97.なた若林嘉兵衛の道標比較

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「若林嘉兵衛」とある道標は、宝塚市内に五基あり、他市では見つかっていない。
「なた」は阪神地方の「灘」を思い浮かべるが、灘五郷などの呼称は有るものの、
「なた」又は「なだ」だけで住所を絞り込むのは難しい。
宝塚市の観光ガイドで、「灘の酒屋」と紹介されているが、出典等は不明。
道標を建てるような人は、裕福で、信仰心に篤く、旅人の不便を慮(おもんばか)る
やさし人でしょう。
又、その建て方を見ると、宣伝の上手な方のようにも思える。

 まず、写真でその筆跡を比較してみよう。ほぼ同じと見てよいだろう。
道標の作り方は知らないが、誰かの原稿(下書き又は紙型)により彫ったであろうから
ほぼ同じになるのは間違いないか。(同じなら同時期に建てたと考えたいのだが。)
西から順に並べると、


一、清荒神2
写真cimg2451  写真dimg1606

二、売布3丁目
写真cimg2459  写真dimg1560

三、売布小学校内
写真dimg1384  写真dimg1419

四、売布3(小)南側
写真cimg2468  写真dimg1456

五、中山寺梅林内
写真cimg4655  写真cimg2481


次に設置位置と形状を見てみよう。
なた若林嘉兵衛の道標一覧
名称緯度-経度
(元位置)
形状街道立地文面
1.宝塚市清荒神2−18の道標N34.812971 E135.355642尖頭形角柱
66x18x21p(頂高3p)
(下部3pコンクリート帯部含まず)
巡礼道筋違い四辻
北西角
すく中山道
右荒神道
2.宝塚市売布3丁目20の道標N34.815102 E135.356293尖頭形角柱
70x20x20p(頂高6p)
荒神道筋違い四辻
元南西角
すく中山道
左荒神道
3.売布小学校内の(小)南側道標N34.816029 E135.358113
(N34.815986 E135.358880)
尖頭形角柱
64x北面20x21p(頂高3p)
荒神道?元位置は
筋違い四辻
元北西角
すく中山道
すく荒神道
4.宝塚市売布3(小)南側の道標N34.816418 E135.360486尖頭形角柱
66x東面22.5x20.5p(頂高4p)
巡礼道
荒神道
三叉路
北西角
すく中山
すく清水・寶塚
5.宝塚市中山寺2中山寺梅林内道標N34.822186 E135.365899
(N34.819643 E135.367440)
尖頭形角柱
53x南面23x21.5p(頂高5p)
巡礼道?元位置は
筋違い四辻
元南西角
或は南東角
すく伊丹池田・箕面道
すく荒神花山院・左西宮中山道
右觀世音菩薩道

立地状況を写真で見ると

1.清荒神2
写真cimg2454 写真dimg1605
【1.巡礼道より北を望む 【2.巡礼道より北東を望む
 道標は写真の左枠外  道路上の白線がズレた
 石垣に接して建つ】  四辻であることを示す】
 【東西、南北共にズレている】

2.売布3丁目
写真dimg1557 写真dimg1556
【1.四辻より北を望む 【2.四辻より東を望む
 中山寺は右(東)方向  突当りは自動車道で行止り
 左(西)清荒神への道  その左に「新道標」がある。
 道標元位置は四辻南西  中央、カーブミラーの左の新しい
 部ではないか】  道案内も北を「中山寺」とする】
 【東西の道がズレている】

3.売布小学校内
写真dimg1428 写真dimg1430
【1.校門前より西を望む 【2.鳥居前より北西を望む
 右が売布神社鳥居  右、上記4道標からの道が左(西)校門へ
 西は校庭と自動車道で途切れる】  奥、北からの道がうねって手前へ】
 【南北の道がズレている】

4.売布3(小)南側
写真dimg1460 写真cimg2467 写真dimg1466
【1.巡礼道より北を望む 【2.巡礼道より東を望む 【3.巡礼道一つ東n交差点より西を望む
 奥左が売布神社鳥居を  右(南)側が当道標】  道標を左へ巡礼道
 経由し清荒神への道  
 右折は清荒神、上記3道標への道】
 30m北カーブミラーで西折れし、
 先は小学校と中国自動車道
 で途切れる】
 【東西の道が直線でない】

5.中山寺梅林内
写真cimg2484 写真dimg1480
【1.道標のよく見える面に 【2.元位置と想定した辻から西を望む
 「若林嘉兵衛」と彫られて  左奥から右手前が巡礼道中山寺へ
 いるが元の向きとは180度  左へ西宮道、右は墓地、奥之院へ】
 回す必要あり】
 【南北の道がズレている】

参考資料。
写真dimg0759 写真dimg1687
【3.宝塚東部の道標(明治44年)】 【4.変体仮名(た)
 
 『くずし字解読辞典』より】

『結論』
 道標の大きさはほぼ同じ、高さこそ梅林内の物はやや埋まりすぎているが、66x20x20pが基準
(二尺二寸、七寸角か、因みに現在の墓石等は二尺一寸で八寸角が多いようだ)の尖頭型角柱で、
頂高(四角推部のみの高さ)5〜6pのもの2基、3p程度が3基、筋違いの四辻に多く立っており、
目立つ面に施主の名前を彫っている。
 「中山」はすべてに彫られ、「(清)荒神」のないものが1基、「道」の表記がないもの1基、
他の寺名として、「清水」「花山院」が一度づつ出ている。
(西国三十三ヶ所25番と番外、中山寺は24番、清荒神は含まれない。)
 地名としては、「伊丹」「池田」「箕面」「西宮」が出てくるが、「西宮」は道の名称「西宮−中山道」と
解釈したので、地名とはしない方が良いかもしれない。
「觀世音菩薩道」の表現は類例を見ない。(菩薩名として、「觀世音菩薩」が出てくる例はある。)
これは、中山寺のすぐ近くにあったため、観世音菩薩を祀る本堂を直接示したものかも知れない。

【訂正 2023年9月】
 誤:1.宝塚市清荒神2−18の道標の行き先「右清荒神道」
 正:「右荒神道」

 「「西宮」は道の名称「西宮−中山道」と解釈したので、地名とはしない方が良いかもしれ
 ない。」としていたが、街道を示すものでは無く、西宮、中山、の両地名とする。
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