S.S.トップへ戻る

BLOOD THE LAST VAMPIRE

「闇の王編・終わらない闘い」  

    ―第六話―

 ―“桜ヶ丘”僕が昔、住んでいた場所だ。

しかし、12年前の台風による土砂崩れで、壊滅的な被害を負ってしまう…

その後、再開発の話もあったが、何故かそれも中止になってしまっている。

後で解った事だが、ここには原子炉からでた廃棄物が埋まっていたそうだ。

その為、建設途中のまま放置された団地が建ち並んでいる。

「…待っていたよ。小夜!!」

「!!」

一棟の団地の屋上から、カッツの声が響く。

「カッツ!」

小夜さんはカッツの元へと走り出す。

僕も小夜さんの後を追おうとする―その時

「!!」

少し離れた、大きな桜の木の下に倒れている人影が見えた。

「瑠璃亜!」

間違い無い、あれは瑠璃亜だ。

僕は、瑠璃亜の元へと急いだ…

 ―屋上の昇降口の扉が、乱暴に開かれる。。

扉を開ける音と同時に、小夜はカッツに斬りかかる。

しかし、カッツは寸でのところでそれをかわす。

「随分と乱暴な挨拶だな…小夜!」

「…今度は逃がさない!!」

小夜の刀を握る手に力が入る。

「小夜…久しぶりに会えたんだ。

 少し…話をしようじゃないか…」

「…お前と話すことなど無い!」

小夜の刀が再び空を切る。

カッツは、身体を“翼手化”させ手摺りに降り立つ。

そして、薄い笑みを浮かべ小夜に話し掛ける。

「そう言えば、あの少年の姿が見えないようだが…」

「まさか、お前!!」

 

 ―僕は、倒れている瑠璃亜を抱き起こす。

「瑠璃亜!大丈夫?」

「う…うぅ…」

瑠璃亜が目を覚ます。

「良かった…」

そう言って僕は瑠璃亜を抱きしめる。

「…あたしも、あんたに会えて良かった…」

瑠璃亜も、僕を抱きしめてくる。

「もう、心配しなくても良いよ。

 それより、ここに居ちゃいけない!」

僕は立ち上がろうとする。

「…もう少しこうしていて…

 そのまま…動かないで…」

(なんだ?少し様子がおかしい気がする…)

『その女から離れろー!!』

「!!」

屋上から、小夜さんの叫び声が響く!

その声に反応するように、僕は瑠璃亜を突き飛ばしていた。

「どうして…あたしはただ、あんたと一緒に居たいだけなのに…」

瑠璃亜は、泣きそうな声で僕にそう言う…

「瑠璃亜…ごめん、どうかしてたんだ…」

僕は、瑠璃亜の元へ駆け寄る。

「分かってくれたんなら良いよ…

 …あたしと一緒になろう!」

「何を言っているの?瑠璃亜…」

「いいから、そのまま動かないで…」

瑠璃亜が僕の首筋に噛み付こうとした瞬間―

―バーン!!

銃声と共に、瑠璃亜の身体が吹き飛ぶ…

(え?なに?何が起こったんだ?)

拳銃を持った“黒服の男”が二人…

一人は、瑠璃亜の様子をうかがっているようだ…

もう一人は、僕の方に近づいてくる…

「おい、大丈夫か?」

“黒服の男”が僕に問い掛ける。

「どうやら、間に合ったようだな…

 あのお嬢様に、盗聴機を持たせておいて正解だったな。」

瑠璃亜の傍にいる男が、僕の方を見ながら言う。

「全くだ、もう少しでお前さんは、この女に…

 うぐぉ!…なん…」

「!!」

さっきまで、倒れていたはずの瑠璃亜が立ち上がり、黒服の男の顔を掴み片手で持ち上げている…腕だけを“翼手化”させて…

「ハァァ!!」

瑠璃亜は、そのまま黒服の男を地面に叩きつけた!

叩きつけた後には、赤い染みが広がり、もがいていた男の動きが止まる…

「くたばれ!!化け物め!!」

もう一人の男が、瑠璃亜に向けて発砲した。

銃弾は、瑠璃亜の頭に命中した…

しかし、瑠璃亜は倒れる事も無く、黒服の男を睨み付ける…

そして、ゆっくりと男の方へ歩み寄って行く…

「…な、何故だ!!何故立っていられるんだ!!

 …く、来るな!!来るなぁぁぁー!!ああぁぁぁぁー…!」

瑠璃亜が少し力を入れただけで、男の頭は簡単に潰れてしまった…

月明かりが、彼女を照らし出す。

今までに見た事も無い鋭い目付きをした、血まみれの瑠璃亜の姿を…

そして、ゆっくりと瑠璃亜は僕の方へと振り返る―

銃弾を受け、頭から血を流しながらも彼女は生きている…

(ああ、瑠璃亜…君はもう…)

第七話へ続く


S.S.トップへ戻る
第一話を読む
第二話を読む
第三話を読む
第四話を読む
第五話を読む
第七話を読む
最終話を読む