いつどこで見た風景だろうか、小さいころ女の子と一緒に見た風景。
桜が舞い散る町並みを見下ろすことができた高い場所。
心に残る風景とでも言うのだろう、その日その場所で出会った女の子はその後僕にとって大事な娘になった。
今じゃその場所がどこにあったのか覚えていない、そしてその娘ももういない。
その娘の名は麻由。
僕が伝えた麻由への思い、それに対する返事を聞くこともなく、あの娘は僕の前から永遠に消えてしまったのだ。
「季節を抱きしめて」ロングストーリー
「返答」 その1
作:主人公
三年ぶり、三年ぶりにこの町へ戻ってきた。
桜木町、俺が生まれ育った町。
東京へ上京してから一度も戻ってこなかったから今はこの町並みが懐かしく感じられる。
四月、この町も今は桜の花が町中で咲き乱れている。
この町は名称から行ってわかると思うが桜が多いことで有名だ。
「先輩!?」
駅から実家へと歩いて数分経ったときだろうか、懐かしい女の子の声が聞こえてきた。
「やっぱり先輩だ・・・・。」
そう言うと女の子は駆け足で僕の元へとよってゆく。
少し小柄でセミロングの麻由によく似た女の子、この娘の名前は「桜井麻美」麻由の妹だ。
「久しぶり、元気そうだな・・。」
「先輩こそ・・・・・・今日、戻ってきたんですか?」
麻美は僕の大きな鞄を担いだ格好を見て今日帰郷したことを理解する。
彼女とは麻由同様幼いころからのつきあいだ、
高校三年の時僕と同じ高校へと入学してきて以来僕のことを「先輩」と呼ぶようになる。
ころころと表情が変わる明るい性格の娘で、麻由と一緒に子供のころはよく遊んだものだ。
僕は麻美と話をしながら家路を歩き続けた、麻由が死んで早三年、今麻美は彼女のことを懐かしむように笑って話せるようになっている。
仲のいい姉妹だった、葬儀の時麻美は僕の胸のなかで泣いていた。
僕はあの時僕の胸のなかで泣いている麻美に何も言ってやれなかった。
気のきいた言葉が見つからなかったとかそう言う事じゃない、僕もショックで何もできなかった。
呆然として頭のなかが真っ白な状態で葬儀の時のことはあまり覚えていなかったがあの時の麻美を抱き寄せて泣いたことは覚えている。
実家へ到着。
「先輩、いつまでここにいるんですか?」
「・・・・・・・・・一週間ぐらいだけど。」
そう聞くと麻美は嬉しそうな顔をする。
「じゃあ明日どっかへ行きましょうよ。」
これはデートのお誘いだろうか?
なんて思ったりもしたけど、彼女と俺は幼なじみなんだから大した意味などはないだろう。
この付近を久しぶりに出かけたいし、一人でいるのもなんなんで僕は麻美と約束をした。
「それじゃ、明日悲恋桜で待ち合わせしません・・・・・・。」
「悲恋桜・・・・・・・・・・・・・・・・もうちょっと他の所にしないか・・・。」
「ええ、良いじゃないですかー。」
だだをこねる子供のようなふりをして麻美は僕の腕をつかんだ。
悲恋桜、子供のころ僕たちがよく遊んだ場所だ。
春になっても花が咲くことのない桜の木、それが悲恋桜と呼ばれている所以。
何かと曰く付きの桜らしいが、桜井姉妹と何かと待ち合わせ場所として利用していた。
なぜかはわからないが麻由がその桜の木が好きだった。
一度彼女にその理由を聞いてみたが麻由は恥ずかしそうに笑って結局教えてはくれなかった。
僕は麻美の希望どおり悲恋桜で待ち合わせることにした。
「やったー、じゃ明日十時に悲恋桜、遅れないでくださいね。」
麻美は僕と別れ自分の家へと向かっていった。
その日、雨が降っていた。
六月、ちょうど梅雨の時季、ものすごい雷雨のなか僕は傘も差さずに病院へと走っていた。
当時麻由は急性白血病とか言う病気で病院に長期入院していた。
骨髄移植とかとにかく医学が発達した現在、白血病と聞いても僕たちは絶望的にはならず
「いつかきっと元気になる」そう信じていた。
僕の所に連絡してくれたのは麻美だった、彼女の様態が急に悪化したと言うものだった。
ずぶぬれになった僕が病室についたとき、もう彼女は二度と目を開けることはなかった。
あの時麻由は僕の名前をひっきりなしに呼んでいたという。
麻由は僕にないが言いたかったのか、今としてはもう知ることはできない。
!!。
麻由?
突然麻由が僕の前に現れる。
彼女は全裸の状態だったが彼女はなぜか恥ずかしそうなそぶりはしていない。
目に涙をため嬉しそうに微笑みながら麻由は僕に抱きついた。
泣きながら何か僕に伝えているみたいだったが僕には彼女の声は聞こえなかった。
「麻由!!」
次の瞬間気づいてみると僕はベットの上にいた。
窓からは日の光が射し込み朝になったことがわかる。
夢、だったようだ。
最後僕の腕のなかで消えていく麻由の夢。
なんか不吉というか何というか、おかしな夢だった。
桜木公園、この桜木町でもっとも桜の木が多い町自慢の森林公園。
公園と行ってもとくにしきりがしてあるわけではない。
山間に面しており公園の中央には大きな湖もある。
全体の範囲は結構でかく、公園の周りを移動しようとしたら車でも三十分はかかる。
公園の周りにはだいぶ前から立っていたアパートなどが多く存在しており
その中ではもう空き家になっているものもある。
そんな公園の開けたところに悲恋桜は立っていた。
僕は少し早く到着したみたいで麻美はまだ来ていないみたいだった。
「しょうがない、少し待つかな・・・。」
僕は目の前にある悲恋桜へと歩み寄る、周りの桜は満開だというのにこの桜は相変わらず丸坊主だった。
悲恋桜の近くへ行くと遠くからではわからなかったが先客がいたようだ。
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ロングヘアーの女の子、・・・・・・・・・・・俺がいた高校の制服を着ている。
なぜかものすごく懐かしさを感じる、しばらくその娘の後ろ姿を見ていると、
こちらの方に彼女が振り向いてきた。
!!・・・。
「ま・・・・・・・・・・・ゆ・・・・・・・?。」
僕の目の前にいた女子高生は麻由にそっくり、いやそのものだった。
僕は驚きのあまり彼女の顔を見つめ続ける。
「あの・・・・・・どうかしました?」
彼女は何がどうしたのかわからないような顔で僕を見ていた。
