「それってナンパですか?・・・・・・・・・・・・・・・・良いですよ、お兄さん優しそうな人だし・・・・・。」
「季節を抱きしめて」ロングストーリー
「返答」 その2
作:主人公
喫茶四季、桜木公園から少し離れたところにある静かな喫茶店、僕と麻由そっくりな女の子は今ここでお茶を飲んでいる。
あのあと彼女に出会った僕はどうしても話がしたくて彼女をこの喫茶店に誘った、
まるっきりナンパみたいな形になったものの彼女は気持ちよくOKしてくれた。
注文したものがテーブルにおかれる、僕はコーヒーで彼女はイチゴシェイク。
「いただきます。」
ただのイチゴシェイクに少し大げさに喜びながら彼女はストローに口を付けた。
改めてみると本当に麻由によく似ている。
顔や声、話し方からそぶりまで何もかもが麻由そのものだ。
「どうかしました?」
自分のことを見つめている僕のことが気になったのか彼女は少し照れくさそうな顔をした。
可愛い、つい僕の方も照れくさくなってしまう。
「わからないんです。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
女の子に悲恋桜で何をしていたか尋ねたらこのような答えが帰ってきた。
わからないとはどういう意味だろう、自分のことを聞かれているというのに、
そう思っていたら彼女がおかしな事を言い始めた。
「なぜあそこにいたか覚えてないんです、それどころか自分が何者なのかも・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「自分のこともわからないって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・記憶喪失かなにかなの・・・・・?」
「そうみたいです。」
彼女は大変なことを他人事のように言う。
少しの間僕は半ば信じられないと思いながら黙り込んでしまい、彼女はそんな僕を見ながら黙々とシェイクをすすっていた。
「でも名前、下の名前だけですけど名前なら覚えているんです」
何かを思いだしたかのように話す彼女、僕はとりあえず彼女の名前を聞いてみた。
「麻由。」
!!
「あの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしたんです?。」
彼女が気にかけるほど僕は驚いた顔をしていたみたいだ。
名前まで同じだった。
麻由の言うことを信じることにして彼女とともに記憶探しにでた。
麻由の着ている制服は僕の母校のものなのでとりあえずそこに連れていくことにした。
高校へ到着、卒業して以来一度も足を運んだことがなかったものだからえらく懐かしく感じる。
まだ春休みに入っていないためか学生がまだ校門内にいる。
当たり前だが麻由と同じ制服を着た娘もいる。
僕たちはとりあえず職員室へと向かった。
職員室、卒業したあともあまり入りたいところではない。
久しぶりにあった先生方とそれなりに挨拶を交わす、実を言うとあまりこの学校に良い思い出はない。
結果は何も見つからなかった。
名簿にも何にも見つけることができなかった。
とりあえずあっさりと事を済ませ学校をあとにする。
死んだ麻由のことを知っている先生や、今の麻由のことに不審に感じた人とかがでてきたからだ。
「手がかりありませんでしたね・・・・・・・・・・・。」
繁華街を歩きながら麻由があっさりと言った。
なぜかあまりがっかりしていないような感じは受けたが僕は曖昧な返事をするだけ。
それどころか今の彼女の格好から教育補導に捕まるかどうかが心配だったりする。
しかしうちの学校の生徒じゃないとすると麻由は何者だというのだろうか、今彼女の着ている制服もなんか怪しく思える。
日も暮れ、辺りが暗くなり始めた。
僕と麻由は繁華街から少し離れた公園のブランコで座っている。
「これからどうするの?」
本来警察にでも保護してもらうのが常識なのだがなぜか彼女は拒否してしまう。
これから麻由がどうするつもりなのかが心配になってきた。
今問題になっていることは彼女がどこで寝泊まりをするかと言うことだ。
僕も今は親元にいるから家に連れてくるわけにいかない。
「何とかなります。」
なんて麻由は言うけどどう考えても何とかなるとは思えない。
「麻由・・・、君お金もってんの?」
僕がそう聞くと彼女は首を横に振る、本当にどうするつもりなのだろう・・・・・・・。
そうこう話しているうちに時間は刻々と過ぎていきついに時計は十時を回ってしまった。
麻由は立ち上がり、僕に軽くお辞儀をした。
「今日はありがとうございました、私のためにこんな時間までつき合わせちゃって・・・・・・・・私この辺で失礼します。」
その言葉を聞いて僕も立ち上がる。
「これからどうするつもり、お金も持っていないのに。」
僕は本気で麻由のことが心配だった、こうなったら無理にでも警察に連れていこうか。
麻由は静かに微笑むがその顔にはどことなく不安な陰が伺える。
「何とかします、公園で眠るとか何とかなりますよ。」
なぜ彼女がそんなに警察を嫌うのかはわからない、僕は彼女のことがどうしてもほっとけず麻由の手に万札を握らせた。
「だっだめです、受け取れませんよ・・・・・・。」
麻由はびっくりしてお金を返そうとしたが札を持った彼女の手を僕は両手で包むように握りしめた。
「良いから、このままじゃ君のこと心配で・・・家に泊めることはできないけどこれでカプセルホテルにでも泊まってくれ。」
まだ麻由は困ったような顔をしている、当たり前のことだけど。
「お金は君が記憶を取り戻したときに帰してくれればいいから・・・・・・・・・・お願いだから受け取ってくれ。」
僕がそこまで言うと麻由は受け取ったお金を大事そうに自分の胸元に持っていく。
「わかりました、ありがたく受け取らせてもらいます、必ず返しますから・・・。」
麻由はにっこりと笑って言うと彼女の目からうっすらと涙がにじみ出てきた。
明るく振る舞ってはいたが内心不安でしょうがなかったに違いない。
「明日も会おう・・・・・・・・・・今日会ったあの悲恋桜の前で・・・・・・つき合うよ君の記憶が戻るまで・・・。」
僕は本心からこういえた。
同情とかそんなもんじゃない、それだけは自信を持っていえる。
死んだ麻由にそっくりな名前も同じな彼女、この娘に出会えたのも何かの縁に違いない。
申し訳なさそうな麻由の姿を見て、
「僕のことお兄さんと思って良いから」と冗談を言うと彼女もやっと僕に心を開いてくれたのかいきなり抱きついてきた。
「わーい、ありがとうございます。」
その後繁華街に向かい、カプセルホテルがある建物まで麻由を案内していった。
「それじゃ明日九時頃、悲恋桜の前に・・・・・・・・・・・待ってるから。」
「はい、必ず行きますね・・・。」
彼女と明日のことを話し終わり建物を出ようとする時、麻由は軽くお辞儀をして最後にこう言った。
「これからもよろしくお願いします・・・・・・・・・・お兄さん。」
家に着くと僕を待っていたのは麻美からの電話だった。
彼女はすごく怒ってる。
「どうしたんですか先輩、私ずっと待ってたんですよ。」
いけね、・・・・・・・・・・すっかり忘れてた。
そのあと僕は電話の前で麻美に謝罪し続けることになった。