BLOOD THE LAST VAMPIRE

「闇の王編・終わらない闘い」  

    ―第七話―

もう、本当に瑠璃亜を助ける事は出来ないのだろうか…

考え込む僕の方へ、瑠璃亜はゆっくりと、そして確実に歩み寄ってくる…

「…あたしの力じゃ、あの子には敵わない。あたしも、あの女に殺されてしまう…

 だから…お願い…あんたの血をちょうだい!

 あんたの力を!!」

「!!」

(…マインド…コントロール…)

もしかしたら瑠璃亜は、カッツに操られているんじゃないのか?

「瑠璃亜!!目を覚ますんだ、瑠璃亜!!」

僕の叫びが彼女に通じたのか、瑠璃亜の歩みが止まる。

「…あたし…あたしは…」

瑠璃亜は、真っ赤に染まった自分の手を見て、泣きながらその場にうずくまった。

「良かった、瑠璃亜…」

僕は、瑠璃亜の元に駆け寄り、力強く彼女を抱きしめた。

「…なんてことを…あたし…いや!!」

瑠璃亜は僕の身体を突き放す。

「来ないで!!あたしは、あんたを殺してしまうかもしれない…

 だから…あたしの傍に居ちゃいけない…」

「心配しないで、瑠璃亜。確かに君はもう、人間じゃないかもしれない…

 でも、あれは本当の君がやったんじゃない!!

 カッツに操られていただけなんだ!!

 だから…」

「…ううん…違うの…そうじゃない…

 確かに、さっきのはあたしの意思でやったんじゃない。でも…」

そこまで言うと、彼女は涙に言葉を詰まらせた。

(瑠璃亜は一体、何を言おうとしているのだろう?)

 

―何度、空を切ったことだろう…

小夜の動きは完全に、カッツに見切られているようだ。

「…フフフッ、動きが鈍いな。

 そんなに、あの少年が気になるのか?小夜!!」

「うるさい!黙れ!!」

怒りに身を任せ、小夜はカッツに斬りかかる―

しかし、カッツはいとも簡単にその刃を受け止める。

「無駄だよ、小夜。

 いくらあなたでも、これだけ心を乱した刃では私を斬ることは出来ない。

 まして、人の姿をとどめたままではね!!」

そして、カッツは小夜を壁へと叩きつけた。

「ぐわぁ!」

小夜の手から刀がこぼれ落ちた…

 

―少しの沈黙の後、瑠璃亜は意を決して口を開く。

「…でも、あたしは望んで翼手の血を受け入れてしまった…」

「…瑠璃亜?どうして…」

あまりの衝撃に、僕はそう言うのが精一杯だった…。

「…あんたに会うまで、あたしはずっと一人で生きてきた…

 でも、あたしはあんたに会う事が出来た…」

僕は黙って、瑠璃亜の言葉を聞くことにした。

「あれから2年…あたしは18才になった…そして今も、確実に大人になりつつある…

 でも、あんたはあの時のまま…初めて会った時と、変わらないまま…

 ずっと、14才の外見を保っている…

 いつまでも、あんたの傍に居られない…また独りぼっちになってしまう…

 …あんたと、ずっと一緒に居たかった…だから…あたしは…」

彼女はまた言葉を詰まらせ、俯いてしまった…

「瑠璃亜…」

僕が彼女の元へと近づこうとした時、彼女は顔を上げ話し出す―

「…あんたの優しさが、あたしを正気に戻してくれた…

 でも、もう十分…お願い、あたしを殺して。あたしが、あたしでいる内に…」

「瑠璃亜…何を言ってるの?瑠璃亜…」

「ありがとう…あんたに会えて良かった。」

(僕の手で死なせてあげる事が、彼女を救う事になるかもしれない…)

いや!…それじゃ、駄目なんだ!!

「!!」

そうだ!瑠璃亜はまだ、血を飲んではいない。

それに、完全に翼手化もしていない。

彼女の心は、完全に喰われたわけではないはずだ!!

だったら、まだ…まだ間に合うはずだ!!

でも、どうすれば…

(僕と瑠璃亜では、一体何が違うんだ?)

困惑する、僕の脳裏に小夜さんの言葉が浮かぶ。

『…弱みを見せれば、お前の心は奴に喰われるだろう…』

『…“自分の意思”をしっかり持つんだ!』

(…イシノ…チカラ…そうか!“意志の力”だ!!)

「瑠璃亜!良く聞いて。

 僕にだって、翼手の血は流れている…そう、僕だってもう人間じゃないんだ!

 でも、僕には血を飲みたいという欲求は無い。僕の心は翼手にはならなかったんだ。

 瑠璃亜、しっかりして。自分の意思をしっかり持つんだ!!」

「…あたしの…意思?」

「そうだ。あいつは、弱った心に付け込んで“洗脳”しようとする。

 あいつの“マインドコントロール”なんかに、負けちゃいけないよ。」

「でも…それでもあの子は、あたしを斬ると思う…」

瑠璃亜の表情は、怯えているように見えた。

そんな瑠璃亜を、僕はそっと抱きしめる。

「大丈夫…心配しないで。

 瑠璃亜は…瑠璃亜は、僕が守るから!!」

瑠璃亜も僕を抱きしめてくる。

「…ありがとう。あんたが居てくれれば、あたしは人でいられるかもしれない。

 心だけは、人のままで…」

「うん…だから、その時が来るまでは…

 ずっと…僕とずっと一緒に生きていこう。」

僕達は暫くの間、無言で抱き合っていた。

「…やっぱり、あんたとは一緒にはいられないよ…

 あいつが生きている限りは…あいつを殺して、終わらせない限りは!」

「うん…そうだね。

 僕達が、共に生きていくためにも…。

 父さんと母さんの仇であるあいつだけは…

 あいつだけは、絶対に倒さなくちゃならないんだ!!」

「…ありがとう。」

「え?」

「もう…言えないかもしれないから…

 今まで一緒にいてくれて、本当にありがとう。」

「瑠璃亜…。」

僕は、瑠璃亜を力強く抱きしめた。

「…大丈夫。どんなことがあっても、君は僕が守るよ!

 必ず生きて帰ろう、二人で。」

「…うん、そうだね。

 あたし達なら、きっとあいつに勝てるよ。」

僕達は互いに頷き、屋上へと向かった。

闇の王と…カッツと決着をつけるために!!

最終話へ続く


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