芝居小屋騒動
むかぁし、佐伊津ん浜洲ぃ芝居小屋んあって、佐伊津んしん、そうよう見げぇ行きようらいたそうですたい。
何時じゃいろう、仇討ちする子どんが、仇ぃ負けかかったりゃ、見物ぃ来とらいた”ええくれいどん”の、舞台ん上ぇ飛び上がって「うなぁ、ここばぁどことおもとりはたすとか、佐伊津ぞぉ、親も殺(こ)れとって、こんみぞぉか子供まで殺し果たすとか。
ほげんこたぁ、おりが許さん」て言うて、役者どんに向かっていって、刀もなんもつん折ってくれて打っ叩(たて)ぇてくるるて、うう騒動じゃったそうですたい。
ほうしたりゃ、また違う”ええくれえどん”の舞台ぃ飛び上がって行って、「こんぬけさくが。こりゃ芝居じゃっか、じき助太刀の来らるごとなっとるとば知りもせんで、役者どんば打っ叩くて、ありはたすか」て役者どんば打ち掛からいた、”ええくれえどん”ば打っ叩くってさいたそうですたい。
ほうしたりゃ、また別ん”ええくれえどん”の舞台に上がって来て「こん馬鹿どんが、ここばぁどこと思いはたすとか。
ここは佐伊津ん芝居小屋ぞう。ちぃっとそっと焼酎飲(ぬ)うで喧嘩するって何事か、早よう降りはたせ。
降れんば、二人とめぇ、おりが打っつらけぇてくるるぞう」て言うて、三人結ぼってうう喧嘩になったそうですたい。
よんにゅう見げぇ来とらいたしたちん、戻り戻り
「今夜んごたる芝居はめってぇ見らせんぜぇ、いくら銭出(で)ぇたっちゃみらるるもんかい。ああ面白かった」て言い言い戻らいたそうですたい。