BLOOD THE LAST VAMPIRE
「闇の王編・終わらない闘い」
―第五話―
家の外に出てみると、そこには“黒い車”が止まっていた。
今まさに、その車に小夜さんが乗りこもうとしていた。
「待って!!お願い、僕も連れていって。」
小夜さんは車の前で立ち止まり、振り返るとおもむろにその口を開く。
「お前はここに残れ…」
「!!」
一度は躊躇したものの、僕は勇気を出して言い返す。
「いきなり何を言い出すの?そんなこと出来るわけ無いじゃないか!」
「…お前にあの女が斬れるか?あの女も、もう人ではないかもしれない…」
「そんなの行ってみないと解らないよ!
瑠璃亜は僕が助けるんだ!!」
その言葉が終わるのと同時に、小夜さんが僕に刃を向ける!
「もし残らないのなら、私はお前を斬ることになる…」
「それでもかまわない!僕一人…
瑠璃亜を助けられないのなら、生きていてもしょうがないよ!!」
小夜さんは、暫く無言で僕をじっと見つめる。
険しい表情のまま、じっと…僕の目を…
「…やはり、お前を生かしておくべきではなかったのかもしれない…」
そう言って、小夜さんは刀を鞘へと収めた。
―僕達は、“黒服の男達”の運転する車の後部座席に座っている。
“あの場所”へ着くには、まだ暫く掛かりそうだ。
(どうしても、わからないことがある…)
僕は、小夜さんに聞いてみることにした。
「ねぇ、どうしてカッツは、瑠璃亜を狙ってきたの?」
小夜さんは僕を横目で睨み付けた後、窓の外に視線を移して語ってくれた。
「…あの女も、お前の母親も、お前の心を弱らせる為に利用しているだけだ…」
「じゃぁ、まさか…僕が狙われてるって言うの?」
「奴の狙いは、お前の“血”だ…お前の中に流れる“呪われた血”だ…」
「なんで…どうして“僕の血”を狙ってくるの?」
「翼手は血を得る度に、その力を増していく…
その血が濃いほど、得られる力も多くなる…」
「…“濃い血”…」
小夜さんの言う“濃い血”というのは、きっと“オリジナル”に近い血の事だろう…
―そうか…昔、小夜さんは僕を助けるために自分の血を使っている…
“オリジナル”である、“小夜さんの血”を…
「…奴の力は強過ぎる…
少しでも弱みを見せれば、お前の心は奴に喰われるだろう…」
「…心が喰われる?」
「…いいか、これから先何があっても心を乱すな!
“自分の意思”をしっかり持つんだ!」
僕は、無言で小夜さんに頷いた。
――暫くして、車が止まる。
車を降りようとする、“黒服の男達”に小夜さんが言う…
「お前達はここに残れ…」
「しかし…」
「これは、私達の問題だ!」
「…わかりました…」
僕の位置からは確認できなかったが、黒服の男が小夜さんになにか手渡したように見えた。
僕と小夜さんは、車を降りる。
母さんが、“始まりの地”と呼んだ場所に…
すべてを終わらせる場所―この“桜ヶ丘”に!!
第六話へ続く