なおなっく物語(番外編)

なおなっく家の飲んだくれ親父

うちの親父は飲んだくれ。だった。

小さい時は、とても怖かった。仕事上、2日に1日は休み。学校から帰ると、コノシロをつまみに焼酎をあおっていた。
カバンを置いて、遊びに行こうとすると、「コラー、うなぁどけー遊びー行くとかい。勉強ばせんかー。こっくうばかますっぞ。」と声が聞こえる。「すぐ帰るけん」と言って、うちを出て、浜で野球やかくれんぼなどをしていた。夕方になると、婆さんが呼びにくるパターンである。
これは普通であるが、飲み会が入ると大変である。「母ちゃんにはよ寝んかい」と言われたが、言われると眠くないのである。玄関の音がガラガラ。やばっ。すぐに電気を消して寝たふりをする。親父が部屋に来ないことを祈って。祈ると必ずやってくる。帰っても誰も相手をしないのでたぶんさみしいのである。母ちゃんも知らんふり。
そういう時は、母ちゃんに暴力を振るっていた。それをこっそり聞きながら、とても怖かった記憶がある。

ある日、親父が飲みに行って、帰ってくる前に母ちゃんが消えた。案の定、親父が寝室に来て、母ちゃん知らんかと起こした。(嘘眠りしていたから起きていたけど)
「知らん」と言うと、「わりゃ。こっちーけー」と言って、外にひっぱりだされた。婆さんが止めに入ったが、「せからしか」と一蹴。どこに連れていくかと思うと、近所で飼っていた、ドーベルマンの犬小屋である。恐ろしくても親父に捕まれているから逃げられない。犬小屋に投げ込まれた時、危機一髪で犬を交わし逃げた。

うぉーーーーと言いながら逃げたーーーー。

必死に逃げた。親父は何をしているかと思ったら、犬が吠えたので、自分が犬小屋に入って、犬を打っつらけーて(殴って)いた。
親父が来ないかと後ろを向きながら必死に逃げている所、細い路地から母ちゃんの「こっちこっち」という声。親父が、俺を見つけて、追いかけてきた。やっばい。
でも、ええちくろうて(酔っ払って)いたため、足がもつれてこけていた。その隙に母ちゃんと全力で走って逃げて隠れた。
帰る所がないため、家の近所の小屋(今の家)に入り、朝まで過ごす。翌朝、親父は仕事があるため小屋の横にある駐車場から家を出て行ったが、バツが悪いのか、小屋には顔も出さずに出て行った。
次の日、仕事から帰ってきた親父を見たら、手、顔を怪我していた。理由は、犬に負けたのである。

またまた、ある日、婆さんッ子だった私は、婆さんの部屋で寝ていた。親父が帰ってきて、私を探し始めた。婆さんの部屋の布団の中に隠れていた私は、怖くてびびっていた。こっちに来る気配がする。そしたら、

親父が来たっぁーーーあ。

婆さんは、必死に「なおなっくはいない」と答えていたが、何かで私がいることを掴んだ親父は、婆さんに暴力を振るい始めた。「なおなっくばだせー。うなぁー」 婆さんは私をかばい、逃げろーと行ったので、窓を開けて急いで逃げた。
夜の街を一人で歩いていたら、婆さんが現れた。顔中青タンだらけだった。おいおい、普通自分の親殴らんだろう。婆さんは泣いていた。「婆さん大丈夫?」と言いながら私も一緒に泣いていた気がする。
今は亡き婆さん。ありがとう。

家で被害を受けたのは私だけではない。姉もそうである。姉を乗せて飲酒運転で事故った親父。
何故、その日なのかは知らないが、警察が家に事情徴収に来た。姉は小さいながら親父に「飲んどらんやったと言え」と言われていたので、その通り答えたようだ。姉はその時、顎に3cmの傷ができており、今も残っている。
その他、免許取り消しになり、再度免許を取って、試乗に行ってくると言って、北九州の八幡まで私を連れて行き、飲酒運転で天草まで帰ってきたり、無茶をやっていた。この時途中で小便がしたくて、車を降りたけど、親父がチャックを思いっきり締めて、チ○ポを思いっきりはさみ、傷ができた。傷は思ったより浅かった。
他にも色々エピソードがあるけど、これくらいにして、親父が40才くらいの時、母ちゃんが「外に飲みに行くな。悪事をするから。人を連れてきても良いから家で飲め」となってから、親父の飲み方が変わったようだ。それからは忠実に家で飲むようになって暴れなくなったようである。
今では親父、私、姉、妹、母と仲良く飲んでいる。

ちなみに、小さい時、親父の飲んべぶりを見ていた私は、母ちゃんに、将来絶対酒は飲まんけんと言った記憶があるが、18才過ぎて飲んでいる自分がいる。
約束破ってすまんね。母ちゃん。