「ね.....姉さん......!?」
麻由を前に麻美は驚いた顔をしている。
当然と言えば当然、死んだ姉とそっくりな娘が目前に元気な姿でいるのだから。
「季節を抱きしめて」ロングストーリー
「返答」 その4
作:主人公
ビルの屋上、あの後麻美に事情を話してとりあえず僕らはここに向かった。
どうにか納得してくれたみたいだがまだ信じられないような顔をしている。
死んだ姉にあまりにも似すぎている娘が記憶喪失、今僕と記憶探しをしているなんて確かに信じろと言っても今の状況を見ないと無理があるのかもしれない。
「ここも違うみたいです。」
今日五つめのビルの屋上、ここも違うみたいだ。
麻美はただただ麻由の様子を見ているだけ、麻由が話しかけても素っ気ない返事をするだけだった。
「先輩・・・・・・・・・。」
それから十数分経ったとき麻美が僕に話しかけてきた。
麻由が六つ目の建物の屋上で景色を見ている時を見計らったかのような小さな声で。
「先輩・・・・・・・・・・あの娘のこと、・・・・・・・・・・記憶探しのためだけに、一緒にいるんですか・・・・?」
「・・・・・・・・・・。」
麻美はそう言うと再び黙り込んでしまった。
彼女が僕に何が言いたかったのかわからなかった、僕が麻由の記憶探しを協力しているのはさっき話した。
分かり切っていることをなぜ麻美は聞いたのだろう。
「どうかしましたか?麻美さん。」
「あっ・・・・・・いや、何でもないの・・・・。」
うつむいているところを麻由に話しかけられ麻美は少しとまどっていた。
自分の姉に敬語で話しかけられているような違和感でも受けるのだろう。
麻由はなんか麻美になついているような様子だった、同じ女同士気でも合うのだろうか。
とも思うが麻美は麻美で相変わらず素っ気ない。
今日の麻美はどうしたのだろうか、いつもはこんな感じではないはずなのに。
「今日はこの辺にしようか。」
日も落ちあたりも暗くなった、キリのいいところで今日の記憶探しは切り上げる。
いつものカプセルホテル、その入り口前まで麻由を送った。
「今日もありがとうございました。」
律儀に礼儀正しく頭を下げる麻由、今日はなんか麻美にべったりだった。
本当に麻美のことが気に入ったのだろう、当の彼女はあまり話はしてなかったがとにかく仲がよくてよかった。
昨日のことを考えると今日は麻由と何か起きるような淡い期待をしていただけに少し残念のような気もするが。
「家に来ればいいわ。」
そういいだしたのは麻美だった。
今日のカプセルホテル代を麻由に渡そうとするところ、お金を使うのがもったいないという理由で麻美が言い出したのだ。
どうやら麻美は今一人暮らししているらしい。
彼女の両親は今外国に行っているみたいだ。
俺が上京している間、麻美の家にもいろいろあったみたいだ。
麻由が死んだ後、僕は東京へとすぐにいってしまったのでその後麻美がどうなっていたのかは、はっきり言ってわからない。
「ほんとに良いんですか?」
麻由が少し遠慮がちに麻美に訪ね、彼女が少し微笑みながらうなずくと麻由はうれしそうにはしゃいだ。
「それじゃお兄さん、また明日よろしくお願いします。」
麻美のアパートの前で麻由はまた頭を下げた。
夜、僕は自分の部屋で物思いにふけていた。
明日は麻美も記憶探しにつきあうと言ってはくれたが、実を言うともう手がかりがなかった。
高いところ、と言っても繁華街のビルはもうこの二日間のうちに調べ尽くしてしまっていた。
東京じゃあるまいし、そんなに高層建築物があるわけがない。
麻由の着ている制服は当てにはならないし、もう八方ふさがりだ。
たぶん麻由は明日も僕を頼ってくるにちがいない。
麻由・・・・・・・・・・・・・・、死んだ麻由によく似た女の子、今考えるとあの娘はどこからきたのだろうか。
この町のどこからかだろうか、よく考えてみると学校に記録されていない娘がなぜ僕の母校の制服を着ているのだろう。
今まで彼女と一緒にいることを考えていたためかあまり考えもしなかったが、麻由、この娘あまりにも不自然すぎた。
死んだ麻由に似ているなんてものじゃない、そのままだ。
まるで彼女が僕たちの前に帰ってきたような・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そんな考えがよぎる。
この後も僕は遅くまで明日のことを考えていた。
今日は日曜日。
「どうです?似合いますか。」
僕の目に飛び込んだのは普段着の麻由の姿だった。
ノースリーブの革ジャン、白と黒のストライプの上着に白の短パン、制服姿ばかりみていたので少し新鮮に感じられる。
「休日まで制服のままじゃ変でしょ、それで麻美さんが貸してくれたんです。」
僕が「似合うよ」と言うと麻由はうれしそうに微笑む。
麻美はと言うと今日も何もしゃべらずに僕たちのことを見ていた。