のための表題まで付して配列している点において債権者新聞における素材の配列の創作性を利用するものであるから、編集著作権の侵害に該当することは明らかである。

(三)  かかる債務者の著作権侵害行為は将来も継続して行われる蓋然性が極めて高い。債務者は、これまで四年以上にわたって、全ての発行日の債権者新聞について、その素材の選択及び配列の創作性を利用する行為を反復継続してきており、今後も継続する意向を表明しているから、債権者が将来発行するであろう債権者新聞についても同様に編集著作権侵害行為をする蓋然性が極めて高いというべきである。

4 保全の必要性

(一)  債務者の前記侵害行為は、債権者の従業員である記者及び編集担当者の汗の結晶として集大成された編集著作物である新聞の価値を、翻訳家を雇って抄訳等をさせ、これをワードプロセッサーで打ち込んでファクシミリで送付するという極めて安易な方法によるものであり、かかる行為が放置されるならば、新聞業界全体に大きな影響を与えることになる。

(二)  債務者は、債権者からの昭和六三年四月頃からの再三の中止の申入れにもかかわらず、侵害行為を止めない。

(三)  また将来発行されるであろう債権者新聞についても債務者により同様の侵害行為がなされる蓋然性は極めて高く、この侵害行為に対する差止めが認められないと債権者は既に発行された分についてのみ日々差止請求訴訟を提起せざるを得ないという不合理な事態に陥るから、将来成立する高度の蓋然性を有する著作権に基づいて、これに対する将来の侵害行為の差止めが認められる必要がある。

三 債務者の主張

  1  

(一)  憲法二一条の表現の自由は、今日においては、単に情報の発信の自由であるだけでなく、情報の受け手の知る権利をも保障するものであり、特に時事に関する情報の流通は民主制にとって不可欠である。情報の自由な流通に関する制約の一つとして著作権制度があり、著作者に対し創作への報償として一定の権利を付与するが、情報の過度の独占は文化の発展を阻害するものであるから、著作権法の目的は、創作への報償と情報の自由流通の間に適切なバランスを取ることにある。

(二)  事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は言語の著作物に該当しない旨を規定した著作権法一〇条二項は、情報ことに時事に関する情報は民主制の基盤として最も重要なものであるから、このような憲法の表現の自由に由来する重大な要請のために著作権は一定程度道を譲るべきことを宣言した規定と解すべきである。

(三)  ECのデータベースの保護に関する指令案によると、要旨や要約であっても、原著作物自体を代替しなければ、許諾なしで、データベースに編入しうることを認めておりこの考え方は、電子的手段によらない編集物についても当然適用できるものである。すなわち、電子的編集物は非電子的編集物に比べ記憶容量が大きく、利用も迅速、容易、広範であり、素材の提供者に対する影響も格段に大きいのであるから、このような電子的編集物への編入が許容される以上、原著作物自体を代替しないという条件を満たす限り、電子的編集物より弱い編集物である非電子的編集物への編入は勿論解釈として許容されるのである。そして、このデータベース又は非電子的編集物に編入される著作物は、個別の著作物に限られず、編集著作物も含まれるのであり、またこの編入される編集著作物の素材が要旨で代替しえない以上、編集著作物自体も代替しえないと考えるべきである。編集著作物が代替されるのは、素材が代替される場合だけである。

 本件において、債権者新聞の各記事に対応する債務者文書の各記述は最小限の要旨であり、これにより債権者新聞の個々の記事についても、全体についても代替しうるものでないから、これらを非電子的編集物である債務者文書に編入することは当然許容されるものである。

(四)  編集著作物は、与えられた素材を選択・配列するという、それ自体では創作性の発揮しにくい行為を根拠とするから、その保護も弱くならざるをえない。

 本件において、一日分の新聞の編集著作権を考えるについては、個々の記事を既存の所与の素材として考えなければならないし、素材の選択・配列行為があっただけでは足りずこれに創作性がなければならないものである。素材の選択・配列行為は、元来従属的で創作性を発揮しにくいものであるから、安易に著作物性が認められてはならないし、仮に編集著作物性が認められる場合であっても強い保護を認めるべきではない。そして、新聞においては、素材の特性から、事実自体の独占につながらないように格別の配慮が必要である。

(五)  編集著作権は特定レベルの素材を前提に、その選択・配列の創作性によってかろうじて成立する微妙な権利である。素材の表現が異なれば、素材に依存する編集著作物の表現も異ならざるを得ない。素材の表現レベルを無視し抽象的な選択・配列だけを取り上げて、編集著作物の表現を問擬することは誤りである。

 本件においては、言語表現としての素材のレベルは全く異なっており、債権者新聞の各記事とこれに対応する債務者文書における文章とは、複製や翻案という著作権侵害関係に立たない。このような場合には、編集物全体としての表現も全く異なるものであるから、編集著作権の侵害関係には立たないというべきである。

(六)  債権者は、将来にわたり発行される債権者新聞についての編集著作権に基づく差止めを求めている。これは人間精神の所産である著作物を現に生み出したことにより、これに対する報償として与えられる著作権を、未だ生み出されていない段階で認めるものであり、著作権法の基本を覆すものである。著作物の存在しない、その内容さえわからない段階で著作物としての保護が与えられる等、著作権法上考えられないことである。小説のような著作物の内容が作者の頭の中にあるだけでは保護の対象とならないことはいうまでもないが、まして本件の場合には、将来の新聞の紙面がどのようなものになるかは誰にも将来発行しようとする者にも、分からないのであり、いわば作者の頭の中にすら著作物の内容が存在しないのであるから、将来発行される債権者新聞についての編集著作権に基づく差止請求は全く理由がないというべきである。

(七)  債務者は、予備的に、次のとおり、債務者文書が公正利用として許容される旨を主張する。

 著作権法は、一条において、著作権法の目的につき「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ」と規定し、また三〇条以下において、教育目的その他異なる文化、社会的な価値がある場合に、一定の条件下で定型的に著作権が制限されることを規定しているので、これらの規定を合わせ考えれば、我が国においても公正利用の法理が認められるべきである。 本件において、具体的に分析検討すると、次のとおりであるから、債務者文書は、少なくとも公正利用として許容される。

(1)  本件での使用目的は、日本人読者が債権者の報道するニュースへのアクセスを可能にするため、要旨又はそれ以下の情報を記載することにあるから、商業性はあるけれども、公共的意義もあるのである。

(2)  債権者新聞は、ニュース報道を主目的とした新聞であるから、民主社会にいては公共的使命を帯びたものであり、情報の自由流通という重大な要請を有している。

(3)  債権者新聞と債務者文書を比較すると、債務者文書は債権者新聞の僅か一・二パーセントしか使用しておらず、量的に僅少である。

(4)  債権者新聞は、日本人読者にとっては、よほどの語学力と時間がなければ読みこなすことは不可能といってよいが、債務者文書により、債権者新聞の記事の検索が短時間で可能となり、これがより身近なものとなるから、購入者はむしろ増えると考えられ、市場へのマイナス影響はない。

2 本件仮処分命令について

(一)  本件仮処分命令は、債権者の著作物の特定として、何年も続く新聞を指すのか、一日分の新聞を指すのか、一個の記事についての著作物を指すのか、それらの編集著作物を指すのか不明であって、著作物の特定として極めて不十分である。著作権は著作物毎に成立する権利であり、また個々の記事についての著作物とこれらを要素とする編集著作物とは別個であるから、これらの特定が十分になされなければならないのである。

(二)  本件仮処分命令は、作成頒布の差止めの対象の文書として「別紙著作物目録の一の発行日に発行されたものの記事の全部を翻訳し、又は各記事の要約を翻訳したものとして」と表現しているが、この末尾の「ものとして」の言葉は全く意味不明である。本来、作成・頒布の差止めの対象物になるかどうかは客観的に判断されるべきものであり、「全文訳」又は「要約の翻訳」に当たるかどうかは、「全文訳として」又は「要約の翻訳として」表示しているかどうかとは全く関係がない事柄である。また、「として」の表現が販売方法を指すとすれば、著作権法に規定されていない法理を用いていることになり、審理の対象を逸脱しているものである。

(三)  本件仮処分命令は、作成頒布の差止めの対象の文書の特定として「一項目当たり一行ないし三行程度の日本語の記事」と表現しているが、この程度の要旨が著作権を侵害するとするものであれば、従来の学説及び社会慣行に明らかに反している。仮に、実際は要旨の翻訳であっても「要約の翻訳として一ないし三行程度の日本語の記事」にすることがいけないという趣旨であれば、債務者は債務者文書を要約の翻訳として提供しているものではなく、要旨として提供しているものである。 なお、要約が一ないし三行になってしまうのであれば、原文自体の著作物性が否定される。

(四)  本件仮処分命令の「・・・の記事を掲載し、これを・・・その他の項目に分類して配列した文書」という表現も、一ないし三行の記事を掲載すること自体が差し止められているのか、分類・配列したものが対象とされているのか明らかでなく、意味不明である

(五)  本件仮処分命令には何ら理由が付されていない。本件については債務者が正面から争っているにもかかわらず、理由が付されていないため、前記のような主文のあいまいさとあいまって、説得力を欠くだけでなく、裁判の公正さも担保されない。

(六)  本件仮処分命令が出された背景には、債務者が他人の労働の成果にフリーライドしているとの考え方が潜んでいるものと思われる。しかし、債権者は、英語の新聞を発行していただけであり、日本語版を出すとか、日本語の索引を作成する等の便宜を一切提供していないため、多くの日本人にとって債権者の情報の伝達が閉ざされていたところ、債務者は、債権者の提供する情報に対するアクセスを与えたにすぎないものであり、これだけでは債権者の情報は伝達されないし、また債権者の債権者新聞が売れなくなるわけでもない。著作権法が時事報道について特別の規定を設けている意義や法解釈として「要旨」記載が許容されている意義が考慮されなければならない。

3  本件仮処分命令が出されるまでの手続が著しく公正を欠くものである。すなわち、本件は、二年近くの間、審尋期日が重ねられ、最終の審尋期日では、双方の主張が尽きたことが確認されたうえ、「次回期日は追って指定する。口頭弁論を開く可能性もある。」とされたものである。ところが、その後債権者は、三回にわたり主張を追加し、二回にわたり「申請の趣旨」を変更したにもかかわらず、裁判所は、債務者に何らの反論をさせずに最終の申請の趣旨の変更から一週間もたたないうちに本件仮処分命令を出したものであって、このような手続は、著しく公正を欠き、裁判所に対する信頼を損ねるものである。

4  以上のとおりであるから、本件仮処分命令は取り消されるとともに、本件仮処分命令申立ては却下されるべきである。

理  由

  1  疎甲第一ないし第一四号証、第二〇ないし第二八号証、第三〇、第三三、第四七、第四八号証並びに弁論の全趣旨によると、次の事実が認められる。

(一)  債権者は、米国ニューヨーク州に本社を有し、ビジネス専門紙や二〇紙を超える地方新聞を発行し、また各種メディアを使用した情報の提供サービス等を行っている会社であって、一九八七年度には、年間売上高一三億ドル、従業員数九〇〇〇名に及び、またフォーチュン誌の選ぶ五〇〇社ランキング中の二六四位にランクされている。

(二)  債権者の発行する債権者新聞は、一八八九年に創刊されて以来継続して発行され一日の発行部数が二〇〇万部を超える米国最大の日刊紙であって、債権者は、債権者新聞を発行するため、六〇〇名を超える記者及び編集者を取材活動等に従事させている。

 債権者は、従来から、スポーツ記事や犯罪記事のような一般社会記事を掲載しない、情報の背後にある数字や事実を分析し解説することを重視する、できるだけ多くの情報を提供するため写真を使用しない、大字化はしない等の一定の編集方針を堅持し、この編集方針の下に経済記事を中心とした債権者新聞を発行し、多くの国で頒布している。

(三)  債権者の従業員である記者は、電話及び面接取材、記者会見、資料調査等によって情報を収集したうえ、原稿を作成し、担当局長や地方支局長による見直し、添削等のチェックを経て、この原稿を債権者のニューヨークのウォール・ストリート・ジャーナル・ニュース局に送付する。同局では、記者発送コードに従い、国内ニュース、第一面、第二部第一面、海外、金融、収益又は社説等の部署に分けられ、債権者の従業員である各部署のニュース編集者は送られてきた原稿の採否を決定するとともに、正確性、明確性及び体裁のチェックをし、時には原稿を書き直すこともある。

(四)  一日分の債権者新聞は、A2判数十頁で構成され、その中には数百に及ぶ記事、社説、株式相場や先物取引相場等の各種相場表、広告等が掲載され、その中では、原稿に基づいた報道記事、社説が主要な部分を占めている。例えば、債権者新聞の一九八九年九月二八日版(疎甲第八号証)は、A1ないしA26頁、B1ないしB8頁、C1ないしC28頁の合計六二頁で構成され、その中には、一五〇以上の記事・解説が掲載されている 債権者新聞の第一頁の第二、第三段には「What’s Newsー」と題し、その日の主要ニュースが、「Business and Finance」欄と「WorldーWide」欄に分かれて、大半は五行程度に要約されて掲載されている。

(五)  債務者は、昭和六一年九月一日から、「アメリカを読む研究会」との名称で、債権者新聞が発行される毎に、直ちに債権者新聞の記事を抄訳した後記のような債務者文書を作成し、月額三万円及び通信費の会費、又は一〇〇字当たり一〇〇〇円の料金と通信実費などの費用で、これを郵便又はファクシミリで右研究会の会員に送付している。その会員数は、昭和六三年一一月八日現在で二〇名以上に及んでいる。また、債務者は、債務者文書等の作成・送付のサービスについて、「全記事完全抄訳サービス」と称するとともに「全記事完全網羅」「その日の記事が一目瞭然」「取捨選択することなく全記事を細大もらさず取りあげています」との内容の広告を雑誌・新聞に掲載するなどして宣伝している。

(六)  債務者文書は、例えば別紙(2)のような形式で、「ウォール・ストリート・ジャーナル 89年9月28日木曜日」のように、その表題に債権者新聞の名称、日付け及び曜日を取り入れたものであって、特定日付けの債権者新聞に関するものであることが明らかとなっている。

 債務者文書には、特定日付けの債権者新聞の記事の全部又は一部が一行当たり約三四字で一行ないし三行程度の日本語に訳され、「主要経済ニュース」「主要国際ニュース(又は主要一般ニュース)」「フィーチャー」「社説・論評」その他の欄に分かれて記載され債権者新聞に掲載されていない出来事が債務者文書に記載されることはない。

(七)  債務者文書の「主要経済ニュース」の項目には、債権者新聞の「What’sNewsー」の「Business and Finance」欄に掲載された記事のほぼ全てが、「主要国際ニュース(又は主要一般ニュース)」の項目には、債権者新聞の「What’s Newsー」の「WorldーWide」欄に掲載された記事のほぼ全てが、それぞれそのままの順序で、その全部又はその要旨が翻訳されて掲載されている。債務者文書には、債権者新聞の「What’s Newsー」欄に記載されたニュースの詳細記事を除いて、その余の大半の記事(一部の記事については、抄訳されていない)が抄訳され、債権者新聞の当該記事の掲載順と同じ順で記載されている。

(八)  債権者新聞と債務者文書とを対比すると、債務者文書の各項目における文章は一行当たり約三四字で一行ないし三行という短文であるが、その記載内容で示される出来事としては、これに対応する債権者新聞の記事内容で示される出来事と同一である。例えば債権者新聞一九八九年九月二八日版のA一頁第六段からA二〇頁第一・第二段にかけて記載された「OffーLine Among Those Baffled By Technology Are Lots of Stock Analysts」と題する記事は二五〇行余にわたる長文の記事であるが、債務者文書はこれを「当てにならないコンピューター・アナリストーー証券会社の推薦株式が急落するケースが増加」と抄訳しており、極めて短文であるものの、この短文が伝達しようとしている出来事は、債権者新聞の前記記事が伝達しようとした出来事と同一である。

(九)  債務者は、昭和六三年四月頃から債権者より再三著作権侵害を理由とする中止の要請を受けながら、債務者文書の作成・頒布行為を中止せず、殊に平成元年五月には警告書と題する内容証明郵便で中止を求められながら、平成元年一一月二〇日付けで、会員に対し、「著作権上の問題が生じたので、記事の原文コピーサービス及び全訳サービスを中止するが、これに代わるものとして日本語要約サービス(債務者文書の作成・頒布)については引き続き行う」旨を記載した文書を送付している。

2  まず、既に発行された債権者新聞の編集著作権に基づく債務者文書の作成等に対する差止めの可否について、検討する。

(一)  前記認定事実によれば、債権者新聞の紙面は、その新聞社の従業員である記者等が作成する原稿に基づいた報道記事、社説が主要な部分を占め、その他に株式相場、先物取引相場等の各種相場表、広告等によって構成されているところ、債権者新聞のこのような紙面構成は、債権者の従業員である編集担当者の精神的活動の成果の所産であり、また債権者新聞の個性を形づくるものであるから、紙面を構成するこれらの記事、写真、広告等の選択及び配列について創作性があるというべきであり、そしてこのような編集著作権は、債権者新聞を発行する債権者に帰属するというべきである。

(二)  編集著作物である新聞における素材について考えてみる。

 新聞は、社会に生起するさまざまな出来事を素早く広く伝達するための刊行物であり、その製作過程は、前記認定の債権者新聞についての過程で明らかなように、多数の記者が多様な取材・調査活動等により情報を収集して原稿を作成し、編集担当者等による採否・内容等のチェックという過程を経て初めて、債権者新聞の紙面に掲載されるというのであるから、この事実からすると、原稿を作成しながら採用されなかったケースだけでなく、記者が一つの出来事について取材・調査活動を行いながら原稿を作成しなかったケースや何らかの出来事についての情報に接しながら、記者段階で採否を判断し、取材自体を行わないケースも存するであろうことは容易に推認できるものであって、このような製作過程を考慮すると、新聞記事の編集とは、記者の作成した記事原稿という媒体を取捨選択することによって、伝達すべき出来事自体を取捨選択しているものというべきである。そうすると、選択・配列の対象となる素材は、一方では記者の作成した記事原稿そのものであるが、また一方では原稿を媒体として記者が伝達しようとした出来事自体であるということができる。このように出来事自体を著作権法の「素材」と考えることができることは、旧著作権法一四条本文が「数多ノ著作物ヲ適法ニ編輯シタル者ハ著作者ト看做シ其ノ編輯物全体ニ付テノミ著作権ヲ有ス」と規定して、編集の対象が著作物である場合に限って編集著作権の成立を認めたのに対し、現行著作権法がこの規定を改め、「素材」との表現を用いていることからも明らかである。そして、右のように、現行著作権法が「素材」との表現を用いたことにより、単なる事実、データ、用語等の選択・配列についても、創作性があれば、これに編集著作権を認めることができるようになったと考えられるのである。

(三)  前記認定のとおり、債務者文書に記載された各項目はいずれも短文であるものの一つの出来事を伝達するものであり、また債権者新聞に掲載された記事が一つの出来事を伝達するものであることはいうまでもないから、いずれも編集著作物における素材と考えることができるところ、債務者文書の各項目が伝達しようとしている出来事はいずれも債権者新聞の記事に掲載された出来事であり、債権者新聞の記事に掲載されていない出来事が債務者文書に記載されていることはなく、またその配列もほぼ同一であるから、債務者文書が伝達しようとした出来事の選択・配列は、債権者新聞が伝達しようとした出来事の選択・配列とほぼ同一ということができる。そして債務者文書は、その表題自体が債権者新聞の名称、日付け及び曜日を取り入れたものである等債権者新聞に依拠して作成されたものであることは明らかである。したがって、債務者は、債務者文書の作成・頒布行為により、債権者が債権者新聞について有する編集著作権の翻案権を侵害しているというべきである。

3  次に、将来の債務者文書の作成・頒布行為に対する差止めの可否について、検討する

(一)  著作権法一一二条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害の予防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場合は、たとえ侵害行為自体は未だなされていない段階においても、予測される侵害に対する予防を請求することができることはいうまでもなく、また民事訴訟法二二六条は、必要性がある場合には将来の給付を求める訴えをすることができる旨規定し、更には著作権法は著作者等の権利の保護を図ることを目的としているから、これらの規定に鑑みれば、日刊新聞のように、短い間隔で定期的に継続反復して発行される著作物について、これまで著作権侵害行為がその発行毎になされてきた等の事情から、将来も発行予定の著作物に対する同種侵害行為が予想され、しかも発行による著作権の発生を待っていては実質的に権利救済が図れない場合には、将来の給付請求として、右著作物が発行されることを条件として、予測される侵害行為に対する予防を請求することができると解するのが相当である。

(二)  債権者は、年間売上高において一三億ドルに及び、またフォーチュン誌五〇〇社ランキングにおいて二六四位にランクされる等の有力メディア企業であること、債権者の発行する債権者新聞は、一八八九年に創刊され、以来継続して発行されている米国最大の日刊新聞であること、同紙は、従前から一定の編集方針を有し、これを堅持していること等は前記認定のとおりであり、これらの事実によれば、出来事の選択・配列について創作性のある債権者新聞が今後も確実に継続して発行され、したがって、債権者において、今後発行する債権者新聞について、これまでと同様の編集著作権を確実に取得するということができる。

 また、債務者は昭和六一年九月から継続して債務者文書を作成し頒布してきたものであること、債務者は債権者からの中止要請に対し、記事原文コピーサービス等は中止したものの、債務者文書の作成頒布は中止せず、かえって顧客である会員に対し今後もこれを継続する旨を記載した文書を送付していること等の前記認定事実によれば、債務者は、将来債権者新聞が発行される毎に、これに依拠してこれまでと同様の債務者文書を作成・頒布して編集著作権侵害行為を行うであろうことも確実であると認められる。

 更に、前記のとおり、債権者新聞は日々発行される日刊新聞であり、これに対応する債務者文書はその発行後直ちに作成され頒布されるというのであるから、債権者において、債権者新聞を発行する都度、対応する債務者文書の作成・頒布の予防ないし停止を請求すること、そしてその目的を達成することは、事実上極めて困難であるといわざるをえないしたがって、債権者新聞を現に発行するまで編集著作権に基づく予防請求をなしえないとするのは債権者の編集著作権の保護に欠けるというべきである。

(三)  右のとおり、日々発行される債権者新聞について、その発行毎に同種編集著作権侵害行為が反復継続され、今後も同種侵害行為が予想され、しかも債権者新聞が発行されなければ予防請求することができないとするのでは実質的に債権者の編集著作権保護が図れないから、将来の給付請求の必要性があると認められる。また将来債権者新聞が発行されたときには、前記2の場合と同様に、債権者新聞に対応した債務者文書が作成され、債権者の編集著作権が侵害されるおそれがあると認められる。したがって、債権者は、債権者新聞が発行されることを条件として、これに対応した債務者文書の作成・頒布行為の予防を求めることができるというべきである。

 なお、債権者は、将来発生する編集著作権に基づく差止請求権が現時点で既に発生し、これを被保全権利とする旨の主張をしているが、この主張の趣旨は、将来の債務者文書に対する差止めを求める点にあるから、右債権者の主張の中には、将来編集著作権が発生することを条件とし、この編集著作権が現実に発生した段階で生じる差止請求権を被保全権利とする主張も含まれているものと解される。

4  前記認定の諸事実によれば、債務者は、今後引き続き債務者文書の作成・頒布行為を行い、これにより債権者は著しい損害を被るおそれがあると認められるから、保全の必要性があるというべきである。

5  以上のとおりであって、本件仮処分命令は、将来の債務者文書に対する作成・頒布の差止めを何らの条件を付することなく認容した点において相当でないから、その主文を別紙(1)のとおり変更するのが相当である。

二 債務者の主張に対する判断

  1 (債務者の主張1(一)(二)について)

 債務者は、憲法二一条の表現の自由は、情報の受け手の知る権利をも保障するものであり、特に時事に関する情報の流通は民主制にとって不可欠であることから、著作権法は著作者に対し創作への報償として一定の権利を付与するものの、情報の過度の独占は文化の発展を阻害するため、同法は、創作への報償と情報の自由流通の間に適切なバランスを取ることを目的とし、また同法一〇条二項は、このような憲法の表現の自由に由来する重大な要請のために著作権は一定程度道を譲るべきことを宣言した規定と解すべきである旨主張する。

 しかしながら、憲法二一条の表現の自由が、情報の受け手の知る権利をも保障するものであり、特に時事に関する情報の流通は民主制にとって不可欠であることは、債務者の主張するとおりであるが、著作権法一条は、同法の目的について、「この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。」と規定しているのであって、債務者主張のように、創作への報償と情報の自由流通の間に適切なバランスを取ることを目的としていることを規定しているわけではなく、また事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は言語の著作物に該当しない旨を定めた同法一〇条二項も、事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道がそもそも同法二条一項一号にいう「思想又は感情を創作的に表現したもの」に該当しないから保護の対象にならないということを確認的に規定した規定であると解されるのであって、債務者主張のように、表現の自由に由来する重大な要請のために著作権は一定程度道を譲るべきことを宣言した規定であると解することはできない。

 本件において、債務者は、前記のとおり、債権者新聞の個性を形づくる素材の選択・配列を債権者新聞に依拠してこれを模倣した債務者文書を作成し、これを多数の者に商業ベースで頒布していたものであって、このような行為が表現の自由の名を借りて許されるものでないことはいうまでもなく、債務者の前記主張は理由がない。

2 (債務者の主張1(三)について)

 債務者は、原著作物自体を代替しない要旨や要約については許諾なしで、データベースに編入しうることを認める考え方があり、この考え方は電子的手段によらない弱い編集物である本件においても認められるべきであり、本件において、債権者新聞の各記事に対応する債務者文書の各記述は最小限の要旨であり、個々の記事についても、全体についても代替しうるものでないから、本件は許容される旨主張する。

 しかしながら、原著作物自体を代替しない要旨や要約については、原著作物の著作権者の許諾なしでデータベースに編入しうるとの考え方が存在するとしても、それは、そのような要旨や要約が原著作物自体を代替しない以上原著作物の著作権を侵害するものではなく、またこの種のデータベースは、データベースとしての独自の観点から情報の選択又は体系的な構成をし、この点について創作性を有し、他者の編集著作権をも侵害するものではないと考えられるからであって、債務者文書に採用された項目の選択・配列が、債権者新聞の記事の選択・配列に依拠し、ほぼ同一である本件においては、前記のような考え方は相当しないのであって、右債務者の主張は理由がない。

3 (債務者の主張1(四)について)

 債務者は、編集著作物は、与えられた素材を選択・配列するという、それ自体では創作性の発揮しにくい行為を根拠とするから、その保護も弱くならざるをえない、素材の選択配列行為は、元来従属的で創作性を発揮しにくいものであるから、安易に著作物性が認められてはならないし、仮に編集著作物性が認められる場合であっても強い保護を認めるべきではない、新聞においては、素材の特性から、事実自体の独占につながらないように格別の配慮が必要である旨主張する。

 しかしながら、素材を選択・配列することが創作性の発揮しにくい行為であり、その保護も弱くならざるを得ない旨の債務者主張の一般論自体肯定することができない。また、新聞の場合、記者が種々の取材・調査活動で接することのできた多数の出来事のうち、新聞記事として何を取り上げ、どのような形で取り扱うかは、新聞の個性を形づくるものであり、新聞としての創作性を大きく発揮しうるところであるから、創作性の発揮しにくい行為である旨の債務者の主張は到底首肯することができないし、世の中には、一般総合新聞、経済新聞、スポーツ新聞、地方新聞、業界新聞等の多種多様な新聞が存在し、これら各新聞の個性は選択・配列された出来事の相違に基づいたものということができ、このような選択・配列の創作性に所定の保護が与えられるのは当然のことであって、強い保護を認めるべきではない旨の債務者の主張は採用できない。また、何人も、種々の方法をもって事実に接することができるのであるし、また新聞に掲載された個々の記事から事実を抽出して利用することも当然許容されるものであるから、特定の新聞における素材の選択・配列の創作性を保護することが、事実自体の独占につながるとの論も到底理解できないことであって、この点に関する債務者の主張も理由がない。

4 (債務者の主張1(五)について)

 債務者は、編集著作権は特定レベルの素材を前提に、その選択・配列の創作性によってかろうじて成立する微妙な権利であり、素材の表現が異なれば、素材に依存する編集著作物の表現も異ならざるを得ないところ、本件においては、言語表現としての素材のレベルは全く異なり、債権者新聞の各記事とこれに対応する債務者文書における文章とは、複製や翻案という著作権侵害関係に立たないから、編集物全体としての表現も全く異なるものであって、編集著作権の侵害には当たらない旨主張する。

 しかしながら、編集著作権は素材の選択・配列に創作性があることにより成立する権利であるから、編集著作権の侵害の有無を考えるに当たっては、選択・配列の対象となる素材の内容・趣旨が実質的に同一であれば、両素材の具体的表現の相違は考慮する必要はないというべきところ、新聞という編集著作物においては、原稿のみならず、原稿という媒体により伝達される出来事自体も素材として考えることができること、債権者新聞の記事と債務者文書の項目とを対比すれば、両編集物の素材としての出来事の選択・配列に同一又は類似性を認めることができること、債務者文書における出来事の選択・配列が債権者新聞のそれに依拠して作成されたものであること等から、債務者文書の作成・頒布が債権者新聞の編集著作権を侵害するものであることは前記判示のとおりであって、債務者の右主張は理由がない。

5 (債務者の主張1(六)について)

 債務者は、将来発生する編集著作権に基づく差止請求は現行著作権法の解釈上許されないから、将来分の差止請求は許されない旨主張するが、前記判示のとおり、本件においては、将来発生する編集著作権に基づく差止請求が可能であるとするものではなく、将来の給付請求の必要性があるとして、債権者新聞が発行されることを条件に、発行により生じた編集著作権に基づく予防請求を認めたものであるから、債務者の主張は、この限りにおいて理由がない。

6 (債務者の主張1(七)について)

 債務者は、債務者文書の作成・頒布は公正利用の法理により許容される旨主張する。

 一般的に公正利用の法理が認められるかどうかはともかく、本件は、債務者において債権者新聞を無断利用して債務者文書を作成し、これを一か月三万円余の会費、又は一〇〇字当たり一〇〇〇円の料金等の商業ベースで、多数の会員に頒布しているものであり、新聞の個性を形づくる重要な編集著作権を侵害する債務者のこのような行為が公正利用として許容されることは、到底ありえないものであって、債務者の主張は理由がない。

7 (債務者の主張2(一)ないし(四)について)

 債務者は、本件仮処分命令の主文の表現について、種々論難するところ、本件仮処分命令については、前記判示のとおり、変更されたものであるから、債務者の主張は、変更された主文に含まれる限度で理由があり、その余は理由がない。

8 (債務者の主張2(五)について)

 債務者は、本件仮処分命令には何ら理由が付されておらず、裁判の公正が担保されない旨主張するが、本件仮処分命令には「債権者の申請を相当と認め」と記載され、債権者の申請をそのまま認容したことが明らかであるから、本件仮処分命令に違法はなく、この点についての債務者の主張は理由がない。

9 (債務者の主張3について)

 債務者は、最終審尋期日から本件仮処分命令が発令されるまでの間の手続きが不公正である旨主張するが、仮に債務者主張のとおりの経緯であるとしても、本件については、仮処分命令申立てから最終審尋期日まで二年近くの間審尋が続けられたものであって、最終審尋期日以降に債権者から提出された書面に記載された事項は、いずれもそれまで提出された準備書面や疎明資料に表れていたものであり、これに対する債務者の主張・疎明を確認することがなかったとしても、公正を欠くということはできない。

三 結論

 以上のとおり、本件仮処分命令は、別紙(1)のとおり変更することとする。

東京地方裁判所民事第二九部

裁判長裁判官 一宮和夫 裁判官 足立謙三 裁判官 前川高範

別紙(1)

主  文

一  債務者は、別紙文書目録(一)の文書を作成し又はこれを頒布してはならない。

二  債務者は、別紙文書目録(二)の文書を、当該特定日付けの日刊新聞「THE WALL STREET JOURNAL」が発行されることを条件として、作成し又はこれを頒布してはならない。

 

  別紙

文書目録

(一)  ウォール・ストリート・ジャーナルとの名称、特定日付け及び曜日を頭書きし、債権者により昭和六一年九月一日以降本件口頭弁論が終結された平成五年一月二二日までに発行された日刊新聞「THE WALL STREET JOURNAL」(東部版及び西部版並びに各改訂版を含む。但し、広告部分、株価、社債価額、金利、為替レート、商品先物相場、法人の決算報告を数値又は図表で表示した部分及び死亡記事を除く。)の記事の全部又はその大半を一行ないし三行程度の日本語に抄訳し、これらを、番号を付した項目のもとに、右頭書きされた特定日付けの右新聞の紙面構成に対応して、「主要経済ニュース」「主要国際ニュース(又は主要一般ニュース)」「フィーチャー」「社説・論評」その他の欄に分類して配列した文書

(二)  ウォール・ストリート・ジャーナルとの名称、特定日付け及び曜日を頭書きし、債権者により本件口頭弁論が終結された日の翌日である平成五年一月二三日から発行される日刊新聞「THE WALL STREET JOURNAL」(東部版及び西部版並びに各改訂版を含む。但し、広告部分、株価、社債価額、金利、為替レート、商品先物相場、法人の決算報告を数値又は図表で表示した部分及び死亡記事を除く。)の記事の全部又はその大半を一行ないし三行程度の日本語に抄訳し、これらを、番号を付した項目のもとに、右頭書きされた特定日付けの右新聞の紙面構成に対応して、「主要経済ニュース」「主要国際ニュース(又は主要一般ニュース)」「フィーチャー」「社説・論評」その他の欄に分類して配列した文書

別紙(2)〈債務者文書の一部〉

■■ウォール・ストリート・ジャーナル 89年9月28日木曜日■■

アメリカを読む研究会

[1面]

<主要経済ニュース>

A1. IBMの第3四半期及び通年の収益、予想をかなり下回る見込み

A2. ソニー、コロンビア・ピクチャーズ社の買収契約に最終的に合意ー買収金額は日本企業では史上最高の34億ドル

A3. ブラニフ航空がほとんどのルートで航空便を削減ー財政逼迫のためとの憶測を呼ぶ

A4. OPEC石油輸出国機構、生産上限拡大決定ー石油価格引き上げの為の国別割当枠の見直しには合意出来ず

A5. 企業買収家のビルゼリアン氏に4年間の懲役と150万ドルの罰金判決ー不正証券取引等の罪で

A6. 米下院、企業の重役に対する特別手当を奨励する税制条項第89条の廃止を決定

A7. ゴールドマンサックス証券等証券大手4社、証券価格統計販売の為の合弁企業体設立を計画

A8. クラフト・ジェネラル・フーズ社、現社長のマイルズ氏を会長兼最高経営責任者に指名

A9. トヨタ自動車が来年販売の大衆車の価格を最高2.5%引き上げー米市場拡大をねらう

A10. 各国中央銀行の協調介入のなかドル急落ー証券価格はしっかり、債券は不調

A11. ペプシ・コーラ社がカフェイン抜きの清涼飲料水「ペプシAM」を中西部で実験販売

A12. アップル・コンピューター社、日本の半導体企業に対抗するために6月に設立された合弁企業体USメモリーズへ資本参加はせず

A13. サックス・フィフス・アベニュー社のヤコブ会長、同社レバレッジド・バイアウトを計画

平成七年(行ウ)第二六号銚子無線局廃止差止等請求事件

               原告(選定当事者) 栗   原   三   郎

                                    外 一 名

               被       告   日本電信電話株式会社

                                    外 一 名

   平成七年一〇月一一日

                       右被告日本電信電話株式会社

                           訴訟代理人弁護士

                               氏名       略

千葉地方裁判所

   民事第二部 御中

             答  弁  書

第一  「請求の趣旨』に対する答弁

  一 本案前の答弁

     本件訴えをいずれも却下する。

     訴訟費用は原告らの負担とする。

  との判決を求める。

  二 本案の答弁

     原告らの請求をいずれも棄却する。

     訴訟費用は原告らの負担とする。

  との判決を求める。

第二 本案前の主張

  一 権利保護の資格の欠缺

1. 人格権について

  原告らは人格権を根拠として差止めを求めているが、人格権とは一般的・普遍的に人格が専有する個人の生命、身体、自由、名誉等の人格的利益の総称であって、これらの個々の人格的利益が排他性のある権利と構成され、侵害に対して差止請求権が認められるものかは、個別具体的に検討されなくてはならない。

  しかしながら、原告らの主張する「船舶安全航行権」「営業権・通信利用権」「無線従事者として就労する雇用契約上の権利」なるものは個人の人格的利益と密接に関係するとは到底認められないものであるうえ、仮に人格的利益があるとして不法行為における被侵害利益とされる余地があるとしても、法理論的根拠なしにかかる利益に排他性が認められ、差止請求権が肯定されるものではない。

  本件訴訟において原告らの主張する「人格権」なるものは実定法上の根拠を欠くばかりでなく、原告らの主張によってもその内容とするところは明らかになっているとはいえないのであって、原告らの訴えは不適法なものとして却下されなくてはならない

 2. 不法行為について

   原告らは不法行為を理由として本件差止めを求めているが、わが国の法体系において、不法行為は過去の損害を?補するものとして構成されているのであり(民法第七〇九条)、かかる請求自体明文の規定に反するものであって、却下されなくてはならない。

二 権利保護の要件の欠缺

  原告らの請求は、将来の違法な権利侵害に対する救済を求める手段としての予防的差止請求であり、将来の給付の訴えにほかならないから、かかる請求が認められるためには、将来の給付の訴えを提起しうるだけの実体的基礎を有したうえ、あらかじめその請求をなす必要がなければならない。

  そして、原告らは、その主張する差止請求権を基礎づける事実として、「重要通信(遭難通信=SOSを含む)及び通常の無線通信が阻害されて、生命身体の危険に曝されるおそれ」や「緊急通信及び通常通信等海上交通の安全を守る業務に従事できないことによる人間の尊厳たる無線従事者としての誇りを毀損され、かつ無線通信または保守業務に従事する雇用契約上の権利を侵害されるおそれ」などを主張する。しかしながら、原告らの主張する「おそれ」は漠然たるものであり、仮に、原告らの主張する「人格権」なるものに排他性があったとしても、それが現実に侵害されるに至るか否か、またその侵害の程度、侵害行為の違法性の有無等について、原告らの主張は全く不分明である。すなわち、「人格権」侵害の可能性の有無・程度は、GMDSSの普及の程度、GMDSSを装備しない船舶への乗船の蓋然性、仮にかかる船舶に乗船することに高度の危険性が伴うとしても、乗船自体を拒否しうるか否かなど、将来生ずる諸事情やその変動、その他複雑多様な因子によって左右されざるをえない(なお、本件措置に何ら問題が存しないことについては、後に提出する準備書面において述べる)。

 したがって、本件差止の訴えは、権利発生の実体的基礎を有せず、かつ、あらかじめその請求をなす必要も認めがたいものであるから、「将来の給付の訴え」における権利保護の要件を欠くのであって、不適法なものとして却下されなくてはならない。

三  「請求の趣旨」の特定性の欠缺

  原告らは被告日本電信電話株式会社(以下、「会社」という)に対して、「電気通信事業の一部廃止をしてはならない」(第一項)こと、および、「無線通信の運用または保守以外の業務に従事させてはならない」(第二項)こと、の各差止めを求めている。

  しかしながら、「請求の趣旨」第一項柱書前段の「その電報事業に属する銚子無線電報サービスセンタの全面廃止をし、かつ長崎無線電報サービスセンタの中波の運用を廃止するなどして」にいう「など」の内容および同後段の「重要通信(遭難通信、緊急通信、非常通信及び安全通信)につき、中波無線による通信態勢の全面廃止及び短波無線による通信態勢を減少せしめる電気通信事業の一部廃止をしてはならない」にいう「電気通信事業の一部廃止」の内容が特定されていないうえ、同前段と同後段との関係が不明確であり、求める不作為(給付)内容自体の特定に欠けるものである。

 また、「請求の趣旨」第二項についても、「他の業種に配置転換するなどして」にいう「など」の内容が不明確であり、求める不作為(給付)内容自体の特定に欠けるものである。

 さらに、差止請求訴訟は給付訴訟の一つであるところ、給付訴訟は「強制的に請求権の実現をはかる(強制執行を開始しうる)可能性を裁判上つくり出すところにその本来的な機能がある」 (三ケ月章「民事訴訟法(第三版)」弘文堂四五頁)。そして、「強制執行は、債権者の債務者に対する給付請求権を表示した債務名義に基づき、そこに表示された権利を実現するためになされる」のであるから、「付款付債務名義については、付款の内容が明確に表示されていること」(司法研修所編「民事執行」九頁以下)が求められていることはもとより当然であるが、原告らの本件請求は、「GMDSSの機能及び信頼性が確認され、海上の安全確保が確実となるまで」「無線通信が現実に行われなくなるまで」(第一項)、あるいは、「第一項のGMDSS導入による海上の安全確保の確実性が確認されるまでの間及び銚子無線電報サービスセンターとモールス専用船との現実の無線通信が行われている限りは」(第二項)という、いずれも一義的に特定することができない付款(条件)が付されているのであって、強制執行することができないものであるから、かかる請求は「請求の趣旨」の特定に欠けるものである。

  したがって、かかる訴え(第一項、第二項)は、不適法なものとして却下を免れないといわなくてはならない。

四 争訟性の不存在、確認の利益・即時確定の利益の欠缺

  原告らは会社に対して、「電気通信事業法一八条一項による被告郵政大臣の許可を得べき義務があること」(第三項)の確認を求めている。

   しかしながら、かかる請求は単に裁判所に対して電気通信事業法第一八条第一項の法解釈を求めるものにすぎず、およそ具体的争訟性を欠くものである。

 また、同法は、「電気通信事業の公共性にかんがみ」 (同法第一条)、行政主体である国と事業者との間の公法上の法律関係を規律するものであり、同法第一八条第一項もその趣旨に出たものであるから、第三者である原告らが会社に対して、右「義務」の存否の確認を求めることはその利益を欠くものである。

 さらに、確認訴訟にあっては、「法律的地位の不安定を除去するため、確認判決を得ることが適切な手段であることが必要」であり、「確認判決を得てもなお当該紛争が解決されないで残る可能性があるときは、確認の利益は否定される」(三ケ月前掲書六九頁)のであるが、仮に原告らにおいて、会社が「電気通信事業法一八条一項による被告郵政大臣の許可を得べき義務があること」を確認することができたとしても、そのことによって直ちに原告らの法律的地位に影響を及ぼすことはないのである。

 したがって、かかる訴え(第三項)は、争訟性、確認の利益・即時確定の利益のいずれも欠くものであり、不適法なものとして却下されなくてはならない。

第三 本案の答弁

     「請求の原因」に対する答弁および会社の主張は、追って提出する準備書面をもって陳述する。

                                                     以上

第23 適用条文について

これまで述べてきた適用条文は、訂正する。憲法については第22条、独占禁止法については一般指定2項については一般指定1項に変更する。

民事訴訟法では第248条のほか将来の給付の訴えの条文を追加する。

第二審で主張した一般指定1項を維持する。しかし、「独占禁止法と差止・損害賠償」(村上政博著、平成12年6月、商事法務研究会)では31頁において、本件事件の行為は「一般指定1項(共同の取引拒絶)に該当するとともに。不当な取引制限の相互拘束にも該当する(少なくとも該当する場合がある)。」のであるから、被上告人(債務者)が不当な取引制限に該当する由の主張は、訴訟法上の抗弁には該当せず、むしろ請求原因事実の自認にあたると解されるのであるから、本件事件の行為は不当な取引制限の相互拘束にも該当するような一般指定1項(共同の取引拒絶)に該当するという主張に変更する。

第24 差止と差止仮処分

差止についてはクレイトン法第16条の略式判決の概念と似ているので、日本でもこの概念と似た運用がなされるべきである。

upon the execution of proper bond against damages for an injunction improvidently granted and a showing that the danger of irreparable loss or damage is immediate, a preliminary injunction may issue.

差止が認められたことが不当であった時に被告に生ずる損害を担保するために相当なる供託をし、そのうえで回復しがたい損失もしくは損害の危険が差し迫っていることを証明した場合には、予備的差止命令が発せられる。

これに対して差止は、sue for and have injunctive relief, in any court of the United States having jurisdiction over the parties, against threatened loss or damage by a violation of the antitrust laws, including sections 13, 14, 18, and 19 of this titleの言葉を使っている。

threatened loss or damageに対して訴えられる差止訴訟とほぼ同じく、回復しがたい損失あるいは損害の危険性(the danger of irreparable loss or damage)が差し迫っていることの証明が必要である。民事保全法23条2項の「債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険」が認められる仮処分とほぼ同様の定義である。審訊による予備的差止命令と日本の仮処分はほぼ同様の意味を持っているのであるから、本件においても審訊による予備的差止命令におけるアメリカにおける動向を参考にすべきであると考えられる。

この場合には独占禁止法ではいまだ判例が存在しないが、日本でも不正競争防止法では、差止請求等が認められた判例が数多く存在する。同じく営業に関するものであるので、それらを判例として考慮すべきである。これは本案、仮処分共に該当することである。

但し、仮処分においては危険が迫っていることの証明が必要である。

次に回復しがたい著しい損害の証明が必要である。これは損害共に将来にわたるおそれよりも、現在的である。違反が継続している本件事件においては現在も差し迫っていることは明白であり、仮処分が必要であると考えられる。後日本案は提出する。

別注:不正競争防止法では、差止請求等が認められた事例が多く存在する。このことは給付判決としての差止は判例が存在するのであるから、独占禁止法においてはその損害の程度や、質を考慮すれば、準用できるということになる。どちらも営業に関係するものである。

「(株)ミシュランを商号として使用することに対する差止請求等が認められた事例

(東京地方裁判所平成10年3月30日判決)     解説 水谷直樹

1.事件の内容

 原告コンパニー・ゼネラール・デ・ゼタブリマスン・ミシュラン・ミシュラン・エ・コンパニー(以下「原告ミシュラン」という)は,自動車タイヤの製造,販売等を主要な業務とし,被告(株)ミシュランは,サンドイッチ,弁当等の製造,販売等を主要な業務としておりました。

 原告ミシュランは,被告(株)ミシュランに対して,被告が(株)ミシュランの商号を使用して営業活動をすることは,原告の営業活動との間に誤認混同を生じさせるものであるから,不正競争防止法2条1項1号または2号に違反すると主張して,被告商号の使用の差止等を請求して,平成9年に東京地方裁判所に訴訟を提起しました。

  2.争点

 同訴訟での争点は,

 《1》 原告ミシュランの「ミシュラン」は,我が国において著名または周知の営業または商品表示と言えるか。

 《2》 被告が,その商号を(株)ミシュランとして営業活動をすることが,原告との間に営業活動上の誤認混同を生じさせるか。

3.判決

 東京地方裁判所は,平成10年3月30日に判決を言い渡しましたが,まず上記《1》の争点については,原告が証拠として提出した営業状況を示す資料(この中には,原告がレストランガイド,旅行用地図を発行していることを示す資料も含まれていました)に基づいて,細かく事実認定したうえで,

 「右認定の事実によれば『ミシュラン』の表示は,我が国において,遅くとも昭和52年ころには,原告の商品及び営業を示す表示として広く認識されており,それ以後,現在に至るまで,広く認識されているものと認められる。」と判示して,我が国における「ミシュラン」表示の周知性を肯定いたしました。

 更に判決は,上記《2》の争点について,

 「企業の経営が多角化した今日においては,当該企業自体はもとより,当該企業と親会社,子会社の関係にある企業や系列企業が,当該企業が本業としていた分野以外の事業に携わることが少なくないため,周知表示の主体と類似表示の使用者との間に直接の競業関係が存在せず,周知表示の主体の本業と異なる分野の事業に類似表示が用いられた場合にも、類似表示の使用者と周知表示の主体との間に営業上の密接な関係があると誤信される可能性が高く、このような誤解が生じることにより,周知表示の主体について,売上げの減少や周知表示の顧客吸引力減殺など有形無形の損害が生じ又は生じるおそれがある。不正競争防止法は,周知表示を保護する観点から,周知表示に対するこのような侵害行為をも防止しようとしているものであるから,同法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」とは,他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が,自己と右他人とを同一営業主体と誤信させる行為のみならず,両者間にいわゆる親会社,子会社の関係ないしは同一の商品化事業を営むグループに属する関係などの密接な営業上の関係が存するものと誤信させる行為をも包含するものと解するのが相当である。

 これを本件についてみると,前記−1認定の原告の事業内容,前記−2認定の原告の営業表示の周知性,前記二認定の被告らの事業内容,前記三認定の原告の営業表示と被告会社の営業表示の類似性に照らせば,被告らが,「株式会社ミシュラン」の商号を,被告会社の営業表示として使用し,サンドイッチ,弁当等の製造販売,居酒屋の経営を行っていることは,被告らが,原告の営業表示と類似の営業表示を使用し,被告会社と原告とを同一営業主体と誤信させるか,若しくは,原告と被告会社の間に,いわゆる親会社,子会社の関係ないしは同一の商品化事業を営むグループに属する関係などの密接な営業上の関係が存するものと誤信させる行為であり,不正競争防止法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」に該当するものと認められる。」と判示して,誤認混同の可能性について肯定をして,結論として原告の請求を,ほぼ認容いたしました。

4.検討

 本事件では,原告と被告において,それぞれ実際に行っている業務が基本的に異なっているにもかかわらず,原告から被告に対する不正競争防止法に基づく商号の使用の差止等の請求が認められております。

 不正競争防止法違反をめぐる事件は,同一の業務を行っている企業間で,同一または類似の商品やサービスを提供している場合にしばしば生じますが,本事件のように異業種の企業間においても生ずることがあり得ます。

 この場合には,不正競争防止法違反を主張して請求を行うサイド(原告)が提供している商品またはサービスの商品表示または営業表示の周知性について,いわば業種の垣根を超えて主張するに足るだけの周知性を獲得していることの立証が要求されることになると考えられます。本事件は,まさにこの点が争われた事件であるといってよいものかと思われます。

 本事件の原告は,自動車タイヤのメーカーとしてよく知られたミシュランであったために,「ミシュラン」の表示について,上述した自動車用タイヤの製造,販売という特定の業種を超えた範囲での周知性が認められたものと考えられます。

 また,ミシュランが自動車タイヤの製造,販売以外に,レストランガイド,旅行用地図の発行等でよく知られていたことも,上記の認定には寄与していたものと考えられます。

 本事件で原告は,不正競争防止法2条1項1号(周知性)または2号(著名性)を選択的に主張しており,裁判所は前者の周知性を認定して原告の請求を認めておりますが,認定された周知性のその程度は,上述のとおりかなり高かったのではなかったかとも考えられます。

 いずれにしても,本判決は,いわゆる広義の混同を認めた判例中に一事例を加えたという点で,評価できるものと考えられます。

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みずたに なおき 1973年,東京工業大学工学部卒業,1975年,早稲田大学法学部卒業後,1976年,司法試験合格。1979年,弁護士登録後,現在に至る(弁護士・弁理士)。知的財産権法分野の訴訟,交渉,契約等を数多く手がけてきている。

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注:差止を認めた最高裁判所の判決がある。

判決日 平成10年9月10日

裁判所 最高裁 第1小法廷  事件名 平成7年(オ)第637号 不正競争行為禁止請求事件 原審 東京高裁 要旨不正競争防止法二条一項一号に規定する「混同を生じさせる行為」は、「広義の混同惹起行為」を含む

主文

一 原判決中、「スナックシャネル」及び「スナックシャレル」の表示の使用差止請求並びに右表示の使用に係る損害 賠償請求に関する部分を破棄する。

二 前項の差止請求に関する部分について被上告人の附帯控訴を棄却する。

三 第一項の損害賠償請求に関する部分を東京高等裁判所に差し戻す。

四 上告人のその余の上告を棄却する。

五 第二項に関する附帯控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とし、第四項に関する上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人の上告理由第一について

一 本件は、上告人が被上告人に対し、被上告人が上告人の営業表示として周知である「シャネル」と類似する営業表示を使用して上告人の営業と混同を生じさせているとして、「シャネル」「シャレル」その他「シャネル」に類似する表示の使用差止め及び上告人が被った損害の賠償を求めている訴訟である。

 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

1 上告人は、「シャネル」の表示が付された高級婦人服、香水、化粧品、ハンドバッグ、靴、アクセサリー、時計等の製品の製造販売等を目的とする企業により構成される企業グループ(以下「シャネル・グループ」という。)に属し、「シャネル」の表示等につきシャネル・グループの商標権等の知的財産権を有し、その管理を行うスイス法人である。

2 シャネル・グループは、いわゆるパリ・オートクチュールの老舗として世界的に知られ、シャネル・グループに属する世界各地の会社の営業表示である「シャネル」の表示は、我が国においても、昭和三〇年代の初めころには周知となり、シャネル製品は、一般消費者に高級品のイメージを持たれるものとなっている。なお、シャネル・グループの属するファッション関連業界の企業は、飲食業にも進出するなど、その経営が多角化する傾向にある。

3 被上告人は、昭和五九年一二月、千葉県松戸市内の面積約三二平方メートルの賃借店舗において、「スナックシャネル」の営業表示を使用し、サインボードにこれを表示して飲食店を開店した。同店は、被上告人の外に従業員一名及びアルバイト一名が業務に従事し、一日数組の客に対し酒類と軽食を提供しており、昭和六一年から平成四年までの年間平均売上高は約八七〇万円程度であった。被上告人は、本件訴訟が提起された後である平成五年七月、右飲食店に使用していたサインボード四枚のうち一枚の表示を「スナックシャレル」に変更したが、残り三枚のサインボードについては、現在でも「スナックシャネル」の表示を使用している(以下、この二つの表示を合わせて「被上告人営業表示」という。)。

二 原審は、右事実関係の下において、(1) 被上告人営業表示は、いずれも「シャネル」の表示と類似するが、(2) 被上告人の営業の種類、内容、規模等に照らすと、被上告人が被上告人営業表示を使用することにより、一般の消費者において、被上告人がシャネル・グループと業務上、経済上又は組織上何らかの関係が存するものと誤認するおそれがあるとは認め難く、被上告人営業表示の使用がシャネル・グループの営業上の施設又は活動と混同を生ぜしめる行為に当たるものと認めることはできないと判示して、上告人の請求を棄却した。

三 しかしながら、原審の右判断のうち(2)の部分は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

 旧不正競争防止法(平成五年法律第四七号による改正前のもの。以下、これを「旧法」といい、右改正後のものを「新法」という。)一条一項二号に規定する「混同ヲ生ゼシムル行為」とは、他人の周知の営業表示と同一又は類似のものを使用する者が自己と右他人とを同一営業主体として誤信させる行為のみならず、両者間にいわゆる親会社、子会社の関係や系列関係などの緊密な営業上の関係又は同一の表示の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信させる行為(以下「広義の混同惹起行為」という。)をも包含し、混同を生じさせる行為というためには両者間に競争関係があることを要しないと解すべきことは、当審の判例とするところである(最高裁昭和五七年(オ)第六五八号同五八年一〇月七日第二小法廷判決・民集三七巻八号一〇八二頁、最高裁昭和五六年(オ)第一一六六号同五九年五月二九日第三小法廷判決・民集三八巻七号九二〇頁)。

 本件は、新法附則二条により新法二条一項一号、三条一項、四条が適用されるべきものであるが、新法二条一項一号に規定する「混同を生じさせる行為」は、右判例が旧法一条一項二号の「混同ヲ生ゼシムル行為」について判示するのと同様、広義の混同惹起行為をも包含するものと解するのが相当である。けだし、(一) 旧法一条一項二号の規定と新法二条一項一号の規定は、いずれも他人の周知の営業表示と同一又は類似の営業表示が無断で使用されることにより周知の営業表示を使用する他人の利益が不当に害されることを防止するという点において、その趣旨を同じくする規定であり、(二) 右判例は、企業経営の多角化、同一の表示の商品化事業により結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業を取り巻く経済、社会環境の変化に応じて、周知の営業表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同惹起行為をも禁止することが必要であるというものであると解されるところ、このような周知の営業表示を保護する必要性は、新法の下においても変わりはなく、(三) 新たに設けられた新法二条一項二号の規定は、他人の著名な営業表示の保護を旧法よりも徹底しようとするもので、この規定が新設されたからといって、周知の営業表示が保護されるべき場合を限定的に解すべき理由とはならないからである。

 これを本件についてみると、被上告人の営業の内容は、その種類、規模等において現にシャネル・グループの営む営業とは異なるものの、「シャネル」の表示の周知性が極めて高いこと、シャネル・グループの属するファッション関連業界の企業においてもその経営が多角化する傾向にあること等、本件事実関係の下においては、被上告人営業表示の使用により、一般の消費者が、被上告人とシャネル・グループの企業との間に緊密な営業上の関係又は同一の商品化事業を営むグループに属する関係が存すると誤信するおそれがあるものということができる。したがって、被上告人が上告人の営業表示である「シャネル」と類似する被上告人営業表示を使用する行為は、新法二条一項一号に規定する「混同を生じさせる行為」に当たり、上告人の営業上の利益を侵害するものというべきである。

四 そうすると、原判決中、これと異なる判断の下に、被上告人営業表示に関する上告人の使用差止め及び損害賠償の請求を棄却すべきものとした部分には、法令の解釈適用を誤った違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。この点に関する論旨は理由があり、その余の上告理由につき判断するまでもなく、原判決中、右請求に関する部分は破棄を免れない。そして、以上の説示によれば、第一審判決中、被上告人営業表示の使用差止請求を認容した部分は正当であるから、被上告人の附帯控訴はこれを棄却すべきであり、右表示に係る損害賠償請求に関する部分については、損害額について更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻すのが相当である。また、被上告人営業表示を除くその余の表示は、被上告人が現に使用しているものではなく、これが使用されるおそれについての主張立証もないので、原判決中、右表示に関する請求を棄却すべきものとした部分は、結論において正当であるから、上告人のその余の上告を棄却することとする。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判長裁判官 藤井 正雄 裁判官 小野 幹雄 裁判官 遠藤 光男 裁判官 井嶋 一友

裁判官 大出 峻郎

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第26 安売り業者を排除する場合の共同ボイコットへの適用の構成要件

トイザらス事件は安売り業者を排除したという点で違法性の程度が、本件事件同様に、非常に高い事件である。判例という事業に必要な必須の道具へのアクセスを独占している弁護士業界と同様に、埼玉県の取引事例という事業に必須の要素を要素を独占している被上告人(債務者)の共同ボイコットは、それがどのような意図であっても、共同ボイコットであってアメリカでは当然に違法であるケースがあることを示している。しかし日本では当然に違法の概念はないが、日本の共同ボイコットにおける「正当な理由なく」の解釈は当然に違法の概念を前提にしているという学説がある(慶応義塾大学石川氏等多数派の学説)。

日本の共同ボイコットは法第19条の一般指定第1項によって規定されており、一般指定は法令に該当すると考えられる。この共同ボイコットに関するガイドラインの法的効力については、独立行政委員会である公正取引委員会行政指導であるとも解釈されるが、公正取引委員会による法令に該当すると考えられ、本件事件はその例示に該当する行為であり、法令の適用を誤ったものであると考えられる。

この場合に共同ボイコットの理由をどのように言おうとも、それは単なる弁解にしか見えない。それが公正競争阻害せずに、公正競争を促進するという理由付けのみが考慮に値すると考えられる。

入会に関するモラトリアムは共同ボイコットとしてとらえられるが、入会金の値上げについては相当な人数の業者が入会できずに入会していないのは、公正競争阻害の効果が存在していると考えられる。

その人数については平成15年4月頃調査した結果では、26業者中の19業者が入会していなかった。

また価格については事業実績報告書において提出することになっており、平成16年についてみると裁判所の競売評価については2417件に対する報酬額が387,454千円一件14万円程度、全体の依頼件数が7,784件で1,381,971千円であり、一件19万円程度であるのに、上告人(債権者)の受注金額は36件、1,008千円であり、一件3万円以下である。この価格は東京では一般的になっている。従って安売り業者であった(今もある)からこそ、被上告人(債務者)は共同ボイコットを行い続けているのである。しかも上告人(債権者)はこれらを北海道、佐賀、富山において鑑定評価を行っているのである。しかも被上告人(債務者)であれば、その協定価格(カルテル)ではもっと数10倍にもなる物件を鑑定評価を行っているのである。これは鑑定評価の手間は金額の大きさにかかわらず、ほぼ同じであるという理由によっている。これに対する共同ボイコットの脅威は今も今後も、過去も続いてきたのであり、回復しがたい損害の危険があるといいうる。被上告人(債務者)はこの利権ともいえるものを守るために入会にモラトリアムを設けているのである。

一審で主張しているとおりに、安売り業者を排除する目的であったと上告人は主張している。確かに個人的な好き嫌いによってこれまで事業者団体の総会では、大混乱をしてきた。これを法は止めることが出来なかった。無効確認訴訟では負けると分かった訴訟であったので、誰も対処できなかったのである。これが日本における事業者団体の公正競争阻害につながり、日本の公共事業の非効率性、日本の価格体系における価格の固定制につながっていた。しかし今回の差止制度の導入は差止という制度によって新しい判決を国会が公的に法的に認めたのであり、その際のもっとも当てはまると考えられた入会拒否について、第一審、第二審での判断は法令の適用においても、更には法的に上の段階にある憲法の適用においても誤ったものである。

共同ボイコットは、法第19条において規定されている。事業者団体においては法8条1項5号において規定されている。

この場合には次の通り4つの構成要件についてテストするべきである。本件事件においてはこの4つの構成要件に完全に合致しているといえる。

第一の構成要件は共同ボイコットの合意の目的が被上告人(債務者)の競争者たちに不利益をもたらす故意があったのであるから、競争制限的であったことであった。第二の構成要件は、被上告人(債務者)とそれに関与した企業群は市場において支配的な地位にあったことであった。第三の構成要件はこの共同ボイコットによって、ボイコットされた企業群は競争を効果的に遂行するために必要である製品や取引へのアクセスが出来なくなったことであった。第四の構成要件は、本件行為が総合的にみて効率性を増大させたという正当化の論理が外見からもっともらしくなかったことであった。

安売り業者を排除した典型的な事例であり、ノースウエスト卸売事務用品会社事件のアメリカにおいて確立された最高裁判所の判決にならって。更にはそれが安売り業者を排除する共同ボイコットにも適用されたトイザらス事件にならって、日本においても同様な判例を世界の動向に遅れないように作成する義務があると考えられる。これは私訴を行っている人々の願いでもあり、それによって莫大な損失を被っている事業者の願いでもある。今後の独占禁止法の適用における日本の動向にも適合したものとなるように上告及び仮処分の申請を行うものである。

第27 継続性

本件事件の行為は不当な取引制限の相互拘束にも該当するような一般指定1項(共同の取引拒絶)に該当するという主張に変更する。

この場合に被上告人(債務者)においては毎月理事会が開かれており、自由な意思によっていつでも犯罪行為にも等しい本件行為をやめる機会があるにもかかわらず、公正競争阻害性を認識することなく、中止するにいたっていない。これは継続性が認められ、その都度犯罪が成立しているといえる。自由な意思の形成可能性は、犯罪や、故意の原点にある。その都度故意が認められといえる。また、片方では不当な取引制限に近い公正競争阻害のある行為を行いながら、片方では法人として固定資産税の標準宅地の鑑定評価の受注行為や契約を行っている。

本件事件は私訴であるから、禁止行為について全般的に責めているのではない。その権限は公正取引委員会にしかない。ドイツ法に言う禁止である。私人が責めているのは損害を自分に与えた、あるいは与え続けている被告である。しかし被告が全般的にも公正競争阻害性のある行為を行っているのでなければ、独占禁止法上の俎上にのることはない。カルテルとして批判できないが、その一部としての行為は私訴の対象とないうる。その場合にもし契約違反であれば民法の不法行為法によって責めることになるのではあるが、独占禁止法ももともとは不法行為法ではなかったのか、従ってそのどこが両者で違っているのだろうか。その違いは念書を取って参入させるのと、念書を書かない事業者を入会させないこととの違いによって理解できる。どちらも公正競争阻害性がある。しかし念書を取ってカルテル組織に入れることは、何らの私訴による損害賠償請求の対象となるようなものを発生させないが、後者は発生させている。つまり個別的事業者に対して、特にカルテルの対象が向けられた場合にのみ、個別企業に対する何らかの損害が発生し、損害賠償請求の私訴が行われる状態になる。個別企業に対する損害はその個別企業は特に安売りをするとか、品質を向上させたとか、販売方法がユニークであるとか、絶対にカルテルに参加しようとしないとかの特殊な事情がある場合にのみ対象となるのである。従って共同ボイコットの事例において、どのような事業者に対しても公正競争阻害が発生するような入会制限と、このような特殊なケースとは全く違ったケースである。本件においては16倍の値上げはどのような事業者に対しても、平等に公正競争阻害を発生させるものであるが、もっと自由競争をさせよ、もっと安売りしたいという事業者に対する公正競争阻害を発生させるような行為は、念書を書かせて、カルテルに埋没させられるような業者に対しては行われないのである。しかしどちらもまた社会公共に対する罪であるからこそ、公正競争阻害によって税金泥棒と俗にいわれているような窃盗と同じような罪に該当しているのである。

個別企業に対する保護の側面と、独占禁止法における社会公共に対する公正競争阻害の罪の側面とが対比される。しかし個別企業に対する保護の側面も、公正競争阻害による側面を併せ持っているのであって、個別企業に対する保護の事件においても公正競争阻害性のある行為が行われるのは本件事件におけるように純粋に個人的な理由によるのではなくて、公正競争阻害性があり、価格を高どまりさせられうるからそうするのが事業者団体の性格であり、事業者の複数の集団の性格である。

もしそうでなければ、そのうちやめているであろう。

共同ボイコットにおいてどのような事業者に対してでも行われるものであっても、正当な理由なくば原則違法との考え方はこのような公正競争阻害性に重点を置いてみているのである。

一方では個別企業に対する保護の側面では保護される事業者が特に自由競争において勝つであろうような安売りしたいという業者や、安売りをしている業者や、品質のよい業者や、販売方法がユニークである業者に対して行われるのである。

それならば入会を希望していない業者に対しても、公正競争阻害があることになって、そのような事業者が入会希望したならば、もし自由競争をしたいとか、安売りしたいとか、品質的によいとかの業者に対してでなければ、念書をとって入会を認めるのと同じ効果しかその市場に対して与えないから、それ程問題なく入会させてしまうであろう。

これが共同ボイコットの範囲を制限するか、入会制限と同じように誰に対するものであっても共同ボイコットするのかという問題となっている。

これは共同ボイコットの公正競争阻害による違法性の程度と、個別企業に対する損害発生の程度の問題である。

この場合には別の解き方もある。これはノースウエスト卸売事務用品会社事件において取られた方法である。またトイザらス事件において採用された方法である。

個別企業に対する損害が大きい場合というのは、市場においての参入制限が市場支配力のあるものによって行われた場合、あるいは、市場へのアクセスに必要な必須のサブスタンシャルを持っている場合である。

これは個別企業に対する排除が個別企業に対する損害を与えるかどうかという見方と共通している。この問題を解く場合には、念書をとって入会させている場合と、安売り業者が念書を書かなかったので入会させなかった場合における公正競争阻害性と、各個別企業の損害とを比較してみるのもひとつの方法である。

市場支配力を有しており、実質的な必須の資源を持っている事業者団体の場合には、入会しないことは損害をもたらすが、安売り業者が入会できない場合にはもし入会した場合には価格競争によって価格が下がり公正な競争が促進されるのであるがそうではない場合には、あるいは、念書を書いて安売りをしません、あるいは、価格競争はしませんという念書を書いて市場に参入する場合には市場はほとんど価格の値下がりによって消費者によい影響をもたらさないことになる。

全員が念書を書いて入会している不動産鑑定士協会があるとしてその例と比較して、埼玉県の様に26業者中の19業者が平等に少ない損害を16倍もの入会金の値上げによって受けている場合を比較してみる必要がある。16倍もの入会金の値上げに対して17業者は将来の市場割当がその入会金を上回るものと確信して、念書を書いて排除されないようにして入会したとする。実際はタシットコルージョンによるものが多いが、今では誓約書を書かせているので、暗黙ではなくなっている。

特に入会を申し込んで、断られた上告人(債権者)のみが損害を受けているとは考えられないだろうか。上告人(債権者)は損害の立証はできるし、それが被上告人(債務者)の責任であることを証明することができるが、入会しなかったものは責任の立証ができず、あるいは、念書を書いて入会したものは損害そのものがなくなってしまっている。

確かに入会金の値上げによって入会しなかった事業者は被害を受けている。しかし責任は入会しなかった自分にあるとされてしまいかねないので、クラスアクションを19業者がまとまって起こすこともできない。すなわちクラスアクションが起こせるのは消費者として、その公正競争阻害によって効率性がそこなわれたことに対してだけである。損害と公正競争阻害性とはどのように係わっているのであろうか。このような事業者は入る意思がなかったのであるからという理由で、私訴の対象とはならない。

しかしもし19業者は平等に損害を受けているのであるから、クラスアクションによって全員が共同歩調によって損害賠償請求ができるであろうか。この場合にはノースウエスト卸売事務用品会社判決が重要になる。自由競争の状態においての入会拒否と対比してのものである。もし公正競争阻害性がなく、自由競争の世界においては入会金が値上げされたら、入会せずに安売りを続ければよいのであるから、なんら問題はない。従ってどのような入会金の値上げも意味がなく、かえってその事業者団体を傷つける事になる。

つまり誰も入会しなくなる。安売り業者は費用に影響するというのでさらに費用を考慮して入会しなくなる。

ノースウエスト卸売事務用品会社判決が重要なのは、共同ボイコットを審理する上で、公正競争阻害性ある行為と、ない行為とを分けた点にあるのか、損害の発生がある場合とそうでない行為に分けたのか。後者である。これは重要な点である。一方で安売りや、品質のよいという形容詞によって限定することはノースウエスト卸売事務用品会社判決において示された点を例示によって個別的に分析した結果、そのような例示の場合には公正競争阻害性が高いということを示しているに過ぎないのであって、一般と例示の区別である。

例えば安売り業者が排除された場合でも、一般には共同ボイコットにはなるが、自由競争であって排除したものに市場支配力がない場合や、事業に必要な必須の施設を管理していない場合には、損害が発生しないから共同ボイコットにはならないということなのである。この場合に16倍に値上げしたことが共同ボイコットにあたるかという問題がある。市場支配力を持つ事業者団体であり、必須な施設を管理している場合には該当することになる。

従って継続犯になっているかどうかは、一方で市場支配力と必須の施設を持っておきながら、排除の行為を行っているかどうかにかかっているのである。それでも必須の施設が自分の資本力で作ったとか、市場支配力が公共の目的で使用されたもので、公共的な目的で排除するのが妥当なときにのみは排除が正当化されることになる。継続犯になっているのはそのような正当な理由がなくて、排除が行われているときであるということになる。

従って本件においては独占禁止法上、被上告人(債務者)に公的な信用という市場支配力があり、公的な必須の施設を管理がまかされているのであるから、特に公的な理由がなければ排除は正当とはみなされないのである。

ノースウエスト卸売事務用品会社判決がこのように重要な意味を持つのは、継続犯になる場合を特定したからである。本件事件の状況は変わらないので、継続犯となりうる。

第28 差止仮処分における訴訟物を終結後の分に限るとしても、損害の著しさを損害の総額であると解釈すれば、始期からの損害に着目しなくてはならないが、損害の質に着目すればいつにても何回でも、日々に差止の仮処分が提出できることになる。

継続的に継続的な違反として違反行為が行われていると主張した場合、原告は差止の仮処分をいつにても提出することができることになる。従って継続犯としての刑法犯の概念と同様な概念によってではなく、終結後にも違反行為が行われているとして、終結後の行為のみについて違反であると主張することができるのであろうか。

あるいは継続の始期から現在までの違反の損害額を請求出来るのであろうか。著しい損害を始期から現在までの総合計と考えるならば、できることになる。

しかし損害について始期から、終了までどの程度のものが著しいかという問題であれば、差止は継続的な違反の始期から考えなくてはならないことになり、これは継続犯の場合には累積的であるから、いつ現行犯が逮捕できるのかという問題と同じことになる。

それは証拠が固まった時であり、それまではいつでも逮捕できることになる。継続犯の場合に、逮捕しても証拠不十分で保釈された場合でも、後で起訴できれば、最初から遡って犯罪が適用されるように、不起訴になったからといっても、証拠不十分ではその時点までの犯罪がすべて免除されたことにはならない。

従って、その程度においていつまでが損害額が免除されるかということが審理されなくてはならない。差止はそのような意味を持つが、しかし差止の仮処分は急迫の危険が現在あるのかを問題としているのであるから、いつにてもすなわち本件事件の場合には終結後のいまでも裁判を求めることができることになる。

予防差止についてはすでに判例がある。「著作権法112条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害の予防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場合は、たとえ侵害行為自体は未だなされていない段階においても、予測される侵害に対する予防を請求することができることはいうまでもない。また民事訴訟法226条は、必要性がある場合には将来の給付を求める訴えをすることができると規定しているから、日刊新聞のように、短い間隔で定期的に継続反復して発行される著作物について、これまで著作権侵害行為がその発行毎になされてきた等の事情から、将来も発行予定の著作物に対する同種侵害行為が予想され、しかも発行による著作権の発生を待っていては実質的に権利救済が図れない場合には、将来の給付請求として、著作物が発行されることを条件として、予測される侵害行為に対する予防を請求することができると解するのが相当である。」(著作権仮処分異議事件 東京地裁平成三年(モ)第六三一〇号平成5年8月30日判決)としたことからも分かるとおりに本件差止の仮処分は、おそれ、あるいは、予防をも請求しているのであるから、訴訟物が異なっており、確定していない判決に対する差止の仮処分の申請、あるいは、終結後の現在新たに訴訟を提起することに何等の訴訟物の同一の問題は発生していない。継続犯の場合には将来も違反行為が続くと考えられるので、日々その違反行為に対して差止請求ができる。本件事件についてカルテルの一部とすることには意味がある。

注:東京高裁が、不当な取引制限の罪は「競争が実質的に制限されているという行為の結果が消滅するまでは継続して成立し」と明確に判示したことは重視すべきであるとも思われる。(子木曽国隆『私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 注解特別刑法 補巻3』(青林書院、1996年)59頁以下,田中利幸「不当な取引制限の罪の性質---継続犯か状態犯か」独禁法審決判例百選(第6版)262頁以下(2002年)、大山徹「継続犯としての不当な取引制限(1)」杏林社会科学研究19巻3号49頁以(2003年)、およびそれらに所掲の諸文献を参照。

Dauerverbrechen: continuouscommit a crime 継続犯

英語において、継続的とボイコットに関して検索するとAMA事件がある。

The district court also found a continuing injury to chiropractors' reputation as a result of the boycott. Because the AMA has never made any attempt to publicly repair that damage, the court found that chiropractors will continue to suffer injury to reputation from the boycott. 671 F. Supp. at 1486-87. The AMA's publication of its changes and its settlements were not enough, in the eyes of the district court, to overcome these harmful effects. The AMA has not convinced us that the district court was wrong in this assessment.

[88] The AMA's strongest challenge comes to the district court's findings with respect to the lingering effects on chiropractors' incomes. The court found that the injury to chiropractors' incomes threatened to continue through the date of trial. 671 F. Supp. at 1487. For this it relied on plaintiffs' expert's analysis regarding chiropractic income levels through 1986. (Jt.App. 57.) The court found this continuing harm existed, even though plaintiffs' expert's last data point showed that chiropractors' income in 1984 exceeded that of podiatrists and optometrists -- the comparable professions. 671 F. Supp. at 1487.

東北法学会会報19号1頁(2001)

「入札談合に対する独占禁止法上の規制の当面する課題」

東北大学法学部教授 平林 英勝

 入札談合がわが国経済に広く蔓延しているが、過去十年余りにおける公取委

が法的措置をとった独禁法違反事件においても半分程度を入札談合が占めてい

る。

一 証拠の収集に関する問題

 刑事告発が行われるなど、入札談合に対する規制が厳しくなるにつれて、事

業者側でも証拠書類を残さなかったり、公取委における供述聴取においても否

認に終始するなどのケースが増えている。 そのため、公取委の事件審査が難

航したり、法的措置をとるのがむずかしくなったり、法的措置をとっても審判

で争われることが少なくない。この傾向は、多数の事業者がかかわるローカル

な事件よりも、少数の寡占的大企業による入札談合事件に顕著である。

 そのため、犯則事件手続の導入が考えられるが、これによってもともとない

証拠が得られるようになるわけではない上、犯則事件手続は刑事手続に直結し

刑事罰を適用することを目標とするから、行政処分を基本とする現行法の体系

や運用の再検討が必要になるし、審査手続と犯則事件手続との二本建ての手続、

組織を設ける必要があるといった種々の問題がある。

 事件審査に協力した事業者に課徴金を減免することにより、協力のインセン

ティヴを高めることも考えられるが、課徴金制度の基本的な性格にかかわるこ

とであり、慎重な検討が必要である。減免制度を導入するとすれば、それは事

件の円滑な審査という政策的な目的のためのものと位置付けるしかなく、かつ

減免の条件を法定することが必要になる。

 実際問題として、違反企業が懸念するのは課徴金より刑事告発であるから、

公取委の専属告発権の裁量を行使して事件審査に協力する事業者やその役員・

従業員を告発しないことが考えられる。 その場合、告発免除について公取委

は検察当局と事前に協議し、その了解を得ておく必要がある。

 他方、入札談合の立証に、不自然な入札結果など状況証拠を一層活用するこ

とがある。

二 発注者の関与についての問題

 発注者側の問題として、発注者の職員が談合に関与していたりすることがあ

り、特に北海道の農業土木事件に関連して、発注者にも排除勧告などが出せる

ように法改正すべきではないかとの意見が出されている。しかし、独占禁止法

は市場における事業者の競争制限行為を規制することを目的としているから、

基本的には会計検査や行政監察の問題である。ただし、公取委の発注者への改

善要請に法的裏付けを与えることは考えられるし、必要な場合には、入札談合

に関与した職員個人の刑事責任を問うのが本来の姿である。

三 刑事告発に伴う諸問題

 平成一二年一二月の東京都発注水道メーター入札談合事件の東京高裁判決は、

不当な取引制限の罪について、継続犯であるとしたことと、相互拘束行為の

「遂行行為」も独立の実行行為となるとした画期的な意義がある。

 不当な取引制限の罪が状態犯であるとすると、入札談合の基本合意が公訴時

効の三年以前に合意されていると、その後個別調整が続けられていたとしても、

告発、起訴ができなくなるという基本的な問題があった。

 基本合意に基づいて個別調整を続けていることは、不当な取引制限の構成要

件である競争を実質的に制限する「行為」をし、自由競争経済秩序という法益

を侵害し続けていることである。状態犯説によると、以前から入札談合を続け

ている業界は時効の恩恵を受けるが、最近始めた業界は受けないというのも奇

妙である。

 状態犯説は、会社のレベルでは合意は継続していても、個人のレベルでは新

たな実行行為者が次々に現れて合意を継続させているにすぎないとするが、ま

さに個人のレベルで前任者から合意を継承して個別調整行為をしていることが

問題なのであり、これを合意を維持する行為としてとらえることが特に難しい

とも思われない。 

 本件判決は相互拘束の「遂行行為」という概念を認めたことは、状態犯説の

このような難点を克服することにもなり、その点で告発、起訴の柔軟性を高め

ることになる。 しかし、この遂行行為とは価格連絡・入札行為まで入るのか、

価格カルテルの場合はどうか、明らかでないなどの問題が少なくない。

四 民事訴訟への協力

 公取委が入札談合等の独禁法違反を認定すると、最近では、それによって損

害を被った発注者が損害賠償請求訴訟を提起したり、住民が地方公共団体に代

位して損害賠償請求訴訟を提起することが珍しくない。 公取委は、違反が確

定し、原告の申し立てにより裁判所から文書の送付嘱託があったときは、違反

を認定する基礎となった主要な証拠の一部を提供することにしており、これも

入札談合を抑止することにつながるのであるから、公取委は今後とも積極的に

裁判所に協力していくべきである。

注:請求適格のレベル−予測可能性

将来給付の訴えは、すでに発生している請求権のみならず、将来発生する請求権のためにも許される。口頭弁論終結後も土地の不法占拠が継続することにより生ずる損害賠償請求権が、その典型例である。しかし、判決において将来発生するであろうと認められた請求権が発生しないことになった場合には、その判決に基づく強制執行を阻止するために、債務者は請求異議の訴えを提起しなければならないという負担を負う。債権者と債務者の利益の適切な調節として、将来給付の訴えが許されるためには、訴求債権が次のいずれかに該当することが必要である。

期限付債権・条件付債権  既に権利発生の基礎をなす事実関係及び法律関係が存在し、ただこれに基づく具体的な給付義務の成立・内容が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証し得る別の一定の事実の発生にかかっているにすぎない期限付債権や条件付債権[58]であることが必要である。不確定期限の到来および条件成就の多くは執行文付与の段階で確認し(民執27条)、確定期限の到来および簡易に認定できる条件の成就(担保提供、代償請求の条件たる本来給付の執行の不奏効)は、執行機関が判断する(民執30条・31条)。

その他の将来発生すべき債権  これは、次の要件を満たすことが必要である:(α)その基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、(β)右債権の発生・消滅及びその内容につき債務者に有利な将来における事情の変動が予め明確に予測し得る事由に限られ、(γ)しかもこれについて請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ強制執行を阻止し得るという負担を債務者に課しても、当事者間の衡平を害することがないこと(最判昭和63年3月31日 ・判時1277号122頁)。

肯定例  次のものは、将来給付の訴えの対象適格を有する。

不動産の不法占拠者に対し明渡を求めるとともに、明渡義務の履行完了に至るまでの賃料相当額の損害金の支払いを予め請求すること[24]。

債務不履行による遅延損害金の支払請求

否定例  次のものは、将来給付の訴えの対象適格を有しないとされた。

航空機の夜間離着陸による騒音公害を原因とする将来の損害の賠償請求。最判昭和56.12.16民集35-10-1369[百選*1998a]68事件は、大阪国際空港公害差止請求訴訟において、「同一態様の行為が将来も継続することが予測される場合であっても、それが現在と同様に不法行為を構成するか否か及び賠償すべき損害の範囲いかん等が流動性をもつ今後の複雑な事実関係の展開とそれらに対する法的評価に左右されるなど、損害賠償請求権の成否及びその額を予め明確に認定することができない」場合には、将来給付の訴えは許されるべきでないとした。これに対しては、最少限の被害発生が確実に継続する期間を定めるなどして、将来給付の訴えを許すべきであるとする見解も有力である[30]。

注:こちらは訴訟物の考え方で、更に一歩先へ行った話ですけれども、一部請求は許されるか。あるいは、継続的な違法行為に基づく損害賠償請求権というのは、いったいそれを区切る単位というのは何だろうかという問題に絡みます。ずっと継続して侵害行為が行われている。日々損害が発生しているというわけです。何月何日の販売という違法行為によって生じた損害と、翌日に販売という侵害行為をして生じた損害は損害賠償請求権として別のものなのかという議論になってくるわけです。皆さんの常識からすると、同じ複製権侵害を理由として、継続して出版・販売している場合の行為というのは、一つに数えていいのではないかということになるだろうと思います。実際はそれでいいと思います。出版・販売という一類型の行為がずっと続いた損害賠償請求権は、訴訟物としては1個だと一応考えていただいて結構だと思います。しかし、一部請求という議論がありまして、これは民訴の中でも訴訟物論の更に進んだところの話です。(著作権と民事訴訟(弁護士 牧野利秋))

第29 継続犯と、継続的損害との関係

    

公正競争阻害性である継続犯と、損害の継続とは密接な関係にある。

特に継続犯の場合には損害の継続が続いてはいるが、しかしそれは社会公共に対する罪である。

一方損害の継続が個別事業者に対して行われている場合には、社会公共に対する公正競争阻害性の継続は少ない場合があり得るし、逆に公正競争阻害性は継続していない場合があり得る。二つの企業がお互いに傷つけあうような形で独占禁止法に違反している場合には、片方が他方の利益を競争上奪っているだけであって、総合計としてはゼロサムになっていて、公正競争阻害性は存在していないことがあり得る。但しこれは完全に架空の想定の場合であり、実際はあり得ないかもしれない。

本件の場合には公正競争阻害性が存在していることと、個別企業に対する損害を与え続けていることの双方が存在している。

Antitrust Laws

反トラスト法

Under the Sherman Act, every combination or conspiracy in restraint of trade is illegal.

シャーマン法によれば、競争制限のすべての結合と共謀は違法である。

The court has held that the conduct of the AMA and its members constituted a conspiracy in restraint of trade based on the following facts: the purpose of the boycott was to eliminate chiropractic; chiropractors are in competition with some medical physicians; the boycott had substantial anti-competitive effects; there were no pro-competitive effects of the boycott; and the plaintiffs were injured as a result of the conduct.

医者の担当分野の一部とカイロプラクティック業界が競争的な関係にあったので、カイロプラクティックを排除しようとしたことがボイコットの目的であること、このボイコットは本質的に競争制限的な効果を持っていること、競争促進的な効果はなかったこと、また原告はその行為の結果損害を被ったこと、の4つの事実を基礎にしてアメリカ医師会とその会員の行為は、取引の制限の共謀となっていると裁判所は認定した。

These facts add up to a violation of the Sherman Act.これらの事実を総合してシャーマン法の違反となった。

The district court also found a continuing injury to chiropractors' reputation as a result of the boycott.

また地方裁判所はボイコットの結果として、カイロプラクティックの評判に対する継続的な損害を認定した。

Because the AMA has never made any attempt to publicly repair that damage, the court found that chiropractors will continue to suffer injury to reputation from the boycott.

その損害を公的に修復するどのような試みも行って来なかったので、ボイコットは評判に対する損害を発生させて、与え続けるだろうと裁判所は認定した。

671 F. Supp. at 1486-87.

    The AMA's publication of its changes and its settlements were not enough, in the eyes of the district court, to overcome these harmful effects.

アメリカ地方裁判所は、医師会による変更の表明と、和解条件ではこれらの損害を与えた効果を補うのに充分ではないと判断した。

The AMA has not convinced us that the district court was wrong in this assessment. アメリカ医師会によって、この和解条件については地方裁判所が悪かったということをカイロプラクティック側は理解していない。[88]

The AMA's strongest challenge comes to the district court's findings with respect to the lingering effects on chiropractors' incomes. カイロプラクティック業界に長引く効果を与え続けていることを地方裁判所は認めたことにアメリカ医師会は非常に強く異議を申し立てた。

The court found that the injury to chiropractors' incomes threatened to continue through the date of trial.裁判の公開中ずっとカイロプラクティック業界の収入に損害を与え続けていることについて裁判所は認定した。

671 F. Supp. at 1487.

For this it relied on plaintiffs' expert's analysis regarding chiropractic income levels through 1986.これは1986年のカイロプラクティック業界の収入の水準にについての専門家の分析によっている。

(Jt.App. 57.)

The court found this continuing harm existed, even though plaintiffs' expert's last data point showed that chiropractors' income in 1984 exceeded that of podiatrists and optometrists -- the comparable professions.原告側の専門家による最近のデータのポイントは、カイロプラクティック業者の1984年の収入は、比較できる職業である足専門医や検眼医の1984年の収入を上回っていたにもかかわらず、この継続的な損害を裁判所は認定した。

671 F. Supp. at 1487.

確かに継続的な損害の発生という言葉は、常に共同ボイコットについては使うことができる。東京高裁が、不当な取引制限の罪は「競争が実質的に制限されているという行為の結果が消滅するまでは継続して成立し」と明確に判示したこととの関連については、例えば一般的に誰でもに対して行われる共同ボイコットについては損害についての認定はあまり意識されていない。しかし本件事件のような常に入札に参加しようという業者で、それも安売りをしようという業者に対しては継続的に損害を与え続けている。だがこれは公正競争阻害性が「競争が実質的に制限されているという行為の結果が消滅するまでは継続して成立し」ているととらえられる不当な取引制限の罪とは異なった概念ではある。確かに共同ボイコットにおいても公正競争阻害性が継続的に罪として成立しているという概念と、損害が継続的に与えられて続けているという概念とは異なっている。

例えば、本件においては公正競争阻害性がますます強まるように、公正競争阻害性をそのまま継続しますという念書を取って入会させ続けるとすれば、それは本件事件である共同ボイコットよりも公正競争阻害性がより強いにもかかわらず、その事業者に対しては一切損害を発生させていないのである。

逆にそのような公正競争阻害性が存在しない市場においては、例えば価格協定が行われていないような市場、それが化粧品業界であれば、その業界においては公正競争阻害性が存在しないのであるから、共同ボイコットも一切損害を発生させないことがあり得る。

公正競争阻害性の継続の問題をいっているのが継続犯の概念であり、損害の継続、即ち、不法行為の継続の問題について述べているのが、損害の継続性の概念である。

例えば、次のような事件では公正競争阻害性が少ないと考えられるが、損害は大きかった。

注:(評釈)本件事件において、ハーバード学派のようにシャーマン法の第2条(独占化)を主張した場合の損害との因果関係はどうなるか。取引拒絶の場合と違って因果関係の論証、故意、過失が難しいのか。本件の場合にも独占であるとしての損害額と独占との因果関係は可能であろうか。

the Court held that a trial judge's exclusion of scientific testimony was reviewable only for abuse of discretion.科学的証拠について事実審の裁判官が取り上げなかった場合に判断の間違いとしてだけ裁判所は再吟味することが出来ると述べた。

Adversarial Economics

敵対の経済学

in United States Tobacco Co. v. Conwood Co.

合衆国タバコ会社 対 コンウッド会社事件

The major producers of moist snuff are United States Tobacco Company, Inc. (USTC) (10) and Conwood Company, L.P. (11)

湿式かぎタバコの主な生産者は合衆国タバコ会社とコンウッド有限会社L.P. limited partnershipである。

In 1998, Conwood filed a complaint in the United States District Court for the Western District of Kentucky alleging that USTC monopolized the moist snuff market in the U.S. in violation of Section 2 of the Sherman Act.

1998年にケンタッキー州の西部地区の合衆国地方裁判所に「USTC(合衆国タバコ会社)が合衆国の湿式かぎたばこの市場において独占していることはシャーマン法の第二条の違反である」と、コンウッドは提訴した。

Developments Jurimetrics, The Journal of Law, Science, and Technology Volume 43, No. 3, Spring 2003, pp. 343-352

「計量法学{けいりょう ほうがく}の発展について」『法律、科学及び技術』43巻、No. 3, Spring 2003, pp. 343-352

c 2003 D.H. Kaye.

著作権 D.H. Kaye

The author served as a consultant to attorneys representing United States Tobacco Co., Inc., in the appeals described here.

この論文で述べている控訴における合衆国タバコ会社側の弁護士のコンサルタントとして著者はサービスした。

ABSTRACT: This article describes a questionable statistical study used to estimate large antitrust damages in United States Tobacco Co. v. Conwood Co., 290 F.3d 768 (6th Cir. 2002)

要旨:この論文は、合衆国タバコ会社対コンウッド事件, 290 F.3d 768 (6th Cir. 2002)での巨大な反トラスト法による損害額の認定に使われた統計的な分析に疑問を呈するものである。

It suggests that the district and appellate courts did not recognize that the study was incapable of separating the effects of legal conduct from illegal conduct and therefore failed in performing their role as gatekeepers for scientific evidence.

この論文は地方裁判所と控訴審の裁判所がそのような分析は合法的な行為による効果と、非合法的な行為から生じた効果とを分離することが出来ていないのであるから、従って科学的な証拠の交通整理としての役割は果たせなかったと主張する。

以下原文

CITATION: D.H. Kaye, Adversarial Econometrics in United States Tobacco Co. v. Conwood Co., 43 Jurimetrics J. 343-352 (2003).

引用:「合衆国タバコ会社 対 コンウッド会社事件における敵対の計量経済学」43 『計量法学』 J. 343-352 (2003).

In 1820, Chief Justice Lord Dallas summarized the testimony of England's leading chemists and technologists as to the safety of a new process for refining sugar in the following lament:

1820年に主席判事のダラス卿は砂糖を精製するための新しいプロセスの安全性についてトップの化学者と技術者のイギリスにおける証言を要約して、次のように嘆き悲しんでいる。

"It must be a matter of general regret to find the respectable witnesses . . . drawn up, not on one side, and for the maintenance of the same truths, but, as it were, in martial and hostile array against each other."

「・・・同じ事実を証明するのに、一方の当事者にとってではなくて、いわば、両当事者お互いにとって戦闘的で、敵対的なものに作成されている場合には、尊重に値する目撃証言を見つけることは、一般的に言えば、非常に悔しいことである。」

(1) He advised the jury that "the two days during which the results of [the chemical] experiments had been brought into comparison, were days, not of triumph, but of humiliation to science."

彼が陪審員にアドバイスした内容は [化学の]実験の結果が比較として用いられている2日間は勝利の日ではなくて、化学に対する冒?の日であった。」ということであった。

In the past decade, the U.S. Supreme Court responded to the "humiliation" of adversarial science in three important decisions.

過去10年間において、合衆国最高裁判所は敵対の科学の「屈辱」になるような三つの重要な判断を下している。

In 1993, the Court in Daubert v. Merrell Dow Pharmaceuticals, Inc.

1993年のダウバート対メレルダウ薬品会社事件において

(3) relied on the words "science" and "knowledge" in the Federal Rule of Evidence governing scientific testimony to incorporate a requirement that the method used by the expert be scientifically valid, and it suggested that trial courts ascertain validity by considering

科学的証明という連邦における証拠の原則において「科学」と「知性」という言葉を信頼して、専門家によって使用された手法が科学的に有効であるかどうかに関して立脚するべき要件を必要とするとし、それは次の4点を考慮することによって法廷は有効性を確かめる様に提言した:

(1) the extent to which the expert's method has been tested,専門家の手法がテストされたその限度において (2) its error rate and the presence or absence of "controlling standards" for applying the method,その手法のエラーが起こる程度、また、その手法が適用されるための「管理基準」があるか、ないか (3) its use in peer reviewed publications, 専門分野の権威ある研究者によって評価・訂正する制度が使われ、公表されているかand (4) its general acceptance in the relevant scientific community. また、関連している科学的学会において一般的に受け入れられているかFour years later, in General Electric Co. v. Joiner,

4年後には、ゼネラルエレクトリック社対ジョイナー事件においては、

(4) the Court held that a trial judge's exclusion of scientific testimony was reviewable only for abuse of discretion.

科学的証拠について事実審の裁判官が取り上げなかった場合に判断の間違いとしてだけ裁判所は再吟味することが出来ると述べた。

In affirming the exclusion of expert opinions that workplace exposure to polychlorinated biphenyls caused an electrician to develop lung cancer, 肺ガンにおかされている電気技師がポリ塩化ビフェニールに職場でさらされていたことが原因であるとした専門家の意見を採用しない理由としてthe Court reasoned that not only must the data on which an expert relies be generated from a valid method,専門家の利用するデータは有効な手法によって一般化されたデータに依拠しているだけではなくて、 but also that the expert's conclusion be "connected to existing data . . . by [something more than] the ipse dixit of the expert." 「専門家の証拠のない主張「より以上の何か確実なもの」によって・・・現実のデータに直結した」専門家の結論でなくてはならない(5) Two years after Joiner, the Court decided in Kumho Tire Co. v. Carmichael ジョイナー判決から二年後には、裁判所はクンホタイア社対カーマイケル事件において、裁判所は(6) that the factors listed in Daubert for ascertaining scientific validity could be applied to technical (and perhaps other) types of expert testimony. ダウバート事件において科学的有効性があるかどうかの判定に当たって列挙された要因は、専門家の証明の内でも技術的な(他の場合もありうるがそのような)種類のものには適用できるとした。(7)

This Term, the Supreme Court declined to review the application of these "Daubert factors" in United States Tobacco Co. v. Conwood Co.

合衆国タバコ会社 対 コンウッド会社事件について今期の最高裁判所はこれら「ダウバート要因」の適用を再審理せよとの上告を棄却した。

(8) In this antitrust case, the district court allowed plaintiff's expert to estimate lost profits on the basis of a novel theory implemented in the form of a standard statistical technique known as "regression." このアメリカ独占禁止法の事件では、原告側の専門家が「回帰分析」として知られている統計学上の基本的な手法による形態の分析を含んだ新理論を基礎とした逸失利益の推量を地方裁判所は認めた。

Essentially, the district court reasoned that inasmuch as both sides used the technique of regression, all was well.両当事者が回帰分析の手法を使っているのであるから、いいのであると地方裁判所は結論付けているのは重要である。

The court of appeals affirmed the resulting jury verdict and award of $1.05 billion--the largest in the history of antitrust law--on the understanding that plaintiff's study was of the type routinely used to ascertain antitrust violations or damages.

 控訴審は回帰分析の結果から得られた陪審員による判断を認めた、1.05ビリオンドルの損害賠償額を認めた・・・この金額は反トラスト法の歴史の中でもっとも巨額であった・・・それは原告による証明は反トラスト法違反あるいはそれによる損害を確定するのに日常よく使用される種類の手法によっているとの理解によっていた。

This article describes the expert testimony in Conwood and considers how it should have fared under Daubert. この論文はコンウッド事件における専門家の証明を検討して、ダウベートの下ではその手法がどのような正当性があるのかについて考察する。

It shows that, contrary to the Sixth Circuit's opinion, the study departs from the normal econometric approach to establishing causation or damages. (9)第6巡回裁判所の見解と正反対であるが、回帰分析の手法は計量経済学においては因果関係あるいは損害額を認定する一般性のある接近法ではないことを論証する。

The article then offers suggestions for improving the judicial response to contrived statistical studies of damages.

従ってこの論文は、損害額についての不自然な統計的分析に対する法的な反応を改善するための提言を行うものである。

I. CONWOOD'S COMPLAINT

コンウッドの主張

Snuff is a smokeless tobacco product that is placed in small amounts between the cheek and the gums.

かぎタバコは、あごと歯茎の間に少量のはさんで使用する煙の出ないタバコ製品である。

The major producers of moist snuff are United States Tobacco Company, Inc. (USTC) (10) and Conwood Company, L.P. (11)

湿式かぎタバコの主な生産者は合衆国タバコ会社とコンウッド有限会社(L.P. limited partnership)である。

In 1998, Conwood filed a complaint in the United States District Court for the Western District of Kentucky alleging that USTC monopolized the moist snuff market in the U.S. in violation of Section 2 of the Sherman Act.

1998年にケンタッキー州の西部地区の合衆国地方裁判所に「USTCが合衆国の湿式かぎたばこの市場において独占していることはシャーマン法の第二条の違反である」と、コンウッドは提訴した。

Conwood's theory, as developed at a four-week trial, was that:

4週間の裁判においてコンウッドが展開した理論は次の通りである:

In 1990, [USTC] began an orchestrated campaign to choke off the distribution of rivals' products.

1990年に[USTC]は、敵対的な競争業者の製品の流通を妨げる組織的な活動をはじめた。

Disdaining competition on the merits--which [USTC] feared would erode its market share and profit margin--[USTC] used its power to exclude competitors' display racks, advertising, and products.

[USTC]は市場占有率を侵され、超過利潤がなくなると恐れていたので、競争をないがしろにし、その市場支配力を使って、競争業者であるコンウッドの陳列棚、広告物更には製品までも排除した。

[USTC]'s representatives tossed as many as 20,000 Conwood [sales] racks [in retail stores] into dumpsters each month.

[USTC]の代表者は、毎月20000もの(小売店にあった)コンウッドの(販売用)陳列棚をゴミ収集箱に放り込んだ。

(12) USTC denied engaging in systematic, exclusionary conduct of this (or any other) sort.

USTCがこの種の、あるいは他の種類の組織的、排除的な行為を行っていることはないと主張した。

It also moved to exclude expert testimony designed to prove that USTC's allegedly illegal conduct gravely suppressed Conwood's sales of its brands of snuff,

主張されているUSTCの違法行為がコンウッドのブランドのかぎタバコの販売を甚大に圧迫したことを証明するために書かれた専門家の宣誓証言を排除するようにも求めて

and it sought summary judgment.

略式の判決を求めた。

The district court denied these motions.

地方裁判所はこれらの手続を棄却した。

At trial, USTC cross-examined Conwood's expert and presented its own expert, who dismissed the damages study as worthless.

審理においては、コンウッドの専門家に対抗して合衆国タバコ会社も自らの専門家を提出して、損害の主張は価値がないとして棄却を求めた。

After deliberating for under four hours, a jury awarded Conwood $350 million in damages.

陪審員は4時間の慎重な審議を経て、コンウッドに350ミリオンドルの損害を認めた。

Trebling this figure, (13) the district court entered judgment of $1.05 billion, and it issued a permanent injunction.

この数字に3倍を乗じて、(13)地方裁判所は1.05ビリオンの損害を判決して、永久差止を認めた。

The Court of Appeals for the Sixth Circuit affirmed the judgment and denied a petition for rehearing. (14)

第6巡回控訴裁判所は判決を認め、再審の控訴を棄却した。

With respect to the extraordinary damages, it stated that Conwood's expert employed "regression analyses, a yardstick test and a before-and-after test.

この巨額の損害額について、コンウッドの専門家は回帰分析、ヤードスティック分析、前後理論分析を採用した。

 

第30 民事訴訟法247条と民事訴訟法248条の関係について

 これまで民事訴訟法248条が立証が困難な時には、著しい損害は適用されることを申し立ててきた。これは循環論法になってわが国の差止の法文が矛盾していることから来る、恐ろしい結末を予言しているからである。

 谷原修身氏による独占禁止法と民事的救済制度の本によれば、民事訴訟法248条は独占禁止法が使用することを予定した条文であった。またそのために独占禁止法に民事訴訟法248条の特別条文を入れようという案があった。

 ところが最終的には著しい損害を理由として差止制度が導入された。このことは証拠が、契約のように違法ではない行為があったかどうかを調査するのではなくて、違法である行為があったのか、なかったのかを証拠収集によって確定していく作業が独占禁止法のプライベートアトーニーゼネラルのやるべきことであるから、当然に収集する相手が用心している場合にはほとんど不可能に近いことになるし、損害額の確定に当たっては、すでに自由競争ではない違法な公正競争阻害性のある状態を被上告人(債務者)によって作られているのであるから、そこでもし違法な競争制限的な行為がなかったのであるならば、どれ程の収入があったのかという点については証拠は緩やかにしか推定できないのであるから、そこには証拠法則として民事訴訟法248条による規定が必要である。

 ところが現在差し止めなければ、損害なしという理論が法曹会にまかり通っており、このために民事訴訟法248条を使っていないのである。故意に使っていない。被上告人(債務者)等のちまたのくだらない法理論によれば、酒匂悦郎事件では最高裁判所で負けたのは、4月になって入会させたから負けたのだ、だから今回は同じ事件であるが入れないで頑張ろうということである。これが被上告人(債務者)がいつまでたっても犯罪に近い行為をやめない理由であるという。

 しかしこれは循環論法になっている。従って、これは裁判官もこの理論を採用して民事訴訟法248条を採用しなかったことに法令の適用の違法があったという理由を付け加える。

 それは世界中の誰が考えても当たり前の理論であるが、伊従氏によれば批判するやつは入れないが理屈として民法では通ると言っている。

 しかし一応民事訴訟法247条の適用の誤りが経験則違反であるとの主張も法令の適用の誤りとして追加する。

 民事訴訟法247条においては何十人の人がテープによって証言しているのに推薦を認めなかったのは経験則違反である。

 独占禁止法においては立証が困難なのであるから、民事訴訟法248条を採用すべきであるのは上記で述べたとおりではあるが、たとえ民事訴訟法247条を使っていても経験則違反になる。

 もともとが独占禁止法違反の認定においては民事訴訟法248条を使用すべきことは学説の一般的な動向である。しかしあえて民事訴訟法247条を使ったとしても、経験則違反である。

 すでに終結前のテープとその反訳についてはもとより、終結後判決前に提出された証拠についても同様のことが言える。ひとつひとつの証拠については証明する。 

 今回終結後に提出されたが、判決の直前に提出された川島町における証拠のテープでは、たまたま川島町に行った時に、たまたま証言を得たものである。埼玉県の90市町村のすべてに行くことは費用的にも時間的にも莫大なものを必要とする。

 たまたま行った時に録取できたということは、確率としては90倍に大きい確率で証拠として採用できるものと思われる。

 このような科学的な証拠の分析も必要である。

 これはいわば目撃証言に匹敵するものであり、証拠としての価値は充分に持っており、このような10以上の証言について排斥した判決は経験則違反である。

 目撃されたものがテープに残っていることは、その90倍の確率でそのことが行われていることが立証できているのに、それを採用しなかったのである。目撃証言は犯罪についての非常に大きな証拠である。その係長の部下に問いただしたところ、被上告人(債務者)と電話していたという証拠のテープもある。これも何十倍の証拠の確率としてみなければならないし、被上告人(債務者)が埼玉県と会議を持ったという証言をしていることを固定資産税の標準宅地の鑑定評価における固定資産税の標準宅地の受注者の会議において述べていることも、たまたまなのではなくて何十倍の価値がある証拠である。

 目撃証言は犯罪においては有力な証拠となりうる。それもテープや、写真や、映像に映っている場合には尚更である。

 さて本件テープは目撃証人のテープというよりも、入札談合等関与罪に当たる行為を行ったものの自白にも当たる。自白は裁判所においては当然に否定されることが前提である。

目撃証言としてみる場合には、被上告人(債務者)の行為に関する目撃であり、その行為の結果自らがさせしめられたことの自白でもある。目撃については犯罪の目撃情報と同様に刑事犯罪における目撃と同様の意味を持つであろう。

一方推薦されたがその推薦に従わなかったというのではなく、それに従って当然だから従ったのであるという証言でもある。一般に犯罪者がそのようなことを言うのは自白と見なされるが、本件の場合にはそれが当然のこととして言われている。

そのような目撃情報が10以上になっている場合には、それもすべてについて同様の見解であり、それも多額の費用をかけて上告人(債権者)が行った場合にそのようにいっていることは、その行った程度が90分の一の確率であっても、言っているということは確率統計学的に90倍するのが科学的である。

刑事犯罪として100人の警察官が動員されて、90市町村のすべてに対して捜査が行われたのではない。いわゆるローラー作戦が行われている訳ではない。

上告人(債権者)が鑑定評価の仕事で忙しい中で、たまたま接近した場所で、たまたまそんな証言が出てくる訳がないと思って聞いていてもそのように言っていた。

80%の確率の問題をクリアー出来ていると考えられるのは、プライベート・アトーニー・ゼネラルの捜査権限がない故に強制して自白させていないということによる。質問についてもどこにも誘導尋問に近い部分はなく、真実を言っていると思われる部分しかない。

刑事裁判の場合裁判所においてはそれを否定するであろうようなことが自由な意志によって言われている証拠の場合には経験則によって信用できると考えられる。テープの証拠能力については民事訴訟法では反訳されれば文書としての性格が与えられてい。

実際には私が生きているすべての時間について録音しているのですべての時間についてテープがあるのは正しいことであるが、それを反訳する時間と、労力は莫大である。その作業に酒匂悦郎は一週間かかったと言っていたが、上告人(債権者)代表の場合には録音したのと同じだけ時間と労力がかかった。それだけ莫大な量の録音が存在する。

特に被上告人(債務者)がそれに気がついた場合には、宴会の席でそこに録音器を置いておき隠し録音でもしていない限りは、一旦気がついた場合には、100%不可能である。これによって収集された証拠はないが、内容は見ていないが、宴会の席のテープがある。最初はわいわいがやがやで聞こえなかったが、ついに聞こえたものである。

例えば次のテープがある。これは国土交通省江戸川工事事務所では推薦を依頼するというテープがあり、かつ、被上告人(債務者)の副会長が非会員を紹介する訳はないのであるから、この二つのテープを合わせれば完全に一致して、推薦が行われていることが証明されていることになる。

甲145号証拠として提出する。

被告副会長渋谷正雄と原告代表山口、佐久間良彦被告元公的土地評価委員長との話の録音テープの反訳。

平成16年7月21日午後7時頃、蓮田市にある大鷲飯店での地価調査打ち上げ会に酒席において、なんのきなしに話されたものであるので証拠として信用できると思われる。

・・・・・

佐久間「おれが今、国交省のあれでね、江戸川の堤防の、あれ評価やってんだよね。」

佐久間「江戸川の堤防があんまりやって、一生懸命にね、10年かけてスーパー堤防は出来ないから。」

被告副会長渋谷正雄「あのーなあに。」

佐久間「スーパー堤防は百年かかると言うんだ。」

被告副会長渋谷正雄「江戸川工事事務所のやつ、いった。」

佐久間「あーやっぱし、きました。紹介してくれって。」

被告副会長渋谷正雄「おれんところに、だからほら。」

佐久間「紹介してくれって来ました。」

渋谷「紹介してくれじゃなくて、紹介してくれと言うとこういう人間がいる。あーはっは。」

(山口を指さし、話をやめた。但し被告副会長渋谷正雄のいう「江戸川工事事務所のやつ、いった。」のうちの「いった。」の部分は、「(物件依頼が)推薦(紹介)によりいった。」の意味であると約3時間の話全体の内容を聞いていたので控訴人は認知できる。)

このテープの証拠能力については100%であると言えよう。その他のテープについても誘導されたところは微塵もなく、ただ話の相手が油断しただけである。

これから先は独占禁止法違反について、強制捜査の権限が与えられていない場合には証拠の収集は不可能になり、証拠の収集そのものをあきらめるしかない。

「かぎつけられそうだから、気をつけなよ。」

という連絡が被上告人(債務者)に出回ってしまうのである。

この連絡は非常に早かった。一度秩父の新井氏の所にあった後に、所沢の鈴木秀敏には即座に情報が伝わっていた。すべて鈴木秀敏に伝わっていることになる。そこで情報を管理していたと考えられる。その情報網は一瞬であると言ってよい。それ程に被上告人(債務者)には電話網が一瞬で出来上がっているのであるから、その他の独占禁止法における価格情報、発注情報も同様であると推測できる。

神栖町役場に送った内容証明郵便も他人の名前を語って電話した時にだけ、本当の話を聞けたが、これは法廷には出せないことになる。違法収集の証拠ということになる。

そうであるからテープはすべて上告人(債権者)に話しているのであるから違法収集の証拠ではなく採用できると考えられる。このことは第二審の証拠に関する判断はあれだけ多くの推薦の事実を上告人(債権者)の顔を知っていて話しているのであるから、事実認定しないことは経験則違反ということになる。

つまり油断をしている時以外は真実は話さないのである。捜査においては相手が油断をした時か、強制によってあきらめた時にだけ本当の話をする。あるいは仲間だと思っている人間にしか話をしないのである。

捜査の際におとり捜査をしたくなる理由がようやく分かったという感じである。油断させて本当の状況を調べるのである。また公正取引委員会の独占禁止法改正案のうちこの証拠収集の部分がいかに大切であるのかが分かるのである。

しかし違法ではなくても、このような場合には被上告人(債務者)の承諾によらないで証拠を収集しているのではないから、証拠能力があると考えられる。

「独占禁止法違反事件の例ではあるが、公取委が法人の悪質な違法行為に関する

証拠を収集して法人だけを告発し、強力な捜査権限を持つ検察当局が個人実行行為者の違法行為に関する証拠を収集して、双方を起訴したケースがある。」

「米国は、ディスカバリー(証拠開示)と呼ばれる一連の証拠収集制度を有しており、我が国の新法の下での証拠収集手続に比べ、 ... アメリカでは証券取引法や独占禁止法違反などで揖害賠償を求める訴訟のほか、人種差別差止訴訟などで大いに利用されている」という。

「証拠収集能力強化のために裁判所の監督の下で専門的知識を有する公取委に犯則調査権限を与えることは認める。」ことが求められている時代である。

用心していない時に自発的に自白してしまった自由意志による証拠は、そうであると被上告人(債務者)が主張するかも知れないが、証拠収集による証拠の能力、不意打ちと反論が可能か。隠そうとしている犯罪に対しては、何らかの強制がなければ証拠の収集は出来ない。

県の職員については、あそこまではっきりとテープでは証言しているんだから、80%は切り崩せる可能性はあると思うから、やはり証人として県の職員は呼ぶべきだったであろう。県は推薦はあったとは言ってない人がいるが、推薦はありましたかと被上告人(債務者)の弁護士は聞くだろう。この推薦の意味であるが、被上告人(債務者)の直接的な推薦ではなくても、暗黙の推薦であったとしてもよいであろう。

 しかし市町村については、被上告人(債務者)の推薦であるとの証言は、談合等関与にはなる。テープの人は正直だから言ってくれるとは思うが、人が良過ぎか、あるいは一かばちかか。

但し家内は350万円と、1億円をののしっている。この損失は大きい。従って家内の目から見れば、遅過ぎるというのはある。子供たちの目から見ても。これが急ぐ理由である。急迫の危険でやるべきだった。もし仮処分で勝っていても、本訴で否定されていたかもしれない。

 ただ「被上告人(債務者)の推薦とはいわないであろうという前提であり、247条の経験則違反はあるが、推薦は証明されているが、被上告人(債務者)の推薦とは関係がなく、原則違法であり、差止るべきであり、それ故に248条を使っての損害賠償請求が可能ということか。」

 しかし越知保見氏からトイザラス事件(安売りの排除事件)を教わったので良かったが、安売りの排除はヤードスティックかも知れない。しかし念書を書かなかったことが原因であり、安売りしそうであったからというのは理由にはなる。従って裁判によってではなくて、それもすべて安売りをするという裁判であるから、経験則として安売りが理由である。

  

テープに残っている可能性と確率

 突然証拠に残るような重要なことを話し始める。その時にテープを持っている可能性は、ゼロに近い1%程度である。ここでほぼ1%の確率になる。

洋服を着替えた時には、洋服の中に録音機がはいっていなかったりする。洋服のなかでもどこかズボンのポケットでは駄目である。

しかしそのテープが録音されている可能性が10%である。つまり相手の音が遠くて聞こえないとか、周りの騒音がうるさくて聞こえないとか、機械の調子が悪くて録音できていなかったり、電池がなくなっていたりというハップニングによって、あるいは、丁度録音ボタンをおしていなかったりということが起こる可能性が高い。

 そこではらはらして、録音のテープの再生を押してみて、ついに録音できていた時はほとんどない。重要な記録も逃していることの方が多い。

 もっとも惜しかったのは、酒匂悦郎と山口節生が井坂の事務所において「安売りするな。」と監禁された時の録音テープが全く音が聞こえなかったことである。

 しかしこれについては酒匂悦郎が証言してくれている。

 テープは準文書である。従って反訳して文書となる。

 もしその時のテープの人間を証人尋問していても、おそらく証拠をつかまえられなかったというのが赤坂裕彦の見解であり、絶対に証拠の通りに自白させられたというのが山口節生の見解である。

 もし赤坂説ならば、差戻は出来なかったかもしれない。

 善解すれば、即ち、被上告人(債務者)によって、それがなかったという証明がないのであるから、それがなかったというよりも、あったという確信をもつことが出来る。

「(一) 訴訟上の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実の存在を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」

注:最高裁判所の判決文「(一) 訴訟上の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実の存在を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。

  (二) 原審は、被上告人西川の四月五日又は一〇日の時点における検査義務違反とスエ子の本症発症との間の因果関係及び同月一二日の時点における経過観察義務違反とスエ子の本症発症との間の因果関係をいずれも否定した。原審の右判断の根拠は、スエ子の本症が四月一〇日以後に投与されたネオマイゾンを起因剤として過反応性の中毒性機序により同月一三日ないし一四日朝に発症したという認定事実にある。

  (三) しかしながら、本件においては、(1)被上告人西川が本症の副作用を有する多種の薬剤を約四週間にわたりスエ子に投与してきたこと、(2)遅くとも四月一二日にはスエ子に発疹が生じたこと、(3)遅くとも同月一四日にはスエ子に本症が発症していたことを裏付ける血液検査の結果があること、(4)本症の発症に伴い発疹を生ずることがあること、(5)スエ子に投与された薬剤の相互作用によっても本症が発症し得ること、などの原審認定事実によれば、「スエ子の本症の原因は被上告人西川がスエ子に投与した薬剤のうちの一つであること又はその複数の相互作用であること及びスエ子は遅くとも発疹が生じた四月一二日には本症を発症していたこと」が真実の高度の蓋然性をもって証明されたものというべきである(なお、同被上告人が本症の副作用を有する多種の薬剤をスエ子に長期間投与してきたという本件においては、右薬剤のうちの一つ又はその複数の相互作用が本症発症の原因であったという程度の事実を前提として被上告人らの注意義務違反の有無を判断することも、通常は可能であり、常に起因剤を厳密に特定する必要があるものではない)。

    ところで、原審は、本件鑑定のみに依拠して、ネオマイゾンがスエ子の本症の唯一の起因剤であり、スエ子の本症発症日は四月一三日から一四日朝であると認定したものであることは、原判決の説示から明らかである。そこで、原審の本件鑑定に対する証拠評価の適否について検討する。

  (四) 起因剤の認定について

   (1) 本件鑑定は、四月一〇日から同月一三日までの間にスエ子に投与されたネオマイゾンが唯一の起因剤として最も疑われると判断する。

   (2) しかしながら、本件鑑定は、被上告人西川がスエ子に投与した薬剤については、ネオマイゾンを含めていずれも起因剤と断定するには難点があるものであることを認めつつ、スエ子の発症時期に最も近接した時期に投与されたことを論拠として「ネオマイゾンが起因剤として最も疑われるが確証がない」とし、複数の右薬剤の相互作用により本症が発症することはあり得るものの、本件においては、そのような相互作用による本症の発症は医学的に具体的に証明されていない、とするものであって、その蓋然性を否定するものではない。

(3) 本件の証拠として提出された医学文献(甲第二九号証、乙第四号証の一、二)には、「本症の病因論は未完成な部分が多く、薬剤による好中球減少の機序は多様であり、詳細な機序については決定的なことはいえず、個々の症例において原因薬剤を決定することは困難なことが多い。」旨が記載されていることからすると、ネオマイゾンが最も疑われるが確証がないという本件鑑定のみからネオマイゾンを唯一単独の起因剤と認定することには、著しく無理があるものといわざるを得ない。」

との最高裁判所の判決によれば、「経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実の存在を是認し得る高度の蓋然性を証明すること」なのであり、これは疫学的証明にも、独占禁止法の違反の証明においても言えるのであるが、違反の証明である独占禁止法における証明は更に難しい。疫学的証明とほぼ同じ程度に難しいのである。何十人もの人が推薦があったといっているテープによる証言は、もしも裁判所によばれれば、それが違法であることを知っていなければならない公務員の証言なのであるから、裁判所においては否定していたかもしれないというのが理由で、被上告人(債務者)本人は証人申請を要請していたが、代理人の判断で証人申請を行わなかったのである。証人尋問していても否定されかねないと考えたのである。

 さて、テープにあることで2ついうと、被上告人(債務者)は裁判を上告人(債権者)が起こしたことをもって、裁判きちがい(何でも裁判によって権利を確定すること。しかし一年で610万件の訴訟が起こされいるが、3割が本人訴訟であるという。それが悪いという訳ではない)であるという趣旨の様であるが、これは裁判で対応すれば良いのであって、本来自己の権利を守ることは天賦の絶対的権利である。なおこのような事件を起こされておいて、裁判を起こさない人間はいない。

 これがこの判決の原因であるとすれば狂っているとしかいいようがない。

 これについては多くのテープがある。

 実際に生活に必要な程度以上ではないし、私は独占禁止法違反については独占禁止法はザル法であることも認めている。それはちゃんと大学も、大学院の修士も、博士後期課程での教育を受けているからだ。

 投票しなければ終わりだというかもしれない。それならばそれはただ裁判官も弁護士もそうなってしまう。田舎にはそういう人が多かった。私が教えた人の大部分はそうであった。

批判をした人間は入れないということが出来るとすれば、それはサロンのような場合だけである。独占的な地位を有する事業者団体で、必須の取引事例を管理している団体ではそれが出来ない。入会強制の団体と、自由競争下における任意団体との中間に位置する団体である。東京都不動産鑑定士協会は自由競争における任意団体であり、被上告人(債務者)は入会強制が出来る団体である。

第31 憲法上の公共の利益

 公正競争阻害性のある競争制限的な行為を規制することが独占禁止法の目的である。本件の場合には独占禁止法の差止を民事的な相隣関係としてとらえているために、独占禁止法そのものをなしにしている。独占禁止法は存在しないものとなっている。

民事上の争いは公共の利益に適合する場合を除いては、民事上の争いによって決定すべきである。そうではない理由付けを認めるとすれば、独占禁止法は存在意味レーゾンデートルが失われてしまう。国家の法律を台無しにしてしまうような法解釈は国家組織法である憲法に違反しているといえる。

国家の規制において、LRA(より制限的ではない代替的な法律による規制がある場合にはそちらの規制を採用すべきであるという原則。これを競争制限禁止に適用する場合にもより競争制限的ではない行為を民間団体であっても選ぶべきであるという法理の適用が考えられる。)の原則がある様に、民間団体であってもより競争制限的ではない規制を選ぶべきである。

競争制限的な行為は人権の問題でもある。競争制限的な行為によって本件事件における上告人(債権者)の生存権や、営業する権利を奪うような行為は憲法違反であると考えられ、憲法の人権規定に違反するものであるといえる。

第25条(生存権,国の義務)

@ すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

A 国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

All people shall have the right to maintain the minimum standards of wholesome and cultured living.

In all spheres of life, the State shall use its endeavors for the promotion and extension of social welfare and security, and of public health.

酒匂悦郎の考え方によれば、また上告人(債権者)が賛成するものであるが、特に不動産鑑定評価においては独占的な地位を被上告人(債務者)が有しており、そのことだけでも被上告人(債務者)の競争制限的な行為が上告人(債権者)の生存権を阻害しているといいうるのである。

憲法上の職業選択の自由と同時に、労働の権利憲法第27条、生存権憲法第25条を侵すものであるといいうる。

第27条(労働の権利義務,労働条件の基準,児童酷使の禁止)

@ すべて国民は,勤労の権利を有し,義務を負う。

A 賃金,就業規則,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める。

B 児童は,これを酷使してはならない。

All people shall have the right and the obligation to work.

Standards for wages, hours, rest and other working conditions shall be fixed by law.

Children shall not be exploited.

第32 独占禁止法上の公共の利益

独占禁止法上の公共の利益の概念は、公正競争そのものであるという一般的な学説によっても、公正競争阻害性のある競争制限的な行為が禁止されていることそのものであるということになるのであるから、民事上の理由付けが認められれば、公共の利益がそこなわれてもよいということになり、ついには独占禁止法そのものが存在しなくてもよいということになりかねない。このような概念は独占禁止法にいうカルテル概念などザル法であり、独占禁止法はない方がよいという考え方ipse dixitに似ており、談合の効用を書いた本や意見は大量に存在する。これは憲法に現れる概念をも否定する憲法違反であるといいうる。憲法第76条、同第98条違反である。法律以外の独占禁止法はない方がよいという考え方ipse dixitに拘束されてはならない。

第98条(憲法の最高法規性,条約,国際法規の尊重)

@ この憲法は,国の最高法規であって,その条規に反する法律,命令,詔勅(しょうちょく)及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は,その効力を有しない。

A 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は,これを誠実に遵守(じゅんしゅ)することを必要とする。

 備考;

詔勅=詔書・勅書・勅語など,天皇の意思を表示する文書の総称をいう。明治維新後は,事に臨んで詔勅が盛んに出されるようになり,天皇の一人称を「朕(ちん)」とし,漢語の多い独自の難解な文語体が用いられた。1907(明治40)年に公式令が制定され,詔勅の区別と形式が規定された。同法により,詔書は,皇室の大事と大権の施行に関する勅旨を国民に示すものとされ,天皇が署名して御璽(ぎょじ)を捺(お)し,宮内大臣,内閣総理大臣,国務大臣等が副署する。勅書は,文書による勅旨(天皇の意思)で,国民には示されない。このほか,法律,勅令の公布に際して条文の前に付する勅旨を上諭(じょうゆ)といった。勅語は天皇のことばで,それを文書にした勅語書も勅語という。ほかに,勅諭,御沙汰(さた),外国に対する国書,親書があった。公式令は1947(昭和22)年の日本国憲法の施行に伴い廃止され,現在では,天皇の国事行為に関して詔書が発せられ,内閣総理大臣,最高裁判所長官の任命には勅書が出される。なお,勅語は,1953(昭和28)「お言葉」と称することに改められた。また,「お言葉」では,天皇の一人称は「わたくし」で,普通の文体が用いられている。

条規=一条一条の条文によって定められている規定。きまり。おきて。

遵守=規則や法律などにしたがい,それをまもること。

This Constitution shall be the supreme law of the nation and no law, ordinance, imperial rescript or other act of government, or part thereof, contrary to the provisions hereof shall have legal force or validity.

The treaties concluded by Japan and established laws of nations shall be faithfully observed.

第76条(司法権,裁判所,特別裁判所の禁止)

@ すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

A 特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は,終審として裁判を行うことができない。

B すべて裁判官は,その良心に従い独立してその職権を行い,この憲法及び法律にのみ拘束される。

第33 独占禁止法上の安売り業者に対する競争制限的な行為と、念書によって入会させる行為との比較について最終的に要約する。

 

  これについては先に図示したのを図示のみでは説明が足りないので、ここにおいて説明する。

第34 理由の適正について

茨城県不動産鑑定士協会や、栃木県不動産鑑定士協会は更に入会強制が出来る団体であるが、被上告人(債務者)は公共団体との取引が7割を占める市場における独占的な地位を保有し、事業に必須の取引事例を保管しているのであるから、東京都不動産鑑定士協会のように3割が公共団体との取引である市場とは違った市場であり、事業に必須の取引事例の保管だけを行っている団体とは違っている。東京都では入れなかったら安売りを行えばよいのである。

 固定資産税の標準宅地の鑑定評価にあっては、被上告人(債務者)はほぼ90市町村のうちかっては70以上、現在は50以上の市町村で被上告人(債務者)との契約を行っており、ほぼ8割以上の市場における占有率を誇っていたのであり、現在は契約形態こそこの事件を考慮して、6割に減ってきているが実質はほぼ同じ程度で契約の形式を変えているに過ぎない。

注:最高裁判所の判例が判例たるゆえんは、それが、先例としての拘束力を持ち、下級審はその判例に従わなければならないところにある。もちろん、下級審の裁判例にはそういう拘束力はない。最高裁判所の判例は「法的ルール」だが、下級審の裁判例には(極端に言えば)参考程度の意味しかないのである。

「国側がこれに対して上告受理の申立をしました。まず、最高裁判所というのが、地方裁判所及び高等裁判所と何が違うかということを言います。証拠調べを最高裁判所は行いません。従って、証人尋問というものはないんです。同時に、証拠書類の提出というものもないんです。今まで、例えばどこかで事故が起こったら、事故の報告書などを証拠として出してきたんです。ところが、最高裁に対しては、もはや証拠書類の提出というのはあり得ないんです。では一体証拠調べを行わなかったらどうなるかというと、原判決が適法に確定した事実。例えば、蒸気発生器で高温ラプチャについては審査をしなかったというふうに原判決では確定をしたんです。そうすると、それは最高裁を拘束するんです。これは後で言いますけれども、国側は高温ラプチャについては審査した、審査したと相変わらず言っています。しかし、それについては新しい証人尋問もできませんし、証拠書類の提出もできないんです。適法に確定した事実なので、高温ラプチャの審査はしなかったということを前提として、最高裁は判断をせざるを得ないという状況になります。それで、あと問題が幾つかあるんです。

 昔は「上告」だけだったんです。ところが、5年ぐらい前から上告以外に上告受理の申立という2本立てにしました。2本立てにした上で、上告の場合には理由を制限したんです。憲法違反であるという場合と重大な手続違反だけにしたんです。重大な手続違反というのは、例えば裁判官が3人でやらなくてはいけないのに2人でやったとか。もう別の裁判所に行ってしまった人が判決を書いてしまったとか。そういったほとんどあり得ないような手続きの違反だけなんです。

 それで、憲法違反だと言っても、大体弁護士の感覚というのは、いろいろな法律違反は主張する時に、これは憲法違反だと言うと負け筋だというような感じ。つまり、憲法を持ち出さなければ勝てないような訴訟というのは負けるというような感じなんですね。よっぽど憲法違反というので主張はするけれども通らないんです。だから、上告というのはほとんど棄却なんです。ところが、上告申立がどっさりあるものですから、そんなのに最高裁が全部付き合っていられないということで、上告受理の申し立てというのを別に作った。これは、「法令の解釈に関する重要な事項」だけを理由にした。些細なことで受け付けませんよという。だから、これは読んで字の如く、「上告を受け付けてほしい」という申立なんですね。

 では、法令の解釈に関する重大な事項というのは何か、これは2種類あります。これは、判例に違反したと。「判例」というのは、最高裁判所の判断なんです。普通、地方裁判所とか高等裁判所で出された裁判というのは判例とは言わないんです。あれは、ただの「裁判例」と言います。これは法律家というのはこの辺を細かくごちゃごちゃ言うものですから、判例違反というと最高裁判所の判決にあっていないということなんです。その場合には、伊方最高裁判決及び東海原発最高裁判決、内容は全く一緒ですので伊方判決だけになります。先ほど「もんじゅ」では最高裁判例があると言いましたが、あれは入り口の話だけなので、ここで言う議論には入ってこないんです。

 その次は、法解釈の誤り。では、原子炉の関係で法令というのは何があるんだというと、原子炉等規制法24条1項という話だけになってくるんですね。それで、先ほど言ったように、事実というものについてはこれは最高裁を拘束します。「事実誤認だよ、これは間違っているよ」ということだったら上訴の理由にはできないんです。先ほど言ったように、高温ラプチャについては審理をしたよといってもそれは審理をしたということは言えないということなんですが、ただ、「経験則違反」というのは判例違反というふうに考えますので、例えばいろいろな証拠からそのように判断したということが明らかに間違っているようなものだったら、これは経験則違反だということは言えるんです。この辺がちょっとややこしい話にはなっています。何しろ、上告受理の申立を今やったという段階です。

【上告の手続き】

 では、手続きとしてどうなるかというと、上告受理の申立をすると50日以内に理由書の提出をしなくてはいけません。国側はこうなります。そうすると、最高裁は不受理決定または受理決定というものをします。不受理決定というのは本当に三行半みたいなものですね。本件上告受理は受理しないということだけしか書いていない。そんなのがぽっとやってくるんですね。または、上告を受理したという決定をするんです。上告を受理したというと、この理由書に対して答弁書を出しなさい、何日以内に出しなさいと言ってきます。それで、上告をした場合でも、先ほど言ったように、憲法違反とか重大な手続き違反の場合にはそういった理由書を出しますね。それを見ただけで、これはだめと言って却下とか棄却してしまうケースが圧倒的なんです。答弁書を出しなさいと言ってくるケースは極めて稀なんです。答弁書を提出しなさいと言ってきたら、今度2つに分かれます。口頭弁論を開かないケースと口頭弁論を開くケースがあります。口頭弁論を開かないということは、「書面だけであとは言い分も聞く必要はない」という意味ですから、これは棄却だということがすぐ分かるわけです。

 口頭弁論を開くと、大体原判決を破棄する場合が多いんです。それでも、口頭弁論を開いた挙句に棄却というのもあります。では、一体破棄したらどうなるのかというのを次に言います。先ほど言ったように、どういう場合に破棄するかというと、憲法に違反した、あるいは重大な手続きに違反した場合には、これを破棄して差し戻しをするか移送するんです。差し戻しをするというのは、名古屋高裁金沢支部で行った判決ですからそこに戻すという意味です。移送というのは、いろいろと事情があって同じ裁判所でやるのはまずい、別のところにやろうと。例えば東京高裁に移そうという場合、破棄してどこかに移送するということになる。ほとんどこれはないです。次は、破棄自判と言うんです。破棄をした挙句に最高裁判所自体で判断をしてしまうということです。これが破棄自判です。自判というのは自分で判断をするということです。もう1つも同じように、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反も破棄して差し戻し、移送、破棄自判ということになります。では、一体どのくらいの割合でこうなっているかということをちょっとお話しします。

 上告の申立が、去年は2,296件、上告受理の申立が2,357件、これが1つの書面で両方賄っているのもあるので、合わせて3,112件なんです。多いと見るか少ないと見るか分からないですけれども。それで、去年、不受理あるいは棄却にになっているのが、全部で4,833件です。破棄差し戻し、あるいは破棄自判になったのは、去年は92件、2.8%なんです。この2.8%というのは、今までの例がずっと2%だったものですから、去年だけぴょこっと増えたんです。なんで増えたかというと、1人で8件、こうなったのをもらった人がいるからです。

 ロス疑惑の三浦和義さんがあらゆるマスコミとか、いろいろなところを訴えていたのが、去年8件まとめて、特に共同通信とか時事通信からもらった記事をそのまま地方紙などが載せてしまった場合に地方紙を訴えたんですね。一審判決は、責任を負わないということはないんじゃないか、要するに共同通信や時事通信からもらったからといって、100%信用してそれを載せてしまうのはおかしいということで損害賠償請求を認めたんですが、高裁では配信記事に基づいて報道するということは態勢としてできているから、それを覆すだけの理由はなかったのではないかということで、三浦さんの訴えを退けたんです。それで、三浦さんが最高裁に行ったら、最高裁としては、結局これは個人的な犯罪やスキャンダルの問題だから、そこまで通信社の報道が信頼性があるとは思えないということで、8件まとめてこれをやったものですから、今まで2%しか破棄差し戻しにならなかったものが、去年だけ2.8%だったという異常事態になりました。多分来年になったらまた2%ぐらいしか破棄差し戻しにならないということになると思います。

 ということは、最高裁で破棄差し戻しや破棄自判をするということは非常に大変なんです。でも、国側が狙っているのは、「最高裁がいきなり判決をしてもらわなくてもいい。これをもう一度高等裁判所に差戻しをしてほしい」と。差戻しをすれば、法律審でないからあらゆる証拠が出せる。高裁判決が技術的におかしいと言うことが、差戻しをしてくれればそこでできるはずというようなことをどうももくろんでいるように思われます。

 国の上告受理の申立の内容というのは、まず無効ということについては、違法の「明白性が不要」だというように高裁がやったのは判例違反だと。つまり、今まで判例というのは、「重大かつ明白」を要件としていた。それの理由というのは法的な安定性で、つまり、一旦許可処分が出たということは、ずっと有効だということを前提として効くんだ。それを突然無効だと言われたら、それによって培ってきた法的な安定性が失われる。それで第三者の信頼についても、許可処分が起きたら、それを信頼していろいろな権利義務関係が入ってくる。だからそういった人たちの信頼を保護しなくてはいけない。それでは、住民はなんなんだというと、周辺住民はほかに民事訴訟だってできるし、いろいろできるじゃないかと。後続処分だって訴訟を起こせるじゃないかと。ほかに訴える手段があるから、明白性が不要だとやったのは判例に反しているというのが1つの主張です。

 その次、違法というものについては、高裁が出した法解釈が誤りで判例違反があると言うんです。それで、国の主張の前提として、「裁判所が何をするか」という主張があるんですね。裁判所というのは、国の言い分ですが、「原子炉を稼動させた場合に重大な事故が起こる可能性が高い」と認定判断し得る場合だけ許可処分は違法ということだと。裁判所が重大な事故が起こる可能性が高いというふうに認定判断できなければ、つまり、「分からない」と言うくらいだったら、違法と言うべきじゃないということなんです。だから、随分高いことを要求しています。

 しかも、どういうときに重大事故が起こるかというと、事故防止対策の一部分が合理性を有するかどうかというのを見ただけでは足りないんだと。国側がしょっちゅう言うのは、多重防護があると。「多重防護全体が不合理であると判断し得る場合だけが許可処分が無効だ」と言います。これはどこで言っているかというと、床ライナーが破れたということは事実として認めざるを得なくなったんです。そうすると、それは事故防止対策のほんの一部なんだと。それだけ見てああだこうだと言うのはおかしい。全体を見ればいいじゃないかと。そして、床ライナーが万一破れたとしても、コンクリートは1メートルの厚さがあるんだからそんなにほかに影響を及ぼすことはない、ということを主張しています。だから、全体として不合理であると判断し得る場合だけが無効なんだと。可能性が高い場合だけ違法だというのに、ところが実際には、原判決は具体的危険性を否定できないという非常に低いレベルなのに違法だと言ってしまった。それはおかしい。それは単なる可能性、危惧の念を言ったにすぎなくて、裁判所が果たすべき役割を果たしていない、ということを言っています。

 そしてもう1つは、規制法というのはそもそも相対的な安全性というのを採用しており、絶対的な安全性を求めるということは不可能だ、と言っています。誰も絶対的な安全性を求めているなんて思っていないのに、国がこう言うんです。それでは、どういう場合に相対的安全性なのかというと、どのレベルの安全性がいいかどうかというのは、原子力安全委員会と主務大臣−今だったら経済産業大臣、以前だったら内閣総理大臣に委ねられていたんだと。委ねられていたんだから、裁判所は行政庁に委ねられた専門技術的判断を尊重すべきだと。そうすると、すごく曖昧なものの言い方になるんです。相対的安全で、安全の水準というのは原子力安全委員会や主務大臣が決めるので、決めたんだったらそれは尊重すべきだ、となったら、「文句を言うな」ということしか言えないんです。それで、行政庁に委ねられた専門技術的判断を尊重しろと。つまり、「自分を敬ってくれなかったのはおかしい」というふうに読めるかなと思っているんです。これがメインなんです。

【ナトリウム対策に関する国の主張の問題】

 その次が、各論に入るとこういう言い方です。まず腐食対策。ナトリウムが漏れると空中で水分と一体になって、床ライナーの上に落ちると鋼鉄を腐食させる。それについては詳細設計段階、つまり、床ライナーの厚さは何ミリにするとか、いろいろなことをやればコンクリートとナトリウムの直接接触を防止できないわけではない、だから、基本設計には間違いはなかったんだ、あとは動燃側に任せていけばいいじゃないかと。そして、詳細設計段階で直接接触を防止できないかどうかというのは、原子力安全委員会ではなくて主務大臣だけで判断できると。そういった言い方なんです。

 温度については、安全審査で530℃以下だということにしたんですが、実際には700℃とか800℃近くなっちゃったんですね。それについては、「本当は安全審査で温度まで確認する必要がなかった。安全審査とは無関係だ。だから、温度が200℃超えていると裁判所はすごく強調したんですけれども、確認する必要がなかったものをたまたま親切にやってあげただけなんだから、それが200℃超えようが何だろうが関係がない」という主張なんです。それで、原判決というのが3系統、「もんじゅ」の場合には先ほどの図だと分かりにくかったんですが、原子炉本体からAループ、Bループ、Cループと3つループが出てきているんです。それぞれ冷却系があります。その3ループ全部が分離ができない。つまり、1個がだめになったらほかのものまでだめになる。冷却能力がなくなって放射能が外部に出ると言うけれども、これは技術的常識からみて空想的仮定を重ねているんだと。つまり、仮定に仮定を重ねているので、そんなことはあり得ない、という言い方をしています。ナトリウム漏えい事故については、ここが一番国側としては苦しい主張だと私は思うんです。現実に事故は起こってしまった。だから、確認する必要はなかったとか、後でやればいいじゃないかというようなこと、余り法律的でない議論を法律審である最高裁に言わざるを得ないというほど、これは非常に苦しいなと感じです。

【高温ラプチャに関する国の主張の問題】

 蒸気発生器伝熱管の破損事故については、相変わらず高温ラプチャについては安全審査で検討されて考慮する必要はないとされた、とこれを繰り返しています。「百篇言うと何となく本当だなと思うんだろう」ということで言っているのだろうと思います。それから、水漏えいの検知をしてプラントを停止する、これは多重防護だと。というのは、国が言うのは最後はプラントを停止できるからいいじゃないか。だから、事故防止対策はなされているんだと。それで「発生可能性を絶対的には排除しがたいことと前提とする必要はない」と。これは文章が非常に分かりにくいんですね。発生可能性を絶対的には排除しがたい、わずかでも発生する可能性があるということを前提とする必要はないということです。わずかでも発生する可能性があるということを前提とするとのは、絶対的安全を求める考え方だ、原子炉等規制法はそれを前提としていない、だから「事故が起こるかもしれないということぐらいは前提としてもいいんだ」という言い方なんですね。それで、原判決に対して文句を言っているのは、水素ガスが炉心に至ると。水・ナトリウム反応が起こりますから水素が出ますね。そうすると、二次系のループを通って中間熱交換器まで壊して、それが一次系に入って炉心に入るとか、あるいは一次系と二次系がまぜこぜになると、一次系の放射能が二次系に入って、破れ目のところから外に出てしまう、と原判決はいうけれども、「それは単なる可能性・危惧にすぎないんだ」という言い方をしています。これについても、やはり国側の主張というのは苦しいだろうなと思います。

【炉心崩壊事故に関する国の主張の問題】

 3つ目、炉心崩壊事故です。炉心崩壊事故というのは確かに設計基準事故ではないんです。それで、国が言っているのは念のためにやっているだけだと。だから、どんなやり方をするにしても専門技術的な判断だと。だから、専門技術的判断について尊重してほしい、と言っているんですけれども。先ほど言ったように、「遷移過程についても審査をちゃんとしたんだ。だから、原判決が言っているように、審査しなかったというのはおかしい」と言っているんですが、これは最高裁のレベルでいけば、原判決が遷移過程を審査しなかったと事実認定をしたら、最高裁としてはしなかったという前提で判断をするわけです。破棄・差し戻しすると、審査したかどうかというところまでまたやらなくちゃいけない。それで、国が言っているのは、「遷移過程も審査した」と。最高エネルギー放出380MJ[メガジュール]というのは、安全審査でやっている最高エネルギーなんです。「それより未満だった。だから、わざわざ書かなかっただけだ。最新の解析では110MJであり、これよりも1/3以下だから、安全審査は妥当だ」という結論でした。「それにもかかわらず、やっていなかったからおかしいと言った判決はおかしい」というのが国側の主張です。

【原告側の反論】

 それに対する反論。10月の段階で答弁書を出すということで、今現在、あれこれあれこれ検討中です。「無効について明白性は不要」、これについては絶対に勝てるという自信があります。というのは、問題はここなんです。重大な瑕疵がある処分によって国民の権利が侵害された場合には保護するというのが国の役割だ。そうすれば、これが最重要に出てくるというのと、「第三者を保護しなくてはいけない」と国側は言うけれども、それでは一体誰が第三者なんだと。動燃というのは直接的な処分の名宛人なんです。そうすると、それは第三者ではない。

 では、動燃と契約をしていた工事関係者が第三者かというと、第三者ではなくて動燃の事業をやることについてお手伝いをするだけの話なんです。だから、動燃が後で、例えば「設置許可処分が無効だ」ということになったとしても、それは動燃の責任なんです。動燃と工事関係者の間で処理すべき話であって、設置許可を信頼した第三者という意味ではないんです。許可時の明白を要求すると、後になって分かったことで裁判を起こせなくなる。これが実際的な、いわゆる利益衡量というところです。つまり、先ほどの判決のところで述べたように、「一見明白に瑕疵がある」というのは、実際そんなことはあり得ないんですね。人違いだったということだったら言える程度の話で。そういうことを要求すると、法的には許可処分自体有効だろうと思っても、後になっていろいろなことが分かってきたら、やはり無効だったんだと、この許可処分は無効だったんだという時に裁判を起こせなくなってしまうわけですよ。「許可時に明白」ということを要求すると。だから、これはどうしても必要になるし、学者もこの1、2、3を挙げて原判決は正しいと言っています。

 その次は、法解釈の誤り、判例違反ではないということについては、まず、裁判所の役割というのが、先ほど言ったように、重大事故が起こる可能性まで認定しなくてはいけないのかというと、裁判所にそれを要求するのはそもそもおかしいんですね。そんなに裁判所は完璧な知識を持っているわけではないし、マンパワーがあるわけではない。そうすると、裁判所が判断できるのは、実際にどのような調査をしたか、どんな審議をしたか、どんな判断をしたか、その過程をずっと追いかけてみて、そこで例えばこれはやっていないね、これはやっているけれどもそれは変だね、ということだけを審理するんです。それ以上の力量はないし、それで十分だと。

 だから、過誤・欠落というのが看過しがたい、それが非常に重要なもの、原子炉等規制法というのは原発を規制するものですから非常に重要なものなんですね。そういうようなものだったら判断は不合理だったと。だから、許可は違法とすべきなんだということです。これはもう伊方判決がはっきり言っています。ところが、国が言うように、原子炉を稼動させた場合に重大な事故が起こる可能性が高いというような判断までしろというのは、これは明らかに実体判断を求めることとして伊方判決に反するんです。

 それでは、規制法というのはどうかというと、原子炉というのは高度な潜在的危険性を持ちます。これは他の産業とは全く比較ができないぐらい。そうすれば、「災害の防止上支障がないこと」という条文なんですが、それについては高度な安全性を要求しているということは言える。それは絶対的な安全を要求しているわけではないんですが、相対的な意味での安全性の高さを要求されている。そして、原子炉等規制法というのは、原子炉が稼動するかどうか規制するものですから、違法であれば当然住民の健康だとか環境に影響があるんですから重大な違法になるんだと。ということは、取消訴訟と無効確認訴訟というのは違いはないんじゃないか。違いがあるというのはそもそもおかしいというのが、私共弁護士の最終的な結論になっています。

 その次。それでは、ナトリウム漏えい事故についてはどういうような主張をするかというと、これは現実の事故が起きた。燃焼実験も行なった。これはほかの原発訴訟では無いことなんですね。ということは、これは証拠価値としては非常に大きな証拠価値があるわけなんです。しかも変更許可申請を国が行っている。ということは、基本設計の誤りを国自身が認めた、動燃自身が認めたということです。これは当然理論的には明らかにこうなるんです。

 それで、設計基準事故というのは、そもそも設計が妥当であるかどうかを確認するために10幾つか事故を作るんです。それは頭の中で考える事故なんです。それがちゃんと収束をするという結論になって初めて設計が妥当だということが言える。ところが、それが崩れてしまったなら、炉心の十分な冷却が可能という基準がそもそも当てはまらないことになるので、その後どうなるかというのは安全審査をしていないわけだから、放射能が外に出る・出ないということまでは言う必要がないし、それは言えない。事故想定が崩れるということで重大な違法になるというのは明らかという考え方です。

 次に、蒸気発生器伝熱管破損事故では高温ラプチャが安全審査では検討されていない。これはもう確定した。これも変更許可申請で検知器を追加していますから、基本設計の誤りということになります。それで、水漏えい検知器というのは非常に重要なシステムなんです。設計基準事故が起きた時に、そこで収束するという保証はないんです。そうすると、炉心の十分な冷却が可能だとか、放射能被曝が著しくないという基準に当てはまらなくなる。そうすると、後は放射能が出るか出ないかというのは関係がなくて重大な違法になる。

 炉心崩壊事故は確かに設計基準事故ではありません。しかし安全審査の対象にはなっています。これは高速増殖炉の特殊性からそうなっている。だから、名古屋高裁金沢支部も言っているように、「起こらないと言うのはおかしいんだ、だから起こるということも考えなくてはいけない」というのはそのとおりなんです。それから、遷移過程を審査していない。だから、審査していないのだから、最高のエネルギー放出というのは380MJを超えるかどうかは不明じゃないかと。審査していないということから、すぐにそれは重大な違法だということが言える。もう1つは、最新の解析と言っているけれども、それは動燃がそう言っているだけなんです。それでは、動燃以外にそれを研究している人がいるかというと全然いないという状態なんですけれども。だから、動燃の言い分だけで現在の科学技術水準とは言えない。だから、やはりもう一度安全審査をやり直すべきだと。これをやっていないと炉心崩壊事故についてはだめだということにしたい。こんな内容で、大体数百ページにわたるような答弁書を今書いているところです。それが10月にできます。

【もんじゅをカルカーに!】

 これは全く違う話。ジグソーパズルに写っているのは西ドイツのカルカーというところにある建設中止となった高速増殖炉の跡地です。「ケルンヴァッサーヴンダーランド」となっています。これは核の水のワンダーランド、遊園地なんです。数年前にオランダ人の実業家が買って、こういう名前のワンダーランドに造りかえています。そこでジグソーパズルを売っていたので買ってきたんです。

 だから「もんじゅ」もこんなふうになったらいいなというのが、私共の希望であります。それは原告の皆さん方の希望だと思います。

参考

福武公子「勝利!名古屋高裁金沢支部でもんじゅ行訴判決!−もんじゅ設置許可処分は安全審査の欠落により無効」原子力資料情報室通信345号

海渡雄一「もんじゅ訴訟−国による上告理由に対する反論」原子力資料情報室通信350号 」

被上告人(債務者)のような団体がサロンのような団体ではないとする茨城県不動産鑑定士協会事件判決は、最高裁判所の判決であり、もっとも重要視すべき判決であるのに、高裁判決はこれを無視している。これは明らかな判例違反である。それに対して日本不動産鑑定協会で唯一人、他のすべての不動産鑑定士が被上告人(債務者)らの報復を恐れて、それを法律違反だと言わなかったのに、上告人(債権者)のみがそれに対して敢然と法律違反であると言ったことが、念書を書かなかったことと同様に、被上告人(債務者)らの法律を無視する態度が現れているのであり、更正の見込みがないと考えてしかるべきである。

さろんのような団体ではないからこそ、独占禁止法上の一定の理由がある場合には強制加入の団体となることがありうるということである。

第35 強制加入団体ではないが、競争制限的になる場合には事業者団体に加入の強制が可能であるか。

    税理士会は、税理士の入会が間接的に強制されるいわゆる強制加入団体であり、法に別段の定めがある場合を除く外、税理士であって、かつ、税理士会に入会している者でなければ税理士業務を行ってはならないとされている(法52条)。

    一方では、任意団体であるが事業者団体として独占禁止法上の規制を受ける被上告人(債務者)においては、「法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。

 特に、政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。なぜなら、政党など規正法上の政治団体は、政治上の主義若しくは施策の推進、特定の公職の候補者の推薦等のため、金員の寄付を含む広範囲な政治活動をすることが当然に予定された政治団体であり(規正法3条等)、これらの団体に金員の寄付をすることは、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかに密接につながる問題だからである。」とするのとは異なり、任意に理事会の決定により特定の政党に対して政治献金をしたり、投票の自由を制限したり、「様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている」わけではないのであるから、特定の思想・信条及び主義・主張を有する者を排除する権利を有しているように見えるが、独占禁止法上独占的な地位にあり、その団体に加入していなければ「事業活動を行うことが困難である以上」特定の思想・信条及び主義・主張を有する者を排除する権利は事業者団体の性格からして存在しないというべきである。

 「民法上の法人は、法令の規定に従い定款又は寄付行為で定められた目的の範囲内において権利を有し、義務を負う(民法43条)。この理は、会社についても基本的に妥当するが、会社における目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行する上に直接又は間接に必要な行為であればすべてこれに包含され(最高裁昭和24年(オ)第64号同27年2月15日第二小法廷判決・民集六巻二号77頁、同27年(オ)第1075号同30年11月29日第三小法廷判決・民集九巻一二号1886頁参照)、さらには、会社が政党に政治資金を寄付することも、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためにされたものと認められる限りにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為とするに防げないとされる(最高裁昭和41年(オ)第444号同45年6月24日大法廷判決・民集二四巻六号625頁参照)。

(ニ) しかしながら、税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であって、その目的の範囲については会社と同一に論ずることはできない。

 税理士は、国税局の管轄区域ごとに一つの税理士会を設立すべきことが義務付けられ(法49条一項)税理士会は法人とされる(同条三項)。また、全国の税理士会は、日税連を設立しなければならず、日税連は法人とされ、各税理士会は、当然に日税連の会員となる(法49条の14第一、第三、四項)。」

 「税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であって、その目的の範囲については会社と同一に論ずることはできない。」これについては被上告人(債務者)についても会社とはその法的性格を異にする法人であって、その目的の範囲については会社と同一に論ずることはできない。被上告人(債務者)はサロンのような団体でもなく、不動産鑑定評価に関する法律によって設立が予定された埼玉県内の唯一の団体である。事業者団体ではあるが、信用を付与された公的な性格を有し、唯一でありそれから排除された場合には事業の継続が困難になるという性格を有するのであるから、特定の思想・信条及び主義・主張を有する者を排除する権利はそのような特殊な事業者団体の性格からして存在しないというべきである。

 「税理士会は、税理士の入会が間接的に強制されるいわゆる強制加入団体であ」るのと同じような意味で、被上告人(債務者)のように独占的な地位を有する団体である場合には、それからの排除が競争上不平等な取扱になる場合や、競争業者に入会が強制されることが出来、そのことについては任意的な団体ではないといううる。この点では「事業者団体ないしは職業団体、あるいは、品質保証団体が、もし参加を拒むことによって客観的に正当な理由なく平等的ではない取扱となり、ある事業者に競争上不当な不利益を与える場合には、入会を拒むことは許されない。(ドイツ独占禁止法GWB第20条第6項入会拒絶の禁止)」のようなことが日本で本件事件においては差止請求として主張されているが、事業者団体の自由を否定する違憲の請求にはならないと考えられる。

注:牛島税理士訴訟最高裁判決

最高裁判決 平成四年(オ)第1796号

判  決

熊本市出水六丁目39番11号 上 告 人 牛 島 昭 三

右訴訟代理人弁護士別紙上告代理人

目録記載のとおり

熊本市大江五丁目17番5号

被 上 告 人南九州税理士会

右代表者会長末 崎 将 弘

右訴訟代理人弁護士小 川 英 長

池 上 健 治

 右当事者間の福岡高等裁判所昭和61年(ネ)第106号、同62年(ネ)第551号選挙権被選挙権停止処分無効確認等請求控訴、同附帯控訴事件について、同裁判所が平成4年4月24日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあり、被上告人は上告棄却の判決を求めた。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主 文

一  原判決を破棄する。

二  上告人の請求中、被上告人の昭和53年6月16日の総会決議に基づく特別会費の納入義務を上告人が負わないことの確認を求める部分につき、被上告人の控訴を棄却する。

三  その余の部分につき、本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

四  第二項の部分に関する控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

理 由

 上告代理人馬奈木昭雄、同板井優、同浦田秀徳、同加藤修、同椛島敏雅、同田中利美、同西清次郎、同藤尾順司、同吉井秀広の上告理由第1点、第4点、第5点、上告代理人上条貞夫、同松井繁明の上告理由、上告代理人諌山博の上告理由及び上告人の上告理由について

一 右各上告理由の中には、被上告人が政治資金規正法(以下「規正法」という。)上の政治団体へ金員を寄付することが被上告人の目的の範囲外の行為であり、そのために本件特別会費を徴収する旨の本件決議は無効であるから、これと異なり、右の寄付が被上告人の目的の範囲内であるとした上、本件特別会費の納入義務を肯認した原審の判断には、法令の解釈を誤った違法があるとの論旨が含まれる。以下、右論旨について検討する。

二 原審の適法に確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

1 被上告人は、税理士法(昭和55年法律第26号による改正前のもの。以下単に法という。)49条に基づき、熊本国税局の管轄する熊本県、大分県、宮崎県及び鹿児島県の税理士を構成員として設立された法人であり、日本税理士会連合会(以下日税連という。)の会員である(法49条の14第4項)。被上告人の会則には、被上告人の目的として法49条2項と同趣旨の規定がある。

2 南九州税理士政治連盟(以下南九税政という。)は、昭和44年11月8日、税理士の社会的、経済的地位の向上を図り、納税者のための民主的税理士制度及び租税制度を確立するため必要な政治活動を行うことを目的として設立されたもので、被上告人に対応する規正法上の政治団体であり、日本税理士政治連盟の構成員である。

3 熊本県税理士政治連盟、大分県税理士政治連盟、宮崎県税理士政治連盟及び鹿児島県税理士政治連盟(以下、一括して南九各県税政という。)は、南九税政傘下の都道府県別の独立した税政連として、昭和51年7、8月にそれぞれ設立されたもので、規正法上の政治団体である。

4 被上告人は、本件決議に先立ち、昭和51年6月23日、被上告人の第20回定期総会において、税理士法改正運動に要する特別資金とするため、全額を南九各県税政へ会員数を考慮して配付するものとして、会員から特別会費5000円を徴収する旨の決議をした。被上告人は、右決議に基づいて徴収した特別会費470万円のうち446万円を南九各県税政へ、5万円を南九税政へそれぞれ寄付した。

5 被上告人は、昭和53年6月16日、第22回定期総会において、再度税理士法改正運動に要する特別資金とするため、各会員から本件特別会費5000円を徴収する、納期限は昭和53年7月31日とする、本件特別会費は特別会計をもって処理し、その使途は全額南九各県税政へ会員数を考慮して配付する、との内容の本件決議をした。

6 当時の被上告人の特別会計予算案では、本件特別会費を特別会計をもって処理し、特別会費収入を5000円の969名分である484万5000円とし、その全額を南九各県税政へ寄付することとされていた。

7 上告人は、昭和37年11月以来、被上告人の会員である税理士であるが、本件特別会費を納入しなかった。

8 被上告人の役員選任規則には、役員の選挙権及び被選挙権の欠格事由として選挙の年の3月31日現在において本部の会費を滞納している者との規定がある。

9 被上告人は、右規定に基づき、本件特別会費の滞納を理由として、昭和54年度、同56年度、同58年度、同60年度、同62年度、平成元年度、同3年度の各役員選挙において、上告人を選挙人名簿に登載しないまま役員選挙を実施した。

三 上告人の本件請求は、南九各県税政へ被上告人が金員を寄付することはその目的の範囲外の行為であり、そのための本件特別会費を徴収する旨の本件決議は無効であるなどと主張して、被上告人との間で、上告人が本件特別会費の納入義務を負わないことの確認を求め、さらに、被上告人が本件特別会費の滞納を理由として前記のとおり各役員選挙において上告人の選挙権及び被選挙権を停止する措置を採ったのは不法行為であると主張し、被上告人に対し、これにより被った慰謝料等の一部として500万円と遅延損害金の支払を求めるものである。

四 原審は、前記二の事実関係の下において、次のとおり判断し、上告人の右各請求はいずれも理由がないと判断した。

1 法49条の12の規定や同趣旨の被上告人の会則のほか、被上告人の法人としての性格にかんがみると、被上告人が、税理士業務の改善進歩を図り、納税者のための民主的税理士制度及び租税制度の確立を目指し、法律の制定や改正に関し、関係団体や関係組織に働きかけるなどの活動をすることは、その目的の範囲内の行為であり、右の目的に沿った活動をする団体が被上告人とは別に存在する場合に、被上告人が右団体に右活動のための資金を寄付し、その活動を助成することは、なお被上告人の目的の範囲内の行為である。

2 南九各県税政は、規正法上の政治団体であるが、被上告人に許容された前記活動を推進することを存立の本来的目的とする団体であり、その政治活動は、税理士の社会的、経済的地位の向上、民主的税理士制度及び租税制度の確立のために必要な活動に限定されていて、右以外の何らかの政治的主義、主張を掲げて活動するものではなく、また、特定の公職の候補者の支持等を本来の目的とする団体でもない。

3 本件決議は、南九各県税政を通じて特定政党又は特定政治家へ政治献金を行うことを目的としてされたものとは認められず、また、上告人に本件特別会費の拠出義務を肯認することがその思想及び信条の自由を侵害するもので許されないとするまでの事情はなく、結局、公序良俗に反して無効であるとは認められない。本件決議の結果、上告人に要請されるのは5000円の拠出にとどまるもので、本件決議の後においても、上告人が税理士法改正に反対の立場を保持し、その立場に多くの賛同を得るように言論活動を行うことにつき何らかの制約を受けるような状況にもないから、上告人は、本件決議の結果、社会通念上是認することができないような不利益を被るものではない。

4 上告人は、本件特別会費を滞納していたものであるから、役員選任規則に基づいて選挙人名簿に上告人を登載しないで役員選挙を実施した被上告人の措置、手続過程にも違法はない。

五 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。

1 税理士会が政党など規正法上の政治団体に金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する政治的要求を実現するためのものであっても、法49条2項で定められた税理士会の目的の範囲外の行為であり、右寄付をするために会員から特別会費を徴収する旨の決議は無効であると解すべきである。すなわち、

(一) 民法上の法人は、法令の規定に従い定款又は寄付行為で定められた目的の範囲内において権利を有し、義務を負う(民法43条)。この理は、会社についても基本的に妥当するが、会社における目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行する上に直接又は間接に必要な行為であればすべてこれに包含され(最高裁昭和24年(オ)第64号同27年2月15日第二小法廷判決・民集六巻二号77頁、同27年(オ)第1075号同30年11月29日第三小法廷判決・民集九巻一二号1886頁参照)、さらには、会社が政党に政治資金を寄付することも、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためにされたものと認められる限りにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為とするに防げないとされる(最高裁昭和41年(オ)第444号同45年6月24日大法廷判決・民集二四巻六号625頁参照)。

(ニ) しかしながら、税理士会は、会社とはその法的性格を異にする法人であって、その目的の範囲については会社と同一に論ずることはできない。

 税理士は、国税局の管轄区域ごとに一つの税理士会を設立すべきことが義務付けられ(法49条一項)税理士会は法人とされる(同条三項)。また、全国の税理士会は、日税運を設立しなければならず、日税連は法人とされ、各税理士会は、当然に日税連の会員となる(法49条の14第一、第三、四項)。

 税理士会の目的は、会則の定めをまたず、あらかじめ、法において直接具体的に定められている。すなわち、法49条二項において、税理士会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とするとされ(法49条の二第二項では税理士会の目的は会則の必要的記載事項ともされていない。)、法49条の12第一項においては、税理士会は、税務行政その他国税若しくは地方税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができるとされている。

 また、税理士会は、総会の決議並びに役員の就任及び退任を大蔵大臣に報告しなければならず(法49条の11)、大蔵大臣は、税理士会の総会の決議又は役員の行為が法令又はその税理士会の会則に違反し、その他公益を害するときは、総会の決議についてはこれを取り消すべきことを命じ、役員についてはこれを解任すべきことを命ずることができ(法49条の18)、税理士会の適正な運営を確保するため必要があるときは、税理士会から報告を徴し、その行う業務について勧告し、又は当該職員をして税理士会の業務の状況若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができる(法49条の19第一項)とされている。

 さらに、税理士会は、税理士の入会が間接的に強制されるいわゆる強制加入団体であり、法に別段の定めがある場合を除く外、税理士であって、かつ、税理士会に入会している者でなければ税理士業務を行ってはならないとされている(法52条)。

(三) 以上のとおり、税理士会は、税理士の使命及び職責にかんがみ、税理士の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的として、法が、あらかじめ、税理士にその設立を義務付け、その結果設立されたもので、その決議や役員の行為が法令や会則に反したりすることがないように、大蔵大臣の前記のような監督に服する法人である。また、税理士会は、強制加入団体であって、その会員には、実質的には脱退の自由が保障されていない(なお、前記昭和55年法律第26号による改正により、税理士は税理士名簿への登録を受けた時に、当然、税理士事務所の所在地を含む区域に設立されている税理士会の会員になるとされ、税理士でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行ってはならないとされたが、前記の諸点に関する法の内容には基本的に変更がない。)。

 税理士会は、以上のように、会社とはその法的性格を異にする法人であり、その目的の範囲についても、これを会社のように広範なものと解するならば、法の要請する公的な目的の達成を阻害して法の趣旨を没却する結果となることが明らかである。

(四) そして、税理士会が前記のとおり強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていないことからすると、その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、次のような考慮が必要である。

 税理士会は、法人として、法及び会則所定の方式による多数決原理により決定された団体の意思に基づいて活動し、その構成員である会員は、これに従い協力する義務を負い、その一つとして会則に従って税理士会の経済的基礎を成す会費を納入する義務を負う。しかし、法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。

 特に、政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をするかどうかは、選挙における投票の自由と表裏を成すものとして、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるというべきである。なぜなら、政党など規正法上の政治団体は、政治上の主義若しくは施策の推進、特定の公職の候補者の推薦等のため、金員の寄付を含む広範囲な政治活動をすることが当然に予定された政治団体であり(規正法3条等)、これらの団体に金員の寄付をすることは、選挙においてどの政党又はどの候補者を支持するかに密接につながる問題だからである。

 法は、49条の12第一項の規定において、税理士会が、税務行政や税理士の制度等について権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができるとしているが、政党など規正法上の政治団体への金員の寄付を権限のある官公署に対する建議や答申と同視することはできない。

(五) そうすると、前記のような公的な性格を有する税理士会が、このような事柄を多数決原理によって団体の意思として決定し、構成員にその協力を義務付けることはできないというべきであり(最高裁昭和48年(オ)第499号同50年11月28日第三小法廷判決・民集二九巻一〇号1698頁参照)、税理士会がそのような活動をすることは、法の全く予定していないところである。税理士会が政党など規正法上の政治団体に対して金員の寄付をすることは、たとい税理士に係る法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、法49条二項所定の税理士会の目的の範囲外の行為といわざるを得ない。

2 以上の判断に照らして本件をみると、本件決議は、被上告人が規正法上の政治団体である南九各県税政へ金員を寄付するために、上告人を含む会員から特別会費として5000円を徴収する旨の決議であり、被上告人の目的の範囲外の行為を目的とするものとして無効であると解するほかはない。

 原審は、南九各県税政は税理士会に許容された活動を推進することを存立の本来的目的とする団体であり、その活動が税理士会の目的に沿った活動の範囲に限定されていることを理由に、南九各県税政へ金員を寄付することも被上告人の目的の範囲内の行為であると判断しているが、規正法上の政治団体である以上、前判示のように広範囲な政治活動をすることが当然に予定されており、南九各県税政の活動の範囲が法所定の税理士会の目的に沿った活動の範囲に限られるものとはいえない。因みに、南九各県税政が、政治家の後援会等への政治資金、及び政治団体である南九税政への負担金等として相当額の金員を支出したことは、原審も認定しているとおりである。

(六) したがって、原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、右の違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、その余の論旨について検討するまでもなく、原判決は棄却を免れない。そして、以上判示したところによれば、上告人の本件請求のうち、上告人が本件特別会費の納入義務を負わないことの確認を求める請求は理由があり、これを認容した第一審判決は正当であるから、この部分に関する被上告人の控訴は棄却すべきである。また、上告人の損害賠償請求については更に審理を尽くさせる必要があるから、本件のうち右部分を原審に差し戻すこととする。

よって、民訴法408条、396条、384条、407条一項、96条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官    園部 逸夫

    裁判官    可部 恒雄

    裁判官    大野 正男

    裁判官    千種 秀夫

    裁判官    尾崎 行信

上告代理人員緑

馬奈木 昭 雄 板 井   優 浦 田 秀 徳 加 藤  修 椛 島 敏 雅

田 中 利 美 西 清 次 郎 藤 尾 順 司 吉 井 秀 広 上 条 貞 夫

松 井 繁 明 諌 山   博 池 永   満 名和田 茂 生 小 島   肇

山 本 一 行 小 澤 清 実 幸 田 雅 弘 平 田 広 志 井 上 道 夫

梶 原 恒 夫 小 林 洋 二 内 田 省 司 高 橋 謙 一 小 泉 幸 雄

津 田 聰 夫 松 岡   肇 石 田 吉 夫 岩 田 研二郎 鵜 川 隆 明

海 川 道 郎 大久保 賢 一 岡 田 正 樹 宮 澤 洋 夫 河 内 謙 策

加 藤 美 代 神 山 祐 輔 小 島 成 一 坂 本   修 佐 藤 克 昭

佐 藤 誠 一 四 位 直 毅 島 田 浩 孝 杉 村   茂 高 橋   敬

高 橋   勲 吉 田 健 一 田 中   隆 谷 萩 陽 一 寺 村 恒 郎

鷲 見 賢一郎 前   哲 夫 増 本 一 彦 松 岡 康 毅 山 田 忠 行

横 松 昌 典 横 山 慶 一 吉 本 隆 久 和 田   格

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注:2003年4月13日(日)「しんぶん赤旗」

牛島税理士訴訟最高裁判決とは?

 〈問い〉 団体献金の違法性を認めた、牛島税理士訴訟最高裁判決のことを聞きましたが、どういう判決ですか。(東京・一読者)

 〈答え〉 牛島税理士訴訟とは、税理士会が会員から政治献金を強制徴収することの違法性を問うた裁判です。一九七八年、熊本・大分・宮崎・鹿児島各県の税理士が加入する南九州税理士会は、自民党などへの献金のため、会員から五千円の特別会費を徴収することを総会で決議しました。同税理士会に所属する牛島昭三税理士がこの徴収を拒否したところ、税理士会は牛島氏から、会役員の選挙・被選挙権などをはく奪しました。牛島氏はこの処分取り消しと損害賠償などを求め、八〇年に提訴しました。

 地裁は牛島税理士の主張を認めましたが、高裁がこれを逆転させ、税理士会の決定・処分を追認しました。しかし、最高裁判所は一九九六年、強制加入団体の政治献金を違法とする判決を下し、審理を福岡高裁に差し戻しました。九七年、南九州税理士会が牛島氏に謝罪し、政治献金を今後一切おこなわないこと、過去に納入した全会員の特別会費を返還することなどの和解が成立しました。

 九六年の最高裁判決は、税理士会が法による強制加入団体であることに着目し、このような団体による政治献金は、税理士法で定めた税理士会の目的範囲外の行為となり無効だとしました。このことは、同じような強制加入団体である司法書士会、行政書士会などにも直接影響を及ぼします。現在、同様の裁判が各地であいついでいます。

 また判決理由の中で、政党などへの寄付は「選挙における投票の自由と表裏を成す」ものであり「市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄である」と指摘している点は、重要な意義をもちます。献金が個人の政党選択の権利と不可分であることを重視すれば、この権利を侵害する企業献金や政党助成金の違法性も問題とならざるを得ないからです。(水)

 〔2003・4・13(日)〕

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第35―2 LRAの原則の適用

我が日本国憲法は、第22条(居住・移転・職業選択,外国移住・国籍離脱の自由)で

@ 何人も,公共の福祉に反しない限り,居住,移転及び職業選択の自由を有する。

A 何人も,外国に移住し,又は国籍を離脱する自由を侵されない。

備考;国籍=一国の国民であるという身分・資格。日本では原則として、出生によって生じ、また帰化(きか=本人の希望によって他国の国籍を得て、その国の国民となること。)によって得られる。

Every person shall have freedom to choose and change his residence and to choose his occupation to the extent that it does not interfere with the public welfare.

Freedom of all persons to move to a foreign country and to divest themselves of their nationality shall be inviolate.

と定めているが、本件事件においては、本件独占禁止法違反による営業の自由の妨害は、憲法第22条に反する。

アメリカの裁判例の解釈においても、LRAの理論を採用したものがある。

他の代替的な競争制限的な手段によらずに、公共の福祉を達成する手段がない場合には事業者団体が競争制限によって営業の自由を制限することが認められる場合がある。しかし他の代替的な手段がある場合には、営業の自由を制限することは違憲であるという結論が導かれる。

一般には行政上の問題に適用されるが、本件の場合には私的な事業者団体の活動にも適用が可能である。「職業の自由に対する公権力による制限の一態様である。このような許可制が設けられる理由は多種多様で、それが憲法上是認されるかどうかも一律の基準をもって論じがたいことはさきに述べたとおりであるが、一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。」と最高裁判所(薬事法違憲判決、昭和43年(行ツ)第120号)は述べている。いわゆるLRAの原則である。

「公権力による制限の一態様」として「合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する」としているのであるが、競争制限によって職業選択の自由を奪う場合にも対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制がない場合にのみ合憲であって、本件事件においては他にも様々な競争制限的ではない手段が考えられるのであるから、違憲のそしりを免れないといいうる。

注:薬事法違憲判決

昭和43年(行ツ)第120号

       判     決

上  告  人

株式会社 角      吉

右代表者代表取締役

安   田   収   作

右訴訟代理人弁護士

椢   原   隆   一

被 上 告 人

広島県知事 宮 澤   弘

右指定代理人

貞   家   克   己

近   藤   浩   武

矢   崎   秀   一

桑   畑       稔

川   井   重   男

松   田   良   企

井   上   昌   知

和   田       勝

大   和   至   雄

 右当事者間の広島高等裁判所昭和42年(行コ)第10号行政処分取消請求事件について、同裁判所が昭和43年7月30日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があり、被上告人は上告棄却の判決を求めた。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

       主     文

 原判決を破棄する。

 被上告人の控訴を棄却する。

 控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。

       理     由

 上告代理人椢原隆一の上告理由2について。

 所論は、要するに、本件許可申請につき、昭和38年法律第135号による改正後の薬事法の規定によって処理すべきものとした原審の判断は、憲法31条、39条、民法1条2項に違反し、薬事法6条1項の適用を誤ったものであるというのである。

 しかし、行政処分は原則として処分時の法令に準拠してされるべきものであり、このことは許可処分においても同様であって、法令に特段の定めのないかぎり、許可申請時の法令によって許否を決定すべきのではなく、許可申請者は、申請によって申請時の法令により許可を受ける具体的な権利を取得するものではないから、右のように解けたからといって法律不遡及の原則に反することとなるものではない。また、原審の適法に確定するところによれば、本件許可申請は所論の改正法施行の日の前日に受理されたというのであり、被上告人が改正法に基づく許可条件に関する基準を定める条例の施行をまって右申請に対する処理をしたからといって、これを違法とすべき理由はない。所論の点に関する原審の判断は、結局、正当というべきであり、違憲の主張は、所論の違法があることを前提とするもので、失当である。論旨は、採用することができない。

 同上告理由1について。

 所論は、要するに、薬事法6条2項、4項(これらを準用する同法26条2項)及びこれに基づく広島県条例「薬局等の配置の基準を定める条例」(昭和38年広島県条例第29号。以下「県条例」という。)を合憲とした原判決には、憲法22条、12条の解釈、適用を誤った違法があるというのである。

1 憲法22条1項の職業選択の自由と許可制

 (1) 憲法32条1項は、何人も、公共の福祉に反しないかぎり、職業選択の自由を有すると規定している。職業は、人が自己の生計を維持するためにする継続的活動であるとともに、分業社会においては、これを通じて社会の存続と発展に寄与する社会的機能分担の活動たる性質を有し、各人が自己のもつ個性を全うすべき場として、個人の人格的価値とも不可分の関連を有するものである。右規定が職業選択の自由を基本的人権の一つとして保障したゆえんも、現代社会における職業のもつ右のような性格と意義にあるものということができる。そして、このような職業の性格と意義に照らすときは、職業は、ひとりその選択、すなわち職業の開始、継続、廃止において自由であるばかりでなく、選択した職業の遂行自体、すなわちその職業活動の内容、態様においても、原則として自由であることが要請されるのであり、したがって、右規定は、狭義における職業選択の自由のみならず、職業活動の自由の保障をも包含しているものと解すべきである。

 (2) もっとも、職業は、前述のように、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であって、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して、公権力による規制の要請がつよく、憲法22条1項が「公共の福祉に反しない限り」という留保のもとに職業選択の自由を認めたのも、特にこの点を強調する趣旨に出たものと考えられる。このように、職業は、それ自身のうちになんらかの制約の必要性が内在する社会的活動であるが、その種類、性質、内容、社会的意義及び影響がきわめて多種多様であるため、その規制を要求する社会的理由ないし目的も、国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促進、経済的弱者の保護等の社会政策及び経済政策上の積極的なものから、社会生活における安全の保障や秩序の維持等の消極的なものに至るまで千差万別で、その重要性も区々にわたるのである。そしてこれに対応して、現実に職業の自由に対して加えられる制限も、あるいは特定の職業につき私人による遂行を一切禁止してこれを国家又は公共団体の事業とし、あるいは一定の条件をみたした者にのみこれを認め、更に、場合によっては、進んでそれらの者に職業の継続、遂行の義務を課し、あるいは職業の開始、継続、廃止の自由を認めながらその遂行の方法又は態様について規制する等、それぞれの事情に応じて各種各様の形をとることとなるのである。それ故、これらの規制措置が憲法22条1項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的、必要性、内容、これによって制限される職業の自由の性質、内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない。この場合、右のような検討と考量をするのは、第一次的には立法府の権限と責務であり、裁判所としては、規制の目的が公共の福祉に合致するものと認められる以上、そのための規制措置の具体的内容及びその必要性と合理性については、立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである。しかし、右の合理的裁量の範囲については、事の性質上おのずから広狭がありうるのであって、裁判所は、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らして、これを決すべきものといわなければならない。

 (3) 職業の許可制は、法定の条件をみたし、許可を与えられた者のみにその職業の遂行を許し、それ以外の者に対してはこれを禁止するものであって、右に述べたように職業の自由に対する公権力による制限の一態様である。このような許可制が設けられる理由は多種多様で、それが憲法上是認されるかどうかも一律の基準をもって論じがたいことはさきに述べたとおりであるが、一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。そして、この要件は、許可制そのものについてのみならず、その内容についても要求されるのであって、許可制の採用自体が是認される場合であっても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。

2 薬事法における許可制について。

 (1) 薬事法は、医薬品等に関する事項を規制し、その適正をはかることを目的として制定された法律であるが(1条)、同法は医薬品等の供給業務に関して広く許可制を採用し、本件に関連する範囲についていえば、薬局については、5条において都道府県知事の許可がなければ開設をしてはならないと定め、6条において右の許可条件に関する基準を定めており、また、医薬品の一般販売業については、24条において許可を要することと定め、26条において許可権者と許可条件に関する基準を定めている。医薬品は、国民の生命及び健康の保持上の必需品であるとともに、これと至大の関係を有するものであるから、不良医薬品の供給(不良調剤を含む。以下同じ。)から国民の健康と安全とをまもるために、業務の内容の規制のみならず、供給業者を一定の資格要件を具備する者に限定し、それ以外の者による開業を禁止する許可制を採用したことは、それ自体としては公共の福祉に適合する目的のための必要かつ合理的措置として肯認することができる(最高裁昭和38年(あ)第3179号同40年7月14日大法廷判決・刑集19巻5号554頁、同昭和38年(オ)第737号同41年7月20日大法廷判決・民集20巻6号1217頁参照)。

 (2) そこで進んで、許可条件に関する基準をみると、薬事法6条(この規定は薬局の開設に関するものであるが、同法26条2項において本件で問題となる医薬品の一般販売業に準用されている。)は、1項1号において薬局の構造設備につき、1号の2において薬局において薬事業務に従事すべき薬剤師の数につき、2号において許可申請者の人的欠格事由につき、それぞれ許可の条件を定め、2項においては、設置場所の配置の適正の観点から許可をしないことができる場合を認め、4項においてその具体的内容の規定を都道府県の条例に譲っている。これらの許可条件に関する基準のうち、同条1項各号に定めるものは、いずれも不良医薬品の供給の防止の目的に直結する事項であり、比較的容易にその必要性と合理性を肯定しうるものである(前掲各最高裁大法廷判決参照)のに対し、2項に定めるものは、このような直接の関連性をもっておらず、本件において上告人が指摘し、その合憲性を争っているのも、専らこの点に関するものである。それ故、以下において適正配置上の観点から不許可の道を開くこととした趣旨、目的を明らかにし、このような許可条件の設定とその目的との関連性、及びこのような目的を達成する手段としての必要性と合理性を検討し、この点に関する立法府の判断がその合理的裁量の範囲を超えないかどうかを判断することとする。

3 薬局及び医薬品の一般販売業(以下も薬局等)という。)の適正配置規制の立法目的及び理由について。

 (1) 薬事法6条2項、4項の適正配置規制に関する規定は、昭和38年7月12日法律第135号「薬事法の一部を改正する法律」により、新たな薬局の開設等の許可条件として追加されたものであるが、右の改正法律案の提案者は、その提案の理由として、一部地域における薬局等の乱設による過当競争のために一部業者に経営の不安定を生じ、その結果として施設の欠陥等による不良医薬品の供給の危険が生じるのを防止すること、及び薬局等の一部地域への偏在の阻止によって無薬局地域又は過少薬局地域への薬局の開設等を間接的に促進することの2点を挙げ、これらを通じて医薬品の供給(調剤を含む。以下同じ。)の適正をはかることがその趣旨であると説明しており、薬事法の性格及びその規定全体との関係からみても、この2点が右の適正配置規制の目的であるとともに、その中でも前者がその主たる目的をなし、後者は副次的、補充的目的であるにとどまると考えられる。

 これによると、右の適正配置規制は、主として国民の生命及び健康に対する危険の防止という消極的、警察的目的のための規制措置であり、そこで考えられている薬局等の過当競争及びその経営の不安定化の防止も、それ自体が目的ではなく、あくまでも不良医薬品の供給の防止のための手段であるにすぎないものと認められる。すなわち、小企業の多い薬局等の経営の保護というような社会政策的ないしは経済政策的目的は右の適正配置規制の意図するところではなく(この点において、最高裁昭和45年(あ)第23号同47年11月22日大法廷判決・刑集26巻九号586頁で取り扱われた小売商業調整特別措置法における規制とは趣きを異にし、したがって、右判決において示された法理は、必ずしも本件の場合に適切ではない。)、また、一般に、国民生活上不可欠な役務の提供の中には、当該役務のもつ高度の公共性にかんがみ、その適正な提供の確保のために、法令によって、提供すべき役務の内容及び対価等を厳格に規制するとともに、更に役務の提供自体を提供者に義務づける等のつよい規制を施す反面、これとの均衡上、役務提供者に対してある種の独占的地位を与え、その経営の安定をはかる措置がとられる場合があるけれども、薬事法その他の関係法令は、医薬品の供給の適正化措置として右のような強力な規制を施してはおらず、したがって、その反面において既存の薬局等にある程度の独占的地位を与える必要も理由もなく、本件適正配置規制にはこのような趣旨、目的はなんら含まれていないと考えられるのである。

 (2) 次に、前記(一)の目的のために適正配置上の観点からする薬局の開設等の不許可の道を開くことの必要性及び合理性につき、被上告人の指摘、主張するところは、要約すれば、次の諸点である。

 (@) 薬局等の偏在はかねてから問題とされていたところであり、無薬局地域又は過少薬局地域の解消のために適正配置計画に基づく行政指導が行われていたが、昭和32年頃から一部大都市における薬局等の偏在による過当競争の結果として、医薬品の乱売競争による弊害が問題となるに至った。こよれらの弊害の対策として行政指導による解決の努力が重ねられたが、それには限界があり、なんらかの立法措置が要望されるに至ったこと。

 (A) 前記過当競争や乱売の弊害としては、そのために一部業者の経営が不安定となり、その結果、設備、器具等の欠陥を生じ、医薬品の貯蔵その他の管理がおろそかとなって、良質な医薬品の供給に不安が生じ、また、消費者による医薬品の乱用を助長したり、販売の際における必要な注意や指導が不十分になる等、医薬品の供給の適正化が困難となったことが指摘されるが、これを解消するためには薬局等の経営の安定をはかることが必要と考えられること。

 (B) 医薬品の品質の良否は、専門家のみが判定しうるところで、一般消費者にはその能力がないため、不良医薬品の供給の防止は一般消費者側からの抑制に期待することができず、供給者側の自発的な法規遵守によるか又は法規違反に対する行政上の常時監視によるほかはないところ、後者の監視体制は、その対象の数がぼう大であることに照らしてとうてい完全を期待することができず、これによっては不良医薬品の供給を防止することが不可能であること。

 

5 適正配置規制の合憲性について。

 (1) 薬局の開設等の許可条件として地域的な配置基準を定めた目的が前記三の(一)に述べたところにあるとすれば、それらの目的は、いずれも公共の福祉に合致するものであり、かつ、それ自体としては重要な公共の利益ということができるから、右の配置規制がこれらの目的のために必要かつ合理的であり、薬局等の業務執行に対する規制によるだけでは右の目的を達することができないとすれば、許可条件の一つとして地域的な適正配置基準を定めることは、憲法22条1項に違反するものとはいえない。問題は、果たして、右のような必要性と合理性の存在を認めることができるかどうか、である。

 (2) 薬局等の設置場所についてなんらの地域的制限が設けられない場合、被上告人の指摘するように、薬局等が都会地に偏在し、これに伴ってその一部において業者間に過当競争が生じ、その結果として一部業者の経営が不安定となるような状態を招来する可能性があることは容易に推察しうるところであり、現に無薬局地域や過少薬局地域が少なからず存在することや、大都市の一部地城において医薬品販売競争が激化し、その乱売等の過当競争現象があらわれた事例があることは、国会における審議その他の資料からも十分にうかがいうるところである。しかし、このことから、医薬品の供給上の著しい弊害が、薬局の開設等の許可につき地域的規制を施すことによって防止しなければならない必要性と合理性を肯定させるほどに、生じているものと合理的に認められるかどうかについては、更に検討を必要とする。

 (@) 薬局の開設等の許可における適正配置規制は、設置場所の制限にとどまり、開業そのものが許されないこととなるものではない。しかしながら、薬局等を自己の職業として選択し、これを開業するにあたっては、経営上の採算のほか、諸般の生活上の条件を考慮し、自己の希望する開業場所を選択するのが通常であり、特定場所における開業の不能は開業そのものの断念にもつながりうるものであるから、前記のような開業場所の地域的制限は、実質的には職業選択の自由に対する大きな制約的効果を有するものである。

 (A) 被上告人は、右のような地域的制限がない場合には、薬局等が偏在し、一部地域で過当な販売競争が行われ、その結果前記のように医薬品の適正供給上種々の弊害を生じると主張する。そこで検討するのに、

 (イ) まず、現行法上国民の保健上有害な医薬品の供給を防止するために、薬事法は、医薬品の製造、貯蔵、販売の全過程を通じてその品質の保障及び保全上の種々の厳重な規制を設けているし、薬剤師法もまた、調剤について厳しい遵守規定を定めている。そしてこれらの規制違反に対しては、罰則及び許可又は免許の取消等の制裁が設けられているほか、不良医薬品の廃棄命令、施設の構造設備の改繕命令、薬剤師の増員命令、管理者変更命令等の行政上の是正措置が定められ、更に行政機関の立入検査権による強制調査も認められ、このような行政上の検査機構として薬事監視員が設けられている。これらはいずれも、薬事関係各種業者の業務活動に対する規制として定められているものであり、刑罰及び行政上の制裁と行政的監督のもとでそれが励行、遵守されるかぎり、不良医薬品の供給の危険の防止という警察上の目的を十分に達成することができるはずである。もっとも、法令上いかに完全な行為規制が施され、その遵守を強制する制度上の手当がされていても、違反そのものを根絶することは困難であるから、不良医薬品の供給による国民の保健に対する危険を完全に防止するための万全の措置として、更に進んで違反の原因となる可能性のある事由をできるかぎり除去する予防的措置を講じることは、決して無意義ではなく、その必要性が全くないとはいえない。しかし、このような予防的措置として職業の自由に対する大きな制約である薬局の開設等の地域的制限が憲法上是認されるためには、単に右のような意味において国民の保健上の必要性がないとはいえないというだけでは足りず、このような制限を施さなければ右措置による職業の自由の制約と均衡を失しない程度において国民の保健に対する危険を生じさせるおそれのあることが、合理的に認められることを必要とするというべきである。

 (ロ) ところで、薬局の開設等について地域的制限が存在しない場合、薬局等が偏在し、これに伴い一部地域において業者間に過当競争が生じる可能性があることは、さきに述べたとおりであり、このような過当競争の結果として一部業者の経営が不安定となるおそれがあることも、容易に想定されるところである。被上告人は、このような経営上の不安定は、ひいては当該薬局等における設備、器具等の欠陥、医薬品の貯蔵その他の管理上の不備をもたらし、良質な医薬品の供給をさまたげる危険を生じさせると論じている。確かに、観念上はそのような可能性を否定することができない。しかし、果たして実際上どの程度にこのような危険があるかは、必ずしも明らかにされてはいないのである。被上告人の指摘する医薬品の乱売に際して不良医薬品の販売の事実が発生するおそれがあったとの点も、それがどの程度のものであったか明らかでないが、そこで挙げられている大都市の一部地域における医薬品の乱売のごときは、主としていわゆる現金問屋又はスーパーマーケットによる低価格販売を契機として生じたものと認められることや、一般に医薬品の乱売については、むしろその製造段階における一部の過剰生産とこれに伴う激烈な販売合戦、流通過程における営業政策上の行態等が有力な要因として競合していることが十分に想定されることを考えると、不良医薬品の販売の現象を直ちに一部薬局等の経営不安定、特にその結果としての医薬品の貯蔵その他の管理上の不備等に直結させることは、決して合理的な判断とはいえない。殊に、常時行政上の監督と法規違反に対する制裁を背後に控えている一般の薬局等の経営者、特に薬剤師が経済上の理由のみからあえて法規違反の挙に出るようなことは、きわめて異例に属すると考えられる。このようにみてくると、競争の激化―経営の不安定―法規違反という因果関係に立つ不良医薬品の供給の危険が、薬局等の段階において、相当程度の規模で発生する可能性があるとすることは、単なる観念上の想定にすぎず、確実な根拠に基づく合理的な判断とは認めがたいといわなければならない。なお、医薬品の流通の機構や過程の欠陥から生じる経済上の弊害について対策を講じる必要があるとすれば、それは流通の合理化のために流通機構の最末端の薬局等をどのように位置づけるか、また不当な取引方法による弊害をいかに防止すべきか、等の経済政策的問題として別途に検討されるべきものであって、国民の保健上の目的からされている本件規制とは直接の関係はない。

 (ハ) 仮に右に述べたような危険発生の可能性を肯定するとしても、更にこれに対する行政上の監督体制の強化等の手段によって有効にこれを防止することが不可能かどうかという問題がある。この点につき、被上告人は、薬事監視員の増加には限度があり、したがって、多数の薬局等に対する監視を徹底することは実際上困難であると論じている。このように監視に限界があることは否定できないが、しかし、そのような限界があるとしても、例えば、薬局等の偏在によって競争が激化している一部地域に限って重点的に監視を強化することによってその実効性を高める方途もありえないではなく、また、被上告人が強調している医薬品の貯蔵その他の管理上の不備等は、不時の立入検査によって比較的容易に発見することができるような性質のものとみられること、更に医薬品の製造番号の抹消操作等による不正販売も、薬局等の段階で生じたものというよりは、むしろ、それ以前の段階からの加工によるのではないかと疑われること等を考え合わせると、供給業務に対する規制や監督の励行等によって防止しきれないような、専ら薬局等の経営不安定に由来する不良医薬品の供給の危険が相当程度において存すると断じるのは、合理性を欠くというべきである。

 (ニ) 被上告人は、また、医薬品の販売の際における必要な注意、指導がおろそかになる危険があると主張しているが、薬局等の経営の不安定のためにこのような事態がそれ程に発生するとは思われないので、これをもって本件規制措置を正当化する根拠と認めるには足りない。

 (ホ) 被上告人は、更に、医薬品の乱売によって一般消費者による不必要な医薬品の使用が助長されると指摘する。確かにこのような弊害が生じうることは否定できないが、医薬品の乱売やその乱用の主要原因は、医薬品の過剰生産と販売合戦、これに随伴する誇大な広告等にあり、一般消費者に対する直接販売の段階における競争激化はむしろその従たる原因にすぎず、特に右競争激化のみに基づく乱用助長の危険は比較的軽少にすぎないと考えるのが、合理的である。のみならず、右のような弊害に対する対策としては、薬事法66条による誇大広告の規制のほか、一般消費者に対する啓蒙の強化の方法も存するのであって、薬局等の設置場所の地域的制限によって対処することには、その合理性を認めがたいのである。

 (ヘ) 以上(ロ)から(ホ)までに述べたとおり、薬局等の設置場所の地域的制限の必要性と合理性を裏づける理由として被上告人の指摘する薬局等の偏在―競争激化―一部薬局等の経営の不安定―不良医薬品の供給の危険又は医薬品乱用の助長の弊害という事由は、いずれもいまだそれによって右の必要性と合理性を肯定するに足りず、また、これらの事由を総合しても右の結論を動かすものではない。

 (B) 被上告人は、また、医薬品の供給の適正化のためには薬局等の適正分布が必要であり、一部地域への偏在を防止すれば、間接的に無薬局地域又は過少薬局地域への進出が促進されて、分布の適正化を助長すると主張している。薬局等の分布の適正化が公共の福祉に合致することはさきにも述べたとおりであり、薬局等の偏在防止のためにする設置場所の制限が間接的に被上告人の主張するような機能を何程かは果たしうることを否定することはできないが、しかし、そのような効果をどこまで期待できるかは大いに疑問であり、むしろその実効性に乏しく、無薬局地域又は過少薬局地域における医薬品供給の確保のためには他にもその方策があると考えられるから、無薬局地域等の解消を促進する目的のために設置場所の地域的制限のような強力な職業の自由の制限措置をとることは、目的と手段の均衡を著しく失するものであって、とうていその合理性を認めることができない。

 本件適正配置規制は、右の目的と前記(2)で論じた国民の保健上の危険防止の目的との、二つの目的のための手段としての措置であることを考慮に入れるとしても、全体としてその必要性と合理性を肯定しうるにはなお遠いものであり、この点に関する立法府の判断は、その合理的裁量の範囲を超えるものであるといわなければならない。

5 結論

 以上のとおり、薬局の開設等の許可基準の一つとして地域的制限を定めた薬事法6条2項、4項(これらを準用する同法26条2項)は、不良医薬品の供給の防止等の目的のために必要かつ合理的な規制を定めたものということができないから、憲法22条1項に違反し、無効である。

 ところで、本件は、上告人の医薬品の一般販売業の許可申請に対し、被上告人が昭和39年1月27日付でした不許可処分の取消を求める事案であるが、原判決の適法に確定するところによれば、右不許可処分の理由は、右許可申請が薬事法26条2項の準用する同法6条2項、4項及び県条例3条の薬局等の配置の基準に適合しないというのである。したがって、右法令が憲法22条1項に違反しないとして本件不許可処分の効力を維持すべきものとした原審の判断には、憲法及び法令の解釈適用を誤った違法があり、これが原判決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は、この点において理由があり、その余の判断をするまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、右処分が取り消されるべきものであることは明らかであるから、上告人の請求を認容すべきものとした第1審判決の結論は正当であって、被上告人の控訴は棄却されるべきものである。

 よって、行政事件訴訟法7条、民訴法408条1号、396条、384条、96条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

最 高 裁 判 所 大 法 廷

裁 判 長 裁 判 官 村 上 朝 一

裁 判 官裁 判 官裁 判 官裁 判 官裁 判 官裁 判 官裁 判 官裁 判 官裁 判 官裁 判 官裁判 官裁 判 官裁 判 官裁 判 官

関 根 小 郷 藤 林 益 三 岡 原 昌 男 小 川 信 雄 下 田 武 三  岸   盛 一  天 野 武 一  坂 本 吉 勝  岸 上 康 夫  江里口 清 雄  大 塚 喜一郎  高 辻 正 己  吉 田   豊  団 藤 重 光

第36 合理の原則から原則違法の原則へ

 伊従寛氏によれば、公正取引委員会の時代には、入会拒否について民法上の理由があれば、無効確認訴訟でも入会強制はあり得なかったので、公正取引委員会は事業者団体においても入会拒否は「批判してきたものは入会を認めない」ということは認めた来たという。

 独占的な地位がある場合かつアクセスすべき必須な要素を管理している事業者団体の入会拒否を原則違法の取扱をすることはこれまでの判例がないから判例違反ではないが、審決の変更をするのと同様になる。但しこの判決がその最初の最高裁判所の判決となる可能性が高い。従ってその場合にはそれが合憲であることを主張しておく必要性がある。

 わが憲法は営業の自由をまもるために営業の自由を妨害する行為については、公共の福祉に反しない限り排除を認めていると解される。憲法第22条、第25条によるのであるが、営業の自由は財産を得るための重要な必須の自由権であるから、それなしでは財産権が得られないとしたした場合には、事業の継続が困難になる場合においては、憲法第29条にも違反している。

 第22条(居住・移転・職業選択,外国移住・国籍離脱の自由)

@ 何人も,公共の福祉に反しない限り,居住,移転及び職業選択の自由を有する。

A 何人も,外国に移住し,又は国籍を離脱する自由を侵されない。

備考;国籍=一国の国民であるという身分・資格。日本では原則として、出生によって生じ、また帰化(きか=本人の希望によって他国の国籍を得て、その国の国民となること。)によって得られる。

Every person shall have freedom to choose and change his residence and to choose his occupation to the extent that it does not interfere with the public welfare.

Freedom of all persons to move to a foreign country and to divest themselves of their nationality shall be inviolate.

第25条(生存権,国の義務)

@ すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

A 国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

All people shall have the right to maintain the minimum standards of wholesome and cultured living.

In all spheres of life, the State shall use its endeavors for the promotion and extension of social welfare and security, and of public health.

第29条 (財産権)

@ 財産権は,これを侵してはならない。

A 財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。

B 私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。

備考;財産権=財産的価値を有する権利。身分権・人格権などと並ぶ私権の一で,物権・債権および無体財産権などが主要なもの。

The right to own or to hold property is inviolable.

Property rights shall be defined by law, in conformity with the public welfare.

Private property may be taken for public use upon just compensation therefor.

第37 審理不尽の違法性
 伊従寛氏によれば、公正取引委員会の時代には、入会拒否について民法上の理由があれば、無効確認訴訟でも入会強制はあり得なかったので、公正取引委員会は事業者団体においても入会拒否は「批判してきたものは入会を認めない」ということは認めた来たという。

 このような状況においては重大な損害額を認定しないまま裁判を終えることは、憲法が保証する財産権の補償が受けられないことを意味し、甲121号証拠から、甲137号証拠までの証拠が、それも以上に述べた川島町の重要なテープ及びその反訳が証拠として採用されていないことなどが審理不尽に該当し、違法であるといいうる。裁判官のみが見ることが出来る証拠として採用されていたとしても、日本においては判決に引用できる証拠ではなく、再開申立が行われたにもかかわらず判決に重要な証拠について審理しなかったのは審理不尽に該当する。価格の証拠は事業実績報告書をみても分かるが、現実の一つ一つの契約における価格の証拠は再開してはじめて審理できたし、平成16年12月までの市場の動向は集計の関係上平成17年3月末までかかったのであり、審理不尽といわざるをえない。統計が終わっていない限り市場の数字が一切分からないという関係上、それを抜きにして判決がなされたのは、再開申請も出されていたのであるから、審理不尽といわざるをえない。

   甲121号証拠から甲137号証拠までの証拠が、それも以上に述べた川島町の重要なテープ及びその反訳が証拠として採用されていないことなどが審理不尽に該当し、違法であるといいうるが、これらはカルテルの証明になっており、将来の独占禁止法訴訟においては、独占禁止法違反が不当な取引制限の罪と関係している以上刑法の訴訟との関連を考えていくべきである。カルテルとの併合審理が望まれるのであり、私訴であってもカルテルの主張は公正競争阻害性の問題を論ずる限りは妥当であると考えられる。損害の継続性と共に、犯罪の継続性も認められるからである。

安売りに対する共同ボイコットは、トイザらス事件においては違うが、本件事件においてはカルテルが推測される。トイザらス事件と本件事件においては安売りするなという点では一致しているが、価格協定が推測されるかどうか、価格協定の維持のためであったのかどうかで違っている。そしてカルテルが推測されることが最後に証拠によって主張されたのである。

トイザらス事件においては単独の販売事業者と、複数の製造業者との共謀によるグループボイコットが認められたのであるが、本件においては共謀によるカルテルに対して事業者が価格競争をしようとしたところ、価格競争をする事業者は市場から排除するために入会拒否を行ったという事件である。

 今後犯罪にも匹敵するような不当な取引制限に該当するような事件においては、今後は独占禁止法においてはアメリカのディスクロージャーやディスカヴァリーのような制度を採用すべきであるし日本弁護士連合会の制度に対する提言によって主張しているのである。日本にはその制度はないが、犯罪に近い行為について審理するのであるから、裁判官の良心によって最後に提出された価格の証拠を見るべきである。裁判所においては第3分類に入れてあったが、被上告人(債務者)との対審(trial)にはなっていないが、日本においては犯罪に近い証拠を被上告人(債務者)が認めるとは思われないので、対審がなくても裁判官の良心によって見るべきである。制度論はさておき良心によって裁判官は一見して明かに価格の共謀があったと理解できる多くの証拠について審理か、採用を行うべきであり、裁判官の良心を定めた憲法76条に違反する。

第6章 司法

第76条(司法権,裁判所,特別裁判所の禁止)

@ すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

A 特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は,終審として裁判を行うことができない。

B すべて裁判官は,その良心に従い独立してその職権を行い,この憲法及び法律にのみ拘束される。==⇒児島惟謙

 備考;下級裁判所=最高裁判所の下に置かれる高等裁判所・地方裁判所・家庭裁判所・簡易裁判所をさす。高等裁判所は,日本の8箇所の大都市(東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台,札幌,高松)に置かれているほか,6箇所の都市に支部が設けられている。地方裁判所は,全国に50箇所あり,その管轄区域は北海道が4つに分かれているほか,各都府県と同じある。また地方裁判所に支部が設けられており,その総数は203箇所である。家庭裁判所とその支部は,地方裁判所とその支部の所在地と同じ所にあるほか,交通不便な所にある簡易裁判所のうち,特に必要性の高いところに家庭裁判所出張所を設けて家事事件の処理に当たらせ,国民の利便を図っている。簡易裁判所は,全国に438箇所あり,民事事件については,訴訟の目的となる物の価額が90万円を超えない請求事件について,また,刑事事件については,罰金以下の刑に当たる罪及び窃盗,横領などの比較的簡単な罪の訴訟事件等について,第一審の裁判権を持っている。

特別裁判所=一般の裁判所から独立し,特別の身分をもつ者または特定の種類の事件のみについて裁判権を行使する裁判所で,大日本憲法下の行政裁判所・皇室裁判所・軍法会議がこれにあたる。

終審=それ以上は上訴できない最終の裁判所の審理。

終審裁判所=審級(三審)制度の上で最終的な(終審としての)裁判をする裁判所で,一般には最高裁判所を指す。違憲審査については必ず最高裁が終審裁判所となる。行政機関は最終裁判所として裁判することを禁じられているが,前審として裁決や決定を行うことはできる(例えば,特許に関する争訟を判定するために特許庁長官が指定する審判官の合議で行われる特許審判や独占禁止法の運用のために設けられた行政委員会である公正取引委員会の審判,海難事件を取り扱う海難審判所の審判など)。

裁判官=裁判所の構成員として裁判事務を担当する国家公務員で,最高裁判所長官・最高裁判所判事・高等裁判所長官・判事・判事補・簡易裁判所判事の6種がある。

職権=特に公の機関や公務員に与えられた一定の行為を遂行する権限や権能。

The whole judicial power is vested in a Supreme Court and in such inferior courts as are established by law.

No extraordinary tribunal shall be established, nor shall any organ or agency of the Executive be given final judicial power.

All judges shall be independent in the exercise of their conscience and shall be bound only by this Constitution and the laws.

第38 訴訟の権利と、告訴の権利と、公正取引委員会への申告の権利

憲法においてこれらの権利は人権として守られているが、被上告人(債務者)の団体においては、現実には、このようなことは許可されていない。その理由は公正取引委員会はザル法を管理している独立行政委員会であるので、独占禁止法違反については目をつぶってくれているのに、その眠った獅子を起こしてくれるな、日本では談合を行い、独占禁止法を守らないことが相隣関係であり、受忍限度であるという絶対的に守らなければならない掟がある。高い価格によっていなくてはならない、そのように監禁されて酒匂悦郎と山口節生は井坂事務所でリンチを受けたのである。

またそのようなことはしないとの念書を書かされたのである。

これは憲法32条の違反である行為であるが、それを裁判所が認めるのは、憲法第32条違反といいうる。

第32条(裁判を受ける権利)

 何人も,裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

No person shall be denied the right of access to the courts.

「この種の『内部告発』の重要性が広く認識され,「公益通報保護制度」の立法化へ

 さらに、この事件から、国と私人(私企業も含む)との取引のあり方、競争の意義、国と国民の関係(国民の税金で、国の費用を賄っているのだから、なるべく「安い政府」、効率的な行政運営を要求できるはず)など、考えて下さい。

 本件では、防衛庁にとって、最大の関心事は「安定供給」であり、価格は二の次です。それどころか、防衛庁その他の国の行政機関は、毎年必要な費用は予算で確保されていて、これを年度末までに消化することが重要。消化しないと不必要な予算要求をしたことになり、次の年度では減額されてしまう。また、毎年できるだけ多額の予算を獲得することが各機関の力と評価され、担当官の業績になる。」

との意見もある。


第39 憲法と、経済憲法

 日本国憲法は、戦後日本の自由競争による自由経済において独占禁止法を経済的自由を維持するための経済における憲法として機能させようとした。

 アメリカの独占禁止法もそのように認識されているのである。

 従って公共の利益や、LRAの理論などを採用したとしても、独占禁止法と憲法は同じ結論になるようである。思想・心情の自由や、LRAの原則や、公共の利益の憲法原則は経済憲法である独占禁止法は無視され、そのことが当然違法の原則となったといえるかの問題である。

 それは逆に当然違法の原則となったのであるから、思想・心情の自由は守られているといいうるのである。

 上記税理士会事件においても、政治的自由は守られているといいうる。逆に個別的事案には及ばないとする経済活動以外の場面における思想・心情の自由は守るすべを失っているのである。

 

 独占禁止法においてその他の競争制限によって効率性を達成出来ない時には、その競争制限的な行為が違法とはならない場合があるという理屈は、個別的行為に対して憲法理論におけるLRAの原則を適用しているといいうる。憲法の下位にあるが、経済の憲法である独占禁止法においては差止によって原則違法の行為をLRAの原則によって個別的行為を規制しうるということはいかに独占禁止法における差止が憲法よりも進んでおり、経済的自由という生存権に関わっている自由であるためにいかに自由が守られているかという問題となっている。

 「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。そして、この要件は、許可制そのものについてのみならず、その内容についても要求されるのであって、許可制の採用自体が是認される場合であっても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。」との最高裁判所の判決は「許可制の採用自体が是認される場合であっても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。」と述べており、LRAの原則に照らして個別的に許可条件を判断するとしている。

 独占禁止法は許可制の問題ではないが、競争制限的な行為の違法性、公正競争阻害性を法的に規制しているのであって、この「LRAの原則に照らして個別的に許可条件を判断する」としている最高裁判所の判決に従う必要があることになる。

 その意味では本件事件においてこの最高裁判所の判決に従うべき義務はあると考えられるが、被上告人(債務者)はそれに従っておらず、それを是認した判決は違憲であると言わざるをえない。

 独占禁止法においてLRAの原則については次のような説がある。

Under the rule of reason, courts weigh the anti-competitive effect of the rule against the justification proffered for the rule. Section 1 is violated when a court finds that an anti-competitive effect outweighs the justifications for the rule or that the rule was not a reasonably less restrictive alternative to accomplish a legitimate goal. 合理性の基準においては、ある規制の競争制限的な効果を計測して、その規制のために用意された正当化よりも上回っているかどうかを審理することになる。競争制限的な効果がその規制の正当化よりも大きい場合、あるいは、合法的な目的を達成するために、その規制は「より制限的ではない他の代わりになる合理的な手段(LRA)」ではないことを裁判所が認定してはじめてシャーマン法の第一条の違反となる。In a decision reached earlier this year, the 6th Circuit evaluated an Ontario Hockey League rule that effectively precluded former college hockey players over the age of 19 from joining league rosters.今年前期において第6巡回裁判所は決定により、19歳以上の大学ホッケー前期選手をリーグの登録選手名簿への登載を拒否することが効率性があるとしてオンタリオホッケーリーグの規則を評価した。 The court ruled that the district court erred in applying the per se rule rather than the rule of reason. 裁判所は地方裁判所が合理性の原則(日本の理由の原則とは違った意味で。訳注。)ではなく、原則違法の原則を適用したのは誤っていると判断した。Accordingly, it evaluated the rule’s

 注:THE NATIONAL LAW JOURNAL Antitrust Law Sports League Rules Janet McDavid ? David J. Michnal While sports leagues have unique considerations, rules challenges may turn on issues comman to all § 1 Sherman Act claims. Janet L. McDavid, a partner at Washington's Hogan & Hartson, is a past chair of the ABA's Section of Antitrust Law. David J. Michnal is an Associate at the firm. On Jan. 3, talented Ohio State University running back Maurice Clarett held high college football’s national championship trophy, after a thrilling double overtime victory over the favored University of Miami Hurricanes. Seven months later, the National Collegiate Athletics Association (NCAA) initiated an investigation into whether Clarett violated NCAA rules by accepting improper financial and academic assistance while at Ohio State. Depending on its findings, the NCAA could suspend Clarett for a long period of time or even declare him ineligible to participate in NCAA collegiate athletics. Clarett’s dilemma is further complicated by a National Football League (NFL) rule that prohibits a prospective player from entering the NFL player draft until three years have elapsed since his high school class graduation. Depending upon the nature of the NCAA sanction, Clarett may face the choice of accepting sanction, transferring to a lower-level NCAA institution or a non-NCAA institution or joining a team in a less prestigious league unless he challenges the legality of either NCAA or NFL rules. If so, the Clarett case may become the latest collision between sports and antitrust. Stating a claim under § 1 of the Sherman Act A successful legal challenge to either the NCAA or the NFL rules regarding player eligibility would likely focus on § 1 of the Sherman Act and seek either damages or an injunction against the rules. To state a claim under § 1, a plaintiff must allege the existence of a contract, combination or conspiracy that unreasonably restrains trade. Assuming no standing or jurisdictional issues, a plaintiff’s case hinges on theexistence of an agreement and the "reasonableness" of the restraint. Courts categorize competitive restraints as either per se unlawful or subject to the rule of reason. Per se illegal restraints are those that have a "predictable and pernicious anticompetitive effect, without any potential for procompetitive benefit," and have typically been limited to price fixing, bid rigging and allocating markets or customers. But those with potential for procompetitive effect are subject to the rule of reason, which examines the overall competitive effects of the restraint.

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2 The first major obstacle to a § 1 claim against a professional sports league is proving that an agreement exists. Since the U.S. Supreme Court’s decision in Copperweld Corp. v. Independence Tube Corp., 467 U.S. 752 (1984), which held that a corporation and its wholly owned subsidiary could not conspire because they constitute a single entity, courts have wrestled with Copperweld’s application to sports leagues. In Brown v. Pro Football, Inc., 518 U.S. 231 (1996), the court suggested that, in the context of collective bargaining, professional sports teams arenot completely independent competitors because they depend on cooperation with each other for their existence. However, in Sullivan v. NFL, 24 F.3d 1091 (1st Cir. 1994), the 1st U.S. Circuit Court of Appeals held in a suit brought by a team owner against the league that the NFL’s members were capable of conspiring because theywere not a single entity under Copperweld. The 7th Circuit split the difference in Chicago Sports Ltd. v. NBA, 95 F.3d 593 (7th Cir. 1996), concluding that Copperweld's reasoning does not dictate a concrete answer to the single entity question, but rather might require an analysis "one league at a time and perhaps one facet of a league at a time." It does not appear that the NCAA has ever contended that it is a single entity and thus capable of conspiring under § 1. In NCAA v. Board of Regents, 468 U.S. 85 (1984), the high court expressly recognized that the restraint at issue - restrictions on broadcasts of college football games - was the result of "an agreement among competitors on the way in which they will compete with one another." Once an agreement is established, courts generally evaluate restraints promulgated by sports leagues under the rule of reason. As the Supreme Court explained in NCAA, sports leagues and their members "market competition itself. Of course, this would be completely ineffective if there were no rules to create and define the competition to be marketed." 468 U.S. at 101. While acknowledging that price fixing and output limitations are ordinarily condemned as illegal per se, the court applied the rule-of-reason test, explaining that the per se rule is inappropriate in "an industry in which horizontal restraints on competition are essential if the product is to be available at all." Id. at 100. Under the rule of reason, courts weigh the anti-competitive effect of the rule against the justification proffered for the rule. Section 1 is violated when a court finds that an anti-competitive effect outweighs the justifications for the rule or that the rulewas not a reasonably less restrictive alternative to accomplish a legitimate goal. In a decision reached earlier this year, the 6th Circuit evaluated an Ontario Hockey League rule that effectively precluded former college hockey players over the age of 19 from joining league rosters. The court ruled that the district court erred in applying the per se rule rather than the rule of reason. Accordingly, it evaluated the rule’s competitive effects and reversed the trial court’s grant of a preliminary injunction, reasoning that the plaintiff failed to allege that the restraint had an

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3 anticompetitive effect in any relevant market. See NHLPA v. Plymouth Whalers Hockey Club, 325 F.3d 712 (6th Cir. 2003). The NCAA’s mission provides its member schools with unique justifications for the reasonableness of its restraints. In order to preserve the unique character of the product that is intercollegiate athletics, courts have upheld restraints that might raise antitrust concerns in different contexts. The Supreme Court in NCAA concluded that "most regulatory controls of the NCAA [are] justifiable means of fostering competition among the amateur athletic teams and therefore are pro-competitive because they enhance public interest in intercollegiate athletics." The court warned, however, "[I]t is nevertheless well-settled that good motives will not validate an otherwise anticompetitive measure." 468 U.S. at 101, 117. This standard has been applied in several cases involving the NCAA. In Worldwide Basketball and Sports Tours, Inc. v. NCAA, 2003 WL 21756081 (S.D. Ohio 2003), the plaintiffs .tournament promoters sought to enjoin the NCAA’s enforcement of the "Two-in-Four Rule," which, limited Division I college basketball teams to playing no more than two school-scheduled basketball tournaments in any four consecutive years. Applying the rule of reason, the court found that the rule resulted in a significant reduction of Division I games. The court concluded that the NCAA’s justifications for the rule competitive balance, the welfare of the student-athlete and the standardization of the playing season were not served by the rule and therefore did not justify the restraint. The court’s decision emphasizes that even historically legitimate justifications for a restraint on competition will outweigh anti-competitive effects only when there is a nexus between the rule’s purpose and effect and when there is no reasonably less restrictive alternative. Applying an abbreviated rule-of-reason analysisIn cases involving restraints that have an obvious anti-competitive, courts may apply an abbreviated rule-of- reason analysis. In Law v. NCAA, 134 F.3d 1010 (10th Cir. 1998), the 10th Circuit considered whether NCAA-imposed salary limits for college basketball coaches violated antitrust laws. The court observed, "[W]here a practice has obvious anticompetitive effects as does price-fixing, there is no need to prove that the defendant possesses market power. Rather, the court is justified in proceeding directly to the question of whether the procompetitive justifications advanced for the restraint outweigh the anticompetitive effects under a ’quick look’ rule-of-reason." Applying the "quick look" rule-of-reason analysis to a restraint on basketball coaches’ salaries, the court concluded that the rule violated § 1 because it did not serve its stated purpose of creating an even playing field among NCAA member schools. Professional sports league rules and regulations are sometimes the subject of collective bargaining. If a rule negotiated during the collective bargaining process is a proper subject for collective bargaining, that rule is likely immune from antitrust

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4 laws under the National Labor Relations Act. See Wood v. NBA, 809 F.2d 954 (2nd Cir. 1987). Thus, so long as the NFL rule is a proper subject of collective bargaining under the act, §1 claims are unlikely to succeed. Before mounting an antitrust challenge to a sports league’s rules, an athlete like Clarett should carefully weigh the obstacles to successful litigation. Despite the successful challenge to a nearly identical NBA rule in 1971 (see Denver Rockets v. All-Pro Management, Inc., 325 F. Supp. 1049 (C.D. Cal. 1971)), winning a § 1 claim against any sports league is far from a "slam dunk." A challenge to a league’s rules may be an expensive endeavor financially and may take years to resolve. Further, challenges to league rules under § 1 must address the unique considerations that apply to sports leagues generally. A prospective plaintiff must determine whether the professional sports league rule was a subject of collective bargaining; assess the likelihood that the league will be considered a single entity under Copperweld and thus unable to conspire; and evaluate the substance of the § 1 claim, i.e., whether the rule’s anti-competitive effects of the rule outweigh the procompetitive effects. In the end, a successful challenge to a sports league’s rules may very well turn on issues common to all § 1 claims like market definition and competitive effects. However, prospective plaintiffs must also evaluate the unique considerations resulting from using laws designed to preserve competition against industries that market competition. REPRINTED WITH PERMISSION FROM THE SEPTEMBER 22, 2003EDITION OF THENATIONAL LAW JOURNALc 2003ALM PROPERTIES,INC. ALL RIGHTS RESERVED. FURTHER DUPLICATION WITHOUT PERMISSION IS PROHIBITED.

「(3)のより制限的でない代替的な手段があったかどうか(いわゆるLRA)については慎重な判断がされ、EC委員会は選択的な相手を探知するための手続さえもっているようです(最近のEC裁判所の判断として前述のKali+Salz合併事件判決およびとりわけ法務官意見参照)。(「新しい株式所有・合併等ガイドライン(原案)についての意見」1998年8月19日大阪市立大学法学部助教授 泉水文雄)といわれてい学者もあり、LRAの原則は独占禁止法になじまないわけではない。

 なお、合併の場合にではなく、共同ボイコットの場合には事業活動を困難にするので、生存権との関わりが出てくる。

「ストーリー性のあるゲームソフトに映画と同様の頒布権があるというメーカーの主張の当否は知的財産権の専門家にお任せしますが、ただ、ゲームソフトが頒布権の対象かどうかは、頒布権の概念からの演繹的な考察も重要ではありますが、のみならず頒布権創設により著作権が保護しようとする正当な利益がこの行為により本当に実現されるかどうか、仮に実現されるとしてどれだけ実現されるか、目的達成の手段は相当か(目的達成のための社会的コストーたとえば中古市場が成立しないことによる新作市場の価格上昇の経済厚生効果ー、消費者の不利益)、LRAなどから考えるべきだと思います。」(泉水文雄ホームページ、ニュース 97/11〜98/01)。

    MERGER WORKSHOP: February 19, 2004... former Acting Assistant Attorney General and Deputy. 24. Assistant Attorney General for Antitrust. ... reasoned decision of LRA analysis, Less Restrictive. 2. Alternative analysis, and stressed the efficiencies that

Only if a monopoly were shown to exist would we be faced with the public utility theory which has been much discussed in connection with this case and adopted by Mr. Justice FRANKFURTER. The decrees under the Sherman Act directed at monopolies have customarily been designed to break them up or dissolve them. See United States v. Crescent Amusement Co., 323 U.S. 173 , 65 S.Ct. 254. There have been some exceptions. Thus in United States v. Terminal Railroad Ass'n, 224 U.S. 383 , 32 S.Ct. 507, an action was brought under the Sherman Act to dissolve a combination among certain railroads serving St. Louis. The combination had acquired control of all available facilities for connecting railroads on the east bank of the Mississippi with those on the west bank. The Court held that as an alternative to dissolution a plan should be submitted which provided for equality of treatment of all railroads. And see United States v. Great Lakes Towing Co., D.C., 208 F. 733, 747; Id., D.C., 217 F. 656, appeal dismissed 245 U.S. 675 , 38 S.Ct. 8; United States v. New England Fish Exchange, D.C., 258 F. 732. Whether that procedure would be appropriate in this type of case or should await further legislative action (cf. Mr. Justice Brandeis' dissenting opinion, International News Service v. Associated Press, 248 U.S. 215, 248 , 262 S., 39 S.Ct. 68, 75, 81, 2 A.L.R. 293) is a considerable question, the discussion of which should not cloud the present decision. What we do today has no bearing whatsoever on it.

どうもRestrictiveは競争制限的なの意味であるようであるが、共同ボイコットの許可条件での意味ではフットボールリーグの場合がある。従って独占禁止法と憲法は深い関係があり、薬局の距離制限に関する憲法判断は、共同ボイコットの許可条件にも使用できる。つまりLRAがない場合には違憲ではないが、そうではない場合には違憲であるというように。しかし独占禁止法自体が経済憲法であるならば、憲法ではなく独占禁止法でそのまま使えるということになる。

 今上告人(債権者)が問題としているのは共同ボイコットに当然違法の原則を用いることが、行政法規の違憲性の審査を行っている訳ではないが、法規である独占禁止法の解釈・運用においてLRAがない場合には合憲(独占禁止法に限って言えば合法)であり、逆にある場合には違憲(同様に違法)であるかということである。

 特に独占禁止法違反についていうことを黙らせるという行為は告発権や、公益の見地から許されるものではない。

 もし職業選択の自由に被上告人(債務者)の行為が関与しているとした場合に憲法上の違憲性があるか、そうではないかの問題はその行為が間接適用に合致しているのかという問題に、これまでの判例上は還元できる。

 新しい判例を作る場合は別である。

 独占禁止法の解釈という場面は、間接適用か、直接適用になるのかという問題である。もし本件事件においてのみはこのように解釈するというのであれば、直接適用の問題となるが、独占禁止法における共同ボイコットの解釈全般、つまり原則違法論で共同ボイコットが原則違法であるのかどうかの問題に限定すれば、法令の解釈の問題であるので、間接適用であるということになる。つまりアメリカの場合には当然違法の法理を積み重ねてきたが、日本の場合には憲法において適用するのが妥当であるという法理である。

 職業選択の自由に関する問題については、独占禁止法の適用を通じて、LRAの原則を貫くことが独占禁止法の解釈上は妥当である。これは被上告人(債務者)の競争制限的な行為についてのみではなくて、法の定立にも等しい最高裁判所の判決において、LRAの憲法原則を要求し、ひいては本件事件においては被上告人(債務者)は個別的な事件において営業の自由を侵してはならないという論理が法的に妥当であると考えて上告理由とするものである。

 憲法原則は一般には事業者団体の被上告人(債務者)には及ばないのであるが、被上告人(債務者)は公的な団体であり、サロンのような団体ではないのであるから一事業者団体の問題ではあるが、間接的にその行為に影響を及ぼすようにすることが可能であるとして上告を行う。

 薬事法という行政法規そのものをあらそっているわけではないが、ガイドラインの解釈においては憲法問題が個別的違反行為に対して、LRAの原則によりより競争制限的ではない行為をとるように強制できると考えることが出来る。

 上記のアメリカの解釈においてはこれを独占禁止法そのものの中で解釈している。

 しかし独占禁止法は経済の憲法であるから、その解釈を通じて直接的に行為を規制しているのであって、憲法問題に含まれていないとはいえないので日米共通の解釈であるということになる。というのは憲法の下位規範が独占禁止法であり、アメリカから移植されてきた法であるから、わが国の憲法の中の法体系にははいっていないと考えるのは間違いであるからだ。

 事業者団体のある競争制限的な行為について、より競争制限的ではない行為をとれるのに、例えば6カ月のみの入会猶予のような行為がとれるのに、競争制限的な行為をとるのは間違っていると憲法がいいうるということである。

 また銭湯が過当競争の故に、公衆の衛生上の安全性をおかすかもしれないという危惧は、ペアレント的な発想ではあるが、憲法上社会経済的見地から妥当である場合もあるし、それはデジコン事件では子供の玩具であったからこそ是認されたのであり、弱者に対するセーフティネットは公共の福祉の観点から考量に入れた上での議論である。 

第40 ホームページの家的性質
 ホームページはいわば多くの糸電話の真ん中で、結合しているような糸電話である。従って何億人の人に本当に見られているとは言い難い。山口節生のホームページを本当に見た人はゼロに近いだろう。カウンターは一日私がつり上げていたのである。誰にもホームページのアドレスを公表していない。

 

第41 職業選択の自由

 職業は、本質的に社会的な、しかも主として経済的な活動であって、その性質上、社会的相互関連性が大きいものであるから、職業の自由は、それ以外の憲法の保障する自由、殊にいわゆる精神的自由に比較して、公権力による規制の要請が強く、憲法22条1項が「公共の福祉に反しない限り」という留保のもとに職業選択の自由を認めたのも、特にこの点を強調する趣旨に出たものと考えられる。(最大判昭和50年4月30日民集29巻4号572頁)

 

第42 思想・表現の自由

 厳格な基準などの問題であり、おそれなどでは規制できない。一般の場合とは違って、商事の場合には法的には様々な考量の対象になる。

 税理士会事件においては強制加入団体であったので、政治的自由が確保されるべきであるという判断になっており、個別的事業者団体に対する判断がでているのであるから、本件においても任意団体であるが、独占禁止法上限りなく強制加入団体に近い団体であるので、政治的自由や討論の自由は確保されるべきであり、もしそのようなことが真の理由であるのならば憲法上許されない。

第42 上告理由

 本件は確かに共同ボイコットによって、資金が枯渇し、経営が成り立たなくなり、事業の継続が出来なくなったという世界でも初めての事件であり、永久に同じ事件は起こらないであろう事件である。

 しかし証拠を50%以上の確率でもって、推薦を認められるかという証拠の問題を独占禁止法上の問題として採用するかどうかは、上告理由となりうるのであろうか。

 例えば、渋谷正雄と佐久間良彦の会話のテープは、国土交通省の江戸川河川事務所からの推薦依頼を述べており、一方江戸川河川事務所の担当官は推薦を依頼する様にしていると述べている。この二つのテープによる証言は両方によって100%の証明になっている。一方では埼玉県内の市町村や、県は推薦を受けたと述べている。しかし被上告人(債務者)はそれが犯罪に近いものであることを知っているので、かって平成9年度は被上告人(債務者)から埼玉県を通じて推薦を受けたことを認めておりながら、それ以降の自由競争になってからは平成12年度の制度を埼玉県税務協議会との合意によって各市町村に営業をかけてきた業者を(テープでは相当数あったという)営業の禁止をしたり、個々の推薦については被上告人(債務者)は自白しないのである。

 そこでは証拠の優越を証明する程度に証明が出来ているかどうかである。

 本件事件においてそこが問題となっているのにもかかわらず、証拠の問題はないがしろにされてはまず困るということを上告理由とするものである。

 結果として事業活動が困難になっているとしても、信用というものの供与について取引拒絶をしていることと、直接的に推薦・紹介行為を行っていることとでは前者は過失ともとらえられるのに、直接の推薦は故意がはっきりと前面にでている。

 いずれにしても結果は100%の証拠であるが、推薦を50%しか証明していない場合には、結果は市場であり、それが証明が出来ているのであるから、行為の証明は50%以上証明できたのであるから、因果関係は認めてよいであろうと考えることが出来る。

 独占禁止法の場合には行為との因果関係は民事訴訟法第248条によって認定するべきであると考えられる。

 確かに自由裁量であるから247条を使用するとすることも自由裁量であるとすることは一方の主張であり、248条使用して下さいと裁判所に申し立てることは申立でしかない。しうるということを、しろと要請することはただのお願いでしかない。しかし独占禁止法においては犯罪に近い行為を私訴において私人が何の捜査権限もなく証拠収集するのであるから、全体の趣旨からして、248条の採用は憲法上の人権からの要請である。被害者の救済でもある。

「憲法と経済法の関係。憲法22条1項の「職業の自由」は、一般的な経済的自由、すなわち職業選択の自由だけでなく、職業活動の自由も含むと拡大されて解されている。しかし、「公共の福祉に反しない限り」という限定がつき、法律・行政による自由の制限が認められる。」(船田立教大学教授ホームページより)

 わが国の憲法はソ連の憲法とは違って、自由経済を目的とし自由競争を促進するという目的で制定されている。これは憲法の大原則である。もし競争制限によって行政が営業する権利を抑制することがあったとしても、より競争制限な手法がない場合に限り合憲であり、それよりも競争制限的である行為は違憲である。しかし合理の基準を採用するか、当然違法の原理を採用するかは独占禁止法の運用の問題であって、行政法規の問題ではない。司法に対して合理性の基準ではなく、原則違法の基準を採用するようにいえるか。公正取引委員会の共同ボイコットに関する解釈を変更するようにいうことは最高裁判所の働きに属する。

 しかし憲法の問題に含まれるか。独立行政委員会は最高裁判所の下にあるのか。ある。独立とは言っても憲法の下にあるからだ。解釈の問題によって憲法目的を達成することは間接適用に当たるのか。直接適用に近いが、その他の判決に与えるのであるから、間接適用といえる。

「立法府の判断がその合理的裁量の範囲にとどまるかぎり、立法政策上の問題としてその判断を尊重すべきものである。しかし、右の合理的裁量の範囲については、事の性質上おのずから広狭がありうるのであつて、裁判所は、具体的な規制の目的、対象、方法等の性質と内容に照らして、これを決すべきものといわなければならない。」

 本件事件において判例の判断の変更の主張は、司法府の判断に付き、司法の最高裁判所の判断を求めるものであるから、本件事件において共同ボイコットにおいて当然違法の原則を採用して、合理性の原則を排除すべきであるという上告理由は司法の判断について司法においても行政の判断が違憲であるという判断をすることが間接適用であるのと同じく、司法の判断が違憲であるかどうかを司法の最高裁判所の判断に委ねることは間接適用の変更を上告理由とするものであるから、上告理由として最高裁判所の判断を仰ぐことが出来ると主張し、それは直接適用を要求することにはならない。

「より制限的でない、他の代替的手段」(less restrictive alternatives. LRA基準とも呼ばれる。教科書242頁参照)は、抱き合わせについての説明であるが、この観点は他の不公正な取引方法についても採用されるべきであり、おとり廉売を防止するためにすべての販売業者に対する再販が必要か、それ以外の「より制限的でない、他の代替的手段」がないかを個別具体的に検討すべきである。

第42 証拠の問題―自由裁量権の逸脱

 証拠の採用において、証拠の優越の理論を検討したTHERESA AGUILAR et al.,v. ATLANTIC RICHFIELD COMPANY et al.テレサ・アグラー 対 アトランティック・リッチフィールド会社事件において自由裁量権については次の様に考えられる。

「It is true, as Aguilar argues, that, as a general matter, orders granting a new trial are examined for abuse of discretion.

アギュラー側が主張するとおり、一般的に言えば、新しい審理を認める判決は、自由裁量権の逸脱であるかどうかを審理されるべきであるということだというのは正しい。

(See, e.g., Schelbauer v. Butler Manufacturing Co. (1984) 35 Cal.3d 442, 452; Jiminez v. Sears, Roebuck & Co. (1971) 4 Cal.3d 379, 387.)

But it is also true that any determination underlying any order is scrutinized under the test appropriate to such determination. (See, e.g., People v. Waidla (2000) 22 Cal.4th 690, 730; People v. Alvarez (1996) 14 Cal.4th 155,188.)

どのような決定の判断であっても、その判断が正当であるかどうかの審査によって精査される。」

 最高裁判所の審理においては証拠の判断においては、証拠の優越にも近い民事訴訟法第248条を使っていないことが正当かどうか、自由裁量権の逸脱になっていないかの審理、判断が必要であると考えられる。

注:間接適用における私人間効力

本名を明かせない事情がある人のホームページより。

「私人間効力

一 憲法の人権規定は私人間にも適用されるか

 私人間効力、あまり聞かない言葉ですよね。 しかしながら、けっこう我々の生活に近いところの問題だったりします。

 そもそも、憲法は私と皆さんといったような私人対私人を想定しているわけではありません。あくまでもわれわれ私人対公人(つまり国家)を想定して作られています。ですから、私人対私人の関係に直接憲法を適用することには問題があるのです。

 しかし、戦後、資本主義の高度化(発展)にともない、社会の中に、企業・労働組合・経済団体・職能団体などの巨大な力を持った国家類似の私的団体が数多く生まれました。これにより、一般国民の人権が脅かされる、という事態が生じました。

 また、マスコミの巨大化によりプライバシー侵害も常態化しているのが現状です。

 そこで、このような「社会的権力」による人権侵害からも、国民の人権を保護する必要があるのではないかが問題になっているのです。ね、結構身近な問題ですよね?

 現在、間接適用説なる考え方が、通説、判例となっています。どのような考え方かといいますと、「規定の趣旨・目的ないし法文から直接的な私法的効力をもつ人権規定を除き、その他の人権については、法律の概括的条項、とくに、民法90条のような私法の一般条項に、憲法の趣旨をとり込んで解釈適用することによって、間接的に私人間の行為を規律すべきである」、という考え方であります。tanashinもこのように解するのがよいと考えています。

 ちょっと難しいですよね。要するに、直接適用すべき人権もあるが、私人対私人の関係には、できるだけこれを規律する民法等の法律に従うのがよい、ということです。このとき、民法の規定を憲法の理念にそって考えることが要求されています。

 上で民法90条なんて条文がでてきましたね。民法90条では有名な「公序良俗」について規定されています。公の秩序、善良な風俗を乱すことは許さない、ということをいっています。

 つまり、公序良俗に反する行為をした私人(実際には大企業など)には憲法の条文を間接的に適用していくぞー、というような態度を間接適用説はとっているのです。

 間接適用なんて方法をとらず、直接に適用しても良いんだ、という考え方もありますが・・・、私的自治の原則(市民社会において人が義務を負うのは自らの意思でそれを望んだときだけである、とする法原理のことをいう)が広く害されることになるので、できる限り間接的に適用するのがよいといえましょう。

ニ 私人間効力が問題になった裁判

 有名なものを2つだけみてみましょう。

1. 三菱樹脂事件

  ある学生さん(以後A君)がいました。A君は三菱樹脂株式会社に採用されましたが、入社試験の際に学生運動はしていないと、うそをついてしまいました。学生運動・・・、若い人にはピンとこないかもしれませんが、就職の際に学生運動をしていたことがばれるとほぼ間違いなく採用してもらえませんでした。

 ところが、それがばれて試用期間終了後A君はクビになってしまいました。そこで、A君は労働契約関係存在の確認を求めて訴えを起こしたのです。

 裁判(S.48.12.12)では、間接適用説に立ちつつも、企業の雇用の自由を強く認め、「特定の思想・信条を有する者をそのゆえをもって雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできず」、また、「労働者の採否決定にあたり、労働者の思想・信条を調査し、そのためその者からこれに関する事項の申告を求めることも」違法ではない(間接適用説によりますと、私法の一般条項に憲法の趣旨を取り込んで解釈するので、私人間において「合憲・違憲」の問題が生ずることは有り得ず、「適法・違法ないし有効・無効」といった判断が下されます)、と判示されました。

 以上の判旨は「無効力説」(憲法の規定は特段の定めある場合を除いて私人間には適用されない、との考え方)と変わらぬとして批判されました。

 tanashinも、この判決では強い保護が要請される精神的自由たる思想・信条を守れないのではないか、と考えています。

2. 百里基地訴訟

  自衛隊基地の用地売買契約についての訴訟ですが、売買の当事者の一方が国(自衛隊)ということもあって、憲法9条も問題になった重要判例です。

 事実の概要はこうです。基地反対派である小川町長Zさんは、基地建設を阻止するために国が基地用地として買収予定のXさんの土地を購入することにし、代理人Yさんを介してXさんと売買契約を結びました。ところがその代金の一部が支払われていないとしてXさんは契約を解除、国はその土地を買う契約をしたのでした。国とXさんが、小川町長Zさんとその代理人Yさんに対して所有権確認(つまり、問題になっている土地は国のものであることを確認する)等の請求をしたのがそもそもの始まりです。 

 平成元年の判決では、憲法98条1項にいう「国務に関するその他の行為」とは、公権力を行使して法規範を定立する国の行為を意味し、私人と対等の立場で行う国の行為は法規範の定立を伴わないから、「国務に関するその他の行為」に該当しない。ゆえに、国が私人と対等の立場で締結する私法上の契約は、「特段の事情がない限り、憲法9条の直接適用を受けず、私法の適用を受けるにすぎない」としました。そして、間接適用説のような考え方により、憲法9条は「私的自治の原則等私法上の規範によって相対化され、民法90条にいう公の秩序の内容の一部を形成する」が、売買当時、自衛隊のために国と私人との間で売買契約を締結することが、反社会的な行為であるとの認識が社会の一般的な観念として確立されていたとはいえないと判示し、ZさんとYさんは敗訴しました。

三 プライバシーと表現の自由

 さて、私人間効力のページでプライバシーだの表現の自由だの関係ないのでは、と思われる方、いらっしゃいませんか? ところが、結構関わりあるのですよ(^^;

 まず、プライバシー権(自己に関する情報をコントロールする権利であると考える説が有力です)についてですが、憲法のどこに規定されているか、ご存知ですか? 実は、今のところどこにも規定されていないんですね(^^; 同様に環境権や日照権、情報権等についての規定もありません。このように、社会に求められてはいるが憲法に規定されていない人権があります。新しい人権と呼んだりします。今現在、判例が正面から認めているのは、プライバシーの権利としての肖像権だけです。というわけで、新しい人権といえばまずはプライバシー権ということになります。憲法上の権利であれば「公共の福祉」(12条後段、13条後段、22条1項、29条2項)による制約しか受けませんが、憲法上の権利でなければより多くの制約を受けることになってしまうので、本当に重要な人権は憲法で保障されるよう努力する必要があるかもしれません。基本的に護憲派の私ですが、新しい人権を明文で憲法に規定することには強くは反対しません。ただし、仮にプライバシー権を憲法第三章で規定した場合、規定されなかった人権の地位がプライバシー権に対して弱められ、13条を根拠に新しい人権を認めていこうという動きが弱められてしまうのなら、やはりプライバシー権を明文化することに反対せざるをえないのかもしれません。

 さて、今ちょっとお話したように、この新しい人権は、憲法13条の幸福追求権を根拠に認めていくべきだ、との考えが有力です。そこから導かれる個々の人権には具体的権利性が認められると考えられています。つまり、裁判で争える、というわけです。

 そこで、この裁判でも争えるほどに有力な人権となったプライバシー権が、憲法上明記されている表現の自由とトラブルを起こしたときにはどのように考えていけばいいでしょうか。この問題を考えるときの基準が問題となります。

 例えば、ある人AがBさんの日常生活を暴露するようなノンフィクション小説を書いたとします。AさんはBさんの事をよく知っていて、どんな秘密を持っているか等の情報に詳しく、それを小説の中で暴露してしまったとしましょう。もう皆さんお分かりの通り、ここでは、Aさんの小説を書くという表現の自由とBさんの秘密等を暴露されたくない、自分の情報は自分で管理するんだというプライバシー権がぶつかり合っています。

 どうです?人権と人権との衝突ですよ。皆さんならどのように解決しますか?

 普通、こうしたケースでは、私人であるBさんは、同じく私人であるAさんにプライバシー権侵害を主張したいことでしょう。でも、プライバシー権という人権を私人に対して主張できるのでしょうか?

 皆さんもうお分かりのように、ここで私人間効力を持ち出すわけです。先ほどみた間接適用説によれば、憲法の人権規定の趣旨を私法の一般条項にとりこんで解釈・適用することにより間接的に私人間にも人権規定を適用していくことになります。ただ、間接適用の仕方によっては権利の保障が弱められるということが起こりうるため、緻密な利益衡量が必要とされています。

 今回の事例では、BさんがAさんに家族に知られたくない秘密を暴露され、このプライバシー権の侵害に対して慰謝料を請求しているとしましょうか。

 とすれば、Bさんの請求が認められるか、Aさんの行為の違法性が問題となります。

 まず、Aさんは私人であり、私人による小説の刊行は21条1項に保障されている表現の自由にあたります。そこで、Bさんのプライバシー権とAさんの表現の自由をいかに調整すべきか解決せねばなりません。

 思うに、表現の自由とプライバシー権は、いずれも個人の尊厳確保のために必要不可欠な人権です。そこで、その調整は緻密な利益衡量によるべきなのです。

 ところで、表現の自由は(表現の自由のところでも触れていますが)精神的自由の中核をなすものなので一般に強い保護が与えられています。プライバシー権との関係では、公共の利害に関わる公的な価値を有する表現は、その民主政下における価値の重要性に鑑み違法とはいえないとされています。

 そこで、Bさんが政治家等ではなく普通のサラリーマンだとしますと、Aさんによる表現は、無名の一私人に向けられたもので、Bさんの実名を公表する必要性が特にあったとはいえず、Aさんの表現行為は違法であるといえ、Bさんの請求は認められることになります。

 一方で、Bさんが政治家で選挙を間近に控えているときに、AさんがBさんの前科情報を小説の中で明らかにしたとき、「公共の利害に関わる」表現であると解することにより、Aさんの表現行為は適法であるとの結論に達することも可能です。

 以上のように、事例毎に相対する利益同士を細かく分析することにより結論は異なりますし、どのような事情をどの程度に評価するか、ということによっても結論は異なってくるでしょう。

 緻密な利益衡量によるべきだ、などといって事例を考えてみましたが、なにせ事例を簡単なものにしているので、上のような程度では「緻密」には程遠いですが、なんとなく利益衡量について分かってもらえると思います。それで、結構です。

以上です。三についてはご参考までに。

牛島税理士訴訟物語からの抜き書き

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松澤証人に関して

 とはいえ、当面の課題は松澤証人尋問対策である。

 彼は東京地裁判事時代にロッキード事件を担当したという。その貴重な経験

は披の信条に影響を与えなかっのだろうか、税理士会による政治献金が許され

るとの論陣を張った。これに対し、われわれは、司法試験受験数、論文の盗作

疑惑にはじまり国労広島地本事件の無理解、前提事実についての専断などを暴

露し、鑑定証人の命というべき専門性の欠如を明らかにした。ついには高石裁

判長から 「僭越なる証人」と決めつけられたのであるから、われわれの反対

尋問の成功を自負することが許されよう。

●40ページ 弁護士 浦田秀徳

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松澤氏の失敗

 松澤氏の失敗はもう一つある。証人は租税法が専門である。しかし証言では、

憲法の思想・信条の自由の問題、民法の公益法人の権利能力の範囲の問題につ

いても専門的に研究していると大風呂敷を広げた。昔の学者はいざ知らず、専

門分野が細分化した今日ではこういうことはありえない。したがって当然のこ

とながら、反対尋問の恰好の標的となってしまった。権利能力についての我妻

説の誤りを指摘されて答えられず、松澤氏が意見書の中で引用している広島地

本の最高裁判決の事例を聞かれて、ほとんどまともに答えられないという失態

をさらすことになったのである。ここはまさに「学者であれば僭越ですな」と

の声がかかる場面である。もっとも専門的に研究していなければ答えられない

という質問でもないと思うのだが・・・。

 伝え聞くところでは松澤氏は法廷の外でも勇猛果敢なる活躍があるようで、

この証人尋問が原因でそれに一層拍車がかかったようである。

●122ページ  弁護士 藤井順司

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判決の意義 憲法は私人間間にも適用される

 つぎに、以上のこととも関連しながら、牛島税理士訴訟判決が明確に、書法

の私人間への適用を認めていることに注目すべきである。

 三菱樹脂・高野事件判決 (一九七三年一二月一二日) で最高裁は、在学

中の団体加入や学生運動の有無について申告させることが思想・信条と関連す

ることを認めながらも、憲法はもっぱら国または公共団体と個人との関係を律

するもので私人相互の関係には適用されない、という「論理」で企業の本採用

拒否(解雇)を有効とした。

 大学の教育方針に反する思想・信条をいだいたことを理由とする私立大学生

にたいする退学処分が争われた、昭和女子大事件判決(一九七四年七月一九日)

でも最高裁はこの「論理」を踏襲したのであった。

 これにたいし牛島税理士訴訟判決で、牛島税理士が私人なのはいうまでもな

いが、南九州税理士会も、一定の公共性をもつとはいえ、国や公共団体の機関

ではない。憲法上の位置づけでは私人にすぎないのである。この私人相互の関

係において、税理士会の目的の範囲という中間項を媒介としながら憲法一九条

の適用を認めたことは前述のとおりである。これは最高裁が私人間への憲法の

間接適用を承認したことにほかならないのである。

「ルールなき資本主義」といわれる今日の大企業の横暴のなかで、ひとつの「

理論的支柱」とされてきたのが「憲法は企業の門の前でとどまる」という身勝

手な言い分であった。関西電力事件判決とならんでこの判決が、これに痛打を

浴びせたことの意義はけっして小さくはないのである。

●213ページ思想・信条の自由の擁護 弁護士 松井繁明

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思想・信条の自由 を積極的に擁護

 なによりもこの判決が、思想・信条の自由 (憲法一九条) を積極的に擁

護したことである。

 憲法が制定されてすでに五〇年。なにをいまさらと思われるかもしれない。

しかし、リアルに歴史的経過を振りかえるとき、最高裁が思想・信条の自由を

擁護してこなかったのは、明らかな事実に属する。レッド・パージ諸事件につ

いて最高裁は、日本の「独立」後における判決のなかでさえアメリカ占領軍命

令の超法規的効力を認めて、明白な思想・信条を理由とする解雇を有効とした

のであった。また、同じく思想・信条の自由が争われた三菱樹脂・高野事件な

どにおいても最高裁は、のちにも述べるように「私人間には憲法は適用されな

い」という「論理」によって、事実上、思想・信条の自由を擁護することを拒

否したのであった。

 これに対し、この判決に先だつ一九九五(平成七)年九月五日、同じく第三

小法廷がおこなった関西電力人権侵害事件の判決は、明らかに思想・信条の自

由を擁護するものであった。すなわち同判決は、「被上告人ら(四人の労働者)

が共産党員またはその同調者であることのみを理由として(中略)その思想を

非難して」監視・孤立策などをとったことは「不法行為を構成するもの」と判

示したのである。

 ところが奇妙なことに、関西電力事件判決のなかでは「思想・信条の自由」

という言葉はひとつも使用されていない。原審の大阪高裁判決と対比すると、

最高裁が故意にこの言葉を削除したと考えられるほかないのであるが、その理

由はさだかではない。

牛島判決の優位性

 それにくらべて牛島税理士訴訟判決では思想・信条の自由を明示して、これ

を擁護している。(税理士会の)目的を判断するに当たっては、会員の思想・

信条の自由との関係での考慮が必要である。(税理士会の)構成員である会員

には、さまざまの思想・信条及び主義・主張を有するものが存在することが当

然に予定されている。

●211ページ 弁護士 松井繁明

最近の最高裁は少数者、異端者は法的保護にあたいしな

い、法的保護は必要ないと考えていますよ

最近の敗訴例の一つの視点

 私が参加した敗訴例の代表として牛島税理士訴訟があります。私は思わず呆

然とし、裁判所を口汚くののしりました。証拠上、主張上負けるはずのない訴

訟だったからです。しかしそのとき、私の尊敬する京都の中島弁護士の警告が

頭をよぎりました。「最近の最高裁は少数者、異端者は法的保護にあたいしな

い、法的保護は必要ないと考えていますよ」。

 まさにこの判決はそうだと思います。「税理士のほとんどみんなが納得して

いるのに、たった一人で、たった五〇〇〇円のことに目くじらたてなさんな」。

 判決はそういっているのです。

 そういう目で最近の判決を見てみると、次々とあります。あの日立の残業拒

否による解雇事件、玉串料訴訟、まさにその典型例ではありませんか。

 少数者の権利を守るのが、まさに基本的人権なのだという正論はあります。

しかしその正論に裁判所が真正面から敵対してくる以上私たちもそれと正面か

らたたかうほかないのではないでしょうか。

● 271ページ 弁護士 馬奈木昭雄」

「709条、または90条の要件を満たせば差し止め請求しうる、という流れで書いてしまうと、条文の規定を曲げてしまうことになってしまうからです。」

北野氏と牛島氏の出会い

 この機会に、私と牛島昭三氏との交誼についてふれておきたい。

 私自身は牛島昭三氏とはかつて面識もなく、まったく存じあげていなかった。

いまから言って二〇数年前に税理士の任意研究団体である税経新人会全国協議

会の研究集会が熊本で開催された。開催地(熊本)の幹事をつとめられたのが

同氏であった。私はその熊本集会で税法学の特別記念講演をさせていただいた。

私を講演者として指名されたのは同氏であった、という。同熊本集会において

はじめて同氏と私は親しくお会いした。その後、全国税労働組合の税研集会が

東京で開催された。同研究集会においても私は税法学の特別講義をする機会を

与えられた。同講義には熊本から同氏も参加されていた。同講義終了後、同氏

から、近く牛島税理士訴訟を提起するつもりでいるので、ぜひ税法学者として

協力してほしいと要請された。

284ページ 日大教授 北野弘久

アメリカにおいても、より制限的ではない代替手段の問題により解決されると見る見解がある。

ii. ii. Fashion Originators [group boycott of retailers who distributed goods of “style pirates”] a social purpose of limiting style piracy was heavily outweighed by the dangers extra-governmental guildファッション・オリジネーターズ事件(「スタイルを盗用」した製品を配給された販売業者のグループによるボイコット事件)スタイルの盗用を制限するという社会的目的よりもギルドが自己において統治する危険性の方がずっと上回っているとした

1. 1. Some have read this as applying a per se test to group boycotts, but it seems to be a narrow rule of reason or limited per se approach. The court considers the group’s power and purpose, as well as less restrictive alternatives.

グループによるボイコットに対して当然違法の原理を適用したものであるとファッション・オリジネーターズ事件を読み解くものもいるが、狭い意味の合理性の基準か、限定された当然違法の原理であると思われる。裁判所はグループの支配力や目的を考慮すると同時に、より制限的ではない代替手段がないかどうかを考慮している。

注:

I. History of Antitrust Litigation

a. a. Monopolization

i. i. Definition: (1) The possession of monopoly power in a relevant market, and (2) the willful acquisition or use of that power by anticompetitive or exclusionary means or for anticompetitive or exclusionary purposes.

ii. ii. Aspen Ski a refusals to deal can amount to monopolization

1. 1. Essential Facilities Doctrine a With an essential facility, there is an obligation to provide access to a competitor.

iii. iii. With attempts to monopolize, there is a requirement to demonstrate specific intent, but not with monopolization cases.

b. b. Vertical Restraints

i. i. Intrabrand competition is w/in one brand, on the distribution level. Interbrand competition is among different brands.

ii. ii. Horizontal restraints are analyzed under the “per se” rule; the effects do not have to be apparent. Vertical restraints are analyzed under the “rule of reason.”

iii. iii. There is the possibility of free-riding in the form of cream-skimming, selling the product w/out allocating the resources.

c. c. Conspiracy to Restrain Trade

i. i. Modified Rule of Reason (Rothery Storage [agents cannot contract w/ competitors if using Atlas’ resources]):

1. 1. Naked horizontal restraint that does not accompany a contract integration is per se illegal.

2. 2. Ancillary horizontal restraint that is part of integration of economic activities of the activities of the parties and is appears to be capable of enhancing efficiency is judged by its purpose and effect.

ii. ii. See Chart

d. d. Mergers

i. i. Merger resulting in large market share is presumptively illegal, rebuttable only by a demonstration that the merger will not have competitive effects. [Philadelphia National Bank - SC]

ii. ii. The market share figure is not accurate in representing ease of entry or future market share. There should be greater attention to entry conditions in determining the legality of exclusionary practices and mergers. [Waste Management ? 2nd Cir.]

iii. iii. There are two types of potential errors: In Type 1, the firm or firms get away with activity that has anticompetitive effects; in Type 2, the activity is held illegal even though it may not be anticompetitive. Type 2 errors are potentially dangerous b/c of the chilling effects.

e. e. Standing [Mid-Michigan Radiology] a Radiology firm, which is seeking to provide for its own self-interest is not an adequate representative of the class of consumers that are supposed to be protected by the antitrust laws.

II. II. Conspiracies in Restraint of Trade

a. a. Classic Cases:

i. i. Trans-Missouri a Court took literal reading of “every restraint” in condemning all agreements in restraint of trade, not just unreasonable ones.

ii. ii. Joint Traffic a Trans-Missouri analysis will result in Type 2 errors. Efficiency will justify arrangements that may otherwise restrain trade.

iii. iii. Addyston Pipe a All price-fixing agreements are per se illegal unless ancillary to a legitimate purpose. Ancillary means that an agreement has to be reached for some larger purpose to be accomplished.

iv. iv. Trenton Potteries a Reasonableness of prices cannot be a defense. What is reasonable today may be unreasonable tomorrow. Proof of existence of price-fixing agreement establishes illegal purpose, and there is no need to show that the fixed prices are unreasonable.

v. v. Appalachian Coals a In applying the essential standard of reasonableness, there must be a close and objective scrutiny of particular conditions and purposes. Realities must dominate the judgment.

b. b. Per Se Rule [horizontal price-fixing, horizontal boycotting, horizontal territorial allocations]

i. i. Socony Vacuum (Madison Oil) [independent dealers were matched w/ major oil firms] a rigid per se rule condemning all price-fixing arrangements; if the purpose is to raise prices, then “per se” illegal.

1. 1. Dicta - §1 conspiracy violations require no overt act to be shown other than the conspiracy. NO §1 requirement to demonstrate both power (to control prices) & purpose.

2. 2. In order to establish horizontal price-fixing, there must be (1) agreement, combination, conspiracy; (2) among actual competitors; (3) with the purpose of raising, depressing, pegging, or stabilizing prices; (4) in interstate commerce.

ii. ii. Fashion Originators [group boycott of retailers who distributed goods of “style pirates”] a social purpose of limiting style piracy was heavily outweighed by the dangers extra-governmental guild

1. 1. Some have read this as applying a per se test to group boycotts, but it seems to be a narrow rule of reason or limited per se approach. The court considers the group’s power and purpose, as well as less restrictive alternatives.

iii. iii. Topco [territorial restraints among smaller grocery chains selling generic-branded products] a condemned as per se illegal for the market divisions’ elimination of competition among sellers.

1. 1. The court says that is not up to the organization which kind of competition is more advantageous to the market.

2. 2. If looked at today, the courts would view this as intrabrand competition and a vertical restraint, applying the rule of reason in order to determine if there is an impact on interbrand competition.

c. c. Rule of Reason

i. i. Chicago Board of Trade [special after-hours sessions where the call rule was in effect] a Legality of agreement cannot be determined by simple test of whether it restrains competition. New rule of reason analysis: pro-competitive or anti-competitive effects.

1. 1. The critical factors to be considered evaluation are the purpose and effects.

ii. ii. Society of Professional Engineers [professional society’s canon of ethics prohibits competitive bidding] a Purpose of the rule of reason analysis is to form judgment about the competitive significance of the restraint; it is not to decide whether a policy favoring competition is in the public interest, or in the interest of the members of an industry.

1. 1. Justifications are confined to consideration of the impact of the restrain on competitive conditions.

d. d. Modern Cases - Per Se Loosening

i. i. Price-Fixing

1. 1. BMI [effect of arrangement was that organization acted as license clearing house for composers] a the marketing arrangements (blanket licenses) seemed reasonably necessary for development of new music

a. a. Threshold inquiry as to whether horizontal collaboration “facially appears to be one that would always or almost always tend to restrict competition and decrease output” or is designed to “increase economic efficiency and render markets more, rather than less, competitive.”

b. b. Even horizontal price-fixing agreements may serve necessary and beneficial purposes and analyzed under the rule of reason.

c. c. The teaching force of this case is that what can technically or on its face as price-fixing under Madison Oil may, under certain circumstances be viewed under the rule of reason. These circumstances include the existence of other products, the value of the new product and efficiencies that result, and the effect of increasing output and driving down the price.

2. 2. NCAA [restricting how often each team’s games could be broadcasted] a Quick-look rule of reason instead of per se b/c of horizontal restraints may be necessary if the product is to be available. In this application, an exhaustive, fact-intensive analysis is not required and proves that Π’s can prevail under rule of reason.

3. 3. Abbott Labs [exclusive marketing agreement] a Licensing agreement was pro-competitive b/c it introduced a new product into the market. Π cannot articifially create antittrust claim by narrowly defining the relevant market.

4. 4. Procompetitive Justifications: tendency to reduce transaction costs and increased efficiency (BMI, NCAA, NW Wholesalers)

ii. ii. Concerted Refusals to Deal

1. 1. NW Wholesalers [member of office supplies cooperative expelled b/c it expanded activities from retail to wholesale] a modified per se rules for boycotts: “Unless the coop possesses market power or exclusive access to an element essential to effective competition, the conclusion that expulsion is virtually always likely to have anticompetitive effect is not warranted.”

a. a. Where the joint activity does not seek to disadvantage rivals, it is unlikely to have predominantly anticompetitive effects.

b. b. If there are likely anticompetitive effects from a group boycott, then per se rule applies. If anticompetitive effects are not likely, then apply two-step analysis:

i. i. Is there market power?

ii. ii. Does this result in anti-competitive effects?

c. c. Quick look has circular reasoning b/c there must be enough facts to determine pro-competitive effects, but not so much that the entire rule of reason analysis should be carried out.

2. 2. IN Federation of Dentists [collective refusal by dentists to provide x-rays to insurance company] a Together with NW Wholesalers, this case suggests that group boycotts are only per se illegal when there is market power or some other control of competition.

e. e. Modern Cases - Per Se Reaffirmance

i. i. Maricopa County [physicians set max fees] a Reaffirmance of per se rule against maximum price-fixing; maximum price becomes the minimum price when collective action exists.

ii. ii. SCTLA [lawyers refused to represent indigent Δ’s until fees were raised by gov’t] a Boycotts by rivals constitute naked restraints which are per se illegal (return to the dichotomy model).

iii. iii. Palmer [selling HBJ bar review materials] a Agreements by competitors not to compete in each other’s territories are illegal per se, “whether the parties split a market w/in which both do business or whether they merely reserve [markets].”

f. f. Modern Rule of Boycott Decisions: (1)An agreement by direct rivals to withhold their services until the price for such services is raised is a “naked” restraint on output and is condemned summarily [SCTLA]; (2)Concerted refusals to deal that pose remotely plausible efficiency rationales are evaluated with a truncated rule of reason that begins (and sometimes ends) with a preliminary assessment of the conduct’s purposes and effects [IN Federation of Dentists]; (3)Suits challenging memberships policies of efficiency-enhancing collaborations require a fuller reasonableness inquiry, including a determination of the Δ’s market power [NW Wholesalers].

g. g. Lower Court Interpretations [Polk Bros. (7th Cir.)(one store sells some items, the other sells the rest)] a Challenged market division facilitated the accomplishment of productive endeavor that would not have occurred w/out restraint. This is ancillary, subject to rule of reason.

III. III. Other Issues Concerning Collusion

a. a. Applicability of Sherman Act

i. i. Brown University [overlap group for determining students’ need] a Educational institutions are not exempt from antitrust analysis; financial aid is part of tuition-setting process and therefore, part of commerce.

1. 1. Quick look rule of reason analysis is not appropriate in cases where there are pro-competitive justifications. Here, there must be a full-blown rule of reason approach.

2. 2. Rule of reason inquiry should consider Δ’s non-economic justifications.

3. 3. Narrows the per se application only to most direct price-fixing agreements while more readily finding agreements not covered by the per se rule under the rule of reason.

ii. ii. DELTA [humane society has majority share of market] a charitable organizations are not in commerce, and therefore, not subject to the Sherman Act.

b. b. Evidentiary Standards - Mashushita [Japanese electronics manufacturers sell at below-market prices in US] a alleged conspiracy’s failure to achieve its end in two decades is strong evidence that conspiracy does not in fact exist; according to Monsanto, the evidence must tend to exclude the possibility that petitioners underpriced respondents to compete for business (acting independently) rather than to implement an economically senseless conspiracy.

i. i. There is a difference b/t predatory pricing schemes and garden variety price-fixing. W /predatory, if inferences are drawn wrong, we could chill decisions to reduce prices.

ii. ii. The success of any predatory scheme depends on maintaining that power for long enough both to recoup the predator’s losses and to harvest some add’l gain.

iii. iii. From Monsanto, a “conscious commitment to a common scheme” can be shown by direct or circumstantial evidence.

c. c. Ambiguous Practices ? Conspiracy to Monopolize

d. d. Ambiguous Practices ? Information Exchange

i. i. Container Corp. [informal price information exchange] acondemning of information exchanges because of tendency towards price uniformity; §1 bans stabilizing prices as well as raising them

ii. ii. An exchange of price information among competitors, w/out an agreement to fix prices, is sufficient as an antitrust violation only when:

1. 1. Market is highly concentrated by few sellers

2. 2. Fungible product

3. 3. Competition based upon demand

4. 4. Inelasticity of demand

iii. iii. Gypsum [large companies were part of association] a (1) Standard to be recognized for Sherman Act is that for criminal proceeding rather than civil; (2) Mere exchange of information is not violation of antitrust laws. This creates rule of reason standard for exchange of information.

iv. iv. Five Smiths [exchange of salary information among players] a Rule of reason should apply b/c information exchange among competitors does not necessarily have anticompetitive effects. W/o market concentration, information exchange is pro-competitive.

1. 1. What difference does elasticity make? If you are part of an elastic demand curve, change in quantity is larger w/ change in price. If on inelastic part of the demand curve, there is less change in quantity needed to change price.

v. v. Petroleum Products [oil price changes posted publicly] a Earlier cases were asking whether you can infer an agreement from the exchange of info. These cases are asking whether there was an agreement and did the exchange of info. facilitate this agreement.

e. e. Ambiguous Practices ? Oligopoly

i. i. City of Tuscaloosa [sales through submission of sealed bids at lust prices] a The test to determine whether there is an antitrust violation of dealing w/ conscious parallelism exists w/o direct evidence, depends on showing of (1) Δ’s acting in conscious parallel fashion, and (2) ‘plus factors’ that tend to exclude the possibility if non-collusive action.

1. 1. Daubert says for scientific evidence to be admissible, it must (1) reliable, and (2) relevant.

ii. ii. Catalano [beer distributors agree to eliminate short-term credit] a agreements which are inseparable from prices are governed by the per se rule.

f. f. Horizontal v. Vertical Restraints [Toys-R-Us]

IV. IV. Monopolization

a. a. Monopoly Power

i. i. ALCOA

ii. ii. Grinnell

iii. iii. Blue Cross Blue Shield

iv. iv. American Key

b. b. Exclusionary Conduct

i. i. Exclusionary Contracts ? United Shoe

ii. ii. Essential Facilities - Florida Fuels

c. c. Predatory Pricing

i. i. Rose Acre

ii. ii. Brown & Williamson

d. d. Attempted Monopolization - AMI

e. e. Price Squeezes ? Town of Concord

f. f. Non-collusive, non-monopolizing, non-competitive conduct ? DuPont

V. V. Vertical Restraints

a. a. Dr. Miles

b. b. State Oil

c. c. Sylvania

d. d. St. Martin

e. e. Monsanto

f. f. Sharp

VI. VI. Tying

a. a. International Salt

b. b. Chicken Delight

c. c. Jefferson Parish

d. d. Town Sound

e. e. Kodak

f. f. Microsoft

VII. VII. Exclusive Dealing

a. a. Standard Stations

b. b. Tampa Electric

c. c. Roland Machinery

d. d. Parikh

VIII. VIII. Mergers & Acquisitions

a. a. Classic Cases

i. i. Von’s Grocery

ii. ii. Proctor & Gamble

iii. iii. General Dynamics

b. b. Modern Cases

i. i. Hospital Corp.

ii. ii. Staples

上告理由の訂正

359頁の

事業者団体の自由を否定する違憲の請求にはならないと考えられる。

事業者団体の自由を否定する違憲であるとの上告理由になると考えられる。

に訂正する。

東京高等裁判所平成17年(ネオ)第183号・平成17年(ネ受)第192号

差止損害賠償請求事件

上告人兼上告受理申立人  株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

同        山 口  節 生

相手方          社団法人埼玉県不動産鑑定士協会

             同代表理事  岩 ア  彰

上告理由書兼上告受理申立理由書(2)

平成17年5月9日

最 高 裁 判 所 御中

上記上告人兼上告受理申立人

株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

山 口  節 生

上告理由書兼上告受理申立理由書(目次)

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

第2・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

第3・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

はじめに

1 本件の請求

 (1) 上告人山口は、不動産鑑定士であり、上告人会社は、不動産鑑定評価に関する法律(以下、「鑑定法」という。)に基づく不動産鑑定業者であるところ、上告人山口は、平成11年9月、被上告人に対し入会を申し込んだところ、被上告人から、平成12年3月13日、これを拒否され(以下、「第1入会拒否」という。)、上告人会社は、平成13年1月19日、被上告人に入会を申し込んだところ、被上告人において、その理事会で、同月24日、同申込みを受理しないことを決議し、現在に至るまで上告人会社の入会申込みに対して回答をしていない(以下、「第2入会拒否」という。)

 (2) 本件は、上告人会社が、埼玉県内の鑑定業務、受託を独占している被上告人において、固定資産税の標準宅地の鑑定業務、公共事業用地等についての不動産鑑定業務及び路線価の鑑定業務について鑑定評価員等の推薦又は働きかけ等をし、被上告人会員と競争関係にある上告人会社を市場から排除し、かつ、被上告人の入会金を不当に値上げして被上告人への入会を阻害するなどしたことに基づき、これらの推薦又は働きかけ、入会金の値上げ等の行為につき、不公正な取引方法(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号。以下、「一般指定」という。)2項又は5項に該当し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、「独占禁止法」という。)8条1項1号、3号及び5号並びに19条に違反すること、また、被上告人において、資料閲覧及び業務補助者証明書の交付に関して、被上告人の会員と非会員を差別的に取り扱った行為につき、同じく一般指定2項、3項又は5項に該当し、独占禁止法の8条1項5号及び19条に違反すること、第2入会拒否が上告人会社を不当に排斥し、もって不動産鑑定業者として事業を行うことを困難にするものであるから、第2入会拒否につき、一般指定5項に該当し、独占禁止法の上記規定に違反すること、並びに、被上告人が、埼玉県内の市町村と業務委託契約を締結することによって、上告人らを埼玉県内の市町村との鑑定評価業務受託取引から排除していること、上記の行為は、一般指定1項2号又は2項に該当することを理由に、被上告人に対し、独占禁止法24条に基づき、第2入会拒否、鑑定評価員等の推薦又は働きかけ、入会金の徴収及び資料の閲覧等に係る差別的取扱い等の差止めを求めるとともに、上告人らが、第1入会拒否及び第2入会拒否(以下、「本件各入会拒否」という。)について、上記のとおり、一般指定5項に該当し、独占禁止法8条1項5号及び19条に反するものであり、これらの入会拒否により、上告人らは営業権を侵害され損害を蒙ったことに基づき、被上告人に対し、不法行為に基づき、上告人らが蒙った損害金(弁護士費用を含む)及びその遅延損害金の各支払を求めているところ、本理由書は、この内、本件各入会拒否の違法を理由とする上告人らの各請求に関する原審判断の誤りを述べる。

第1 原判決には、独占禁止法8条1項3号、5号および19条の解釈の誤りがあり、それは判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反であるから原判決は破棄を免れない。よって原判決は、最高裁判所の判例等に相反し、その他法令の解釈に関する重大な事項を含む判断がなされているものとして、上告受理決定なされるべきものである。

 1 原判決の引用する第一審判決は、次のとおり判示する。

 原判決は、「挙示の証拠に照らし、入会拒否に社会通念上合理的理由があるとした原判決の認定判断は正当として是認することができ、本件各入会拒否が被控訴人(被上告人:引用者注)の利権を守るためにされたものであることを認めるに足りる証拠はなく、控訴人ら(上告人ら:引用者注)の主張は、採用することができない。」(原判決13頁)と判示する。

 すなわち、原判決は、本件入会拒否は、社会通念上合理的な理由があれば、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条に該当しても違法性は阻却されると判示したものである。

 2 しかしながら、原審の上記判断は、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条の解釈を誤ったものである。その理由は次のとおりである。

独占禁止法8条1項3号は、事業者団体が「一定の事業分野における現在または将来の事業者数を制限すること」を禁じている。その趣旨は、事業者団体がその決定を持って一定の事業分野にある事業者の数を制限することにより、新規事業者の市場の参入を阻止しあるいは既存事業者を排除し、許容された一定数の事業者においてのみ競争が行われるという条件を作り出すことは、市場の開放性を阻害し、独占禁止法が禁じる不当な取引制限に該当するからである。それゆえ、同号に規定する事業者数の制限は、競争の実質的制限にいたらない場合であっても禁止されている点に特徴があるのであり、同項に該当する場合には、その違法性が阻却されるような例外的な場合は認められないと解すべきである。仮に、「不当な取引制限」行為から除外されるような例外的な場合があるとしても、それは、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進するという」独占禁止法の究極の目的(一条)に実質に反しない」と認められる例外的な場合でなければならない。したがって、入会拒否が、違法行為でないとされるためには、その理由が、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進するという独占禁止法の究極の目的(一条)に実質に反しない」と認められる例外的な場合によるものでなければならない。

3 本件についてみれば、埼玉県における不動産鑑定士業の唯一の団体である被上告人は、事業者団体であるとともに、被上告人に加入しないで埼玉県下において不動産鑑定業務を行うことが、著しく困難な状況にあったものであるから、上告人山口の入会を拒否することは、上告人山口の参入を阻止し市場の開放性を阻害することは明らかであるところ、被上告人が入会拒否として挙げる理由の主なものは、被上告人以外の同様の団体に対して行われた上告人山口の言動に鑑みて、上告人山口が被上告人の健全な運営を阻害する虞があるとしているにとどまるのであり、被上告人の会員の業務を享受する一般消費者の利益確保という観点からの必要性は全く考慮されていないだけでなく、被上告人が問題とする言動は、その主なものは、被上告人及び他地域における同様の事業者団体が行っている不動産鑑定業務の独占行為に対する疑いに基づきこれを矯正して、不動産鑑定業務における自由競争原理の実現の観点から、これを批判していると認められる意思表明であり、むしろ一般消費者の利益確保と独占禁止法の趣旨目的に沿うものとも見られ得るものであり、これらを理由に入会拒否できる例外的場合には、到底該当し得ないものである。

以上と異なる見解に立って、被上告人の請求を退けた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決は破棄を免れない。

第2 原判決の判断は、最高裁判所の判例と抵触する誤りがあり、それは判決に影響を及ぼすことが明らかな判例違反であるから原判決は破棄を免れない。よって最高裁判所の判例等に相反し、その他法令の解釈に関する重大な事項を含む判断がなされているものとして、上告受理決定なされるべきものである。

1 原判決の引用する第一審判決は、次のとおり判示する。

 原判決は、「挙示の証拠に照らし、入会拒否に社会通念上合理的理由があるとした原判決の認定判断は正当として是認することができ、本件各入会拒否が被控訴人(被上告人:引用者注)の利権を守るためにされたものであることを認めるに足りる証拠はなく、控訴人ら(上告人ら:引用者注)の主張は、採用することができない。」(原判決13頁)と判示する。

 すなわち、原判決は、本件入会拒否は、社会通念上合理的な理由があれば、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条に該当しても違法性は阻却されると判示したものである。

2 しかしながら、最高裁判所判例(最高裁判所判例集 第38巻第4号25頁)は、次のとおり判示する。

「独禁法の立法の趣旨・目的及びその改正の経過などに照らすと、同法2条6項にいう「公共の利益に反して」とは、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを指すが、現に行われた行為が形式的に右に該当する場合であっても、右法益と当該行為によって守られる利益とを比較衡量して、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的(同法1条参照)に実質的に反しないと認められる例外的な場合を右規定にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨と解すべきであり、これと同旨の原判断は、正当として是認することができる。」

 同判決が認容した原審判決は、次のように述べている。

「・・・独禁法の改正等の経緯にかんがみ、同法を整合的に解すると、同法は、共同行為により一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為であっても、その行為の実質において同法の趣旨、目的に反しないものがありうることを予定しているものと解されるが、前記の同法の目的をも考慮すると、「公共の利益に反して」とは、同法の趣旨、目的に反することをいい、原則としては同法の直接の法益である自由競争経済秩序に反することであるが、形式的に右に該当する場合であっても、右法益と当該行為によって守られる利益とを比較衡量して、全体的にみた前記の同法の趣旨、目的に実質的に反しないと認められるような例外的なものを公共の利益に反しないものとして独禁法の適用から除く趣旨で右構成要件が設けられたものであると解するのが相当である。」

 そして、事業者団体による競争の実質的制限行為を禁止する8条の規定の解釈において、同条所定の各行為であれば違法性が阻却されるような例外的場合は一切認められないとの立場を採るのであれば格別、そうでない限り、これらの行為についても、事柄の本質及び独占禁止法1条の立法趣旨からみて、2条5項・6項の「公共の利益に反して」という要件は類推適用されるとするのが一般であり(村上政博、独占禁止法第2版・67頁・平成12年・弘文堂)、この2条5項・6項類推適用説に拠る限り、8条所定の事業者団体の行為も、上記判例の射程範囲に属するものであることは疑いない。

 3 上記判例によれば、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条は、自由競争経済は、需給の調整を市場機構に委ね、事業者が市場の需給関係に適応しつつ価格決定を行う自由を有することを前提とし、その努力による価格引下げ競争が、本来、競争政策が維持・促進しようとする能率競争の中核をなるものであるところ、事業者団体が、将来の事業者の数を制限する場合には、一定の事業分野の市場の開放性を妨げ、事業者の努力又は正常な競争過程を反映せず、競争事業者の事業活動を困難にさせるなど公正な競争秩序に悪影響を及ぼす虞が多いと見られるため、これを禁止しているものであり、同規定による違反行為がないとされるためには、これら判例による「公共の利益に反して」という基準に該当しないことが示されなければならないものである。したがって、事業者団体による入会拒否が同項に該当する違法なものでないとする理由としては、それが「公共の利益に反」するかどうか、換言すれば、事業者団体による入会拒否が専ら公正な競争秩序維持の見地に立ち、具体的な場合における行為の意図、目的、態様、競争関係の実態及び市場の状況等を総合して(参照、最高裁第一小法廷平成6年12月14日民集43巻12号2078頁)勘案し、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的な発達を促進するという独占禁止法の究極の目的に実質的に反しない」と認められるかどうかを基準として判断すべきである。

 4 しかるに、原審は、入会拒否の違法性を判断する際に「社会通念上の合理性」を基準として採用するのみで、これら判例による、独占禁止法の目的に基づく同法2条5項・6項の類推適用による同法究極目的に実質的に反しないと認められる例外的な場合についてのみ違法性が阻却される、との基準に一顧だにしていない。入会拒否基準としての「社会通念上の合理性」とは、会員の自発的意思によって結成される任意団体に適用される基準であって、独占禁止法により規制される事業者団体の入会・拒否基準とはなり得ない。このような基準をもって、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条に該当しないとした原判決は、上記最高裁判所の判例に明らかに抵触する。

 5 本件についてみれば、埼玉県における不動産鑑定士業の唯一の団体である被上告人は、事業者団体であるとともに、被上告人に加入しないで埼玉県下において不動産鑑定業務を行うことが、著しく困難な状況にあったものであるから、上告人山口の入会を拒否することは、上告人山口の参入を阻止し市場の開放性を阻害することは明らかであるところ、被上告人が入会拒否として挙げる理由の主なものは、被上告人以外の同様の団体に対して行われた上告人山口の言動に鑑みて、上告人山口が被上告人の健全な運営を阻害する虞があるとしているにとどまるのであり、被上告人の会員の業務を享受する一般消費者の利益確保という観点からの必要性は全く考慮されていないだけでなく、被上告人が問題とする言動は、その主なものは、被上告人及び他地域における同様の事業者団体が行っている不動産鑑定業務の独占行為に対する疑いに基づきこれを矯正して、不動産鑑定業務における自由競争原理の実現の観点から、これを批判していると認められる意思表明であり、むしろ一般消費者の利益確保と独占禁止法の趣旨目的に沿うものとも見られ得るものであり、これらを理由に入会拒否できる例外的場合には、到底該当し得ないものである。

以上と異なる見解に立って、被上告人の請求を退けた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決は破棄を免れない。

第3 原判決には、憲法の解釈の誤りがあり、原判決は破棄されるべきものである。よって上告に理由がある。

 1 原判決は、本件入会拒否に関し、次のように判示した。

 原判決は、「挙示の証拠に照らし、入会拒否に社会通念上合理的理由があるとした原判決の認定判断は正当として是認することができ、本件各入会拒否が被控訴人(被上告人:引用者注)の利権を守るためにされたものであることを認めるに足りる証拠はなく、控訴人ら(上告人ら:引用者注)の主張は、採用することができない。」(原判決13頁)と判示する。

 そして、原判決が是認した原原判決は、被上告人の定款5条3項(本会への入会が会員の綱紀保持上不適当と認められる事由のある者)に該当すると認定した理由を次のように述べる。

「・・・原告山口が、鑑定協会や都士協会に対し、具体的根拠も客観的根拠もないのに、談合をしている等として訴訟を提起し、不当に同協会らの業務に支障を生じさせ、その信用を貶めたこと、選挙活動の一環であることを考慮しても著しく不適切な表現行為であるとの謗りを免れない文章を選挙公報やホームページに公然と掲載したこと、茨城県の市町村に対して、・・・の公正取引委員会の警告の対象とされた独占禁止法違反のおそれのある行為と同種の行為を依頼する内容の書面を配布したこと、そのうち・・・の書面は、茨城県士協会会長井坂の名義部分を棒線1本を引いて消しただけのものであり、同書面を受け取った一般人をして、上記井坂作成に係る文書であると誤信せしめ得るものであること等によれば、原告山口の入会により、被告に対する社会一般の信頼・信用が低下し、被告や同会員の名誉が害され、被告内部に混乱を来し、被告の円滑な業務の執行に支障を来すおそれが高いと認められ、原告山口は、被告の定款5条3項(本会への入会が会員の綱紀保持上不適切と認められる事由のある者)に該当するものと認めることができる。」

 2 しかしながら、本件入会拒否の違法性を判断するにあたっては、入会拒否が違法な基本権保障規定を侵害しないかどうかの判断が回避されてはならない。一般に、私人間における基本的自由の侵害や侵害の虞に関しては、憲法の直接適用がないとされる(最高裁判所昭和48年12月12日、民集27巻11号1536頁)。しかし、基本的自由の侵害や侵害の虞の態様・程度が社会的に許容される限度を超える場合には、基本的自由の利益を保護すべきことは言うまでもない。まして、私人間の関係であっても相互の社会的力関係の相違から、一方が他方に優越し、事実上後者が前者の意思に服従せざるを得ないような場合で、法的服従関係に準ずるような場合には、憲法基本権保障規定の適用ないしは類推適用が認められるべきである。

3 本件では、被上告人への加入は、実質的には強制加入であり、埼玉県下において不動産鑑定業務を営むためには被上告人に加入してその会員資格を得ることが必要であり、被上告人の会員資格を有しないで同県における不動産鑑定業務を営むことは不可能又は著しく困難であるから、被上告人と上告人山口の関係は、憲法の基本権保障規定の適用ないし類推適用を受けるべき服従関係にある。

4 本件は以下のとおり、実質的には強制加入の事業者団体である被上告人と上告人ら事業者との関係は、埼玉県における不動産鑑定業務においては、被上告人と上告人らとの間に法的服従関係に準ずる関係が成立していると言わざるを得ない。

(1) 上告人山口は、平成2年5月に不動産鑑定業者として開業し、平成11年9月に、埼玉県内に不動産鑑定士事務所を設けると同時に、埼玉県の不動産鑑定業者の登録を受けた。

(2) 埼玉県内における不動産鑑定評価業務は、東京都等と較べると、民間の会社及び個人からの鑑定依頼は約3割と少なく、国土交通省が発注する地価公示の鑑定評価、埼玉県が発注する用地買収等の鑑定評価並びに地価調査等の鑑定評価、国税庁が発注する路線価格の鑑定評価、裁判所が発注する裁定競売価格の評価及び訴訟・非訴訟上の鑑定評価、市町村が発注する固定資産税の課税標準を定めるための地価調査及び用地買収等の鑑定評価などの公的機関からの鑑定評価の依頼がその業務の約7割もの大部分を占める。

(3) 被上告人は、本部の社団法人日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会がその前身であり、平成7年3月20日に社団法人となったものであり、不動産鑑定評価制度の普及等を目的とする公益社団法人であり、埼玉県における唯一の不動産鑑定業者の事業者団体である。

(4) 被上告人は、その前身である本部の関東甲信会埼玉県部会のときから、平成6年度から不動産鑑定士へ鑑定評価の委託がなされるようになった固定資産税の課税標準を定めるための地価調査に関し、平成7年度(平成9年度の評価替えのため)及び平成10年度(平成12年度の評価替えのため)及び平成13年度(平成15年度の評価替えのため)には、埼玉県内の各市町村との間で鑑定評価の業務委託契約をした。

(5) そして、固定資産税の課税標準を定めるための地価調査についての3年ごとの評価替えの年度である平成9年度については、「固定資産税評価における平成9年度評価替え以降の鑑定評価実施体制について」(平成6年10月12日自治評第43号)に基づいて埼玉県の行政指導により、平成12年度評価替え以降、上記自治省通知が廃止され行政指導がなくなった後は、埼玉県市町村税務協議会資産税(土地)部会と被上告人の申し合わせに基づき、被上告人において、埼玉県内全92の市町村(当時)において地価調査を希望する不動産鑑定士の名簿を提示することとされた。そこで被上告人は、会員から埼玉県下の各市町村の地価調査の希望を取りまとめて希望者名簿を作成し、これを各市町村に配布した。そして、平成10年3月19日には、一方で、平成9年度評価体制に準じ、被上告人と鑑定評価に関する委託契約を結ぶことで合意を得たとするとともに、他方で、被上告人に加入していない鑑定評価員並びに市町村に申し出た鑑定評価員の希望者の申し込みについても、被上告人が受け付けるべきものとされた。しかしながら、平成15年度評価替えにおいては、希望者の申し込みのとりまとめを、被上告人会員とそれ以外の者とを区別して実施し、後者の対象者には極めて短い回答期間を与えるにすぎないなど、不自然・不合理な方法により被上告人会員とそれ以外の者とを差別的に扱った。

(6) 相続税路線価の標準地評価に関しては、国税庁を委託者、社団法人日本不動産鑑定協会を受託者とする業務委託契約によっている。不動産鑑定士の選任手続は、本部が鑑定希望者を募り、その希望者名簿を国税庁に提出し、埼玉県内については、関東甲信越国税局及び各税務署が、鑑定士評価員に委託するというものであるが、平成13年分の相続税路線価の評価員として委嘱された者は、平成13年分は126名、平成14年分は127名、平成15年分は126名であるが、この中には、被上告人会員又は同関係者以外の埼玉登録業者で被上告人会員以外の者は一人も含まれてはいなかった。

(7) 以上を背景として、埼玉県では、固定資産の標準宅地の鑑定評価業務に関して、平成13年度において、平成15年度の固定資産鑑定評価員を希望した者が162業者(うち被上告人会員128業者、非会員34業者)であったところ、同評価員として選任されたのは127業者(うち被上告人会員106業者、非会員21業者。業者数に関する(以下同じ)会員比率83.4%)であり、公共事業用地等の不動産鑑定評価業務に関して、埼玉県浦和土木事務所が県内の物件について鑑定依頼を発注した業者は、平成11年度において、188業者、依頼件数合計140件(うち非会員1業者、依頼件数2件。会員比率99.5%)、平成12年度において、17業者、依頼件数合計122件(うち非会員ゼロ。会員比率100%)、平成13年度において、17業者、依頼件数合計117件(うち非会員ゼロ。会員比率100%)であり、さらに、国税庁は注の路線価の鑑定評価業務に関して、関東信越国税局が委嘱した鑑定評価員は、平成13年度において、のべ126名、鑑定地点総数597(うち非会員のべ16名、鑑定地点数59。評価員数に関する会員比率(以下同じ)87.3%)、平成14年度において、のべ127名、鑑定地点総数613(うち非会員のべ14名、鑑定地点数57。会員比率89%)であった。したがって、埼玉県下における不動産鑑定業務は、被上告人会員がほぼ独占している状態にあり、平成11年、平成12年、平成13年及び平成14年分の埼玉県登録業者の合計収入金額に占める被上告人会員の収入は、99.8%、99.8%、99.3%、100%を占め、これら全期間を通じて、被上告人会員以外の埼玉県登録業者で、国、地方公共団体、公社、公団、公庫等、裁判所から鑑定評価業務を受注した実績が零であった。

(8) 埼玉県において、不動産鑑定業者の被上告人への加入率はほぼ100%に近い。つまり、被上告人に加入していないのは、事業を行っていない者か又は何らかの特別な事情がある業者のみである。

  (9) 近隣他県(茨城県)における強制加入の実情

 このような状況は、埼玉県のみならず、同じ関東圏に属する茨城県においても同様である。

 不動産鑑定士の社団法人茨城県不動産鑑定士協会への入会に関して、入会に当たって会員2名の推薦を要件としていることが独占禁止法8条1項3号に該当し不法行為が成立する旨判断した東京地裁八王子支部も(同庁平成13年9月6日判決 判タ1116号273頁)も、茨城県内における不動産鑑定評価業界の実態に関して、

 「茨城県内における不動産鑑定評価業務は、国の行政機関、県、市町村、裁判所などの公的機関からの依頼がかなりの部分を占めるところ、茨城県内には、被告(社団法人茨城県不動産鑑定士協会:引用者注。以下同じ)に代わる不動産鑑定業者の組織が他になく、被告に対する公的機関からの信用力が高いため、依頼者である公的機関は、事実上、被告の会員である不動産鑑定業者に鑑定依頼する傾向にあり、具体的には、被告は、茨城県との間で、短期地価動向調査の鑑定評価の業務委託契約をしてその鑑定評価業務を各会員に割り当てている外、平成10年度の相続税路線価の標準地評価の鑑定及び平成12年度の固定資産税の課税標準を定めるための地価調査のための鑑定についても、茨城県内の税務署は、ほとんど被告の会員に委託をしているのであるから、以上の状況の下では、茨城県内に事務所を持つ不動産鑑定業者が被告に入会しないで不動産鑑定業務を行うことは実際には困難であるといわざるを得ない。」(判タ1116号279頁)

 と認定している。上記認定に係る不動産鑑定評価業界における実態は、埼玉県における実態と異なるところがない。

 (10) 被上告人への加入は実質的には強制加入であること

 埼玉県の不動産鑑定評価業務に関しても、上記第2 2(1)ア及びイ等の事情を踏まえ、さいたま地方裁判所が、上告人らが被上告人との間の請求差止請求仮処分申立事件(平成15年(ヨ)第180号)において、

 「結果的に鑑定評価員における債務者(被上告人:引用者注。以下同じ)会員の占める割合が相当高くなっているとの現実に照らすと、債務者に入会していないことにより信用に差が生じ、相対的に仕事が受注しにくい状況にあり、そのような意味において、債務者に加入しなければ事業活動を行うことが困難となる状況にあるものと認めることができる。」(同決定書47頁)

差止請求事件(平成14年(ワ)第576号)損害賠償請求事件(平成14年(ワ)356号)において

 「結果的に鑑定評価員における被告(被上告人:引用者注。以下同じ)会員の占める割合が相当高くなっているとの現実に照らすと、被告に入会していないことにより信用に差が生じ、相対的に仕事が受注しにくい状況にあり、そのような意味において、被告に加入しなければ事業活動を行うことが困難となる状況にあるものと認めることができる。」(同判決書45頁)

 と認定しているとおりの実態を有している。

 このように、被上告人の会員として被上告人に加入しなければ、埼玉県における不動産鑑定士として不動産鑑定評価業務に携り、それを稼業とすることはできず、被上告人への加入は、形式的には任意加入ではないものの、不動産鑑定士として業務を遂行する上では不可欠であり、強制加入としての実質を有する。

 5 上記の観点に立って本件各入会拒否理由を検討すると、まず第一に、被上告人が被上告人の健全な運営を害する虞があるとする上告人山口の言動は、主に、他地域における被上告人と同様の事業者団体が行っている不動産鑑定業務の独占行為に対する疑いに基づくものであり、被上告人が信条として保持する不動産鑑定業務における自由競争原理の観点からこれを批判していると認められる意思表明であり、これらは上告人山口の思想、信条に関係のある事実であることは明らかであるから、これらの言動を理由に入会拒否はできないものと解せられる。

 すなわち、人の思想・信条は身体と同様、本来自由であるべきものであり、その自由は憲法19条の保障するところであるから、本件のように、一定の事業活動について事実上独占状態にあり、その状態は、法的服従関係に準ずるような場合、優越した地位にある一方が他方に対しその意に反してみだりにこれを侵してはならないことは明白であり、人が信条において差別されないことは憲法14条の定めるところであるが、本件のように専門職業者の事業者団体においては、特定の経済思想、信条を有する者を会員にしたとしても、その思想・信条のゆえに事業の遂行に支障をきたすとは考えられないから、こうした思想・信条のゆえに不利益を課すことは許されない。

 6 また、上告人らによる一連の訴訟提起や選挙公報等での言論活動は、不動産鑑定評価業界において、市町村等との間で被上告人が業務委託契約を締結したり、あるいは国税庁と社団法人日本不動産鑑定協会との間で業務委託契約を締結したりする等、自由競争が排除又は妨害され、ひいては公的機関を始めとする顧客が損害を蒙っている現状を改善するため、上告人らが自己の経済的思想を外部に表現したものであり、その経済的思想は、顧客が不動産鑑定士を自由に選別し、また、価格の面においても利益を受けることができるという自由競争に基づくものであって、規制緩和が叫ばれる昨今の経済の流れにまさしく合致する正当なものである。このように、自由主義を掲げる経済的思想は、埼玉県内の不動産鑑定業界のみならず日本全国における不動産鑑定業界、引いては、不動産鑑定以外の資格に基づく事業に繋がるものであるし、さらにいえば、資格に基づかない事業一般の制度改革という政治思想に通ずるものである。このように、上告人らの表現行為は、上告人らの人格発展のみならず(自己実現)、民主制の過程を基礎付けそれを維持するためのものであり(自己統治)、それを行ったことが被上告人の健全な運営を乱すなどとして入会を拒否することは、憲法21条が保障する上告人らの表現の自由を侵害する行為として到底許されるものではない。さらに、上告人らのこのような思想は、既存の規制によって恩恵を被る不動産鑑定士が多く存在するであろう現在における不動産鑑定評価業界においては、少数派に過ぎないと思われる。本件各入会拒否は、少数派に属する上告人らの思想を弾圧し、蔑ろにするという意味においても、極めて重大な表現の自由の侵害行為にあたるのである。

 また、上告人らは、訴訟を通じてその思想を表現しているのであって、訴訟を起こしたが故に、被上告人の健全な運営を乱すとして入会を拒否することは、憲法32条が保障する上告人らの裁判を受ける権利の侵害そのものである

 7 また、本件各入会拒否は、憲法22条の定める職業選択の自由ないし同条の保障内容に含まれるものと解せられる、営業の自由という点からも、憲法上許されないものである。すなわち、前述したように、埼玉県内の不動産鑑定士による被上告人への加入は、形式的には任意加入であるものの、不動産鑑定士としての業務を遂行する上で加入は不可欠であり、強制加入としての実質を有するものである。そうだとすれば、被上告人への入会を原則として認めることこそが、上告人らが不動産鑑定士としての業務を遂行し、その営業の自由が機能するために、最低限必要とされる(必要性)。

 他方で、被上告人への加入以前に上告人らは不動産鑑定士としての適性・知識等が国家試験によって十分に審査されているのであるから、原則として入会を認めたとしても、不動産鑑定士の業務に関連して被上告人の信用を毀損する危険性は極めて小さいものと考えられる(許容性)。

8 したがって、社団法人日本不動産鑑定協会及びその地域会は、不動産鑑定士の入会を原則として認められなければならず、当該不動産鑑定士の営業の自由を侵害することになる事前の入会拒否は、極めて消極的・例外的でなければならない。

 例外的に事前の入会拒否が認められるのは、不動産鑑定士や鑑定業者の登録欠格基準である「相当な注意を怠り、又は故意に不等な鑑定を行った者」など、当該会員の不動産鑑定士としての業務に関連して、過去に不祥事を惹起し、又は将来そのおそれの大きい者の入会を拒否するとしても、当該会員が不動産鑑定士としての業務を行うことによって、顧客が損害を蒙り、引いては当会の信用が失墜するおそれも大きいと認められるなど、入会を拒否するための必要性及び合理性が認められなければならない。

 これに対し、当会の綱紀を保持するという目的を達成するために事前に入会を拒否する等、不動産鑑定士の業務に関わりのない事由によって入会を拒否する場合、入会を求めた不動産鑑定士の営業の自由を侵害することのないよう、より一層の慎重さ、消極性が求められる。すなわち、このような綱紀保持目的のために当該入会拒否が認められるためには、業務に関連した登録欠格基準に照らして、入会を拒否する必要性及び合理性を充たすことに加え、当会による事後的な諸対応等、よりゆるやかな対応をもってその綱紀保持の目的を十分に達成することができない、という事情を要するものである(薬局事件に関する最判昭和50年4月30日 判時777号8頁参照)。けだし、綱紀保持の目的は、不動産鑑定士としての業務との関連性に乏しく、これによって顧客が損害を蒙り、又は当会の信用が失墜することはない反面、当該不動産鑑定士の営業の自由を侵害するおそれが極めて高いからである。万一、当該会員の入会により、当会の信用を毀損したり綱紀を乱したりすることによって、その運営や所属する他の不動産鑑定士の業務遂行に不利益を及ぼすようなおそれがあるのであれば、当該会員の入会後に、事後的に当該会員に対し、適切な処分・措置を講じることによって予防又は回復すれば足りるからである。

判決文「職業の許可制は、法定の条件をみたし、許可を与えられた者のみにその職業の遂行を許し、それ以外の者に対してはこれを禁止するものであつて、右に述べたように職業の自由に対する公権力による制限の一態様である。このような許可制が設けられる理由は多種多様で、それが憲法上是認されるかどうかも一律の基準をもつて論じがたいことはさきに述べたとおりであるが、一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要するもの、というべきである。そして、この要件は、許可制そのものについてのみならず、その内容についても要求されるのであつて、許可制の採用自体が是認される場合であつても、個々の許可条件については、更に個別的に右の要件に照らしてその適否を判断しなければならないのである。」という最高裁判所の判決に反している。

また本件判決は

一、 税理士会が前記のとおり強制加入の団体であり

二、 会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている

三、 右(多数決)の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。

とする牛島税理士訴訟最高裁判決 平成四年(オ)第1796号にも反する。

 本件事件の場合の入会拒否の理由は、ノースウェスト判決とは違って、その理由が自由競争を擁護したという憲法上の思想・信条の自由と関わっており、強制加入団体である税理士会同様に思想・信条の自由が関わっている。ノースウェスト判決の場合には会の手続き規定に違反したかどうかの理由は独占禁止法では考慮に値しないというものであったが、本件事件の場合には自由競争の主張が自由競争を促進する。

税理士会の場合には入会強制が先にあるが、本件の場合には入会強制は最後の結論であり、その結論を出すまでにドイツの独占禁止法におけるように独占禁止法の理論が必要であり、ノースウェスト判決やトイザらス事件におけるようにアメリカで確立された共同ボイコットが当然違法、日本で言えば取引の実質的制限に該当する場合を特定する必要があった。この部分に関しては第一審、第二審で十分であろう。

 従って信条に関する入会拒否の理由付けの問題は上記の二つの最高裁判所における判決違反が明白にあり、最高裁判所で判決すべき事件であるということになる。

 理由の部分に憲法の条文を適用することは間接的か、直接的適用か。

 法令の解釈における憲法の解釈であるので、間接適用となる。理由の原理における理由に憲法違反があってはならないということである。そのことは結局は原則違法というアメリカの独占禁止法の歴史と合致する。理由の原理から原則違法の原理への転換が本件最高裁判所の判決によって達成されるべきである。

 思想・信条の理由で「加入しなければ事業活動が困難となるような事業者団体」が入会を拒否することは、出来ないし、本件事件においては破壊活動を主張するような信条ではなく、特に自由競争を主張するような信条であるのであるから、特に厳格に審理すべきであって、これは直接適用ではなく、法の解釈運用における間接適用ということになる。

 税理士会事件と論理の順序が逆になっている点が最も重要である。

 税理士会も事業者団体であると公正取引委員会はみなしている。

 この団体が強制加入団体であるのは、判例によれば「税理士会は、以上のように、会社とはその法的性格を異にする法人であり、その目的の範囲についても、これを会社のように広範なものと解するならば、法の要請する公的な目的の達成を阻害して法の趣旨を没却する結果となることが明らかである。」としているが、公的の意味は公共機関からの発注が多いという本件事件の場合とは異なり、公共機関と関わっているという意味であろう。しかしそれのみでは強制加入が認められているわけはないのであって、独占していること、すなわち市場支配力を有していること、但し入会を強制できるかが問題となっている本件事件においては、脱退の問題は論ずる必要がないのであるが、たとえば脱退して他の税理士会を作ることを法が想定しておらず、実際に現実に全公共団体と交渉してそのようなことが不可能な状態においては団体の内部において思想・信条の違いについて議論すべきであるとしていることによると考えられる。 

 不動産鑑定業において公的機関が依頼するものが7割以上に及んでいる現状からすれば、その市場支配力と、必須施設である取引事例の管理に対するアクセスが必要であるという観点からも、加入しなければ事業活動が困難になるということが出来、これはアメリカにおける当然違法に該当する共同ボイコットの構成要件にも合致しているのである。本件では共同ボイコットの違法性が認められれば、加入の強制は出来ることになる。

 税理士会事件においてはすでに独占禁止法によるのか他の理由によって、強制加入となっていたので、独占禁止法を論ずる必要はなかったのであるが、本件では税理士会事件では論ずる必要がなかった独占禁止法を論じた後で、憲法判断を行う必要が生じたのである。従って牛島税理士訴訟最高裁判決(最高裁判決 平成四年(オ)第1796号)は判例として引用して、本件判決の違憲性を論ずることは上告理由となる。強制が後か先かの問題であるが、瞬時に強制できたとして憲法を論ずる必要があると考えられる。従って牛島税理士訴訟最高裁判決最高裁判決 平成四年(オ)第1796号に照らしても、思想・信条の自由を侵しており、本件事件は違憲であるといいうる。

 理由の原理について、私的な好き嫌いでもこれまでの公正取引委員会の審決は入会拒否理由として認めてきた。

 さすがに顔が嫌いであるという理由はなかったがほぼ顔がきらいというのと同じ理由によっていた。本件事件も同様である。しかしそれでも公正取引委員会の審決では入会拒否を認めていた。裁判を起こされても無効確認の訴訟によれば確認訴訟であったので負けるおそれがあったからである。これは行政の最終決定ではあるが、最高裁判所の判断によっては覆ることはありうる。しかし本件事件の審理中においては公正取引委員会の見解を聞く必要はあったが、それはこれまでの取り扱いである好き嫌いでも認めるというものであった。

  本件事件においては思想・表現の自由は事業者団体の入会の審査において問題となっている。理由の原理においては、もし被上告人(債務者)がそれを問題としていくならば、次の点を追加する。当然違法であるという原則は重要であるが、理由の原理によった時であっても、それが憲法違反のように非常に社会的な違法性の強い場合には、競争に対する影響が強いので、許されない。

9 本件では、上告人山口は、平成2年2月、不動産の鑑定評価に関する法律(平成11年法律160号による改正前のもの。)15条に基づき、不動産鑑定士名簿に登録を受け、同年5月、自ら代表者として有限会社日本経済研究所(組織変更前の上告人会社)を設立し、同社は、鑑定法22条1項に基づき、不動産鑑定業者登録簿に登録を受けた。そして、上告人会社は、平成3年6月から同11年9月までの間、東京都内に所在し、東京都の不動産鑑定業者登録簿に登録を受け、社団法人東京都不動産鑑定士協会(以下、「都士協会」という。)の会員となっていた。

 このように、上告人らは、平成3年6月から同11年9月までの間、東京都内において不動産鑑定士として稼動していたのであり、その間、不動産鑑定士業務に関連して、相当な注意を怠ったり、又は故意に不等な鑑定を行ったりするなど、不動産鑑定士や鑑定業者の登録欠格基準に該当するような業務を行ったことは一切ない。

 しかも、上告人らは、第1入会拒否の直後である平成12年4月から同13年1月までの間、都士協会は、上告人らが会員となることを認め、その会員として不動産鑑定業務を行っていたのである。まさに、被上告人の入会拒否にその必要性及び合理性がないことを表している。

 そして、被上告人は、上告人山口が、社団法人日本不動産鑑定協会や都士協会に対し、具体的根拠もないのに、談合している等として訴訟を提起し、不要に同協会らの業務に支障を生じさせ、その信用を貶めたこと、及び不適切ともとられかねない文章を選挙公報やホームページに公然と掲載したこと等をもって、上告人らの入会により、被上告人に対する社会一般の信頼・信用が低下し、被上告人や会員の名誉が害され、被上告人内部に混乱をきたし、被上告人の円滑な業務の執行に支障をきたすおそれが高いと判断し、入会を拒否したとするが、これらはいずれも、被上告人以外の社団法人日本不動産鑑定協会の地域会などの事業者団体に関わる言動であるとともに、当該事業者団体において綱紀上の措置の対象とされていなかったものであり、この点でも、被上告人の入会拒否にその必要性及び合理性がなかったことは明白である。

 10 なお、上告人山口は、平成11年6月4日付で、国土庁、国土庁土地鑑定委員会、社団法人日本不動産鑑定協会、都士協会、茨城県士協会及び公正取引委員会に対し、文書を配布しているが、その文書において、

「私儀、山口節生は、これまで平成11年度の固定資産税の標準地評価などについて公正取引委員会に相談したり申告しましたが、正しかった部分もあり、正しくなかった部分もあったと考えます。正しくなかった部分についてはお詫びいたします。

(中略)

以上の事に関して今までやってきたような裁判所や、公正取引委員会に関わるような行動は猛烈に反省しております。これまでの裁判や、公正取引委員会に関わる事によって公正取引委員会や、裁判所や、各業者団体に迷惑をかけたことについては寛大なこころでご容赦願いたい。今後は同じ独立した不動産鑑定業の業者同士として出来るだけ配分以外でも温和にことが進み、配分に関しては対立がないように業者の内部で努力に努力を重ね、今後は外部に対して裁判をしたり、公正取引委員会と関係するような常識のない行動を慎み、迷惑をかけないように努力いたします。」

 と自らの非を認め、今後は、温和に行動することを誓っているのである。

 このような重大な決意をした上告人らに対しては、被上告人への入会を認めた上で、万一、被上告人の健全な運営を乱すようなことがあれば、事後的にその時点において、協議、指導又は勧告等、適切な処置を講じれば足りるのである。

被上告人の入会拒否には、事後的に適切な対応をするなど、よりゆるやかな対応をもってその綱紀保持の目的を十分に達成することができたのである。

 以上により、被上告人による上告人らの本件各入会拒否には、事前の入会拒否を認める必要性及び合理性は認められず、かつ、事後的に適切な対応をするなど綱紀保持の目的を達成することができないなどの事情は存せず、上告人らの営業の自由を侵害する違憲・違法がある。のみならず、本件各入会拒否は、上告人らの表現の自由及び裁判を受ける権利を侵害する違憲・違法がある。

 11 被上告人がした本件入会拒否は、憲法19条及び14条、憲法22条並びに32条の規定ないしその保障内容に反し違憲であり、違憲な入会拒否を適法とした原判決には憲法違反がある。原判決は、破棄を免れない。

以上

以上のとおりであるが以下に補足する。

思想・信条・表現の自由

「税理士会が前記のとおり強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていないことからすると、その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、次のような考慮が必要である。

 税理士会は、法人として、法及び会則所定の方式による多数決原理により決定された団体の意思に基づいて活動し、その構成員である会員は、これに従い協力する義務を負い、その一つとして会則に従って税理士会の経済的基礎を成す会費を納入する義務を負う。しかし、法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。」

この論旨は

一、 税理士会が前記のとおり強制加入の団体であり

二、 会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている

三、 右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。

と要約することが出来る。

 一方本件においては逆から加入の強制を行うことが出来ると考えられる。

一、 人は、様々の思想・信条及び主義・主張を有する

二、 様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されているのではない任意団体である

三、 しかしサロンの様な団体であって、任意に脱退の自由も、入会の自由もあるような事業者団体ではない

四、 加入しなければ事業活動が出来ないような団体である

五、 従って、自由競争の思想によって、思想・信条によって入会拒否を認めれば事業活動が出来なくなる

六、 思想・信条の自由の違いによって事業活動が出来なくなることは信条が自由競争主義であれば、経済的自由が侵されるということであるのであるから、営業の自由を妨害することになる

七、 これを解釈するに、ある特定の思想・信条を持つものには事業活動を行わせないということであり、私的な任意加入の団体であっても、職業選択の自由の制限というほぼ公的な意味合い(憲法上の意味合い)を持っており、ある特定の思想・信条の自由を持つ者の入会を認めないということは、厳格な基準によるべきであり、単なる綱紀保持上のおそれがあるだけでは不十分である。

八、  逆に公正競争阻害性という観点から見れば、自由競争の思想の方が「独禁法の立法の趣旨・目的及びその改正の経過などに照らすと、同法2条6項にいう「公共の利益に反して」とは、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを指すが、現に行われた行為が形式的に右に該当する場合であっても、右法益と当該行為によって守られる利益とを比較衡量して、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的(同法1条参照)に実質的に反しないと認められる例外的な場合を右規定にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨と解すべきであり、これと同旨の原判断は、正当として是認することができる」という判例に合致した見解である。

九、  この判決は私人間の行為においても適用することが可能である。私訴においても公正競争阻害が関係している場合があり適用可能であると考えられる。単に不法行為のみを形成しているような他の事業者の広告を妨害したという事件の場合でもそれが公正競争阻害性を持っている場合には自由競争に悪影響を及ぼすので、不法行為の問題としてのみならず、この判例は適用することが出来る。ましてや本件事件においては「不当な取引制限」に該当する共同ボイコットであり、「例外的な場合を右規定にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨と解すべき」とする判例における例外には合致していないというべきである。

十、  独占禁止法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することも、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的(同法1条参照)に実質的に反しないと認められる例外的な場合が「公共の利益に反して」いないと考えられるが、カルテルに関する最高裁判所判決のこの部分は「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」競争促進的な行為であるかどうかにかかっているが、被上告人の行為は競争促進的ではないのであって、例外としては認められない。

十一、従って、任意加入団体であっても、差止によって加入を強制することが出来る。

十二、これが回りまわって税理士会が前記のとおり強制加入の団体であり会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある、という判例に違反することになる。

この理論は本件事件においては一般的にも現実の当事者にとっても現実に合致しており、正しい見解である。

但し、税理士会事件や、薬局事件とは違って本件は独占禁止法における私訴の事件であり、更に八,九,十の理論をどこに挿入するのかの問題がある。

本件事件では独占禁止法事件であるために、先に上告受理理由として判例違反を持ってきたが、税理士会事件や、薬局事件と最高裁判所判決をも考慮した上で加入を強制するという結論になり、その後に損害賠償請求の事件となるということが出来る。

 

そこで、問題を思想・表現の自由の制限が違憲かどうかについて検討する。

告発を行うことが、いけないのかの問題である。被上告人(債務者)こそ「監禁を暴露していること、公正取引委員会に行ったこと」を表現することを拒否しているのである。

 証拠を隠そうということである。

 上告人(債権者)はそれを暴露しようとした。

 

 

3、表現の自由においては内容の問題と、方法そのものの問題とがある。

   内容的には何ら問題はなく、それに対する好き嫌いの問題である。

4、方法そのもの

   ホームページは本件事件が処分であるとすれば、それ以降の問題であるので何らの問題はない。

 ホームページはそこに置いておくという意味であり、それを積極的に頒布しなければ問題はない。そこに置いているということを告知すれば頒布となりうる。

5、自由競争をしようという行為は、独占禁止法上問題はない。

   一方では、実際にそれを表現することも問題ではない。

6、情報公開請求することも問題ではない。配分が偏っていることを調べるために情報公開請求を行った。

7、しかし被上告人(債務者)においてはそれは問題であると考えられている。

日本においては強制加入の事業者団体について、強制である故に思想・信条の自由を制限することは許されないとの最高裁判所の判決がある。税理士会事件。

これは自由競争の理論によるのではないが、自由競争の理論にも使用することが出来る。ここが重要である。思想・表現の自由が存在しない社会ではない。

被上告人(債務者)の団体においては自由競争の理論を信じる者は少ない。しかし日本の制度的には自由競争を日本の憲法は前提としているのである。自由競争の維持促進は独占禁止法の目的である。この両者は政治的自由と、経済的自由という全く対立する自由の概念と考えられているが実は、人間の本質的自由に由来する者であるから、本質的には自由によって決められているのである。

従って自由競争を信じることは現在の明白な危険を内包していない。

自由競争は経済的自由である、しかし自由競争を信じることは政治的な自由である。

政治的自由も経済的自由もどちらも自由ではあるが、どちらかがどちらかを内包しているというものではない。また思想・表現の自由を使って、事業を行っている著作権は思想表現の自由が、経済的自由となっている。この場合には包括的契約のようなことをするのかどうかという問題が存在する。

経済的自由は自由競争における価格と供給の自由のことであるから、思想表現の自由とは違っているのであるが、入札において札を自由に入れる自由であるという点においては自分の価格を自由に表現する自由でもある。

広義の自由意志論は、未必の故意における自由意志の存在とか、故意における自由意志などあらゆる自由を含むのであるから、自由論は憲法から刑法、民法、商法にいたるまで含めることができる。

また狭義の自由のうちの思想・信条・表現の自由と、経済的自由とはこの広義の自由のうちに含まれると解釈してよい。経済的自由のうち入札を実施してもらい、そこに入札する自由、すなわち自由意志によって自由競争をする自由という概念は自由意志という概念を含んでおり、表現の自由と重なることになる。経済的自由は職業選択の自由や、営業の権利とかかわってきているという点で、生存権とより密接にかかわっている権利である。先に述べたように著作権は経済的自由との関連が強いにも関わらず、事業性を有している。

これらの自由権を制限する場合には、より制限的ではない方が憲法の趣旨、基本的人権論に合致する。従って国や、地方公共団体や、公的な機関や、公的に準ずる機関によって行われている、ある憲法議論の対象になっている法律行為がある目的のために行われている場合には、確かに薬事法の例の場合のように、LRAの原則が必要である。というのは様々な権利の制限によって、同じ合法的な目的が達成されうる場合にはより制限的ではない法律行為の方が、より権利制限的である法律行為よりも憲法の要請する基本的人権の理念に合致するからである。

但し、当然違法の原理と同様に、同じ合法的な目的が達成されうる場合にはそのように言えるのであって、当然違法論における合法的な目的に付随する制限の議論と同様に、法令違反の行為の目的を達成するための権利の制限の場合には当然に違法である。

まず思想表現の自由においては合法的な目的ではない目的とは、検閲などの制度と考えられ、一方では独占禁止法においては自由競争の思想がほぼ全部を占めており、不動産鑑定評価理論においては自由経済を原則としているが、不動産鑑定業界においては自由競争が少数派であるからという理由で、自由競争をしないように要請する行為は合法的ではない目的であるといいうる。合法的ではない目的に付随する本件競争制限行為は当然違法であるといいうる。ということはここでまた独占禁止法を持ち出すか、憲法論を持ち出すかという議論に到達することになる。

一般には同じ合法的な目的が達成されうる場合にはという概念は、公共団体の行為に限定されているゆえ、最初から議論の前提として合法的な目的を遂行するための競争制限という概念が内包されている。したがって間接適用という概念も、当然違法という付随的制限論も同じく合法的な目的を達成することを前提としている。公共団体の宿命であり、目的であるからである。

ところが民間の団体の場合には非合法的な目的を達成する場合に、権利の制限や、競争制限を行うことが多い。

従って本件事件における競争制限行為が合法的な目的のためであるのかどうかについて議論する必要がある。

好き嫌いのような概念や、あいさつをしてこなかったとか、中に入ったら自由競争を主張するであろうということを予防する目的とかは、前二者は社会通念であり、最後のものは違法な目的である。

ポズナーが議論しているのは、理由の概念はここに問題があるという。

純粋に合法的な目的とは、思想表現・信条の自由の場合には公共の安全であり、一方では自由競争を主張する独占禁止法の場合には競争促進の目的のみである。競争促進の目的には競争促進の主張の表現の自由が含まれている。この部分では競争促進の目的の表現の自由を含んでいる。自由に札を入れる自由は、札によって各事業者の価格と、供給量を表現する自由を含んでいるからである。

さて本件事件を憲法問題として解くのか、独占禁止法問題として当然違法の問題として解くのかの問題が存在する。

憲法問題としては私人間に憲法違反の効力が及ぶのかどうかの問題がある。

本件事件においては、価格の警備活動の一環として「価格を安くするな。」という行為が行われている。これは価格を安く表現するなという憲法問題としても、あるいは、独占禁止法上の価格維持活動としても考えられる。

独占禁止法は価格維持を目的とした行為、たとえば「させる行為」、そのものをも規制しているのであるから、ましてや価格を安く入れるなという行為は更に規制していることになる。事業者団体が不公正な行為をさせるだけで違反となるのに、「価格を安くいれるなよ。」と監禁して、命令する行為が日本では頻繁に行われている常識的行為であっても、許されるわけがないのである。当然にそれは違法であるということになる。

それでは憲法問題であるのか、独占禁止法の問題であるのかである。

憲法においては判例の積み重ねが著しいが、独占禁止法という経済の憲法と考えられている分野においては判例の積み重ねが少ない。

そこで憲法の原理を応用することはある意味では正しいことである。

しかし独占禁止法は個別の事業者の行為と、その共同行為である事業者団体と、事業者の集合を規制対象としている故に、個別適用が憲法において可能かという問題が残る。任意団体であるかどうかの問題である。

被上告人は任意団体であるという主張を行うが、最高裁判所の判決によればサロンの様な団体ではない。

事業者団体であっても、その団体が支配的な地位を持ち、必須の施設をもっている場合には、そして法人格を持っている場合には、サロンのような団体ではないばかりではなく、公的な性格を持っている。更にはその団体に加入しなければ事業活動が困難になるような団体である場合には、憲法上の要請もあって、生存権や、事業活動を自由を守るためにも、入会の強制でさえも可能になるような団体であるといいうる。

価格が自由な状態における事業者団体にあっては

「全国グラビア協同組合連合会(全国グラビア)

第31回通常総会を開催

 全国グラビア協同組合連合会は6月13日東京都新宿区の京王プラザホテルにおいて第31回通常総会を開催した。冒頭に川田会長はつぎのように挨拶した。 「グラビア印刷業界は今非常に厳しい状況におかれている。我々としては今こそ人に頼るのではなく、自分で自分の会社をどうやって守るか、組合として共通の課題と共通の解決策はなにかについて、真剣に取り組み一致協力して推進することが求められていると痛切に感じている。皆様のご協力をお願いしたい」。引続き議案の審議にはいり、平成12年度決算関係書類承認の件、平成13年度事業計画、収支予算並びに経費の賦課および徴収方法の件、平成13年度借入金残高の最高限度決定の件が上程され、いずれも原案通り承認可決された。その後、任期満了に伴う理事・監事の選出を行い川田善朗会長を再選、副会長には田中俊隆(新任)、飯田昭(再任)、東善男(新任)、小松豊吉(再任)の4氏が選任された。

(2001年9月5日更新)(C) Copyright The Japan Federation of Printing Industries < info@jfpi.or.jp >」

一般的な事業者団体のような状況ではなく、本件事件における被上告人の状況はそのようなものとはまったく違っており、被上告人自体が市場支配力を持っているし、また必須な取引事例も占有している。これを一般的な憲法の厳格な基準に合致しなければ、信条の自由の制限が許されないという基準によって論ずることができるか。

これはつとに被上告人自体が市場支配力を持っていて、かつまた、必須な取引事例を占有していることが公的な地位にあるといえるのか、あるいは、憲法を守るべき地位にあるのか、もし憲法が適用されるべきであるとした場合に独占禁止法の適用において理由の原理について審理することが、当然違法の原理を適用する場合よりもより競争制限的になるという理由から、当然違法の原理を採用すべきであるということになり、ポズナーがいうように、理由の原理を採用することが競争制限をどのようにでも可能にするということによって、理由の原理を排斥して、当然違法の原理を採用すべきであるという理屈付けが可能になるかどうかという問題である。

競争制限的であるということと、事業活動の制限ということとが同じになる場合がある。まず薬事法の違憲判決の場合には事業活動の制限であるということが出来る。LRAのrは競争制限の意味にとらえることが出来るし、薬局の開業という事業活動そのものの規制とも考えられる。競争制限ととらえる理由は、薬局の競争を制限する目的と、市場分割の結果を持っていると考えられるからである。

この場合にも事業活動の制限ととらえる見方を最高裁判所はとっている。このことは本件事件においても事業活動の制限としてとらえることができ、憲法問題としてとらえることができるということを最高裁判所の判例は示しているということになる。

日本では市場分割協定や、本件事件においては加入しなければ、事業活動が困難になるような団体についての加入強制は憲法の問題としてとらえることを最高裁判所は判決していることになる。

但し、日本では判例がこのような場合であっても、間接強制なのであるから、個々の事件には介入しないという方法を採用している。

しからば本件事件においては当然違法と見るのか、理由の原理とみるのかについての共同ボイコットの見方について、本件事件の最高裁判所判決において法令の適用において当然違法の判決であれば憲法違反を免れたような事件において、理由の原理によって判決することによって憲法違反となるような場合には法令の適用が違反であるという判決に最高裁判所の判決がなるべきである。

但し、これは強制加入団体の問題である税理士会の最高裁判所判決とは逆の論理構成をたどることになる。

税理士会事件においては、強制加入であるから、思想・信条が違う人が入ってくるのであるから、思想・信条の自由や政治的な自由や表現の自由は守られなくてはならないという論理である。

本件事件は強制加入であるべきであって、差止を行うということが最後の結論となる。

その理由が問題であり、ある意味では税理士会事件において最初の強制加入団体であることの理由付けを述べているような事件である。

ドイツにおいては法定され、アメリカにおいては当然違法とされている法律事象を日本においてはどのような法律構成をするかという問題である。

特に本件事件においては上告人の自由競争という信条の自由の問題に限局すれば、何らの一般性を持たない信条の自由の問題となる。

一般に信条の自由を侵したり、職業選択の自由を侵したり、生存権を侵したりする様な場合においては当然違法の取り扱いをするべきであるという論理を組み立てるとするならば一般的な憲法の問題となる。

自由競争の信条を脅かす場合にだけ、当然違法の原理を採用すべきであるという論理構成は、生存権を侵す場合を含まないことになる。

自由競争の信条を侵す場合は、つまりは結果として価格を高止まりをさせるから、悪いということになる。

これは競争法上の悪性を考慮していることになる。

本件事件が他の事件に大きな影響を及ぼさないためには、自由競争の信条を侵す場合のみは憲法上の違憲の疑いがあるという判決は当然であるが、日本の場合には当然違法の原理をどのようにして確立するのかという問題は残ることになる。つまりはアメリカのノースウェスト判決に見られるような一般的な定式化は本件事件で可能であるのかという問題が残ることになる。

確かにアメリカ最高裁判所のノースウェスト判決やトイザらス事件と同様に当然違法の定式化に本件事件はぴったりと当てはまる。この際に理由としての手続き違反は別個に扱い、独占禁止法では扱わないというノースウェスト判決の趣旨にのっとれば、本件事件における自由競争を主張したからという理由の部分は取り扱わないでよいということになる。

これは当然違法のノースウェスト判決において述べられ、ポズナーが理由は扱わないと述べているところの趣旨である。

ところがたとえ述べたとしても、それが憲法違反であると述べることは理由があるであろうか。

理由は普通は違憲であることは滅多にない。ほとんどの場合が顔が嫌いという程度の好ききらいである。自由競争の原理についても同様である。

ここではサロンのような団体であれば、第二のサロンを形成することも可能であるが、被上告人の場合には「被上告人に加入しなければ、事業活動が困難になるような団体である。」ここは第二事業者団体を作ることも不可能であることを示している。

先に述べたように税理士会のような団体のように加入が強制されうるとした場合に、理由をつぶして価格固定のためであるということを証明する必要があるのか問題がある。

これまでの主張のように赤坂弁護士の主張のとおりに、共同ボイコットについては原則違法であるとの(合法的目的に付随する場合や競争促進的である場合を除いて)主張を維持し、そうではない原審判決は法令適用の誤りであるとするのであるが、日本には原則違法の概念が存在しないとの少数意見もあるので反論する。

日本では「正当な理由なく」という文言に原則違法であるとの解釈が行われるという主張が慶応義塾大学の石川教授ほか多数説である。一方の少数説ではまだ判例が存在しないのであるから、それは確立されていないという。

多数説が勝っている理由は、すでにほとんどの独占禁止法の理論はアメリカの判例法をも受け継いでいるとの解釈から成り立っている点にある。

正当な理由の理由には、理屈は含まれず、競争を促進するような理由のことを述べているのであるから、理屈であるところの自由競争を主張したという信条の自由は含まれないということになる。

このように解釈すれば、憲法の下位規範である独占禁止法によって、その解釈によってこの本件事件は解けることになる。当然に憲法に自由競争の概念が入っていなければ、独占禁止法は違憲ということになるが、憲法に自由競争の概念が含まれている故に、独占禁止法は違憲ではないと解釈されている。

すると法令の解釈の誤りという理屈によって上告理由および上告受理申し立て理由となると考えられる。法が継受されてから半世紀以上が経過しており、その間に判決の集積がなかったのは差止請求が認められていなかったので、無効確認によっては当然に違法な理由によるのでなければ、無効とすることが不可能であったという理由による。

しかし差止によればそれが可能であったと考えられる。

しかし差止制度がなかったのであるから、その判例がないのは当然である。それは判例の歴史として当然である。

正当な理由なくの法令の解釈に誤りはなかったが、しかしそれによって差し止める法制度が存在しなかったということと混同してはならない。正当な理由なくを原則違法であると解釈してきたにもかかわらず、差止の法制度がなかったのであるから、その判例がなかったということになるのであって、正当な理由なくという法令文言は正しく解釈されてきたということになる。正当な理由なくという法律文言は違法ではあるとした判決は存在したが、無効確認という制度では無効とすることは意味がなかったということになるのである。

また不法行為法においては損害なければ差止なしの考え方がまかり通るのであるが、しかし独占禁止法は正当な理由がない場合には共同ボイコットを正当な理由なく違法であるとしているのであるから、先に共同ボイコットを正当な理由なく違法であると判決して、それから不安定になった法状態を考慮して民事訴訟法248条を適用する必要があると考えられるのである。

理由が屁理屈であるのかどうかの問題については、憲法を持ち出すまでもなくできるか。

思想・信条を理由とする拒否理由はよくない。

一方上告人山口節生個人に対しては、信条の自由により入会拒否することは可能であろうか。

個人業者として登録したのであるが、事業者としての活動であるのであるから、それはできないという主張もありうる。山口節生不動産鑑定士事務所が入会しているのであって、個人が入会しているのではない。

個人としては自由競争の思想信条を持っていることを批判することはできるが、事業者団体には事業者として入会しているのであるから、事業者に思想・信条があるわけがなく、営業方針があるのであって、営業方針は自由競争による安売りであったのであるから、その安売りを抑えようという行為は独占禁止法違反の公正競争阻害性が高い行為であるから、それと思想・信条の自由とは行動の根本原因である思想について規制するものであって、いわば「被上告人の頻繁に行っている検閲(価格警備活動の一部門)」に当たると考えられる。これについては安売り業者の三友という会社に対して清水文雄らや被上告人は非常に陰湿な方法で常に、あるいは、ほとんど常に検閲を行ってきている。安売りはだめであるというのである。

弁護士会は個人の入会であるが、不動産鑑定業は個人ではなく業者主義を採っているのであるから、業者は入れて、個人を入れないということはできるのであろうか。

これができないという仕組みになっているので、できないという被上告人の主張は採用することはできない。というのはサロンのような団体が個人の団体であるが、最高裁判所は被上告人はサロンのような団体ではなく事業者団体で、それも必須の施設と、独占的支配力と、公的な性格を持っている団体であるのであると述べて個人の集団としては見ていないからである。

確かに弁護士会も個人の催し物を開催して、ゴルフクラブを持っているし、マラソンランナーを雇っている会社もある。しかし会社がゴルフ部や茶道部を持っているからといって、その会社の事業者団体が事業に深刻な影響を及ぼすときに共産党に入党している幹部や社長がいるからといっても、その会社の入会を拒否することができるであろうか。

それは出来ない。事業者団体はその事業に関する部分のみを取り扱っているのであって、その他のサロンの部分はつけたしにしか過ぎない。

理由の原理はこのように絞っていけば、独占禁止法の部分のみに絞っていくことが出来る。競争制限か、競争促進かという議論である。

この場合に理由のうちで、信条に関わる部分のみを取り出して違憲であるということが出来るであろうか。確かに信条での入会拒否は、それも自由競争の信条での入会拒否は憲法違反であるが、そのような理由は許されないのみか、考慮に値しない。

考慮に値しないということはほぼ正当な理由なくというに等しいことになる。考慮に値しないということは当然に違法という論理と日本でも同様であるということになる。

思想信条を理由とする拒否理由は違憲であるという論理は、もっと厳格な基準によるべきであるという理論によっても違憲であるという結論になる。

表現の自由の確保に関する違憲の原則である厳格な基準によるべきであるという理論によっても、すべて自由競争を行おうとする上告人代表による、また上告人会社代表取締役の個人の自由競争の思想による訴訟やらの理由による事は許されないが、これまでの公正取引委員会の審決はそれを認めてきた。しかし公正取引委員会の審決は行政の判断であって判決ではなく、当時はまだ差止の制度が存在しなかった時代のものであって現在の状況とは違っている。現在はたとえそうであったとしても、差止の法的な制度が残っているといえるのである。従ってこれまでの行政の審決に倣った原判決は破棄を免れないといえる。

 

注:

「 Content-based な規制とcontent-neutral な規制 」

信条の自由の自由については、信じている内容が問題である。

「(1)  アメリカの判例理論  今日のアメリカにおける表現の自由に関する違憲審査基準論は、多彩な展開をとげているが、ごく大まかにいえば、規制の態様を二つに分け、それぞれに異なる審査基準を割り当てる、という考え方が基本になっているように思われる。」

LRAの基準のRは政府による個人の自由の規制の意味であり、何ら経済的自由とは関連がない。ところが個人の信条の自由を抑える事業者団体の制限的行為が、事業活動が困難となる場合には、そのような信条を理由として事業活動を妨害してはならない。

「それは、表現の内容に基づく(content-based) 規制と、表現の内容とは無関係な(content-neutral, もっと直訳して、「表現内容中立的な」といってもよい。) 、表現の時、場所、態様の規制とである。

 Content-based な規制とは、好ましくない(と立法府が考える)内容の表現が、公衆に伝わることを防止するために、当該表現の内容のゆえになされる規制のことである。例えば、

   わいせつな文書・図画などを販売した者を刑罰に処する

   時の内閣の政策を批判した国家公務員を懲戒処分に付する

   外国公館の周辺では、その国を批判するようなデモ行進を禁止する

   テレビ局に対して、番組の中でA党の主張を紹介した場合には、不公平のないようにB党の主張も紹介することを義務づける

   鉄道の駅の構内で、公衆に寄付を求めるビラの配布を禁止する

といった規制を内容とする法律があったとすれば、これらの規制は、content-based な規制に当たる。  これに対してcontent-neutral な規制としては、公道を一定程度、また一定時間以上占拠しようとする者や、公民館を使用しようとする者が、当局の許可を得なければならない結果、デモ行進をする自由や集会を開催する自由に制限を受けるような例が挙げられよう。

 Content-based な規制は原則として違憲であって、例外的に、

 1 その立法目的が極めて重大な(やむにやまれぬ)公共の利益(compelling interests)を達成しようとするものであり、

 2 かつ規制の手段がその目的達成のために必要最小限度であるとき

に限って、当該法律は合憲となる。

 このような、いわば本来の意味での厳格な基準がとられるのは、国家は、何が真理であるか、何が正しい意見であるかの判定者ではなく、思想の自由市場の判定に任せるべきだ、という考え方によるものである。

 これに対して、content-neutral な規制の場合には、多少(最近では、かなり)緩和した基準が用いられる。具体的にいえば、

 1 当該法律が重要な公共の利益(substantial governmental interests)を達成しようとするものであり、

 2 規制の手段がその目的を達成するようにできており、かつ、

 3 代替的なコミュニケーションの手段(alternative avenues of communication)を不合理に制限するものではない

ときに、合憲となる。

 しかし、content-based な規制か content-neutral な規制かがつねにはっきりと識別できるとは限らない。住宅地区等から近接した区域に成人映画館を開設することを禁止した市の条例は、このいずれに当たるのか。City of Renton v. Playtime theatres, Inc., 475 U.S. 41 (1986) は、同条例が、成人映画館の開設をすべて禁止しているわけではなく、その場所を規制しているにすぎないから、 content-neutral な規制であるという。

  7.3.2. 二分論の実際−−Low-value speech

 アメリカの判例においても、content-based な規制であれば当然に厳格な基準が適用されているわけではない。実は、厳格な基準に行き着くまでにはかなりの道のりがある。

 まず、アメリカの判例法には、伝統的に、表現の自由を保障した憲法第一修正(修正第一条)の保護を受けないとされてきた表現の諸類型がある。これらの類型の表現は、表現の自由の枠内で保護される表現ではないという考え方なのであるから、それを規制しても、表現の自由を侵害したかどうかは、そもそも問題にもならない(もちろん、憲法の他の条項に違反するかどうかは、別問題である)。伝統的には、犯罪の煽動、名誉毀損的表現、闘争的言辞(fighting words)、わいせつな表現、チャイルド・ポルノなどが、第一修正の保障の枠外にある表現類型であると考えられてきた。例えば、わいせつ文書を頒布・販売した者を処罰することは、まさに表現の内容(つまり、わいせつな表現であるという内容)によって表現行為を規制することになるはずであるが、厳格な基準の適用は問題にならないのである。これらの表現も、最近では、憲法上まったく保護されないのではなく、他の、いわばまじめな表現に比較して低くしか保護されないlow-value speechのだ、という考え方が出てきているが、そうだとしても、例えば政治的言論などと比較すると、はるかに低い保護しか与えられない(ただし、名誉毀損的表現あるいはプライバシー侵害的な表現については、かなり厚い保護がなされている)。これらの表現類型では、それぞれの分野に特有の基準論が展開されている。これまでに説明したように、この点は日本でも同じであるといえよう。

 次に、営利的言論(commercial speech. 典型的には商品・サービスの広告)は消費者保護の要請ゆえに、また、放送はメディア(周波数帯)の有限性のゆえに、content-based な規制を施しても、厳格な基準は適用されないと考えられている。

 かくして、いろいろ枝葉を切り落として残った表現(それは結局のところ、伝統的な媒体を通してなされる、政治的、宗教的、芸術的な表現が中心になろう)に厳格な基準が適用されることになるのである。

 さて、このように、厳格な基準が適用されるのは、実は案外に狭い範囲なのではあるが、いったん適用されるとなると、厳格な基準の名にふさわしい結果をもたらすようである.つまり、この基準を適用されれば、当該法律が合憲なものと判断される可能性はまずないといわれている。例えば、Police Department of the City of Chicago v. Mosley, 408 U.S. 92 (1972)は、表現内容による規制について、これまで述べてきた意味での厳格な基準が適用された最初期のものと考えられている。これは、小学校の校舎の周辺でピケッティングまたは示威運動をすることを禁止した市の条例の合憲性が争われた事例である。問題は、同条例が、労働争議にかかわる平和的なピケッティングを、禁止の対象から除外していたことであった。最高裁は、許されるピケッティングとそうでないピケッティングとを、その主題によって区別する(つまり労働争議にかかわる主張をなすピケッティングか、それ以外の主張をなすピケッティングか)ことは違憲であるとした。政府が、好ましい言論あるいは表現と、好ましくない言論あるいは表現とを、差別的に扱うことは許されないからである。

 もっとも、conten-based な規制に当たるとしても、実際に厳格な基準を適用するに当たっては、なお議論しなければならない問題が残っている。

 第一に、compelling interest とは何か、という問題である。生命や健康はそれに当たるであろうが、表現の自由を制限しないと生命や健康が損なわれるという場合が本当にあるのかは、疑問である。ある判例は、法人の豊富な資金力が政治的言論のプロセスをねじ曲げないようにすることは、compelling interest に当たると述べている(Austin v. Michigan Chamber of Commerce, 494 U.S. 652 (1990))。

 次に、規制の手段が目的達成のために必要最小限度のものである必要がある。いいかえれば、同程度の規制の目的・効果が達成できるときには、表現の自由を制限する程度の最も少ない規制手段を選択しなければならないのである。

 もちろん、同程度の目的・効果を達成するための最小限度の手段が何かを決定することは、多くの場合非常に困難である。しかし、次のようにいうことはできよう。いまXという立法目的を達成するために、m1という規制手段をとっている法律の合憲性が争われているとしよう。かりに、m1と同じだけの効果を上げることができるが、表現の自由を制限する程度のより少ないm2という規制の手段も可能であれば、m1は違憲と判定される。なぜなら、m1は立法目的を達成するための必要最小限度の規制手段ではないからである。すなわち、ある規制手段は、同じ立法目的を達成することができ、しかも、表現の自由を制限する程度がより少ない規制手段(「より制限的でない他の選び得る手段」、less restrictive alternative; less drastic means; etc.)が考えられる場合には違憲となる。日本では(そして、日本でだけ)これを、「LRAの基準」と呼んでいる。

  7.3.3. 規制類型二分論と日本の判例

 以上に述べたように、アメリカの判例は、表現の自由に関する違憲審査基準として、少なくともある種の類型の規制については、「厳格な基準」を採用していると考えられる。これに対して、日本の最高裁判例は、厳格な基準を採用したことがない。

 確かに日本の最高裁判例にも、表現の自由の規制を二つの類型に分けるという発想が見られないわけではない。それを示すのが百選13事件(猿払--さるふつ--事件)である(戸別訪問禁止の合憲性に関する163事件もほぼ同様)。ここでは、表現の自由に対する規制が、「意見表明そのものの規制」と、「その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止する……間接的、付随的な制約」とに二分されている。

 しかし、この二分法は、アメリカのそれとは異なる。

 第一に、「意見表明そのもの」とは何を意味するのか明らかでないために、「意見表明そのものの規制」という言葉の意味がはっきりしないし、その後の最高裁判例を見ても、これに当たるから当該規制は違憲である、としたものはもちろん存在しない。

 第二に、百選6事件で扱われていたのは、公務員が政治的意見を表明する自由の限界という問題であり、そこで規制されていたのは、特定の内容をもった言論であった。その意味でこの事件は、アメリカ的な理解からすれば、content-based な規制に当たる事例であったと思われる。しかし、最高裁は、問題となっている規制を、「その行動のもたらす弊害の防止をねらいとして禁止する……間接的、付随的な制約」に分類したのである。

 最高裁の二分法は、後者の類型の規制の場合には、違憲審査基準が極めて緩やかなものになる、という結論を導くことがその最大の目的なのである。したがって、再々述べるように、アメリカの判例理論によっては、日本の判例の現状を説明できないことに注意しなければならない。」

いわゆる人権問題について。

「図書館員が制約された状況のなかで判断するのではなく、市民の広範な意見を聞く。 3) とりわけ人権侵害にかかわる問題については、偏見と予断にとらわれないよう、問題の当事者の意見を聞く。 3 利用制限の方法について。知る自由を含む表現の自由は、基本的人権のなかで優越的位をもつものであり、やむをえず制限する場合でも、「より制限的でない方法」(less restrictive alternativeの基準)によらなければならない。裁判所が人権を侵害するとして著者らに公表の差し止めを命ずる判断を行った資料についても、図書館は被害を予防する措置として、当該司法判断の内容を告知する文書を添付するなど、表現の自由と知る自由を制限する度合いが少ない方法を工夫することが求められる。 4 人権の侵害は、態様や程度が様々であり、被害の予防として図書館が提供を制限することがあっても、時間の経...

...して取り入れた。(1)各図書館に資料検討のための委員会を設けること、(2)全職員の意見を反映すること、(3)当事者および市民の意見を反映すること、(4)職員に図書館の自由に関する情報の提供と研修・研究の機会を設けること、である。 ?Bの利用制限の方法については、いろいろ論議した末、具体的に書けば、かえって前後を無視して閲覧制限の口実を与えるという結論に達し、単に「より制限的でない方法」(less restrictive alternative)によらなければならないというにとどめた。 最後に、たとえ提供制限をすることがあっても、時間の経過と状況に応じて制限の解除を再検討すべきであることを書いた。

●著作権問題と資料提供の自由に関わる問題。 図書館の大量貸出しに対する著作者や出版社からの批判、著作権侵害の判決が確定した資料の図書館での対応、著作権が障害者にとって障壁になっている現状など、著作権が強化される方向での動」

「従って、「表現の自由」(及びそれと表裏一体の関係をなす「知る権利」)を規制しようとする立法に対しては、法文に対する「明確性の原理」(漠然性のゆえに違憲の法理、過度に広汎性のゆえに違憲の法理)、表現の事前抑制(検閲等)の禁止、「明白かつ現在の危険」基準の適用、「LRAの基準」(less restrictive alternative、制限的でない他の手段)の適用等の他、訴訟手続き上も規制立法の合憲性推定の排除、挙証責任の転換、当事者適格の要件の緩和などが認められている。

しかし、以上のように手厚く保障されている「表現の自由」ではあるが、それはあくまで「人権」という名の「権利」の一種である以上、当然に限界が存在する。憲法第12条後段は「又、国民は、これ(この憲法が国民に保障する自由及び権利を濫用してはならない)」

東京高等裁判所平成17年(ネオ)第183号・平成17年(ネ受)第192号

差止損害賠償請求事件

上告人兼上告受理申立人  株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

同        山 口  節 生

相手方          社団法人埼玉県不動産鑑定士協会

             同代表理事  岩 ア  彰

上告理由書兼上告受理申立理由書(3)

平成17年5月9日

最 高 裁 判 所 御中

上記上告人兼上告受理申立人

株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

山 口  節 生

上告理由(追加)

 明白な危険かつ現在の危険によっていない思想・表現の自由の制限は、憲法二一条違反のそしりを免れえず、破棄は免れない。 

 憲法第21条によって保障されるべき、表現などの自由(以下、ここでは一括して表現の自由とする)を支える価値は、自己実現の価値(個人が言論活動を通じて自己の人格を発展させる)および自己統治の価値である(言論活動によって国民が政治的意思決定に関与する)。

また、表現の自由について、思想の自由市場論が主張される。これは、各人が自己の意見を自由に表明し、競争することによって、真理に到達することができる、という議論であり、アメリカ合衆国連邦最高裁判所のHolmes裁判官によるものである。

 学説においては「明白かつ現在の危険」の基準が説かれている。

その内容は、(a)或る表現行為が、近い将来、或る実質的害悪を引き起こす蓋然性が明白であること、

(b)その実質的な害悪が極めて重大であり、その重大な害悪の発生が時間的に切迫していること、

(c)当該規制手段がその害悪を避けるのに必要不可欠であること。

これらが論証されて初めてその表現行為を規制できる、というものである。

LRA(less restrictive alternatives)の基準

立法目的は表現内容に直接関わりのない正当で十分に必要なものであるが、規制手段が広汎であるために問題である法令について、立法目的を達成するために規制の程度のより少ない手段が存在するかどうかを具体的・実質的に審査する、という基準。もし、そのような手段があると判断されると、その規制立法は違憲である。

 思想・表現の自由について、その信条が現在の危険があるのか、将来の危険のおそれを予測しているのみではないか。それも自由競争を主張してすぐに会長選挙に出馬するのを恐れたのではないか、そのようなおそれは現在の危険ではなく、憲法違反である。信条の自由を侵すものである。そのようなおそれで実際に独占禁止法違反による損害が発生している。

 判例 H07.03.07 第三小法廷・判決 平成1(オ)762 損害賠償(第49巻3号687頁)において示されたように、「(2) 本件集会が開催された場合、中核派と対立する団体がこれに介入するなどして、本件会館の内外に混乱が生ずることも多分に考えられる状況であった。(3) このような状況の下において、泉佐野市総務部長が、本件集会が開催されたならば、少なからぬ混乱が生じ、その結果、一般市民の生命、身体、財産に対する安全を侵害するおそれがある、すなわち公共の安全に対する明白かつ現在の危険があると判断し、本件条例七条一号の「公の秩序をみだすおそれがある場合」に当たるとしたことに責めるべき点はない。」の趣旨は、現在の危険の必要性が信条・思想・表現の自由の制限に対しては求められると考えられ、将来の危険ではこのような重大な違反を犯す理由にはなりえない。現在の危険が存在するわけでもなく、上告人が入会したからといっても、会長選挙などに出て、「自由競争による価格競争を主張するであろう。」という円滑な業務の執行に支障を来すおそれのみによって、このような事件を引き起こしたのであるから、それを是認した原判決は憲法二一条違反のそしりを免れえず、破棄は免れない。

最高裁判所第三小法廷平成8年3月19日民集50巻3号615頁

法人が強制加入の団体である場合には、会員の思想・信条の自由との関係で特別の考慮が必要であり、会員が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断に基づいて決定すべき事柄について、多数決原理により決定された団体の意思に基づいて活動すべき協力義務を負わすことには限界があるとする最高裁判所判例においても明確に表明されている(最高裁判所第三小法廷平成8年3月19日民集50巻3号615頁)。これは本件と同趣旨である。

南九州税理士会事件 熊本地方裁判所昭和61年2月13日判決

最高裁判所民事判例集50巻3号869頁 福岡高等裁判所平成4年4月24日判決

最高裁判所民事判例集50巻3号955頁 最高裁判所平成8年3月19日第3小法廷判決 最高裁判所民事判例集50巻3号615頁

[税理士会が前記のとおり強制加入の団体であり、その会員である税理士に実質的には脱退の自由が保障されていないことからすると、その目的の範囲を判断するに当たっては、会員の思想・信条の自由との関係で、次のような考慮が必要である。

 税理士会は、法人として、法及び会則所定の方式による多数決原理により決定された団体の意思に基づいて活動し、その構成員である会員は、これに従い協力する義務を負い、その一つとして会則に従って税理士会の経済的基礎を成す会費を納入する義務を負う。しかし、法が税理士会を強制加入の法人としている以上、その構成員である会員には、様々の思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することが当然に予定されている。したがって、税理士会が右の方式により決定した意思に基づいてする活動にも、そのために会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。]

平成17年(  )第183号・平成17年(  )第192号

差止損害賠償請求事件

上告人兼上告受理申立人  株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

同        山 口  節 生

相手方          社団法人埼玉県不動産鑑定士協会

             同代表理事  岩 ア  彰

上告理由書兼上告受理申立理由書(4)

平成17年5月9日

最 高 裁 判 所 御中

上記上告人兼上告受理申立人

株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

山 口  節 生

上告理由書兼上告受理申立理由書(目次)

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

第1 原判決には、独占禁止法8条1項3号、5号および19条の解釈の誤りがあり、それは判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反であるから原判決は破棄を免れない。よって原判決は、最高裁判所の判例等に相反し、その他法令の解釈に関する重大な事項を含む判断がなされているものとして、上告受理決定がなされるべきものである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・4

第2 原判決の判断は、最高裁判所の判例と抵触する誤りがあり、それは判決に影響を及ぼすことが明らかな判例違反であるから原判決は破棄を免れない。よって原判決は、最高裁判所の判例等に相反し、その他法令の解釈に関する重大な事項を含む判断がなされているものとして、上告受理決定がなされるべきものである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6

第3 原判決には、憲法の解釈の誤りがあり、原判決は破棄されるべきものである。よって上告に理由がある。 ・・・・・・・・・・・・・10

はじめに

1 本件の請求

 (1) 上告人山口は、不動産鑑定士であり、上告人会社は、不動産鑑定評価に関する法律(以下、「鑑定法」という。)に基づく不動産鑑定業者であるところ、上告人山口は、平成11年9月、被上告人に対し入会を申し込んだところ、被上告人から、平成12年3月13日、これを拒否され(以下、「第1入会拒否」という。)、上告人会社は、平成13年1月19日、被上告人に入会を申し込んだところ、被上告人において、その理事会で、同月24日、同申込みを受理しないことを決議し、現在に至るまで上告人会社の入会申込みに対して回答をしていない(以下、「第2入会拒否」という。)

 (2) 本件は、上告人会社が、埼玉県内の鑑定業務、受託を独占している被上告人において、固定資産税の標準宅地の鑑定業務、公共事業用地等についての不動産鑑定業務及び路線価の鑑定業務について鑑定評価員等の推薦又は働きかけ等をし、被上告人会員と競争関係にある上告人会社を市場から排除し、かつ、被上告人の入会金を不当に値上げして被上告人への入会を阻害するなどしたことに基づき、これらの推薦又は働きかけ、入会金の値上げ等の行為につき、不公正な取引方法(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号。以下、「一般指定」という。)2項又は5項に該当し、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下、「独占禁止法」という。)8条1項1号、3号及び5号並びに19条に違反すること、また、被上告人において、資料閲覧及び業務補助者証明書の交付に関して、被上告人の会員と非会員を差別的に取り扱った行為につき、同じく一般指定2項、3項又は5項に該当し、独占禁止法の8条1項5号及び19条に違反すること、第2入会拒否が上告人会社を不当に排斥し、もって不動産鑑定業者として事業を行うことを困難にするものであるから、第2入会拒否につき、一般指定5項に該当し、独占禁止法の上記規定に違反すること、並びに、被上告人が、埼玉県内の市町村と業務委託契約を締結することによって、上告人らを埼玉県内の市町村との鑑定評価業務受託取引から排除していること、上記の行為は、一般指定1項2号又は2項に該当することを理由に、被上告人に対し、独占禁止法24条に基づき、第2入会拒否、鑑定評価員等の推薦又は働きかけ、入会金の徴収及び資料の閲覧等に係る差別的取扱い等の差止めを求めるとともに、上告人らが、第1入会拒否及び第2入会拒否(以下、「本件各入会拒否」という。)について、上記のとおり、一般指定5項に該当し、独占禁止法8条1項5号及び19条に反するものであり、これらの入会拒否により、上告人らは営業権を侵害され損害を蒙ったことに基づき、被上告人に対し、不法行為に基づき、上告人らが蒙った損害金(弁護士費用を含む)及びその遅延損害金の各支払を求めているところ、本理由書は、この内、本件各入会拒否の違法を理由とする上告人らの各請求に関する原審判断の誤りを述べる。

第1 原判決には、独占禁止法8条1項3号、5号および19条の解釈の誤りがあり、それは判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反であるから原判決は破棄を免れない。よって原判決は、最高裁判所の判例等に相反し、その他法令の解釈に関する重大な事項を含む判断がなされているものとして、上告受理決定がなされるべきものである。

 1 原判決の引用する第一審判決は、次のとおり判示する。

 原判決は、「挙示の証拠に照らし、入会拒否に社会通念上合理的理由があるとした原判決の認定判断は正当として是認することができ、本件各入会拒否が被控訴人(被上告人:引用者注)の利権を守るためにされたものであることを認めるに足りる証拠はなく、控訴人ら(上告人ら:引用者注)の主張は、採用することができない。」(原判決13頁)と判示する。

 すなわち、原判決は、本件入会拒否は、社会通念上合理的な理由があれば、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条に該当しても違法性は阻却されると判示したものである。

 2 しかしながら、原審の上記判断は、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条の解釈を誤ったものである。その理由は次のとおりである。

独占禁止法8条1項3号は、事業者団体が「一定の事業分野における現在または将来の事業者数を制限すること」を禁じている。その趣旨は、事業者団体がその決定を持って一定の事業分野にある事業者の数を制限することにより、新規事業者の市場の参入を阻止しあるいは既存事業者を排除し、許容された一定数の事業者においてのみ競争が行われるという条件を作り出すことは、市場の開放性を阻害し、独占禁止法が禁じる不当な取引制限に該当するからである。それゆえ、同号に規定する事業者数の制限は、競争の実質的制限にいたらない場合であっても禁止されている点に特徴があるのであり、同項に該当する場合には、その違法性が阻却されるような例外的な場合は認められないと解すべきである。仮に、「不当な取引制限」行為から除外されるような例外的な場合があるとしても、それは、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進するという」独占禁止法の究極の目的(一条)に実質に反しない」と認められる例外的な場合でなければならない。したがって、入会拒否が、違法行為でないとされるためには、その理由が、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進するという独占禁止法の究極の目的(一条)に実質に反しない」と認められる例外的な場合によるものでなければならない。

3 本件についてみれば、埼玉県における不動産鑑定士業の唯一の団体である被上告人は、事業者団体であるとともに、被上告人に加入しないで埼玉県下において不動産鑑定業務を行うことが、著しく困難な状況にあったものであるから、上告人山口の入会を拒否することは、上告人山口の参入を阻止し市場の開放性を阻害することは明らかであるところ、被上告人が入会拒否として挙げる理由の主なものは、被上告人以外の同様の団体に対して行われた上告人山口の言動に鑑みて、上告人山口が被上告人の健全な運営を阻害する虞があるとしているにとどまるのであり、被上告人の会員の業務を享受する一般消費者の利益確保という観点からの必要性は全く考慮されていないだけでなく、被上告人が問題とする言動は、その主なものは、被上告人及び他地域における同様の事業者団体が行っている不動産鑑定業務の独占行為に対する疑いに基づきこれを矯正して、不動産鑑定業務における自由競争原理の実現の観点から、これを批判していると認められる意思表明であり、むしろ一般消費者の利益確保と独占禁止法の趣旨目的に沿うものとも見られ得るものであり、これらを理由に入会拒否できる例外的場合には、到底該当し得ないものである。

以上と異なる見解に立って、被上告人の請求を退けた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決は破棄を免れない。

第2 原判決の判断は、最高裁判所の判例と抵触する誤りがあり、それは判決に影響を及ぼすことが明らかな判例違反であるから原判決は破棄を免れない。よって原判決は、最高裁判所の判例等に相反し、その他法令の解釈に関する重大な事項を含む判断がなされているものとして、上告受理決定がなされるべきものである。

1 原判決の引用する第一審判決は、次のとおり判示する。

 原判決は、「挙示の証拠に照らし、入会拒否に社会通念上合理的理由があるとした原判決の認定判断は正当として是認することができ、本件各入会拒否が被控訴人(被上告人:引用者注)の利権を守るためにされたものであることを認めるに足りる証拠はなく、控訴人ら(上告人ら:引用者注)の主張は、採用することができない。」(原判決13頁)と判示する。

 すなわち、原判決は、本件入会拒否は、社会通念上合理的な理由があれば、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条に該当しても違法性は阻却されると判示したものである。

2 しかしながら、最高裁判所判例(最高裁判所判例集 第38巻第4号25頁)は、次のとおり判示する。

「独禁法の立法の趣旨・目的及びその改正の経過などに照らすと、同法2条6項にいう「公共の利益に反して」とは、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを指すが、現に行われた行為が形式的に右に該当する場合であっても、右法益と当該行為によって守られる利益とを比較衡量して、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的(同法1条参照)に実質的に反しないと認められる例外的な場合を右規定にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨と解すべきであり、これと同旨の原判断は、正当として是認することができる。」

 同判決が認容した原審判決は、次のように述べている。

「・・・独禁法の改正等の経緯にかんがみ、同法を整合的に解すると、同法は、共同行為により一定の取引分野における競争を実質的に制限する行為であっても、その行為の実質において同法の趣旨、目的に反しないものがありうることを予定しているものと解されるが、前記の同法の目的をも考慮すると、「公共の利益に反して」とは、同法の趣旨、目的に反することをいい、原則としては同法の直接の法益である自由競争経済秩序に反することであるが、形式的に右に該当する場合であっても、右法益と当該行為によって守られる利益とを比較衡量して、全体的にみた前記の同法の趣旨、目的に実質的に反しないと認められるような例外的なものを公共の利益に反しないものとして独禁法の適用から除く趣旨で右構成要件が設けられたものであると解するのが相当である。」

 そして、事業者団体による競争の実質的制限行為を禁止する8条の規定の解釈において、同条所定の各行為であれば違法性が阻却されるような例外的場合は一切認められないとの立場を採るのであれば格別、そうでない限り、これらの行為についても、事柄の本質及び独占禁止法1条の立法趣旨からみて、2条5項・6項の「公共の利益に反して」という要件は類推適用されるとするのが一般であり(村上政博、独占禁止法第2版・67頁・平成12年・弘文堂)、この2条5項・6項類推適用説に拠る限り、8条所定の事業者団体の行為も、上記判例の射程範囲に属するものであることは疑いない。

 3 上記判例によれば、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条は、自由競争経済は、需給の調整を市場機構に委ね、事業者が市場の需給関係に適応しつつ価格決定を行う自由を有することを前提とし、その努力による価格引下げ競争が、本来、競争政策が維持・促進しようとする能率競争の中核をなるものであるところ、事業者団体が、将来の事業者の数を制限する場合には、一定の事業分野の市場の開放性を妨げ、事業者の努力又は正常な競争過程を反映せず、競争事業者の事業活動を困難にさせるなど公正な競争秩序に悪影響を及ぼす虞が多いと見られるため、これを禁止しているものであり、同規定による違反行為がないとされるためには、これら判例による「公共の利益に反して」という基準に該当しないことが示されなければならないものである。したがって、事業者団体による入会拒否が同項に該当する違法なものでないとする理由としては、それが「公共の利益に反」するかどうか、換言すれば、事業者団体による入会拒否が専ら公正な競争秩序維持の見地に立ち、具体的な場合における行為の意図、目的、態様、競争関係の実態及び市場の状況等を総合して(参照、最高裁第一小法廷平成6年12月14日民集43巻12号2078頁)勘案し、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的な発達を促進するという独占禁止法の究極の目的に実質的に反しない」と認められるかどうかを基準として判断すべきである。

 4 しかるに、原審は、入会拒否の違法性を判断する際に「社会通念上の合理性」を基準として採用するのみで、これら判例による、独占禁止法の目的に基づく同法2条5項・6項の類推適用による同法究極目的に実質的に反しないと認められる例外的な場合についてのみ違法性が阻却される、との基準に一顧だにしていない。入会拒否基準としての「社会通念上の合理性」とは、会員の自発的意思によって結成される任意団体に適用される基準であって、独占禁止法により規制される事業者団体の入会・拒否基準とはなり得ない。このような基準をもって、独占禁止法8条1項3号及び5号、19条に該当しないとした原判決は、上記最高裁判所の判例に明らかに抵触する。

 5 本件についてみれば、埼玉県における不動産鑑定士業の唯一の団体である被上告人は、事業者団体であるとともに、被上告人に加入しないで埼玉県下において不動産鑑定業務を行うことが、著しく困難な状況にあったものであるから、上告人山口の入会を拒否することは、上告人山口の参入を阻止し市場の開放性を阻害することは明らかであるところ、被上告人が入会拒否として挙げる理由の主なものは、被上告人以外の同様の団体に対して行われた上告人山口の言動に鑑みて、上告人山口が被上告人の健全な運営を阻害する虞があるとしているにとどまるのであり、被上告人の会員の業務を享受する一般消費者の利益確保という観点からの必要性は全く考慮されていないだけでなく、被上告人が問題とする言動は、その主なものは、被上告人及び他地域における同様の事業者団体が行っている不動産鑑定業務の独占行為に対する疑いに基づきこれを矯正して、不動産鑑定業務における自由競争原理の実現の観点から、これを批判していると認められる意思表明であり、むしろ一般消費者の利益確保と独占禁止法の趣旨目的に沿うものとも見られ得るものであり、これらを理由に入会拒否できる例外的場合には、到底該当し得ないものである。

以上と異なる見解に立って、被上告人の請求を退けた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな判例の違反があり、原判決は破棄を免れない。

第3 原判決には、憲法の解釈の誤りがあり、原判決は破棄されるべきものである。よって上告に理由がある。

 1 原判決は、本件入会拒否に関し、次のように判示した。

 原判決は、「挙示の証拠に照らし、入会拒否に社会通念上合理的理由があるとした原判決の認定判断は正当として是認することができ、本件各入会拒否が被控訴人(被上告人:引用者注)の利権を守るためにされたものであることを認めるに足りる証拠はなく、控訴人ら(上告人ら:引用者注)の主張は、採用することができない。」(原判決13頁)と判示する。

 そして、原判決が是認した原原判決は、被上告人の定款5条3項(本会への入会が会員の綱紀保持上不適当と認められる事由のある者)に該当すると認定した理由を次のように述べる。

「・・・原告山口(上告人山口:引用者注。以下同じ)が、鑑定協会や都士協会に対し、具体的根拠も客観的根拠もないのに、談合をしている等として訴訟を提起し、不当に同協会らの業務に支障を生じさせ、その信用を貶めたこと、選挙活動の一環であることを考慮しても著しく不適切な表現行為であるとの謗りを免れない文章を選挙公報やホームページに公然と掲載したこと、茨城県の市町村に対して、・・・の公正取引委員会の警告の対象とされた独占禁止法違反のおそれのある行為と同種の行為を依頼する内容の書面を配布したこと、そのうち・・・の書面は、茨城県士協会会長井坂の名義部分を棒線1本を引いて消しただけのものであり、同書面を受け取った一般人をして、上記井坂作成に係る文書であると誤信せしめ得るものであること等によれば、原告山口の入会により、被告(被上告人:引用者注。以下同じ)に対する社会一般の信頼・信用が低下し、被告や同会員の名誉が害され、被告内部に混乱を来し、被告の円滑な業務の執行に支障を来すおそれが高いと認められ、原告山口は、被告の定款5条3項(本会への入会が会員の綱紀保持上不適切と認められる事由のある者)に該当するものと認めることができる。」

 2 しかしながら、本件入会拒否の違法性を判断するにあたっては、入会拒否が憲法の基本権保障規定を侵害しないかどうかの判断が回避されてはならない。一般に、私人間における基本的自由の侵害や侵害の虞に関しては、憲法の直接適用がないとされる(最高裁判所昭和48年12月12日、民集27巻11号1536頁)。しかし、基本的自由の侵害や侵害の虞の態様・程度が社会的に許容される限度を超える場合には、基本的自由の利益を保護すべきことは言うまでもない。まして、私人間の関係であっても相互の社会的力関係の相違から、一方が他方に優越し、事実上後者が前者の意思に服従せざるを得ないような場合で、法的服従関係に準ずるような場合には、憲法基本権保障規定の適用ないしは類推適用が認められるべきである。

3 本件では、被上告人への加入は、実質的には強制加入であり、埼玉県下において不動産鑑定業務を営むためには被上告人に加入してその会員資格を得ることが必要であり、被上告人の会員資格を有しないで同県における不動産鑑定業務を営むことは不可能又は著しく困難であるから、被上告人と上告人山口の関係は、憲法の基本権保障規定の適用ないし類推適用を受けるべき服従関係にある。

4 本件は以下のとおり、実質的には強制加入の事業者団体である被上告人と上告人ら事業者との関係は、埼玉県における不動産鑑定業務においては、被上告人と上告人らとの間に法的服従関係に準ずる関係が成立していると言わざるを得ない。

(1) 上告人山口は、平成2年5月に不動産鑑定業者として開業し、平成11年9月に、埼玉県内に不動産鑑定士事務所を設けると同時に、埼玉県の不動産鑑定業者の登録を受けた。

(2) 埼玉県内における不動産鑑定評価業務は、東京都等と較べると、民間の会社及び個人からの鑑定依頼は約3割と少なく、国土交通省が発注する地価公示の鑑定評価、埼玉県が発注する用地買収等の鑑定評価並びに地価調査等の鑑定評価、国税庁が発注する路線価格の鑑定評価、裁判所が発注する裁定競売価格の評価及び訴訟・非訴訟上の鑑定評価、市町村が発注する固定資産税の課税標準を定めるための地価調査及び用地買収等の鑑定評価などの公的機関からの鑑定評価の依頼がその業務の約7割もの大部分を占める。

(3) 被上告人は、本部の社団法人日本不動産鑑定協会関東甲信会埼玉県部会がその前身であり、平成7年3月20日に社団法人となったものであり、不動産鑑定評価制度の普及等を目的とする公益社団法人であり、埼玉県における唯一の不動産鑑定業者の事業者団体である。

(4) 被上告人は、その前身である本部の関東甲信会埼玉県部会のときから、平成6年度から不動産鑑定士へ鑑定評価の委託がなされるようになった固定資産税の課税標準を定めるための地価調査に関し、平成7年度(平成9年度の評価替えのため)及び平成10年度(平成12年度の評価替えのため)及び平成13年度(平成15年度の評価替えのため)には、埼玉県内の各市町村との間で鑑定評価の業務委託契約をした。

(5) そして、固定資産税の課税標準を定めるための地価調査についての3年ごとの評価替えの年度である平成9年度については、「固定資産税評価における平成9年度評価替え意向の鑑定評価実施体制について」(平成6年10月12日自治評第43号)に基づいて埼玉県の行政指導により、平成12年度評価替え以降、上記自治省通知が廃止され行政指導がなくなった後は、埼玉県市町村税務協議会資産税(土地)部会と被上告人の申し合わせに基づき、被上告人において、埼玉県内全92の市町村(当時)において地価調査を希望する不動産鑑定士の名簿を提示することとされた。そこで被上告人は、会員から埼玉県下の各市町村の地価調査の希望を取りまとめて希望者名簿を作成し、これを各市町村に配布した。そして、平成10年3月19日には、一方で、平成9年度評価体制に準じ、被上告人と鑑定評価に関する委託契約を結ぶことで合意を得たとするとともに、他方で、被上告人に加入していない鑑定評価員並びに市町村に申し出た鑑定評価員の希望者の申し込みについても、被上告人が受け付けるべきものとされた。しかしながら、平成15年度評価替えにおいては、希望者の申し込みのとりまとめを、被上告人会員とそれ以外の者とを区別して実施し、後者の対象者には極めて短い回答期間を与えるにすぎないなど、不自然・不合理な方法により被上告人会員とそれ以外の者とを差別的に扱った。

(6) 相続税路線価の標準地評価に関しては、国税庁を委託者、社団法人日本不動産鑑定協会を受託者とする業務委託契約によっている。不動産鑑定士の選任手続は、本部が鑑定希望者を募り、その希望者名簿を国税庁に提出し、埼玉県内については、関東甲信越国税局及び各税務署が、鑑定士評価員に委託するというものであるが、平成13年分の相続税路線価の評価員として委嘱された者は、平成13年分は126名、平成14年分は127名、平成15年分は126名であるが、この中には、被上告人会員又は同関係者以外の埼玉登録業者で被上告人会員以外の者は一人も含まれてはいなかった。

(7) 以上を背景として、埼玉県では、固定資産の標準宅地の鑑定評価業務に関して、平成13年度において、平成15年度の固定資産鑑定評価員を希望した者が162業者(うち被上告人会員128業者、非会員34業者)であったところ、同評価員として選任されたのは127業者(うち被上告人会員106業者、非会員21業者。業者数に関する(以下同じ)会員比率83.4%)であり、公共事業用地等の不動産鑑定評価業務に関して、埼玉県浦和土木事務所が県内の物件について鑑定依頼を発注した業者は、平成11年度において、188業者、依頼件数合計140件(うち非会員1業者、依頼件数2件。会員比率99.5%)、平成12年度において、17業者、依頼件数合計122件(うち非会員ゼロ。会員比率100%)、平成13年度において、17業者、依頼件数合計117件(うち非会員ゼロ。会員比率100%)であり、さらに、国税庁は路線価の鑑定評価業務に関して、関東信越国税局が委嘱した鑑定評価員は、平成13年度において、のべ126名、鑑定地点総数597(うち非会員のべ16名、鑑定地点数59。評価員数に関する会員比率(以下同じ)87.3%)、平成14年度において、のべ127名、鑑定地点総数613(うち非会員のべ14名、鑑定地点数57。会員比率89%)であった。したがって、埼玉県下における不動産鑑定業務は、被上告人会員がほぼ独占している状態にあり、平成11年、平成12年、平成13年及び平成14年分の埼玉県登録業者の合計収入金額に占める被上告人会員の収入は、99.8%、99.8%、99.3%、100%を占め、これら全期間を通じて、被上告人会員以外の埼玉県登録業者で、国、地方公共団体、公社、公団、公庫等、裁判所から鑑定評価業務を受注した実績が零であった。

(8) 埼玉県において、不動産鑑定業者の被上告人への加入率はほぼ100%に近い。つまり、被上告人に加入していないのは、事業を行っていない者か又は何らかの特別な事情がある業者のみである。

  (9) 近隣他県(茨城県)における強制加入の実情

 このような状況は、埼玉県のみならず、同じ関東圏に属する茨城県においても同様である。

 不動産鑑定士の社団法人茨城県不動産鑑定士協会への入会に関して、入会に当たって会員2名の推薦を要件としていることが独占禁止法8条1項3号に該当し不法行為が成立する旨判断した東京地裁八王子支部も(同庁平成13年9月6日判決 判タ1116号273頁)も、茨城県内における不動産鑑定評価業界の実態に関して、

 「茨城県内における不動産鑑定評価業務は、国の行政機関、県、市町村、裁判所などの公的機関からの依頼がかなりの部分を占めるところ、茨城県内には、被告(社団法人茨城県不動産鑑定士協会:引用者注。以下同じ)に代わる不動産鑑定業者の組織が他になく、被告に対する公的機関からの信用力が高いため、依頼者である公的機関は、事実上、被告の会員である不動産鑑定業者に鑑定依頼する傾向にあり、具体的には、被告は、茨城県との間で、短期地価動向調査の鑑定評価の業務委託契約をしてその鑑定評価業務を各会員に割り当てている外、平成10年度の相続税路線価の標準地評価の鑑定及び平成12年度の固定資産税の課税標準を定めるための地価調査のための鑑定についても、茨城県内の税務署は、ほとんど被告の会員に委託をしているのであるから、以上の状況の下では、茨城県内に事務所を持つ不動産鑑定業者が被告に入会しないで不動産鑑定業務を行うことは実際には困難であるといわざるを得ない。」(判タ1116号279頁)

 と認定している。上記認定に係る不動産鑑定評価業界における実態は、埼玉県における実態と異なるところがない。

 (10) 被上告人への加入は実質的には強制加入であること

 埼玉県の不動産鑑定評価業務に関しても、原原審であるさいたま地方裁判所が、判決において、

 「結果的に鑑定評価員における被告(被上告人:引用者注。以下同じ)会員の占める割合が相当高くなっているとの現実に照らすと、被告に入会していないことにより信用に差が生じ、相対的に仕事が受注しにくい状況にあり、そのような意味において、被告に加入しなければ事業活動を行うことが困難となる状況にあるものと認めることができる。」(同判決45頁)

 と認定しているとおりの実態を有している。

 このように、被上告人の会員として被上告人に加入しなければ、埼玉県における不動産鑑定士として不動産鑑定評価業務に携り、それを稼業とすることはできず、被上告人への加入は、形式的には任意加入ではないものの、不動産鑑定士として業務を遂行する上では不可欠であり、強制加入としての実質を有する。

 5 上記の観点に立って本件各入会拒否理由を検討すると、まず第一に、被上告人が被上告人の健全な運営を害する虞があるとする上告人山口の言動は、主に、他地域における被上告人と同様の事業者団体が行っている不動産鑑定業務の独占行為に対する疑いに基づくものであり、被上告人が信条として保持する不動産鑑定業務における自由競争原理の観点からこれを批判していると認められる意思表明であり、これらは上告人山口の思想、信条に関係のある事実であることは明らかであるから、これらの言動を理由に入会拒否はできないものと解せられる。

 すなわち、人の思想・信条は身体と同様、本来自由であるべきものであり、その自由は憲法19条の保障するところであるから、本件のように、一定の事業活動について事実上独占状態にあり、その状態は、法的服従関係に準ずるような場合、優越した地位にある一方が他方に対しその意に反してみだりにこれを侵してはならないことは明白であり、人が信条において差別されないことは憲法14条の定めるところであるが、本件のように専門職業者の事業者団体においては、特定の経済思想、信条を有する者を会員にしたとしても、その思想・信条のゆえに事業の遂行に支障をきたすとは考えられないから、こうした思想・信条のゆえに不利益を課すことは許されない。

 この趣旨は、法人が強制加入の団体である場合には、会員の思想・信条の自由との関係で特別の考慮が必要であり、会員が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断に基づいて決定すべき事柄について、多数決原理により決定された団体の意思に基づいて活動すべき協力義務を負わすことには限界があるとする最高裁判所判例においても明確に表明されている(最高裁判所第三小法廷平成8年3月19日民集50巻3号615頁)。

 6 また、上告人らによる一連の訴訟提起や選挙公報等での言論活動は、不動産鑑定評価業界において、市町村等との間で被上告人が業務委託契約を締結したり、あるいは税務署長と社団法人日本不動産鑑定協会との間で業務委託契約が締結したりする等、自由競争が排除又は妨害され、ひいては公的機関を始めとする顧客が損害を蒙っている現状を改善するため、上告人らが自己の経済的思想を外部に表現したものであり、その経済的思想は、顧客が不動産鑑定士を自由に選別し、また、価格の面においても利益を受けることができるという自由競争に基づくものであって、規制緩和が叫ばれる昨今の経済の流れにまさしく合致する正当なものである。このように、自由主義を掲げる経済的思想は、埼玉県内の不動産鑑定業界のみならず日本全国における不動産鑑定業界、ひいては、不動産鑑定以外の資格に基づく事業に繋がるものであるし、さらにいえば、資格に基づかない事業一般の制度改革という政治思想に通ずるものである。このように、上告人らの表現行為は、上告人らの人格発展のみならず(自己実現)、民主制の過程を基礎付けそれを維持するためのものであり(自己統治)、それを行ったことが被上告人の健全な運営を乱すなどとして入会を拒否することは、憲法21条が保障する上告人らの表現の自由を侵害する行為として到底許されるものではない。さらに、上告人らのこのような思想は、既存の規制によって恩恵を被る不動産鑑定士が多く存在するであろう現在における不動産鑑定評価業界においては、少数派に過ぎないと思われる。本件各入会拒否は、少数派に属する上告人らの思想を弾圧し、蔑ろにするという意味においても、極めて重大な表現の自由の侵害行為にあたるのである。

 また、上告人らは、訴訟を通じてその思想を表現しているのであって、訴訟を起こしたが故に、被上告人の健全な運営を乱すとして入会を拒否することは、憲法32条が保障する上告人らの裁判を受ける権利の侵害そのものである

 7 また、本件各入会拒否は、憲法22条の定める職業選択の自由ないし同条の保障内容に含まれるものと解せられる営業の自由という点からも、憲法上許されないものである。すなわち、前述したように、埼玉県内の不動産鑑定士による被上告人への加入は、形式的には任意加入であるものの、不動産鑑定士としての業務を遂行する上で加入は不可欠であり、強制加入としての実質を有するものである。そうだとすれば、被上告人への入会を原則として認めることこそが、上告人らが不動産鑑定士としての業務を遂行し、その営業の自由が機能するために、最低限必要とされる(必要性)。

 他方で、被上告人への加入以前に上告人らは不動産鑑定士としての適性・知識等が国家試験によって十分に審査されているのであるから、原則として入会を認めたとしても、不動産鑑定士の業務に関連して被上告人の信用を毀損する危険性は極めて小さいものと考えられる(許容性)。

8 したがって、社団法人日本不動産鑑定協会及びその地域会は、不動産鑑定士の入会を原則として認められなければならず、当該不動産鑑定士の営業の自由を侵害することになる事前の入会拒否は、極めて消極的・例外的でなければならない。

 例外的に事前の入会拒否が認められるのは、不動産鑑定士や鑑定業者の登録欠格基準である「相当な注意を怠り、又は故意に不等な鑑定を行った者」など、当該会員の不動産鑑定士としての業務に関連して、過去に不祥事を惹起し、又は将来そのおそれの大きい者の入会を拒否するとしても、当該会員が不動産鑑定士としての業務を行うことによって、顧客が損害を蒙り、ひいては当会の信用が失墜するおそれも大きいと認められるなど、入会を拒否するための必要性及び合理性が認められなければならない。

 これに対し、当会の綱紀を保持するという目的を達成するために事前に入会を拒否する等、不動産鑑定士の業務に関わりのない事由によって入会を拒否する場合、入会を求めた不動産鑑定士の営業の自由を侵害することのないよう、より一層の慎重さ、消極性が求められる。すなわち、このような綱紀保持目的のために当該入会拒否が認められるためには、業務に関連した登録欠格基準に照らして、入会を拒否する必要性及び合理性を充たすことに加え、当会による事後的な諸対応等、よりゆるやかな対応をもってその綱紀保持の目的を十分に達成することができない、という事情を要するものである(薬局事件に関する最判昭和50年4月30日 判時777号8頁参照)。けだし、綱紀保持の目的は、不動産鑑定士としての業務との関連性に乏しく、これによって顧客が損害を蒙り、又は当会の信用が失墜することはない反面、当該不動産鑑定士の営業の自由を侵害するおそれが極めて高いからである。万一、当該会員の入会により、当会の信用を毀損したり綱紀を乱したりすることによって、その運営や所属する他の不動産鑑定士の業務遂行に不利益を及ぼすようなおそれがあるのであれば、当該会員の入会後に、事後的に当該会員に対し、適切な処分・措置を講じることによって予防又は回復すれば足りるからである。

9 本件では、上告人山口は、平成2年2月、不動産の鑑定評価に関する法律(平成11年法律160号による改正前のもの。)15条に基づき、不動産鑑定士名簿に登録を受け、同年5月、自ら代表者として有限会社日本経済研究所(組織変更前の上告人会社)を設立し、同社は、鑑定法22条1項に基づき、不動産鑑定業者登録簿に登録を受けた。そして、上告人会社は、平成3年6月から同11年9月までの間、東京都内に所在し、東京都の不動産鑑定業者登録簿に登録を受け、社団法人東京都不動産鑑定士協会(以下、「都士協会」という。)の会員となっていた。

 このように、上告人らは、平成3年6月から同11年9月までの間、東京都内において不動産鑑定士として稼動していたのであり、その間、不動産鑑定士業務に関連して、相当な注意を怠ったり、又は故意に不等な鑑定を行ったりするなど、不動産鑑定士や鑑定業者の登録欠格基準に該当するような業務を行ったことは一切ない。

 しかも、上告人らは、第1入会拒否の直後である平成12年4月から同13年1月までの間、都士協会は、上告人らが会員となることを認め、その会員として不動産鑑定業務を行っていたのである。まさに、被上告人の入会拒否にその必要性及び合理性がないことを表している。

 そして、被上告人は、上告人山口が、社団法人日本不動産鑑定協会や都士協会に対し、具体的根拠もないのに、談合している等として訴訟を提起し、不動に同協会らの業務に支障を生じさせ、その信用を貶めたこと、及び不適切ともとられかねない文章を選挙公報やホームページに公然と掲載したこと等をもって、上告人らの入会により、被上告人に対する社会一般の信頼・信用が低下し、被上告人や会員の名誉が害され、被上告人内部に混乱をきたし、被上告人の円滑な業務の執行に支障をきたすおそれが高いと判断し、入会を拒否したとするが、これらはいずれも、被上告人以外の社団法人日本不動産鑑定協会の地域会などの事業者団体に関わる言動であるとともに、当該事業者団体において綱紀上の措置の対象とされていなかったものであり、この点でも、被上告人の入会拒否にその必要性及び合理性がなかったことは明白である。

 10 なお、上告人山口は、平成11年6月4日付で、国土庁、国土庁土地鑑定委員会、社団法人日本不動産鑑定協会、都士協会、茨城県士協会及び公正取引委員会に対し、文書を配布しているが、その文書において、

「私儀、山口節生は、これまで平成11年度の固定資産税の標準地評価などについて公正取引委員会に相談したり申告しましたが、正しかった部分もあり、正しくなかった部分もあったと考えます。正しくなかった部分についてはお詫びいたします。

(中略)

以上の事に関して今までやってきたような裁判所や、公正取引委員会に関わるような行動派猛烈に反省しております。これまでの裁判や、公正取引委員会に関わる事によって公正取引委員会や、裁判所や、各業者団体に迷惑をかけたことについては寛大なこころでご容赦願いたい。今後は同じ独立した不動産鑑定業の業者同士として出来るだけ配分以外でも温和にことが進み、配分に関しては対立がないように業者の内部で努力に努力を重ね、今後は外部に対して裁判をしたり、公正取引委員会と関係するような常識のない行動を慎み、迷惑をかけないように努力いたします。」

 と自らの非を認め、今後は、温和に行動することを誓っているのである。

 このような重大な決意をした上告人らに対しては、被上告人への入会を認めた上で、万一、被上告人の健全な運営を乱すようなことがあれば、事後的にその時点において、協議、指導又は勧告等、適切な処置を講じれば足りるのである。

被上告人の入会拒否には、事後的に適切な対応をするなど、よりゆるやかな対応をもってその綱紀保持の目的を十分に達成することができたのである。

 以上により、被上告人による上告人らの本件各入会拒否には、事前の入会拒否を認める必要性及び合理性は認められず、かつ、事後的に適切な対応をするなど綱紀保持の目的を達成することができないなどの事情は存せず、上告人らの営業の自由を侵害する違憲・違法がある。のみならず、本件各入会拒否は、上告人らの表現の自由及び裁判を受ける権利を侵害する違憲・違法がある。

 11 被上告人がした本件入会拒否は、憲法19条及び14条、憲法22条並びに32条の規定ないしその保障内容に反し違憲であり、違憲な入会拒否を適法とした原判決には憲法違反がある。原判決は、破棄を免れない。

以上

東京高等裁判所平成17年(ネオ)第183号・平成17年(ネ受)第192号

差止損害賠償請求事件

上告人兼上告受理申立人  株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

同        山 口  節 生

相手方          社団法人埼玉県不動産鑑定士協会

             同代表理事  岩 ア  彰

上告理由書兼上告受理申立理由書(5)

平成17年5月9日

最 高 裁 判 所 御中

上記上告人兼上告受理申立人

株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

山 口  節 生

第一の入会拒否と、第二の入会モラトリアムとの関係(個人業者と、法人事業者とその代表者)及び既判力及び基本的人権の法令適用の誤り、違憲性

 上告人(債権者)会社は被上告人(債務者)の違法な行為により大きな会社になれなかったが、それがなければ大きな会社になっていたのであるから、それ故に個人業者と、自然人との同一性、会社と自然人の同一性があるとはいえない。事業者団体との関係においては事業を行っているのか、個人の趣味とかの問題であるかの違いであり、後者はサロンの様な団体であり、被上告人(債務者)の中にもそのような団体はあるが本件で問題としているのは、事業者としての上告人(債権者)である。

 第一の入会拒否が無効確認訴訟によるしか訴訟の対抗手段がなかった故に、敗訴したことを理由とする第二の会社に対する入会のモラトリアムは、第二の入会申し込みのすぐ後に差止の法制度が整備されたために、無効確認訴訟でなく差止訴訟に変更されることになった。このために手続法の変更は変更前から続いている継続中の違反を裁けるかという問題を発生させた。日本では画期的な差止訴訟が提起されることとなった。差止は現行犯に対してしか適用がないからである。

代表者個人の信条を理由とする、会社に対する独占禁止法上の共同ボイコットは可能であるか。

確認訴訟であったために、モラトリアムについては確認訴訟を起こす法的理由がなかった。そのために継続中の違反であるにもかかわらず、モラトリアムは法的対抗手段を持たなかった。一方差止は給付訴訟であるので、継続中の違反が継続している間、いつにても請求できた。

 但し、第一の無効確認についてはすでに個人の事業所はなく、第二の入会のモラトリアムに対してだけ現在も継続している株式会社の事業者であるので、差止が出き、第一の入会拒否には差止が出来ないかについて法令適用の誤りがある。原審は無効確認訴訟を既判力として認定して、差止給付訴訟については手続保障を行っていない。

 第二の入会拒否が第一を理由としているから出来ると考えられる。確かに当時株式会社日本経済研究所は個人の事業者とともに存在していたのであるが、不動産鑑定業を行っていなかった。個人の事業者が鑑定評価を行っていた。しかし同時に併存していた。

その場合代表者個人の信条によって入会拒否が出来るか。

既判力の法令適用の誤りと違憲性

 既判力は存在せず、差止なければ損害なしという被上告人(債務者)らの主張する公正取引委員会時代の考え方によれば、損害額は全額第一入会拒否の時から認められるべきである。

無効確認訴訟においては入会拒否が存在しないのであるから、何を無効とするのかという問題が生ずる。従って共同ボイコットが差し止められなければ、無効であるというだけでは損害額の認定が出来なかったのであるから、既判力は無効確認の実体が認定されなかったのであるから、当然に損害額については一部訴訟であるかどうかにかかわりなく、全額認められるべきである。

「既判力というのは、もはや紛争を蒸し返せない効力でしたよね。そして、紛争解決という点を強調すれば、既判力はもはや一切蒸し返すことができない効力という方向へ行くと思います。どんな事情があろうとも、あらためて争うことはできないことになるでしょう。

 ところが、手続保障という点を強調すると、なんらかの事情によって訴訟で十分に主張する機会が与えられなかった場合には、許容性が存在しないわけですから、既判力の正当化根拠が失われます。したがって、あらためて争う機会を与えるべきという方向へ行くでしょう。

 このような形で、既判力の制度的効力という側面と、手続保障による自己責任という側面のいずれを重視するのかが問題となってくるわけです。

両者の対立点

 ただ、制度的効力という面を強調するとしても、手続保障が正当化根拠である以上、まったく手続保障という面を無視することはできないでしょう。つまり、ごく例外的な場合には、あらためて争う余地を認めざるをえないのです。この例外的な場合を、どの程度広く考えるか、それともごくごく狭く考えるか、の対立といってもよいでしょう。」

本件の場合には、無効確認訴訟は差止請求が認められていなかった時代の訴訟であった。

ところが平成13年4月より、差止請求が認められたのであるから、なんらかの事情によって訴訟で十分に主張する機会が与えられなかった場合に該当する。差止は継続中の損害について差し止めるのであるが、確認訴訟は過去の行為の無効の確認のみが行われる。全く別の訴訟である。

「手続保障という点を強調すると、なんらかの事情によって訴訟で十分に主張する機会が与えられなかった場合には、許容性が存在しないわけですから、既判力の正当化根拠が失われます。したがって、あらためて争う機会を与えるべき」であり、「手続保障が正当化根拠である以上、まったく手続保障という面を無視することはできない」のであって、それ以前のさいたま地方裁判所における無効確認訴訟の結果、被上告人(債務者)の会員の地位は存在しないという判決を既判力として認めて、それを前提とした原審判決、及び、原原審判決は認められないといいうる。この点で法令解釈の誤りがあり、原審判決は破棄されるべきである。

また手続保障は憲法の要請するところであり、差止について無効確認という過去の制度に依拠した判決は法令の適用を誤り、憲法の手続保障規定にも違反するものと考えられる。これは憲法の裁判を受ける権利の保障の規定に違反する。アメリカでは正当な手続規定に違反することになる。

確かに本件においては手続規定が差止という新しい給付訴訟として認められたのであり、それまで同一の事実について無効確認訴訟での判決が本人訴訟であって、不十分ではあっても、存在したからといって、差止の給付訴訟がその無効確認訴訟の結果に既判力によって拘束されるとする原審及び原原審判決は憲法の裁判を受ける権利に違反して、違憲であり、破棄されるべきである。

既判力は手続保障が正当化根拠である以上、まったく手続保障という面を無視することはできない。既判力の解釈としては法令適用の誤りである。

本件の場合には無効確認訴訟でも再審を要求している訳ではなく、法制度が変更されたのであるから、手続法の変更によって可能になったので既判力はないといわざるをえない。(手続法の変更は、以前の実体にたいに対しての法手続を可能にする。)本件訴訟では無効確認訴訟と差止給付請求訴訟は似通っているから、既判力があると見えるだけであり、実体法上は全く別のものである。従って継続中の違反であり、現在も続いている場合には、手続法は改正前にまで及ぶといいうる。従って無効確認訴訟を既判力として認めている原審判決は法令の適用の誤りと、憲法32条違反の両方を侵していることになる。憲法32条が保障する上告人らの裁判を受ける権利の侵害そのものである。

その手続法の変更を無視して、既判力を持ち出すことは許されない。差し止めなければ損害なしと、丹宗昭信、伊従寛、厚谷譲二等の学者は言っており、そのテープもあり、特に伊従寛氏は「かっては批判する様な者は、礼をしに来なかった者は入れないという様な入会の拒否は、どのようなものでも無効確認訴訟では負けるに決まっていたので、入れなくて良かった。本件事件はそのような事件である。」と述べている。これでは本当にそれが理由でなくてもそのような理由を裁判所では言うに決まっているのであって、それは好き嫌いで入会拒否はどのようにでも出来るということである。これは非常におかしな理屈である。さてそれでも無効確認訴訟でしか対抗のしようがなかったので、どうしようもなかったのであり、公正取引委員会もそのような対応をしてきたのである。「親族法も一新し、家庭裁判所の創設をみ、法制全体の建前が改まつた今日、旧人事訴訟手続法の支配した時代の考え方をここに持ち込むことの妥当でない」のと同様に差し止め請求権の存在しなかった時代の考え方をここに持ち込むことは行政の最終決定を判決として引用することになり、違憲であるといわざるをえない。

ところがここに劇的な手続法の変更が行われた。差止制度の導入であった。従って実体法ではなくて、手続法の導入であるから、憲法における裁判を受ける権利によって再審が認められる様に、つまり既判力はないということになり法令違反及び憲法違反がある。

「判例 S40.06.30 大法廷・決定 昭和37(ク)243 生活費請求事件の審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告(第19巻4号1114頁)

要するに、多数意見は、婚姻費用の分担に関する審判と、その前提になる婚姻費用負担義務そのもの(補足意見にいう婚姻費用負担義務自体)とを区別して考えているが、この考え方がそもそも問題なのである。夫婦関係の存続を前提とする限り、婚姻費用負担義務そのものの存在は、法律の明定するところで、その義務の具体的内容は、すべて、家庭裁判所の審判による裁量的形成処分にまつべきであるというのが、現行法の建前とするどころであると、私は考える。そして、この審判に、判決のような既判力を生ずるものでないことはいうまでもない。また、親族法も一新し、家庭裁判所の創設をみ、法制全体の建前が改まつた今日、旧人事訴訟手続法の支配した時代の考え方をここに持ち込むことの妥当でないことは、松田裁判官の意見に明らかにされているとおりである。二 右のような私の考え方は、憲法八二条、三二条に牴触するであろうか。私は、右のような審判制度を設けたからといつて、決して憲法に牴触するものではないと考える。」

「右被上告人らが行政訴訟の方法により何らかの請求をすることができるかどうかはともかくとして、上告人に対し、いわゆる通常の民事上の請求として前記のような私法上の給付請求権を有するとの主張の成立すべきいわれはないというほかはない。

 以上のとおりであるから、前記被上告人らの本件訴えのうち、いわゆる狭義の民事訴訟の手続により一定の時間帯につき本件空港を航空機の離着陸に使用させることの差止めを求める請求にかかる部分は、不適法というべきである。そうすると、右請求を適法とした原判決は訴訟の適法要件に関する法令の解釈を誤つたものであつて、右違法が判決に影響を及ぼすものであることは明らかであるから、論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中右請求に関する部分は破棄を免れず、第一審判決中右請求に関する部分はこれを取り消したうえ本訴請求中右請求にかかる訴えを却下すべきである。」

これは反対解釈すれば差止請求権が創設されたのであるから、差止請求の理由があるという判断であるが、法制度が改正された場合には言及していない。即ちそのような差止請求権が創設され、その共同ボイコットが継続している場合に過去の事件に及ぶかの判断については類推適用により可能であるのに、判断しなかった原審判断には法令の解釈を誤つたものであつて、右違法が判決に影響を及ぼすものであることは明らかである。

「判例 S40.06.30 大法廷・決定 昭和36(ク)419 夫婦同居申立事件の審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告(第19巻4号1089頁)

民法は同居の時期、場所、態様について一定の基準を規定していないのであるから、家庭裁判所が後見的立場から、合目的の見地に立つて、裁量権を行使してその具体的内容を形成することが必要であり、かかる裁判こそは、本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審及び判決によつて為すことを要しないものであるからである。すなわち、家事審判法による審判は形成的効力を有し、また、これに基づき給付を命じた場合には、執行力ある債務名義と同一の効力を有するものであることは同法一五条の明定するところであるが、同法二五条三項の調停に代わる審判が確定した場合には、これに確定判決と同一の効力を認めているところより考察するときは、その他の審判については確定判決と同一の効力を認めない立法の趣旨と解せられる。然りとすれば、審判確定後は、審判の形成的効力については争いえないところであるが、その前提たる同居義務等自体については公開の法廷における対審及び判決を求める途が閉ざされているわけではない。従つて、同法の審判に関する規定は何ら憲法八二条、三二条に牴触するものとはいい難く、また、これに従つて為した原決定にも違憲の廉はない。それ故、違憲を主張する論旨は理由がなく、その余の論旨は原決定の違憲を主張するものではないから、特別抗告の理由にあたらない。

 よつて民訴法八九条を適用し、主文のとおり決定する。

 この裁判は、裁判官横田喜三郎、同入江俊郎、同奥野健一の補足意見、裁判官山田作之助、同横田正俊、同草鹿浅之介、同柏原語六、同田中二郎、同松田二郎、同岩田誠の意見があるほか、裁判官全員の一致した意見によるものである。

 裁判官横田喜三郎、同入江俊郎、同奥野健一の補足意見は次のとおりである。

 旧民法(昭和二二年法律二二二号による改正前の民法)土の夫婦の同居を目的とする訴は旧人事訴訟手続法(家事審判法施行法による改正前のもの)一条一項により、人事訴訟事件として地方裁判所に訴を提起すべく、裁判所は対審(口頭弁論)、公開の手続により、判決の形で裁判をなすべきものとされていた。現行民法七五二条の夫婦の同居の義務も旧民法のそれと本質的に異るものではない。即ち、夫婦の同居の義務は多分に倫理的、道義的な要素を含むとはいえ、法律上の実体的義務であつて、これが存否につき争があり、これを終局的に確定するには公開の法廷における対審及び判決によつて裁判すべきものである。とくに現行憲法は、個人の尊重とその権利の保障を一つの根本精神とし、そのために、何人も裁判を受ける権利を奪われないこと(三二条)、すべて司法権は司法裁判所に属し、特別裁判所の設置を許さないこと(七六条)、裁判の対審と判決は公開法廷で行なうこと(八二条)を定めている。さらに、この精神にそつて、現行の訴訟法は対審公開の原則の下に、当事者が攻撃防禦を尽くし、厳格な証拠調を経た上で判決することとしている。これによつてはじめて真実が発見され、個人の権利が真に適正に保障されるからにほかならない。したがつて、いやしくも法律上の実体的権利義務の存否について争いがあれば、これを終局的に確定するには、司法裁判所において公開の法廷で対審の下に厳格な証拠調を経た上で判決することを要するのであり、そうでなければ、現行憲法の根本精神を無にするものといわなければならない。

 然るところ、家事審判法九条一項乙類は、夫婦の同居その他夫婦間の協力扶助に関する事件を審判事項として非訟事件手続法に準ずる手続により非公開の手続で審理し、決定の形式を以て裁判すべきものと規定している。しかし、同条項にいう「夫婦の同居に関する処分」とは、夫婦の同居義務の存否を終局的に確定する趣旨のものではなく、夫婦の同居義務の存することを前提として、その同居の具体的な態様、場所、時期等に関する処分であると解すべきである。けだし、民法は同居の具体的な態様、場所、時期等について一定の基準を規定していないのであるから、家庭裁判所がこれらの点について、裁量権により具体的にこれを形成する必要があり、かかる裁判は本質的に非訟事件の裁判であつて、公開の法廷における対審及び判決によることを要しないものであるからである。即ち、家事審判による処分には形成力は生じるが、その前提要件についての既判力はないと解する。この関係は、仮処分を命ずるには、一応本案の請求権の存することを前提として、仮処分の裁判をなすのであるが、その裁判が確定してもその基礎である請求権の存在は、本案の訴訟で確定されるものであるのと類似していると考える。若しこれに反し家事審判において、かかる形成的な処分の外に、基本たる同居の義務の存否までも終局的に確定するものとすれば、国民の裁判を受ける権利の剥奪となり憲法三二条、八二条に違反するものと言わざるを得ない。けだし、訴訟事件とするか非訟事件とするかは、単なる立法上の便宜の問題ではなく、実体的権利義務の存否の確定は飽くまで訴訟手続によるべきもので、これを回避するため非訟事件手続とすることは、前記憲法の規定上許されないところであるからである。(戦時民事特別法を想起すべきである。昭和三五年七月六日当裁判所大法廷決定(昭和二六年(ク)第一〇九号、民集第一四巻第九号一六五七頁)は戦時民事特別法一九条二項に関して、「若し性質上純然たる訴訟事件につき、当事者の意思いかんに拘らず終局的に、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判が、憲法所定の例外の場合を除き、公開の法廷における対審及び判決によつてなされないとするならば、それは憲法八二条に違反すると共に、同三二条が基本的人権として裁判請求権を認めた趣旨をも没却するものといわねばならない。」と判示している。)」

「判例 S31.10.31 大法廷・決定 昭和24(ク)52 家屋明渡調停事件の決定に対する再抗告につきなした決定に対する抗告(第10巻10号1355頁)判示事項:

  調停に代わる裁判の合憲性。

多数意見のように、本件決定は裁判所という機関でなされた一種の裁判であるから、憲法三二条に違反しないというならば、同条の保障は単に裁判所(最高裁判所のほかは立法で自由に定められる)でなされればよいという全く形式的なものになり、単にこれだけの保障なら、すべて司法権は裁判所に属するという憲法七六条だけで十分なはずである。また実体法的に厳正に法律を適用しなくともよい、訴訟手続において前記諸原則に従わなくともよいというのでは、法律をもつてしても裁判所の裁判を受ける権利を奪うことはできないとしている折角の憲法の保障は、実質的に内容がほとんど空疎なものになつてしまう。要するに、三権分立、司法権、法律上の争訟、法治国というふうに考えをめぐらしただけでも、憲法三二条の裁判を受ける権利の保障は、実質的な内容をもつべきものであることを理解するに足ると思う。

 しかるに、前記「調停に代わる裁判」は、実体法の面からいつても、訴訟手続の面からいつても、法律の厳正な適用による裁判ではなく、裁判所が職権により多分に主観的・便宜主義的・行政的に独裁するものたるに過ぎない。これは本質において憲法三二条にいわゆる裁判すなわち真の裁判ではなく、裁判という名を冒称する擬装の裁判であると言わなければならぬ。しかもかかる擬装の裁判の確定したときに、裁判上の和解と同一の効力、したがつて確定判決と同一の効力(金銭債務臨時調停法一〇条、民訴二〇三条)を認めるこの制度は、憲法三二条にいわゆる裁判所の裁判を受ける権利を奪うことになるものであつて、違憲な立法であると断ぜざるをえない。したがつてこれを適用しまたは、その適用を是認した原決定等は違憲である。それ故論旨は理由があり、本件名古屋高等裁判所の原決定、名古屋地方裁判所の抗告決定、中川簡易裁判所の調停に代わる決定は、何れも破棄するを相当とする。(その余の論旨については判断を略する)」

以上の判決からみれば、無効確認訴訟であった第一の入会拒否に対する判決が、入会拒否に対する当時の絶対に無効にはならないという前提の下でなされたものであって、実際にも入会拒否が無効確認された事例はないのであり、「手続保障という点を強調すると、なんらかの事情によって訴訟で十分に主張する機会が与えられなかった場合には、許容性が存在しないわけですから、既判力の正当化根拠が失われます。したがって、あらためて争う機会を与えるべき」であり、「手続保障が正当化根拠である以上、まったく手続保障という面を無視することはできない」のであって原審判決は憲法三二条にいわゆる裁判所の裁判を受ける権利を奪うことになるものであつて、違憲であるといいうる。従って既判力の判断には誤りがある。

第二、法人としての株式会社日本経済研究所と代表者個人の関係

次の最高裁判所の判例に違反する。

「憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり」、憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項の保護を受けるものであるとするのに対して、本件事件においては一顧だにしていない。

従って違憲であり、上告理由となる。

但し、無効確認訴訟による個人とは、法人は異なっており、両者は併合して審理されるべきではなく、被上告人(債務者)が代表取締役の信条をもって差別し、経済的な営業の権利を脅かしていることについては、違憲であるといわざるをえない。

被上告人(債務者)が個人の無効確認訴訟においての判決をもって、法人に当てはめてすでに既判力があるかのように錯覚しているのは、法令の適用の誤りである。

法人と、個人とは違っており、個人は死亡と同時に法的能力がなくなるが、法人は代表者個人とは違い、永久に生き延びるのであって、その両者は異なっているのである。

被上告人(債務者)が故意に個人での事業者と、法人での事業者とについて、個人での事業者の行為をもって法人での事業者の行為としているのは故意であり、その入会のモラトリアムは違法性が強く、単独で株式会社日本経済研究所の法人のみでの訴訟も可能であると考えられる。

個人業者と法人とは同時に併存していたのである。

以上の通りに、個人業者と、法人業者とを混同している原審判決には法令適用の誤りがある。

「八幡製鉄事件最高裁判所判決(最大判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁)

最 高 裁 判 所 判 例 集 判 決 全 文 表 示

◆ S45.06.24 大法廷・判決 昭和41(オ)444 取締役の責任追及請求

判例 S45.06.24 大法廷・判決 昭和41(オ)444 取締役の責任追及請求(第24巻6号625頁)

判示事項:

  一、政治資金の寄附と会社の権利能力

二、会社の政党に対する政治資金の寄附の自由と憲法三章

三、商法二五四条ノ二の趣旨

四、取締役が会社を代表して政治資金を寄附する場合と取締役の忠実義務

要旨:

  一、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎり、会社の権利能力の範囲に属する行為である。

二、憲法三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものであるから、会社は、公共の福祉に反しないかぎり、政治的行為の自由の一環として、政党に対する政治資金の寄附の自由を有する。

三、商法二五四条ノ二の規定は、同法二五四条三項、民法六四四条に定める善管義務をふえんし、かつ、一層明確にしたにとどまり、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものではない。

四、取締役が会社を代表して政治資金を寄附することは、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内においてなされるかぎり、取締役の忠実義務に違反するものではない。

参照・法条:

  民法43条,民法644条,商法166条1項1号,商法254条ノ2,商法254条3項,憲法3章

内容:

 件名  取締役の責任追及請求 (最高裁判所 昭和41(オ)444 大法廷・判決 棄却)

 原審  S41.01.31 東京高等裁判所

主    文

     本件上告を棄却する。

     上告費用は上告人の負担とする。

理    由

 上告代理人有賀正明、同吉田元、同長岡邦の上告理由第二点ならびに上告人の上告理由第一および第二について。

 原審の確定した事実によれば、訴外八幡製鉄株式会社は、その定款において、「鉄鋼の製造および販売ならびにこれに附帯する事業」を目的として定める会社であるが、同会社の代表取締役であつた被上告人両名は、昭和三五年三月一四日、同会社を代表して、自由民主党に政治資金三五〇万円を寄附したものであるというにあるところ、論旨は、要するに、右寄附が同会社の定款に定められた目的の範囲外の行為であるから、同会社は、右のような寄附をする権利能力を有しない、というのである。

 会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するのを相当とする。そして必要なりや否やは、当該行為が目的遂行上現実に必要であつたかどうかをもつてこれを決すべきではなく、行為の客観的な性質に即し、抽象的に判断されなければならないのである(最高裁昭和二四年(オ)第六四号・同二七年二月一五日第二小法廷判決・民集六巻二号七七頁、同二七年(オ)第一〇七五号・同三〇年一一月二九日第三小法廷判決・民集九巻一二号一八八六頁参照)。

 ところで、会社は、一定の営利事業を営むことを本来の目的とするものであるから、会社の活動の重点が、定款所定の目的を遂行するうえに直接必要な行為に存することはいうまでもないところである。しかし、会社は、他面において、自然人とひとしく、国家、地方公共団体、地域社会その他(以下社会等という。)の構成単位たる社会的実在なのであるから、それとしての社会的作用を負担せざるを得ないのであつて、ある行為が一見定款所定の目的とかかわりがないものであるとしても、会社に、社会通念上、期待ないし要請されるものであるかぎり、その期待ないし要請にこたえることは、会社の当然になしうるところであるといわなければならない。そしてまた、会社にとつても、一般に、かかる社会的作用に属する活動をすることは、無益無用のことではなく、企業体としての円滑な発展を図るうえに相当の価値と効果を認めることもできるのであるから、その意味において、これらの行為もまた、間接ではあつても、目的遂行のうえに必要なものであるとするを妨げない。災害救援資金の寄附、地域社会への財産上の奉仕、各種福祉事業への資金面での協力などはまさにその適例であろう。会社が、その社会的役割を果たすために相当を程度のかかる出捐をすることは、社会通念上、会社としてむしろ当然のことに属するわけであるから、毫も、株主その他の会社の構成員の予測に反するものではなく、したがつて、これらの行為が会社の権利能力の範囲内にあると解しても、なんら株主等の利益を害するおそれはないのである。

 以上の理は、会社が政党に政治資金を寄附する場合においても同様である。憲法は政党について規定するところがなく、これに特別の地位を与えてはいないのであるが、憲法の定める議会制民主主義は政党を無視しては到底その円滑な運用を期待することはできないのであるから、憲法は、政党の存在を当然に予定しているものというべきであり、政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。そして同時に、政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、政党のあり方いかんは、国民としての重大な関心事でなければならない。したがつて、その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様として政治資金の寄附についても例外ではないのである。論旨のいうごとく、会社の構成員が政治的信条を同じくするものでないとしても、会社による政治資金の寄附が、特定の構成員の利益を図りまたその政治的志向を満足させるためでなく、社会の一構成単位たる立場にある会社に対し期待ないし要請されるかぎりにおいてなされるものである以上、会社にそのような政治資金の寄附をする能力がないとはいえないのである。上告人のその余の論旨は、すべて独自の見解というほかなく、採用することができない。要するに、会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げないのである。

 原判決は、右と見解を異にする点もあるが、本件政治資金の寄附が八幡製鉄株式会社の定款の目的の範囲内の行為であるとした判断は、結局、相当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。

 上告代理人有賀正明、同吉田元、同長岡邦の上告理由第一点および上告人の上告理由第四について。

 論旨は、要するに、株式会社の政治資金の寄附が、自然人である国民にのみ参政権を認めた憲法に反し、したがつて、民法九〇条に反する行為であるという。

 憲法上の選挙権その他のいわゆる参政権が自然人たる国民にのみ認められたものであることは、所論のとおりである。しかし、会社が、納税の義務を有し自然人たる国民とひとしく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場において、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべき理由はない。のみならず、憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり、会社によつてそれがなされた場合、政治の動向に影響を与えることがあつたとしても、これを自然人たる国民による寄附と別異に扱うべき憲法上の要請があるものではない。論旨は、会社が政党に寄附をすることは国民の参政権の侵犯であるとするのであるが、政党への寄附は、事の性質上、国民個々の選挙権その他の参政権の行使そのものに直接影響を及ぼすものではないばかりでなく、政党の資金の一部が選挙人の買収にあてられることがあるにしても、それはたまたま生ずる病理的現象に過ぎず、しかも、かかる非違行為を抑制するための制度は厳として存在するのであつて、いずれにしても政治資金の寄附が、選挙権の自由なる行使を直接に侵害するものとはなしがたい。会社が政治資金寄附の自由を有することは既に説示したとおりであり、それが国民の政治意思の形成に作用することがあつても、あながち異とするには足りないのである。所論は大企業による巨額の寄附は金権政治の弊を産むべく、また、もし有力株主が外国人であるときは外国による政治干渉となる危険もあり、さらに豊富潤沢な政治資金は政治の腐敗を醸成するというのであるが、その指摘するような弊害に対処する方途は、さしあたり、立法政策にまつべきことであつて、憲法上は、公共の福祉に反しないかぎり、会社といえども政治資金の寄附の自由を有するといわざるを得ず、これをもつて国民の参政権を侵害するとなす論旨は採用のかぎりでない。

 以上説示したとおり、株式会社の政治資金の寄附はわが憲法に反するものではなく、したがつて、そのような寄附が憲法に反することを前提として、民法九〇条に違反するという論旨は、その前提を欠くものといわなければならない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用しがたい。

 上告代理人有賀正明、同吉田元、同長岡邦の上告理由第三点および上告人の上告理由第三について。

 論旨は、要するに、被上告人らの本件政治資金の寄附は、商法二五四条ノ二に定める取締役の忠実義務に違反するというのである。

 商法二五四条ノ二の規定は、同法二五四条三項民法六四四条に定める善管義務を敷衍し、かつ一層明確にしたにとどまるのであつて、所論のように、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の、高度な義務を規定したものとは解することができない。

ところで、もし取締役が、その職務上の地位を利用し、自己または第三者の利益のために、政治資金を寄附した場合には、いうまでもなく忠実義務に反するわけであるが、論旨は、被上告人らに、具体的にそのような利益をはかる意図があつたとするわけではなく、一般に、この種の寄附は、国民個々が各人の政治的信条に基づいてなすべきものであるという前提に立脚し、取締役が個人の立場で自ら出捐するのでなく、会社の機関として会社の資産から支出することは、結果において会社の資産を自己のために費消したのと同断だというのである。会社が政治資金の寄附をなしうることは、さきに説示したとおりであるから、そうである以上、取締役が会社の機関としてその衝にあたることは、特段の事情のないかぎり、これをもつて取締役たる地位を利用した、私益追及の行為だとすることのできないのはもちろんである。論旨はさらに、およそ政党の資金は、その一部が不正不当に、もしくは無益に、乱費されるおそれがあるにかかわらず、本件の寄附に際し、被上告人らはこの事実を知りながら敢て目をおおい使途を限定するなど防圧の対策を講じないまま、漫然寄附をしたのであり、しかも、取締役会の審議すら経ていないのであつて、明らかに忠実義務違反であるというのである。ところで、右のような忠実義務違反を主張する場合にあつても、その挙証責任がその主張者の負担に帰すべきことは、一般の義務違反の場合におけると同様であると解すべきところ、原審における上告人の主張は、一般に、政治資金の寄附は定款に違反しかつ公序を紊すものであるとなし、したがつて、その支出に任じた被上告人らは忠実義務に違反するものであるというにとどまるのであつて、被上告人らの具体的行為を云々するものではない。もとより上告人はその点につき何ら立証するところがないのである。したがつて、論旨指摘の事実は原審の認定しないところであるのみならず、所論のように、これを公知の事実と目すべきものでないことも多言を要しないから、被上告人らの忠実義務違反をいう論旨は前提を欠き、肯認することができない。いうまでもなく取締役が会社を代表して政治資金の寄附をなすにあたつては、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内において、その金額等を決すべきであり、右の範囲を越え、不相応な寄附をなすがごときは取締役の忠実義務に違反するというべきであるが、原審の確定した事実に即して判断するとき、八幡製鉄株式会社の資本金その他所論の当時における純利益、株主配当金等の額を考慮にいれても、本件寄附が、右の合理的な範囲を越えたものとすることはできないのである。

 以上のとおりであるから、被上告人らがした本件寄附が商法二五四条ノ二に定める取締役の忠実義務に違反しないとした原審の判断は、結局相当であつて、原判決に所論の違法はなく、論旨はこの点についても採用することができない。

 上告人の上告理由第五について。

 所論は、原判決の違法をいうものではないから、論旨は、採用のかぎりでない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官入江俊郎、同長部謹吾、同松田二郎、同岩田誠、同大隅健一郎の意見があるほか、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

 裁判官松田二郎の意見は、次のとおりである。

 本件は、いわゆる八幡製鉄株式会社の政治献金事件に関し、その株主である上告人の提起した株主の代位訴訟(商法二六七条)に基づく訴であり、原審は、上告人の請求を排斥した。私は、その結果をば正当と考えるものである。しかし、その理由は、必ずしも多数意見と同様ではない。ただ、本件の一審判決以来、これに関する多くの批評、論文が発表されていて、細別するときは、意見はきわめて区々であるといえよう。私の意見は、次のとおりである。

 (一) 多数意見は、まず、会社の権利能力について、次のごとくいうのである。曰く「会社は定款に定められた目的の範囲内において権利能力を有するわけであるが、目的の範囲内の行為とは、定款に明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行するうえに直接または間接に必要な行為であれば、すべてこれに包含されるものと解するを相当とする」と。これは、用語上、多少の差異あるは別として、当裁判所従来の判例のいうところと同趣旨であるといえよう。そして、多数意見は、会社による政治資金の寄附について、曰く「会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果すためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げない」と。これによると、多数意見は、会社による政治献金を無制限に許容するものでなく、「会社の社会的役割を果すためになされたものと認められるかぎり」との制限の下に、これを是認するものと一応解される。

 しかし、他面において、多数意見は、会社の行う政治献金が政党の健全な発展のための協力であることを強調するのである。曰く、「政党は議会制民主主義を支える不可欠の要素なのである。そして同時に、政党は国民の政治意思を形成する最も有力な媒体であるから、政党のあり方いかんは、国民としての重大な関心事でなければならない。したがつて、その健全な発展に協力することは、会社に対しても、社会的実在としての当然の行為として期待されるところであり、協力の一態様としての政治資金の寄附についても例外ではないのである」(傍点は、私の附するところである)と。そして、多数意見がこのように、会社による政治資金の寄附の根拠を「会社の社会的実在」ということに置く以上、自然人もまた社会的実在たるからには、両者は、この点において共通の面を有することとなろう。そして、私の見るところでは、多数意見は、この面を強調して会社と自然人とをパラレルに考えるもののごとく思われるのである。多数意見はいう。「会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附もまさにその自由の一環であり……」と。かくて、多数意見は、会社による政治資金の寄附の自由を自然人の政治資金の寄附の自由と同様に解するがごとく思われる。しかして、自然人が政治資金の寄附のためその者の全財産を投入しても法的には何等とがむべきものを見ない以上、多数意見は、会社による政治資金の寄附をきわめて広く承認するもののごとくさえ解されるのである。

 この点に関連して注目すべきは、政治献金についての取締役の責任について多数意見のいうところである。多数意見はいう。「取締役が会社を代表して政治資金の寄附をなすにあたつては、その会社の規模、経営実績その他社会的経済的地位および寄附の相手方など諸般の事情を考慮して、合理的な範囲内においてその金額等を決すべきであり、右の範囲を越え、不相応な寄附をなすがごときは取締役の忠実義務に違反するものというべきである」と。思うに、取締役が会社を代表して政治献金をするについて、多数意見のいう右の諸点を考慮すべきことは当然であろう。しかしながら、多数意見が政治資金の寄附に関し、取締役に対し対会社関係において右のごとき忠実義務に基づく厳格な制約を課するにかかわらず、会社自体のなす政治献金について何等かかる制約の存在に言及しないのは、注目すべきことであろう。そして、多数意見のいうところより判断すれば、あるいは多数意見は、会社自体のなす政治資金の寄附については、取締役に課せられた制限とは必ずしも関係なく、ただ、「定款所定の目的の範囲内」なるか否かの基準によつて、その寄附の有効無効を決するとしているものとも思われる。しかし、判例上、会社の行為が定款所定の目的の範囲外として無効とされたものを容易に見出し難い以上、多数意見によるときは、会社による政治資金の寄附は、実際上、きわめて広く肯定され、あるいは、これをほとんど無制限に近いまで肯定するに至る虞なしといえないのである。私としては、このような見解に対して疑を懐かざるを得ないのである。

 思うに、会社は定款所定の目的の範囲内において権利能力を有するとの見解は、民法四三条をその基礎とするものであるが、右法条は、わが国の民商法が立法の沿革上、大陸法系に属するうちにあつて、いわば例外的に英米法に従い、そのいわゆる「法人の目的の範囲外の行為」(ultra Vires)の法理の流を汲むものとせられている。そして、もし、略言することが許されるならば、この法理は、法人擬制説によるものであつて、法人はその目的として示されているところを越えて行動するとき、それは効なしとするものといえよう。そこでは、「定款所定の目的」と「権利能力」との間に、深い関連が認められているのである。もつとも、理論的に考察するとき、「定款所定の目的の範囲」と「権利能力の範囲」とは、本来別個の問題であるべきであるが、わが国の判例がかかる理論に泥むことなく、法人は「定款所定の目的の範囲内」において「権利能力」を有するものとし、会社についてはその目的の範囲をきわめて広く解することによつて、会社の権利能力を広範囲に認めて来たことを、私は意味深く感じ、判例のこの態度に賛するものである。判例法とは、かくのごとき形態の下に形成されて行くものであろう。そして、他の法人に比して、会社についてその権利能力の範囲を特に広く認めるに至つたのは、会社の営利性と取引の安全の要請に基づくものと解されるのである。

 思うに、法律上、会社は独立の人格を有し、社員の利益とは異るところの会社自体―企業自体―の利益を有するものではあるが、営利法人である以上、会社は単に会社自体の利益を図ることだけでは足りず、その得た利益を社員に分配することを要するのである。株式会社について、株主の利益配当請求権が「固有権」とされているのは、このことを示すのである。ここに、会社の特質が存在するのであつて、いわば、会社は、本来はこのような営利目的遂行のための団体であり、そのため権利能力を付与されたものといえよう。それは本来、政治団体でもなく、慈善団体でもないのである。そして、会社が企業として活動をなすからには、その「面」において権利能力を広範囲に亘つて認めることが当然に要請される。けだし、これによつて、会社は、営利的活動を充分になし得るし、また、取引の安全を確保し得るからである。

 そして、近時、英米法上において ult a vires の法理を制限しまたは廃止しようとする傾向を見、わが国において、学説上、会社につき「目的による制限」を認めないものが抬頭しているのは、叙上のことに思を致すときは、容易にこれを理解し得るのである(この点に関し、a博士が明治の末葉において夙に民法四三条が会社に適用がないと主張されたことに対し、その慧眼を思うものである。もつとも、私が「目的の範囲」による制限を認めることは、既に述べたところである)。

 そして、叙上の見地に立つて、わが国の判例を見るとき、近時のもののうちにさえ、会社以外の法人、たとえば農業協同組合につき、金員貸付が「組合の目的の範囲内に属しない」としたもの(最高裁判所昭和四〇年(オ)第三四八号同四一年四月二六日判決、民集二〇巻四号八四九頁)を見るにかかわらず、会社については、たとえば、大審院明治三七年五月一〇日判決が「営業科目ハ……定款ニ定メタルモノニ外ナラサレハ取締役カ定款ニ反シ営業科目ニ属セサル行為ヲ為シタルトキハ会社ハ之ニ関シ責任ヲ有セス」(民録一〇輯六三八頁)という趣旨を判示したなど、きわめて旧時における二、三の判例を除外すれば、会社の行為をもつて定款所定の目的の範囲外としたものを大審院並びに最高裁判所の判例中に見出し難いのである。換言すれば、判例は、表面上、会社につき「定款所定の目的による制限」を掲げながら、実際問題としては、会社の行為につき、この制限を越えたものを認めなかつたことを示すものといえよう。これは、わが国の判例が会社については英米法上の ultra vires の制限撤廃に近い作用を夙に行つていたのである。

 しかし、会社に対してこのように広範囲の権利能力の認められるのは、前述のように、会社企業の営利的活動の自由、取引の安全の要請に基づくものである。したがつて、会社といえどもしからざる面――ことに営利性と相容れざるものともいうべき寄附――において、その権利能力の範囲を必ずしも広く認めるべき必要を見ないものといえよう。私は、アメリカ法について知るところが少ないのではあるが、そこでは、会社の寄附に関し、最初は、それが会社の利益のためになされた場合にかぎり、その効力を認め、慈善のための理由だけの寄附は認められなかつたこと、その寄附が会社事業に益し、または、従業員の健康、福祉を増進するためのものでもあればこれを認めるに至つたこと、そして、次第に慈善事業のための寄附が広く認められるに至つたとされることに興味を覚える。それは会社制度の発展に従い、会社企業の行動が社会の各方面に影響することが大となるに伴つて、会社がある種の寄附をすることが、いわば、その「社会的責任」として認められるに至つたものといい得よう。それは会社として義務を負担し得る範囲の拡大であり、この点で「権利能力」の拡大といい得るにしても、しかし、それは、会社が本来の企業としての性格に基づいて、広範囲に亘つて権利義務の主体たり得ることは、面を異にし、これとは別個の法理に従うものであり、そこには自ら制約があるものと思うのである。詳言すれば、会社の権利能力は企業としての営利的活動の面においては客観的、抽象的に決せられ、その範囲も広いのに対し、然らざる面、ことに寄附を行う面においては、会社の権利能力は個別的、具体的に決せられ、その範囲も狭小というべきであろう。そして、この後者について、会社は各個の具体的場合によつて「応分」の寄附が認められるに過ぎないのである。この点に関し、商法を企業法とし、この見地より会社法を考察したウイーラントが公共の目的や政治的プロパガンダなどのために、会社の利得を処分することは、営利会社の目的と合致しないとしてこれを否定しながら、業務上通常の範囲に属すると認められる贈与は許容されるとし、また、道義的、社会的義務の履行――たとえば、従業員や労働者のための年金や保険の基金をつくること――のため会社の利得を用いることは許される旨(Karl Wieland,Handelsrecht,Bd.II,S.219)の主張をしているのは、たとえ、彼の所説が既に旧時のものに属するにせよ、会社の営利性と会社による寄附との関係の本質に言及したものとして、意味深く覚えるのである。

 私の解するところによれば、会社の行う寄附は、それが会社従業員の福祉のため、会社所在の市町村の祭典のため、社会一般に対する慈善事業のため、あるいは、政党のためなど、その対象を異にするによつて、各別に考察すべきものであり、その間に段階的にニユアンスの差があるものと考える。そして、その寄附の有効無効は、その寄附の相手方と会社との関係、その会社の規模、資産状態等諸般の事情によつて、会社の権利能力の範囲内に属するや否や決せられるものである。私は、この点につき、多数意見――先に引用したところである――が、「会社は自然人たる国民と同様国や政党の特定の政策を支持、推進または反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのである。政治資金の寄附も正にその自由の一環である」とし、会社と自然人の行う政治資金の寄附を同様に解するごとくいうことに対して大なる疑を持つ。けだし、自然人は、自己の有する全財産をある政党に寄附する自由があるにしても、会社についてはこれと同様に論ずべきではないからである。

 もつとも、私の叙上の見解に対し、かかる見解を採るときは、会社による寄附が「応分」なるか否かを具体的場合について決すべきこととなり、寄附の効力がきわめて不安定になるとの非難があるであろう。しかし、それは、従来、「正当の事由」ということが、各場合の状況により具体的に判断されるに類するといえよう。そして、会社による寄附の効力は、新しく提起された問題であるが、やがて判例の積み重ねによつてその基準が次第に明らかになつてゆくであろう(会社関係において画一的基準が明らかでないことは、望ましいことではない。しかし、止むを得ない場合には、かかることを生じるのである。たとえば、株式の引受または株金払込の欠陥がある場合、それがいかなる程度のもののとき会社の設立無効を来すかは、具体的に決める外はないのである)。そして、その献金が会社の権利能力の範囲外の行為として無効と認められる場合でも、相手方の保護を全く欠くわけではない。何となれば、これを約した会社の代表取締役は、民法一一七条により相手方に対しその責に任ずべきものだからである。かくて、叙上に照して多数意見を見るならば、それは会社がその企業としての営利的活動の面において認められた広範囲の権利能力をば、不当に会社の行う政治献金にまで拡大したもののごとく思われる。そして、多数意見によるときは、会社の代表者が恣意的に当該会社としては不相応の巨額の政治献金をしたときでも、それが有効となり、その事により会社の経営が危殆に陥ることすら生じ得るであろう。かかることは、企業の維持の点よりしても、また、社会的観点よりしても、寒心すべきはいうまでもないのである。

 (二) 会社による政治資金のための寄附の効力は、叙上のごとくである。しかし、会社の代表者として政治資金のための寄附をした取締役の会社に対する責任は、別個に考察すべき問題である。したがつて、会社の代表者として行なつたかかる寄附が無効であり、会社が既にその出捐を了したときは、その取締役は、これにつき会社に対して当然その責に任ずるが、たとえそのような寄附が会社の行為として対外的に有効のときであつても、その寄附をした取締役の対会社の責任は生じ得るのである。これは、会社の権利能力の問題と取締役の対会社関係における善管義務、忠実義務の問題とは、別個に考察されるべきものであるからである。たとえば、会社の代表取締役が自己の個人的利益のため政治資金を寄附したところ、それが会社の行為として有効と認められた場合において、かくのごときことを生じ得よう。

 (三) 今、叙上論じたところに照して本件をみるに、原審認定の事実関係の下では、被上告人らが訴外八幡製鉄株式会社の代表取締役として自由民主党に対してした政治資金三五〇万円の本件寄附は、右会社の目的の範囲内の行為であり、かつ、取締役の会社に対する善管義務、忠実義務の違反ともなり得ないものと解される。したがつて、訴外会社の株主たる上告人が株主の代位訴訟に基づき被上告人らに対して提起した訴につき、上告人の請求を棄却した原審の判断は正当であり、本件上告は理由なきに帰するのである。

 裁判官入江俊郎、同長部謹吾、同岩田誠は、裁判官松田二郎の意見に同調する。

 裁判官大隅健一郎の意見は、つぎのとおりである。

 私は、本判決の結論には異論はないが、多数意見が会社の権利能力について述べるところには、つぎの諸点において賛成することができない。

 (一) 多数意見は、会社の権利能力についても民法四三条の規定が類推適用され、会社は定款によつて定まつた目的の範囲内においてのみ権利を有し義務を負う、とする見解をとつている。これは、会社は、自然人と異なり、一定の目的を有する人格者であるから、その目的の範囲内においてのみ権利義務の主体となりうるのが当然であるのみならず、会社の社員は、会社財産が定款所定の目的のために利用されることを期待して出資するのであるから、その社員の利益を保護するためにも、会社の権利能力を定款所定の目的の範囲内に限定する必要がある、という理由に基づくものではないかと推測される。しかしながら、会社の目的と権利能力との関係の問題は、単に会社の法人たる性質から観念的、抽象的にのみ決するのは不適当であつて、会社の活動に関連のある諸利益を比較衡量して、これをいかに調整するのが妥当であるか、の見地において決すべきものと考える。そして、このような見地において主として問題となるのは、会社財産が定款所定の目的のために使用されることを期待する社員の利益と、会社と取引関係に立つ第三者の利益である。

 おもうに、会社が現代の経済を担う中核的な存在として、その活動範囲はきわめて広汎にわたり、日常頻繁に大量の取引を行なつている実情のもとにおいては、それぞれの会社の定款所定の目的は商業登記簿に登記されているとはいえ、会社と取引する第三者が、その取引に当たり、一々その取引が当該会社の定款所定の目的の範囲内に属するかどうかを確かめることは、いうべくして行ないがたいところであるのみならず、その判断も必ずしも容易ではなく、一般にはそれが会社の定款所定の目的といかなる関係にあるかを顧慮することなく取引するのが通常である。したがつて、いやしくも会社の名をもつてなされる取引行為については、それがその会社の定款所定の目的の範囲内に属すると否とを問わず、会社をして責任を負わせるのでなければ、取引の安全を確保し、経済の円滑な運営を期待することは困難であつて、いたずらに会社に責任免脱の口実を与える結果となるのを免れないであろう。事実審たる下級裁判所の判決をみると、多数意見と同様の見解をとる従来の判例の立場に立ちながらも、実際上会社の権利能力の範囲をできるだけ広く認める傾向にあり、中には判例の立場をふみ越えているものも見られるのは、上述の事情を敏感かつ端的に反映するものというほかないと思う。それゆえ、会社の権利能力は定款所定の目的によつては制限されないものと解するのが、正当であるといわざるをえない。公益法人については、公益保護の必要があり、また、その対外的取引も会社におけるように広汎かつ頻繁ではないから、民法四三条がその権利能力を定款または寄附行為によつて定まつた目的の範囲内に制限していることは、必ずしも理由がないとはいえない。しかし、商法は、公益法人に関する若干の規定を会社に準用しながら(たとえば、商法七八条二項・二六一条三項等)、とくにこの規定は準用していないのであるから、同条は公益法人にのみ関する規定と解すべきであつて、これを会社に類推適用することは、その理由がないばかりでなく、むしろ不当といわなければならない。もちろん、社員は会社財産が定款所定の目的以外に使用されないことにつき重要な利益を有し、その利益を無視することは許されないが、その保護は、株式会社についていえば、株主の有する取締役の違法行為の差止請求権(商法二七二条)・取締役の解任請求権(商法二五七条三項)、取締役の会社に対する損害賠償責任(商法二六六条)などの会社内部の制度にゆだねるべきであり、また、定款所定の目的は会社の代表機関の代表権を制限するものとして(ただし、その制限は善意の第三者には対抗できないが。)意味を有するものと解すべきであると考える。従来、会社の能力の目的による制限を認めていたアメリカにおいても、そのいわゆる能力外の法理(ultra vires doctrine)を否定する学説、立法が漸次有力になりつつあることは、この点において参考とするに足りるであろう。

 以上のようにして、会社の権利能力は定款所定の目的によつては制限されないものと解すべきであるが、しかし、すべての会社に共通な営利の目的によつて制限されるものと解するのが正当ではないかと考える。法は、営利法人と公益法人とを区別して、これをそれぞれ別個の規制に服せしめているのであるから、この区別をも無視するような解釈は行きすぎといわざるをえないからである。そして、このように解しても、客観的にみて経済的取引行為と判断される行為は一般に営利の目的の範囲内に属するものと解せられるから、格別取引安全の保護に欠けるところはないであろう。

 (二) 多数意見は、会社の権利能力は定款に定められた目的の範囲内に制限されると解しながら、災害救援資金の寄附、地域社会への財産上の奉仕、政治資金の寄附なども、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとすることにより、これを会社の権利能力の範囲内に属するものと解している。それによると、会社は「自然人とひとしく、国家、地方公共団体、地域社会その他(以下社会等という。)の構成単位たる社会的実在なのであるから、それとしての社会的作用を負担せざるを得ないのであつて、ある行為が一見定款所定の目的とかかわりがないものであるとしても、会社に、社会通念上、期待ないし要請されるものであるかぎり、その期待ないし要請にこたえることは、会社の当然になしうるところであるといわなければならない。そしてまた、会社にとつても、一般に、かかる社会的作用に属する活動をすることは、無益無用のことではなく、企業体としての円滑な発展を図るうえに相当の価値と効果を認めることもできるのであるから、その意味において、これらの行為もまた、間接ではあつても、目的遂行のうえに必要なものであるとするを妨げない。」というのである。私は、この所論の内容にとくに異論を有するものではないが、しかし、このような理論をもつて、右のような行為が会社の定款所定の目的の範囲内の行為であり、したがつて、会社の権利能力の範囲内に属するとする考え方そのものに、疑問を抱かざるをえないのである。

 多数意見が類推適用を認める民法四三条にいわゆる定款によつて定まつた目的とは、それぞれの会社の定款の規定によつて個別化された会社の目的たる事業をいうのであつて、これを本件訴外八幡製鉄株式会社についていえば、「鉄鋼の製造および販売ならびにこれに附帯する事業」にほかならない。それは、すべての会社に共通な営利の目的とは異なるのである。しかるに、多数意見によれば、災害救援資金の寄附、地域社会への財産的奉仕、政治資金の寄附などは、会社が自然人とひとしく社会等の構成単位たる社会的実在であり、それとしての社会的作用を負担せざるをえないことから、会社も当然にこれをなしうるものと認められるというのである。したがつて、それが会社の企業体としての円滑な発展をはかるうえに相当の価値と効果を有するにしても、定款により個別化された会社の目的たる事業とは直接なんらのかかわりがなく、その事業が何であるかを問わず、すべての会社についてひとしく認めらるべき事柄にほかならない。しかのみならず、そのような行為が、社会通念上、社会等の構成単位たる社会的実在としての法人に期待または要請される点においては、程度の差はありうるとしても、ひとり会社のみにかぎらず、各種協同組合や相互保険会社などのようないわゆる中間法人、さらには民法上の公益法人についても異なるところがないといわざるをえない。その意味において、多数意見のように、右のような行為についての会社の権利能力の問題を会社の定款所定の目的と関連せしめて論ずることは、意味がないばかりでなく、かえつて牽強附会のそしりを免れないのではないかと思う。

 多数意見のように定款所定の目的の範囲内において会社の権利能力を認めるにせよ、私のようにすべての会社に共通な営利の目的の範囲内においてそれを認めるにせよ、なおそれとは別に、法人たる会社の社会的実在たることに基づく権利能力が認めらるべきであり、さきに引用した多数意見の述べるところは、まさにかような意味における会社の権利能力を基礎づけるのに役立つものといえるのである。そして、本件政治資金の寄附が訴外八幡製鉄株式会社の権利能力の範囲内に属するかどうかも、かかる意味における会社の権利能力にかかわる問題として論ぜらるべきものと考えられるのである。

 (三) 以上のように、災害救援資金の寄附、地域社会への財産上の奉仕、政治資金の寄附のごとき行為は会社の法人としての社会的実在であることに基づいて認められた、通常の取引行為とは次元を異にする権利能力の問題であると解する私の立場においては、その権利能力も社会通念上相当と認められる範囲内に限らるべきであつて、会社の規模、資産状態、社会的経済的地位、寄附の相手方など諸般の事情を考慮して社会的に相当ないし応分と認められる金額を越える寄附のごときは、会社の権利能力の範囲を逸脱するものと解すべきではないかと考えられる。このような見解に対しては、当然、いわゆる相当(応分)の限度を越えてなされた行為は、相手方の善意悪意を問わず、無効であるにかかわらず、その相当性の限界が不明確であるから、法的安定を妨げる、とする批判が予想される。しかし、上述のごとき行為については、通常の取引行為におけるとは異なり、取引安全の保護を強調する必要はなく、むしろ会社財産が定款所定の目的を逸脱して濫費されないことについて有する社員の利益の保護が重視さるべきものと考える。

 叙上の点につき多数意見がどのように考えているかは必ずしも明らかでないが、多数意見が、「会社による政治資金の寄附は、客観的、抽象的に観察して、会社の社会的役割を果たすためになされたものと認められるかぎりにおいては、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとするに妨げない。」と述べているところからみると、上述の卑見にちかい見解をとるのではないかとも臆測される。しかし、右引用の判文は、その表現がすこぶる不明確であつて、はたして、会社による政治資金の寄附は、会社の社会的役割を果たすため相当と認められる限度においてなされるかぎり、会社の定款所定の目的の範囲内、したがつて、会社の権利能力の範囲内の行為であるとする趣旨であるかどうか(このように解するには、「客観的、抽象的に観察して、」というのが妨げとなる。むしろ、「諸般の事情を考慮し具体的に観察して、」とあるべきではなかろうか。)、疑問の余地があるのを免れないのみならず、かりにその趣旨であるとしても、政治資金の寄附も、通常の取引行為とひとしく、会社の定款所定の目的の範囲内の行為であるとしながら、前者に関してのみその権利能力につき右のような限定を加えることが理論上妥当であるかどうか、疑問なきをえないと思う。この点においても、政治資金の寄附のごとき行為を会社の定款所定の目的との関連においてとらえようとする多数意見の当否が疑われる。

 いずれにせよ、私のような見解に従つても、本件の政治資金の寄附は訴外八幡製鉄株式会社の権利能力の範囲内に属するものと解せられるから、判決の結果には影響がない。

     最高裁判所大法廷

         裁判長裁判官    石   田   和   外」

八幡製鉄(現在の新日本製鉄)代表取締役が、同社の名前により某政党に政治献金をした。これに対し、株主は、この政治献金が同社定款第2条に定める所定事業の目的の範囲外にあるとして商法第266条第1項第5号違反を、および、取締役の行為について第254条ノ2(現在は第254条ノ3)違反を主張し、商法第267条に基づいて株主代表訴訟を提起した。

最高裁判所大法廷は、法人が基本的人権を享有する主体であることを是認する(ドイツ連邦共和国基本法第19条第3項は、法人の基本権享有主体性を明文で定める)。しかし、それは、基本的人権の性質にもよるのであって、選挙権、生存権、人身の自由(一定の範囲)などは認められない。また、認められる場合であっても、経済的自由権(財産権、営業の自由など)の場合、実質的な公平の観点から、自然人に対してよりも広範な(積極的)制約の余地はある。精神的自由権についても、自然人の場合と同様に解するとは言えない場合がある。

法人の基本的人権享有性などに関する判例を概観しておく。

「●八幡製鉄事件最高裁判所判決(最大判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁)

八幡製鉄(現在の新日本製鉄)代表取締役が、同社の名前により某政党に政治献金をした。これに対し、株主は、この政治献金が同社定款第2条に定める所定事業の目的の範囲外にあるとして商法第266条第1項第5号違反を、および、取締役の行為について第254条ノ2(現在は第254条ノ3)違反を主張し、商法第267条に基づいて株主代表訴訟を提起した。

最高裁判所大法廷は、法人が基本的人権を享有する主体であることを是認する(ドイツ連邦共和国基本法第19条第3項は、法人の基本権享有主体性を明文で定める)。しかし、それは、基本的人権の性質にもよるのであって、選挙権、生存権、人身の自由(一定の範囲)などは認められない。また、認められる場合であっても、経済的自由権(財産権、営業の自由など)の場合、実質的な公平の観点から、自然人に対してよりも広範な(積極的)制約の余地はある。精神的自由権についても、自然人の場合と同様に解するとは言えない場合がある。

●住友生命政治献金事件

住友生命は、自民党などに約6800万円の政治献金を行った。これに対し、保険に加入している人々が、元社長2名に対し、献金した額を会社に返還するように求めた。一審判決は請求を棄却したため、原告である保険加入者が控訴したが、2002年4月11日、大阪高等裁判所は控訴を棄却した。

判決理由において、「政治献金は事業活動の一環であり、取締役は会社の規模に応じて政治献金できる」と述べられており、その上で「保険会社が政治献金することは違法ではない」とされている。

●三菱樹脂事件最高裁判所判決(最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)

企業の経済的活動の自由と自然人の思想の自由との衝突という問題に関する代表的な判例である。

この事件においては、原告Tが、大学在学中に生協の理事になったことなどについて「説明不足のきらい」があり、また、学生運動に参加していたことなどについての回答をしなかったことによる解雇(この場合は、3ヶ月間の試用期間の後における本採用の拒否)が妥当であるか否かが問題となった。第一審判決(東京地判昭和42年7月17日判時498号66頁)は、被告会社側の解雇権濫用を認める。第二審判決(東京高判昭和43年6月12日判時523号19頁)は、憲法第19条・第14条(信条による差別の禁止)、労働基準法第3条を援用しつつ、特定の思想信条を有する者を雇傭することが直ちに事業の遂行に支障を来すものとは言えず、入社試験の際に応募者に政治的思想などに関係のある事項を申告させることが公序良俗に反する、として、本件の労働契約解約が労働基準法第3条に違反して無効であるとした。これに対し、最高裁判所は破棄差戻判決を下した。

判決理由において、憲法第19条・第14条が私人間における直接的な規律を予定されているものではないこと、憲法第22条、第29条などにおいて、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由も基本的人権として保障されており、企業は、経済活動の一環として契約締結の自由を有していること、営業のため、いかなる者をいかなる条件によって雇うかも原則として自由であるから、企業が特定の思想や信条を有する者を、それを理由として雇傭を拒否しても当然に違法ではないことをあげ、「労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも」違法ではないと述べた。但し、本採用の拒否は雇傭後の解雇にあたるので、客観的合理性などについて審理を差し戻すべきであるとした(なお、差戻審において和解が成立し、Tは復職した)。

最高裁判所の判旨については、労働者が有する思想・信条の自由と企業の経済活動の自由を、単純に同一平面に乗せて議論しているところに疑問が残る。憲法の私人間効力について間接的効力説を採るとしても、両者を同一平面に乗せて議論することを正当化するものではない。むしろ、両者は全く別の次元における問題である。

●南九州税理士会事件最高裁判所判決(最三小判平成8年3月19日民集50巻3号615頁)

税理士会という強制加入団体において、多数決原理に基づいて特別会費を徴収して政治献金をした会の行為の是非が争われた事件。最高裁判所第三小法廷は、この税理士会の行為が税理士法第49条第2項に掲げられた目的の範囲外の行為であり、政治献金を団体の意思として構成員に強制することはできないとして、無効である、と判示した。政治献金の是非を巡る判断として、八幡製鉄事件最高裁判所判決と意味を異にするが、法人の経済的活動の自由と自然人の思想の自由との衝突という点においては、三菱樹脂事件最高裁判所判決と意味を異にする。

●三井美唄炭坑労働組合事件最高裁判所判決(最大判昭和43年12月4日刑集22巻13号1425頁)

労働組合とその加入者との自由の抵触に関する代表的な判決である。三井美唄炭坑労働組合役員は、市議会議員選挙に際して統一候補者を選出して支持する方針を立てた。しかし、別の組合員が独自に立候補しようとしたため、役員が説得を行ったが不調に終わったので、この組合員に対し、処分を行おうとした。これが公職選挙法第225条第3号違反に問われた。判決は、組合員に対する組合の統制権は憲法第28条に保障されてはいるが、公職選挙における立候補の自由は憲法第15条第1項が(自然人に対して)保障しており、組合員が立候補しようとしているのに、勧告または説得を超えて辞退を要求し、統制違反者として処分することは、統制権の範囲を超える、とした。」

法解釈の誤り

独占禁止法は次の通りに規定する。

「第七章 差止請求及び損害賠償

第二十四条 第八条第一項第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」

このおそれ及び予防の概念は、緊急性を要するのであって、国民が裁判を受けるに当たっては、緊急に侵害の停止又はおそれに対する予防を請求する際に付帯的に継続している著しい損害について仮処分の請求が出来る。いわゆるアメリカでは略式判決を求めることが出来る様な事案である。この様な本件事件においては、裁判所は「憲法第三十二条何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」とするが、予防を緊急に迅速に行うべきであって、継続中の違反でさえも差止できない様な状況になっている現況を反省し、改めるべきは改めるべきである。確かに憲法上公正取引委員会は独立行政機関として重要な役割を負ってきたが、憲法第七十六条 2項では行政機関は、終審として裁判を行ふことができないし、同条3項ではすべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束されるのであるから、「独占禁止法第八十三条の三 裁判所は、第二十四条の規定による侵害の停止又は予防に関する訴えが提起されたときは、その旨を公正取引委員会に通知するものとする。2 裁判所は、前項の訴えが提起されたときは、公正取引委員会に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見を求めることができる。3 公正取引委員会は、第一項の訴えが提起されたときは、裁判所の許可を得て、裁判所に対し、当該事件に関するこの法律の適用その他の必要な事項について、意見を述べることができる。」のではあるが、これまでの審決は判例とは相違しているのであり、また侵害の停止又は予防が緊急を要するような本件事件は、継続している違反が「事業活動を困難にしているのであるから」憲法第二十二条の営業の自由を侵すことがないように適切な手段を講ずる義務があると考えられる。そのような状態が継続している場合に裁判がいたずらに長く続くことは憲法が予定しているものではない。憲法三十二条にはそのような裁判の効率性の概念も含まれていると新しい説ではあるが主張するものであり、そのような考え方は憲法の自由競争を内包した思想から解釈できるものであり、そこからはいたずらに長い裁判は憲法三十二条違反となっており、違憲であると考えることが出来る。

損害の救済権に対する違憲性

被上告人(債務者)は本件事件においては独占禁止法違反による損害の救済について、公正取引委員会に対して申告したことをもって差別待遇を行っており、これは憲法第十六条に違反しており、違憲である。差別待遇とは共同ボイコットであり、ドイツの独占禁止法では不平等な取扱である場合には、入会を強制できるとしている。

第十六条【請願権】

 何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

裁判の効率性

裁判がいたずらに長引くことは効率性の問題ではあるが、その間の損害について裁判官も認知しなければならない。

第十七条【国及び公共団体の賠償責任】

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律(国家賠償法)の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

事業の継続が困難になることは放置できない憲法第三十二条違反であるがその救済策が独占禁止法第二十四条であるとすれば、犯罪被害と同様な意味で行政側が対応を怠ることは今後出来ないことになる。緊急を要する場合には裁判の側も証拠の取扱をやわらげ民事訴訟法248条の採用を行う等の対応をとるべきである。本件事件においては当然違法であるとしてすぐに裁判が終了すると考えられていたのに、最高裁判所の判断であっても事業活動の困難性があるので早急に結論が出ることが望ましいのであり、独占禁止法の第24条の趣旨からも緊急を要する事件である。

東京高等裁判所平成17年(ネオ)第183号・平成17年(ネ受)第192号

差止損害賠償請求事件

上告人兼上告受理申立人  株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

同        山 口  節 生

相手方          社団法人埼玉県不動産鑑定士協会

             同代表理事  岩 ア  彰

上告理由書兼上告受理申立理由書(6)

平成17年5月9日

最 高 裁 判 所 御中

上記上告人兼上告受理申立人

株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

山 口  節 生

第一 

上告人の論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断については、248条を使用すべきであり、事実の認定については共同ボイコットについても入会金の値上げについても、公務員のテープについても90%の蓋然性で証明されているのにそれを採用しないという経験則違反があり、又原審の認定については入会拒否を行ったことについては両当事者に異議はないのであり、原審の認定にそった事実に基づいても原判決は不当であるので、採用することができる。これは原判決の事実認定には,著しい経験則違反ないし審理不尽の違法があるからである。

原審判決の所論の誤り

まず無効確認と、差止とを混同している。無効確認と差止は全く異なったものである。その理解が足りない。

確認訴訟と、差止給付訴訟との差異は、確認訴訟は法律上の関係を確認するものでしかない。この場合に問題となるのは、契約の存在であるが、契約は存在しないのであり、契約の存在を確認するのでなければ、何を確認するのか不明である。現代は契約社会であるから、そのように言えるのである。

この確認訴訟は過去の事実の確認であるが、一方の差止は現在および将来の公正競争阻害性がある行為の排除であり、全く別のものである。先に述べた通りに法哲学上妨害の排除は自由な主体が、自由に行動する場合の必要不可欠な行為であり、妨害の差止である。

一方の差止は逮捕に近い行為を行わせる行為であり、妨害の排除である。

本件事件は最初の契機は信条の自由を侵すというものであるが、その後の継続的な公正競争阻害を目的としたものであった。どちらが真の理由かは経験則によれば明白である。この経験則の採用に当たっては日本中すべての県において不動産鑑定士協会が公正競争阻害の目的で、取引事例を見せなかったり、入会金を上げたり、雇用において非会員を差別したりしている。

一般にはある行為の解釈においては本人が名目上心理上の合理化においては信条が嫌いだったというものであっても、その実は心の中で公正競争阻害を目的とするものであることがありうる。

しかし目的がどのようであったとして、結果として公正競争阻害性がある行為である。

本件事件は全国的に展開されている公正競争阻害性がある行為の一部分であるが、三重県の様に不動産鑑定士協会は結託して、他の県の事業者には一切取引事例の閲覧を許さないこと、福井県においても不動産鑑定士協会はそのような行為を行っている。

これらとともに参入制限を行っている。

これらの傾向は年々激しくなっており、程度の問題とはいえなくなってきている。

本件事件のうち、入会金の値上げは価格に影響を及ぼすほどの公正競争阻害性がある。取引事例へのアクセス制限はただ価格のみによるのではなく、フロッピーにより取引事例に被上告人は容易にアクセスできるのであり、一方会員ではない上告人の様な事業者はフロッピーによるアクセスが出来ないのである。

業務補助者に対する取引事例の閲覧の制限は、雇用に対する制限となっており公正競争阻害性があることは同様である。

本件事件は証拠の収集は、石油ヤミカルテル事件よりも容易であった。ほとんどが公務員による証言であるか、公務員による情報公開された文書である。

確かにこれまでの証拠によってもし最高裁判所から差し戻して来た場合でも、ほとんどの証拠はそろっているといいうるが、しかしその証拠の解釈においては証拠の優越の問題がある。

被上告人(債務者)は理事会においてこれらの共同ボイコットに該当する様な行為を決定している。

刑法犯であった石油ヤミカルテル事件の証拠と本件事件の証拠とを比較してみて、刑法犯と同様の証拠調べがいかに難しく、それ故に証拠の優越程度によって石油ヤミカルテル事件でも認定していることを証明して、独占禁止法の私訴事件における証拠の優越を採用しなかったことが、最高裁判所判決に違反していることを証明する。

まず市町村の担当者、県の担当者の発言は伝聞証拠とは言えず、刑法犯でいえば、犯罪類似行為への加担者の真実の話であって、誘導されたものではなく、自発的なものであるが、しかし犯罪の共謀が認定されるおそれがあると考えたために、以後犯罪事実として否認に回ったのである。石油ヤミカルテル事件でも証拠として認定しているものであって、何ら原審判決が述べるように証拠能力において認定できないものではない。もしアメリカの陪審員制度があれば、陪審員であれば認めたであろうと考える。

刑法犯の場合には伝聞証拠は採用できない。「カルテルはそもそも競争をなくすことが目的ですから、実際の認定では、私的独占の場合などと違って、市場構造基準等を詳しく調べるまでもなく「それ自体違法」とされています。」と船田立教大学は書いており、

慶應義塾大学産業研究所助教授 石岡 克俊 2004年7月2日は、

「(iii)事業者団体の取引拒絶については、事業者の共同行為として評価し得る場合を除き、独占禁止法8条1項5号(事業者団体の事業者に対する不公正な取引方法の勧奨)が適用される。このように、事業者が行う不当な取引拒絶には、基本的に共同の取引拒絶(一般指定1項)とその他の取引拒絶(一般指定2項)とがあるが、前者においては「正当な理由がないのに」という文言が用いられ、行為の外形から原則として公正競争阻害性が認められる行為類型であることが明示されている。また、後者においては「不当に」という文言が用いられ、個別具体的に公正競争阻害性の有無を判断する行為類型であることが示されている。また取引拒絶には、取引先事業者に対し直接行うものだけではなく、他の事業者をして間接的に取引を拒絶させるものもある。前者を通常「直接の取引拒絶」(一般指定1項1号、一般指定2項前段)といい、後者を「間接の取引拒絶」(一般指定1項2号、一般指定2項後段)という。なお、これらの根拠規定は、「直接の取引拒絶」については独占禁止法2条9項1号(不当な差別的取扱い)、「間接の取引拒絶」については独占禁止法2条9項4号(不当な拘束条件付取引)である。1

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1.1共同の取引拒絶共同の取引拒絶については、競争者が共同して取引拒絶をし、またはその取引先等の他の事業者に、ある事業者との取引を拒絶させるものであり、拒絶される事業者にとっては取引先を奪われ、市場から締め出されるおそれの強い行為である。かかる行為が行われると、相手方の事業者は事業活動に重要な制約を受けたり、市場から排除されたり、市場への参入が制限されることとなる。このように、共同の取引拒絶は、市場における競争を直接制約するような行為類型であって、原則として、公正競争阻害性を有する行為である。これは、当該行為が「自由な競争を減殺するおそれの強い行為」であり、とりわけ再販売価格維持行為のように市場での競争を直接制約する行為類型に属するので、競争減殺の程度を個別に判断する必要はなく、行為が実効性をもって行われるものであるか否かが判断の中心となる。「正当な理由がないのに」の文言は、このような意味において使われている。なお、1991年(平成3年)に公表された「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」によれば、一般指定1項に該当するような競争者との共同の取引拒絶や、取引先事業者等との共同の取引拒絶によって、取引を拒絶される事業者が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除されることとなることにより、市場における競争が実質的に制限される場合には、不当な取引制限に該当し独占禁止法3条の規定に違反することが明らかにされている。また、事業者団体による共同の取引拒絶については、取引を拒絶される事業者等が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除されることとなることにより、市場における競争が実質的に制限される場合には、独占禁止法第8条1項1号の規定に違反し、また市場における競争が実質的に制限されるまでには至らない場合であっても、原則として独占禁止法第8条1項3号、4号又は5号の規定に違反することが明らかにされている。1.2その他の取引拒絶共同の取引拒絶が、原則として違法にされるのに対し、単独の取引拒絶は原則として適法な行為であり、例外的に「不当性」つまり「公正競争阻害性」のある場合にのみ違法となる。そもそも事業者がどの事業者と取引するかは、基本的に事業者の取引先選択の自由の問題である。事業者が、価格、品質、サービス等の要因を考慮して、自己の判断によって、ある事業者と取引し、あるいは取引しないとしても基本的に独占禁止法上問題となるものではない。取引拒絶の意図・目的を総合的に考慮して、公正競争阻害性の有無を個別具体的に判断しなければならない。先の「不当に」の文言は、このような意味において使われている。1991年(平成3年)に公表された「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」によれば、単独の取引拒絶は、当該行為により、「自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者が、取引拒絶の対象となった商品・役務と同種又は類似の商品・役務につき容易に他の取引先を見出し得ないか、又見出し得ても、取引条件が不利なため、競争者として十分に機能し得ない等当該競争者の取引の機会を排除し、その事業活動を困難にさせるおそれがある場合」に「不当な」取引拒絶となる。同指針には、より具体的に取引拒絶が「公正競争阻害性」を有する例として2つの場合を明示している。すなわち、事業者が(i)独占禁止法上違法な行為の実効を確保するための手段として取引を拒絶する場合、(ii)競争者を市場から排除するなど独占禁止法上不当な目的を達成するための手段として取引を拒絶する場合である。前者は、再販売価格維持行為や排他条件付取引など独占禁止法上違法な目的の達成の手段として実施される場合には、当該違法行為だけでなく、実効性確保手段として用いられた取引拒絶も違法となる。後者は、市場における有力な事業者が、競争者を市場から排除するなどの独占禁止法上不当な目的を達成する手段として、取引拒絶を行い、その結果取引を拒絶される事業者の通常の事業活動が困難となるおそれがある場合には、違法となる。なお、ここでいう「市場における有力な事業者」と認められるかどうかについては、市場におけるシェアが10パーセント以上又はその順位が上位3位以内であり、「競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合」であるか否かを検討した上で判断される。3

原文

不公正な取引方法の禁止[1](不当な取引拒絶)「取引拒絶」とは、商品・役務等の供給または買入れを拒絶することである。ここでいう「取引」には、物資・資金等の経済上の利益を供給することまたは供給を受けることを意味し、購入・販売といった売買の形をとるものだけにとどまらず賃貸借も含まれ、その形態を問わない。また、拒絶の対象となる経済上の利益には、商品・役務・資金等のすべてが含まれ、取引において付随的に無償で提供されるものであっても、主たる取引と関連がありその拒絶が有意な影響を及ぼす場合において、かかる経済上の利益の供給は「取引」に含まれる。また、取引の「拒絶」には、継続的な取引関係の停止だけではなく、新規の取引の申込みを拒絶する場合も含まれる。取引そのものを拒絶しなくても、相手方が必要とする数量を供給しないというように取引を制限することも、相手方の事業活動の遂行を妨げる効果を有し、取引自体の拒絶と同様の効果をもつことから、商品の数量ないしは役務の内容を制限することも禁止の対象となる。「不当な取引拒絶」には、(i)事業者が共同して行う共同の取引拒絶、(ii)事業者が単独で行う単独の取引拒絶及び(iii)事業者団体が事業者をして取引拒絶をさせる場合がある。(i)の共同の取引拒絶のうち競争関係にある他の事業者と共同して行うものは一般指定1項が適用され、(i)以外の共同の取引拒絶(例えば、取引先事業者との共同の取引拒絶等)及び(ii)のような場合にはその他の取引拒絶として一般指定2項の適用がある。そして、(iii)事業者団体の取引拒絶については、事業者の共同行為として評価し得る場合を除き、独占禁止法8条1項5号(事業者団体の事業者に対する不公正な取引方法の勧奨)が適用される。このように、事業者が行う不当な取引拒絶には、基本的に共同の取引拒絶(一般指定1項)とその他の取引拒絶(一般指定2項)とがあるが、前者においては「正当な理由がないのに」という文言が用いられ、行為の外形から原則として公正競争阻害性が認められる行為類型であることが明示されている。また、後者においては「不当に」という文言が用いられ、個別具体的に公正競争阻害性の有無を判断する行為類型であることが示されている。また取引拒絶には、取引先事業者に対し直接行うものだけではなく、他の事業者をして間接的に取引を拒絶させるものもある。前者を通常「直接の取引拒絶」(一般指定1項1号、一般指定2項前段)といい、後者を「間接の取引拒絶」(一般指定1項2号、一般指定2項後段)という。なお、これらの根拠規定は、「直接の取引拒絶」については独占禁止法2条9項1号(不当な差別的取扱い)、「間接の取引拒絶」については独占禁止法2条9項4号(不当な拘束条件付取引)である。1

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1.1共同の取引拒絶共同の取引拒絶については、競争者が共同して取引拒絶をし、またはその取引先等の他の事業者に、ある事業者との取引を拒絶させるものであり、拒絶される事業者にとっては取引先を奪われ、市場から締め出されるおそれの強い行為である。かかる行為が行われると、相手方の事業者は事業活動に重要な制約を受けたり、市場から排除されたり、市場への参入が制限されることとなる。このように、共同の取引拒絶は、市場における競争を直接制約するような行為類型であって、原則として、公正競争阻害性を有する行為である。これは、当該行為が「自由な競争を減殺するおそれの強い行為」であり、とりわけ再販売価格維持行為のように市場での競争を直接制約する行為類型に属するので、競争減殺の程度を個別に判断する必要はなく、行為が実効性をもって行われるものであるか否かが判断の中心となる。「正当な理由がないのに」の文言は、このような意味において使われている。なお、1991年(平成3年)に公表された「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」によれば、一般指定1項に該当するような競争者との共同の取引拒絶や、取引先事業者等との共同の取引拒絶によって、取引を拒絶される事業者が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除されることとなることにより、市場における競争が実質的に制限される場合には、不当な取引制限に該当し独占禁止法3条の規定に違反することが明らかにされている。また、事業者団体による共同の取引拒絶については、取引を拒絶される事業者等が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除されることとなることにより、市場における競争が実質的に制限される場合には、独占禁止法第8条1項1号の規定に違反し、また市場における競争が実質的に制限されるまでには至らない場合であっても、原則として独占禁止法第8条1項3号、4号又は5号の規定に違反することが明らかにされている。1.2その他の取引拒絶共同の取引拒絶が、原則として違法にされるのに対し、単独の取引拒絶は原則として適法な行為であり、例外的に「不当性」つまり「公正競争阻害性」のある場合にのみ違法となる。そもそも事業者がどの事業者と取引するかは、基本的に事業者の取引先選択の自由の問題である。事業者が、価格、品質、サービス等の要因を考慮して、自己の判断によって、ある事業者と取引し、あるいは取引しないとしても基本的に独占禁止法上問題となるものではない。取引拒絶の意図・目的を総合的に考慮して、公正競争阻害性の有無を個別具体的に判断しなければならない。先の「不当に」の文言は、このような意味において使われている。1991年(平成3年)に公表された「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」によれば、単独の取引拒絶は、当該行為により、「自己又は自己と密接な関係にある事業者の競争者が、取引拒絶の対象となった商品・役務と同種又は類似の商品・役務につき容易に他の取引先を見出し得ないか、又見出し得ても、取引条件が不利なため、競争者として十分に機能し得ない等当該競争者の取引の機会を排除し、その事業活動を困難にさせるおそれがある場合」に「不当な」取引拒絶となる。同指針には、より具体的に取引拒絶が「公正競争阻害性」を有する例として2つの場合を明示している。すなわち、事業者が(i)独占禁止法上違法な行為の実効を確保するための手段として取引を拒絶する場合、(ii)競争者を市場から排除するなど独占禁止法上不当な目的を達成するための手段として取引を拒絶する場合である。前者は、再販売価格維持行為や排他条件付取引など独占禁止法上違法な目的の達成の手段として実施される場合には、当該違法行為だけでなく、実効性確保手段として用いられた取引拒絶も違法となる。後者は、市場における有力な事業者が、競争者を市場から排除す2

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るなどの独占禁止法上不当な目的を達成する手段として、取引拒絶を行い、その結果取引を拒絶される事業者の通常の事業活動が困難となるおそれがある場合には、違法となる。なお、ここでいう「市場における有力な事業者」と認められるかどうかについては、市場におけるシェアが10パーセント以上又はその順位が上位3位以内であり、「競争者の取引の機会が減少し、他に代わり得る取引先を容易に見いだすことができなくなるおそれがある場合」であるか否かを検討した上で判断される。3

第2 共同ボイコット

1 考え方

市場における公正かつ自由な競争の結果、ある事業者が市場から退出することを余儀なくされたり、市場に参入することができなかったとしても独占禁止法上問題となることはない。

しかし、事業者が競争者や取引先事業者等と共同して又は事業者団体が、新規参入者の市場への参入を妨げたり、既存の事業者を市場から排除しようとする行為は、競争が有効に行われるための前提条件となる事業者の市場への参入の自由を侵害するものであり、原則として違法となる。

共同ボイコットには、様々な態様のものがあり、それが事業者の市場への参入を阻止し、又は事業者を市場から排除することとなる蓋然性の程度、市場構造等により、競争に対する影響の程度は異なる。共同ボイコットが行われ、行為者の数、市場における地位、商品又は役務の特性等からみて、事業者が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除されることとなることによって、市場における競争が実質的に制限される場合には不当な取引制限として違法となる。市場における競争が実質的に制限されるまでには至らない場合であっても、共同ボイコットは一般に公正な競争を阻害するおそれがあり、原則として不公正な取引方法として違法となる。また、事業者団体が共同ボイコットを行う場合にも、事業者団体による競争の実質的制限行為又は競争阻害行為(一定の事業分野における事業者の数を制限する行為、構成事業者の機能活動を不当に制限する行為又は事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにする行為)として原則として違法となる。

2 競争者との共同ボイコット

(1)

競争関係にある事業者が共同して、例えば次のような行為を行い、これによって取引を拒絶される事業者が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除されることとなることによって、市場における競争が実質的に制限される場合(注2)は、当該行為は不当な取引制限に該当し、独占禁止法第3条の規定に違反する。

[1] 製造業者が共同して、安売りをする販売業者を排除するために、安売り業者に対する商品の供給を拒絶し、又は制限すること

[2] 販売業者が共同して、競争者の新規新規参入を妨げるために、取引先製造業者をして新規新規参入者に対する商品の供給を拒絶させ、販売業者は新規参入者に対する商品の供給を拒絶すること

[3] 製造業者が共同して、輸入品を排除するために、取引先販売業者が輸入品を取り扱う場合には商品の供給を拒絶する旨通知して、当該販売業者をして輸入品を取り扱わないようにさせること

[4] 完成品製造業者が共同して、競争者の新規参入を妨げるために、取引先原材料製造業者が新規参入者に対し原材料を供給する場合には取引を拒絶する旨通知して、当該原材料製造業者をして新規参入者に対する原材料の供給を拒絶させること

(2)

競争関係にある事業者が共同して、上記(1)[1]〜[4]のような行為を行うことは、これによって市場における競争が実質的に制限されるまでには至らない場合であっても、原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる(独占禁止法第19条違反)(一般指定1項(共同の取引拒絶))。

3 取引先事業者等との共同ボイコット

(1)

事業者が取引先事業者等と共同して、例えば次のような行為を行い、これによって取引を拒絶される事業者が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除されることとなることによって、市場における競争が実質的に制限される場合には、当該行為は不当な取引制限に該当し(注3)、独占禁止法第3条の規定に違反する。

[1] 複数の販売事業者と複数の製造業者とが共同して、安売りをする販売業者を排除するために、製造業者は安売り業者に対する商品の供給を拒絶し、又は制限し、販売業者は安売り業者に対し商品を供給する製造業者の商品の取扱を拒絶すること

[2] 製造業者と複数の販売業者とが共同して、輸入品を排除するために、販売業者は輸入品を取り扱わず、製造業者は輸入品を取り扱う販売業者に対する商品の供給を拒絶すること

[3] 複数の販売業者と製造業者とが共同して、販売業者の新規参入を妨げるために、製造業者は新規参入者に対する商品の供給を拒絶し、販売業者は新規参入者に対し商品を供給する製造業者の商品の取扱を拒絶すること

[4] 複数の原材料製造業者と完成品製造業者とが共同して、輸入原材料を排除するために、完成品製造業者は輸入原材料を購入せず、原材料製造業者は輸入原材料を購入する完成品製造業者に対する原材料の供給を拒絶すること

(注3)不当な取引制限は、事業者が他の事業者と共同して「相互にその事業活動を拘束」することを要件としている(独占禁止法第2条第6項)。ここでいう事業活動の拘束は、その内容が行為者(例えば、製造業者と販売業者)すべてに同一である必要はなく、行為者のそれぞれの事業活動を制約するものであって、特定の事業者を排除する等共通の目的の達成に向けられたものであれば足りる。

なお、取引先事業者等との共同ボイコットにより、市場における競争が実質的に制限されると認められる場合の例については、上記(注2)を参照されたい。

(2)

事業者が取引先事業者等と共同して、上記(1)[1]〜[4]のような行為を行うことは、これによって市場における競争が実質的に制限されるまでには至らない場合であっても、原則として不公正な取引方法に該当し、違法となる(一般指定1項(共同の取引拒絶)又は2項(その他の取引拒絶))。

4 事業者団体による共同ボイコット

事業者団体が、例えば次のような行為を行い、これによって取引を拒絶される事業者等が市場に参入することが著しく困難となり、又は市場から排除されることとなることによって、市場における競争が実質的に制限される場合(注4)には、当該行為は独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する。また、事業者団体が次のような行為を行うことは、これによって市場における競争が実質的に制限されるまでには至らない場合であっても、原則として独占禁止法第8条第1項第3号、第4号又は第5号(一般指定1項(共同の取引拒絶)または2項(その他の取引拒絶))の規定に違反する。

[1] 販売業者を構成事業者とする事業者団体が、輸入品を排除するために、構成事業者が輸入品を取り扱うことを禁止すること(独占禁止法第8条第1項第1号又は第4号)

[2] 販売業者及び製造業者を構成事業者とする事業者団体が、構成事業者である製造業者をして構成事業者である販売業者にのみ商品を供給し、アウトサイダーには商品を供給しないようにさせること(独占禁止法第8条第1項第1号又は第4号)

[3] 販売業者を構成事業者とする事業者団体が、アウトサイダーを排除するために、構成事業者の取引先である製造業者に対し、アウトサイダーに対し商品を供給しないよう要請する等によって圧力を加えること(独占禁止法第8条第1項第1号又は第5号)

[4] 販売業者を構成事業者とする事業者団体が、構成事業者の競争者の新規参入を妨げるために、構成事業者の取引先である製造業者に対し、新規参入者に対し商品を供給しないよう要請する等によって圧力を加えること(独占禁止法第8条第1項第1号又は第5号)

[5] 販売業者を構成事業者とする事業者団体が、事業者団体への新規加入を制限するとともに、構成事業者の取引先である製造業者をして、アウトサイダーに対する商品の供給を拒絶させること(独占禁止法第8条第1項第1号、第3号又は第5号)

[6] 役務を供給する事業者を構成事業者とする事業者団体が、当該事業者団体に加入しなければ事業を行うことが困難な状況において、事業者の新規加入を制限すること(独占禁止法第8条第1項第1号又は第3号)

(注4)事業者団体による共同ボイコットにより、市場における競争が実質的に制限されると認められる場合の例については、上記(注2)を参照。

(注2)共同ボイコットによって、例えば、次のような状況となる場合には、市場における競争が実質的に制限されると認められる。

[1] 価格・品質面で優れた商品を製造し、又は販売する事業者が市場に参入することが著しく困難となる場合又は市場から排除されることとなる場合

[2] 革新的な販売方法を採る事業者などが市場に参入することが著しく困難となる場合又は市場から排除されることとなる場合

[3] 総合的事業能力が大きい事業者が市場に参入することが著しく困難となる場合又は市場から排除されることとなる場合

[4] 事業者が競争の活発に行われていない市場に参入することが著しく困難となる場合

[5] 新規参入しようとするどの事業者に対しても行われる共同ボイコットであって、新規参入しようとする事業者が市場に参入することが著しく困難となる場合」

と引用しながら述べている。

 共同ボイコットもカルテルもどちらも原則違法であるという概念が、学会においては通説であるのに、本件事件においてはどうして信条の自由にもかかわっているのに、通説に従わなかったのかについては、入会拒否を行ったことについては両当事者に異議はないのであり、原審の認定にそった事実に基づいても原判決は不当である、これは原判決の事実認定には,著しい経験則違反ないし審理不尽の違法があるからである。

最高裁判所の判決違反について

「最 高 裁 判 所 判 例 集 判 決 全 文 表 示

判例 S59.02.24 第二小法廷・判決 昭和55(あ)2153 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反(第38巻4号1287頁)

判示事項:

  一 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)八五条三号の規定と憲法一四条一項、三一条、三二条

二 独禁法八五条三号の規定と憲法七七条一項

三 石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導がある場合と石油製品価格に関する不当な取引制限行為の成否

四 不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合と事業者の処罰

五 独禁法二条六項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる場合

六 独禁法二条六項にいう「公共の利益に反して」の意義

七 法人の従業者が法人の業務に関して独禁法八九条一項一号違反の行為をした場合と右従業者及び法人の処罰

八 独禁法八九条一項一号の罪の既遂時期

九 石油製品価格に関する行政指導の許される範囲

一0 適法な行政指導に従つて行われた行為と違法性の阻却

一一 独禁法九六条二項所定の告発状の方式

一二 刑訴規則五八条違反の瑕疵のある告発状の効力

一三 清算の結了による株式会社の法人格消滅の要件

一四 株式会社の吸収合併が不成立ないし不存在とはいえないとされた事例

一五 会社の吸収合併と刑事責任の承継

「目録:私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という)八五条三号の規定と憲法一四条一項、三一条、三二条

独禁法八五条三号の規定と憲法七七条一項

石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導がある場合と石油製品価格に関する不当な取引制限行為の成否

不当な取引制限行為が事業者団体によって行われた場合と事業者の処罰

独禁法二条六項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる場合

独禁法二条六項にいう「公共の利益に反して」の意義

法人の従業者が法人の業務に関して独禁法八九条一項一号違反の行為をした場合と右従業者及び法人の処罰

独禁法八九条一項一号の罪の既遂時期

石油製品価格に関する行政指導の許される範囲

適法な行政指導に従って行われた行為と違法性の阻却

独禁法九六条二項所定の告発状の方式

刑訴規則五八条違反の瑕疵のある告発状の効力

清算の結了による株式会社の法人格消滅の要件

株式会社の吸収合併が不成立ないし不存在とはいえないとされた事例

会社の吸収合併と刑事責任の承継−いわゆる石油ヤミカルテル事件−」

要旨:

  一 独禁法八九条から九一条までの罪に係る訴訟につき二審制を定めた同法八五条三号の規定は、憲法一四条一項、三一条、三二条に違反しない。

二 独禁法八九条から九一条までの罪に係る訴訟の第一審の裁判権を東京高等裁判所に専属させた同法八五条三号の規定は、憲法七七条一項に違反しない。

三 石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導が行われており、右行政指導が違法とまではいえない場合であつても、石油製品元売り会社の従業者等が、値上げの上限に関する通産省の了承を得るために右上限についての業界の希望案を合意するに止まらず、その属する事業者の業務に関し、通産省の了承の得られることを前提として、了承された限度一杯まで各社一致して石油製品の価格を引き上げることまで合意したときは、右合意は、独禁法三条、八九条一項一号、九五条一項によつて禁止・処罰される不当な取引制限行為にあたる。

四 独禁法上処罰の対象となる不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合であつても、これが同時に事業者団体を構成する各事業者の従業者等によりその業務に関して行われたと観念しうる事情があるときは、右行為に対する刑責を事業者団体のほか各事業者に対して問うことも許される。

五 各事業者の従業者等が、事業者の業務に関し、その内容の実施に向けて努力する意思をもち、かつ、他の事業者もこれに従うものと考えて、製品の価格をいつせいに一定の幅で引き上げる旨の協定を締結したときは、協定の実効性を担保するための制裁等の定めがなくても、独禁法二条六項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる。

六 独禁法二条六項の「公共の利益に反して」との文言は、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを意味するが、現に行われた行為が形式上これに該当するものであつても、右法益と当該行為によつて守られる利益とを比較衡量すれば「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的に実質的には反しないと認められる例外的な場合を、同項にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨を含む。

七 事業者たる法人の従業者である自然人が、法人の業務に関して、独禁法八九条一項一号に違反する行為をした場合には、行為者たる自然人及びその所属する法人は、いずれも、同法九五条一項及び同法八九条一項一号により処罰される。

八 事業者が他の事業者と共同して対価を協議・決定する等相互にその事業活動を拘束すべき合意をした場合において、右合意により、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争が実質的に制限されたものと認められるときは、独禁法八九条一項一号の罪は直ちに既遂に達し、右決定された内容が各事業者によつて実施に移されることや決定された実施時期が現実に到来することなどは、同罪の成立に必要でない。

九 石油業法に直接の根拠を持たない石油製品価格に関する行政指導であつても、これを必要とする事情がある場合に、これに対処するため社会通念上相当と認められる方法によつて行われるものは、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という独禁法の究極の目的に実質的に抵触しない限り、違法とはいえない。

一0 価格に関する事業者間の合意は、形式的に独禁法に違反するようにみえる場合であつても、適法な行政指導に従いこれに協力して行われたものであるときは、違法性を阻却される。

一一 独禁法九六条二項所定の告発状の方式には、刑訴規則五八条の適用ないし準用があり、公正取引委員会委員長の署名押印が必要である。

一二 告発状の方式に刑訴規則五八条違反の瑕疵がある場合でも、その体裁・形式・記載内容などから告発人の真意に基づいて作成されたものであることが容易に推認されうるときは、告発状の訴訟法上の効力は否定されない。

一三 清算の結了により株式会社の法人格が消滅したというためには、商法四三〇条一項、一二四条所定の清算事務が終了しただけでは足りず、清算人が決算報告書を作成してこれを株主総会に提出しその承認を得ることを要する。

一四 解散後清算事務を終了したが商法四二七条一項所定の手続が未了であつた甲株式会社につき会社継続の手続をしたうえ、乙株式会社をこれに吸収する合併契約をする等の手続を履践して行われた本件吸収合併(判文参照)は、これを不成立ないし不存在ということはできない。

一五 乙会社の従業者が会社の業務に関して価格協定に参加したのち、同会社が甲会社との吸収合併により消滅したときは、合併当時甲会社が清算事務を終了しており、かつ、右合併が乙会社の株式の額面金額の変更のみを目的としたものであつたとしても、現に存在する甲会社に対し右従業者の行為を理由としてその刑責を追及することは許されない。

参照・法条:

  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律1条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条6項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律8条1項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律33条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律85条3号,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律89条1項(昭和52年法律63号による改正前のもの),私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律95条1項(昭和52年法律63号による改正前のもの),私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律96条,憲法14条,憲法31条,憲法32条,憲法77条1項,商法124条,商法406条,商法408条,商法415条,商法427条,商法430条1項,刑訴法239条,刑訴法241条,刑訴法339条1項4号,刑訴法490条1項,刑訴規則58条,刑法35条,通商産業省設置法3条2号,石油業法3条,石油業法4条,石油業法7条,石油業法15条,法人ノ役員処罰ニ関スル法律「目録:独禁法85条3号,独禁法89条1項(昭52法63条による改正前),独禁法2条6項,独禁法95条1項,独禁法8条1項,独禁法1条,独禁法33条,独禁法96条,憲法14条,憲法31条,憲法32条,憲法77条1項,通産省設置法3条,通産省設置法2条,石油業法3条,石油業法4条,石油業法7条,石油業法15条,刑法35条,刑訴法239条,刑訴法241条,刑訴法339条1項4号,刑訴法490条1項,刑訴規則58条,商法124条,商法427条,商法430条1項,商法415条,商法406条,商法408条」

内容:

 件名  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反 (最高裁判所 昭和55(あ)2153 第二小法廷・判決 一部破棄自判一部棄却)

 原審  東京高等裁判所

主    文

     原判決中、被告人P1株式会社、同P2株式会社及び同P3に関する部分を破棄する。

     右被告人らは、本件各公訴事実につき、いずれも無罪。

     その余の被告人らの本件各上告を棄却する。

理    由

 〔凡   例〕

 一 左に掲げる略称を用いることがあるほか、日常使用される略称を用いることがある。

  略   称     正 式  名 称

 独  禁  法  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

 公  取  委  公正取引委員会

 通 産 省    通商産業省

 通産大臣     通商産業大臣

 石     連  石油連盟

 オ ペ ツ ク  石油輸出国機構

 オアペ ツ ク  アラブ石油輸出国機構

 上告趣意(一)  弁護人眞子博次ほか三七名連名の上告趣意

 上告趣意(二)  弁護人澤田隆義ほか二名連名の上告趣意

 上告趣意(三)  弁護人八木良夫の上告趣意

 上告趣意(四)  弁護人福島幸夫ほか三名連名の上告趣意

 二 左の上段の文言は、下段の意味である。

 業    界   石 油 業 界

 元売り会社 石油製品元売り会社

 三 株式会社名については、名称中「株式会社」を単に(株)と表示する。

 四 被告人中自然人たる被告人は、例えば「被告人P4」又は単に「被告人P4」と表示し、法人たる被告人は、例えば「被告会社P1」と表示する。また、単に「被告人ら」というときは、原則として自然人たる被告人らを指すが、自然人たる被告人らと法人たる被告人らを総称して「被告人ら」ということもある。

 第一 上告趣意(一)第一点、第二点について

 所論は、独禁法八九条から九一条までの罪に係る訴訟の第一審の裁判権を東京高等裁判所に専属させ、右各罪につき二審制を定めている同法八五条三号の規定は、憲法一四条一項、三一条、三二条に違反する、というのである。

 しかしながら、裁判権及び審級制度については、憲法八一条の要請を満たす限り、憲法は法律の適当に定めるところに一任したものと解すべきことは、当裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一二六号同二三年七月一九日大法廷判決・刑集二巻八号九二二頁、同二三年(れ)第一六七号同年七月一九日大法廷判決・刑集二巻八号九五二頁、同二七年(テ)第六号同二九年一〇月一三日大法廷判決・民集八巻一〇号一八四六頁)のくりかえし判示するところである。もつとも、右各判例も裁判権及び審級制度に関する定めにつき、立法機関の恣意を許すとする趣旨ではなく、ある種の事件につき他と異なる特別の審級制度を定めるには、それなりに合理的な理由の必要とされることを当然の前提としていると解すべきであるが、独禁法八九条から九一条までの罪については、これらの対象とする行為がわが国の経済の基本に関するきわめて重要なものであつて、これに対する判断が区々に分れその法的決着が遅延することは好ましくないこと等の特殊な事情があることなどに照らすと、独禁法が、右各罪に係る訴訟につき、その第一審の裁判権を東京高等裁判所に専属させ裁判官五名をもつて構成する合議体により審理させることとして、審級制度上の特例を認めたことには、それなりに合理性がないとはいえないというべきである。そうすると、同法八五条三号の規定が憲法一四条一項、三一条、三二条に違反するものでないことは、当裁判所の前記各大法廷判例の趣旨に徴して明らかであつて、所論は、理由がない。

 第二 同第三点について

 所論は、独禁法八五条三号の規定は、本来裁判所の自主的な規則によつて定められるべき刑事訴訟の管轄等の定めを法律によつて規定したものであるから、最高裁判所の規則制定権を定めた憲法七七条一項に違反する、というのである。

 しかし、法律が一定の訴訟手続に関する規則の制定を最高裁判所規則に委任してもなんら憲法に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和二四年(れ)第二一二七号同二五年一〇月二五日大法廷判決・刑集四巻一〇号二一五一頁)の示すところであり、右判例が、法律により刑事訴訟の管轄等を定めることができるものであることを前提としていることはいうまでもない(最高裁昭和二八年(あ)第五三九号同三〇年四月二二日第二小法廷判決・刑集九巻五号九一一頁参照)。そうすると、独禁法八九条から九一条までの罪に係る訴訟の第一審の裁判権が東京高等裁判所に属することを定めた同法八五条三号の規定が憲法七七条一項に違反するものでないことは、当裁判所の前記大法廷判例の趣旨に徴して明らかである。所論は、理由がない。

 第三 同第四点について

 所論は、独禁法八九条一項一号の規定は、その定める構成要件があいまい不明確であるから、憲法三一条に違反する、というのである。

 しかし、独禁法八九条一項一号所定の罪の構成要件については、合理的な解釈によつてその意義を明確に理解しうるのであり(後記第五及び第六参照)、これが所論のようにあいまい不明確であるとはいえないから、所論は前提を欠き、適法な上告理由にあたらない。第四 同第五点ないし第九点について

 所論は、多岐にわたるが、その主張の要旨は、原判決が、石油製品価格に関する通産省のガイドライン行政指導は本件当時慣行として定着していたとはいえないとしている点、本件の行為主体が石連の営業委員会とは別個の「価格の会合」であつたとしている点、被告人らの行為の性格につき「業界における主体的・自発的値上げの合意」であつて、行政指導に対する協力行為ではないとしている点はすべて誤りであり、かかる誤つた事実認定を前提として、被告人らが石油製品価格に関し独禁法三条、八九条一項一号、九五条一項によつて禁止・処罰される不当な取引制限行為(共同行為)を行つたと認めた原判決には、重大な事実誤認がある、というのである。

 所論は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、原判決のうち、本件当時における石油製品価格に関する通産省の行政指導の認定評価に関する説示部分及び本件各行為の主体等に関する認定部分には一部首肯しえない点があるが、被告会社らの従業者である被告人らが、その所属する被告会社の業務に関し、石油製品価格を各社いつせいに引き上げる旨の合意をしたものと認めた原判決の結論は、証拠上これを是認することができる(但し、後記説示のとおり無罪とする被告人らの関係を除く。第一五及び第一六参照)。その理由は、次のとおりである。

 一 原判決は、本件当時、石油製品価格に関し通産省によるおおむね次のような行政介入が行われていたとしており、これらの事実は、記録上いずれもこれを肯認することができる。

 1 オペツクの第一次ないし第三次原油値上げに伴い、業界による石油製品の値上げが予測された昭和四六年二月ころ、通産省鉱山石炭局長は、石連会長に対し、原油の値上がりを石油製品価格に転嫁する場合の基本方針を示すとともに、値上げする場合には、業界で勝手にこれを行わず、通産省に事前に連絡するように指示した。

 2 同年三月から四月にかけて、通産省担当官は、業界に対し、原油値上がり分のうち一バーレル当り一〇セントを業界に負担させることを内容とする、いわゆる「一〇セント負担」指導を行つて平均値上げ幅を示すとともに、これを油種別に展開した油種別値上げ幅の数字を示してその遵守を要請し、種々の折衝ののち、業界は、最終的に通産省の意向に副う値上げ案を作成し、その実行をした。3 同年一〇月から一一月にかけて、通産省は、石連会長らに対し、民生の安定上重要であるとして、元売り各社の白灯油価格を同年冬は引き上げずに、前需要期の各社それぞれの平均価格以下にするよう各社を指導する措置を講ずる旨通知した。4 同四七年二月、業界による「一〇セント負担」の解除の要請及び市況悪化を理由とする値上げの要請は、通産省担当官によつていずれも拒否されたが、同省鉱山石炭局幹部と業界首脳との会談ののち、業界の作成した油種別値上げ案が、結局において同省により了承された。5 その際、通産省鉱山石炭局石油計画課長P5は、石連営業委員長P6に対し、今後値上げの必要が生じたときは、予め話しに来るように指示した。6 本件第一回の値上げに際し、同年一二月、業界による「一〇セント負担」解除の要請が同局石油計画課総括班長角南立によつて拒否されたため、業界は、「一〇セント負担」を前提とする修正案を作成し、担当官の了承を得た。7 その後の第二回ないし第五回の値上げに際しても、通産省担当官は、業界による値上げの実施前に、その作成した値上げ案に対する了承を与えた。8 同四八年六月一八日の営業委員会においては、角南総括班長らが、文書に基づき、新ジユネーブ協定による原油値上がり分は、円高による差益とほぼ相殺となるので、その分の製品値上げをしてはならないこと等を内容とする価格指導方針を説明し(いわゆる「チヤラ論指導」)、なお、その際、市況調整値上げ分の製品値上げは、十分説明のつくもの以外は認めない旨付言した。9 その直後、石連重油専門委員会(スタデイ・グループ)の出光昭が、被告会社P7の社内資料に基づき中間留分についての値上げ案の内容を説明して意向を打診したが、角南総括班長は、業界全体の資料による説明でなければ困るとして、その回答を留保した。

 10 同月末、P5課長は、業界の七月値上げ案をいつたん了承したが、国会が開会中であることなどを理由に、その実施を一か月延期するよう要請し、業界は右指導に従つた。

 11 同年九月、資源エネルギー庁石油部長P8は業界に対し、家庭用灯油値上げの撤回を申し入れたが、石連営業委員長の被告人P4はこれに応ぜず、結局、石連P9理事のあつせんにより、家庭用灯油価格を九月末の時点で凍結することで落着した。

 12 同年一一月の値上げの際にも、角南総括班長は、被告会社P7の社内資料に基づき値上げ案の説明をした右被告人P4に対し、業界全体の資料を要求した。

 二 以上によると、通産省は、昭和四七年以降の本件を含む一連の石油製品の値上げに際しては、業界の値上げ案作成の段階において基本的な方針を示して業界を指導し(前記一、4、6、8)、これによつて、業界作成の値上げ案に通産省の意向を反映させたことが認められるが、同四六年の値上げの際と異なり、業界が作成してきた値上げ案に対しその値上げ幅をさらに削減させたり、自ら油種別値上げ幅の数字を示したりするような積極的・直接的な介入は、できる限りこれを回避していこうとする態度であつたことが窺われる。

 しかし、通産省がこのような基本的態度をとつていたということは、当時の行政指導が必ずしも弱いものであつたことを意味するものではない。前記のとおり、業界は、昭和四六年のいわゆる「一〇セント負担」を内容とする一連の行政指導によつて、石油製品の油種別上限価格を抑えられていたのであり(前記一、2)、その後の値上げの際には、通産省担当官から事前に話しに来るように指示されており(5) (なお、前後の経緯からすると、これは、値上げの上限に関し業界が事前に通産省担当官の了承を得るように指示されていたことを意味すると認められる。)、また、業界の値上げの希望は、同省の基本方針と抵触する限り事実上許容されなかつた(4、6)ばかりでなく、時には、同省が積極的に示した方針を値上げ案に反映させられたり(8)、いつたん了承を得た値上げ案の実施時期を延期せざるをえなかつたこともある(10)。また、業界が通産省の了承を得るには、必ず業界全体の資料に基づく説明が要求された(9、12)のであつて、当時のこのような通産省の行政指導(なお、右行政指導が違法とまではいえないことは、後記第一〇に説示のとおりである。)を前提とする限り、石油製品価格を、通産省の指導を無視して各社がその個別的判断によつて引き上げることは、事実上きわめて困難なことであつたといわなければならず、この点からすると、値上げに関する通産省の了承を得るための業界の価格に関する話合いないし合意が独禁法上一切許されないと解することは、業界に難きを強いる結果となつて、妥当とはいえない。したがつて、オペツク及びオアペツク等による原油値上げという石油製品の客観的値上げ要因を抱え、値上げの必要に迫られていた業界において、値上げの上限に関する通産省の了承を得るために、各社の資料を持ち寄り価格に関する話合いを行つて一定の合意に達することは、それがあくまで値上げの上限についての業界の希望に関する合意に止まり、通産省の了承が得られた場合の各社の値上げに関する意思決定(値上げをするか否か、及び右上限の範囲内でどの程度の値上げをするかの意思決定)をなんら拘束するものでない限り、独禁法三条、二条六項の禁止する不当な取引制限行為にあたらないというべきである。しかしながら、これと異なり、各事業者の従業者等が、値上げの上限に関する右のような業界の希望案を合意するに止まらず、その属する事業者の業務に関し、通産省の了承の得られることを前提として、了承された限度一杯まで各社一致して石油製品の価格を引き上げることまで合意したとすれば、これが、独禁法三条、八九条一項一号、九五条一項によつて禁止・処罰される不当な取引制限行為(共同行為)にあたることは明らかである。そうすると、本件における被告人らの行為が同法によつて処罰されるべきものであるかどうかは、それが証拠上右のいずれの場合にあたると認められるかによることとなる。

 三 そこで、この点につき検討するに、各被告会社の営業担当役員である被告人らが、オペツク及びオアペツク等の原油値上げに対応して、昭和四八年一月から一一月にかけ五回にわたり、石油製品価格の引上げを行うに際し、油種別の値上げ幅とその実施時期について一定の合意に達したことは、記録上明らかなところである。所論は、被告人らは、値上げの上限に関する通産省の了承を得るための業界の希望案について合意したにすぎないと主張するが、原判決が共同行為の存在を推認させるものとして指摘する多くの客観的事実関係の中には、被告人らが、通産省の了承の得られることを前提としてではあるが、各社いつせいに石油製品価格の引上げを行うこと及びその際の油種別の値上げ幅と実施時期についてまで合意したと考えるのでなければ合理的に理解することのできないものが多数存在し(例えば、原判決第三、三、(二)、1、(2)のニ、ホ、ト、チ、ヌなど)、これらの点については、所論によつても的確な反論がなされているとは認め難い。さらに、本件各合意の直後に、各被告会社においてほぼ一致して、合意された価格と実施時期におおむね対応する値上げの指示が支店等に対してなされていること、さらには、一致して共同行為の存在を認めた被告人らの検察官調書の内容(なお、被告人らの検察官調書は、証拠上否定し難い通産省の前記のような行政指導にほとんど全く触れておらず、捜査に欠けるところがあつてこれを全面的に措信することには問題が残るにしても、少なくとも前記一連の客観的事実関係とあいまつて、共同行為を認定するための資料とはなりうるものと解する。)等記録上明らかな証拠関係に照らすと、被告人らは、油種別の値上げの上限に関する業界の希望案を合意するに止まらず、右希望案に対する通産省の了承の得られることを前提として、一定の期日から、右了承の限度一杯まで石油製品価格を各社いつせいに引き上げる旨の合意をしたと認めざるをえないのであつて、所論は採用し難い。

 四 次に、右のような合意をしたのが石連の営業委員会とは別個の「価格の会合」であつたとする原判決の認定には、前記のとおり疑問がある。たしかに、原判決の指摘するとおり、右会合には、営業委員会の本来の構成員であるP10(株)及びP11(株)の各代表が出席していないことが明らかであり、また石連事務局員の列席がなく、議事録の作成もなされなかつたことも事実と認められるが、他方、右会合が右両社を除くその余の元売り会社を代表する営業委員又はその代理人(これは、当時の営業委員会の現実の構成員のほぼ全員である。)によつて構成されていたこと、右会合の責任者は営業委員長自身であり、営業委員長の交代とともに右会合の責任者も交代していること、右会合においては、営業委員会の下部機構である重油専門委員会(スタデイ・グループ)を使つて基礎計算及び値上げ原案の作成を行わせていること、右会合における合意の内容は、営業委員会によつて行われたことに争いのない昭和四六年の値上げの際の合意と実質において異なるところがないこと、P10とP11の代表の欠席は、両社が外資系の会社であるところから、公取委の摘発を恐れてのことであるが、会合における合意の結果は、その都度責任者から両社に連絡されていたこと、石連事務局員の欠席も、石連自身が公取委に摘発された昭和四六年の値上げの際の経験にかんがみ、累が石連に及ぶことを回避するため、右会合が石連とは無関係であるとの外観を作出しようとしたことの結果にすぎないことなどの点も、証拠上明らかなところであつて、これらの諸点を総合して考察すると、本件各合意の行われた会合は、やや変則的な構成ながら、石連の営業委員会とその実体を同じくする会合であつたと認めるのが相当である。たがつて、本件における石油製品価格引上げに関する合意が、石連という事業者団体の機関ひいては石連自身によつて行われたという一面は、これを否定することができない。

 しかしながら、独禁法上処罰の対象とされる不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合であつても、これが同時に右事業者団体を構成する各事業者の従業者等によりその業務に関して行われたと観念しうる事情のあるときは、右行為を行つたことの刑責を事業者団体のほか各事業者に対して問うことも許され、そのいずれに対し刑責を問うかは、公取委ないし検察官の合理的裁量に委ねられていると解すべきである。

これを本件についてみると、前認定のとおり、各被告会社の営業担当役員である被告人らは、P10とP11を除くその余の全元売り会社の営業担当役員によつて事実上構成される石連の営業委員会において、石油製品価格の油種別の値上げ幅と実施時期を定め、通産省の了承を前提として各社いつせいに値上げを行う旨合意をしたものであるところ、かかる事実関係のもとにおいては、被告人らの右行為は、石連の営業委員としての行為であると同時に、その所属する各事業者の業務に関して行われたものと認めるのが相当であるから、右合意をした会合を、原判決の認定と異なり石連の営業委員会であると認定したからといつて、その点は、各被告会社の刑責になんら消長を及ぼすものではない。

 五 以上のとおりであつて、本件価格協定の存否をめぐる原判決の認定には、前記のとおりその行為主体を石連の営業委員会ではないとしている点等において一部首肯しえないところもあるが、被告人らがその所属する被告会社の業務に関し石油製品の価格をいつせいに引き上げる旨の価格協定を締結したとするその結論は相当として是認することができるから、原判決の右事実誤認は、判決に影響を及ぼすものとはいえない。

 第五 同第一〇点について

 所論は、価格に関し独禁法三条にいう「不当な取引制限」行為が行われたといえるためには、その違反を防止する有効な手段を伴つた拘束力ある価格協定が締結される必要があるのであつて、右拘束力を事実上不要であるかのごとき説示をした原判決は、法令の解釈を誤り、憲法三一条、三九条に違反する、というのである。

 所論は、違憲をいう点を含め、実質は独禁法三条、二条六項の解釈を争う単なる法令違反の主張にすぎず、適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、原判決の認定したところによれば、被告人らは、それぞれその所属する被告会社の業務に関し、その内容の実施に向けて努力する意思をもち、かつ、他の被告会社もこれに従うものと考えて、石油製品価格を各社いつせいに一定の幅で引き上げる旨の協定を締結したというのであり、右事実認定はさきに説示した意味において当審としても是認しうるところ、かかる協定を締結したときは、各被告会社の事業活動がこれにより事実上相互に拘束される結果となることは明らかであるから、右協定は、独禁法二条六項にいう「相互にその事業活動を拘束し」の要件を充足し同項及び同法三条所定の「不当な取引制限」行為にあたると解すべきであり、その実効性を担保するための制裁等の定めがなかつたことなど所論指摘の事情は、右結論を左右するものではない。したがつて、これと同旨の原判断は、正当である。

 第六 同第一一点について

 所論は、独禁法二条六項にいう「公共の利益に反して」とは、同法の定める趣旨・目的を超えた「生産者・消費者の双方を含めた国民経済全般の利益に反した場合」をいうと解すべきであるから、これと異なる見解に依拠した原判決は、法令の解釈を誤つたものである、というのである。

 所論は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、独禁法の立法の趣旨・目的及びその改正の経過などに照らすと、同法二条六項にいう「公共の利益に反して」とは、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを指すが、現に行われた行為が形式的に右に該当する場合であつても、右法益と当該行為によつて守られる利益とを比較衡量して、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的(同法一条参照)に実質的に反しないと認められる例外的な場合を右規定にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨と解すべきであり、これと同旨の原判断は、正当として是認することができる。

 第七 同第一二点について

 所論は、原判決は「公共の利益に反して」という構成要件に該当するか否かの判断の前提となる事実の認定を誤つたものである、というのである。

 所論は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 また、記録を調べても、原判決に、所論のような事実誤認があるとは認められない。第八 同第一三点について

 所論は、事業者たる法人の従業者によつて事実上独禁法違反の行為が行われた場合には、右法人はもとより自然人たる従業者についても、これを処罰すべき罰則が同法上存在しないから、被告人らを同法違反の罪に問擬した原判決は、法令の解釈適用を誤り、憲法三一条、三九条に違反する、というのである。

 所論は、違憲をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、本件におけるように、事業者たる法人の従業者である自然人が、その所属する法人の業務に関して、独禁法八九条一項一号に違反する行為をした場合には、行為者たる自然人及びその所属する法人は、いずれも、同法九五条一項及び同法八九条一項一号により処罰されると解すべきである(最高裁昭和五四年(あ)第一四五一号同五五年一〇月三一日第一小法廷決定・刑集三四巻五号三六七頁、同三三年(あ)第一五一二号同三四年六月四日第一小法廷決定・刑集一三巻六号八五一頁各参照)。この点に関する原判決の説示中には、措辞やや適切を欠く点もあるが、被告人らが独禁法八九条一項所定の刑罰(但し、法人については罰金刑のみ)に処せられるべきであるとしたその結論は、正当である。第九 同第一四点について

 所論は、独禁法八九条一項一号の罪の既遂時期は、共同行為によつて合意された内容が現実に実施に移されたときと解すべきであるから、合意の時点又はその実施時期の到来した時点において右罪が既遂に達するとした原判決は、判例(東京高等裁判所昭和三一年一一月九日判決・行政事件裁判例集七巻一一号二八四九頁)に違反し、同法の解釈を誤つたものである、というのである。

 所論のうち、判例違反をいう点は、所論引用の判例は、共同行為が行われても合意の内容が実施に移されない限り独禁法八九条一項一号の罪は成立しないという趣旨まで判示したものとは認められないから、前提を欠き、その余は単なる法令違反の主張であつて、いずれも適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、事業者が他の事業者と共同して対価を協議・決定する等相互にその事業活動を拘束すべき合意をした場合において、右合意により、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争が実質的に制限されたものと認められるときは、独禁法八九条一項一号の罪は直ちに既遂に達し、右決定された内容が各事業者によつて実施に移されることや決定された実施時期が現実に到来することなどは、同罪の成立に必要でないと解すべきである。原判決の記載も、これを全体としてみれば、結局右に説示したところと同趣旨に帰着すると認められるので、原判決に所論のような法令解釈の誤りがあるとは認められない。

 第一〇 同第一五点、第一七点について

 所論は、被告人らは、通産省による適法な行政指導に従つて行動していたのであるから、その行為は、全体としての法秩序に反せざるものとして違法性が阻却されるというべきであつて、右違法性の阻却を認めなかつた原判決は、事実を誤認し、法令の解釈適用を誤つたものである、というのである。

 所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、物の価格が市場における自由な競争によつて決定されるべきことは、独禁法の最大の眼目とするところであつて、価格形成に行政がみだりに介入すべきでないことは、同法の趣旨・目的に照らして明らかなところである。しかし、通産省設置法三条二号は、鉱産物及び工業品の生産、流通及び消費の増進、改善及び調整等に関する国の行政事務を一体的に遂行することを通産省の任務としており、これを受けて石油業法は、石油製品の第一次エネルギーとしての重要性等にかんがみ、「石油の安定的かつ低廉な供給を図り、もつて国民経済の発展と国民生活の向上に資する」という目的(同法一条)のもとに、標準価格制度(同法一五条)という直接的な方法のほか、石油精製業及び設備の新設等に関する許可制(同法四条、七条)さらには通産大臣をして石油供給計画を定めさせること(同法三条)などの間接的な方法によつて、行政が石油製品価格の形成に介入することを認めている。そして、流動する事態に対する円滑・柔軟な行政の対応の必要性にかんがみると、

石油業法に直接の根拠を持たない価格に関する行政指導であつても、これを必要とする事情がある場合に、これに対処するため社会通念上相当と認められる方法によつて行われ、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という独禁法の究極の目的に実質的に抵触しないものである限り、これを違法とすべき理由はない。そして、価格に関する事業者間の合意が形式的に独禁法に違反するようにみえる場合であつても、それが適法な行政指導に従い、これに協力して行われたものであるときは、その違法性が阻却されると解するのが相当である。

 そこで、本件についてこれをみると、原判決の認定したところによれば、本件における通産省の石油製品価格に関する行政指導は、昭和四五年秋に始まるオペツク及びオアペツク等のあい次ぐ大幅な原油値上げによる原油価格の異常な高騰という緊急事態に対処するため、価格の抑制と民生の安定を目的として行われたものであるところ、かかる状況下においては、標準価格制度等石油業法上正式に認知された行政指導によつては、同法の所期する行政目的を達成することが困難であつたというべきである。また、本件において通産省が行つた行政指導の方法は、前認定のとおり、昭和四六年の値上げの際に設定された油種別価格の上限を前提として、値上げを業界のみの判断に委ねることなく事前に相談に来させてその了承を得させたり、基本方針を示してこれを値上げ案に反映させたりすることにより価格の抑制と民生の安定を保とうとしたものであつて、それが決して弱いものであつたとはいえないにしても、基本的には、価格に関する積極的・直接的な介入をできる限り回避しようとする態度が窺われ、これが前記のような異常事態に対処するため社会通念上相当とされる限度を逸脱し独禁法の究極の目的に実質的に抵触するものであつたとは認められない。したがつて、本件当時における通産省の行政指導が違法なものであつたということはできない。

 しかしながら、すでに詳細に認定・説示したところから明らかなとおり、本件において、被告人らは、石油製品の油種別値上げ幅の上限に関する業界の希望案について合意するに止まらず、右希望案に対する通産省の了承の得られることを前提として、一定の期日から、右了承の限度一杯まで各社いつせいに価格を引き上げる旨の合意をしたものであつて、これが、行政指導に従いこれに協力して行われたものと評価することのできないことは明らかである。したがつて、本件における被告人らの行為は、行政指導の存在の故にその違法性を阻却されるものではないというべきであり、これと同旨に帰着する原判断は、正当である。第一一同第一八点について

 所論は、被告人らは、通産省担当官の行政指導に従つて行動していたのであつて、違法性の意識を欠き、かつそのことに無理からぬ事情があつたのであるから、被告人らには独禁法違反の犯意がないというべきであり、したがつて、被告人らの犯意の阻却を認めなかつた原判決は、事実を誤認したものである、というのである。

 所論は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、被告人らの本件各行為が通産省担当官の行政指導に従つて行われたと認められないことは前説示のとおりであり、また、記録によれば、被告人らに違法性の意識があつたことはこれを否定し難いのであつて、これと同旨の原判断は、正当である。なお、所論は、原審において無罪の確定している石油連盟ほか二名に対する独禁法違反被告事件の判決(東京高等裁判所昭和四九年(の)第一号同五五年二月二八日判決、いわゆる生産調整事件判決)の判示を援用して、本件についても右事件におけると同様犯意の阻却を認めるべきであると主張するが、右事件と事案を異にする本件において被告人らの犯意の阻却を認めないことは、なんら右判決の判示と矛盾・抵触するものではない。第一二同第一六点について

 所論は、本件において公取委から検事総長に提出された告発状には、独禁法三三条一項、刑訴規則五八条一項に違反する方式上の瑕疵があり、右告発はその効力を有しないというべきであるから、これを有効と認めた原判決には、法令の解釈を誤つた違法がある、というのである。

 所論は、単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、独禁法九六条は、同法八九条から九一条までの罪につき、公取委の文書による告発を訴訟条件としているほか、告発の方式につきなんら定めるところがないが、公取委が合議体の行政官庁であつて、委員長がこれを代表するとされていること(同法三三条一項)、及び右告発状が起訴後は当然に裁判所への提出を予定されたものであることなどに照らすと、右告発状の方式には、刑訴規則五八条の適用ないし準用があり、委員長の署名押印が必要であると解すべきである。ところで、本件において検察官が訴訟条件の立証のため提出した告発状等の書面には、公取委の記名と庁印の押捺はあるが、委員長の署名押印がないのであるから、右告発状等には、刑訴規則五八条に違反する方式上の瑕疵があるといわなければならない。

 しかしながら、告発状に刑訴規則五八条違反の方式上の瑕疵がある場合でも、その体裁・形式・記載内容などから、これが告発人の真意に基づいて作成されたものであることが容易に推認されうるときは、右告発状の訴訟法上の効力は否定されないと解すべきである。右の観点から本件告発状等をみると、昭和四九年二月一五日付の検事総長あて告発状の一枚目には、作成名義人として「公正取引委員会」の記名と庁印の押捺があるほか、右告発状の二枚目以下に添付・契印されてその内容をなすと認められる同日付の告発状と題する書面には、告発人として「公正取引委員会、右代表者委員長P12、右指定代理人P13」、被告発人としてP7株式会社ほか二四名の各表示及び本件一連の告発事実の各記載があり、また、やはり同日付の告発代理人指定書と題する「公正取引委員会委員長P12」の記名押印ある文書には、告発人公取委が被告発人P7株式会社ほか二四名に対する告発事件につき復代理人選任以外の一切の告発に関する権限を公取委事務局勤務の検事兼総理府事務官P13に委任する旨の記載があるのであつて、これらの書面を全体として観察すれば、本件告発状が公取委の真意に基づき作成されたものであることを容易に推認することができるから、右告発状に関する前記のような方式上の瑕疵は、その訴訟法上の効力に影響を及ぼすものではないと解すべきである。したがつて、この点に関する原判断は、正当である。

 第一三 同第一九点について

 所論は、被告会社P14の営業担当役員であつた被告人P15及び同P16孝重は、本件各価格協定に参加した事実がないのであるから、右被告人両名及び被告会社P14を有罪と認めた原判決は、事実を誤認したものである、というのである。

 所論は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 所論にかんがみ、職権をもつて記録を調査すると、右被告人両名が被告会社P14の業務に関し、本件各価格協定の行われた会合に加わり(被告人P15は第一回ないし第三回、同P16は第四回、第五回。但し、第五回は電話連絡による。)、その余の被告人らと共同して石油製品価格の値上げに関する合意をしたと認めた原判決に、所論の事実誤認があるとは認められない。第一四 同第二〇点について

 所論は、被告会社P17の営業担当役員であつた被告人P18は、本件各価格協定に加わつておらず、少なくとも、違法性の意識がなかつたのであるから、右被告人両名を有罪と認めた原判決は、事実を誤認したものである、というのである。

 所論は、事実誤認の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。

 また、所論にかんがみ、職権をもつて記録を調査しても、被告人P18の行動等に関する原判決の認定に、所論の事実誤認があるとは認められない。第一五 上告趣意(二)、(三)について

 所論は、被告人P3は、被告会社P1の業務に関し、その余の被告人らと共同して石油製品価格のいつせい引上げを行う旨の合意に加わつていないから、右合意への参加を肯定した原判決は事実を誤認したものであり、また、原判決が、被告会社P1の元売りしていないガソリン及びジエツト燃料油の両油種の価格協定についてまで被告人P3の共謀による加担を肯定した点は、判例(最高裁昭和二九年(あ)第一〇五六号同三三年五月二八日大法廷判決・刑集一二巻八号一七一八頁)に違反し、法令の解釈適用を誤つたものである、というのである。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、原判決中被告人P3及び被告会社P1に関する部分は、次の理由により、破棄を免れない。

 一 原判決は、被告会社P1の営業担当役員である被告人P3が、本件五回の価格協定の行われた会合に終始加わつていたこと(但し、第五回については、電話連絡による。)、同被告会社においては、右各協定ののち、合意された値上げの実施時期にほぼ見合う時期に、ガソリン及びジエツト燃料油を除くその余の油種について、支店等に対し値上げの指示を行つていることなどの事実を認定して、右両油種以外の油種につき被告人P3が同被告会社の業務に関し独禁法三条、二条六項所定の不当な取引制限行為にあたる価格協定に加わつたと認めたほか、本件においては、全油種平均値上げ幅を計算したうえ、これを各油種に展開して各油種の値上げ幅が決定されたものであつて、右両油種の各値上げ幅が同被告会社の取り扱うその余の油種の値上げ幅に影響することを重視して、同被告人が同被告会社の業務に関し、右両油種に関しても、他の被告人らと共謀して、同被告会社を除くその余の被告会社らによる本件価格協定に加わつたものと認定した。

 二 しかしながら、原判決の認定した事実及び記録上明らかな事実を併せると、被告会社P1に関しては、その取り扱う油糧及び現実の値上げ指示の状況等に関し、他社と異なる次のような事情の存したことを指摘することができる。

 1 被告会社P1は、ジエツト燃料油を取り扱つておらず、また、ガソリンはその全量を被告会社P17に、日銀の卸売物価指数にリンクした価格で売り渡すことを契約上義務付けられているため、右両油種については他社と足並みを揃えて値上げすることが客観的に不可能であり、現に、本件当時被告会社P1において、右両油種に関する値上げの指示がなされたことは一度もないこと

 2 その余の油種については、同被告会社においてもある程度の値上げの指示がなされているが、その状況は、合意された内容と金額及び実施時期の点で、かなりのくいちがいがあること(例えば、原判決が第一回値上げに照応するものとして認定した同被告会社の値上げ指示の内容は、その実施時期が合意されたそれより一月遅れであつて、ナフサ、C重油についての指示を欠くほか、軽油、A重油、B重油の値上げ幅も合意と相当大幅に異なるものであり、第二回値上げに照応するものとして原判決が認定したところも、実施時期が二月遅れであつて、C重油についての指示を欠き、その余の油種の値上げ幅も合意と大幅に異なるものである。原判決の認定にかかる第三回値上げに照応する同被告会社の値上げの指示は、昭和四八年六月、七月、八月の三回に分けて小きざみになされていて、他社が値上げを見送つた七月にも一部値上げが断行されているほか、三回分の値上げ指示額の合計は、いずれも合意された価格とかなりの相違を来たしている。第四回、第五回値上げについても、多かれ少なかれ、同様の事情を指摘することができる。)

 三 また、右二に指摘した被告会社P1の特異な行動と関連する事実として、証拠上明白な次の諸点を指摘することができる。

 1 同被告会社は、業界におけるシエアがわずかに一・三ないし一・五パーセントの後発の元売り会社であり(業界最下位の第一四位)、ガソリン及びジエツト燃料油に関し前記二1のような特殊な事情があるほか、その余の油種についても、その約三分の二をP19(株)、P20(株)、P21(株)及びP22(株)の四商社に売り渡しており、支店等において同被告会社が独自に販売しているのは、残り約三分の一にすぎず、右支店等における一般売りの販売価格も、基本的には右四商社と取り決めた価格によつていること

 2 したがつて、同被告会社における石油製品価格は、同社において一方的に決定することができず、四商社との協議に委ねられていること

 3 同被告会社と四商社との値上げ交渉は、原価主義に基づき、年間一〇億円の利益を同被告会社に留保するという商社側との了解のもとに行われるのであり、現に本件においてもそのような交渉による商社側との合意に基づき値上げが実行されたのであるが、同被告会社が原油の相当量を右商社から購入している関係上、商社側は原油値上りの状況を知悉しているため、商社への売渡し価格に関する交渉の余地は、大きくないこと

 4 同被告会社は、現に合意の内容と大幅に異なる値上げ指示をしているにもかかわらず、他社から協定違反の抗議を受けたことは一度もなく、また、通産省においても、第三回値上げに際して行つた一か月延期の行政指導に従わない同被告会社の行動を黙認していること

 四 以上の二及び三各指摘の事実関係に照らして被告人P3の行動をみると、同被告人は、営業委員会における合意の内容に従い他社と足並みを揃えて石油製品価格の引上げを行うことが被告会社P1にとつて事実上不可能であるだけでなくそれほど必要性の強いことでもなかつたところがら、合意の内容の実施に向けて努力する意思を有しておらず、また、他社においても、同被告会社のかかる特殊性にかんがみ、そのことを暗黙のうちに了解していたのではないかという合理的な疑いがいまだ払拭されないというべきである。もつとも、原判決の認定するとおり、被告人P3は、本件一連の価格協定の行われた会合に出席しているのであり、少なくともこれに反対する意見を述べた形跡は証拠上見当らないのであるが、右協定の行われた会合がやや変則的な構成ながら石連の営業委員会であつて、右会合における被告人らの行為の中に、石油製品価格引上げの上限に関する通産省の了承を得るための業界の希望案の作成という性格のものがあつたと考えられることは、前説示のとおりであり、右希望案の作成については同被告会社といえども利害関係を有していたものと認められ、被告人P3が右希望案の作成のみに関与する趣旨で会合に出席したということも考えられるのであるから、被告人P3が右一連の会合に出席していたということから、直ちに、同被告人が同被告会社の業務に関して、本件各価格協定に参加したと認めることはできない。したがつて、右被告人両名に対する本件各公訴事実については、犯罪の証明がないと認めるほかはない。

 五 そうすると、これと異なり、被告人P3及び被告会社P1を、本件各公訴事実につき有罪と認めた原判決には、重大な事実誤認の違法があり、右違法は判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。第一六上告趣意(四)について

 所論は、本件起訴状によつて起訴された被告会社P2は、被告人P23がその業務に関して本件各価格協定に参加したP2(株)とは法人格を異にする別個の会社であり、被告会社P2は右犯行とは無関係なのであるから、これを有罪と認めた原判決は、事実を誤認し、法令に違反し、かつ判例(最高裁昭和三八年(あ)第一九八号同四〇年五月二五日第三小法廷決定・刑集一九巻四号三五三頁)にも違反する、というのである。

 所論にかんがみ、職権をもつて判断すると、原判決中被告会社P2に関する部分は、次の理由により、破棄を免れない。

 一 原判決は、被告会社P2の刑責の有無を判断するにあたり、おおむね次のような事実を認定している。

 1 商号をP2(株)とし、本店を東京都千代田区a町b丁目c番地に置き、資本金を三〇億円とする株式会社が、昭和三五年一二月二〇日に設立され(以下、右会社を「千代田区のP2」という。)、被告人P23は、同会社の業務に関し、本件各価格協定に参加したものである。

 2 右「千代田区のP2」は、その発行する額面株式一株の金額を五〇〇円から五〇円に変更してこれに市場流通性を持たせる目的で、登記簿上のみ存在し実体を欠くいわゆる休眠会社に吸収合併されることを企図し、P24を介して、休眠会社の売買を行つていたP25にそのあつせんを依頼した。3 右P25は、昭和三七年ころ、清算人であるP26から買い取つてあつた休眠会社P27(株)(昭和一六年六月に設立され、同一九年七月に解散の決議をし、同年一〇月その登記をする一方、残余財産の分配を終えて清算事務を終了したが、商法四二七条一項所定の決算報告書の作成・承認及び清算結了の登記は未了のまま放置されていたもの)につき、昭和四六年一月二六日、会社継続を内容とする株式会社継続登記、商号 本店等の変更登記(変更後の商号はP28(株)、同本店は東京都江東区e町f丁目g番h号)手続を経たうえ、吸収合併の準備として、同年六月三〇日、P28(株)の商号をP2(株)に、その目的を石油精製及び石油製品の販売等にそれぞれ変更し(以下、同社を「江東区のP2」という。)、P28(株)の全取締役及び監査役が辞任し、代わつて「千代田区のP2」の社員がこれに就任したことを内容とする株式会社変更登記手続を行つた。

 4 「千代田区のP2」は、その後、株式上場の準備を進め、昭和四八年五月一〇日、株式の額面金額の変更のみを目的として、「江東区のP2」との間で、後者が前者を合併することを内容とする合併契約書を作成したうえ、所要の手続を経て、同年一二月一日株式会社合併登記手続を完了し、同年一二月一七日には、「千代田区のP2」の解散登記及び「江東区のP2」の本店を「千代田区のP2」の本店所在地に移転する旨の変更登記手続をそれぞれ行つた。

 二 右の事実関係を前提とし、原判決は、「江東区のP2」は、その前身であるP27(株)が清算事務の終了により消滅して以来登記簿上のみ存在する不存在の会社であつたというべきであるから、これと「千代田区のP2」との合併は成立せず、「千代田区のP2」は合併及びこれに基づく解散の登記にもかかわらず、引き続き存在する(すなわち、被告会社P2がそれである)と解して、被告会社P2の刑責を肯定したのである。

 三 しかしながら、清算の結了により株式会社の法人格が消滅したといえるためには、商法四三〇条一項、一二四条所定の清算事務が終了したというだけでは足りず、清算人が決算報告書を作成してこれを株主総会に提出しその承認を得ることを要し(同法四二七条一項)、右手続が完了しない限り、清算の結了によつて株式会社の法人格が消滅したということはできない。本件についてこれをみると、原判決は、「江東区のP2」の前身たるP27(株)が解散して清算事務を終了したとの事案を認定するが、他方において、同会社につき、同法四二七条一項所定の手続が終了していなかつたと認めているのであるから、右の事実関係のもとにおいては、同会社はいまだ清算の結了によつて消滅したとはいえない。したがつて、同会社に対する会社の継続及び「千代田区のP2」との間の合併契約等所定の手続を履践して行われた本件吸収合併は、これを不成立ないし不存在と観念することは許されないのであつて、合併無効の訴えによりその効力を否定されない限り、商法上有効であるといわざるをえない。右のとおりであるとすると、被告人P23がその業務に関して本件価格協定に加わつた「千代田区のP2」は、その後「江東区のP2」に吸収合併されてその法人格を喪失したものというべきであり、したがつて、右合併後現に存在するP2(株)は「江東区のP2」であつて「千代田区のP2」とは別個の法人であるといわざるをえない。

 四 ところで、本件起訴状にいう被告会社P2が現に存在するP2(株)を意味すると解すべきことは、原審における検察官の主張及び記録上明らかな本件訴訟の経過等に照らして明らかであるところ、右P2(株)は、被告人P23がその業務に関して本件価格協定に参加した「千代田区のP2」とは前記のとおり法人格を異にする会社であるといわざるをえなしうえ、刑事責任については民事責任とは異なり合併による承継を理論上肯定し難いのであるから、合併後現に存在するP2(株)に対し、吸収合併により消滅した「千代田区のP2」の刑責を追及することは許されず、結局、他に特段の事情の認められない本件においては、被告会社P2については、その犯罪の証明がないことに帰着する。(なお、本件起訴状の公訴事実中には、被告人P23が被告会社P2の常務取締役として、その業務に関し本件各価格協定に参加した旨の記載がある。しかし、原審第一回公判期日における検察官の意見などによれば、検察官は、被告人P23が、本件当時石油製品元売りの営業活動をしていたP2(株)すなわち「千代田区のP2」の業務に関し本件各価格協定に参加したものとしてその刑責を追及していると認められるのであり、同被告人が右検察官主張の立場において本件各価格協定に参加したこと自体は証拠上明らかなところであるから、被告会社P2に対する場合とは異なり、被告人P23に対する本件各公訴事実は、その証明が十分であるといわなければならない。)

 五 そうすると、これと異なり、「千代田区のP2」と「江東区のP2」との合併が成立しないとして、被告会社P2を本件各公訴事実につき有罪と認めた原判決には、清算結了による株式会社の法人格の消滅等に関する商法の規定の解釈を誤り、ひいて刑罰法規の適用を誤つた違法があるというべきであり、右違法は判決に影響を及ぼし、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。

 第一七 結   論

 以上のとおりであつて、原判決のうち、被告会社P1及び被告人P3に関する部分を刑訴法四一一条三号により、被告会社P2に関する部分を同条一号により、それぞれ破棄したうえ、犯罪の証明がないものと認めて、同法四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三六条により、右被告人三名に対しいずれも無罪の言渡しをすることとするが、その余の被告人らの本件各上告はその理由がな、いので、同法四一四条、三九六条により、いずれもこれを棄却することとする。

 この判決は、裁判官全員一致の意見によるものである。

 検察官川島興 公判出席

  昭和五九年二月二四日

     最高裁判所第二小法廷

         裁判長裁判官    木   下   忠   良

            裁判官    宮   ア   梧   一

            裁判官    大   橋       進

            裁判官    牧       圭   次

最 高 裁 判 所 判 例 集 判 決 全 文 表 示

判例 S62.07.02 第一小法廷・判決 昭和56(行ツ)178 損害賠償(第41巻5号785頁)

判示事項:

  民生用灯油につき石油元売事業者が行つた元売仕切価格の値上げ協定によつて一般消費者が損害を被つたとはいえないとされた事例

要旨:

  石油元売事業者が民生用灯油について元売仕切価格を値上げする価格協定を実施した場合において、その当時、原油の値上がり、需要の増加など灯油について顕著な値上がり要因があつたほか、民生用灯油の元売仕切価格について価格抑制指導をしていた通商産業省がその値上げを了承しており、右協定が実施されなかつたとしても、その元売仕切価格は現実のそれと径庭のない状態に至つたであろうと推認され、ひいてはその小売段階における価格も現実の小売価格を下回つたと認められないときは、灯油を購入した一般消費者は、右協定の実施によつて損害を被つたということができない。

参照・法条:

  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律25条

内容:

 件名  損害賠償 (最高裁判所 昭和56(行ツ)178 第一小法廷・判決 棄却)

 原審  S56.07.17 東京高等裁判所

主    文

     本件上告を棄却する。

     上告費用は上告人らの負担とする。

         

理    由

 上告代理人上田誠吉、同宮本康昭、同佐々木恭三、同西村昭、同田岡浩之、同藤本斉、同平岩敬一、同関一郎、同脇山淑子、補佐人岩佐恵美の上告理由第一について

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「法」という。)二五条の規定による損害賠償に係る訴訟については、法八〇条一項のような規定を欠いており、また、いわゆる勧告審決にあつては、公正取引委員会による違反行為の認定はその要件ではないから、本件審決の存在が違反行為の存在を推認するについて一つの資料となり得るということはできても、それ以上に右審決が違反行為の存在につき裁判所を拘束すると解することはできない(最高裁昭和五〇年(行ツ)第一一二号同五三年四月四日第三小法廷判決・民集三二巻三号五一五頁)。右と同旨の原審の判断は正当であり、論旨は採用することができない。

 同第二ないし第四について

 所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定にそわない事実に基づいて原判決の不当をいうものにすぎず、採用することができない。

 同第五について

 一 原審が確定した事実関係のもとにおいて、本件値上げ協定が上告人らの購入した灯油の購入価格の形成に影響を及ぼしたとすれば、それは本件第三の協定のうち民生用灯油に係る部分の実施による民生用灯油の元売仕切価格の変動を通じてのみであるとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

 二 元売業者の違法な価格協定の実施により当該商品の購入者が被る損害は、当該価格協定のため余儀なくされた余計な支出であるから、本件のような最終の消費者が右損害を被つたことを理由に元売業者に対してその賠償を求め得るためには、当該価格協定に基づく元売仕切価格の引上げが、その卸売価格への転嫁を経て、最終の消費段階における現実の小売価格の上昇をもたらしたという関係が存在していることのほかに、かかる価格協定が実施されなかつたとすれば、右現実の小売価格よりも安い小売価格が形成されていたといえることが必要であり、このことはいずれも被害者たる消費者において主張立証すべき責任があるというべきである。もつとも、この価格協定が実施されなかつたとすれば形成されていたであろう小売価格(以下「想定購入価格」という。)は、現実には存在しなかつた価格であり、一般的には、価格協定の実施前後において当該商品の小売価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、協定の実施直前の小売価格をもつて想定購入価格と推認するのが相当であるといえるが、協定の実施以後消費者が商品を購入する時点までの間に小売価格の形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因の変動があるときは、協定の実施直前の小売価格のみから想定購入価格を推認することは許されず、右小売価格のほか、当該商品の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因を検討してこれを推計しなければならない。

 原審の確定したところによれば、本件第三の協定の実施当時、民生用灯油について、元売仕切価格形成要因の変動としてとらえ得る事実及び価格上昇の要因があれば現実の上昇と結び付きやすい事情として、(1) 通商産業省(以下「通産省」という。)は、昭和四六年四月、民生用灯油の元売仕切価格について同年二、三月の価格に据え置くよう元売会社を指導し、以後この指導を継続していたが、昭和四八年六、七月ころ、各社それぞれの元売仕切価格を一キロリツトル当たり一〇〇〇円値上げすることを了承しており(その後、昭和四八年一〇月からは、同年九月末の価格で凍結するよう指導した。)、このような場合、石油製品の元売仕切価格は右行政指導に極めて誘導されやすい、(2) 昭和四五年以降いわゆるOPEC(石油輸出国機構)攻勢による原油の値上がりがあつたが、民生用灯油の価格抑制に特に腐心していた通産省が右元売仕切価格の値上げを了承したことは、当時少なくとも右値上げを必要やむを得ないとする程度のコスト上昇があつたことを推認させるものであり、現に原油の輸入価格は上昇の一途をたどつていた、(3) 当時、公害規制強化に伴う産業用燃料油の油種転換により灯油の需要が増加し、業界は通産省の指導で灯油の増産備蓄を行つたが、灯油の増産は、連産品である他の石油製品の在庫量の増大等によるコストの上昇につながる、(4) 当時、灯油価格は他の家庭用熱源に比較して低廉であつたから、価格上昇要因があるときは現実の値上げと結び付きやすい、(5) 灯油は、他の石油製品に比較してその精製に余分なコストを要するだけでなく、季節性の強い商品であり他の製品に比し備蓄等に余分なコストを要する、との事実があつたというのであり、右事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認することができ、その過程に所論の違法はない。

 右事実関係によれば、本件第三の協定の実施当時は、民生用灯油の元売段階における経済条件、市場構造等にかなりの変動があつたものであり、右協定の実施の前後を通じ、その小売価格の形成に影響を及ぼすべき経済的要因に顕著な変動があつたというべきであるから、前示のとおり、本件においては協定の実施直前の小売価格をもつてそのまま想定購入価格と推認することは相当でないといわざるを得ない。したがつて、原審が、上告人らの損害の有無を判断するに当たり、協定の実施直前の小売価格をもつて想定購入価格と推認する方法をとらなかつたことに所論の違法はない。

 三 そして、原審は、本件第三の協定の実施後に上告人らが購入した灯油の想定購入価格について、次のとおり認定判断した。すなわち、前記各事実からすれば、当時灯油について顕著な値上がり要因があつたというべきで、通産省の前記一〇〇〇円値上げの了承及び昭和四八年九月末の価格での凍結指導は、右要因をふまえた上で、元売各社の値上げ要望に一部こたえるとともに、民生用灯油の元売仕切価格を自由に形成される価格よりも低く押さえることを意図してされたものであり、昭和四八年一〇月以降昭和四九年三月までは、仮に本件第三の協定の実施がなかつたとしても、その元売仕切価格は右凍結価格と径庭のない状態に至つたであろうと推認でき、ひいてはその小売段階における想定購入価格も現実の小売価格を下回つたと断定することはできず、また昭和四八年八月及び九月における想定購入価格が現実の小売価格を下回つたか否かも不明である、というのである。

 原審の右認定判断は、前記値上がり要因等の事実を含め原審の確定した本件事実関係のもとにおいて是認し得ないものではなく、原判決に所論の違法があるということはできない。

 四 そうすると、本件においては、本件第三の協定に基づく元売仕切価格の引上げが、卸売段階での価格転嫁を経て現実の小売価格の上昇をもたらしたという関係が存するかどうかはともかく、右協定が実施されなかつたならば、現実の小売価格よりも安い小売価格が形成されていたといえないのであるから、結局、上告人らは本件第三の協定の実施によつて損害を被ったということができないことに帰するのであつて、上告人らの本件請求を理由がないとした原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原判決の結論に影響のない点についてその不当をいい、あるいは原審の認定にそわない事実若しくは独自の見解に基づいて原判決を論難するものであつて、採用することができない。

 同第六について

 法八四条一項に基づく公正取引委員会の意見は、裁判所が損害の存否、額を判断するに当たつての一つの参考資料にすぎず、裁判所の判断を何ら拘束するものでないことはいうまでもなく、また、裁判所が右意見と異なる判断をするに際し所論のような手続を必要とするものでないことも明らかである。原判決に所論の違法はなく、論旨は、独自の見解に基づき原判決の違法をいうものであつて、採用することができない。

 同第七について

 原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第一小法廷

         裁判長裁判官    大   内   恒   夫

            裁判官    角   田   禮 次 郎

            裁判官       島   益   郎

            裁判官    佐   藤   哲   郎

            裁判官    四 ツ 谷       巖

      選定者目録(一)

    川崎市多摩区菅一〇六一番地      A1外

    

判例 H01.12.08 第二小法廷・判決 昭和60(オ)933、昭和60(オ)1162 損害賠償(第43巻11号1259頁)

判示事項:

  一 独占禁止法二五条一項に定める違反行為によつて損害を被つたことと民法上の不法行為に基づく損害賠償請求

二 消費者が独占禁止法三条にいう「不当な取引制限」に当たる価格協定による損害の賠償を民法上の不法行為に基づき請求する訴訟において価格協定の実施直前の小売価格をもつていわゆる想定購入価格と推認することができるための要件

要旨:

  一 独占禁止法二五条一項に定める違反行為によつて損害を被つた者は、その行為が民法上の不法行為に該当する限り、同法の規定に基づき損害賠償の請求をすることができる。

二 消費者が事業者に対し、独占禁止法三条にいう「不当な取引制限」に当たる価格協定による損害の賠償を民法上の不法行為に基づき請求する訴訟において、価格協定の実施直前の小売価格をもつていわゆる想定購入価格と推認することができるのは、価格協定の実施当時から消費者が商品を購入する時点までの間にその商品の小売価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がないときに限られる。

参照・法条:

  民法709条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条6項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律2条9項,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律3条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律25条1項

内容:

 件名  損害賠償 (最高裁判所 昭和60(オ)933、昭和60(オ)1162 第二小法廷・判決 破棄自判)

 原審  S60.03.26 仙台高等裁判所

主    文

     一 原判決中被上告人A1及び同A2に関する部分並びにその余の被上告人らについての上告人ら敗訴部分を破棄し、右各部分につき右被上告人らの控訴をいずれも棄却する。

     二 別紙選定者目録(一)から同(一七)までに選定当事者として表示された各被上告人らは、それぞれ上告人出光興産株式会社に対し、各同目録記載の各選定者ら負担に係る同目録返還金額欄記載の各金員及びこれに対する昭和六〇年三月三〇日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

     三 第一項に関する控訴費用及び上告費用は同項掲記の被上告人らの負担とし、前項の裁判に関する費用は同項掲記の被上告人らの負担とする。

         

理    由

 第一 上告人日本石油株式会社代理人各務勇、同鎌田久仁夫、上告人出光興産株式会社代理人梶原正雄、同梶原洋雄、上告人共同石油株式会社代理人吉田太郎、同塚本重ョ、同堤淳一、同安田彪、上告人三菱石油株式会社代理人日沖憲郎、同田中慎介、同久野盈雄、同今井壮太、訴訟承継前の上告人丸善石油株式会社代理人佐野隆雄、同近藤良紹、同釜萢正孝、上告人大協石油株式会社(現商号コスモ石油株式会社)代理人樋口俊二、同相良有一郎、同鶴田岬、同高野康彦、上告人ゼネラル石油株式会社代理人馬場東作、同高津幸一、同高橋一郎、上告人昭和シェル石油株式会社代理人藤井正博、同梶谷玄、同梶谷剛、同田邊雅延、同岡正晶、上告人キグナス石油株式会社代理人井本台吉、同長野法夫、同宮島康弘、同熊谷俊紀、同富田純司、同布施謙吉、上

告人九州石油株式会社代理人輿石睦、同松澤與市、同寺村温雄、上告人太陽石油株式会社代理人澤田隆義、同八木良夫、同梅澤良雄の上告理由についての判断

 一 同上告理由第一点について

 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)の定める審判制度は、もともと公益保護の立場から同法違反の状態を是正することを主眼とするものであって、違反行為による被害者の個人的利益の救済を図ることを目的とするものではなく、同法二五条が一定の独占禁止法違反行為につきいわゆる無過失損害賠償責任を定め、同法(昭和五二年法律第六三号による改正前のもの。以下同法の条文のうち右法律による改正のあるものは改正前の条文である。)二六条において右損害賠償の請求権は所定の審決が確定した後でなければ裁判上これを主張することができないと規定しているのは、これによって個々の被害者の受けた損害の填補を容易ならしめることにより、審判において命ぜられる排除措置とあいまって同法

違反の行為に対する抑止的効果を挙げようとする目的に出た附随的制度にすぎないものと解すべきであるから、この方法によるのでなければ、同法違反の行為に基づく損害の賠償を求めることができないものということはできず、同法違反の行為によって自己の法的利益を害された者は、当該行為が民法上の不法行為に該当する限り、これに対する審決の有無にかかわらず、別途、一般の例に従って損害賠償の請求をすることを妨げられないものというべきである(最高裁昭和四三年(行ツ)第三号同四七年一一月一六日第一小法廷判決・民集二六巻九号一五七三頁参照)。

 被上告人らは、上告人らの独占禁止法三条(二条六項)違反の行為(不当な取引制限)が民法七〇九条所定の要件を充たすものであることを主張し、上告人らに対し、これによって被ったとする損害の賠償を求めて本訴を提起したものであるから、所論のような理由でこれを不適法とすべきものでないことは右の説示に照らし明らかというべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

 二 同第二点一ないし四について

 所論は、独占禁止法三条違反の行為(不当な取引制限)の被害者として不法行為による損害賠償を請求できるのは、不当な取引制限をした事業者の直接の相手方に限られるとし、不当な取引制限をした事業者であるとされる上告人らの直接の相手方ではない被上告人らは原告適格を欠くという。しかしながら、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟においては、訴訟物たる当該損害賠償請求権を有すると主張している者である限り原告適格に欠けるところはないのであり、また、その者が主張する事実関係からは当該損害賠償請求権を有するものではないと解される場合であっても、その者の主張はその点において理由がないことになるために請求が棄却されるだけであって、その訴えが原告適格を欠き不適法とされるものではない。

 本訴において、被上告人らは、上告人らの前記独占禁止法違反行為によって自己の権利を侵害され損害を被ったことを主張していること、すなわち、本訴における訴訟物である同法違反行為に基づく損害賠償請求権を有することを主張しているものであることは明らかであるから、右に説示したところに照らし、本訴における原告適格に欠けるところはないものというべきである。また、前記のような独占禁止法違反行為(不当な取引制限)を責任原因とする不法行為訴訟においては、その損害賠償請求をすることができる者を不当な取引制限をした事業者の直接の取引の相手方に限定して解釈すべき根拠はなく、一般の例と同様、同法違反行為と損害との間に相当因果関係の存在が肯定できる限り、事業者の直接の取引の相手方であると、直接の相手方と更

に取引した者等の間接的な取引の相手方であるとを問わず、損害賠償を請求することができるものというべきであるから、本訴における被上告人らの主張をもって、それ自体理由がないものということもできない。したがって、右と同旨に帰する原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

 三 同第三点について

 1 独占禁止法四八条は、公正取引委員会は、同法の規定に違反する行為があると認める場合において、審判手続を開始するに先立ち、まず、当該違反行為をしている者に対して右違反行為を排除するために適当な措置(以下「排除措置」という。)をとるべきことを勧告し、その者がこれを応諾したときは、審判手続を経ないで、勧告と同趣旨の排除措置を命ずる審決(以下「勧告審決」という。)をすることができるものとしている。この勧告審決の制度は、独占禁止法の目的を簡易迅速に実現するため、同法の規定に違反する行為をした者がその自由な意思によって勧告どおりの排除措置をとることを応諾した場合には、あえて公正取引委員会が審判を開始し審判手続を経て独占禁止法違反行為の存在を認定する必要はないものとし、ただ、その応諾の

履行を応諾者の自主的な履行に委ねることなく、審決がされた場合と同一の法的強制力によってその履行を確保するために、直ちに審決の形式をもって排除措置を命ずることとしたものであり、正規の審判手続を経てされる審判審決(同法五四条一項)が公正取引委員会の証拠による違反行為の存在の認定を要件とし、同意審決(同法五三条の三)が違反事実の存在についての被審人の自認を要件としているのに対し、勧告審決は、その名宛人の自由な意思に基づく勧告応諾の意思表示を専らその要件としている点にその法的特質を有するのである(最高裁昭和五〇年(行ツ)第一一二号同五三年四月四日第三小法廷判決・民集三二巻三号五一五頁参照)。

 このように、勧告審決は、勧告の応諾を要件としてされるものであって、独占禁止法違反行為の存在の認定を要件とするものではなく(公正取引委員会による違反行為の認定は勧告の要件にしかすぎない。)、したがって、勧告審決によって、右違反行為の存在が確定されるものではないのであるが、勧告の応諾は、違反行為の排除措置を採ることの応諾なのであるから、独占禁止法違反の行為を不法行為の責任原因とする損害賠償請求訴訟において、右違反行為の排除措置を命ずる勧告審決があったことが立証された場合には、違反行為の存在について、いわゆる事実上の推定が働くこと自体は否定できないものというべきである(前記第三小法廷判決参照)。そして、勧告審決の審決書には、排除措置との関係において排除されるべき違反行為を明確にす

るとともに審決の一事不再理の効力との関係において事実を特定するために、同法五七条一項にいう審決書に示すべき公正取引委員会の認定した事実として、勧告に際し公正取引委員会が認めた事実(同法四八条一項)、すなわち、勧告書に記載された事実(公正取引委員会の審査及び審判に関する規則二〇条一項一号)を示さなければならないのであり(前記第三小法廷判決参照)、前記勧告審決の法的特質と右の勧告審決書において独占禁止法違反の事実が示される意義にかんがみると、勧告審決の存在が立証されたことに基づく前記の事実上の推定は、当該勧告審決書の主文と審決書に示された同法違反の事実を実質的に総合対照し、勧告審決の主文の排除措置と関連性を有しない違反行為を除き、主文において命じられた排除措置からみて論理的に排除

措置がとられるべき関係にあると認められるすべての同法違反行為の存在についても働くことを否定することはできない。

 しかし、勧告審決は勧告の応諾を要件とするものであって、違反行為の存在の認定は要件とされていないものであることからみて、その有する事実上の推定の程度は、違反行為に関する公正取引委員会の証拠による事実認定を要件とする審判審決や被審人の違反行為事実の自認を要件とする同意審決に比して、相対的に低いものであり(前記第三小法廷判決、最高裁昭和五六年(行ツ)第一七八号昭和六二年七月二日第一小法廷判決・民集四一巻五号七八五頁参照)、また、勧告の応諾が、審判手続や審決後の訴訟等で争うことの時間的、経済的損失あるいは社会的影響に対する考慮等から、違反行為の存否とかかわりなく行われたことが窺われるときは、勧告審決が存在するとの事実のみに基づいて、その審決書に記載された独占禁止法違反行為が存在する

ことを推認することは許されないものと解するのが相当である。

 2 これを本件についてみるに、原審は、(一) 公正取引委員会は、昭和四九年二月五日、上告人ら石油元売一二社(当時)に対し、上告人らが共同して石油製品の販売価格(元売仕切価格)の引上げを決定しこれを実施したことは、独占禁止法二条六項の不当な取引制限に該当し、同法三条に違反するとして、上告人ら石油元売一二社が昭和四八年一一月上旬ころに行った値上げ決定の破棄を求めるなどの勧告を行ったところ、上告人らがこれを応諾したので、昭和四九年二月二二日、これと同趣旨の勧告審決をした(以下「本件勧告審決」という。)、(二) 本件勧告審決書には、公正取引委員会が認定した事実として、上告人ら石油元売一二社は、(1) 昭和四七年一一月下旬ころ、いずれも昭和四七年一〇月価格比で、揮発油、ジェット燃料油各一〇〇

〇円、ナフサ三〇〇円、灯油、軽油、A重油各五〇〇円、B重油四〇〇円、C重油一〇〇円(各一キロリットル当たり。以下同じ。)を目標にして、揮発油については昭和四八年一月一六日から、その余の石油製品については同年一月一日から販売価格を引き上げる旨の決定を、(2) 昭和四八年一月上旬ころ、いずれも昭和四七年一〇月価格比で、揮発油三〇〇〇円、ナフサ三〇〇円、ジェット燃料油、灯油、軽油、A重油各一〇〇〇円、B重油五〇〇円、C重油二〇〇円を目標にして、揮発油については昭和四八年二月一六日から、その余の石油製品については同年二月一日から販売価格を引き上げる旨の決定を、(3) 昭和四八年五月一四日、いずれも同年六月価格比で、灯油、軽油、A重油各一〇〇〇円、B重油三〇〇円を目標にして、同年七月一日か

ら(その後検討の上、同年八月一日からに変更)販売価格を引き上げる旨の決定を、(4) 昭和四八年九月上旬ころ、いずれも同年六月価格比で、揮発油三〇〇〇円、ナフサ、民生用灯油各一〇〇〇円、工業用灯油、軽油、A重油各二〇〇〇円、B重油六〇〇円、C重油二〇〇円を目標にして、同年一〇月一日から(揮発油は同年一一月一日から)販売価格を引き上げる旨の決定(なお、同年一〇月上旬ころ、C重油の引上げ額を四〇〇円に改めた。)を、(5) 昭和四八年一一月上旬ころ、同年六月価格比で、揮発油一万円、ナフサ、ジェット燃料油各五〇〇〇円、工業用灯油、軽油、A重油各六〇〇〇円、B重油、C重油各三〇〇〇円を目標にして、同年一一月中旬から(揮発油は同年一二月一日から)販売価格を引上げる旨の決定を、それぞれした旨の記

載がある(以上これらの決定を、以下「本件各協定」という。)、との事実を確定した上、所論指摘のような事由を根拠に、勧告審決がされたことをもって、その余の審決との間には審決に至る過程の相違により推定の程度に強弱があるにしても、独占禁止法違反行為の存在につき事実上の推定を働かせることができ、また、審決書の記載から明らかに単なる事情として記載されたものを除き、審決書全体を通じて公正取引委員会が認定したものと認められる違反行為のすべてについて右事実上の推定が及ぶとの見解のもとに、上告人らに対し右のような本件勧告審決がされたことによって、反証のない限り、右審決書に示されたように、上告人らが本件各協定の価格協定をしたものと事実上推定することができるものであり、右事実を否定する上告人らの主張

に沿う証拠も右事実上の推定を動かすに足る反証とはならない、と判断した。

 3 勧告審決の存在に基づく独占禁止法違反行為の存在についての事実上の推定及びその推定の及ぶ範囲については、前記1のように解すべきところ、本件において、前記2のとおり、本件勧告審決がされたことに基づいて上告人らによる本件各協定全部の存在について事実上の推定を及ぼすことができるとした原審の判断は、その根拠として、勧告審決もその実質に着目すれば他の審決と同様、公正取引委員会の認定した事実に基礎を置くものと解されること等を挙げている点において、その措辞必ずしも適切とはいい難いものがあるが、原審の確定した本件勧告審決書の主文と審決書に示された前記独占禁止法違反の事実を実質的に総合対照すると、本件各協定は、主文において命じられた排除措置からみてすべて論理的に排除措置がとられるべき関係に

あるものということができるから、事実上の推定が働くとしたことは、その限りにおいて是認することができる。

 しかしながら、記録によると、上告人らは、原審において、本件勧告審決の前提としての勧告の応諾がされた当時の石油業界をめぐる経済的社会的情勢を詳細に主張し、上告人ら石油元売一二社としては、決して独占禁止法違反行為を認めたために勧告を応諾したのではなく、右の情勢からみて勧告の応諾を拒否して審判・訴訟で争うのは石油業界の置かれた状況を悪化させることになって得策ではなく、勧告を応諾したとしても同法違反行為を認めることにはならないから勧告を応諾したほうがよいという通産省当局による強力な慫慂があり、また、同法違反行為の存否を長い時間、多大の費用をかけて争うことによるデメリットを考慮し、その結果、勧告を応諾したものであることを主張し、かつ、これに沿う証拠を提出しているが、この証拠によれば、

右主張事実、すなわち、上告人らのした勧告の応諾は、違反行為の存否とかかわりなく行われたことが窺われるから、前記1の説示に照らし、本件勧告審決が存在するとの事実のみに基づいて、審決書に記載された上告人ら石油元売一二社による本件各協定の締結という独占禁止法違反行為が存在することを推認することは許されないことになるものというべきである。しかるに、原審は右事情の存否につきなんら判断を加えることなく、前記のとおり事実上の推定を働かせて同法違反行為の存在を推認しているのであるから、この点において、原判決は、法令の解釈適用を誤り、ひいては理由不備の違法を犯したものというべきである。右の違法をいう論旨は理由があり、原判決中被上告人A1及び同A2に関する部分並びにその余の被上告人らについての上告

人ら敗訴部分は、この点において破棄を免れないものというべきである。

 四 同第九点について(勧告審決の存在のみによって事実上の推定を働かせて本件各協定の存在を確認した原審の判断が是認できないことは、三に説示したとおりであるが、この論旨との関係では、本件各協定の存在の有無はひとまずおいて判断する。)

 1 本件のような石油製品の最終消費者が、石油元売業者の違法な価格協定の実施により損害を被ったことを理由に石油元売業者に対してその賠償を求めるためには、次の事実を主張・立証しなければならないものと解される。

 まず、(一) 価格協定に基づく石油製品の元売仕切価格の引上げが、その卸売価格への転嫁を経て、最終の消費段階における現実の小売価格の上昇をもたらしたという因果関係が存在していることが必要であり、このことは、被害者である最終消費者において主張・立証すべき責任があるものと解するのが相当である(前記昭和六二年七月二日第一小法廷判決参照)。

 次に、(二) 元売業者の違法な価格協定の実施により商品の購入者が被る損害は、当該価格協定のため余儀なくされた支出分として把握されるから、本件のように、石油製品の最終消費者が石油元売業者に対し損害賠償を求めるには、当該価格協定が実施されなかったとすれば、現実の小売価格(以下「現実購入価格」という。)よりも安い小売価格が形成されていたといえることが必要であり、このこともまた、被害者である最終消費者において主張・立証すべきものと解される。もっとも、この価格協定が実施されなかったとすれば形成されていたであろう小売価格(以下「想定購入価格」という。)は、現実には存在しなかった価格であり、これを直接に推計することに困難が伴うことは否定できないから、現実に存在した市場価格を手掛かりとして

これを推計する方法が許されてよい。そして、一般的には、価格協定の実施当時から消費者が商品を購入する時点までの間に当該商品の小売価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、当該価格協定の実施直前の小売価格(以下「直前価格」という。)をもって想定購入価格と推認するのが相当であるということができるが、協定の実施当時から消費者が商品を購入する時点までの間に小売価格の形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因等の変動があるときは、もはや、右のような事実上の推定を働かせる前提を欠くことになるから、直前価格のみから想定購入価格を推認することは許されず、右直前価格のほか、当該商品の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因を総合検討してこれを推計しなければならないものというべきである(前記第一小法廷判決参照)。更に、想定購入価格の立証責任が最終消費者にあること前記のとおりである以上、直前価格がこれに相当すると主張する限り、その推認が妥当する前提要件たる事実、すなわち、協定の実施当時から消費者が商品を購入する時点までの間に小売価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等にさしたる変動がないとの事実関係は、やはり、最終消費者において立証すべきことになり、かつ、その立証ができないときは、右推認は許されないから、他に、前記総合検討による推計の基礎資料となる当該商品の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因をも消費者において主張・立証すべきことになると解するのが相当である。

 2 しかるに、原審は、右1(二)の想定購入価格を算定するに当たり、次のとおり判断した。販売競争の激しい石油業界では、仮に原価上昇等の値上がり要因があったとしても石油元売会社の個別的な判断と努力によっては容易に値上げをなしえないのが実状であり、この実状にかんがみれば、価格変動(値上がり)要因があったとしても、価格協定の締結がない場合には通常、価格協定直前の価格、すなわち、価格協定の影響を受ける直前の元売仕切価格、したがってまた小売価格がそのまま継続するものと考えられるとし、元売段階あるいは流通段階に顕著な値上がり要因があり、価格協定の締結がない場合でも具体的な値上げ時期及び値上げ幅の割合をもって価格の上昇が確実に予測されるごとき特段の事情のない限りは、価格協定直前の元売仕切価格をもって想定元売仕切価格と、価格協定直前の小売価格をもって想定購入価格と解するのが相当であるとした上、右特段の事情の存否につき、まず、元売段階につき、(1) 石油製品は精製による付加価値が低いところから、製品の総合原価に占める原油価格の割合が高く、したがって、一般に原油価格の値上げがあれば石油製品価格の引上げの原因となることは明らかであり、現に、昭和四八年一月以降、いわゆるOPEC攻勢による原油CIF価格は上昇の一途をたどっていた、しかし、商品の価格は市場における競争のうちに形成されるものであるから、原価の値上がりがあっても直ちに商品価格の値上がりに結び付くものではないし、結果的には商品価格の値上げをもたらすものとしても、市場における商品の価格形成に至る過程は単純かつ一様ではな

いのみならず、石油製品は連産品であって、個々の製品の原価はなく、コスト上昇の製品への転嫁額は各会社の価格政策によって決定されるのであるから、仮に価格協定の締結なしに原価上昇を理由とする石油製品の値上げが現実に行われたとしても、白灯油(民生用灯油)を始めとする各製品の値上げの有無及びその時期、値上げ幅などを確定することはできない、(2) 昭和四八年初め頃から需要の軽質化が進んで次第に白灯油の需要が増加し、不需要期に入った同年四月から同年九月までの灯油の販売量は、昭和四六、四七年の同期に比し飛躍的に増加している、一般に需要の増加は、供給量を一定とした場合、価格の上昇をもたらすものであるが、業界では昭和四八年四月から同年八月にかけて通産省の指導により灯油の増産が行われ、その間の生産量、在庫量とも前年、前々年に比しいずれもかなりの増加を示しており、灯油の供給量ないし供給可能量が需要量に比例して伸びているものということができるから、右の経済原則は文字通りには働かない、また、原油処理量を増加させたことにより灯油以外の他の石油製品の増産をもたらし、その備蓄費用の増大を招いたとか、より高価な軽質原油を輸入することにより灯油の増産を図ったとかの事実は認められない、(3) 昭和四八年秋以降四九年春にかけて、いわゆる狂乱物価と呼ばれる時期があり、この時期において一般消費生活物資が全般的に非常に値上がりしたことは公知の事実であり、これが原油価格の高騰をその主たる契機として生じた現象といわれていることから、当時元売段階に顕著な価格変動要因が存していたことは否めないが、この要因が、白灯油はじめ各石油製品の価格値上げの時期及び値上げ幅の割合につき具体的にどの程度の影響を及ぼしたかは明らかでない、(4) 通産省の設定した元売仕切価格についての指導上限価格は、当時の価格指導の基本方針とその指導の経緯に照らせば、業界の石油製品の値上げに際し、その定めた製品の値上げ幅につき十分検討を加えた上で相当として承認を与えたという性質のものではないから、右上限価格の設定をもって、右にいう顕著な値上がり要因の存在と協定で定めた値上げ幅の相当性を示す証左とすることはできない、とし、次いで流通段階について、(5) 需要の軽質化傾向を原因とする白灯油の需要の増加の実態は工業用灯油に対する需要の増加に基づくもので、民生用灯油に対する需要の増加によるものではないから、流通(小売)段階

における値上げを必然的にもたらす要因となるものではない、また、仕入価格の引上げも結局元売仕切価格の引上げに起因するものであり、元売仕切価格の引上げをもたらす経済的必然性の認められない以上、これも流通段階における価格変動要因とはならない、(6) 昭和四六年以降の消費者物価指数、卸売物価指数、名目賃金指数の逐年の上昇と小売段階における人件費の占める割合(およそ五〇パーセント)からみて、人件費の上昇は特に小売価格の上昇を直接もたらすものであるが、生協関係において人件費の上昇の有無程度を具体的に知ることはできないし、また、灯油販売業は、兼業副業が圧倒的に多く、諸物価の騰貴、人件費の上昇を灯油関係費のみに結び付けることはできないし、その影響の程度も定かでない、(7) アポロ月山から鶴岡生協に対する昭和四八年一〇月及び一一月の販売数量が前年同期に比較して著しく増加しているが、同年度下期と前年度下期とでは販売数量そのものが激増しているのであるから、右販売数量の増加をもって仮需要の発生ということはできないし、一般取引の関係で仮需要の発生が認められるとしても、その販売価格に対する具体的な影響の有無程度を確定できない、(8) 昭和四八年一一月二八日に通産省は家庭用灯油の小売価格につき三八〇円(一八リットル当たり、店頭渡、容器代別)の指導上限価格を設定した、この価格設定は通産省において全石商、全石協等関係筋の意見を徴してされたものであるが、結局現状を追認した上での価格指導であって、価格協定の存在しない場合の小売価格を示唆するものではない、とそれぞれ説示して、元売段階、小売段階における値上がり要因とされる右事由は、いずれも前記の具体性をもって確実に予測される特段の事情たりえない、と判断し、鶴岡生協の組合員として同生協から白灯油を購入した被上告人ら(被上告人A3(ただし、別紙選定者目録(一)整理番号251ないし274の選定者に係る部分)、同A4及び同A2を除くその余の被上告人ら)の請求に関し、昭和四八年一〇月二一日以降の登録制による購入分についての想定購入価格は、協定直前の小売価格である二八〇円(一八リットル当たり。以下同じ)であり、同年一〇月二〇日までの現金供給分についての想定購入価格は、同じく三二〇円(前同)である、と推認し、一般小売店等から購入した被上告人A3(ただし、別紙選定者目録(一)整理番号251ないし274の選定者に係る部分)、同A4及び同A2の

請求に関し、昭和四八年一月以降の想定購入価格は、二八〇円を越えない、と推認した。

 3 しかしながら、直前価格をもって想定購入価格と推認することができる場合については前記1(二)のとおりに解するのが相当であるから、右の点に関する原審の判断を是認できないことは明らかである。のみならず、原審が指摘する前記2の(1)ないし(8)のうち、事実の評価に関する部分には、直ちにそのように判断してよいか問題の部分があるばかりでなく、原審も、(1)の原油価格の顕著な上昇の継続、(2)の白灯油の需要の飛躍的な増加、(3)のいわゆる狂乱物価の時期における一般消費生活物資の顕著な値上がり、(4)及び(8)の通産省の元売仕切価格についてされた指導上限価格の設定、(5)の流通段階における仕入価格の上昇、(6)の流通段階における人件費の上昇の各事実については、その存在を肯定しているのであり、また、原審は、通産省

が昭和四六年四月のいわゆる一〇セント負担の行政指導以来物価対策及び民生対策上の見地から特に白灯油への価格転嫁による一般消費者への影響を考慮し、強力な価格抑制政策をとっていたこと、すなわち、同年一〇月各元売会社に対し各社の白灯油元売仕切り価格を同年冬は値上げせず、同年二、三月の平均価格以下とするよう指導したこと、業界が昭和四七年一月のオペック第四次値上げに伴う原油の値上がりに対処するため通産省に対し一〇セント負担の解除を前提として石油製品値上げの意向を伝えたところ、通産省の担当官は、はじめ一〇セント負担の解除の要請を拒否したが、結局は一キロリットル当たり平均約三〇〇円の値上げとする油種別値上げ案を了承したこと、また通産省の担当官は、昭和四八年七月ころ同年八月一日を実施期日とする

業界の値上げ案につき了承を与えたが、同月三日その了承した値上げ案のうち一般家庭用に使用される白灯油についてはその値上げ幅を七〇〇円ないし八〇〇円に減らして欲しい旨申し入れ、これに応じない業界との間にしばらく応酬があったが、結局同年一〇月以降は、同年九月末の時点の価格で据え置く価格凍結指導を行うに至ったこと、このように、通産省の白灯油に対する価格指導は、上限価格を設定し、その範囲内での価格の変動を認めるという内容のものであったことを認定しているのであるから、以上の各事実を合わせ考慮すれば、本件各協定の実施当時から被上告人らが白灯油を購入したと主張している時点までの間に、民生用灯油の元売段階における経済条件、市場構造等にかなりの変動があったものといわなければならない(原審も、元売

段階に顕著な価格変動要因があったことは否めないとして、これを認めている。)。そうすると、直前価格をもって想定購入価格と推認するに足りる前提要件を欠くものというべきであるから、直前価格をもって想定購入価格と推認した原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法が判決に影響することは明らかであり、したがって、論旨は理由があり、この点について原判決は破棄を免れない。そして、原審は、白灯油の原価を基準としてその価格を推計する方法については、石油製品がいわゆる連産品であって、石油製品全体の価格はあっても製品別の原価はなく、かつ製品別の原価を算定する方法はないと認定しているのであり、また各協定に影響を受けない元売会社の同種製品から想定購入価格を推計する方法については、当時わが国内に

おいて右協定の影響を受けない製品価格の存在を認めることができないと認定しているから、このような推計方法もいずれも不可能であることが明らかであり、更に記録にあらわれた本件訴訟の経過に照らすと、被上告人らは、本件訴訟において、直前価格を想定購入価格として損害の額の算定をすべきであって、その方法以外には、損害の額の算定は不可能であると一貫して主張し、1(二)で説示した前記推計の基礎資料とするに足りる民生用灯油の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度等の価格形成要因(ことに各協定が行われなかった場合の想定元売価格の形成要因)についても、何ら立証されていないのであるから、本件各協定が実施されなかったならば現実の小売価格よりも安い小売価格が形成されていたとは認められないというほかなく(なお、前記昭和六二年七月二日第一小法廷判決参照)、結局、被上告人らの請求は、この点において理由がなく(原判決は前記三に説示した違法によっても破棄を免れないが、この破棄理由によるまでもなく)、右請求を棄却した第一審判決は、結論として正当というべきである。

 五 以上の理由によれば、原判決中被上告人A1及び同A2に関する部分並びにその余の被上告人らについての上告人ら敗訴部分を破棄し、右各部分につき右被上告人らの控訴をいずれも棄却すべきである。

 第二 上告人出光興産株式会社の民訴法一九八条二項の規定による裁判を求める申立についての判断

 同上告人は、本判決添付の別紙申立のとおり、別紙選定者目録(一)から同(一七)までに選定当事者として表示された各被上告人らに対し、民訴法一九八条二項の裁判を求める申立をした。同上告人がその理由として陳述した同申立記載の事実関係は、同被上告人らにおいて明らかに争わないところであり、原判決中同上告人の敗訴部分が破棄を免れないことは前記説示のとおりである。

 したがって、以上の事実関係によれば、右各被上告人らは、同上告人に対し、右各被上告人らをそれぞれ選定当事者として選定した同各目録記載の各選定者が負担すべき金員として、右各選定者において原判決の仮執行宣言に基づいて給付を受けた金員及び同上告人が負担を余儀なくされた執行費用の合計額(その内訳は、別紙計算書その一及びその二の該当欄記載のとおりである。その合計額を同各目録の返還金額欄に記載した。)及びこれに対する右取立完了の日の翌日である昭和六〇年三月三〇日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるものというべきであるから、右各被上告人らに対し、それぞれその支払を求める同上告人の申立は正当として認容すべきである。

 第三 結論

 よって、前記第一記載の各上告人ら代理人の上告理由のうちその余の論旨及び上告人太陽石油株式会社代理人澤田隆義、同八木良夫、同梅澤良雄が別途提出した上告理由に係る論旨に関する判断を省略し、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、一九八条二項、九六条、八九条、九三条に従い、裁判官島谷六郎の補足意見、裁判官香川保一の意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 裁判官島谷六郎の補足意見は、次のとおりである。

 本件訴訟は、石油元売業者の価格協定の実施により、石油製品の購入者が損害を被ったとして、民法七〇九条による損害の賠償を求めるものであるが、その価格協定が実施されなかったとすれば形成されたであろう想定購入価格と消費者が現実に購入した際の小売価格との差額、価格協定の実施と現実購入価格の形成との間の相当因果関係の存在等についての主張立証の責任は、消費者において負担するものであること、多数意見において詳細に説示したとおりである。そして、現実の小売価格の形成には、経済的、社会的な幾多の要因があり、これら諸要因が複雑に競合して現実の小売価格が形成されるのであるから、想定購入価格の算出、小売価格と価格協定の実施との間の因果関係の有無等については幾多の難問が存在し、これらを消費者が主張立証す

ることは、極めて困難な課題であるといわなければならない。しかし、不法行為法の法理からすれば、まさに右説示のとおりであって、いまにわかにこの原則を変えるわけにはいかない。

 ところで、独占禁止法は、第二五条を設けて私的独占若しくは不当な取引制限をし、又は不公正な取引方法を用いた事業者に対し、損害賠償の責任を課しているのであるが、同条の訴訟においても、損害の発生、因果関係の主張立証については、民法七〇九条による訴訟におけると全く同様のことが消費者に求められている(前掲昭和六二年七月二日第一小法廷判決参照)のであって、やはりその主張立証は消費者にとって容易な業ではないのである。もし独占禁止法二五条に基づく訴訟について、消費者の被った損害の額につき何らかの推定規定を設けたならば、消費者が同条に基づく訴訟を提起することが容易となり、同条の規定の趣旨も実効あるものとなるであろうと考えられる。たとえば、事業者に対し、価格協定において定めた値上げ額を基準とし

て、一定の方式をもって算出される額を損害額と推定し、その賠償を命ずるが如きである。その算出方式については、立法過程における十分な検討によって、合理的な方式が見出されるべきものである。そのようにして、はじめて同条による訴訟が容易となり、独占禁止法の精神も実現されることになるであろう。そして消費者の被った損害の額について右のような推定規定をもつことによって、同条による訴訟が容易になるとするならば、消費者は民法七〇九条による訴訟を選んで困難な主張立証の責任を負うよりは、むしろ独占禁止法二五条の訴訟を選択することにより、その目的を達成することができるようになるものと思料する。

 裁判官香川保一の意見は、次のとおりである。

 私は、結論において多数意見と同じであるが、その理由については、次のとおり異にする。

 独占禁止法二五条は、同法にいう私的独占若しくは不当な取引制限又は不公正な取引方法を用いた事業者(以下これらの方法を用いた事業者の行為を「違反行為」という。)は、被害者に対しいわゆる無過失損害賠償責任を負うものとし、その被害者には、違反行為に基づく事業者との直接の取引の当事者には限らず、違反行為により間接的に不利益となる取引によって損失を受けた一般消費者等の間接の被害者も含まれるのであるが、このいわゆる無過失損害賠償責任を課することにより、間接の被害者の保護をも図るとともに、事業者の違反行為を抑止する効果を所期しているものというべきである。そして、これらの違反行為は、独占禁止法の制定により禁止され、違法とされることとなったものであり、右の独占禁止法二五条は、従来民法七〇九条に

よっては不法行為とされない違反行為について、これを特殊な不法行為として損害賠償の責に任ずるものとする特別規定を創設したものとみるべきである。そして、右の損害賠償請求権に関しては、その消滅時効の規定を設ける(同法二六条二項参照)ほか、その請求権の裁判上の行使、すなわち訴訟に関し、その出訴時期(同法二六条一項参照)、管轄裁判所及びその構成(同法八五条二号、八七条参照)並びに損害額についての公正取引委員会の意見聴取について規定が設けられている(同法八四条参照)のであるが、このような趣旨に徴すれば、違反行為による損害賠償請求権に関しては、民法七〇九条の適用はなく、実体上も訴訟上も独占禁止法の規定によるべきものと解するのが相当である。

 しかるところ、多数意見は、違反行為による損害賠償は、民法七〇九条による一般の不法行為の損害賠償としても請求することができるものとして、必ずしも独占禁止法二五条に基づくものとして請求することを要しないものとしているのであるが、かかる解釈は、前述したところにより果たして相当であり、妥当であるか甚だ疑問である。違反行為による損害賠償請求訴訟を事業者との直接の取引の当事者が提起する場合はともかく、間接の取引の当事者が被害者として右の訴えを提起する場合には、その損害の発生とその損害額さらには違反行為との相当因果関係が最も問題となるのであるが、民法七〇九条に基づく請求である限り、同条の不法行為一般の法理に従って、主張、立証がなされなければならず、確定審決による推定力も多数意見のとおり自

らいわば弱いものとならざるを得ないのも当然であり、審決の存しない場合はもちろん、確定審決の存する場合でも、損害の立証は極めて困難というよりも殆ど不可能であろう。

 これに反し、違反行為による損害賠償は、すべて独占禁止法二五条に基づいてのみ請求し得るものと解すれば、立法的には必ずしも充分の措置が講ぜられていないことは否定し難いけれども、民法七〇九条のいわば特則的なものとして、合理的な解釈により右の立法的不備を補い、当該損害賠償制度の趣旨に相応する運用をなし得るのである。裁判所は、独占禁止法八四条一項の公正取引委員会の損害額についての意見聴取の義務付けの法意に則して、同委員会のより適切な意見提出が励行されるならば、その意見を尊重すべきであるが、本件のように違反行為が価格値上協定である場合には、事業者の反対証明がない限り、最小限その協定による値上額相当の損害が違反行為により生じたものとするのが相当である。

 以上のとおり、違反行為による損害賠償請求については、独占禁止法二五条に基づく請求のみによるべきものであって、一般の民法七〇九条に基づく本件請求は、実体法上理由がないものとして棄却すべきものと解する。

     最高裁判所第二小法廷

         裁判長裁判官    島   谷   六   郎

            裁判官    牧       圭   次

            裁判官    藤   島       昭

            裁判官    香   川   保   一

            裁判官    奧   野   久   之

      当事者目録

    東京都港区a丁目b番c号

          上  告  人     日本石油株式会社

          右代表者代表取締役   B1

          右訴訟代理人弁護士   鎌   田   久 仁 夫

    同  千代田区a丁目b番c号

          上  告  人     出光興産株式会社

          右代表者代表取締役   B2

          右訴訟代理人弁護士   梶   原   正   雄

                      梶   原   洋   雄

    同  港区a丁目b番c号

          上  告  人     共同石油株式会社

          右代表者代表取締役   B3

          右訴訟代理人弁護士   吉   田   太   郎

                      塚   本   重   ョ

                      堤       淳   一

                      安   田       彪

    同  港区a丁目b番c号

          上  告  人     三菱石油株式会社

          右代表者代表取締役   B4

         右訴訟代理人弁護士   日   沖   憲   郎

    同  港区a丁目b番c号

          上告人兼丸善石油株式会社訴訟承継人

                      旧商号大協石油株式会社

                      コスモ石油株式会社

          右代表者代表取締役   B5

         右訴訟代理人弁護士   樋   口   俊   二

    同  港区a丁目b番c号

          上  告  人     ゼネラル石油株式会社

          右代表者代表取締役   B6

         右訴訟代理人弁護士   馬   場   東   作

    同  千代田区a丁目b番c号

          上告人兼シエル石油株式会社訴訟承継人

                      旧商号昭和石油株式会社

                      昭和シェル石油株式会社

          右代表者代表取締役   B7

         右訴訟代理人弁護士   藤   井   正   博

    同  中央区a丁目b番c号

          上  告  人     キグナス石油株式会社

          右代表者代表取締役   B8

         右訴訟代理人弁護士   井   本   台   吉

    同  千代田区a丁目b番c号

          上  告  人     九州石油株式会社

          右代表者代表取締役   B9

         右訴訟代理人弁護士   輿   石       睦

    同  千代田区a丁目b番c号

          上  告  人     太陽石油株式会社

          右代表者代表取締役   B10

         右訴訟代理人弁護士   澤   田   隆   義

    山形県鶴岡市a町b丁目c番d号

                      選定当事者

          被 上 告 人     A3

                      (選定者は別紙選定者目録(一)記載のとおり)

    同  鶴岡市a丁目b番c号

                      選定当事者

          被 上 告 人     A5

    山形市a丁目b番c号

          被 上 告 人     A1

    同 a町b番c号

          被 上 告 人     A2

          右一九名訴訟代理人弁護士

                     脇   山       弘

          右補佐人        A20

最 高 裁 判 所 判 例 集 判 決 全 文 表 示

判例 S57.03.09 第三小法廷・判決 昭和52(行ツ)113 審決取消(第36巻3号265頁)

判示事項:

  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律八条一項一号にいう競争の実質的制限とその後これに関して行われた行政指導との関係

要旨:

  事業者団体がその構成員である事業者の発意に基づき各事業者の従うべき販売価格の引上げ基準額を団体の意思として協議決定し私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律八条一項一号にいう競争の実質的制限をもたらした場合においては、その後行政指導(引上げ幅圧縮)があり各事業者が事実上これに従つたとしても、当該事業者団体が右の決定を明瞭に破棄したと認められるような特段の事情がない限り、右行政指導があつたことにより当然に競争の実質的制限が消滅したものとすることはできない。

参照・法条:

  私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律8条1項1号

内容:

 件名  審決取消 (最高裁判所 昭和52(行ツ)113 第三小法廷・判決 棄却)

 原審  S52.08.15 東京高等裁判所

主    文

     本件上告を棄却する。

     上告費用は上告人の負担とする。

理    由

 上告代理人入江一郎名義、同加藤一芳、同藤堂裕の上告理由について

 一 論旨は、まず、上告人の行つた昭和四六年二月二二日の石油製品価格の引上げ決定(以下「本件決定」という。)は、その後行われた通商産業省の行政指導によりその効力を失い、各元売業者は右行政指導の枠内で自主的に価格の引上げ額を決定することが可能となつたのであつて、それは、とりも直さず、行政指導の枠内での価格競争が回復されたことにほかならないから、本件決定による競争の実質的制限はなくなつたものと解すべきである、と主張する。

 1 この点に関し、原判決が本件審決認定事実につき実質的証拠があるものとして適法に確定した事実は、おおむね次の(一)のとおりであり、上告人の主張する行政指導なるものと本件決定との関係に関する原審の認定判断は、次の(二)のとおりである。

 (一) 昭和四六年二月二二日上告人の機関として一般石油製品の販売に関する事項等につき決定権を有する営業委員会(上告人の会員元売業者各社の営業を担当する常務取締役らをもつて構成されている。)は、三菱石油株式会社会議室において、委員長a以下一四委員出席のもとに会合を開き、「原油FOB(価格)UPに対する(石油製品の油種別)値上げ幅の水準決定」を議題とし、石油製品の販売価格の引上げについて協議した。その席上、重油専門委員長bが、第一次から第三次までの原油値上り(原油FOB値上げ単価、製品換算一キロリツトルあたり一一一三円)にともなう石油製品の油種別値上げ額の設定について、かねて作成されていた試算表等に基づき、昭和四六年度石油供給計画中の内需向け生産量と日本銀行昭和四五年一二月石油製品卸売価格ほか四計算基礎を用い、ケース一から五までの各油種別値上げ必要額を算出し、さらに、ケース一を基礎にこれらを総合し、石油製品の油種別値上げ目標額として、ケース「A」及びケース「B」の両案を算定する旨説明した。この説明があつた後、同委員会において、検討の結果、第一次原油値上り直後の同四五年一二月の石油製品販売価格に対し、ケース「A」すなわち、一キロリツトルあたり、揮発油二〇〇〇円、ナフサ八〇〇円、ジエツト燃料油一五〇〇円、灯油二〇〇〇円、軽油一五〇〇円、A重油一五〇〇円、B重油一〇〇〇円、C重油九〇〇円を値上げ目標とし、同四六年三月一日以降、それぞれ石油製品の販売価格を引き上げること、ただし、揮発油は、同年三月一日から、まず一〇〇〇円引き上げることを決定した。

 (二) 上告人の主張する行政指導なるもの(以下「行政指導なるもの」という。)は、上告人の主張するところによつても、通商産業大臣が法律上の強制権限に基づいて行うものではなく、通商産業省当局の単なる指導にとどまるものであるとともに、その内容においても、原油コスト・アツプに伴う負担増分の全額を需要者に転嫁することは適当でないが、製品換算一キロリツトルあたり八六〇円の限度で、これを需要者に転嫁することはやむをえないとするもので、販売価格の引上げを指導したものではなく、その販売価格の引上げを決定した本件決定とはその内容を異にするものであつて、もとより本件決定を消滅させ、準拠すべき新たな価格を設定したものではないから、行政指導なるものに従いつつ本件決定に従うことも不可能ではなく、仮に個々の上告人会員元売業者各社(以下「元売業者各社」という。)が行政指導なるものの事実上の強制力によりこれに従うことを余儀なくされたため、本件決定に基づく値上げの目標を完全に達成できなかつたとしても、その達成した範囲内では、それが本件決定に基づく値上げでないとはいえないし、もとより元売業者各社が行政指導なるものに事実上従つたからといつて、そのため本件決定の拘束力が消滅し、元売業者各社のその後の価格行動が右決定に基づくものでなくなるものともいえない。のみならず、元売業者各社は、行政指導なるものが行われる以前において、すでに本件決定に基づき、石油製品の値上げ額をその取引先に通告し、おおむね、石油製品の販売価格を引き上げているうえ、さらに行政指導なるものが行われた後の同年五月中旬ないし六月中旬現在においても、元売業者各社の各支店、営業所等においては、その値上げ未了分の値上げ達成のため市況等をみながら可能な範囲で努力中であることが明らかであつて、その間及び本件審判開始決定のときまでに上告人が本件決定を破棄し、あるいは値上げの申入れを撤回させるなど破棄に準ずる措置をとつた形跡はなく、他に本件決定が消滅したとすべき特段の事情も認められない。

 2 ところで、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)八条一項一号にいう競争の実質的制限が成立するための要件としては、事業者団体の行動を通じ事業者間の競争に実質的制限をもたらすこと、これを本件に即していえば、上告人の機関決定により上告人所属の事業者らの価格行動の一致をもたらすことがあれば足りるものと解するのを相当とする。したがつて、事業者団体がその構成員である事業者の発意に基づき各事業者の従うべき基準価格を団体の意思として協議決定した場合においては、たとえ、その後これに関する行政指導があつたとしても、当該事業者団体がその行つた基準価格の決定を明瞭に破棄したと認められるような特段の事情がない限り、右行政指導があつたことにより当然に前記独占禁止法八条一項一号にいう競争の実質的制限が消滅したものとすることは許されないものというべきである。

   これを本件についてみるのに、原審の前記認定判断によれば、事業者団体である上告人の行つた本件決定後、その実施の過程において、主務官庁の通商産業省当局が本件決定における引上げ幅圧縮のガイドラインを示したところ元売業者各社が事実上これに従つたにすぎず、本件決定がいかなる形式であれ明瞭に破棄されたと認めるに足りる特段の事情は何ら見当たらないというのであるから、前記競争の実質的制限が成立するための要件は十分みたしているものとみるのを相当とする。仮に、本件において事業者団体である上告人により決定された原油の製品換算一キロリツトルあたり一一一三円の引上げが行政指導なるものに従つた結果八六〇円の引上げにとどめられたとしても、行政指導なるものは価格引上げの限度を示したにすぎないものであるから、これによつてさきに行われた上告人の価格引上げ決定の効力に影響を及ぼすものとみることはできないといわなければならない。

 二 論旨は、現実の市場において各事業者が、その製品価格や希望価格(交渉値)を決定するに当たつては、各事業者によつて異なるいわゆる油種構成比を考慮する必要があり、他方、事業者団体の示す油種別価格は製品の油種別構成とは関係なく決められるものであるため、各事業者の具体的販売価格を拘束する意味に乏しいかのごとく主張する。確かに、石油のようないわゆる連産品にあつては、各事業者それぞれの販売事情により、製品の油種構成比が重要な経営上の要因となることは否定できない。しかし、本件決定は、原審の認定又は推認するところによれば、昭和四六年度石油製品供給計画中の内需向け生産量を販売数量とし、日本銀行昭和四五年一二月石油製品卸売価格を販売単価として、前記一一一三円をいわゆる等価比率で割り振る方法により算定したものであり、事業者である元売業者各社は、本件決定に基づき各自自社の石油製品の値上げ額を定め、おおむね本件決定所定の期日から、揮発油については本件決定による価額のとおりに、その他の石油製品については右価額を目標として販売価格を引き上げているというのである。したがつて、本件決定自体は所論の油種構成比とは関係がなく、また元売業者各社が、それぞれの販売事情に応じた油種構成比を勘案することにより元売業者各社間において値上げ額に多少の相違が生ずるとしても、それは原審が認定した程度にとどまるものであるから、いずれにしても、所論の理由により本件決定が独占禁止法八条一項一号にいう競争の実質的制限にあたらないとすることはできないものというべきである。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

 よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

     最高裁判所第三小法廷

         裁判長裁判官    横   井   大   三

            裁判官    環       昌   一

            裁判官    伊   藤   正   己

            裁判官    寺   田   治   郎」

以上の最高裁判所の判決をよりどころとして、現判決の審理不尽や経験則違反について論ずる。

「かかる価格協定が実施されなかつたとすれば、右現実の小売価格よりも安い小売価格が形成されていたといえることが必要であり、このことはいずれも被害者たる消費者において主張立証すべき責任があるというべきである。もつとも、この価格協定が実施されなかつたとすれば形成されていたであろう小売価格(以下「想定購入価格」という。)は、現実には存在しなかつた価格であり、一般的には、価格協定の実施前後において当該商品の小売価格形成の前提となる経済条件、市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り、協定の実施直前の小売価格をもつて想定購入価格と推認するのが相当であるといえるが、協定の実施以後消費者が商品を購入する時点までの間に小売価格の形成に影響を及ぼす顕著な経済的要因の変動があるときは、協定の実施直前の小売価格のみから想定購入価格を推認することは許されず、右小売価格のほか、当該商品の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因を検討してこれを推計しなければならない。」

推認するのが相当であるといえる、その他の価格形成要因を検討してこれを推計しなければならない、この価格協定が実施されなかつたとすれば形成されていたであろう小売価格等の事実認定の仕方は、これまでの事実認定の仕方とは異なっており、これは推認というのは解釈すれば50%程度の証拠の優越に関する理論を取り入れた判決であったのである。酒匂悦郎事件ではこれは99%の証拠を要求しており、これまでの日本におけるすべてのうべかりし利益事件はそのような証拠の認定を行っていたのである。

従って本件判決はそれを踏襲した判決であり、これまでの判例違反がある。当然にどちらも独占禁止法違反の判決であり、踏襲すべきものである。従って判例違反があるので破棄し差戻すべきである。

「所論は、被告人らは、値上げの上限に関する通産省の了承を得るための業界の希望案について合意したにすぎないと主張するが、原判決が共同行為の存在を推認させるものとして指摘する多くの客観的事実関係の中には、被告人らが、通産省の了承の得られることを前提としてではあるが、各社いつせいに石油製品価格の引上げを行うこと及びその際の油種別の値上げ幅と実施時期についてまで合意したと考えるのでなければ合理的に理解することのできないものが多数存在し(例えば、原判決第三、三、(二)、1、(2)のニ、ホ、ト、チ、ヌなど)、これらの点については、所論によつても的確な反論がなされているとは認め難い。」

共同行為の存在を推認させるものという言葉も、独占禁止法事件における判決のあり方を示しているにもかかわらず、そのような言葉は原審判決には一切でて来ず99%の証明を要求している。これは公取委の摘発を恐れてのことであるがとの認定があるように、いかに不法行為事件である酒匂悦郎事件とは異なった事実認定が独占禁止法事件においては行われてきたのかを理解していない判決であり、審理不尽、事実認定の誤りであり、判決の重大な影響を及ぼしているので破棄されるべきである。

「右協定の実施の前後を通じ、その小売価格の形成に影響を及ぼすべき経済的要因に顕著な変動があつたというべきであるから、前示のとおり、本件においては協定の実施直前の小売価格をもつてそのまま想定購入価格と推認することは相当でないといわざるを得ない。したがつて、原審が、上告人らの損害の有無を判断するに当たり、協定の実施直前の小売価格をもつて想定購入価格と推認する方法をとらなかつたことに所論の違法はない。」

想定購入価格と推認する方法とは、本件事件においては入会拒否が行われなかった場合の(つまり価格合意が行われなかった場合の)推定される事態を一切検討していないことからくる推定の誤りであるということが出来、このように違反を行わなかったことによって自然な形とは被上告人(債務者)が違った自然ではない市場にしてしまったのであるから、その責任は被上告人(債務者)が負うべきであるという挙証責任の分担原則を採用しなかった故に、加害者に有利な判決を導き出す結果になったものと考えることが出来る。これは経験則違反であり、破棄されるべきである。

「当該価格協定に基づく元売仕切価格の引上げが、その卸売価格への転嫁を経て、最終の消費段階における現実の小売価格の上昇をもたらしたという関係が存在していること」

この因果関係についはこれまでの相当因果関係とは違った、独占禁止法が公取委の摘発を恐れてのことであるが、行われていることを理解して初めて関係が立証され、認定されることになる。

「本件各合意の直後に、各被告会社においてほぼ一致して、合意された価格と実施時期におおむね対応する値上げの指示が支店等に対してなされていること、さらには、一致して共同行為の存在を認めた被告人らの検察官調書の内容(なお、被告人らの検察官調書は、証拠上否定し難い通産省の前記のような行政指導にほとんど全く触れておらず、捜査に欠けるところがあつてこれを全面的に措信することには問題が残るにしても、少なくとも前記一連の客観的事実関係とあいまつて、共同行為を認定するための資料とはなりうるものと解する。)等記録上明らかな証拠関係に照らすと、被告人らは、油種別の値上げの上限に関する業界の希望案を合意するに止まらず、右希望案に対する通産省の了承の得られることを前提として、一定の期日から、右了承の限度一杯まで石油製品価格を各社いつせいに引き上げる旨の合意をしたと認めざるをえないのであつて、所論は採用し難い。

 四 次に、右のような合意をしたのが石連の営業委員会とは別個の「価格の会合」であつたとする原判決の認定には、前記のとおり疑問がある。たしかに、原判決の指摘するとおり、右会合には、営業委員会の本来の構成員であるP10(株)及びP11(株)の各代表が出席していないことが明らかであり、また石連事務局員の列席がなく、議事録の作成もなされなかつたことも事実と認められるが、他方、右会合が右両社を除くその余の元売り会社を代表する営業委員又はその代理人(これは、当時の営業委員会の現実の構成員のほぼ全員である。)によつて構成されていたこと、右会合の責任者は営業委員長自身であり、営業委員長の交代とともに右会合の責任者も交代していること、右会合においては、営業委員会の下部機構である重油専門委員会(スタデイ・グループ)を使つて基礎計算及び値上げ原案の作成を行わせていること、右会合における合意の内容は、営業委員会によつて行われたことに争いのない昭和四六年の値上げの際の合意と実質において異なるところがないこと、P10とP11の代表の欠席は、両社が外資系の会社であるところから、公取委の摘発を恐れてのことであるが、会合における合意の結果は、その都度責任者から両社に連絡されていたこと、石連事務局員の欠席も、石連自身が公取委に摘発された昭和四六年の値上げの際の経験にかんがみ、累が石連に及ぶことを回避するため、右会合が石連とは無関係であるとの外観を作出しようとしたことの結果にすぎないことなどの点も、証拠上明らかなところであつて、これらの諸点を総合して考察すると、本件各合意の行われた会合は、やや変則的な構成ながら、石連の営業委員会とその実体を同じくする会合であつたと認めるのが相当である。」

検察官調書については「被告人らの検察官調書は、証拠上否定し難い通産省の前記のような行政指導にほとんど全く触れておらず、捜査に欠けるところがあつてこれを全面的に措信することには問題が残るにしても、少なくとも前記一連の客観的事実関係とあいまつて、共同行為を認定するための資料」となるとしているが、本件事件においては私訴であるために、検察官の様に自白を強制したりすることは出来ず、あたかもそうであるようにいう原審判決は、経験則違反、また、審理不尽があり破棄されるべきである。

公取委の摘発を恐れてのことであるがとの認定は、いかにこれまでの判決とは違った事実認定を行っているかを理解することができる。

「右のような事実上の推定を働かせる前提を欠くことになるから、直前価格のみから想定購入価格を推認することは許されず、右直前価格のほか、当該商品の価格形成上の特性及び経済的変動の内容、程度その他の価格形成要因を総合検討してこれを推計しなければならないものというべきである(前記第一小法廷判決参照)。更に、想定購入価格の立証責任が最終消費者にあること前記のとおりである以上、直前価格がこれに相当すると主張する限り、その推認が妥当する前提要件たる事実、すなわち、協定の実施当時から消費者が商品を購入する時点までの間に小売価格の形成に影響を及ぼす経済的要因等にさしたる変動がないとの事実関係は、やはり、最終消費者において立証すべきことになり、かつ、その立証ができないときは、右推認は許されない」

その他の価格形成要因を総合検討してこれを推計しなければならないものというべきである(前記第一小法廷判決参照)というように、推計という手法を採用しているにもかかわらず、本件判決は一切そのような考え方からはほど遠く、ほぼ酒匂悦郎事件の99%の証拠主義を採用しているが、一般の契約とは違い、同じ合意や共謀であっても、公取委の摘発を恐れての合意であり、共謀であるから、検察官の様に権限を持っていても、証拠上否定し難い通産省の前記のような行政指導にほとんど全く触れておらず、捜査に欠けるところがあるのに、捜査段階での口裏合わせもあるのであろうから、いかに証拠の収集が難しいかを理解した上で、証拠の判断を行うべきかを最高裁判所の判決が示しており、これが理由で民事訴訟法第248条が法定された事情を省みない原審判決は法令適用の誤りがあり、破棄されるべきである。

これまでの50ギガにも及ぶ証拠の調査によって、たまたまではなく常に、ほとんど常に国、県、市町村、公社公団、民間、裁判所のすべてについて損害を立証したのであるから、これまでの上記判決に従った事実認定が行われていないのは、事実認定に関する誤りがあり、経験則違反である。破棄は免れない。

なお、正規の審判手続を経てされる審判審決(同法五四条一項)が公正取引委員会の証拠による違反行為の存在の認定を要件とし、同意審決(同法五三条の三)が違反事実の存在についての被審人の自認を要件としているのに対し、勧告審決は、その名宛人の自由な意思に基づく勧告応諾の意思表示を専らその要件としている点にその法的特質を有するのであるが、これまで判決として最高裁判所の判決があるのは以上の通りであり、またアメリカにおける入会金の高騰を抑える同意審決やらも判決ではないのであるから、これらは判決として確定すべきである。赤坂裕彦弁護士は入会金の値上げも、他の都道府県の入会金の値上げと同様に違法であるのならば、いうべきであるとして、入会拒絶以外のものについても申し述べているのである。その違法性よりも即刻必要なのは入会拒否に対する最高裁判所の判断である。モラトリアムについても同様である。入会拒否の判断についてはサマリージャッジメントのような緊急性がある。

「勧告審決の制度は、独占禁止法の目的を簡易迅速に実現するため、同法の規定に違反する行為をした者がその自由な意思によって勧告どおりの排除措置をとることを応諾した場合には、あえて公正取引委員会が審判を開始し審判手続を経て独占禁止法違反行為の存在を認定する必要はないものとし、ただ、その応諾の履行を応諾者の自主的な履行に委ねることなく、審決がされた場合と同一の法的強制力によってその履行を確保するために、直ちに審決の形式をもって排除措置を命ずることとしたものであり、正規の審判手続を経てされる審判審決(同法五四条一項)が公正取引委員会の証拠による違反行為の存在の認定を要件とし、同意審決(同法五三条の三)が違反事実の存在についての被審人の自認を要件としているのに対し、勧告審決は、その名宛人の自由な意思に基づく勧告応諾の意思表示を専らその要件としている点にその法的特質を有するのである(最高裁昭和五〇年(行ツ)第一一二号同五三年四月四日第三小法廷判決・民集三二巻三号五一五頁参照)。」

これまでの入会拒否に関する判断は正当な理由のない共同ボイコットに対する判断ではなかったのに、原審はその主張を踏襲したのであり、法令の適用の誤りがある。当然公正取引委員会の意見を聞いてのことだった。最高裁判所は良心に従うべきであった。

憲法違反である。

東京高等裁判所平成17年(ネオ)第183号・平成17年(ネ受)第192号

差止損害賠償請求事件

上告人兼上告受理申立人  株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

同        山 口  節 生

相手方          社団法人埼玉県不動産鑑定士協会

             同代表理事  岩 ア  彰

上告理由書兼上告受理申立理由書(7)

平成17年5月9日

最 高 裁 判 所 御中

上記上告人兼上告受理申立人

株式会社日本経済研究所

同代表者代表取締役  山 口  節 生

山 口  節 生

現代社会は所有権から、債権の時代に変動しつつあるとは、我妻栄の名論文である。我々の社会においては債権が所有権に近い状態になりつつあるというのである。

なぜにここから論をはじめるか。それは浴場業の事業規制、薬局事件の事業規制、本件事件においては事業実績報告書による事業規制がすべて所有権と関わりを持っているからである。

税理士会の事件においては、各納税者の納税地が所有権と関わっている。但し税理士会の場合には国家の土地支配権と関係しており、国家的な意味合いが強い。弁護士会も同様である。

ところが不動産鑑定業の場合には、不動産業と同様な株式会社制度が制度制定の立法趣旨においてとられた。

不動産は土地が固定性があるので、その土地で生まれた人がその土地で開業することが多い。そのためにその土地で生まれて、その土地で開業できない様な事態にでもなれば、非常に事業を継続することが困難になる。

これは浴場業、薬局業と似ている。税理士会とは異なっている。

ところが独占禁止法上税理士会事件を本件事件においては引用して、違憲であるとするのであるから、何故か筋違いの様な雰囲気もある。しかしそうではないということを所有権になぞらえて論を進めていこうというのである。

この所論について、最も重要なことはこの三つの組合がいずれも事業者団体であるということである。

確かに最初は本件事件は当然違法であるような事件であると思った。しかし共同ボイコットにおいては理屈でこれまで一切無効確認訴訟でも無効の確認の判決が出てきていなかった。

そこで様々な定式化によって当然違法である時の要素の確定が試みられた。

本件事件においてはアメリカの最高裁判所のノースウエスト事件と、トイザラス事件の双方において確定された当然違法の定式化に見事に合致していたが、アメリカ人が人種の坩堝の中で自由と平等のコモンローと平衡法のなかで形成してきた考え方は日本にはなかった。そこで税理士会の事件に飛びついたのである。

現代ドイツ法においては法律で入会の強制を認める。但しそれは独占禁止法上公正競争阻害性の観点からである。

それを日本では、共同ボイコットではなくて、憲法違反として解こうというのか。ということはドイツ法の入会の強制もそのような意味があったのか。

そこで次の判決を参考にすべきであると考えられる。

「昭和四三年(オ)第九三二号

       判     決

  上  告  人 三菱樹脂株式会社

  右代表者代表取締役 杉  山  徳  三

  右訴訟代理人弁護士 鎌  田  英  次

被上告人 高野達男

右訴訟代理人弁護士 別紙被上告代理人目録記載のとおり。

 右当事者間の東京高等裁判所昭和四二年(ネ)第一五九〇号、同年(ネ)第一六八二号労働契約関係存在確認請求事件について、同裁判所が昭和四三年六月一二日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があり、被上告人は上告棄却の判決を求めた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

憲法の右各規定は、同法第三章のその他の自由権的基本権の保障規定と同じく、国または公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障する目的に出たもので、もつぱら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。このことは、基本的人権なる観念の成立および発展の歴史的沿革に徴し、かつ、憲法における基本権規定の形式、内容にかんがみても明らかである。のみならず、これらの規定の定める個人の自由や平等は、国や公共団体の統治行動に対する関係においてこそ、侵されることのない権利として保障されるべき性質のものであるけれども、私人間の関係においては、各人の有する自由と平等の権利自体が具体的場合に相互に矛盾、対立する可能性があり、このような場合におけるその対立の調整は、近代自由社会においては、原則として私的自治に委ねられ、ただ、一方の他方に対する侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超える場合にのみ、法がこれに介入しその間の調整をはかるという建前がとられているのであつて、この点において国または公共団体と個人との関係の場合とはおのずから別個の観点からの考慮を必要とし、後者についての憲法上の基本権保障規定をそのまま私人相互間の関係についても適用ないしは類推適用すべきものとすることは、決して当をえた解釈ということはできないのである。

 (二) もつとも、私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、一方が他方に優越し、事実上後者が前者の意思に服従せざるをえない場合があり、このような場合に私的自治の名の下に優位者の支配力を無制限に認めるときは、劣位者の自由や平等を著しく侵害または制限することとなるおそれがあることは否み難いが、そのためにこのような場合に限り憲法の基本権保障規定の適用ないしは類推適用を認めるべきであるとする見解もまた、採用することはできない。何となれば、右のような事実上の支配関係なるものは、その支配力の態様、程度、規模等においてさまざまであり、どのような場合にこれを国または公共団体の支配と同視すべきかの判定が困難であるばかりでなく、一方が権力の法的独占の上に立つて行なわれるものであるのに対し、他方はこのような裏付けないしは基礎を欠く単なる社会的事実としての力の優劣の関係にすぎず、その間に画然たる性質上の区別が存するからである。すなわち、私的支配関係においては、個人の基本的な自由や平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容しうる限度を超えるときは、これに対する立法措置によつてその是正を図ることが可能であるし、また、場合によつては、私的自治に対する一般的制限規定である民法一条、九〇条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によつて、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し基本的な自由や平等の利益を保護し、その間の適切な調整を図る方途も存するのである。そしてこの場合、個人の基本的な自由や平等を極めて重要な法益として尊重すべきことは当然であるが、これを絶対視することも許されず、統治行動の場合と同一の基準や観念によつてこれを律することができないことは、論をまたないところである。

 (三) ところで、憲法は、思想、信条の自由や法の下の平等を保障すると同時に、他方、二二条、二九条等において、財産権の行使、営業その他広く経済活動の自由をも基本的人権として保障している。それゆえ、企業者は、かような経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し、自己の営業のために労働者を雇傭するにあたり、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件でこれを雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由にこれを決定することができるのであつて、企業者が特定の思想、信条を有する者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできないのである。憲法一四条の規定が私人のこのような行為を直接禁止するものでないことは前記のとおりであり、また、労働基準法三条は労働者の信条によつて賃金その他の労働条件につき差別することを禁じているが、これは、雇入れ後における労働条件についての制限であつて、雇入れそのものを制約する規定ではない。また、思想、信条を理由とする雇入れの拒否を直ちに民法上の不法行為とすることができないことは明らかであり、その他これを公序良俗違反と解すべき根拠も見出すことはできない。・・・

 右のように、企業者が雇傭の自由を有し、思想、信条を理由として雇入れを拒んでもこれを目して違法とすることができない以上、企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない。もとより、企業者は、一般的には個々の労働者に対して社会的に優越した地位にあるから、企業者のこの種の行為が労働者の思想、信条の自由に対して影響を与える可能性がないとはいえないが、法律に別段の定めがない限り、右は企業者の法的に許された行為と解すべきである。・・・

これらの事実関係に照らして、被上告人の秘匿等の行為および秘匿等にかかる事実が同人の入社後における行動、態度の予測やその人物評価等に及ぼす影響を検討し、それが企業者の採否決定につき有する意義と重要性を勘案し、これらを総合して上記の合理的理由の有無を判断しなければならないのである。

 第三、結  論

 以上説示のとおり、所論本件本採用拒否の効力に関する原審の判断には、法令の解釈、適用を誤り、その結果審理を尽さなかつた違法があり、その違法が判決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は、この点において理由があり、原判決は、その余の上告理由について判断するまでもなく、破棄を免れない。そして、本件は、さらに審理する必要があるので、原審に差し戻すのが相当である。

 よつて、民訴法四〇七条にしたがい、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。」

とする三菱樹脂事件は信条の自由に関する最高裁判所の判決として参考になる。

価格維持行為として安売りの業者の排除でなければ、独占禁止法は関係がないということになるか。

そうはならない。

税理士会の事件は強制加入団体であったので、思想・信条の自由があったのである。

逆に、思想信条を理由とする事業者団体への共同ボイコットは許されない、特に自由競争を信条とするものへの共同ボイコットは価格に対する影響も大きく、公正競争阻害性が大きいから許されない。

これは独占禁止法上の共同ボイコットであるのか、憲法違反の差別であるのか。

「私人間の関係においては、各人の有する自由と平等の権利自体が具体的場合に相互に矛盾、対立する可能性があり、このような場合におけるその対立の調整は、近代自由社会においては、原則として私的自治に委ねられ、ただ、一方の他方に対する侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超える場合にのみ、法がこれに介入しその間の調整をはかるという建前がとられているのであつて、この点において国または公共団体と個人との関係の場合とはおのずから別個の観点からの考慮を必要とし、後者についての憲法上の基本権保障規定をそのまま私人相互間の関係についても適用ないしは類推適用すべきものとすることは、決して当をえた解釈ということはできないのである。」

自由が矛盾対立する可能性があるという概念は現代法哲学上はとられていないが判決はこのように述べる。

「他方に対する侵害の態様、程度が社会的に許容しうる一定の限界を超える場合にのみ、法がこれに介入しその間の調整をはかる」という概念も同様である。

侵害が自由の妨害であるととらえられる時には妨害の排除が認められる。

差止は憲法での概念を個別的な法によって実体法によって規定したものであり、独占禁止法においては平成13年4月導入された。

明白かつ現在の危険に関する日本の最高裁判所の判決の趣旨は、現在の危険、及び、明白な危険が存在する時を例外として、その時にのみ信条の自由は制限されるべきであり、それ以外の場合には破壊的な学説・信条も許容されるべきであるというのが破壊的な学説に対する認容の理論である。

本件事件においては税理士会の事件がもっとも近い論旨を持っている。

但し、入会の強制の事件ではなく、強制入会の事業者団体においては思想・信条の自由は守られなくてはならないという事件である。ところが法に従って瞬時に入会が認められている事業者団体についていえば、その時点から思想・信条の自由は守られているのであるから、

一審、二審においてすでに認めている様に独占禁止法上加入しなければ事業活動が困難となるような事業者団体においては、

思想・信条の自由は守られなければならないのであるから、思想・信条の違いによる入会の拒絶は認められないことになる。

この論理は独占禁止法によっているのか、あるいは、憲法のみからも導かれるのか。

一審でも、二審でも強制加入に近い団体であること、即ち加入しなければ事業活動が困難になるような団体であることを認めている。また酒匂悦郎事件では最高裁判所はそのように認定している。

これは茨城県でも、東京都でも同様であると考えられる。

他の職種に移らない限りは生活が出来ないということである。このことは独占禁止法上において認定されているのではなく、差止として認定されているのではなく、独占禁止法上の結果からも、必須の取引事例へのアクセスからも、被上告人(債務者)の市場支配力からも認定されている。従って、ノースウエスト判決を越えていることになる。そして思想信条の自由の観点から思想信条を理由とする入会拒否は認められないから、差止が相当であるということになる。一事不再理の原則によって原審に差し戻したとしても、加入しなければ事業活動が困難となる様な事業者団体であるという点については審理せずに、思想信条による加入制限は許されないという論理から出発して独占禁止法上の損害額の認定に移り、事業実績報告書を使った損害額の認定を独占禁止法の趣旨によって行うことになる。その際には民事訴訟法第248条を使うべきであるということになる。

事業者団体ではあるが、加入しなければ事業活動を行うことが出来ない様な事業者団体であるという認定は独占禁止法に従っているのであるが、しかし明確に独占禁止法上の認定の要件を示していないことになる。この点では独占禁止法の事業者団体の存在意義と、理由について十分に考察していることになる。ただ日本のノースウエスト判決にはならなかったのである。この点では残念である。ある意味では三菱樹脂事件と、税理士会の事